2008-08-30(Sat)

安心できません 「安心実現のための緊急総合対策」

暮らし悪化させる おおもと(物価高の原因など)を放置
「ばらまき」議論のまえに、生活支える対策提示を


政府・与党が「緊急総合対策」を出した。「安心実現」などとしているが、安心できない。

なによりも、国民生活を悪化させている根源・おおもとに踏み込んでいない。
景気後退や雇用状況の悪化が確定的になっているが、その最大の要因は、賃金も上がらず、負担増を押し付けられた家計の財布のひもを固くしめ、消費が冷え込んできたことにある。
その原因は、原油高騰などによる相次ぐ物価値上げだ。
物価高を抑える対策が見えない。
原油や原材料の高騰のおもな要因である投機マネーを規制する対策はどこにもない。

国民は、生活必需品が値上がりしているから日常の生活に困っている。
5%~10%値上げが生活を圧迫している。低所得者ほどたいへんだ。
これを抑えるには、生活必需品にかかる消費税を引き下げ、あるいは非課税にすればいい。
ガソリンや軽油など燃料代も、道路財源も一般財源化するのだから暫定税率廃止で引き下げればいい。

定額減税と臨時福祉特別給付金を一年限りで実施する。規模は年末までに決めるという。
公明党が選挙対策でねじ込んだらしい。少しでも役立つならいいかもしれない。
しかし、一年限りというのはどうだろう。むしろ、その財源を補う議論を通じて、消費税増税を加速する根拠にされてはたまらない。

マスコミからは「ばらまき」批判が上がっている。
「ばらまき」と言えば、90年代後半には景気対策のために公共事業を大盤振る舞いした。
公明党発案で「地域振興券」が実施されたがほとんど効果のなかった。
確かに、こんな「ばらまき」はごめんだ。今、その付けが負の遺産となって重くのしかかっている。

しかし、国民の暮らしを支えるため、物価上昇を抑える対策や賃上げ促進、税負担軽減など家計を直接支援することは必要だ。

問題なのは、大企業や大金持ちなどを支援すれば、労働者や家計に回るなどという理屈をいまだにかかげていることだ。
政府は、「ばらまき」批判を気にして、「構造改革」を維持すると、わざわざ言っている。
これこそ、大企業奉仕を優先し、労働者や家計を後回しにする対策であることの証ではないか。



「安心実現のための緊急総合対策」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaitaisaku/kettei/080829kettei.pdf

「安心実現のための緊急総合対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議
http://www.kantei.go.jp/jp/hukudaphoto/2008/08/29keizaitaisaku.html




(2008年8月30日01時59分 読売新聞)
総合経済対策 国民の安心につながるか(8月30日付・読売社説)
 景気後退色が強まる中での経済対策だ。メリハリを欠くばらまきでは、効果は薄い。
 裏付けとなる補正予算の編成にあたって、国民と産業界の不安解消に役立つよう中身を厳選すべきである。
 政府・与党は、物価高や景気の悪化による先行き不安の解消を目指す「安心実現のための緊急総合対策」をまとめた。
 事業規模は11兆円を超え、2002年以来となる大型の経済対策となった。秋の補正予算で必要経費1・8兆円を計上する。
 物価高と賃金低迷のダブルパンチに家計は苦しみ、消費は冷え込んでいる。頼みの輸出も低調で、企業の倒産も急増している。景気はすでに後退局面入りしたことが確実だ。
 こうした景気悪化の痛みを和らげ、成長軌道への回復を図るための対策を実施することは、妥当な政策判断と言えよう。
 対策は、低所得者に対する生活資金の貸し付け拡充や、雇用を維持する中小企業への支援など、生活を守る施策を盛り込んだ。
 原油高の影響が大きい運輸業界や農林水産業への支援、銀行の融資絞り込みで目詰まりを起こし始めた中小企業金融のてこ入れなどは、景気落ち込みを防ぐ緊急策として一定の効果はありそうだ。
 省エネ投資の促進など、原材料高に耐えられる体質に日本経済を改善させる政策も入った。
 一方、所得税・住民税の定額減税について、今年度中の実施を決めたのはいただけない。
 定額減税は、所得金額にかかわらず税金を一律に軽減する、典型的なばらまき型の減税だ。1998年度に4兆円規模で実施されたことがある。
 景気浮揚の効果に乏しく、財政悪化を招く一因になった、というのがこの時の教訓だ。このため、政府・自民党は最後まで導入に慎重だった。
 しかし、低所得者向けの対策を強化するよう求める公明党に押し切られた。
 しかも、減税の規模や対象者、財源など肝心な中身は年末の税制改正論議に先送りされ、秋の補正とは別に予算が必要となる。
 景気後退で税収は落ち込んでおり、減税の規模によっては、赤字国債の発行が不可避となろう。
 増大する社会保障費を支える安定財源のメドも立たない中で、国債増発による安易な減税を行うようでは、国民はかえって安心できないのではないか。定額減税は取りやめるべきである。

朝日新聞 2008年8月30日
社説:定額減税―ばらまきに踏み出すのか
 福田首相は、総選挙めあてのばらまき政策へこのまま踏み出してしまうのだろうか。
 政府・与党が決めた総合経済対策に、所得税や住民税から一定額を差し引く「定額減税」を実施する方針が盛り込まれた。本格的に実施するなら兆円単位の財源が必要になる。だが、それだけの財源を確保できるめどはまったく立っていない。
 これを押し込んだのは公明党だ。定額減税は所得が低い人ほどありがたみが出る。公明党には、かつての地域振興券や児童手当の拡充と同じように、党の実績として選挙で売り込みたいという思惑があるのだろう。
 首相は定額減税に消極的だった。ばらまきに手をつけたと見られれば「改革の旗を降ろした」と批判され、逆に選挙で不利になりかねないからだ。
 それでも公明党の主張に折れたのは、総選挙で創価学会の支援がぜひほしいという事情からだろう。
 来月12日からの臨時国会で、対テロ戦争支援のための補給支援特措法の延長や消費者庁設置法案など民主党が反対する重要法案を通すときも、公明党がそっぽを向けば衆院での再可決ができない。そうなったら、政権そのものが立ち行かなくなる。
 いま日本の財政は、先進国で最悪の状態にある。年金や医療、介護、教育、政府の途上国援助などにもっと予算が必要だと指摘されながら、十分に手当てできずにいる。それは、バブル崩壊後の10年間に歴代政権が実施した合計130兆円規模の経済対策で、国債を財源に減税や公共事業をばらまいてきたことが原因だ。
 今回の対策には定額減税以外に、中小企業の金融支援や高速道路料金の引き下げなどが盛り込まれている。その財源1.8兆円は予備費や剰余金などを活用し、赤字国債に頼らないでも調達できるとしている。
 しかし、景気が後退期に入って税収が不足し、年度末に国債を追加発行せざるをえなくなるのは目に見えている。低所得層への手助けは考えるべきだが、それを定額減税のような手法で行う余裕は、いまはない。
 首相は「財政規律を堅持し、赤字国債の発行は行わない」という。減税の財源は手当てするのだからばらまきではない、と言いたいのだろう。
 なるほど、定額減税の規模や実施方式については「財源を勘案しつつ年末の税制抜本改革にあわせて検討する」としている。実施を玉虫色にして結論を先延ばししたともとれる。
 それならば、首相はその言葉どおりにやってもらいたい。国債は追加発行しない。さらに、特別会計にある積立金、いわゆる「埋蔵金」を流用するのも禁じ手にすべきだ。埋蔵金は本来、借金の返済に使うべきものだからだ。

日経新聞 2008年8月30日
社説1 目先の負担軽減を優先した経済対策(8/30)
 政府は29日、物価上昇や景気の悪化に対処するための総合経済対策を決めた。公明党の強い要請により、中低所得者向けの特別減税や、老齢福祉年金受給者などを対象にした給付金の支給を2008年度中に実施する。高速道路料金の引き下げや輸入小麦の政府売り渡し価格の上げ幅圧縮なども盛り込んだ。
 今回の対策は全体として一時的な負担の軽減による痛み止めの色彩が濃い内容となった。構造改革や体質改善を促す長期的な効果が期待できるものとは言えず、近づく総選挙への対応が優先されたように見える。
 今回の対策の策定に当たって、政府は「真に必要な対策に財源を集中し、旧来型の経済対策と一線を画する」という考え方を示していた。
 これに沿って、かつてのような、公共事業による財政出動を原則的に排した点は評価できる。ただ、本当に必要な対策に施策を集中できたかといえば、疑問が残る。例えば、燃料負担の大きい業種への支援だ。
 政府は燃料高に苦しむ漁業者の負担増加分を補てんする措置をすでに取っている。これを受けて、トラックなど様々な業界からの支援要求が高まった結果、対策では支援対象業種が急増した。原油高という新しい価格体系に適応するのを促すのが建前だが、支援内容は不透明で一時的な痛み止めで終わる可能性もある。
 小麦の政府売り渡し価格の上げ幅を圧縮したことについても、従来のルールを変えてまで実施する必要が果たしてあったのだろうか。高速料金引き下げもびほう策の面が強い。
 資源高を背景に資金繰りが苦しくなった中小企業を支えるのはいいにしても、政府系金融機関の融資や保証を拡大するだけでは長い目で見た問題解決にはつながらない。
 柱の1つとなる特別減税は今年度限りの措置で、規模については年末までに決めることになった。
 公明党は「1年の物価上昇分に見合うものにしたい」としているが、原油高や食品価格上昇の負担を減税でそのまま補うとの考え方は取るべきではない。価格上昇に応じたエネルギーの節約や消費対象の見直しなどの自助努力に水を差しかねない。規模は今後の景気や財政の状況を踏まえたうえで慎重に検討すべきだ。
 対策は「安心実現」を狙いにしているが、一時的な負担緩和だけでは真の安心につながらない。持続可能な年金の姿を示すなど将来への不安を解消していく改革が求められる。規制改革などにより成長力を高める環境を整備し、日本経済を強じんな体質にしていくことも重要である。

産経新聞 2008.8.30 03:12
【主張】予算編成 財政再建頓挫させるのか
 総合経済対策と来年度予算の概算要求がまとまった。総選挙を控えて共に財政規律の緩みが顕著だ。福田康夫政権は補正予算と年末の予算編成で重大な覚悟をもって切り込まないと、財政再建は頓挫しかねない。
 総合経済対策はそもそも高止まりするであろう原油など原材料の新価格体系に経済社会を適合させる構造転換策であるはずだった。しかし、盛られたメニューが目的に沿ったとは言いがたい。
 燃料費負担軽減を理由とした運送業支援や中小企業向け信用保証制度の拡充は一時しのぎどころか、モラルハザードを招く懸念がある。さらに経済対策とはほど遠い学校耐震化なども含まれ、事業規模は約11兆円に膨らんだ。
 とりわけ問題なのは公明党が強く求めた所得・住民税定額減税の年度内実施だ。来月の臨時国会に提出する補正予算案は予備費や特別会計の剰余金で乗り切る方針というが、この減税で第2次補正編成も必至だろう。断じて国債の追加発行は避けねばならない。
 減税が必要なほど景気が深刻でない中でばらまき色の強い対策が策定されたのは、言うまでもなく総選挙が控えているからだ。それは概算要求にもいえる。
 概算要求基準では分野別の歳出削減路線を踏襲する一方で、成長や低炭素社会実現を目的に3300億円の重要課題推進枠を設けた。この分捕り合戦が懸念されたが、実際、各省庁ともここに要求を集中させ収拾がつかない。
 来年度予算の重要テーマも見通しが立っていない。基礎年金の国庫負担割合引き上げの安定財源確保では、消費税以外に財源を求める声が自民党内に根強い。
 道路特定財源の一般財源化ではその使途などを秋の税制抜本改革論議に委ねたが、道路予算は大幅な増額要求となっている。このままでは福田首相が決断した全額一般財源化は極めて危うい。
 今年度税収は第1四半期がマイナス成長になるなどで大幅な不足が生じるのは必至だ。来年度も基調的に変わらないだろう。消費税の来年度引き上げも事実上先送りされている。
 そうした中で歳出圧力だけが増大すれば、2011年度の基礎的財政収支黒字化目標は達成できまい。そして市場の信認を失い民間経済に多大な悪影響を及ぼす。
 首相は選挙ではなく日本のために財政規律を徹底してほしい。

東京新聞 2008年8月30日
【社説】
定額減税 選挙向けが露骨すぎる
 政府が総合経済対策を決めた。焦点だった「定額減税」は年度内の実施が盛り込まれた。バラマキ批判も覚悟しての自民、公明両党の合作である。財政健全化はどうした。総選挙狙いが露骨すぎる。
 原油価格の高騰で中小企業が倒産しないよう資金繰りを後押しする。高速道路料金の引き下げ、燃油高騰に苦しむ運送業など個別業種向けの支援策も拡大する。このほか住宅ローン減税の拡充、公立小中学校の耐震化などを急ぐ。
 決定された総合経済対策は、事業規模にすれば十一兆円、うち中小企業の資金繰り支援は八兆円という。これに基づいて政府は本年度補正予算案を編成する。規模は二兆円程度になるという。
 経済対策には、与党の公明党が求めていた中・低所得層向けの定額減税の「年度内実施」が盛り込まれた。赤字国債の発行に直結しかねないことで政府・自民党は即時実施に難色を示し、規模や方法は「年末の税制抜本改革で検討する」ことで妥協が成った。
 いずれも後退局面に入った景気のてこ入れを大義名分にする“大盤振る舞い”だが、近づく総選挙を意識しての、いかにも集票目当てのバラマキ感がぬぐえない。
 所得税、住民税から一定額を差し引く定額減税は、高所得者層に手厚い定率減税に比べ、税金を納める中・低所得者に恩恵がある。公明党はこれを「譲れない一線」として強硬に主張した。
 財政規律の必要性を強調してきた福田康夫首相も、波乱含みの臨時国会の乗り切りへ、公明の主張に大幅譲歩した。自民の執行部にも、次の総選挙で公明の協力を仰がねばならない事情があって、結局、要求を受け入れた。
 小泉政権以来の「改革」路線が風前のともしびであるように見える。年末の税制論議に向けて早くも、赤字国債の増発も視野に第二次補正予算が組まれるだろう、と公言する与党幹部たちもいる。
 それにしても一時的な“痛み止め”のようなバラマキが、さしたる景気浮揚をもたらさず、財政赤字を増大させるだけだったことは記憶に新しい。そんな過去の反省はどうしたのだろうか。
 旧来の自民党政権は不況になると赤字国債を発行し、公共事業に巨額の予算をつぎ込んだ。その結果、国債発行残高は五百兆円超にまで積み上がっている。いつか来た道をまた歩もうというのか。
 福田政権に国家経営の確たる指針が見えない。大丈夫か。


2008年8月30日(土)「しんぶん赤旗」
主張:緊急総合対策 危機の根源にメス入れてこそ
 政府・与党が燃油や食料の高騰などに対応する「緊急総合対策」をまとめました。
 「総合対策」は高速道路料金の一部を一年間引き下げるとともに、省エネの促進、中小企業の「生産性向上」で成長力の強化を図るとしています。中小企業向けの対策の中心は政府系金融機関の融資枠の拡大です。
 生活関連では、低所得者や母子家庭への融資の拡充、住宅ローン減税の拡充などを掲げました。
「骨太方針」の「死守」
 「総合対策」は「改革」路線の継続と、社会保障の抑制路線を敷いた「骨太方針2006」の「死守」(二十五日の経済財政諮問会議、御手洗冨士夫キヤノン会長)を前提にした対策です。
 厚労省が二十九日、財務省に提出した〇九年度予算の概算要求は、社会保障の自然増の八千七百億円を約六千四百億円に、四分の一も削減する内容になっています。概算要求は、「骨太方針2006」に基づいて減らしてきた生活保護の母子加算を、〇九年度で完全に廃止するとしています。
 まじめに母子家庭への支援策を考えるなら非人間的な生活保護費の削減・廃止をやめるべきです。
 大きな批判が巻き起こっている後期高齢者医療制度で、政府は「総合対策」に一部保険料の軽減策を盛り込みました。後期高齢者医療制度は七十五歳という年齢でお年寄りを差別し、お年寄りの保険料負担を段階的に大きく増やす仕組みを組み込んだ制度です。一時的な取り繕いでは何の解決にもならないことは明らかです。この制度を廃止しない限り国民の不安はおさまりません。
 燃油・食料の高騰に対応するという看板にもかかわらず、急激な価格上昇の主因である投機マネーの暴走は野放しにしたままです。
 家計の消費が冷え切って売り上げが低迷している上に燃油や原材料費の値上がりで、農漁業者や運輸業など中小業者は存亡の危機に立たされています。その危機感を共有するなら、これまでの立場にとらわれずに国際的な投機規制の先頭に立つとともに、燃油代への直接補てんなど実効ある緊急対策に踏み出す必要があります。
 「総合対策」は「構造改革」の決まり文句である企業の「生産性向上」を掲げています。生産性の向上とは、より少ない労働力でより多くの物やサービスを生み出すことです。内需が抑制されて売り上げが伸びず、さらに労働者を守る規制がきわめて弱いところで生産性の向上を進めれば、しわ寄せは賃金と下請け単価の引き下げに及びます。
 大企業が正社員を派遣・請負に置き換えて生産性を上げた結果、若者の生活を悪化させ、内需の低迷にもつながっていることを直視すべきです。
「構造改革」の転換で
 「総合対策」は一年限りの措置として「定額減税」を年末の税制「抜本改革」の中で検討するとしています。財政のつじつまを、最後は消費税の大幅増税で合わせようという「財政健全化路線」が続くなら、一時的な減税を実施しても安心して消費には回せません。
 暮らしと経済の危機の根源にあるのは家計を犠牲にして大企業を応援する「構造改革」路線です。これを根本から転換し、暮らしに軸足を置いた経済・財政運営に切り替えることが必要です。

2008年8月30日(土)「しんぶん赤旗」
物価高受け入れ迫る  政府・与党が緊急総合対策
 政府・与党は二十九日、「緊急総合対策」を発表しました。政府は経済対策を含めた補正予算を九月十二日召集の臨時国会に提出します。経済対策は、〇八年度補正予算と〇九年度予算を一体化する方針で、予算規模は二兆円弱となる見通しです。
 減税を除く事業規模は約十一兆円とされていますが、うち信用保証制度拡充による中小企業の資金繰り支援が約八兆円です。ほかに、輸入小麦の政府売り渡し価格の引き上げ幅圧縮、高速道路料金の引き下げ、燃料負担の大きい特定業種支援の強化などを対策に盛り込みました。
 ただ、政府は「新価格体系へ対応」する構造改善を業界に求めています。原油や原材料が高価格で推移することを前提に、「省エネ対策」に取り組むことを支援条件にするなど、関係者からは経営難を救う効果に疑問が出ています。また、政府の対策には、価格をつり上げている投機マネーへの有効な規制策は盛り込まれませんでした。
 公明党が求めていた所得税・住民税の定額減税については、〇八年度内に単年度限りの措置として実施することを盛り込みました。同日、自民党の麻生太郎幹事長と公明党の北側一雄幹事長の会談で合意しました。減税の規模、実施方式や財源は年末の税制「抜本改革」議論で検討するとしています。年末に第二次補正予算を組んで対応する方向です。
 公明党は、一九九九年から景気対策として実施されてきた所得税・住民税の定率減税の縮減・廃止を主張し、小泉自公政権は〇六、〇七年に半減、廃止を強行しました。国民負担増は総額約三・三兆円にのぼり、個人消費を冷やす一因となりました。
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生活苦の根本にメスを
穀田氏
 日本共産党の穀田恵二国対委員長は二十九日、政府がこの日に発表した「緊急総合対策」について記者団に問われたのにたいし、「収入減、負担増、物価高で三重苦といわれる今日の経済実態を招いた根本原因にメスを入れずに、処方せんは立てられない」と表明しました。
 第一に、小泉「構造改革」路線の失敗、誤りを認めることが大事であると指摘。第二に、国民の暮らしと日本経済全体を立て直すため、経済の軸足を外需から内需、大企業奉仕から国民の家計と暮らしに移し、投機マネーにたいする実効ある規制を行うことが必要だと力説し、これらの基準、角度から政府の対策を検討していきたいと述べました。
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2008-08-29(Fri)

永遠の旅行者 

永遠の旅行者

永遠の旅行者 上 永遠の旅行者 下

書名:永遠の旅行者(上)(下) 著者:橘 玲
出版:幻冬舎文庫         発行年月 2008年08月
価格:  上巻 630円 下巻630円 (税込)

本の内容
☆上巻
 元弁護士・真鍋に、見知らぬ老人麻生から手紙が届く。「二十億の資産を息子ではなく孫に相続させたい。ただし一円も納税せずに」重態の麻生は余命わずか、息子悠介は百五十億の負債で失踪中、十六歳の孫まゆは朽ちた家に引きこもり、不審人物が跋扈する。そのとき、かつてシベリア抑留者だった麻生に殺人疑惑が浮上した—。謎とスリルの上巻。
☆下巻
 まゆは幼い頃に母を殺された未解決事件にまだ苦しんでいた。アメリカで失踪した悠介の居場所はつかめない。麻生の死期は迫る。真鍋には時間がなかった。そもそも麻生はなぜ無税の相続に拘るのか?そして、まゆが何者かに誘拐された—。人間の欲望と絶望、金と愛情、人生の意味までを、大胆かつ繊細に描ききった新世代の『罪と罰』完結。

著者情報
橘 玲(タチバナ アキラ)
1959年生まれ。作家。早稲田大学卒業。2002年、小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。06年、『永遠の旅行者』が第十九回山本周五郎賞候補作となる
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購入日 2008年8月18日 
読始日 2008年8月18日
読了日 2008年8月25日
<感想メモ>
前作の「マネーロンダリング」が印象に残っていたのですぐ買って読んだ。節税というのだろうか合法的に税金を日本政府に納めなくていい方法が存在する可能性があるのだと感心もした。あいにく金もないので実感はわかないが、それよりも、シベリア抑留問題、統合失調症の問題など繊細に描いていることに興味を持った。とりわけ、麻生老人が、なぜ税金を納めることを頑なに拒否したのか、日本政府がソ連への賠償を放棄し、補償もなく日本政府に捨てられたシベリヤ抑留者、その怒りが理由だったと思える構成に納得できるものがあった。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
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2008-08-29(Fri)

淀川ダム負担金 「一揆を起こしてでも阻止」 (大阪自民幹事長)

国交省 約56億円を来年度予算概算要求 各党が批判

「知事の話を聞く前に金を出せとはむちゃくちゃな話。一揆を起こしてでも阻止しなければ」(自民の浅田均幹事長)

「お上のやり方に逆らうなということ。古い官僚的発想」(公明の光沢忍幹事長)

くれぐれも、パフォーマンスで終わらないよう有言実行を。





朝日新聞 2008年8月29日

橋下知事と府議らが東京でフォーラム、地方分権求める

 大阪府の橋下徹知事と府議会が28日、東京都内でパネルディスカッション「大阪府議会フォーラムin東京」を開いた。知事と与野党府議が足並みをそろえ、政治の中心地で府の行財政改革をアピールして国に地方分権を求めるパフォーマンスだ。

 橋下知事と自民、民主、公明、共産の主要4会派の幹事長がパネリストになり、市民や府選出の国会議員ら約140人が熱心に耳を傾けた。

 最も盛り上がったのは、国の事業に地元負担を課す国直轄事業負担金に関する討論。淀川水系の4ダム計画について、国は27日、流域府県の知事の意見を聞く前に、負担金も含めた約56億円を来年度予算として概算要求した。

 「知事の話を聞く前に金を出せとはむちゃくちゃな話。一揆を起こしてでも阻止しなければ」と国を批判したのは自民の浅田均幹事長。公明の光沢忍幹事長も「お上のやり方に逆らうなということ。古い官僚的発想」と続き、民主の西脇邦雄幹事長は「国の権限を整理し、府と市町村で河川を管理する方が低コスト」と提案した。共産の阿部誠行幹事長も「制度廃止も含めて検討すべきだ」と語った。

 橋下知事は「府は多大な血を流して財政再建に取り組んだが、国は役人の給与を削る話も出てこない。国が動かないなら、霞が関解体に向けて地方からのろしを上げたい」と締めくくった。

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2008-08-28(Thu)

リストラ再開 派遣・中小社員「最初に切られた」

しわ寄せは、弱い立場の労働者に

景気後退が確実になった。
賃金が上がらず、消費が低迷していることが背景にある。

輸出大企業は、大儲けしたときに賃金を上げず、内部留保や株主配当で懐を肥やした。
そして、原油・資材高騰などのあおりを受け、収益に陰りが見えてくるとリストラに走る。

2000年初期のリストラは、正社員など希望退職を募って、リストラにも一定のコストをかけた。
ところが、いまは、ただ、解雇(雇い止め)を通告するだけだ。

いつでも気軽にリストラできる・・・こんな身勝手ができるように労働の規制緩和をすすめた。
いま、顕著に規制緩和が効果を破棄しはじめている。

労働者派遣法の規制強化は一刻も早くやるべきだ。
同時に、身勝手なリストラを許さない闘いに立ち上がる必要がある。

中小企業労働者も真っ先に犠牲になる。
政府は、中小企業支援を中心とした経済対策を打ち出すという。
ならば、中小企業への支援とあわせて、雇用確保対策に乗り出すべきだ。



朝日新聞 2008年8月26日0時44分

雇用悪化 派遣・中小社員「最初に切られた」

 景気減速が鮮明になり、雇用環境も悪化してきた。とりわけ、正社員に比べ企業の人員調整の対象になりやすい派遣社員や、経営が苦しい中小企業の社員ら、弱い立場の労働者にしわ寄せが出始めている。
 
「社員と同じように何年も働いてきたのに、こんなにあっさりと切られるなんて、ひどすぎる」

 自動車部品メーカー、ボッシュの富岡工場(群馬県)で働く男性派遣社員(45)は、突然の契約解除に憤る。

 請負契約で働いていた時期を含め、同工場で4年近くトランスミッションの部品の洗浄を担当してきた。だが、7月29日、派遣会社から呼び出され、8月末での契約解除を通告された。男性を含め、対象は同じ製造ラインで働く約10人。9月末の契約期限を前倒しする中途解約だった。

 男性はすぐに、派遣社員でつくる労働組合に相談し、ボッシュ側に団体交渉を要求。今月7日、ボッシュ側は、北米の自動車販売が不振で、減産対象の部品は7月の生産量が昨年の3分の1ほどに減っており、人員整理に踏み切らざるを得ない、と説明したという。「結局、最初に切られるのは僕たち派遣社員なんだと、格差を痛感しました」。就業先のあっせんを求めているが、次の仕事のめどはたっていない。

■トヨタ九州、800人を解約

 派遣社員を大量に受け入れてきた自動車業界では、トヨタ自動車九州(福岡県宮若市)も6月と8月の2回の人員調整で、派遣社員計約800人の契約を解除。輸出の6割を占める北米の景気減速に伴う減産が主な理由だ。

 こうした動きは、輸出に頼っていた製造業全体に広がりつつある。製造派遣最大手の日研総業は「今年に入り、派遣の依頼は前年より1~2割少ない状態。7月からは解約も出始め、派遣稼働人数が減ってきた」という。厚労省幹部も「従業員に占める派遣社員の割合が増えているので、前回の景気後退期より速いテンポで失業者が増え始める可能性がある」と警戒する。

 資源高で経営が苦しい中小企業は、さらに深刻だ。

 関東地方のある運送会社は7月、トラック運転手約20人の給料を月二十数万円の月給制から時給800円の時給制に変更した。昨年、営業エリアの排ガス規制が厳しくなり、借り入れでトラック5台を買い替えたが、原油高で借金の返済計画が狂い、資金繰りが悪化。人件費を切り下げるしかなかったという。しかし、その後も業績は回復せず、結局、今月中旬に廃業。従業員は全員失業した。

■中小の12%、調整踏み切る

 中小企業が多い食品業界も穀物価格の高騰などで厳しい経営環境が続く。食品会社の労組でつくるフード連合は「中高年層を対象にした希望退職の募集など、人員調整の動きが出てきた」と警戒感を強めている。

 厚生労働省が7月、全国の中小企業(従業員300人未満)4412社を対象に実施した緊急調査では、原油高などで賃金調整や雇用調整に踏み切った企業は全体の12.5%に上った。内訳をみると、希望退職の募集(3.3%)や解雇(3.4%)はまだ少ないが、賞与や賃金を切り下げた企業は57.0%。従業員の過不足感を示す雇用DIは正社員はマイナス(不足)だが、派遣社員はプラス(過剰)で、非正社員の再契約停止が17.8%に上っている。(福間大介、松浦祐子)
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2008-08-28(Thu)

絶海にあらず  藤原純友

絶海にあらず  
絶海にあらず 上  絶海にあらず 下

書名: 絶海にあらず  著者:北方兼三
出版: 中公文庫   発行年月 2008年6月
価格: 上巻680円・下巻680円 (税込)

☆上巻
京都・勧学院別曹の主、藤原純友。坂東への旅で若き日の平将門との邂逅を経て、伊予の地に赴任する。かの地で待っていたのは、藤原北家の私欲のために生活の手段を奪われ、海賊とされた海の民であった。「藤原一族のはぐれ者」は己の生きる場所を海と定め、律令の世に牙を剥く!渾身の歴史巨篇。
☆下巻
 承平・天慶の乱の首謀者として将門とともにその名を知られる瀬戸内の「海賊」純友。海の民を率い、ついに朝廷の水軍との対決が!夢を追い、心のままに生きた男の生涯を描く歴史巨篇。
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購入日 2008年08月02日  
読始日 2008年08月11日
読了日 2008年08月18日
<感想メモ>
 そういえば、平将門は名前だけはすぐ出てくるが、日本史で聞いたことのあるような名前だった主人公。改めて辞書などで調べてみた。なるほど、将門と通じ合って東と西で反乱を起こしたという説もあるらしい。最後も海賊として、処罰されたようになっているが、ありきたりの歴史人物伝にしていないところが小説として面白さが増している。官位登用や出世に興味がなく、無限の可能性のある海をあいてに自由に生きる生きざま、水師ら民の平穏な暮らしを脅かす権力には敢然と立ち向かう、なかなか魅力を感じる生き方だ。
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2008-08-27(Wed)

淀川4ダム 56億円を概算要求

本体工事は含まないが、知事の意見も待たず工事はすすむ

なぜ、河川整備計画が決まっていないのに、工事は進むのだろう。

環境を目的に加え、住民参加を位置付けた改正河川法で、「河川整備計画」を作り直すことにした。

しかし、「河川整備計画」ができるまでは、もともとのダム計画にある「工事実施基本計画」が実施されるからだという。

これも公共事業のおかしなところで、「一度決めたら止まらない」根拠になっている。

このもとで、本体工事以外の付け替え道路や環境調査の費用として、56億円が概算要求された。

05年に凍結された時も、いくらか予算が計上されたが、当時は、工事途中で放置しておけば危険なものなどがあるためという理由をつけていた。

今回は、流域委員会や知事の意見がどうあっても、ダムはつくるから、周辺は整備しておこうという本音をのたまうつもりだろうか。



朝日新聞 2008年8月27日
淀川4ダムに56億円要求 近畿整備局、知事意見待たず

 国土交通省近畿地方整備局が淀川水系で計画中の4ダムについて、同省は27日、ダム周辺の整備費など約56億円を来年度予算として概算要求したと発表した。今年度の予算計上額とほぼ同額。4ダムを盛り込んだ同水系の河川整備計画をめぐっては、事業費を一部負担する流域の大阪、京都、滋賀3府県知事が慎重姿勢を示し、近く共同で意見を提示する方針。意見提示前の予算要求には疑問視する声も聞かれた。
 要求額は、大戸川ダム(大津市)10億円▽天ケ瀬ダム(京都府宇治市)1億3500万円▽川上ダム(三重県伊賀市)38億円▽丹生ダム(滋賀県余呉町)6億2千万円。大戸川、天ケ瀬は今年度予算額と同額、川上は2億円増、丹生は4千万円減。道路の付け替え工事や環境調査費が中心でダム本体の工事費は含んでいない。川上ダムはダム建設のため川の流れを一時的に迂回(う・かい)させる工事費を計上したため多額となった。今年度予算にも同内容で計上している。
 整備局の木下誠也局長は「従来の枠組みの延長線上で事業を進めている。計画を策定途中だからといって(予算要求は)やめる性格のものではない」と説明した。
 4ダム計画には、整備局の諮問機関・淀川水系流域委員会が4月に「不適切」と疑問視する意見書を提出。整備局はこの意見書を反映せず、6月に河川整備計画案をまとめた。現在、流域6府県知事の意見を求めている。
 概算要求について嘉田由紀子・滋賀県知事は「事業の責任を持つ国としての判断だと思うが、知事意見を待っていただいた方が望ましい。私どもはそれとはかかわらず知事意見を出していく」と疑問を示した。山田啓二・京都府知事は「コメントは差し控えたい」としている。一方、三重県の坂野達夫政策部長は「川上ダムは従来、伊賀地域の治水・利水共に必要な施設として認識している。県として訴えていることを要求していただけた」と評価した。
前流域委委員長の宮本博司委員は「整備局は概算要求に間に合わせるため、流域委の最終意見を待たずに『見切り発車』をした。8月中としていた府県知事の意見聴取も間に合っておらず、理解できない」と反発している。

朝日新聞 2008年8月27日
橋下知事、ダム代替案に前向き 「3府県で協力」

 淀川水系の4ダム計画について大阪府の橋下徹知事は27日、「滋賀県が頑張ってくれて洪水分を吸収し、もしダムが必要ないという案が出てきたら大阪府もお金を出したい」と述べた。滋賀県はダム計画が中止になった場合を想定し、97億円をかけ独自に堤防を増設するなどの代替案を検討している。ダム代替案に前向きな姿勢を示した。
 この日あった職員との意見交換の集いで述べた。橋下知事は「ダムは必要ないということで大阪、京都、滋賀の3府県がまとまるなら、地方の実情に応じた案が出せる。それが関西州の実現の試金石になる」とも話した。(春日芳晃)
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2008-08-27(Wed)

車水没死 市も消防も警察も なぜ命を守れないのか

ゲリラ豪雨 想定外だという認識こそ問題だ

ゲリラ豪雨でまた悲惨な犠牲者がでた。
県警と消防の対応のまずさは、「危機管理の甘さ」以前の問題で、市民の命を守るべき任務を果たせていないという組織の存在そのものにかかわる問題だ。

市民が助けを求めているのに、「勘違い」したでは役割は果たせないではないか。
警察や消防にとっては、危機管理は日常業務のはずだ。
なぜ、そうなるのか。日常の任務を遂行できない原因はどこにあったのか。

JR尼崎の事故では、企業のトップの責任が問題になっている。
組織のトップまで含め、徹底して調査し、再発防止に取り組むべきだ。

もうひとつ、明確にしなければならないのは、日常管理を負う鹿沼市の責任だ。
通行禁止の看板を委託業者に指示した、という報道があった。

確かに、国も地方自治体も公務員リストラをすすめ、外部委託化を進めている。
だからといって、ひとたび今回のような事故が起これば、管理責任は自治体が負う。

「車水没現場は冠水危険地域…市の情報を消防認識せず」という報道もある。
市が日常的に危険地域の周知徹底を怠っていた結果だと考えられる。

埼玉県富士見市のプール事故のように市職員が刑事責任を問われることになりかねない。
本来ならば、リストラ・外部委託した市幹部こそ、責任が問われるべきだろう。
こういう管理のあり方そのものがどうだったのか徹底調査・検討すべきだ。



朝日新聞 2008年08月26日
都市型水害の危険認識を 再発防止へ着手

 鹿沼市の市道で16日夕、軽乗用車が水没し女性が水死した事故は、県警と市消防本部の危機管理の甘さを露呈した。都市型水害の増加が懸念される中、行政機関や市民に求められる対応や心構えは――。(矢吹孝文、金子智彦)
 「助けて!水が!水が!」
 16日午後6時18分、高橋良子さん(75)=宇都宮市=の携帯電話が鳴った。発信者は娘の派遣社員高橋博子さん(45)=鹿沼市=だった。
 「どこにいるの?」と尋ねても、返ってくるのは悲鳴だけ。最後にこう言い残して電話は切れたという。「お母さん、さようなら……」
 この事故で、県警と市消防は通報を度々受けながら現場に出動しなかった。県警は約1キロ南東の高架橋下で起きた車2台の水没事故と勘違い。市消防は高橋さんより先に水没して自力脱出した埼玉県の夫婦と混同した。
 当時、鹿沼市では午後6時までの1時間に60ミリという激しい降雨量だった。県警通信指令課には午後5時半からの2時間に108件、市消防には同5時半からの1時間で46件の通報が集中。どちらも「相次ぐ通報で混乱し、的確な判断が出来なかった」と釈明している。
 市によると、現場は午後5時半ごろに水深が20センチを超えた。市は道路手前の路面冠水情報装置に「通行止め」の表示を出したが、出入り口を封鎖するバリケードの設置が冠水の速さに追いつかなかったことも事故につながった。
 良子さんは「あのガード下は以前から有名な危険個所だった。それを放置していた市、通報にずさんな対応をした県警、市消防に怒りを覚える」と声を震わせる。
 県警や各地の消防本部は再発防止に取り組み始めた。
 県警通信指令課は「事故の事実を認識できなかった点に落ち度がある。通報内容を正確に把握し、迅速に対応するには人数が足りなかった」と話す。今後、消防との通報内容の交換や通報受理時の人員配置について見直すという。
 また、足利市消防本部は、管轄内に5カ所ある高速道や線路下をくぐる「道路アンダー部」の情報共有と見回りを強化することを決めた。
 日光市消防本部も市建設課と協議し、把握していなかった水没危険個所の情報を共有した。通報集中時の人員配置や混乱回避策は今後検討していきたいとしている。
 県は県内118カ所の道路アンダー部の緊急点検を実施。パトロール強化や注意喚起看板、監視カメラの設置などを検討していくという。
 しかし、もしも水没する車内に閉じこめられたら――。日本自動車連盟によると、専用のハンマーなど先のとがった物で窓をたたき割る。もしくは車内が浸水して水圧が和らいでから息を止めてドアを開ける方法があるという。
 京都大学防災研究所の戸田圭一教授(都市耐水学)は「相次ぐゲリラ豪雨の被害は予測が難しく、行政の完全な対応は望めない。都市部では道路アンダー部や地下街、地下駐車場に水が集中するので危険だ」と指摘した上で、「ふだんから危険個所や防災情報をチェックし、『無理はしない』という意識を高めることが必要」と話している。

下野新聞 (8月27日 05:00)
「基本動作できていない」 鹿沼・車水没事故で町村長官
 鹿沼市茂呂の市道で軽乗用車が水没、同市千渡、派遣社員高橋博子さん(45)が水死した事故で、町村信孝官房長官は二十六日午前の記者会見で、通報を受けながら市消防本部などが出動しなかったことに対し「基本動作ができておらず大変遺憾だ」などと述べた。このほか増田寛也総務相が「現場が混乱していたようだが、そういう時に力を発揮するのが消防であり、警察だ」と市消防本部と県警の対応を批判。林幹雄国家公安委員長も県警の判断ミスがあったことを認めるなど、閣僚が相次いで水没死亡事故に言及。消防、警察の出動判断ミスが重なったことなどに全国的な注目が集まっている。
 町村官房長官は遺憾の意を示した後「ご遺族に申し訳なく、関係当局は反省し、しっかり対応してほしい」と述べた。
 事故があった十六日は集中豪雨のため、市消防本部に一一九番通報が殺到。同本部は自力で脱出した別の水没事故と混同し、現場に出動しなかった。
 増田総務相は「一一九番通報がいかに集中しても迅速で的確な行動を取れるように今回の状況をもう一度分析、検証して消防本部として対応策を取ってほしい」と述べた。
 総務省消防庁は同日までに、市消防本部に事件原因の調査と再発防止に努めるよう指導した。
 林国家公安委員長は二十六日の閣議後の記者会見で、「(栃木県警は)別の事故と誤認して現場に出動しなかった」と県警の判断ミスを認めた上で「栃木県警は今回の事故を踏まえ、一一〇番通報に対して迅速・的確に対応するとともに、関係機関との連携について見直しているとの報告を受けた」と話した。
 警察庁は同日、全国の警察本部に一一〇番を受理した際には発生場所を確実に特定するなど迅速、的確に対応するよう指示する通達を出した。
 通達では、鹿沼署が消防からの通報を県警本部に報告せず、一一〇番受理した県警は、ほぼ同時刻に発生した別の車両水没事故と誤認したため、警察官が現場に出動することがなかったと指摘。
 各警察本部には、通報者から聴取した概要を確実に指令することとし、関係機関との情報共有化や、集中豪雨など一一〇番が集中することが予測される時の要員増強を求めている。

(2008年8月26日23時46分 読売新聞)
「通行止め必要」市認識、バリケード封鎖できず…車水没死
 豪雨で冠水した栃木県鹿沼市の市道で同市千渡、派遣社員高橋博子さん(45)が軽乗用車に閉じこめられて水死した事故で、市が通行止めが必要な冠水を認識していながらバリケードによる封鎖をできず、市消防本部にも冠水を連絡していなかったことが26日、わかった。
 高橋さんの長男雅人さん(19)は、佐藤信市長の謝罪について「ミスをもっと早く認めてほしかった」と話した。
 市によると、現場には冠水を感知する装置がある。水位10センチで「通行注意」、20センチで「通行止め」を現場に表示、市役所でブザーが鳴る仕組み。通行止めとなると、市が委託業者に道路を封鎖するよう指示することになっていた。
 事故のあった16日は、午後5時33分に水位20センチを知らせるブザーが鳴った。しかし、業者が現場に到着した午後6時15分ごろには市道脇の機材が水没しており、バリケードを設置できなかった。市によると、最終的な水位は2メートル近かった。
 近くのガソリン店員の話などから、市は高橋さんの車が午後6時10分ごろに現場へ入ったとみている。
 また、冠水を消防本部に通報する取り決めなどはなかった。市は、水位10センチで消防本部へ通報して警戒に当たらせ、市職員も現場へ向かうとする改善策を示した。
 一方、雅人さんは「現場は10年以上前から問題になっていた。母は泥水にのみ込まれて苦しみ、それでも必死に生きようとしたが、助からなかった」と声を詰まらせた。

下野新聞 (8月24日 05:00)
水没現場封鎖措置は業者任せ 鹿沼の死亡事故で
 集中豪雨で冠水した鹿沼市茂呂の市道で軽乗用車が水没し、同市千渡、派遣社員高橋博子さん(45)が水死した事故で、道路を管理する市は事故前、現場近くの建設会社社員にバリケードの設置を電話依頼しただけで、実際の設置結果を確認していなかったことが二十三日、下野新聞社の調べで分かった。「通行止め」規制用バリケード設置に関しては市と建設会社間に委託契約はなく「口約束」だけだったという。一方、消防が複数の通報を受けながら事故現場に出動しなかったことについて同市消防本部幹部は同日、「申し訳ない」と陳謝した。
 市の危機管理マニュアルでは、道路が危険な状況となった場合は、バリケードなどで安全確保することになっている。事故現場が路面冠水情報装置により「通行止め」となった場合、出入り口を封鎖するためのバリケードは普段、現場近くに保管されている。「通行止め」になると、市が建設会社に電話で設置を依頼していた。
 市と建設会社によると、事故当日の十六日午後五時四十六分、市が建設会社社員に電話で設置を依頼。しかし社員が現場に着いた午後六時ごろにはすでに水かさが増し、バリケードの保管場所まで到達できず設置できなかった。
 高橋さんの車は午後六時二十分ごろ、水没したとみられる。市は設置依頼の電話以降、建設会社と連絡を取っておらず、午後八時ごろまでバリケードが設置されていなかったことを把握していなかった。
 市都市計画部によると、この日、水害対応のため十五人の職員が登庁したが「市内の別の場所でも道路の冠水や住宅浸水があり、巡回していた」という。 一方、市消防本部の岩出勝美消防長は取材に応じ「亡くなられた方に対しては、出動が遅れたことが一因」と、消防の対応と死亡事故の因果関係を認め、「申し訳ないという思いは個人的にある」と述べた。
 市消防本部は、高橋さんの車について複数の通報を受けたが、通信指令課が別の車の情報と混同し、出動命令を出さなかった。

テレビ朝日[27日15時11分更新]
車水没現場は冠水危険地域…市の情報を消防認識せず
 栃木県鹿沼市で車が水没して女性が死亡した事故で、この場所が冠水する恐れがあることを市が把握していながら、救助にあたる消防隊員に十分に危険性が伝わっていなかったことが分かりました。
 車が水没して高橋博子さん(45)が死亡した事故をめぐっては、警察や消防が通報を受けながら出動しなかったことが問題となっています。鹿沼市は今回の事故現場を含めて、冠水する恐れがある道路4カ所を記した地図を作成していましたが、消防が救助活動に活用していなかったことが新たに分かりました。消防関係者は「冠水情報は市と共有できておらず、今回の現場も危険地域という認識がなかった」と話しています。鹿沼市は「情報を共有できなかったことを反省し、消防と協議して体制を検討したい」としています。

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2008-08-26(Tue)

淀川水系流域委員会 宮本博司委員長の意見(その2)

【なぜ、どうしてもダムなのか ~宮本博司~】(その2)


国交省が、淀川水系流域委員会の意見を無視し、河川整備計画案を「見切り発車」。
滋賀、京都、大阪の各知事の意見を求めている。
元近畿地方整備局河川部長であった宮本流域委員長が胸の内を語っている。
朝日新聞大阪版に6回連載された記事を2回に分けて紹介する。

記事は、「asahi.com> マイタウン> 大阪>企画特集より」



(4)堤防は脆弱なまま
2008年08月23日

(4)04年豊岡市の水害
台風23号の影響で円山川があふれ、水没した住宅地=04年10月21日、兵庫県豊岡市

 みなさんは大きな川の堤防を見てどんな印象を持つだろう。草の茂った堤防は、まるで山のよう。いかにも頑丈に見えるのではないだろうか。

 山が頑丈なのは、表層の土をのぞけば中は岩だからである。一方、日本の堤防の多くは土砂を積み上げただけだ。

 信じられないかもしれないが、京都府を流れる木津川の堤防はほとんど砂でできている。海水浴で砂山を作った人なら、そのもろさが分かるだろう。そんな堤防のすぐそばに家が建ち、街がある。

 淀川はどうか。

 淀川の堤防は土。砂山ならぬ「土饅頭(まんじゅう)」。土は砂より粘りけがあるとはいえ、決して頑丈な山ではない。

◆想定外対策後回し

 こんな川に大雨が降ると、どうなるか。

 水がしみ込んだ堤防の強度は低下する。強い勢いで流れる水にも削られる。それだけで決壊することもある。なんとか持ちこたえても、いったん水流が堤防を乗り越えて流れ出すと、水は川の反対側の斜面をどんどんえぐり、決壊を引き起こす。

 こうして一気にあふれる水のエネルギーはすさまじい。

 4年前、兵庫県豊岡市で円山川の堤防が切れた。堤防を越えた水は反対側の地面を4~5メートルえぐり、決壊。上流の出石川では、決壊地点近くに立っていた家が一気に300メートル流された。翌日に現場へ行った私は背筋が寒くなった。決壊だけは防がなければならない。仮に水があふれても、決壊しにくい「しぶとい」堤防でなければいけない。

 円山川では洪水の後、川と反対側の堤防斜面にブロックマットを敷いて上から土をかぶせた。これだけでも、あふれた水が堤防を削るのに抵抗できる。堤防をしぶとくする工夫は様々考えられる。

 なぜ、こうした当たり前の対策が行われてこなかったのだろう。

 これまでの洪水対策のやり方はこうだ。「ここまでの雨なら耐えられる川にする」と、まず雨の量を決める。次に、その水を「ダムでくい止める水」と「川に流す水」に分ける。その計算に従ってダムを造り、川では、想定した水位までは、水が流れる側の堤防をコンクリート護岸などで固める。

 だが想定を超える水が流れたときの対策は後回し。その時は「決壊してもやむを得ない」ということになる。

◆堤防強化タブーに

 いったん洪水になれば、最悪の場合は多くの命が奪われる。「やむを得ない」で済むはずはない。ところが国土交通省は、淀川において、自分たちが想定した水位を超えた水位を前提とした堤防の整備を行うことは考えていないと明言した。

 なぜ、こんなおかしなことになるのか。

 私もかつて国交省の職員として、雨を想定し、計算に基づいてダムを造ってきた。

 だが一方で、「人間の勝手な計算どおりに自然が従ってくれるはずはない」とも感じていた。だいたい、ダム建設には時間も金もかかる。いつになったら多くのダムを造りきって計画が完成するのか見通しは立たない。常に「計画中」「整備中」。そうしている間にもいつ大雨が降るかわからない。

 私以外にも、こうした疑問を口にする職員は少なくなかった。一部の川では、たとえ水が堤防を乗り越えても急激に決壊しないよう堤防強化が行われた。

 だが次第に、国交省でその議論はタブーになっていく。堤防強化を推し進めることは、それまで「必要だ」と言ってきたダムの必要性を否定しかねないからだ。その結果、日本の川の堤防は脆弱(ぜいじゃく)な「砂山」「土饅頭」のまま、強化対策は本格的に実施されていない。

 堤防決壊で住民の命が失われるのに有効な対策を行わない……それは、命をないがしろにする国の不作為ではないだろうか。

      ◇ 

(5)減災へ転換 実行を
2008年08月25日

洪水から町を守るには、堤防強化や川底の掘削、ダム建設だけでよいのだろうか。

 大阪の町が「天井川」に挟まれた底にあり、大洪水に見舞われたニューオーリンズよりも危険な場所に位置していることはすでに紹介した。なぜこんなことになったのか。

 もともと、川は低いところを自由に流れていた。それでは人間にとって不都合なので、堤防を造って「あまり自由に流れてくれるな」と、川を固定した。

(5)もし堤防があふれたら 図
 川を固定すると、いろんなところであふれていた洪水のエネルギーが全部川に集まってくる。一方、住民は「堤防ができたから安心」と、川の近くに住み始める。そこへ未曽有の大雨が降り堤防が壊れる。これではいかんと、堤防をかさ上げする。今まで以上に洪水のエネルギーは川に集中。人々はもう安心と、さらに周囲に町を築く。そこへまた大雨。洪水。堤防をかさ上げ……この繰り返しがずっと続いてきたのだ。

 ◆堤防どんどん高く

 秀吉が淀川に最初に作った堤防の高さは2メートル程度だったと言われる。しょっちゅう水はあふれていただろう。だが周囲にはそんなに人も住んでおらず、たいしたことにはならなかったはずだ。それをどんどん高くして、現在は10メートル。そのすぐ横に、日本で最も密度の高い町ができている。10メートルの堤防はなかなかあふれないが、自然は人間の備えに応じて治まってくれるわけではない。もし壊れたら、町は一気にのみこまれる。のみこまれる町の一軒一軒には人が住んでいる。家族がいる。そして、この堤防は土でできている。

 とりあえずは堤防を強くしぶとくすることが必要だ。さらに、洪水を川の中に押し込める考え方を変えなければならない。川だけでなく、できるだけ流域の中で水をためる方向へ転換していかなければいけない。

 ◆昔は田に水を分散

 佐賀県の城原川には、「野越し」と呼ばれる工夫が残っている。所々でわざと堤防を低くして、そこから水が乗り越えても堤防が壊れないように堤防を強化している。洪水は、ある水かさまでは川の中を流れるが、それ以上になると一部を「野越し」から周りの田んぼに流してうまくエネルギーを分散している。昔からの知恵であろう。

 こういう、水がじわっとあふれる場所を地域に作る工夫を取り戻さなければならない。もちろん、他の所に比べて水がつきやすいわけだから、農地にするとか公共の公園にするとか土地利用を変えたり、その土地にかかる税負担を軽減したりするなど、ハード、ソフト様々な工夫をして、洪水エネルギーを流域全体で分散して受け止めていく。目先の対策の繰り返しでは危険は増すばかりだ。

 実はこのことは、国土交通省も十分認識している。

 98年度の重点施策では、災害発生を前提として被害を最小限にする「減災」への方向転換を打ち出し、「想定を超える洪水が生じても被害を最小限に食い止めるため、たとえ越水しても急激に破堤しない」堤防の強化対策への推進を掲げた。さらに00年の河川審議会答申では、川の氾濫(はんらん)を前提とした土地の利用方法や、建物の建て方も含めた治水対策への転換が示された。

 ところがその後、具体的な施策はいっこうに進まない。依然としてダムと川だけで洪水を処理する発想で計画が作られている。

 国交省自身が限界を認識し、方向転換をうたったのに、舵(かじ)を切ることができない。このままでは、住民の生命を乗せたタイタニック号の氷山への衝突は避けられない。

      ◇

(6)住民が行政の力に
2008年08月26日

(6)雨水貯水タンクで家庭菜園
川に雨水を全部流し込まず、流域で水をためる。私もせめて家の屋根にたまった水だけはためようと、雨水貯水タンクを作って家庭菜園を始めました=京都市

 私は建設省に入省し、辞職するまでの28年間のほとんどの期間、ダム事業にかかわってきた。

 日本の川は水量の変動が激しい。急な地形と季節的に偏った雨の影響で、大雨が降ると洪水になり、日照りが続くと水が枯れる。ダムは、水量が大きいときは水をため、少なくなったら水を流す水ガメだ。ダムが住民生活に寄与してきたことは事実である。

 問題なのは、ダムそのものではない。想定した雨量をもとに算出した洪水量を、机上の計算でダムと川で処理するという数字のつじつま合わせで、本当に住民の命を守れるのかということだ。

◆堤防強化急ぐべき

 淀川のような流域面積の大きな川のはるか上流に千何百億円もかけてダムをつくっても、淀川で水位を下げる効果は小さい。ダムだけにこだわっていては、想定を少しでも超える雨が降れば、いつニューオーリンズの悲劇が起きてもおかしくない。それよりも、土饅頭(まんじゅう)である危険な堤防の強化を急ぐべきだ。堤防の強化は、多くの住民の命を守るための最低装備である。

 なぜ、その当たり前の理屈が通じないのか。なぜ、何が何でもダムにこだわるのか。どうしてもダムが必要というなら、住民の命を守るためにダムがどのように貢献するのかを、他の方策と比較して具体的にわかりやすく説明することが不可欠だ。想定した洪水には貢献できるが、それを少し上回る洪水では貢献できません、うまくダムの上流で大雨が降れば効果を発揮するが、他の所での大雨には効きませんというのでは、多額の税金を使い、川の環境を破壊し、水没地域の人々を犠牲にする説得力はない。「従来の計画で決まっているから」「ここまでやってきたから」では通用しない。

◆職員は悩んでいる

 私がそのことを思い知ったのは、岡山県の苫田ダムの現場を担当したことがきっかけだった。膠着(こうちゃく)状態に陥っていた建設予定地に入って地元の人とひざをつき合わせて、水没する地域の現実を知った。賛成の人も反対の人も「怨念(おんねん)」としか表現できないような深い痛みを抱え込んでいた。これほど人々に痛みを強いて造るのがダムならば、ダムを造ろうとする人間は、自ら水没住民の痛みを感じ、悩み抜き、多くの住民に徹底した説明を行い、ダム建設はやむを得ないと心から納得してもらわなければいけない。何のためにダムをつくるのか、とことん考え、悩んだ。

 国土交通省は、決して従来の方法に固執しているガチガチ頭の集団ではない。職員の多くは、「今までのやり方は限界だ」「今の堤防では危険だ」と分かっている。200年に一度、150年に一度という大雨を想定した洪水対策にしても、河川局の中だけなら通用するが、一般の住民に納得してもらえるまでは説明しきれないことも、分かっている。私が近畿地方整備局の河川部長だったとき、住民と意見のキャッチボールをしながら大戸川ダムと余野川ダムの建設凍結を打ち出したが、悩みに悩んでこの方針を作り上げたのは近畿地整の職員であり、承認したのは河川局の職員であった。

 その後の揺り戻しの中、多くの職員は真剣に悩んでいると思う。心が揺れているところなのだと思う。だが彼らの力だけでは前に進めない。分岐点にいる河川行政が新しい方向に行けるよう後押しできるのは、社会や住民の力しかない。一人でも多くの人にこの問題に関心を持ってもらい、自分たちの命、子どもや孫の命を守るために何が本当に必要なのか、ぜひとも考えてほしい。

=おわり
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2008-08-26(Tue)

淀川水系流域委員会 宮本博司委員長の意見(その1)

【なぜ、どうしてもダムなのか ~宮本博司~】(その1)

国交省が、淀川水系流域委員会の意見を無視し、河川整備計画案を「見切り発車」。
滋賀、京都、大阪の各知事の意見を求めている。
元近畿地方整備局河川部長であった宮本流域委員長が胸の内を語っている。
朝日新聞大阪版に6回連載された記事を2回に分けて紹介する。

記事は、「asahi.com> マイタウン> 大阪>企画特集より」



 みやもと・ひろし 京都市生まれ。78年に旧建設省に入省し、技官として河川行政一筋に取り組む。近畿地方整備局淀川河川事務所長、河川部長、本省河川局防災課長などを歴任後、06年に退職。淀川水系流域委員会に一市民として応募し、昨年8月、委員長に就任。

(1)住民無視 情けない
2008年08月20日

宮本氏ら
6月18日、淀川水系流域委員会と近畿地方整備局が関係正常化のためトップ会談し、宮本委員長(左)と谷本光司・河川部長(中)が会見に応じる。

 6月19日、会社で仕事をしていた私のところへ、新聞社から電話がかかってきた。「国交省が明日、流域委員会の最終意見が出るのを待たずに、4ダム建設を盛り込んだ計画案を発表するそうです」

 あぜん、とした。

 7年前、「住民の意見を河川計画に反映したい」と、住民の代表や学者らでつくる「淀川水系流域委員会」を作ったのは国土交通省だ。それが委員会の意見を無視して、一方的に計画案を発表するというのである。

 昨年8月に委員会が再開して以降、担当職員が委員の質問にまともに答えなかったり、黙り込んだりが繰り返されたあげくの見切り発車。憤りも通り越して情けなくなった。

◆かたくなな国交省

 私は元々、国交省の職員としてダム建設に携わってきた「ダム屋」である。流域委ができた当時は淀川河川事務所長。淀川の責任者として、琵琶湖や淀川をどう再生するのか、住人の安全を守るにはどんな方法がベストなのか、ダムは必要かどうか、流域委とキャッチボールを重ねた。一昨年に国交省を退職し、今度は一住民として淀川にかかわろうと、委員として話し合いに加わった。

 最初は、流域委も国交省も同じ認識だったのだ。

 「ダムは他に実行可能な方法がない場合に、環境影響について慎重に検討し実施する」。これは、04年に国交省が出した文書である。長良川河口堰(かこうぜき)建設に対する全国的な批判を契機に河川法が改正され流域委ができたのだから、効果もあるがマイナス面も大きいダムの建設はみんなで慎重に考えようというのは当たり前のことだった。

 だが流域委が「ダムは原則建設しない」と提言し、それを受けて05年、国交省が大戸川など2ダムの建設凍結を発表した後から流れが変わる。「川のことは国交省が一番よく知っている。本気でそこまで住民や学者の意見を聴くのか?」との反動だったのか。

 流域委は突然休止され、国が委員を選び直して再開。07年、大戸川ダム建設が復活。「何が何でもダムをつくる」とひた走る国交省と流域委の議論はかみ合わなかった。

 5月には「流域委は予算を使いすぎている」と審議打ち切りの話が出てきた。「なぜ、どうしてもダムを造りたいのか」と委員から疑問の声があがる中で打ち切りに向かっていった国交省は、どこまで本気で住民の意見を反映しようとしているのか。説明責任を放棄し、住民意見の反映を拒否したとみなされてもしかたがない。

◆600回開催の流域委

 だが「国交省が強引に進めると言ったからもうどうしようもない」と引き下がるわけにはいかない。ことは住民の命にかかわる問題なのだ。

 そのことを一体、どれくらいの方が認識しておられるだろう。

 もしかすると皆さんは、こんなふうに考えているのではないだろうか。

 「国交省には批判もあるが、これだけ治水事業をやって、たくさんダムも造ってきたおかげで、もう洪水で人がたくさん死ぬ心配はない」

 「ダムがいらないと言っている人たちは、人間の命より魚や鳥の命を優先しているのではないか。確かに自然環境も大事だが、人命より優先するものはない」

 こうした考えは、とんでもない誤解である。

 ダムにこだわる国交省の洪水対策のやり方を変えない限り、3年前に「カトリーナ」の上陸で1千人以上が亡くなったニューオーリンズの悲劇は他人事(ひとごと)ではない。

 流域委員会が600回の会合を重ね、調べ、話し合ってきたことを、改めてみなさんにお知らせしたい。そのうえで、果たしてどうしてもダムに頼らなければならないのか、他の道を探るべきか、考えていただければと思う。

     ◇

(2)国の想定なら効果
2008年08月21日

(2)旭区の淀川堤防
旭区の淀川堤防。国交省がこの水位までなら堤防が崩れないとするラインが横に置いた白いメジャー。200年に一度の大雨が降ると白い棒の高さになる

 「どうしてもダムが必要だ」と言い張る国土交通省の主張をわかりやすく言い換えると、つまりはこういうことになる。

 「万が一の大雨が降ったとき、洪水を防ぐにはどうしてもダムをつくるしかない」

 本当だろうか。まず、国交省の主張をおさらいしてみよう。

 ◆万が一の大雨とは

 「万が一の大雨」とは、どんな雨か。

 国交省は「200年に一度の大雨」を想定した。

 過去の気象統計をもとに、計算式を使って「200年に一度の大雨」をはじき出し、この雨が降った場合の淀川の水位を計算。すると、国交省が「これ以下なら安全を保証したい」と設定した水位を、一部の区間で最大17センチ上回ることがわかった。そうなると、堤防が壊れ、膨大な被害が生じるおそれがある。

 そこで、上流に大戸川ダムをつくる。そうすれば、水位を19センチ下げることができる。

 「淀川流域に住むみなさん、大戸川ダムをつくれば、たとえ200年に一度の雨が降っても、水位に2センチの余裕が生まれます。堤防は壊れません」というのが国交省の主張だ。

 「そうか。それなら、まあお金はかかるかもしれないが、ダム建設も仕方ないんじゃないの」

 そう思ったあなた、「200年に一度の大雨」について、少し考えてみてほしい。

 ◆「200年」は国の目安

 そもそも、「なぜ100年でもなく、300年でもなく、200年なのか」に明確な答えはない。200年はあくまで、国交省が洪水対策をとる上で設定した「目安」にすぎない。さらに、200年に一度の大雨の量自体、アバウトなものなのだ。学説によって何通りも計算式があり、どの式を使うかで雨量は大きく違ってくる。

 さらに、この「200年に一度の大雨」よりわずか数%多く雨が降れば、たとえ大戸川ダムがあっても、設定した水位を上回り、堤防が決壊する危険性が大きくなる。つまり、確かに大戸川ダムは水位を下げることはできるが、極めて限定的な洪水にしか効果をもたらさないのである。

 こんな声も聞こえてきそうだ。

 「そうはいっても、200年に一度の大雨を超える雨なんて、現実には降らないんじゃないの」

 だが残念ながら、自然現象は人間の想定内には収まってはくれない。2000年の東海豪雨では、それまで観測された最大降雨量の約2倍の大雨が降った。自然現象は常に異常である。

 淀川流域では1953年の台風13号のとき記録が残る中で最大の洪水量を記録したが、もし、このときの2倍の雨が降れば、いや、たとえ1・5倍の雨であっても、国交省が計算した「200年に一度の大雨」をはるかに上回る降雨量となる。仮に大戸川ダムを建設したところで、堤防は決壊し、多くの人命が失われることになる。

 洪水対策とは、「いつ、どのような規模で発生するかわからない大雨に対して、住民の生命を守ること」だ。

 だが国交省が主張する洪水対策は、「国交省が想定した範囲内の大雨に対してなら、住民の生命を守りたい」。

 あなたは、これで納得できるだろうか。

     ◇

(3)悲劇 他人事でない
2008年08月22日

(3)05年8月米ニューオリンズを襲った「カトリーナ」の水害
05年8月、米ルイジアナ州ニューオリンズを襲ったハリケーン「カトリーナ」で市街地のほとんどが冠水、取り残された住民は警察官に救助された

 3年前、アメリカのニューオーリンズにハリケーン「カトリーナ」が上陸した。

 ニューオーリンズはミシシッピ川とポンチャートレーン湖にはさまれている。町は、堤防の下7~8メートルの低地に広がっている。

 この堤防が一気に決壊したから、たまらない。一瞬にして1千人を超える方が亡くなった。

 このニュースを見て、みなさんはどう思われただろう。「かわいそう」「大変なことが起きた」とは思っても、果たして自分たちにも同じことが起こりうると思った人が、どれくらいいるだろうか。

 ニューオーリンズの地形と大阪の地形を比べると、決して他人事(ひとごと)ではないのである。

◆大阪の地形は怖い

 もともと海の底だったところに土砂が堆積(たいせき)してできた土地に広がる大阪の町は、淀川の堤防のてっぺんから10メートル、大和川のてっぺんからは20メートル下にある。あの一気にやられたニューオーリンズの地形より、もっと怖い地形に大阪の町はできている。

 しかも大阪には地下鉄が走り、地下街が広がっている。国交省のシミュレーションによると、もし、JR京都線が淀川を渡る地点で淀川の左岸堤防が決壊したとすると、天神橋6丁目の地下鉄入り口から氾濫(はんらん)した水が流れ込み、約7時間で、大阪のすべての地下鉄、地下街が水没するという。堤防が決壊したときの深刻さは、ニューオリンズをはるかにしのぐことになる。

 だがどれだけの大阪の住民が、堤防が決壊し、押し寄せる氾濫流に自分が流されて死ぬおそれがあると思っているだろう。

 ニューオリンズでもカトリーナの上陸前夜、近づいてくるハリケーンで堤防が決壊し、その氾濫流にのみこまれて死ぬかもしれないと思ってベッドに入った人がいただろうか。誰もそんなことはあり得ないと思っていただろう。大災害は実際に起きて初めて、それが現実に起きるものだと実感させられるものなのだ。ニューオリンズの悲劇は決して他人事ではない。

◆たまたま被害なし

 でも、あなたはこう思うかもしれない。

 「そんなこといったって、日本ではこのところずっと、ニューオリンズみたいな大洪水は起きていないじゃない」

 日本でも、昭和20年代は台風がたくさん来て多くの方が亡くなった。昭和34年の伊勢湾台風は約5千人が犠牲となる惨事となった。だがその後、洪水による死者はぐんと減っている。自然災害で大勢の人が亡くなったといえば、阪神大震災が記憶に新しい。


 地震で人が亡くなることはあっても、治水対策が進んだ日本では、もはや水害で人が亡くなることはない……そんなふうに、たくさんの人が考えているかもしれない。

 だが本当にそうだろうか。

 これまで洪水氾濫が起きるたびに、堤防のかさ上げが繰り返されてきた。確かに10メートルもある堤防はなかなかあふれない。だがいったんあふれて堤防が壊れたら、その被害は、堤防が低かった時代とは比べ物にならないほど壊滅的なものになる。

 自然は人間の思い通りに治まってはくれない。私たちが自然から堤防決壊というしっぺ返しを受けるのは、50年後かもしれないが、明日かもしれない。たまたま、このところ淀川では、それほどの大雨が降っていないだけだ。

 そして恐ろしいことに、淀川をはじめ、日本のほとんどの川の堤防は頑丈そうに見えるがその実、非常にもろいのである。
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2008-08-25(Mon)

「ばらまき」って、特定層への恩恵を狙った財政政策?

自民党政治そのものこそ「ばらまき」政治だ

原油高騰・物価値上げで国民生活は苦しくなっている。
政府も財政出動による経済対策に乗り出さなくてはならなくなっている。

そんな中、「ばらまき」だという批判もマスコミから聞こえてくる。

もともと、「ばらまき」は、90年代、630兆円の「公共投資基本計画」による公共投資の増大にはじまる。バブル期に内需拡大を求めたアメリカの要望に応えたものだった。

景気対策として浮揚策として、公共事業に予算が湯水の如くつぎ込まれた。地方は借金をしてどんどん箱モノをつくった。その借金が負の遺産として残り、地方財政を圧迫している。

それこそ、こんな「ばらまき」の復活は許されない。

東京新聞は、「ばらまき」を「特定の産業や企業層、家計層に恩恵を与える財政政策」と定義している。

確かに、特定層にだけ恩恵を与えるのは、不公平だ。一理ある。

しかし、この「特定層にだけ恩恵」というのは、小泉「構造改革」においても例外ではなかった。
小泉改革のもとでは、公共投資は削減されてきたものの、「特定層への恩恵」は続けられてきた。

例えば、公共事業予算の重点化がそうだ。国際競争力強化が必要だと全体が削減される中で、大都市を拠点とする港湾、空港、環状道路など大型公共事業に重点投資された。その事業を受注するのは大手企業だ。

財界・大企業、大株主という「特定層」には減税し、配当を増やしていった。

一方で、国民の命とくらしにかかわる社会保障や生活密着型公共事業など削られていった。地方の中小事業者は仕事がなくなり、倒産・廃業が相次ぎ、地方の疲弊が顕著になった。

「ばらまき」を批判するのであれば、特定層にだけ恩恵を与えてきた自民党政治そのものを批判すべきではなかろうか。





東京新聞 2008年8月24日
【社説】
週のはじめに考える ばらまきが招く不公平

 福田康夫政権が景気対策の策定を急いでいます。財政出動の気配が強まっていますが、なぜ「ばらまき」政策は悪いのか。問題点を整理してみます。

 米国の住宅ローン問題を背景にした世界的な金融不安に加え、原油や食料の高騰が重なって、景気後退色が強まっています。

 日銀の白川方明総裁は最近の会見で「景気が停滞している」との認識を示しました。日本だけでなく、米国や欧州もマイナス成長に陥っています。世界経済は下り坂を駆け降りている状態で、終点はまだ見えていません。

 長期金利の上昇懸念も
 こうした情勢を受けて、政府や与党の中から、緊急の景気対策を求める声が噴出しました。すでに燃料費の高騰にあえぐ漁業対策として、値上がり分の九割を事実上、政府が直接補てんする方針を決めるなど、福田政権は「ばらまき」批判もあえてのみ込んで、財政出動に動く構えです。

 麻生太郎自民党幹事長は二〇一一年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を達成する財政再建目標の先送りに言及し、小泉純一郎内閣から続いた三十兆円の新規国債発行枠にもこだわらない考えを示しました。

 保利耕輔政調会長に至っては、景気対策の財源を赤字国債の増発で賄う可能性すら示唆しています。

 たしかに、景気後退がはっきりしてきた以上、なんらかの対策を考えるのは政府の役割です。しかし巨額の財政赤字を抱え、やみくもに財政出動に動くわけにはいきません。赤字累増が長期金利の上昇につながれば、かえって景気に悪い影響を与えるからです。

 では、望ましい景気対策とは、どのような姿なのか。まず確認しておきたいのは、政府とともに日銀の役割です。

 恩恵は「特定層」だけに
 近い将来の総選挙が頭にちらつくせいか、メディアの視線も福田政権に向きがちですが、景気を支える金融政策の重要性は財政政策に勝るとも劣りません。

 財政政策は決定してから実行するまで国会審議が必要で時間がかかるのに対して、金融政策は決定すれば直ちに発動できます。景気の現状認識では政府と日銀に差がないようなので、ここは政府と連携して、日銀も金融緩和を真剣に検討する必要があるでしょう。

 そのうえで、なお財政政策を考えるなら、政府与党にはぜひ、しっかりと踏まえてほしい原則があります。特定層に恩恵を与える政策ではなく、国民全体に広く恩恵をもたらすような政策でなければならないという点です。

 「ばらまき」とは何か。

 どうも定義をしっかりと詰めないまま、安易に言葉が使われているようですが、ここでは「ばらまき」を「特定の産業や企業層、家計層に恩恵を与える財政政策」と定義します。ちなみに、永田町では歳出拡大だけが財政出動で減税は別、と考える向きもありますが、両方とも財政政策です。

 歳出拡大にせよ減税にせよ、特定層への恩恵を狙った政策は、まず政府が間違いを犯しやすい。景気後退でだれが打撃を被っているのか、を正確に判断するのは難しいからです。

 漁業者は分かりやすい例であっても、では、ビニールハウスで野菜や果物を生産する農家はどうなのか。これから冬に向けて、寒冷地の住民は。燃料費がかさむのは同じです。政府系金融機関を使った中小企業への信用保証拡大も、零細企業や個人事業主には恩恵がない。

 結局、メディアが派手に取り上げたり、政治的に声が大きい産業や企業層に予算が配分される結果になりかねない。それでは不公平です。

 「弱者に優しい政治」と言えば、いかにももっともらしいのですが、その裏側で巨大な不公平や既得権益が発生しかねません。

 それに、肝心の政策効果にも大きな疑問符がつきます。

 政府が特定層に恩恵を与えれば、恩恵を受けた企業や家計の経済行動が変化して、市場経済の効率性が損なわれます。結果として、経済全体が非効率になって生産性の上昇には結びつきません。

 漁業者への直接補てんのような介入政策はつまるところ、一時のカンフル剤にはなっても、長期的に日本経済全体の体質強化にはつながらないのです。

 財政で当面の景気を支える効果を狙うなら、特定層ではなく国民全体や企業全体に差別なく恩恵がゆきわたる政策が望ましい。

 声が大きいと得はダメ
 たとえば、所得税に税額控除を新設すれば、所得税を納めている国民全体に恩恵があり、かつ中低所得層に手厚くなります。

 声が大きいものが「ばらまき」で得をする。そんな政策には、きっぱりと「ノー」と言わねば。
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2008-08-24(Sun)

陸上でもスト コンテナ業者が一斉休業 

トラック協会も「燃料価格高騰による経営危機突破全国一斉行動」(8月26 日)

7月の漁船に続き、陸上でもストライキが起こっている。
23日に海上コンテナ輸送業者が大型トラックで行進した。

26日にはトラック協会も全国で一斉行動を行う。
燃料価格高騰による窮状を打開しようと立ち上がっている。

今回の行動は事業者が主催だが、労働組合にも呼びかけともに参加している。
多くが中小零細事業者だ。労使の垣根をこえ、事業者と労働者の共闘が広がっている。

トラック協会の要望書には、道路特定財源の一般財源化に伴い自動車関係諸税の廃止、燃料税(軽油引取税)の緊急減税又は燃料費補填が盛り込まれている。

漁船の燃料は主に重油で、道路特定財源のような税金がかかっていない。
そのため、政府は、価格上昇分の補填を実施した(わずか80億円しかないが)。

トラックの燃料の軽油は道路特定財源でリットル約32円。暫定税率分リットル約17円。
値上がり分は5月以降だけでも35円も上がっている。
100%減税しても値上げ分は埋めることができない(ガソリンもそうだが)。

いずれにしても、減税プラス補填が必要だ。

もちろん価格転嫁対策(サーチャージ制)も必要だが、最終的には物価値上げとなる。
泣くのは国民・消費者だ。

政府のやるべきことは、投機マネーの規制を本格的に実施し、原油価格が適正化する間、減税・補填による価格安定調整を進めるべきだ。




【共同通信】2008/08/23 17:12
コンテナ業者が一斉休業 窮状訴え大型車で行進

 大阪、神戸の海上コンテナ輸送業者が燃料価格高騰による窮状を訴えようと、23日正午から一斉休業し、トレーラーをけん引するトラクター約600台で神戸市中心部を行進した。
 休業したのは、港で陸揚げされたコンテナをトレーラーで運ぶ275業者。軽油の価格は4年前に比べ1リットル当たり約90円上昇し、中規模のコンテナ業者で年間約7200万円のコスト増になっているという。
 阪神海上コンテナ協議会の山本清志会長(63)は、価格上昇に応じて料金を上乗せする燃油特別付加運賃の導入を国に求めていくと宣言。「同じコンテナ輸送でも、船だけに導入されているのは不公平」と力を込めた。
 20トン以上のトレーラーをけん引できるトラクターが連なり大通りを行進、買い物客らの注目を集めた。

毎日新聞 2008年8月23日 21時19分
一斉休業:コンテナ業者…原油高騰による窮状訴え 神戸

 阪神港(大阪・神戸・尼崎西宮芦屋3港)からのコンテナを陸送する275業者でつくる「阪神海上コンテナ協議会」(神戸市中央区)は、原油価格高騰による窮状を訴えるため、23日正午から24時間の一斉休業に入った。神戸市中央区の繁華街では、コンテナのけん引車両約600台が「もうあかん! 燃料高騰」の幕を掲げてデモ行進した。
 デモに先立ち同区内で開いた決起集会には、従業員ら約400人が参加。燃料価格の上昇分を運賃に上乗せする特別付加運賃(サーチャージ)の法制化などを求めた。

「しんぶん赤旗」2008年8月24日
燃料高窮状訴え けん引車パレード 神戸

 燃料高による窮状を訴えるため、大阪港と神戸港のコンテナを輸送する業者二百七十五社が加盟する阪神海上コンテナ協議会が二十三日、一斉休業し、神戸市内を大型けん引車約五百五十台でパレードしました。国に対して、燃料価格の上昇分を運賃に転嫁する「燃料サーチャージ制」の法制化などを求めました。
 同協議会によると、各社とも燃料高で赤字が続いています。サーチャージ制は航空会社や船会社では導入が進みますが、中小企業の多い海上コンテナ業界では、荷主や元請け業者との力関係から導入が難しいといいます。国土交通省が三月、トラック運送業者に自主的な導入を要請しましたが、一部にとどまっているといいます。
 協議会の山本清志会長(63)は、「何でも積める普通のトラック業者と違い、海上コンテナ業者は取引先が限定され、状況はより深刻。制度を全部に導入しないと業界全体がつぶれる」と話しています。




全日本トラック協会 http://www.jta.or.jp/ より

燃料価格高騰による経営危機突破全国一斉行動
平成20 年8月26 日(火)
 昨今の異常な原油高により燃料価格(軽油)が高騰を続けており、中小トラック運送事業者が大半を占めるトラック運送業界では、多くの事業者が、文字通り事業存廃の岐路に直面しています。
 このような経営危機の突破に向けて、全日本トラック協会では、下記要領にて全国各地で総決起大会、街頭アピール、要望活動等による「燃料価格高騰による経営危機突破全国一斉行動」を実施いたします。

決議文 (PDF143KB)
http://www.jta.or.jp/kekki0808/pdf/ketsugi.pdf

要望書 (PDF340KB)
http://www.jta.or.jp/kekki0808/pdf/yobou.pdf
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2008-08-23(Sat)

警報装置4・7%だけ 過去にも25河川で増水事故 国交省調査 

これで国民の命守れるのか

なんとも酷い実態だ。
「自己責任」などという以前の問題ではないか。

河川管理の責任は国や自治体だ。
管理責任は、国民・住民の命を守る責任があるからだ。

財政があろうが無かろうが関係ない。
ゲリラ豪雨が予測できようができまいがそれも関係ない。

国民の命を守るため、最大限の努力をするのが使命だ。
なのに、警報装置が4・7%以下、注意喚起の看板を設置が17・6%、パトロールの実施は5・3%。

どういうことだ。「自己責任」などと言う前に、やるべきことをやれ!




河川の親水空間に関する緊急実態調査結果について<速報>
平成20年8月22日
http://www.mlit.go.jp/report/press/river04_hh_000002.html

別添資料(PDF ファイル)
http://www.mlit.go.jp/common/000022021.pdf




(2008年8月22日19時57分 読売新聞)
親水公園などがある川、急な増水の警報装置4・7%だけ

 神戸市の都賀川で今年7月、集中豪雨による増水で5人が死亡した事故を受け、国土交通省が、親水公園などがある全国の河川を調べたところ、急な増水を知らせる警報装置を設けているのは4・7%の139河川にとどまっていることが22日、わかった。
 調査は国や自治体が管理する1、2級河川のうち、親水公園や水辺の遊歩道などの「親水空間」があることが確認された2967河川が対象。
 増水を知らせる警報装置の設置は、ダム放流の警報も含め、139河川(4・7%)で、注意喚起の看板を設置しているのは523河川(17・6%)、国や自治体職員らによるパトロールの実施は158河川(5・3%)にとどまった。
 一方、過去に増水で事故が起きていた25河川では、看板はすべての河川で、警報装置も8河川(32%)で設置していた。

神戸新聞 (8/23 09:02)
25河川で水難事故の恐れ 県内は都賀川と夙川 

 神戸市灘区の都賀川が増水し、小学生ら五人が流されて死亡した事故を受けて国土交通省が実施した緊急調査で、同様の水難事故が起きる危険性がある河川は、鬼怒川(栃木、茨城)や玄倉川(神奈川)など全国に二十五あることが二十二日、分かった。兵庫県内では二河川について危険性が指摘された。
 七月三十日時点の調査結果によると、全国約二万の河川のうち、遊歩道や散策路などの「親水施設」があるのは約三千河川。このうち、過去に急な増水で釣り人が水死したり、中州に取り残された行楽客が救出されたりした水難事故が発生したのは、国管理分で十一河川、自治体管理分で十四河川だった。
 兵庫県内の河川は、都賀川のほか、二〇〇二年に釣り客が流されて死亡した夙川(西宮市)。
 親水施設がある河川のうち、急な増水の危険性を訴える看板を設置しているのは17・6%の五百二十三河川、警報装置を設置しているのは4・7%の百三十九河川にとどまった。
 国交省は、今夏に局地的集中豪雨で被害が相次いだことから、学識経験者や地方自治体の幹部職員でつくるワーキンググループを九月中に設置。集中豪雨の観測方法や、急激に水位が上がりそうな場合の市民への情報提供などについて、改善策を検討する。

神戸新聞 (8/23 09:06)
土木学会が都賀川視察 再発防止へ構造を解析 

 神戸市灘区の都賀川で五人が流され亡くなった事故を受け、「土木学会」(東京)の調査団が二十二日、現地を視察した。川の構造や当日の雨量、川に流れ込んだ水量などを解析し、事故の発生メカニズムを探る。川の利用者に対する意識調査の実施も検討。今年度中に報告をまとめ、避難のあり方などの提言につなげる。(岸本達也)
 藤田一郎・神戸大教授(河川工学)が団長を務め、神大や京都大の研究者、兵庫県県と神戸市の職員ら十四人が参加した。
 都賀川の親水施設には、進入路となる階段やスロープが計二十二カ所設置されているが、事故当時は十分間で一・三四メートル水位が上昇。逃げる間もなく、流された人が多かったとみられる。
 調査団は河口付近から上流に歩いて上り、増水で倒れた川べりの草木などから水位を推測、川に流れ込む側溝の位置などを確認していた。
 視察後、メンバーは今後の方針などについて意見を交換した。京大防災研究所の多々納(たたの)裕一教授(災害リスクマネジメント)は「現場の親水施設を見て、十分では逃げられない個所があった。今回のような増水がどれくらいの発生頻度なのかを調べ、避難対策を検討する必要がある」と指摘。利用者の日ごろの危機意識などについての調査を提言した。
 藤田教授は「人命にかかわることだけに、調査に責任を感じる。再発防止に向け提言をまとめたい」と話していた。
 土木学会は、今年五月の中国・四川大地震、七月の岩手・宮城内陸地震などでも調査団を派遣している。

時事通信 (2008/08/22-21:44)
過去にも25河川で増水事故=「親水空間」緊急調査-国交省

 国土交通省は22日、神戸市の都賀川が大雨で急激に増水し、児童ら5人が流されて死亡した事故を受け、各地で水遊び場となっている「親水空間」に関する緊急調査結果(速報値)を公表した。同空間は全国の1、2級約2万1000河川のうち、約3千の河川に存在。このうち、急激な増水による事故が8件の死亡事故を含めて25河川で過去に発生していたことが分かった。
 親水空間は、人が気軽に水と親しめるように河川周辺に人工的に整備された公園や、各地域で水遊び場として知られる自然の空間をいう。これまで、その数などについて十分に把握されていなかったため、都賀川の事故を受けて緊急に調査した。
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2008-08-21(Thu)

派遣労働者の労働災害が急増・・・3年で8倍(厚労省調査 )

製造業解禁の規制緩和が裏目に


(2008年8月21日03時03分 読売新聞)

派遣の労災急増5885人、3年間で8倍に…厚労省調査

派遣労働者の労働災害(労災)が急増している実態が、厚生労働省が行った全国調査で明らかになった。

 2007年に労災に遭った派遣労働者は04年の約8倍の5885人で、被災した全労働者のうち派遣労働者の占める割合も年々増加している。また、7割が製造業での事故で、そのなかで経験年数1年未満のケースが6割以上を占めた。調査結果は、派遣労働者の待遇改善を目指す法改正議論にも影響を与えそうだ。

 派遣元と派遣先がそれぞれ提出する労働者死傷病報告(休業4日以上の死傷者数)を基に厚労省がさらに詳細を調査、分析した。

 派遣元の報告によると、被災した全労働者のうち派遣労働者の占める割合と人数は▽04年0・5%(667人=1、2月は未集計)▽05年2%(2437人)▽06年3%(3686人)▽07年4・8%(5885人)。

 業種別を派遣先の報告から分析すると、07年は製造業が2703人で全体(3958人)の68・2%を占め、運輸交通業7・9%、商業7・7%が続いた。派遣を含む全労働者では、製造業の被災率は24・3%で、派遣労働者の被災率の高さが際立っている。

 また、07年の製造業について経験年数をみると、1か月以上3か月未満が28・7%と最多。次いで1年以上3年未満が21・5%だった。年代では、30歳代が29・0%、20歳代が26・9%で若者の被災が目立った。
労災死傷者数の推移(読売新聞080821)


毎日新聞 2008年8月21日 

派遣労働者:労災が3年で9倍 危険な業務裏付け…厚労省

 07年に労災で被災した派遣労働者(休業4日以上の死傷者数)は5885人(うち死者36人)に上り、製造業への派遣が解禁された04年に比べ約9倍に増加したことが20日、厚生労働省のまとめで分かった。厚労省が派遣労働者の労災件数を集計し明らかにしたのは初めて。日雇い派遣などの派遣労働者が十分な安全教育を受けないまま危険な業務に従事させられていることを裏付け、労働者派遣法改正の議論にも影響を与えそうだ。

 まとめによると、被災者数は04年の667人から年々増加。労働者全体の被災者数は04年が13万2248人、07年も13万1478人で派遣労働だけ被災者が急増している。派遣労働者数は04年の227万人から07年には321万人に増えたが、労災件数の伸びはそれを大きく上回っている。

 業種別では、製造業が2703人で最多。▽運輸交通316人▽商業308人▽貨物取り扱い127人--と続く。特に日雇い派遣が多いとされる貨物取り扱いや運輸交通での増加が目立つ。
 年代別では、30代が29%、20代が26・9%で、20~30代で過半数を占める。経験の少ない若年者が被災する例が多いとみられる。

 死亡労災では、「粉砕機の運転を停止せずに清掃して巻き込まれた」(食品製造)、「ドリルで穴あけ作業中につなぎが巻き込まれた」(機械機具製造)など安全教育の不十分さが原因とみられるケースがあった。

 派遣法を巡っては、秋の通常国会へ向けて厚労省が改正案の検討を進めている。日雇い派遣は原則禁止の方向だが、経営側からは「ニーズがあり一律禁止はなじまない」との意見が出され、禁止を求める労働側と対立している。

 派遣労働者が加入する労働組合「派遣ユニオン」の関根秀一郎書記長は「日雇い派遣など派遣先が雇用に責任を持たない登録型派遣では、安全教育がどうしてもおろそかになる。組合には労災隠しの相談も数多く、この数字さえ氷山の一角と見ている。きちんとした法的規制が必要だ」と指摘している。【東海林智】

派遣労働者:労災急増、製造業解禁の規制緩和が裏目に
 厚生労働省が初めて明らかにした派遣労働者の労災件数。派遣労働者の安全確保が十分には行われていないことが浮き彫りとなり、規制緩和を続けた労働者派遣法の問題点を如実に示した。

 派遣労働者の労災件数が大幅に増えた背景には99年の派遣業務の原則自由化、04年の製造業への派遣解禁がある。労災は製造業での発生が多数を占め、以前から認められている専門業務ではほとんどみられないからだ。

 特に日雇い派遣などに見られる短期の派遣では、労働者が日々変わり仕事をするうえでの安全教育がおろそかになることは容易に予想される。実際「現場に行かないと仕事の内容が分からない」などの労働者の声は多い。

 経営者が人集めの容易な派遣労働を重宝がる気持ちも分かるが、労災防止は最低限の責任だ。厳しい現状を示したデータは、派遣の在り方の見直しが待ったなしであることを物語っている。【東海林智】

日経新聞 2008年8月21日

派遣労働者の労災、急増 厚労省まとめ

 派遣労働者の労災が、製造業への派遣解禁後に急増していることが21日までに、厚生労働省調査で分かった。派遣が解禁された2004年(1、2月は未集計で10カ月分)の被災者は667人だったが、07年は5885人に上った。厚労省は現在、労働者派遣法改正の検討を進めているが、今回の調査結果が議論に影響を与える可能性もある。

 厚労省安全課は「製造業など事故に遭う可能性の高い職場に派遣労働者が増えたことが急増の背景にある」と調査結果を分析。「派遣先や派遣元には安全教育などの対策を進めてもらいたい」としている。 (16:00)

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2008-08-20(Wed)

賃金抑制はもう限界

大企業の内部留保で日本経済が肺炎になる

なるほどと納得できる記事だ。

経済政策の軸足を“大企業から家計へ”転換すべきだ。




日経ビジネスオンライン 2008年8月20日 

賃金抑制はもう限界

大企業の内部留保で日本経済が肺炎になる

労働分配率 
 8月13日に発表された今年第2四半期の実質GDP(国内総生産)成長率はマイナス2.4%(前期比年率)となり、第1四半期のプラス3.2%から一転、マイナスに転じた。

 繰り返し指摘されていることだが、2002年以降の日本経済の回復、成長は輸出の伸びに大きく依存してきた。これを実質GDP成長率の内訳として純輸出(輸出と輸入の差額)の寄与度として見ると、2002年以降の年平均成長率1.8%のうち0.7%(つまり成長率の40%近く)は純輸出の伸びによるものである。今年第1四半期の成長率3.2%については、その50%が純輸出の伸びによる。世界経済の成長が鈍化しただけで、日本の成長率が大きく減退、あるいはマイナスになってしまうのは当然のことだ。

 もともと日本経済の成長は輸出依存型だったというイメージを抱いている方は多いかもしれないが、決してそんなことはない。1980~99年の期間で見ると、年平均成長率2.7%のうち純輸出の寄与度は0.04%に過ぎない(つまり成長率のうちわずか1.5%)。なぜ「世界経済がクシャミをすると日本経済は風邪をひく」ような外需依存の体質になってしまったのだろうか。

「労働分配率=賃金」の抑制が外需依存を助長

 その答えは簡単だ。

 2002年以降の景気回復で企業部門は大企業を中心に史上最高の利益を更新し、高収益、好決算を続けてきた。にもかかわらず、「賃金」の伸びがさっぱりだからだ。これを経済データで確認してみよう。

 国民所得全体は労働の取り分(賃金など)と資本の取り分に分かれる。資本の取り分は、株式配当や利息支払い、役員報酬、内部留保などに分かれる。国民所得全体に対する労働の取り分の比率を「労働分配率」と呼ぶ(少し異なった定義の仕方もある)。

 グラフ1に示した通り、労働分配率は1990年代に大きく上昇した後、2001年をピークに低下が続いている。ほとんどを賃金に依存している勤労者家計の所得の伸びが低く抑えられているのだから、家計の消費も伸びないのは当然の結果だ。

 この点は、政府内部でも議論されている。例えば経済財政諮問会議の専門調査会(「構造変化と日本経済」専門調査会第4回会議、2008年4月開催、会議の資料と議事録は公開されている)では、労働分配率の低下に関連して次のようなデータが提示されている。

(1)2002年1月以降、企業部門の経常利益は年率13.3%で伸びた。一方、賃金(名目)の伸びは年率3.2%にとどまった。

(2)1996年度と2006年度を比較すると、家計が受け取る雇用者報酬は11兆円減少した。一方、家計の受け取る株式配当は5兆円増加したが、そのほかの要因も含めると家計の可処分所得は年間ネットで11兆円減少している。

(3)2000年以降、労働生産性は順調に上昇しているが、実質賃金の上昇はそれをかなり下回る水準にとどまっている。

一般企業部門の債務残高(対名目GDP比率)

 もっとも、2002年以降の労働分配率の低下のすべてが「悪者」というわけではない。賃金は比較的硬直性が強い。景気後退の局面では企業利益が急減しても賃金は硬直的なので労働分配率は上昇する。実際、1990年代に企業利益が減退する過程で労働分配率は大きく上昇した。反対に景気拡大の局面では企業利益の回復が賃金の増加に先行するので労働分配率は低下する。問題は分配率の程度、あるいはバランスである。

「巨額債務企業」と呼ばれたトラウマが原因?

 では現状の労働分配率は適度な調整を超えて既に過度なものになっているのだろうか。筆者はそうだと思う。そう判断する理由の1つは、企業の債務残高の変化だ。

 グラフ2に名目GDPに対する企業の債務残高の比率を示した。1980年代後半のバブル期に不動産投資を含む企業の投資資産が急拡大し、それに見合って債務残高も膨張した。債務残高のGDP比率は91年にピークとなり、90年代に入っても高止まりした。

労働分配率の推移

 企業債務の過剰な膨張とは、裏を返せばかなりの部分が銀行の不良貸し出しの膨張である。そうした過剰債務の修正・圧縮は90年代後半から進んだ。債務残高は1995年から2007年に240兆円も減少した(そのうち約100兆円は銀行の貸出金の損失処理だった)。この過程で「企業利益の内部留保の増加 → 債務の返済・縮小」が進んだのは、ある程度まではやむを得ない、あるいは望ましい調整だったと言えるだろう。

 ところが今日、既にバブル期以前の平均を下回る債務比率になっても、賃金の抑制と内部留保の増加を大企業経営層は続けている。その結果、「家計消費の低迷 → 内需主導の景気拡大の阻害」という自縛状況を生み出しているのだ。

 何が経営者を内部留保・債務圧縮に駆り立てているのだろうか。

 1990年代後半から2000年代初頭の銀行不良債権危機(=企業の債務危機)の時期には、「債務の巨額な企業上位20社」というようなランキングが雑誌などのメディアに出回り、「巨額債務企業=破綻予備軍」のような債務企業バッシングが横行した。支えてくれるはずのメインバンクの体力も細り、あてにならない状態になった。その時の危機感がトラウマになっているのだろうか。しかし、トラウマに駆り立てられるだけなら、経営とは呼べない。

 企業の内部留保がすべて悪いわけではない。内部留保資金が効率的に投資、運用されれば企業価値が増加する。その結果、株主には株価の上昇という形で還元されるならば、最終投資家である家計には資産効果(保有資産の価値が増加することで消費が増える効果)がもたらされ、家計消費も増加しよう。

 十分な投資リターンも生まないのに、内部留保される利益が問題なのである。


内需自縛の元凶は大企業の経営者

 また、企業利益の著しい回復、増加と賃金抑制による労働分配率の顕著な低下が見られたのは大企業であり、企業規模が小さくなるほど労働分配率の下げが鈍っている。これは中小企業の利益の伸びが大企業に比べて劣後している結果である。そのため、大企業と中小企業の労働分配率の格差は1990年代と比べて拡大した。このことは今年7月に出された経済白書でも指摘されている。内需自縛の元凶は大企業の経営にあるということになる。

 1997~98年の不況の時には、減税や賃金アップで家計の可処分所得が増加しても、家計の消費意欲が縮んでいるので所得増加分は貯蓄に回り、景気拡大につながらないという議論があった。しかし、日本の家計の貯蓄率は80年代以降趨勢的に低下が続き、今では2%台でしかない。家計の過剰な貯蓄意欲が内需主導成長を妨げているというようなことは、今日では起こっていない。過剰な貯蓄で需要の拡大を阻害しているのは大企業部門なのだ。

 ところで、賃金だけが企業から家計部門への所得の分配ルートではない。家計の所得格差の拡大をもたらす原因にはなり得るが、株式の配当の増加を通じたルートもある。日本企業の配当性向(=企業の純利益に占める配当支払い比率)は元々低かったが、配当を通じた所得還元は近年急速に増えてはいる。2007年度では上場企業の配当性向は平均で30%に達したと言われるが、欧米の主要企業の30%超から40%前後の水準に比べるとまだ見劣りがする。

問題の核心を突けども対策は打たずという奇々怪々

 ではどうすれば、企業から家計への所得移転を増やし、内需主導の成長に舵を切れるのだろうか。

 実はこの点も、既述の経済諮問会議の専門調査会が重要なヒントを提示している。同調査会で提示された調査資料は、2002~2007年の期間について、低賃金のパート労働の比率の急増により、この期間の賃金低下のほとんどを説明できることを示している。同時にフルタイム労働者とパート労働者の賃金格差を国際比較すると、日本のパート労働者の賃金はフルタイム労働者の50%そこそこで、主要欧州諸国の70%超(ドイツは80%超)と比べるとかなり低い。

 従って、パート労働者に対する労働条件の改善、具体的には正規雇用、パートの区別なく同一労働=同一賃金の原則、厚生年金の適用拡大などを最低賃金の引き上げとセットにして推し進めれば、労働分配率の向上と家計消費の回復に大きく寄与するだろう。

 ところが奇妙なことに、これだけ十全な事実分析と議論が専門調査会で行われたにもかかわらず、同調査会が7月2日に発表した専門調査会の報告書「グローバル経済に生きる~日本経済の『若返り』を~」には、こうした資本・労働分配率の修正の必要性とその政策に関する具体的な提言はほとんど見られなかった。

 その詳しい経緯は知らないが、所得分配を巡る問題はいつでも政治的に厄介な火種である。問題の核心を見て見ないふりをする「政治的リーダシップの不在」が最大の元凶なのかもしれない。

 実は2000年代の労働分配率の低下傾向は日本だけでなく、米国、ドイツ、フランス、英国など主要先進国にある程度共通に見られる。ただし、米国や英国では2000年代の住宅投資ブームで、その資産効果が加わり、家計消費は日本に比べると2006~2007年までは堅調だった。

 住宅バブルの崩壊で、そうした成長パターンが終わり、米国ではミドルクラス以下が経済的困難に直面している。2007年の中間選挙で上下両院とも多数派となった民主党は、オバマ候補が大統領になれば「パーフェクト・デモクラット」の時代を迎える。そうなれば、米国民主党はブッシュ大統領、共和党政権の下で進められた富裕者層中心の経済格差拡大トレンドの修正に挑戦するだろう。

 果たして日本の政治はどうだろうか。過去の自民党のやり方(補助金と公共事業バラマキ)を超えて、野党に今日の日本経済を閉塞させている所得分配問題に挑戦する覚悟と能力が果たしてあるのか。それを試す日は、いつやって来るのだろうか。

<参考>
経済財政諮問会議 「構造変化と日本経済」専門調査会
http://www.keizai-shimon.go.jp/special/economy/index.html

「構造変化と日本経済」専門調査会 報告
グローバル経済に生きる -日本経済の「若返り」を -
平成20年7月2日
http://www.gov-book.or.jp/contents/pdf/official/590_1.pdf


「構造変化と日本経済」専門調査会第4回議事次第
平成20年4月7日
http://www.keizai-shimon.go.jp/special/economy/04/agenda.html

参考資料(内閣府)(PDF:145KB)
http://www.keizai-shimon.go.jp/special/economy/04/item3.pdf
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2008-08-20(Wed)

不動産不況の波が・・・

不動産デベロッパー 相次ぐ破たん

ミニバブルと言われた不動産投資。サブプライム問題の影響で、不況の波が押し寄せている。

不動産デベロッパーの破綻が相次いでいる。
8月に破たんしたアーバンコーポレイションは、不動産ファンド向けの物件開発で急成長。
3月のスルガコーポレーションは不動産ソリューション事業(権利調整の複雑な物件を割安に購入し、デベロッパーやファンドに転売する)で急拡大した。
7月のゼファーも不動産流動化事業(開発用地を仕込み、収益物件を開発し、不動産ファンドに売却する)に手を出していた。

こうした不動産流動化モデルの崩壊ともいえる事態を受け、事業を推進してきた政府はどう対応する気だろうか。

原油高騰による燃料高の影響を受ける漁業や農業、運輸、中小零細事業者への支援対策とは違うような気がするのだが・・・・。


ケンプラッツ  2008/08/14
【トラブル】アーバンコーポレイションが民事再生へ、負債総額2558億円

 不動産デベロッパーのアーバンコーポレイションは8月13日、東京地方裁判所に民事再生手続きの開始を申請し、受理された。6月末時点の負債総額は2558億3200万円。金融市場の混乱で資金調達が困難になるなか、他社との提携を模索してきたが合意に至らず、借入金返済や手形決済のめどがつかなくなったという。
 アーバンについては日本格付研究所(JCR)が6月4日に格付けの見直しを発表し、BBB-からBB+へと引き下げた。6月26日には、アーバンが仏BNPパリバを割当先とする300億円のCB(転換社債型新株予約権付社債)発行を発表していたが、実際の受取額は予定を大幅に下回ったことが今回明らかになった。
 調達した300億円を7月11日いったんパリバに支払い、パリバが転換後の株式を売却して得た資金の一部を1カ月程度かけてアーバンが受け取る契約だった。しかし、受け取り額は株価に連動する契約となっており、さらにアーバン株が契約における下限(当初予定250円)を割り込んだため、当初想定した金額を受け取ることができなかった。民事再生申し立てによりこの契約が終了した結果、アーバンは58億円の営業外損失を計上している。2007年10月に2000円台を記録した同社の株価は、今回の発表前に62円まで下落していた。
 アーバンは1990年に広島市で創業し、不動産ファンド向けの物件開発で急成長した。2008年3月期の連結売上高は2436億円。13日に発表した2008年第1四半期(2008年4月~6月)の売上高は499億円、営業収支は314億円の赤字だった。あずさ監査法人はこの四半期決算に関して意見不表明を発表している。3月末時点の正社員数は342人。東京証券取引所1部からは9月14日に上場廃止となる予定で、当面は営業を続けながらスポンサーを探すことになる。

2008/07/08
【トラブル】銀行が担保権行使して社長の保有株を売却、アーバンコーポレイション

 アーバンコーポレイションは7月7日、房園博行(ぼうぞのひろゆき)社長が保有していた同社株について、銀行がその担保権を行使して市場で売却したことを明らかにした。房園氏の保有割合は4.03%に低下し、アーバンにおいて10%を超える主要株主は不在となる。
 房園氏は同社株の16.60%を保有していた筆頭株主だったが、個人として金融商品や不動産に投資するため、保有するアーバン株を担保に複数の銀行から資金を借り入れた。その後アーバンの株価下落が続くと、房園氏は銀行の求めに応じて追加の株式を担保に差し入れてきたという。
 アーバンについては日本格付研究所が6月4日に格付けの見直しを発表し、長期優先債務に関してBBB-からBB+へと引き下げた。こうした状況で銀行融資による資金調達は困難さを増している。6月26日には、仏BNPパリバを割当先とする300億円のCB(新株予約権付社債)を発行する計画を発表した。
 東京証券取引所でのアーバン株の7月7日時点終値は217円で、1年前に比べて10分の1の水準となった。

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日経ビジネスオンライン 2008年8月19日 火曜日

今年最大の倒産、その引き金は
不動産市況の悪化と、ささやかれ続けた“ある関係”

最後の最後まで昔の関係が足を引っ張った。
 8月18日に民事再生手続きの開始決定を東京地方裁判所から受けた東証1部上場のアーバンコーポレイション。

 「本日、自主再建を断念しました」
 13日、民事再生法の適用を申請した際に、東京証券取引所で開かれた会見。房園博行社長は無念さを押し殺すように淡々と言った。負債総額は2558億円と、今年に入って最大規模の倒産劇となった。
 破綻の直接の要因は不動産市況の急速な悪化である。マンション分譲を生業としてきたアーバン。近年は不動産流動化ビジネスを収益の柱にしてきた。2008年3月期の連結売上高は2436億円。そのうち流動化ビジネスは約67%の1629億円を占めていた。
 テナントや借家人のいる物件や権利関係の複雑な不動産を取得、権利関係を調整したうえで収益物件を建ててファンドに売却する――。2000年以降、右肩上がりの成長を続けた多くの新興デベロッパーと同様に、不動産流動化ビジネスで急拡大を果たした。
 ところが、サブプライムローン(米国の信用力の低い個人向け住宅融資)の影響でファンドやREIT(不動産投資信託)による物件取得は激減。急成長を支えたビジネスモデルは崩壊した。しかも、今春以降は不動産会社に対する金融機関の融資姿勢は厳格化。アーバンの資金繰りは急速に悪化していった。
 3月末に452億円あった現預金は6月末には211億円に減少。なりふり構わぬ換金化のためだろうか。棚卸資産も1000億円ほど圧縮されている。困難を極めた資金調達。最後は、監査法人が2009年3月期第1四半期で監査意見を表明しない、という結論が出ることが明らかになり、市場からの退出を余儀なくされた。

300億円の調達が92億円
 経営破綻の表向きの理由はビジネスモデルの崩壊と金融機関の融資姿勢の厳格化だ。もっとも、民事再生法の適用申請まで追い込まれたのは、アーバンにつきまとった「レピュテーション(風評)」にもある。
 実は、アーバンは最後まで延命を模索していた。同社は6月末、BNPパリバに対する2010年を満期とした総額300億円の転換社債型新株予約権付社債(CB)の発行を発表した。このCB発行に関しては、民事再生法の適用申請時に明るみに出た隠れたスワップ契約があった。この契約によって、300億円のCBを発行しても、実質的には92億円しか払い込まれていなかった。情報開示の面で市場から非難の声が上がっている。
 このBNPパリバに対するCB発行と前後して、アーバンは業界他社との業務提携や資本提携を進めていた。だが、ゼファーなど中堅デベロッパーの破綻が相次ぐ中、アライアンスによる生き残り策は頓挫。その後、複数の外資系証券に対して秘密裏に資本増強の相談を持ちかけたが、すべての証券会社に断られた。
 業績不振で株価が急落している不動産会社の多くは、資本増強や他社との提携に活路を見いだしている。7月に大和証券グループ本社との資本提携を発表したパシフィックホールディングスのように、信用補完のためのスポンサー確保に成功した企業もある。

「ああいう噂のある会社にはどこも手が出せないよ」
 これらの企業とアーバンを分けた理由は何だったのか。外資系金融機関の幹部はこうささやいた。
 「ああいう噂のある会社にはどこも手が出せないよ」。外資系金融機関にはコンプライアンス(法令遵守)上、取引を禁じている企業のリストがある。この外資系金融機関はアーバンをそのリストに入れていた。それは、ある男とのつながりを疑っていたためだ。橘田幸俊氏である。
 橘田氏は2003年に2370億円の負債を抱えて倒産したゴルフ場開発会社、「愛時資(あいじし)」の代表を務めていた人物だ。国土法違反で暴力団幹部とともに逮捕された過去を持つ。経済界や裏社会にパイプを持つと言われている。この橘田氏、「2人の茂」に重用されて地歩を築いた。
 1人は旧川崎財閥の資産管理会社、川崎定徳の社長だった故・佐藤茂氏である。1986年、旧住友銀行が平和相互銀行を吸収合併した際に重要な役回りを演じたのが佐藤茂氏。企業と裏社会を結ぶフィクサーとささやかれた。そしてもう1人の茂が、東映の岡田茂・名誉会長だ。表の岡田と裏の佐藤――。この2人の支援で政財界や裏社会に人脈を構築していった、とされる。

 一方、大京の敏腕セールスマンだった房園社長は1990年、広島でアーバンを創業した。頭取や会長を務めた広島銀行の実力者、故・橋口収氏(元国土事務次官)に認められた房園氏は、橋口氏と広島銀行の庇護の下、めきめきと頭角を現していく。
 例えば、アーバンが2003年に建てた広島市内のアーバンビューグランドタワー。地上43階建て、オフィスやマンション、商業施設からなる超高層複合ビルである。アーバン躍進のきっかけになったこの大型開発では、広島銀行がアーバンを強力にサポートした。
 広島グランドホテル跡地をアーバンが取得したのは1997年のこと。土地の取得に際して、広島銀行は57億円を融資した。この時のアーバンの売上高は60億円あまり。「あまりに借り入れが過大だから、アーバンは潰れるのではないか、という噂も立った」(当時を知る金融関係者)。地元の金融関係者が驚くほどの肩入れぶりだった。
 橋口会長の後ろ盾で成長したアーバンは1998年以降、広島から東京に軸足を移していく。その時に頼ったのが橘田氏だった。
 「平成10(1998)年に東京進出を果たした際、金融機関から紹介を受けた。東京における不動産売買の助言などをしてもらった。短い期間だが、橘田氏に相談役の肩書きを使うことを容認していた時期もある。ただ、初期のごくわずかな期間のこと。その後、反社会的勢力との決別が求められたため、2006年夏に会社としても、房園個人としても橘田氏との関係は切った」。本誌の質問にアーバンの広報部はこう答えた。

まだある“爆弾”
 もっとも、それまでは不動産開発に様々な勢力を利用してきたようだ。アーバンの2000年3月期の有価証券報告書を見ると、先のアーバンビューグランドタワーの共同事業体として「共同都心住宅販売」という会社の名前が登場する。この共同都心住宅販売、今年3月の「スルガ事件」の当事者の1社である。
 この3月、東証2部上場のスルガコーポレーションが取得したビルの地上げを巡って複数の不動産関係者が逮捕される事件が起きた。暴力団関係者と関係が深いとされるこの不動産関係者に立ち退き交渉を依頼したスルガは、最終的に民事再生法の適用申請に追い込まれている。
 共同都心住宅販売はこの時に逮捕された人物が社長を務める会社。しかも、アーバンはこの会社に出資していた。アーバンは権利関係が複雑な不動産を安価に仕入れ、立ち退きを完了させた後、収益物件を建てることに長けていた。スルガよろしく、アーバンも立ち退き交渉に彼らを活用してきたのだろう。
 「反社会的勢力と思われる取引先はなかった」。先の会見で房園社長は強調した。疑いを晴らすため、今年4月には、5人の弁護士からなる外部委員会を設立、反社会的勢力とのつながりを否定する報告書をまとめた。だが、10年前の過ちがアーバンの息の根を止めた。
 「銀行が引き当てさえ積んでしまえば倒産しようが関係ない。9月末から来年にかけてまだまだ潰れる」とある金融機関の幹部は打ち明ける。反社会的勢力との関係がささやかれる企業はほかにもある。不動産バブルの膿は早めに出し切るべきだろう。
 既に、不動産デベロッパーの成長を支えた流動化モデルは崩壊した。3月のスルガコーポレーションに始まり、ゼファー(7月)、アーバン(8月)と続いた不動産デベロッパーの破綻。不動産会社を襲う暴風雨は当面、やみそうもない。

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日経ビジネスオンライン 2008年7月23日 

サブプライム余波、ついにマンション業者に波及
中堅デベロッパー、ゼファーが撃った淘汰の号砲

「えっ、それ本当」
 東証1部に上場する中堅デベロッパー、ゼファーが民事再生法の適用を申請した7月18日。「ゼファー破綻」の一報を聞いたある不動産会社の社長は、電話口でしばし絶句した後、こう続けた。「やっぱりなあ。なりふり構わずって感じだったもんなあ」。
 この社長は6月上旬、ある仲介不動産会社を通して、ゼファーの所有物件の購入を打診された。160前後の物件情報が記載されていたA3版のリスト。「いくらでもいいから、とりあえず検討してほしい」。仲介の不動産会社が勧めるままに目を通したが、その中身を目にした途端、買う気が失せた。
 北海道・ニセコスキー場のホテル用地、埼玉県鴻巣駅前の再開発――。「もう郊外や地方ばかり。少なくとも、私がマンション適地と思える用地はほとんどなかった」。ちなみに、この社長が唯一、「○」をつけたのは東京都江戸川区の物件。都内一等地の優良物件とは言えない代物だ。

なりふり構わぬ資産の叩き売り
 この数カ月、ゼファーの資金繰りは綱渡りの連続だった。2008年3月期に1091億円の売り上げを計上したゼファー。そのうちの半分は不動産分譲事業だが、残りの4分の1は不動産流動化事業による売り上げである。この不動産流動化事業、かみ砕いて言うと、開発用地を仕込み、収益物件を開発し、不動産ファンドに売却するというビジネスモデルだ。
 多くの場合、「完成予約」という形でできる前から売却先が決まっており、不動産会社にはリスクの少ないビジネスと言えた。ところが、米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)に端を発した信用不安問題が起きた昨夏以降は、状況が一変した。特に、金融機関による融資姿勢が厳しさを増した年明け以降、ファンドに対する融資の蛇口がギリギリと絞り込まれている。それが、ゼファーを追いつめた。
 もともと、ゼファーは手元流動性に乏しい。2008年3月期における連結の手元流動性は約144億円。それに対して1年以内に返済する借入金や社債、コマーシャルペーパーなどの短期の有利子負債は約550億円に達する。連結フリーキャッシュフローが260億円の赤字に陥る中、頼みの綱は1000億円を超える在庫の処分が進むこと。
 だが、サブプライムの余波でファンドに対する金融機関の融資が縮小した結果、ファンドに売却予定だった物件が売れず、開発案件の資金回収に時間がかかり始めた。年明け以降は不動産融資に対する審査そのものが厳しくなり、ゼファーにとっては新規の開発プロジェクトも進めにくい環境になってきた。
 そこにきて、5月30日には連結子会社の近藤産業が破産を申し立て、約140億円の関係会社整理損を計上した。8月には128億円の社債の償還を、そして今期中に約180億円に上る長期借入金の返済を控える。急速に悪化する資金繰り。ゼファーはなりふり構わぬ資金調達に出ざるを得なかった。
冒頭の物件売却リスト。実際は、金目の資産を換金するための投げ売りに等しい。5~6月には筆頭株主のSBIホールディングスから120億円の短期貸し付けを受けている。そして、6月27日にはSBIの全株式を売却。取得価格に対して約40億円のロスまで出して手元の現金確保に走った。だが、刀折れ、矢が尽きた。

ゼファーだけが特別なわけではない
 1994年に設立されたゼファーは、90年代後半からのマンションブームに乗って業容を広げた。わずか6年後の2000年には日本証券業協会に株式を店頭登録。2004年には東証1部に上場している。多くの新興マンションデベロッパーがそうであるように、ゼファーも低価格を武器に販売戸数を伸ばした。
 「B級グルメ」。あるマンション分譲会社の社長が言うように、ゼファーは千葉や埼玉など東京の郊外エリアを中心にマンションを分譲してきた。過去の分譲実績を見ても、松戸や船橋、成増などの郊外が目立つ。
 4月30日にNBオンラインに掲載した「首都圏マンション・本当の資産価値 【第3回】これが、新築マンションの適正価格だ」。ここで触れた「ゼファー武蔵浦和GRANDLIVES」は駅から1キロ以上も離れているが、新築分譲坪単価は147万円と武蔵浦和駅周辺では最も安かった(当時)。この案件が象徴的だが、三井不動産や野村不動産ホールディングスなどの大手があまり手を出さない郊外に、低価格の住まいを供給することで成長してきたわけだ。
 全体のパイが拡大している時はそのモデルが機能した。だが、首都圏マンション市場は既に変調を来している。
 用地取得コストや資材費の高騰などで分譲価格が上昇した結果、消費者の購入意欲は低下している。首都圏では1999年から7年連続で8万戸供給が続いていたが、不動産経済研究所によれば、2008年上半期の供給戸数はわずか2万1500戸にとどまった。急増する売れ残り在庫を前にして、換金のために転売業者に安値で叩き売るデベロッパーも増えている。
 価格は安いが立地はよくない。逆風下のマンション市場で最も影響を受けるのは、こうした郊外を主力にしていたデベロッパーだろう。しかも、ここ数年の分譲マンションの減速を補ってきたファンド向けの流動化ビジネスが事実上、崩壊している。
 「(経営破綻した)ゼファーだけが特別なわけではない」。ファンド向けの流動化ビジネスでデューデリジェンス(資産査定)業務を手がけるある会社の社長は思わせぶりに言う。
 2000年以降、「郊外」「低価格」「流動化」の3つをキーワードに拡大してきたマンション開発業者は少なからずいる。その多くが、資金繰りに窮したゼファーと同じ状態に置かれていても不思議ではない。
 今年6月には、同じ不動産会社のスルガコーポレーションが民事再生法の適用を申請した。東京都千代田区の商業ビルの立ち退き交渉に際して、暴力団に近い地上げ屋との関係が表面化。それが元で資金調達が困難になった。
 スルガコーポ破綻の直接の引き金はコンプライアンス(法令遵守)上の問題である。それに対して、今回のゼファーは不動産市場の悪化に米国発の信用不安が重なった経営破綻であり、その震度は異なる。ゼファーの破綻は、デベロッパー淘汰を予兆させるものかもしれない。

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日経ビジネスオンライン 2008年3月6日 

ファンドバブルの裏に暴力団あり
“スルガ流”ビジネスモデルが崩壊

彼らは、熱狂の時代に咲いたあだ花だったのだろうか。
 東京都千代田区麹町にあった「秀和紀尾井町TBRビル」。築30年を数えるこの古ビルを巡る立ち退き交渉を巡って、警視庁組織犯罪対策4課は3月4日、大阪市東住吉区の不動産会社、「光誉(こうよ)実業」の社長、朝治(あさじ)博容疑者など計12人を逮捕した。弁護士資格がないにもかかわらず、テナントの立ち退き交渉を行った弁護士法違反(非弁行為)の容疑である。
 光誉実業は不動産会社の依頼を受けて入居者の立ち退き交渉をするいわゆる「地上げ屋」。秀和紀尾井町TBRビルでは、東証2部上場の不動産会社、スルガコーポレーションの依頼を受け、立ち退き交渉に当たっていた。報道によれば、スルガコーポから光誉には報酬を含めて約40億円が渡った。この物件以外にも、明らかになっているだけで、スルガコーポは光誉に5件の立ち退き交渉を依頼している。
 以前から、光誉には暴力団の影がちらついていた。

嫌がらせで猛犬を放した過去も
 「朝治さんとA組(指定暴力団山口組系)の関係は、僕らの業界では有名」。大阪で立ち退き交渉を行っていた同業者は小声で囁く。
 20年以上も前から立ち退き交渉を行っていた朝治容疑者。バブル期に大阪の北新地やミナミなどの繁華街で立ち退き交渉を手がけており、「その過程でA組との関係が深まった」(先の地上げ屋)とされる。今回の事件では、光誉と暴力団山口組系幹部との間で現金のやりとりがあったと報道されており、その通りなら、スルガコーポから流れた金が反社会勢力に渡ったことになる。
 大阪時代から朝治容疑者と面識があるこの地上げ屋によれば、朝治容疑者は九州のある“組織”を抜けた後、大阪に上京し、立ち退き交渉を始めた。そのやり方を尋ねると、一言こう答えた。

 「とにかく、荒くたい(荒っぽい)ねん」
 朝治容疑者は1996年に、地上げを巡る嫌がらせで大阪府警に逮捕された。立ち退きに応じない入居者に街宣車を回したり、ドーベルマンを放したり。TBRビルの立ち退き交渉でも、(あえて見えるように)入れ墨を入れた若い衆にタンクトップを着せて歩かせる――などの威圧行為をしていたという。
 バブル経済の崩壊とともに、地上げ屋は表舞台から姿を消した。その地上げ屋が再び息を吹き返したのは1990年代後半のことだ。その要因の1つは不動産ファンドの急増である。
 1990年代後半になると、地価下落で割安になった不動産を購入する海外のファンドが増え始めた。その後、国内系ファンドも登場し、雨後の竹の子のように増えたファンドがオフィスビルやマンションを買いあさった。動き出した東京の不動産市場。大阪を地盤にしてきた地上げ屋が東上を始めたのはビジネスチャンスを嗅ぎ取ったからだろう。
こうしたファンドの旺盛な需要を満たすため、不動産開発業者は競うように物件を建築した。その結果、用地価格は高騰。取得費用を抑えるため、入居者のいる物件を安価に購入し、専門業者を使って立ち退かせるデベロッパーが相次いで出た。光誉はまさに、この専門業者。その意味では、昨今の不動産バブルが生んだあだ花である。
 そして、光誉に立ち退き交渉を依頼したスルガコーポも不動産市場の活況の中で急成長を遂げた。

“わけあり物件”の取得で急成長
 スルガコーポは入居者の立ち退きが進まない“わけあり物件”を積極的に取得するデベロッパーとして業界では広く知られていた。例えば、東京・銀座の中央通りに面したとあるビル。現在はスウォッチの路面店が入居しているが、この物件の再開発にかかわったのもスルガコーポである。
 この物件が建つ前にあったビルを米投資銀行、モルガン・スタンレー証券が購入したのは2000年のこと。ただ、立ち退き交渉が難航し、2003年にスルガコーポに売却した。一部のテナントが退去せず、難しい不動産だったが、取得したスルガコーポは半年あまりで立ち退きを完了させ、スウォッチに転売している。
 権利調整の複雑な物件を割安に購入し、デベロッパーやファンドに転売する――。2003年3月期以降、スルガはこの不動産ソリューション事業で急拡大した。
 2003年3月期に約172億円だった不動産ソリューション事業の売上高は、約209億円(2004年3月期)、約284億円(2005年3月期)、約508億円(2006年3月期)、約609億円(2007年3月期)と右肩上がりに伸びた。2008年3月期には中間期だけで778億円を計上している。2008年3月期中間決算の場で、スルガコーポは通期の売上高予想1180億円を1400億円に20%近く上方修正した。その原動力となったのは不動産ソリューション事業である。
 代表権を返上した岩田一雄会長と共に、取締役を退任した高城竜彦氏がこの不動産事業を手がけていた。住友不動産の社長や会長を務めた高城申一郎氏の親族として知る人ぞ知る存在だ。岩田会長の息子、岩田剛取締役の妻も高城氏とは血縁関係にある。
 「大阪流の熱意のある会社と思っていた」。4日夜の会見で岩田会長は光誉との取引の経緯を苦渋に満ちた表情で語った。金融機関から“フロント企業”と伝えられ、2007年に取引を打ち切ったという話だが、ソリューション事業のトップだった竜彦氏がそれまで知らなかったとは考えにくい。曰くつきの案件をまとめるにはそれなりの背景がなければ難しい。
 東証2部上場会社が絡んだ弁護士法違反事件は、ここ数年の不動産市場の過熱が生んだと言っても過言ではない。だが、米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)の影響もあり、現状の東京の不動産市場は以前ほどの熱はなく、不動産ファンドの買いは落ち込んでいる。ここ数年の不動産市場を鮮やかに彩った地上げ屋とデベロッパーの蹉跌は、不動産市場が冬景色になったことを誰の目にも明らかにした。
(日経ビジネスオンライン 篠原 匡)
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2008-08-19(Tue)

地方分権(その2)

国の出先機関の見直し 

■ 地方分権改革推進委員会
     http://www.cao.go.jp/bunken-kaikaku/iinkai/torimatome/torimatome-index.html
■ 平成20年8月1日 「国の出先機関の見直しに関する中間報告」
  ○ 本文 [PDF:281KB]  
     http://www.cao.go.jp/bunken-kaikaku/iinkai/torimatome/080801torimatome1.pdf
  ○ 概要 [PDF:27KB]
     (参考資料) [PDF:1,713KB]
     http://www.cao.go.jp/bunken-kaikaku/iinkai/torimatome/080801torimatome3.pdf




毎日新聞 2008年8月17日 東京朝刊
全国知事アンケート:国の出先「見直し」6割 道路財源使途「一般化後も道路」過半数
 ◇毎日新聞実施
 政府の地方分権改革について、毎日新聞は都道府県知事にアンケートを実施した。国土交通省地方整備局(北海道開発局、沖縄総合事務局開発建設部を含む)の見直しに約6割の28人が賛成し、国の出先機関の現状に疑問を持っていることが分かった。
 北海道開発局廃止など地方整備局の見直しの賛否を聞いたところ、「廃止も含めて抜本的に見直すべきだ」「業務・人員を大幅に見直すべきだ」との回答がそれぞれ14人で、賛成派が多数だった。「慎重に進めるべきだ」は5人で、「現状維持が望ましい」は沖縄県の仲井真弘多知事だけだった。
 政府が09年度からの一般財源化を決めた道路特定財源の使途に関しては、約6割の29人が「道路整備中心に使う」と回答。残る18人は回答を留保。「ほかの重要な用途に配分」「一般財源化自体に反対」との回答を選んだ知事はいなかった。
 ◇道州制に賛成6割
 また、現在の都道府県に代えてより広域な自治体を作る「道州制」には約6割の28人が賛成した。明確な反対は福井県の西川一誠、兵庫県の井戸敏三、奈良県の荒井正吾の3知事だった。道州制に賛成した28人のうち「賛成であり、議論を進めるべきだ」と答えた「道州制推進派」は19人。残りの9人は「どちらかというと賛成だが、地方分権改革を先行すべきだ」と答え、「どちらかというと慎重で、地方分権改革を優先すべきだ」(11人)と合わせた「地方分権優先派」が20人に上った。
 福田康夫首相の地方分権改革への取り組み姿勢に関しては「評価する」が26人で、「評価しない」は5人。16人は回答を留保した。ただし、「評価する」と答えた知事のうち24人は「地方の負担増に対する配慮がより必要」と条件を付けた。
 自治体の財源を充実させるために消費税を増税することについては21人が「賛成」と答えたが、「いちがいに言えない」も21人おり、判断が分かれた。「反対」はゼロで、5人は回答を留保した。
 小泉政権が進めた国と地方自治体の税財政を見直す「三位一体の改革」については「評価できない」が38人と8割を占めた。「評価できる」は1人。
 二酸化炭素(CO2)排出削減などを目的としたコンビニエンスストアの深夜営業規制に関しては、東国原英夫宮崎県知事ら2人が「全国一律に規制」を支持。大阪府の橋下徹知事ら9人が「自治体の判断で規制」、福岡県の麻生渡知事ら7人が「規制反対」と回答した。29人は回答を留保した。【石川貴教】
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 ◇全国47知事アンケート
    国の出先機関 道路特定財源
北海道 -      ●
青森  ▲      ●
岩手  ▲      -
宮城  -      ●
秋田  ○      -
山形  -      -
福島  -      -
茨城  ○      ●
栃木  ○      ●
群馬  △      ●
埼玉  ○      -
千葉  △      -
東京  ○      ●
神奈川 ○      -
新潟  △      -
富山  -      -
石川  -      -
福井  -      ●
山梨  △      ●
長野  -      ●
岐阜  -      ●
静岡  ○      ●
愛知  △      -
三重  △      ●
滋賀  ○      -
京都  △      -
大阪  △      ●
兵庫  ○      ●
奈良  ▲      ●
和歌山 △      ●
鳥取  △      -
島根  ▲      ●
岡山  ○      -
広島  ○      ●
山口  -      ●
徳島  △      ●
香川  △      ●
愛媛  △      ●
高知  ▲      ●
福岡  ○      -
佐賀  ○      -
長崎  -      ●
熊本  -      -
大分  △      ●
宮崎  ○      ●
鹿児島 -      ●
沖縄  ×      ●
 〇は国の出先機関を「廃止を含め見直し」、△「大幅に見直し」、▲「慎重に進めるべきだ」、×「現状維持」。●は道路財源を「一般財源化後も道路整備中心に使う」。-は回答留保、その他。

中日新聞 2008年8月18日
【社説】
出先機関見直し 地方の熱意で加速を
 国の出先機関の統廃合を目指す方針を政府の地方分権改革推進委員会が示した。今後具体論に入れば、自らの「領土」死守へ霞が関の抵抗は必至だ。政権がひるむなら地方の熱意で突破したい。
 地方分権委の中間報告を受け、福田康夫首相は「役所の利害にとらわれず政治的リーダーシップを発揮してほしい」と全閣僚に指示した。首相が好んで使うフレーズだが、実際には府省の代弁者のように振る舞う閣僚が少なくなかった。改造内閣のメンバーはまず心してもらいたい。
 出先機関見直しは国から地方への権限移譲を盛り込んだ第一次勧告に続く二次勧告の柱となる。
 国家公務員約三十三万人のうち二十一万人は全国の出先で働く。国土交通省の地方整備局や北海道開発局、農林水産省の地方農政局、厚生労働省の都道府県労働局などが主な出先で、自治体の仕事とダブる「二重行政」の分野が多すぎるというのが出発点だ。
 大臣のチェックが効きにくい一方、地域住民の意向が反映できない点も分権委は問題視する。地方整備局による道路特定財源の無駄遣いは記憶に新しい。北海道開発局の官製談合事件も同様だ。
 このため八府省十五機関が担う事務・権限を精査し、必要性のない組織の見直し策として、廃止、他の出先への吸収、府省を超えた総合的な出先への集約化などを明記した。
 事務、権限を自治体へ移譲する際は人材や財源を確保する。今回は基本方針を示すにとどめ、具体名については各府省の意見を九月から聴取した上で、年内に最終決定する方針だ。
 霞が関との攻防の最大の焦点は全国で八つある地方整備局の扱いだ。職員二万人、年間予算規模八兆円を超える“要所”だけに、国交省の抵抗は並大抵ではないだろう。谷垣禎一国交相は役所の言い分ばかりに耳を傾けず、大胆な統廃合へ先頭に立ってほしい。
 権限移譲を加速する上で欠かせないのが地方の熱意だ。住民が主役の地方自治実現への好機を、逆に重荷と受け止める空気が首長側に漂うのは理解に苦しむ。移譲へ地方が大きな声を発してこそ、分権の歯車は回転する。
 秋田県の寺田典城知事は全国知事会の現状について「もはや闘う知事会ではなくなった」と批判した。これに他の知事が反論する騒動があったが、知事同士でいざこざを起こしても仕方がない。対戦相手を間違えてはいけない。


毎日新聞 2008年8月17日 東京朝刊
社説:国の出先見直し 首相は自ら火中のクリを拾え
 改造内閣の力を測る、格好のテーマではないか。地方分権改革の焦点となる国の地方出先機関の見直しが近く、本格化する。政府の地方分権改革推進委員会を舞台に作業が進む。福田康夫首相は「(分権は)内閣の最重要課題」との認識を表明した。
 国の出先機関は地方で行政の多くの実務を仕切り、自治体と似た業務を行う二重行政の弊害も指摘されている。自治体にその事務を委ね、組織の統廃合を進めれば「分権」「行革」の一石二鳥の効果がある。中央官庁の「骨身を削る」改革が本当に可能か、現状ではこころもとない。年内の政治決着に向け、首相は今度こそ火中のクリを拾わねばならない。
 国家公務員約32万人のうち、出先機関の職員は21万人を占める。分権委がさきにまとめた中間報告では組織改編に向け、出先の業務を(1)廃止(2)地方に移譲(3)本省に引き揚げ(4)存続--に分類する指針を示した。
 特に行方を握るのは、国土交通省の出先である地方整備局と、北海道開発局の見直しだ。国道、河川など国直轄の事業を担う両者が扱う予算規模は約9兆円、人員約2万7000人に達する。地方整備局による道路特定財源の無駄遣いは、国会からも住民からも行動が監視されにくい出先機関の欠陥を露呈した。国道、1級河川の管理事務と合わせ、「ヒトとカネ」を都道府県に移譲する方向性を分権委は明確に示してほしい。
 一方で、注意すべき点もある。中間報告は地方出先機関の人員を縮小したうえで、府省の壁を越えた「総合的な出先機関(総合事務局)」に統合し、地域ブロック単位に設置する構想を示した。確かに、各省の出先を統合すれば、縦割り行政の見直しにつながるし、都道府県を地域ブロックに再編する「道州制」構想の布石ともなり得る。
 しかし、現在の各府省の出先をそのまま合併し、あたかも北海道開発局のような巨大組織が誕生した場合、分権や行革に逆行する拠点となりかねない。全国知事会が「極めて慎重な検討」を促したのもうなずける。国から地方への大幅な事務移譲による徹底した組織スリム化が前提と、くれぐれも心得てほしい。
 政府が廃止を検討している北海道開発局など、分権委は当初、見直し対象とする具体的な組織名を中間報告に記す予定だった。しかし、関係府省や一部自民党議員の反発の火に油を注ぎかねないとして見送った。年末にまとめる勧告で結論を出すが、改造内閣は「小泉路線」と一線を引いている。大胆な見直しに踏み切れるかを危ぶむ見方は強い。
 一方で、やはり分権改革を掲げる民主党も出先機関の見直しで、より具体的な対案の提示を次期衆院選に向け迫られよう。だからこそ、首相には妥協が許されぬ局面なのだ。

(2008年8月9日01時58分 読売新聞)
国の出先機関 地方移管で「二重行政」を排せ(8月9日付・読売社説)
 地方分権と行政改革の両方の観点から、国の出先機関の事務や権限を都道府県に移管する重要性が指摘されている。
 地方分権改革推進委員会が、国の出先機関の見直しに関する中間報告を福田首相に提出した。対象は、国交省の地方整備局、農水省の地方農政局など、8府省の15系統の出先機関である。
 当初は、各機関の計約400項目の事務を、廃止、地方移管、現状維持などに仕分けし、発表する予定だったが、見送られた。
 事務の仕分けは、各機関の組織見直しに直結する。自らの出先機関を存続させたい各府省の反発や混乱を避けたようだ。
 中間報告が抽象的な内容にとどまったのは残念だ。だが、重要なのは、途中経過ではない。11月ごろにまとめる第2次勧告の中身を充実させることだ。
 分権委は9月からの各府省との折衝で、出先機関の事務や権限を極力多く地方に移す方向で調整すべきだ。それに見合う職員と財源の移管も当然、欠かせない。
 15系統の出先機関の職員は計9万5000人、予算は計11兆円超に上る。特に、道路、河川行政を担当する8地方整備局は8兆円もの予算を持つ。改革の本丸だ。
 地方整備局では、道路特定財源の様々な無駄遣いが発覚した。マッサージチェア、カラオケ機器の購入や、広報名目のミュージカル上演などだ。北海道開発局では官製談合が摘発された。
 一連の不祥事の背景には、出先機関が巨額の予算を持ちながら、国会や本省の監視を受けにくいことがある。出先機関の事務は、住民に身近なものが多く、自治体との「二重行政」も指摘される。
 地方に移管すれば、地方議会や住民のチェック機能が働き、無駄の排除の一助となろう。自治体の事業を増やし、裁量権を拡大することで、地域を活性化させるという地方分権の目的も実現する。
 中間報告は、出先機関の組織見直しで、府省を超えたブロック単位の総合的機関への一元化を提言した。ただ、単なる一元化では、肥大化の恐れもある。徹底したスリム化を前提とすべきだ。
 今後、各府省や族議員の抵抗が強まるのは確実で、政治の役割が一段と問われる。
 福田首相は、地方分権改革を改造内閣の最重要課題に掲げ、担当の増田総務相を留任させた。谷垣国交相、太田農相ら関係閣僚も、各府省の権益を守るのでなく、内閣の一員として地方分権に積極的に協力することが求められる。

2008/08/05 12:30 【共同通信】
全閣僚に指導力発揮を指示 首相、出先機関見直しで
 福田康夫首相は5日午前、首相官邸で開いた政府の地方分権改革推進本部で、国の出先機関の見直しを進める地方分権改革推進委員会の中間報告を受け、「分権改革は内閣の最重要課題だ。役所の利害にとらわれず、政治的リーダーシップを発揮して先頭に立って取り組んでほしい」と全閣僚に指示した。
 推進本部では、各府省の対応として(1)出先機関の事務権限の廃止や地方への移譲などを今後検討する(2)分権委の調査審議に協力する-の2点を確認。谷垣禎一国土交通相は、分権委の第1次勧告に盛り込まれた直轄国道と1級河川の管理権などの地方移譲について、「関係自治体との調整を踏まえ、真摯かつ前向きに対応したい」と述べた。
 これに先立ち、分権委の丹羽宇一郎委員長(伊藤忠商事会長)は、分権委が1日に決定した出先機関見直しの中間報告を首相に提出した。


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2008-08-18(Mon)

「道路行政等改革基本法案」の素案  民主党

資料) 道路特定財源の一般財源化


日経新聞 2008年8月15日

道路整備・補修の事務、都道府県に移管明記 民主が法案素案  公約にも反映

 民主党は揮発油税などの暫定税率廃止や道路特定財源の一般財源化などを盛り込んだ「道路行政等改革基本法案」の素案をまとめた。道路整備・補修などの事務を国土交通省の出先機関である地方整備局から都道府県に移管する規定も明記。揮発油税などの本則分は地方税とし、地方自治体の財政基盤の強化に役立てる。
 臨時国会での成立を目指し、党国土交通部門会議で詳細を詰める。次期衆院選の政権公約(マニフェスト)にも法案の内容を盛り込む。(07:01)
 道路事務は法施行直後に移管する。三年後には河川、空港、港湾関連の事務も都道府県に移し、地方整備局は事実上廃止する。
政府の公益法人改革を踏まえ、行政経費の無駄遣いを排除する方策の検討も盛り込んだ。道路特一別会計から交付金を受け取る国交省所管の公益法人が一般法人となる場合は、保有する財産をすべて国に返還させることも検討する。

道路行政等改革基本法案の骨子
  ▼道路特定財源の改革
  ・道路特定財源を一般財源化し、道路整備などの権限を都道府県に移管
  ・揮発油税などの暫定税率を廃止し、本則部分は地方税に
  ▼社会資本整備の整理合理化
  ・道路整備計画を抜本的に見直し
  ・天下り団体の管理を厳格化
  ・河川や港湾などの事務を3年後に地方に移管
  ▼高速道路を無料化

<参考>
“道路特定財源の一般財源化”をめぐる政府与党と民主党の態度
http://ajimura.blog39.fc2.com/blog-entry-7.html

民主党の道路特定財源制度改革  (※2008年5月15日までの資料)
http://www.dpj.or.jp/special/douro_tokutei/index.html
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2008-08-18(Mon)

地方空港活性化に交付金

交付金で活性化するのか?

地方空港は需要予測を過大に見積もり、各地に造られた。
地方空港の経営が行き詰っているのは、航空会社が、燃料代高騰などで、路線廃止・縮小しているからだ。
もともと、過大な見積もりで無理を重ねてきただけに、当然の成り行きかもしれない。

大事なことは、もう一度、一から考え直してみるべきではなかろうか。
なぜ、課題見積もりをしてまで空港建設に走ったのか。その責任の所在は。赤字負担を継続してまで経営を続けるべきなのかどうか。工夫や努力によっては、経営健全化が可能なのかどうか・・・・などなど。
その際、住民参加を前提にすべきことは言うまでもない。地方活性化の主体は、住民だ。

仮に、地方空港の活性化が必要だとして、「交付金」制度が有効かどうか。
「国交省は、空港を使った物流強化のための施設整備や、乗り換え客を地域の観光地に案内するバス事業などを対象事業に想定。」としている。

一般市民向けバス路線は、どんどん廃止され、住民の足が奪われているのが現状だ。地域公共交通活性化の法案もつくったが、バス路線維持の補助金もわずか80億円だ。
空港向けバス事業を支援するのなら、地方の衰退した公共交通を活性化する中に位置づけるべきではなかろうか。


朝日新聞 2008年8月17日12時25分
地方空港活性化ねらい交付金 国交省が制度創設へ
 国土交通省は、厳しい経営状況にある地方空港の活性化や、空港周辺の地域振興策への交付金制度を創設する方針を固めた。地元の創意工夫を促し、空港の活性化を狙う。ただ、そもそも空港の造りすぎが経営不振の原因だとの指摘もあり、安易に交付すれば「新たなバラマキ政策」との批判も出そうだ。
 09年度予算の概算要求で、約2億5千万円を盛り込む。
 今年の通常国会で改正された空港整備法(現・空港法)には、空港ごとに自治体や地元経済団体、空港管理者らでつくる協議会の設置が盛り込まれた。この協議会が事業案をまとめ補助を申請。国交省が認めた事業に、空港整備のための特別会計から事業費の最大50%を交付する。
 国交省は、空港を使った物流強化のための施設整備や、乗り換え客を地域の観光地に案内するバス事業などを対象事業に想定。認定する事業は年間数件になる見通し。
 国内には97の空港があるが、大半が厳しい経営状況だ。さらに航空各社が今、原油高騰を受けて不採算路線からの撤退や減便を進めており、着陸料や施設利用料収入の減少で今後、厳しさが増しそうだ。(大平要)
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2008-08-17(Sun)

資源としての「水」を考える

資料) 水資源

朝日新聞 2008年8月17日(日)付

社説:世界の水危機―日本の節約技術の出番

 「水の惑星」といわれる地球だが、水の大半は海水だ。淡水は極地の氷を含めて約3%にすぎない。その貴重な淡水が人々の生命や生活、経済発展を支えてきた。
 だが今、人口の増加や食糧の増産、工業開発などによって、世界の各地で水不足が深刻になっている。
 まず、飲み水や衛生を保つための水を見てみよう。そうした生活水は1日に最低20リットルは必要とされる。シャワーを2分も浴びれば流れてしまう量だが、その水を手に入れることができない人がアフリカや中国、インドの奥地などに11億人もいる。

■使い過ぎで枯渇も
 その多くは1日に5リットルぐらいで暮らす。日本人が300リットル以上使っているのに比べ、あまりにも大きな差がある。水不足に苦しむ地域の多くは、もともと水道や井戸の設備が貧弱なうえに、人口が増えている。
 農地化や工業化が進むにつれ、水が足りなくなるケースもある。
 中国の黄河では、農業用水や都市用水を取り過ぎて、水流が河口まで届かない「断流」が相次いでいる。
 米国中西部は、巨大な地下水層を水源に「世界のパンかご」といわれる大農業地帯に発展してきた。ところが、水をくみ上げ過ぎたため、いまでは枯渇が心配されるようになった。
 心配なのは、この水危機に地球温暖化の影響が加わることだ。世界の気象が極端になり、大雨の地域はさらに雨が増える一方で、渇水の地域は水不足がもっとひどくなるといわれる。
 「20世紀の戦争が石油をめぐる戦いだったとすれば、21世紀は水をめぐって戦われるだろう」。1995年にセラゲルディン世界銀行副総裁がおこなった不吉な予言は、あながち絵空事ではないのかもしれない。

■節水へ「青の革命」を
 水不足に対し、これまでは大規模なダムや水路を建設し、利用できる水を増やそうとしてきた。
 確かにインフラの整備がまだ必要なところもあるだろう。しかし、目先の利益しか考えず、自然に無理な負担をかけて取水すると、しっぺ返しを受ける。黄河や米国中西部が典型例だ。
 ここは水の有効活用にもっと目を向ける必要がある。
 そこで、洞爺湖サミットのG8首脳宣言に盛り込まれた「統合的水資源管理」に注目したい。農業用や工業用などとバラバラに扱うのではなく、生態系への影響も考え、政府や自治体、住民が協力して水を管理し、需給のバランスを図る。そんな考え方だ。
 途上国の水不足の地域も、もとから水がないわけではない。水道や井戸の管理が不十分なうえに、排水を垂れ流して、貴重な水源を失っているようなところが多い。水をむだにせず、再利用できるようにすることが大切だ。
 具体的には、水道管の漏れを減らす。井戸や川の汚染を防ぐ。いったん使った生活用水を農業用水に回す。節水を促す料金体系にする。そうしたことが考えられる。
 地味な節水技術と思われるかもしれないが、これなら途上国でも十分実行できる。むやみに水資源を開発しないだけに、自然への打撃は小さい。
 こうした水を効率的に使う発想への転換を、米国のシンクタンク、ワールドウオッチ研究所の元副所長サンドラ・ポステル氏らは「青の革命」と呼ぶ。品種改良などで穀物生産を伸ばした「緑の革命」をもじった名称だ。
 「一滴の水を生かせ」というポステル氏が実践例に挙げるのは、イスラエルの農地で開発された点滴灌漑(かんがい)だ。表面に小さな穴の空いたチューブを地中に埋め込み、最小限の水と肥料を根に注ぐ。これで水の使用量を30~70%減らすことができる。

■輸入食糧も水を食う
 「青の革命」を広めるうえで、日本の出番はたくさんある。世界でトップ級の節水技術を持っているからだ。
 上水道の漏水率は1割以下、工業用水の回収率は8割だ。トイレや洗濯機の水使用量も20~30年で半減した。水を田に順番に回す番水の伝統もある。
 支援の実績もある。国際協力機構(JICA)の要請で、カンボジアの首都プノンペンの水道復興を手助けしたのは北九州市の水道局だ。1300キロの配水管網を細かなブロックに分けて管理し、漏水や盗水を見つけやすいようにした。消毒技術も指導し、「そのまま飲める水」として好評だ。
 北九州市は78年、大渇水で170日の給水制限をした。その経験から磨いてきた水管理のノウハウが生きた。
 バングラデシュでは、東京都墨田区の市民グループが雨水の利用を広げる活動をしている。雨水を集めるため、現地にたくさんある竹を使って雨どいをつくるなどの工夫をこらす。
 日本では、時折見舞われる渇水のときを除けば、水危機はひとごとと思われがちだ。
 しかし、日本は外国の水を大量に使っている。輸入食糧の生産に使われた水も一緒に輸入したと考えると、膨大な量になるからだ。これはバーチャルウオーター(仮想水)といい、東大の沖大幹教授によると、年間640億立方メートルで、国内の灌漑用水を上回る。
 食糧自給率を上げて仮想水の消費を減らしつつ、食糧輸出国での節水や有効利用に協力する。そうしたことも日本に求められている。

<参考>
「水に関する世論調査」
世論調査報告書 平成20年6月調査
内閣府大臣官房政府広報室
http://www8.cao.go.jp/survey/h20/h20-mizu/index.html

<参考>
「平成20年版日本の水資源について」
~ 総合的水資源マネジメントへの転換 ~
平成20年8月
国土交通省 土地・水資源局水資源部
http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/hakusyo/H20/index.html
 
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2008-08-15(Fri)

ALWAYS 続・三丁目の夕日&パッチギ! LOVE&PEAC

なつかしき経済成長時代の日本  素朴で前向きなだった

どちらも続編だが、時代は1960~70年代。経済成長の中で豊かで明るい日本の未来を展望できた時代でもある。
なぜ、こういう映画が面白く、ヒットするのだろうか。
今の日本にない“もの”があるからではないだろうか。



ALWAYS 続・三丁目の夕日
ALWAYS 続・三丁目の夕日

内容紹介
日本中を感動の涙で包んだ、あの三丁目の人々が帰って来た!
すべての日本人に贈る、笑いと涙がたっぷり詰まった国民エンタテインメント映画!

第29 回日本アカデミー賞を総なめにし、「昭和」ブームを巻き起こすなど“映画”という枠を超え社会現象にまでなった『ALWAYS 三丁目の夕日』が続編を熱望する声に応えて帰ってきた!!前作の高い評価を受け、公開前から話題沸騰、幅広い世代の支持を得て観客動員370 万人を突破し、前作の記録を大きく上回った。
また第31 回日本アカデミー賞でも優秀賞を計12 部門(13 人)受賞し、主演・吉岡秀隆はシリーズ2 作連続で最優秀主演男優賞を受賞した(日本アカデミー史上初の快挙)。

【キャスト】
吉岡秀隆/堤真一/小雪
堀北真希/須賀健太/小清水一揮
小日向文世/もたいまさこ
三浦友和(特別出演)/薬師丸ひろ子

【スタッフ】
原作:西岸良平「三丁目の夕日」(小学館 ビックコミックオリジナル連載中)
監督・VFX:山崎 貴
脚本:山崎 貴・古沢良太
音楽:佐藤直紀
主題歌:「花の名」BUMP OF CHICKEN(トイズファクトリー)
製作:「ALWAYS 続・三丁目の夕日」製作委員会
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パッチギ! LOVE&PEACE
パッチギ! LOVE&PEACE

内容紹介
あの、井筒和幸監督『パッチギ!』の第二弾! 感動もスケールもパワーアップして帰ってきた!
【STORY】
アンソン(井坂俊哉)と家族たちは、病にかかった息子チャンスの治療のために東京に移り住む。
キョンジャ(中村ゆり)はふとしたきっかけから芸能界に身を置く事になり、先輩俳優の野村(西島秀俊)と出会い強く惹かれ合っていく。
一方アンソンは、元国鉄員の佐藤(藤井隆)と共に、チャンスの為に無謀な計画を企てていた。
キョンジャと野村の恋愛の行方を縦軸に、アンソンと佐藤の友情と挑戦を横軸にし、変わりゆく大きな時代の荒波の中で、運命に翻弄される人々の“生きざま”を織り上げていく。果たして彼らの前にはどんな“河”が横たわっているのか。
そして、彼らは乗り越える(パッチギ!)事が出来るのか?

解説: 大ヒット作『パッチギ!』のキャストを一新し、さらにパワーアップした、涙と笑いの感動作第二弾。今回は舞台を京都から東京に移し、三世代に渡り受け継がれる壮大な家族史と命の輝きを描く。2200人を超えるオーディションで見事主役に抜てきされた『GO』の井坂俊哉と『さくらん』の中村ゆりが、前回の俳優たちに負けない熱演をみせる。井筒監督が自身の前作を超えると豪語する熱い人間ドラマに胸が締め付けられる。(シネマトゥデイ)

出演: 井坂俊哉 西島秀俊 中村ゆり 藤井隆 風間杜夫

監督: 井筒和幸
製作: 李鳳宇 河合洋 キム・ウテク 西垣慎一郎 川崎代治 千葉龍平 冨木田道臣
脚本: 井筒和幸 羽原大介 羽原大介
撮影: 山本英夫
音楽: 加藤和彦
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2008-08-15(Fri)

医療制度を考える映画 シッコ

シッコ

シッコ

夏休みは、ガソリン高騰のあおりを受けたわけではないが、帰省もせず、家でのんびりDVD映画鑑賞。昨年、観る機会がなかった映画をツタヤで借りて数本見た。その一つが「シッコ」だ。

人命よりも金儲けを優先するアメリカの医療保険のひどさとイギリスやフランス、そしてキューバの医療費無料制度が対比され、この違いは何なのかと考えさせられた。

わが日本は、国民皆保険制度ではあるが、高い医療保険料など、どちらかといえば、アメリカ型に近いと思う。実際、日本でも保険会社の保険金未払いが大問題になった。

「後期高齢者医療制度」の実施など“地獄の沙汰も金次第”という事態が日本でも散見される。
地方を中心に病院がなくなる、医師が不足する、救急患者が受け入れ先がなく、たらいまわしにされたあげく間に合わずに亡くなる。などなど

小泉「構造改革」路線の旗振り役であった「竹中平蔵」という「経済学者」が、アメリカ型市場競争を日本にも持ち込んできた。

マイケル・ムーア監督によるドキュメンタリー映画だから、見て面白いように構成されているが、この日本においても決して非現実的ではない、と思いながら観た映画だった。



内容紹介
「ボーリング・フォーコロンバイン」(02)、『華氏911』(04)の“アポなし突撃男”マイケルムーア監督、
3年ぶりの待望の新作!!

Amazon.co.jp
突撃取材で知られるマイケル・ムーア監督が、米国の医療問題にザックリとメスを入れた衝撃のドキュメンタリー。
 国民健康保険が存在しない米国では、民間の保険に加入することがベストだと思われているが、実際は保険会社は利益重視で、いざ保険金となると、過去の病歴をあげ、手術を実験的だと判断し…と、できるだけ保険金がおりないように画策する。そして何人もの人間が命を落としていく。入院費用が支払えないからと病院を道に捨てることもある!と、驚くような米国の医療問題を悪質な医療制度の被害者の取材から、ムーアは切り込んでいく。
 政治家と保険会社の癒着、ニクソン時代に遡った医療制度の問題点などを赤裸々に映像で語り倒し、そしてフランスやイギリス、キューバなどの充実した医療制度を比較する。ムーアの視点はあまりにも一方的な危なさはあるが、見て見ぬふりをしてきた問題を掲げる勇気は立派だ。ただ医療制度を変えることができないのはなぜか、政治家と保険会社の癒着だけが問題なのか、疑問点は残る。マシンガントークのような映像とナレーション、そのわかりやすい演出に圧倒され、まるごと信じてしまいそうになるが、見ている方にも冷静さは必要かもしれない。とはいえ、わが国と比べたり、調べたり、もっと知りたいという意欲にがる、いろいろ考えさせられる映画であることは確かだ。(斎藤香)

解説: 『ボウリング・フォー・コロンバイン』がアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門に輝き、『華氏911』でカンヌ映画祭パルムドールを受賞したマイケル・ムーアの新作ドキュメンタリー。大いなる矛盾を抱えるアメリカの医療システムに、さまざまな観点からメスを入れていく。9.11同時多発テロ事件の際に活躍した消防隊員たちが治療を拒否され、今も衰弱性疾患に苦しんでいる事実を見つめるなど、ムーアらしい切り口にも注目だ。(シネマトゥデイ)

あらすじ: ドキュメンタリー監督マイケル・ムーアが、4700万人の無保険者だけではなく、保険料を支払っている数百人にもマイナスの影響を及ぼすアメリカの医療システムの実態を明らかにする。カナダ、イギリス、フランスを訪れ、国民全員が無料医療の恩恵を受ける国の事情を見つめながら、アメリカの混乱した医療制度を浮き彫りにしていく。(シネマトゥデイ)

映画レポート
「シッコ」
“地獄の沙汰も金次第”な医療状況にメスを入れたM・ムーアの新作
 「ボウリング・フォー・コロンバイン」や「華氏911」でのマイケル・ムーアの主張には賛同しかねるという人間でも、国民が金のことなど心配せずに病気や怪我の治療ができる社会が理想的であるということに反論できる人は居ないのではないだろうか。ムーアの新作「シッコ」の強みはまさにそこにある。  国民健康保険のような国民皆保険制度が無いアメリカでは、06年の統計で、就業していない成人の58%近くが、就業している成人でも23%近くが、健康保険を持っていないという結果が出ている。一方、親子3人で月額800ドルの健康保険料を支払っている我が家族(カリフォルニア在住)にしても、救急車に10分間乗っただけで1,000ドルとられたことがある。こんなケースはザラにあるから、「シッコ」の中でムーアが紹介するアメリカの医療現場での悲劇やホラー・ストーリーは、アメリカ人観客の多くにとって他人事ではないに違いない。  「シッコ」の中でイギリスの政治家トニー・ベンが「持てる者が持たざる者の面倒をみる。これこそが民主主義というものだ」という実にまっとうな意見を述べているが、“世界で民主主義を推進している”はずのアメリカの“地獄の沙汰も金次第(英語ではWho pays the physician does the cure.「シッコ」のテーマにピッタリ!)”な医療状況には、ムーアと共に大いに疑問を感じざるを得ないのである。(荻原順子)(eiga.com)
[2007年08月23日 更新]
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2008-08-14(Thu)

マイナス成長 景気後退裏付け

最大要因は消費低迷、打開の道は大企業から家計支援への転換

マイナス成長で景気後退が裏付けられた。
大企業の輸出に依存してきた「実感なき景気回復」が、サブプライムローン破たん、投機マネーによる原油等高騰などアメリカ中心の世界経済の減速で、その虚像が表にあらわれてきた感じだ。

新聞各社が、 消費に減少がマイナス成長の要因で、その原因には、賃金が上がらない、社会保障不安などがあると分析。景気回復のカギは、家計への支援だという。

大企業はこの間、大儲けしたのだから、労働者の賃金を上げろ、政府は社会保障制度を改善した不安を取り除け、など当然の主張だ。

ところが、実態はどうか。あいかわらず、大企業や金持ち減税や消費税増税を主張する政府幹部がいる。新聞各社も正面から批判しない。

マスコミの姿勢にも問題がある。「構造改革」を逆行させるな、などと主張する。燃料高騰分の補てんなどを「ばらまき」とひとことで表現する。規制緩和は相変わらず推進せよという。

経済政策の軸足を、大企業から、家計支援に、いまこそ転換するべきだ。





日経新聞 2008年8月14日
社説1 マイナス成長は改革を促す警報だ(8/14)
 予想された通り4―6月期の国内総生産(GDP)は年率で実質2.4%減と、1年ぶりのマイナス成長になった。日本経済は昨年末から後退局面に入った、というエコノミストらの見方を裏付けた。
 米国の金融混乱や原油高に端を発した世界経済の減速が及んできている。景気は循環するのでいずれはよくなるが、住宅バブルの崩壊による米景気の低迷が深刻なこともあり、いつ底を打つのか読みにくい。戦後の景気後退局面は平均16カ月だが、今回は長引くかもしれない。
 しかも、今回の景気後退は人口減少や高齢化、世界的な資源・食料価格の上昇といった大きな変化のなかで起きている。次の回復を力強いものにするためには、今こそ企業や政治家はじっくり腰を据えて、経済の体質改善に取り組む時期だろう。
 何に取り組むべきなのか。今回のGDP統計にヒントを見て取れる。例えば全体の6割弱を占める個人消費(家計最終消費)は年率で2.1%減。GDP減少分のほぼ半分を占めた。家計に元気がないのだ。
 その背景に賃金の低迷がある。
6月の現金給与総額は前年同月を0.6%下回った。輸出産業が米経済の不振の影響を受けているだけではない。給与総額が前年比横ばい圏内でずっと推移している事実から、製造業を中心に多くの業種で競合先のアジア新興国との競争が激しくなり、その低賃金に影響されていると考えられる。また医療、年金制度への不安感から高齢者らが財布のひもを締めているという見方もある。
 さらに総合的な物価の指標であるGDPデフレーターのうち国内需要のデフレーターは前年同期比で0.6%上昇と、資源高を映して上がっている。事業の採算は悪化し、需要減と相まって企業の設備投資は2四半期続けて前期比マイナスだ。
 これらを考えると、アジア新興国とまともに競合するような従来型の加工貿易的ビジネスは厳しくなっている。技術集約型で付加価値の高い分野に経営展開しないと給与も消費も伸びない。そのために高度な外国人材の受け入れ促進や若者らの職業訓練、起業を促す税制の整備など、政府がなすべきことも多い。
 政府はまた医療、年金、介護などの制度を整え、その運営体制を改善することを通じて消費者の将来不安をぬぐう必要がある。
 いま政府は経済対策を検討中だ。目先の対策ではなく、世界経済の構造変化に日本経済を適応させるための抜本策が要る。景気後退期にこそ次の飛躍に備えておきたい。

朝日新聞 2008年8月14日(木)付
社説:
マイナス成長―民間の実力が試される
 戦後最長の回復軌道にあった景気が後退期へ入ったことがはっきりした。4~6月の実質国内総生産(GDP)が、年率換算で2.4%減と4四半期ぶりのマイナス成長になった。
 ずっと景気を支えてきた輸出が13四半期ぶりで減少に転じたほか、もう一本の柱だった設備投資もマイナス、個人消費も7四半期ぶりに減少した。主力打者やエースがそろってスランプに陥った野球チームのようだ。
 もとより景気に浮き沈みはつきものだ。過熱すればどこかでブレーキがかかるし、低迷しても過剰在庫などが整理されればいずれは浮上する。循環するのが景気というものだ。
 しかし今回は、単純に循環任せにはできない。構造的な問題が不振の背景にあり、心して取り組まないと長期化する恐れがある。
 まず、最大の輸出先である米国の景気が、サブプライム問題をきっかけに長い後退局面に入った可能性が高い。とすると、日本の主力商品である自動車や電気製品も打撃を受ける。輸出が減れば、国内の設備投資も減速するという悪循環に陥る。
 もうひとつの問題は資源の高騰だ。国際通貨基金(IMF)などによると、07年に日本から海外へ流出した所得は、世界最大の1965億ドル(約23兆円)に達した。原油などの輸入価格が高騰したのに、工業製品の輸出価格が上がらなかったためだ。
 逆に、サウジアラビアなど中東13カ国への所得の流入は1571億ドルとなった。日本など工業国のもうけが資源国へ吸い取られた勘定になる。
 米国は不振でも、資源国にはお金が余っている。そこへ日本製品を売り込んで取り戻すよう、企業は販路拡大の工夫や人材養成などに一段と力を入れなければならない。
 輸出以外では内需、とりわけ個人消費に期待したいところだ。ところが、長く賃金が低迷しているなかで、原油高・穀物高の打撃を受けて、財布のヒモを固くし始めている。
 一方で企業は、長期の好況で利益を膨らませてきた。法人企業統計では、全企業の経常利益は底だった98年の21兆円から、06年は54兆円へ拡大した。賃金を抑え非正規雇用を増やして人件費を削りつつ、株主配当や内部留保を手厚くしてきた結果である。
 これでは消費がしぼむ。企業が利益をためてきたのは、不況への備えでもある。その備えを使い、雇用条件を改善して人材を育て、新たな成長の芽を見つけて投資する。逆風のときこそ企業など民間の実力が試される。
 次の総選挙を見据え、与党は大型補正予算を組む方針で一致した。だが、過去の景気対策はどれも一時しのぎにしかならず、国債という重いツケを残したことを忘れてはならない。

毎日新聞 2008年8月14日 東京朝刊
社説:マイナス成長 元気な家計が何より大事だ
 今年4~6月期の日本経済は物価上昇を除いた実質で前期比0・6%、年率2・4%のマイナス成長だった。このマイナス幅は01年7~9月期の1・1%以来の大きさだ。
 政府は8月の月例経済報告で、景気の基調判断から「回復」を外し、後退局面入りを実質的に認めた。4~6月期のマイナス成長はこのことを跡付けていると解釈できる。
 では、7~9月期以降も、景気はさらに落ち込んでいくのか。景気動向を最も反映するといわれている鉱工業生産は昨年秋から年末時点でピークを付けていた。企業の設備投資も製造業では昨年前半に天井を打っている。生産や投資を支えている輸出も昨年秋以降、弱含んでいる。
 昨年末から今年初めの時点に景気の山があるとみるのが自然である。そうだとすれば、4~6月期や7~9月期は景気後退の影が広がる時期である。
 需要項目別で、個人消費も民間企業設備投資も公共投資もマイナスになっているのはそのためだろう。
 今年半ばには在庫調整局面に入っているとみられることからすれば、米国景気のもう一段の悪化などがなければ、生産活動の低下は遠からず底を打つ可能性が高い。もともと、企業の研究開発や新規事業への投資意欲は根強いのだ。
 政府部門は公共投資削減政策が続いていることや、公共サービス抑制などの影響で引き続き成長にはマイナス要因として働き続けるだろう。
 そこで、あらためて注目されるのが家計だ。国内総生産の約6割を占める個人消費が着実に年率2%程度伸びていけば、経済全体でも外需や政府支出などの寄与も含め、同水準の成長は可能となる。ところが、4~6月期の個人消費は前期比0・5%減だ。最近でも1~3月期の同0・7%増を除けば、低迷している。所得の伸び悩みが最大の要因である。加えて、消費者はこのところの生活関連物資の値上がりで買い控え傾向を強めている。
 02年2月からの景気拡大は外需依存が特徴だ。現状でも、米国経済の動向が最も気になるように、国内よりも海外に目が向く。これはおかしい。
 どうやって家計を元気にするのか。このことに知恵を絞るのが経済運営を担当している政府・日本銀行の仕事だ。これまでの経験に照らしても、中途半端な減税では効果が一部に限定されるうえ、財源のあてもなく実施することは財政状況をさらに悪化させるだけだ。物価対策でもこれといった名案は浮かんでいない。
 家計が安心して消費する環境とは、雇用に心配がなく賃金もまずまずの水準にあることだ。こうした状況は政府だけでは作れない。景気回復のカギは家計と肝に銘じ、企業も努力しなければならない。

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2008-08-14(Thu)

地方道路整備臨時貸付金 新たな制度だが

「一般財源化」との関係どうする?

「本制度は平成20年度に創設された制度」だ。
根拠法は来年度からの一般財源化と矛盾すると批判されながら再議決した「道路財政特別措置法」だ。
「地方道路整備臨時交付金」も同じ法律を根拠としている。
一般財源化の際には改定されるはずだが、どうするのか決ってはいない。

道路整備に使い道を限定した財源として残すことは、「一般財源化」とは相容れない。
地方に財源を移したとしても、「道路だけしか使えないよ」というのでは、いただけない。

筋を通すならば、地方道路整備臨時交付金も、この貸付金もなくすべきだろう。
もともと、道路特定財源制度を前提としている制度設計でもあり、その制度をなくすのだから。

ただし、地方の財源が削減されることになるのも事実で、この手当も必要だ。
地方が、「何でも使える」一般財源として、臨時交付金等相当額を地方に税源移譲すればいいのではなかろうか。


平成20年度 地方道路整備臨時貸付金の配分について
http://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_000010.html
平成20年8月13日

 地方公共団体の財政負担の軽減と平準化を図るため、平成20年度の地方道路整備臨時貸付金の配分を実施します。

1. 地方道路整備臨時貸付金の制度概要
道路整備にあたり必要となる地方負担の軽減、平準化を図るため、地方公共団体が直轄事業、補助事業及び地方道路交付金事業に伴い負担する額の一部に対して、無利子の貸付けを行うものである。
なお、本制度は平成20年度に創設された制度である。

・ 根  拠  法 : 道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する
法律第6条
・ 対 象 団 体 : 前年度に普通交付税の交付を受けた地方公共団体
・ 貸付対象範囲 : 直轄事業、補助事業、地方道路整備臨時交付金事業の
地方負担の一部(新設又は改築事業に限る)
・ 償 還 期 間 : 20年以内(据置期間5年以内含む)

2. 配分額
  国 費  :  1,000億円
                                                       以上
添付資料
平成20年度 地方道路整備臨時貸付金 都道府県別配分額(PDF ファイル)
http://www.mlit.go.jp/common/000021624.pdf

お問い合わせ先
国土交通省 道路局 企画課 (予算関係) 
TEL:(03)5253-8111 (内線37522)
国土交通省 道路局 地方道・環境課 (制度関係) 
TEL:(03)5253-8111 (内線38132)
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2008-08-13(Wed)

関空 もともと需要予測が過大だった 

燃料高で露呈 過大な目標設定

燃料高で、日航、全日空が路線縮小している。
国内・国際合わせて30路線に上る。
地方にとっては、路線廃止=地方衰退を加速するものと言えなくもない。

しかし、もともと需要予測を過大に設定してまで、空港づくりを進めてきた結果、今回の燃料高で不採算・非効率な空港整備事業があぶりだされたと見てとれる。

とりわけ、関西国際空港二期事業は、その典型だった。
今回、施設整備費の予算を要求しないという。当然だ。

二期事業そのものが、過大な需要予測にものだと批判され続けた。
それでも、無理やり強行した。まず、そのことから反省すべきではないだろうか。


(2008年8月13日02時09分 読売新聞)
航空路線縮小 効率的な航空網を作り直せ(8月13日付・読売社説)
 空の便での帰省は、今年の夏が最後になる人も少なくないのではないか。日本航空と全日本空輸が10月以降、国内と国際線合わせて30路線を縮小することを決めた。
 直接の理由は燃料代の高騰だ。ジェット燃料価格は昨年平均より7割以上高い。日航の今年度の燃料代は前年度より1200億円近く増える見通しだ。これでは不採算路線の縮小もやむを得まい。
 甘い需要見通しに基づいて空港を造りすぎ、非効率な航空路線の存続を許してきたツケが、燃料高であぶり出された面もある。今回の路線縮小を、効率的な航空網を作り直すきっかけにすべきだ。
 日航は国際3路線、国内12路線を廃止する。全日空は初めて国際線に進出したグアム便から撤退する。国内線の減便も両社あわせて12路線にのぼる。年度途中としては、過去にない規模の縮小だ。
 廃止・減便される30路線のうち18路線が、国際拠点空港である関西、中部国際空港の発着便だ。航空網の中核となる拠点空港の路線も、もはや聖域ではないということだろう。
 国内路線の2割を一気に失う関空は、廃止路線の復活を求めるという。だが、航空各社は利用者が多い羽田路線へのシフトを進めている。関空の収益性向上がなければ、復活は難しい状況だ。
 関空路線の収益悪化は、近隣の伊丹、神戸空港との棲(す)み分けが進まないことも大きな要因だ。国と関係自治体は、3空港の役割分担をはっきりさせて、関西の航空網の青写真を示すべき時だろう。
 関西以外でも事情は同じだ。全国には100近くの地方空港があり、路線や客を奪い合っている。ほとんどの空港が赤字なのに、来年以降、さらに静岡、茨城両県にも空港ができる。
 存続のあてのない路線誘致にすがることは、もう許されまい。路線を近隣空港と譲りあうなど、大胆な運営見直しが必要だ。
 赤字を垂れ流さない経営も不可欠だ。路線誘致のため、搭乗率が基準を下回った場合は航空会社に現金を支払う「搭乗率保証」制度の導入を検討中の空港もある。
 しかし、これでは住民の負担を増やしかねない。路線の必要性を第一に考えるべきだ。
 廃止される中には、搭乗率が採算確保の目安となる70%を超えている路線もある。航空会社にも小型機への切り替えや割引運賃の見直しなど、工夫の余地がある。利用者の足を奪う路線縮小を急場しのぎに使ってはならない。

産経新聞 2008.8.13 00:31
国交省、関空2期島の施設整備費用要求せず
 日本航空と全日本空輸による関西国際空港発着便の大幅な縮小計画を受け、国土交通省が平成21年度の政府予算で、「2期島」関連の施設整備費用を要求しない方針を固めたことが12日、分かった。予算の前提となる年間発着回数の目標達成が、きわめて難しくなったためだ。
 昨年8月、2期事業のうち、第2旅客ターミナルビルや2本目誘導路などの整備を後回しにして、第2滑走路だけが暫定的にオープンした。20年度予算では、貨物施設の整備が一部認められ、駐機スポット5機分の整備費として35億5000万円(国費は15億円)が盛り込まれた。
 関空会社は当初、21年度予算で、ターミナルビルと2本目誘導路の地盤整備費の獲得に意欲を燃やしていたが、一度予算がつくと、総額600億円程度が必要とされるため、航空各社の路線縮小の動きを受け、要求そのものを断念し、貨物施設の拡充に絞る戦略に転換した。
 しかし、8月上旬に日航と全日空が発表した路線縮小は関空便に集中。廃止・減便は日航が計9路線、全日空が計5路線にのぼり、単純試算では関空の航空機発着回数は年間9000回程度減少する。
 関空は第2滑走路整備にあたり、今年度は13万5000回の発着回数を国から求められている。同社は事業計画で13万7000回を目標に掲げていたが、きわめて難しくなった。
 このため、財務省からは「需要が増えないのに、貨物施設を拡充してもしかたがない」「固定経費が増えれば、関空会社の負担になる」といった意見が出ているようだ。
 現在、関空会社は8月末の要求に向けて、国交省や大阪府などと内容の詰めを急いでいるが、貨物施設の拡充を含む2期島関連予算は要求しにくい情勢。仮に要求した場合でも、年末の財務省原案での予算獲得は厳しく、関空会社の村山敦社長は難しいかじ取りを迫られることになる。

産経新聞 2008.8.13 00:31
「重い話だ」と関空幹部、予算要求見送りに
 2期島整備のための平成21年度予算概算要求を国土交通省が見送る方針を固めたことに、アジアの「国際貨物ハブ(拠点)空港」を目指す関西国際空港会社や大阪府には重苦しい雰囲気が広がった。
 ライバルの韓国・仁川空港に国際貨物取扱量で大きく差をつけられた関空にとって、2期島貨物施設整備は早急な課題。関空会社幹部は「国交省から(概算要求の話を)正式に聞いたわけではない。現段階ではコメントできない」とし、重苦しい雰囲気が漂った。
 一方、関西3空港の運営組織の一体化などを視野に戦略的な取り組みを進めようという橋下徹知事の意向を受けて、6日に名称を「空港対策室」から「空港戦略室」に変更したばかりの大阪府。同室の幹部は「2期島の限定供用が続けられる中、来年度の概算要求を通して、勢いを付けようと思っていただけに残念」と落胆を隠せなかった。

2008/08/12 16:46 【共同通信】
関空2期島の予算要求せず 09年度、減便表明で国交省
 国土交通省は12日、関西空港の2期島で検討していた新たな駐機場増設や旅客ターミナル用の用地造成などの施設整備事業費について、2009年度予算の概算要求では見送る方針を固めた。
 日本航空や全日本空輸などの航空各社が燃料高騰を理由に10月以降の大幅減便を表明したのを受け、08年度の発着回数が目標の13万5000回程度に届かない可能性が強くなった。このため、新たな施設整備事業費の要求は、財務省や世論の理解が得られないと判断した。
 国交省は関西空港関連の概算要求では関空会社の経営基盤の安定を目的とした補給金90億円などに限定する考えだ。
 関空の2期島にある第2滑走路は07年8月に利用がスタート。当初は需要動向などを見極めるために「限定供用」として、誘導路など必要最小限の施設整備にとどめていた。

産経新聞 2008.8.7 23:30
関空ピンチ! 発着年間9000回減へ (1/2ページ)
 日本航空は7日、平成20年度中に国内線で16路線、国際線で3路線の計19路線を廃止または減便すると発表した。6日には全日本空輸も国内外線あわせて11路線の減便または廃止を発表。両社の過去最大規模の路線見直しに伴い、関西国際空港の航空機発着回数が、年間9000回程度減少することが分かった。関空会社の業績への影響が懸念されるほか、今年度の目標として掲げている13万7000回(最低13万5000回)の達成はきわめて難しくなった。
 日航の見直し対象で最も多いのは関西空港発着の路線。函館線、仙台線など国内5路線とロンドン線の国際1路線を廃止し、札幌線など国内3路線を減便する。全日空は1路線を運休し、4路線を減便。両社合わせて1日12便程度の減便が見込まれるという。
 関空は13年の米中枢同時テロ、14年のバリ島テロ、15年の新型肺炎(SARS)と、3年連続で航空需要が落ち込む“試練”に見舞われたが、16年度以降は右肩上がりに需要が伸び、19年度の発着回数は過去最高の12万9000回に達した。しかし、燃料価格の高騰で、航空各社が路線を維持できなくなった。
 日航は2月末の中期経営計画策定時に1バレル=110ドルと見込んでいたジェット燃料価格が、最高180ドル台まで上昇。今月1日に大阪府庁を訪れた西松遙社長は橋下徹知事に対し、「約2000億円の費用増が見込まれ、単純計算すれば、社員の給料をほぼタダにしなければ間に合わない」と理解を求めた。
日航と全日空の路線見直しは20年度下期ダイヤのため、今年度は発着回数がただちに9000回減るわけではなく、その半分程度にとどまるとみられる。
 しかし、21年度からは9000回分すべてが減るため、前年度実績を下回る事業計画の策定を余儀なくされれば、経営問題に発展する可能性もある。
 今回、北海道や沖縄、東北などの地方空港と関空を結ぶ路線が大幅な運休・減便を強いられた。
 もともと午前中に地方空港を飛び立ち、午後に関空発の国際線に乗り換える需要を見込んでダイヤを組んでいた。このため、地元・関西住民の利用が少なく、搭乗率が伸び悩んでおり、両社は慢性的な赤字を解消するため、関空路線の大幅な見直しに踏み込まざるを得なかった。
 半面、大阪都心部からのアクセスが良い大阪空港と地方空港を結ぶ路線はダイヤも充実しており、関西からの需要も多い。
 ただ、関西3空港(関西、大阪、神戸)で限られたパイを奪い合う格好となっており、谷垣禎一国交相は今月4日、産経新聞などのインタビューで「非常に悩ましい。(3空港の)役割分担や運用の方法をしっかりやる必要がある」と述べている。
 さらに橋下知事が大阪空港の廃止検討にまで言及しており、今後、3空港の運用問題が改めて俎上に上がることになりそうだ。

(2008年8月8日 読売新聞)
「なぜ、関空狙い撃ち」 日航・全日空路線縮小
ツアー再編も
 燃油高騰を受けて、日本航空と全日本空輸が相次いで発表した路線見直し計画で、関西空港の発着便が大幅縮小に追い込まれ、各地に波紋が広がった。両社で30の廃止・減便路線のうち14路線が関空関連で、中でも国内線は東北を中心に出発便の2割を失う。旅客減少につながり、経営への影響も必至とみられ、関空会社から「なぜ、関空を狙い撃ちするのか」と悲鳴が上がる。第2滑走路供用から1年。関空は窮地に立っている。〈本文記事2面〉
 「経営が大変なのはわかるが、これだけ廃止路線が集中するとは」。関空会社社員は衝撃を隠せない。
関西空港から台湾に輸出される和歌山県産のモモ。貨物便に活路を見いだせるか(7日午後8時28分、大阪府泉南市で) 「不採算路線」として関空関連で廃止されるのは国際線2路線と、国内線5路線。その中に福島線(1日1往復)もあった。
 関空会社と福島県は貨物輸送で連携し、2月から県産イチゴの関空経由での輸出を始めたばかり。「成田空港より時間も費用も半分で済む」と、県は来年からアジアへの出荷量を増やす計画だったが、「チャンスを閉ざされた」と嘆く。
 欧州への基幹路線・ロンドン線の廃止も深刻だ。関空会社は7月、全国の旅行会社37社を招いた初の空港見学会を開催し、関空経由のツアー新設を売り込んだが、旅行会社の間では「それどころではない」との声も。阪急交通社(大阪市)は「成田からの出発を考えざるを得ない」と欧州ツアー再編の検討を始めた。
 今でも「燃料高で航空系収入は逆風下」(村山敦社長)という関空会社にとって、目下の気がかりは着陸料収入。便数減による減収が避けられないからだ。
 7日、和歌山県産のモモを関空発の深夜貨物便で台湾向けに輸出する試みが始まった。上向く国際貨物便に経営改善の期待をかけるしかないのが現状という。
 「会社の存続を考えると関空という聖域にも手を着けざるを得なかった」と航空関係者。関空会社は、両社に路線の早期復活を働きかけていく考えだ。
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2008-08-12(Tue)

道誉なり

道誉なり

道誉なり 上巻 道誉なり 下巻


書名:道誉なり 上巻   著者:北方兼三
出版:中公文庫   発行年月 1999年02月
価格:  上巻660円(税込)  下巻620円(税込)

☆上巻
「毀すこと、それがばさら」—六波羅探題を攻め滅ぼした足利高氏(尊氏)と、政事を自らつかさどる後醍醐帝との暗闘が風雲急を告げる中、「ばさら大名」佐々木道誉は数々の狼藉を働きながら、時代を、そして尊氏の心中を読んでいた。帝が二人立つ混迷の世で、尊氏の天下獲りを支え、しかし決して同心を口にしなかった道誉が、毀そうとしたものとは…。渾身の歴史巨篇。
☆下巻
室町幕府の権力を二分する、足利尊氏・高師直派と尊氏の実弟直義派との抗争は、もはや避けられない情勢となった。両派と南朝を睨みながら、利害を計算し離合集散する武将たち。熾烈極まる骨肉の争いに、将軍尊氏はなぜ佐々木道誉を必要としたのか。そして、道誉は人間尊氏に何を見ていたのか。「ばさら大平記」堂々の完結。
参考
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購入日 2008年08月02日 
読始日 2008年08月02日
読了日 2008年08月11日
<感想メモ>
 解説にもあったが、とにかく分かりにくい室町幕府初期・南北朝時代。年号とか歴とかにお構いなく、複雑な時代の概要が理解できたような気がする。楠木正成や赤松円心などの悪党、「武王の門」の懐良親王や 「破軍の星」 北畠顕家など、これまでの著者の作品の主人公が、取り巻きつつ登場してくる。佐々木道誉を主人公に据えてはいるものの、足利尊氏の半生を描いたようなものでもある。「ばさら」とは、「毀すこと」 という設定だが、世間の常識的なもの、秩序や慣行を「毀す」という意味なのかどうか、他者に追従せず「自分が思ったとおりに生きる」という当時常識とされた主従関係を毀すという意味なのか、微妙なところだ。いずれにしても、時代背景が複雑であるなかで、己の生きざまを貫いてきた「道誉」 という人物が良く描かれている。

「ばさら」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ばさらとは、日本の中世、南北朝時代の社会風潮、文化的流行をあらわす言葉で、実際に当時の流行語として用いられた。婆娑羅など幾つかの漢字表記があり、梵語(サンスクリット語)で「vajra=金剛石「ダイアモンド」)を意味するが、意味の転化は不明であるとされる。
 身分秩序を無視し華美な服装や振る舞いを好む美意識で、下剋上的行動の一種とされる。足利尊氏は幕府の基本方針である『建武式目』においてばさらを禁止する。ばさらに対して批判的な古典『太平記』においては近江国(滋賀県)の佐々木道誉(高氏)や土岐頼遠などのばさら的な行動が記されている。世にいう「婆沙羅大名」である。

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2008-08-11(Mon)

JR尼崎脱線事故 JR西 儲け第一に罰

あれから3年 遺族に配慮は当然

2005年4月25日 忘れてはならない 鉄道脱線大惨事。
JR西日本は、儲け第一を掲げ、安全は二の次だった。

儲けを最優先する背景には、01年の完全民営化があった。
当時、リストラすれば株価が上がる風潮が拍車を駆け、JR西も大リストラ計画をは発表。
株価が暴騰したなかでの完全民営化だった。

その陰で「日勤教育」など物言えぬ職場づくりが進行。
運転手は少しのミスでも即懲罰的「指導」が強要された。
JR西の体質そのものが引き起こした事故だということは明確だ。

遺族のい気持ちを思うとJR会社への罰を事前説明するのは当然だ。




日経新聞 2008年8月11日
JR西脱線の書類送検内容、遺族らに事前通知へ
 兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故で、兵庫県警がJR西日本の山崎正夫社長(65)や元役員らを業務上過失致死傷容疑で書類送検する前に、犠牲となった乗客106人の全遺族と負傷者562人に送検内容を伝えることが11日、分かった。捜査状況などの開示を求めている遺族や被害者の感情に最大限配慮した異例の措置になる。
 尼崎東署捜査本部は同社長らを9月に書類送検する方針を固めており、8月末に遺族らに送検の内容を事前通知する。
 伝える内容は、書類送検する同社幹部らの氏名や容疑事実などで、各警察署の警察官が分担して遺族宅を訪問。負傷者には手紙を郵送する。(16:01)
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2008-08-11(Mon)

ロズウェルなんか知らない 過疎のまちおこし

ロズウェルなんか知らない
ロズウェルなんか知らない

書名: ロズウェルなんか知らない   著者: 篠田節子
出版:講談社文庫   発行年月 2008年07月
価格:  940円(税込)

本の内容
温泉もない、名所があるわけでもない、嫁のきてもない。観光客の途絶えた過疎の町、駒木野。青年クラブのメンバーたちは町を再生することで、自らの生き方にも活路を見出そうとするが。地方の現実に直面する人々の愚かしくも愛しい奮闘を描いた胸に迫る長篇。「日本の四次元地帯」として駒木野は再生するのか。
著者情報
篠田 節子(シノダ セツコ)
1955年東京都生まれ。東京学芸大学卒業後、八王子市役所勤務を経て、’90年『絹の変容』(第3回小説すばる新人賞作品)でデビュー。その後も様々な題材をテーマにした独特の作品が、高い評価を得る。’97年『ゴサインタン—神の座—』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞を受賞

※本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです

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購入日 2008年7月30日 
読始日 2008年7月30日
読了日 2008年8月01日
<感想メモ>
 過疎の町の「愚かしくも愛しい」地域再生の奮闘を描いている。UFOやオカルトを観光資源として活かす試みは現実にある。読んでいて思わず笑えると同時になぜか物哀しさを感じてしまう。やはり「地域再生」とはなんだろう?とまじめに考えざるを得なくなる。
 地域によって様々に異なる資源。それをどう生かすか。本書のように過去にはスキー場があり、それが廃れたことから、「民宿」などを主体に観光産業の再生をはかる地域の場合、「いかに観光者・宿泊客を増やすか」がテーマになるのは仕方のないことかも知れない。
 しかし、客集めを優先するがために、批判がでるような無理が生じるのではないだろうか。
 いまでは有数の観光地となっている大分の湯布院などでは「住んでよし、訪れてよし」という観光に対する理念がある。政府も同じスローガンを使うようになっているが、「住んでよし」ということが大事だと思う。
 もともと温泉など資源があり観光地であった地域の話ではあるが、その地域に暮らす住民が「住んでよし」というには、リゾート産業などに頼らず、むしろ、その流れと闘っていくことが必要だ。
 本書にも出てくるが、大手業者は、収益は本社が吸い上げ、儲からなければさっさと撤退し、地域には廃墟だけ残す。地域が儲け主義の餌食となるだけである。
 では、「住んでよし」の地域をつくる主体は、もちろん住民であり、コミュニティだが、そのサポート役である行政が、次に問題になる。
 本書でも“箱もの”、“国の補助金”など、これまで失敗した発想から抜け出せない役所の姿が描かれている。過疎対策や地域活性化など唱えながら、やればやるほど地域を疲弊させてきた行政に対する痛烈な批判が垣間見える。
 一方、本書の地域は、首都圏に近いことから、「出ていくのは東京」である。その東京は、過疎の村から仕事を求める若者たちが集まる都市だ。現実にも東京への流入人口は増え続けている。「東京一極集中」はますます加速されている。片や地方の疲弊。
 この「東京一極集中」は是正せず、地域に「競争力」をつけろ、というのが政府の考え方だ。地域どうしを競争させる、これが基本だ。「住んでよし」の競争ではない。儲けの競争だ。こういうやり方で本当に地域再生はできるのだろうか。本書を読んで、そんなことを考えた。

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2008-08-11(Mon)

クライマーズ・ハイ

8月12日、御巣鷹山 日航ジャンボ機墜落事故

先日、横山秀夫原作の映画「クライマーズハイ」を見た。
地方新聞社がどのように事故を扱ったかリアルに描かれていた。

原作も読んでいたので、映画でどう表現するのか注目していたが、墜落現場の映像はリアル感があった。 

ことしも8月12日が来る。

忘れてはならないの航空機の安全確保だが、近年、事故が目立つ。

コスト削減、儲け第一、そのための規制緩和・・・。政治の責任を痛感する。


クライマーズハイ


東京新聞 2008年8月12日
【社説】

日航機墜落23年 安全の原点を忘れまい

 単独機としては世界最悪の墜落事故となった日本航空のジャンボ機墜落事故から二十三年。この日は航空会社やメーカー、国土交通省など関係者すべてが空の安全をしっかりと確認する日である。

 東京・羽田空港の一角。二年前に開設された同社安全啓発センターには今週から新たにメガネや腕時計、カメラのレンズなど乗客の遺品十七点が展示されている。墜落時間を示したままの時計は悲痛である。

 事故は一九八五年八月十二日夕方に起きた。お盆の帰省客やビジネスマンなど乗客五百九人と乗員十五人を乗せた日航123便ボーイング747SR機が群馬県上野村の山中に墜落した。死者は五百二十人。世界に衝撃を与えた。

 原因は機体後部の圧力隔壁が壊れて、客室内の空気が噴出したことが発端だった。

 当時の運輸省航空事故調査委員会は「事故の七年前に起こった尻もち事故で圧力隔壁を修理したボーイング社の作業に不具合があった」と指摘した。直接の責任はボーイング社だが、日常検査など日航の責任も重大だった。

 以後、日航は安全運航の徹底が経営の最大課題となった。しかし三年前には運航トラブルが続出し国土交通省から事業改善命令を受けるありさまだった。

 同社の企業風土改革はまだ十分とは言えない。グループ全社員約五万人のうち半数以上が事故後の入社という。事故を風化させてはならない。若手社員への教育が重要だ。安全啓発センターを、繰り返し見学してもらいたい。

 社内組織では安全推進体制の確立が重要だ。とくに整備部門は安全運航の鍵を握る。今後の新型機導入に備えるためにも大切だ。重整備などは海外比率が高いがもっと国内を強化すべきである。

 国土交通省も航空輸送の安全対策にしっかりと取り組むことだ。事故やトラブル情報などを蓄積して情報を共有し活用したりパイロットや管制官などのヒューマンエラー防止対策を充実させる。航空会社への監督強化も不可欠だ。

 航空・鉄道事故調査委員会は十月から外局の「運輸安全委員会」になる。事故の原因究明に加え企業へも直接、安全勧告する権限を持つ。調査力の強化が課題だ。

 ジャンボ機墜落事故を題材とした映画「クライマーズ・ハイ」が評判を呼んでいる。あの事故は国民の記憶から消えることはない。犠牲者の冥福を祈りたい。

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2008-08-10(Sun)

「無駄ゼロ」会議って? 

消費税率増税見据えた「地ならし」

行政の無駄を無くすのは当然だ。
これまで、無駄を生み出し、放置してきたのは官僚だけだろうか。
自民党政治が無駄のおおもとにあるということを自覚すべきではなかろうか。

消費税増税を議論する前に、まず行政の無駄をなくすべきではないか、という声を逆手に、「無駄ゼロ」のパフォーマンスに終わる可能性も高い。

なぜなら、無駄の本丸に切り込んでいないからだ。
道路特定財源の流用も確かに無駄だといえるが、本丸は際限のない高速道路建設だ。
一般財源化の議論も、いまだにはっきりせず、道路財源確保に躍起になっている。

軍事費はどうか、米軍への思いやり予算は削るのか。
今回の会議の対象にすらなっていない。

国民生活にとって必要な施策とはなにかを根本から吟味すべきだ。
そのうえで、税金の使い方を考えるならば、国民負担をこれ以上増やすことにはならない。

国民が望む「無駄」を無くすならば、消費税増税など必要なくなるはずである。




行政支出総点検会議
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tenken/index.html
(第1回)平成20年 8月 7日(木)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tenken/dai1/gijisidai.html

資料1 行政支出総点検会議の開催について
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tenken/dai1/siryou1.pdf
資料2 行政支出総点検会議委員名簿
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tenken/dai1/siryou2.pdf
資料3 行政支出総点検会議運営要領(案)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tenken/dai1/siryou3.pdf
資料4 行政支出総点検会議の当面の進め方について(案)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tenken/dai1/siryou4.pdf

参考1 「行政と密接な関係にある公益法人への支出の無駄の集中点検について」(平成20年7月4日)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tenken/dai1/sankou1.pdf
参考2 自由民主党政務調査会無駄遣い撲滅プロジェクトチーム「無駄遣い撲滅対策(第一次緊急とりまとめ)」(平成20年6月30日)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tenken/dai1/sankou2.pdf
参考3 平成21年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について(平成20年7月29日)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tenken/dai1/sankou3.pdf

(2008年8月8日02時18分 読売新聞)
「無駄ゼロ」会議スタート、官僚不信一掃を狙う
 行政の無駄な支出の削減策を検討する政府の「行政支出総点検会議」(座長・茂木友三郎キッコーマン会長)は7日、首相官邸で初会合を開き、公益法人への支出の3割削減などの具体策を12月上旬にまとめることを決めた。
 福田首相は提言内容を2009年度予算案に反映させたい考えだ。
 会議の冒頭、首相は「今の財政状況から考えて、無駄な支出の削減は黙っていても取り組まなければいけない課題だ。不断の努力をしなければいけない」と強調し、「無駄の根絶」への決意を示した。
 会議は今月下旬の次回会合で三つの作業チームを設置し、各省庁のヒアリングを順次実施する方針だ。
 委員を務める東国原英夫・宮崎県知事は会合で、「宮崎県では民間の目で人件費削減や裏金の洗い出しをした結果、県民の信頼が回復した」と述べ、民間の視点を取り入れた徹底した支出削減の必要性を指摘した。
 首相が「無駄ゼロ」に本腰を入れるのは、道路特定財源によるレクリエーション用品購入や、タクシー運転手から金品などを受け取る「居酒屋タクシー」問題など、不祥事が相次ぐ官僚に不信感を募らせたためだ。
 衆院選をにらみ、与党内の歳出圧力が強まる中、「ばらまき」批判を抑えるためにも、歳出削減に努める姿勢を示す重要性は増している。将来の消費税率引き上げの環境整備につなげる狙いもある。
 最大のテーマは首相が7月の閣僚懇談会で指示した、公益法人への支出の3割削減の具体化だ。国や独立行政法人は1974の公益法人に総額約9600億円を支出しているが、発注事業の必要性の見直しなどで支出削減を目指す。
 ただ、3割削減を達成しても、「支出先が民間に移るだけのケースもあり、国の節約額は数百億円程度の可能性がある」(政府筋)とされ、効果は限定的だ。首相が「慣習に引きずられ自己改革が難しい」と指摘した官僚組織の抵抗で、改革が骨抜きになる恐れもある。

毎日新聞 2008年8月8日 東京朝刊
クローズアップ2008:「ムダ・ゼロ会議」初会合 消費税増税見据え
 政府の「行政支出総点検会議」(座長・茂木友三郎キッコーマン会長)の初会合が7日、首相官邸で開かれた。福田康夫首相が掲げる「ムダ・ゼロ政府」の方針を踏まえ、行政と密接な関係にある公益法人への支出や特別会計のあり方を精査し、来年度予算編成に向けて政府に改善事項を指摘する。ただ、09年度からの基礎年金の国庫負担引き上げだけでも2・3兆円の財源が必要で、「歳出削減だけでは追いつかない」(内閣官房幹部)のが実情。会議は、近い将来の消費税率引き上げを見据えた「地ならし」の役割も担っている。【中田卓二】
 ◇当面「3300億円捻出」狙い
 「会議の趣旨に『国民の信頼回復を図る』と書いてある。ということは、政府は信頼を失墜していると認識しているんですね」。東国原英夫宮崎県知事は初会合でこう語り、出席者の笑いを誘った。
 政府が全国的に知名度の高い東国原氏をメンバーに選んだのは、「ムダ・ゼロ」への取り組みをアピールする発信力に期待したためだ。国鉄改革を手がけた「土光臨調」のような強力な組織も検討したが、結局見送った経緯があり、会議の存在感をどう高めるかが課題になっている。
 政府は09年度予算編成で、医師不足対策など重要政策に予算を重点配分する「重要課題推進枠」を新設し、3300億円を充てる。この財源を捻出(ねんしゅつ)するため、公共事業費を含む裁量的経費を前年度比で2%追加削減するが、各省庁にこの追加削減分への取り組みを促すことが会議の当面の狙いだ。
 一方、政府には「消費税率を引き上げるには、まず歳出削減に取り組まなければ国民の理解が得られない」との危機感が強い。政府・与党は、来年9月までに行われる次期衆院選に向けて、民主党の政策に対し「財源の裏付けがない」と批判を強めている。「ムダ・ゼロ」をアピールすることで、野党に対抗する思惑ものぞく。
 座長の茂木氏は、独立行政法人改革をテーマとする政府の「行政減量・効率化有識者会議」の座長で、その経験が買われた。しかし、同様の目的の会議発足が「屋上屋を架す」形となり、機能不全に陥る可能性もある。
 行政支出総点検会議は12月上旬に政府への指摘事項をまとめることを決めたが、その先の活動について茂木座長は「全く決まっていない」と述べた。
 会議の権限が不明確なまま09年度予算の財源捻出だけでその役割を終えることになれば、「ムダ・ゼロ」はスローガン倒れとなり、衆院選や消費税率引き上げに向けた政府の思惑も外れかねない。
 ◇「聖域」にもメス
 会議は、予算の「聖域」だった特別会計の支出にも切り込む。03年に塩川正十郎財務相(当時)が国会で「母屋(一般会計)でおかゆを食って辛抱しているのに、離れ(特別会計)で子供がすき焼きを食っている」と答弁するなど、かねて使途の放漫さが指摘されていた。
 特に今年に入って、国土交通省で道路特定財源をレクリエーション費に充てるなどの不適切な支出が相次いで発覚。自民党町村派は7月、国の特別会計の余剰金や積立金といった「霞が関埋蔵金」の活用などを通じ、今後3年間で最大50兆円規模の財源を生み出すことが可能とする政策提言をまとめた。
 ただ、自民党の中川秀直元幹事長を中心とした経済成長重視の「上げ潮派」による消費税増税派へのアンチテーゼの意味合いも強く、「恒常的な財源にはならない」との反論もある。
 ◇公益法人点検--実情、自主性頼み
 06年度に政府や独立行政法人から支出を受けた国所管の公益法人は1974法人で、総額約9652億円に上る。首相は7月4日の閣僚懇談会で、09年度予算編成で支出の3割削減を指示した。行政支出総点検会議は9月以降、所管省庁からヒアリングし、目標達成を側面支援する。
 政府は7月、1974法人のうち「行政と密接な関係がある」と判断した350法人の集中点検を実施。(1)82法人で国発注の事務事業見直し(2)53法人で組織縮減(3)42法人で国発注事業を随意契約から一般競争入札に全面移行--などを打ち出した。
 会議ではこの350法人に限定せず政府の支出を点検する方針だが、対象が多いため、所管省庁の「自発的な取り組み」(茂木座長)頼りなのが実情だ。
 ◇「政策の棚卸し」というものの…対象選ぶ基準すら未定
 政府は「骨太の方針08」に、ムダ・ゼロ政府実現に向け「政策の棚卸し」の徹底を盛り込んだ。優先度の低い既存の政策経費の改廃を目指すことだが、「族議員の意思が反映している政策を官僚が改廃するのは無理」(政府筋)と、作業は事実上、与党に「丸投げ」されてきた。
 自民党「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム(PT)」は今月5日までに文部科学省の28事業を点検し、「質の高い大学教育推進プログラム」など10事業、総額約160億円を「不要」と判断した。次は環境省に狙いを定めているが、文科省だけでヒアリングに20時間以上かかっており、作業のスピードは上がっていない。「党が削り過ぎないか、政府側は気が気でないようだ」(自民党政調幹部)との指摘もある。
 今後は行政支出総点検会議も棚卸しに関与する方針。しかし、検討対象の政策をどんな基準で選ぶかさえ、まだ決まっていない。
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 ■自民党PTが不要と評価した文部科学省の事業■
事業名                  08年度予算額
質の高い大学教育推進プログラム      86億円
大学教育の国際化加速プログラム      20億円
家庭の教育力向上に向けた総合的施策の推進 15億円
独立行政法人教員研修センター       14億円
豊かな体験活動推進            10億円
総合型地域スポーツクラブ育成推進      7億円
科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進  4億円
道徳教育の総合的推進(実践研究)      3億円
子どもの健康をはぐくむ総合食育推進     2億円
子どもの体力向上地域連携強化        1億円
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 ◆行政支出総点検会議のメンバー◆
◎茂木友三郎(キッコーマン会長)
○大塚宗春 (早稲田大教授)
 秋池玲子 (ボストンコンサルティンググループ パートナー&マネージング・ディレクター)
 大戸武元 (ニチレイ相談役)
 小幡純子 (上智大教授)
 梶川融  (太陽ASG有限責任監査法人総括代表社員)
 嶌信彦  (ジャーナリスト)
 富田俊基 (中央大教授)
 東国原英夫(宮崎県知事)
 渡辺幸子 (東京都多摩市長)
 ※◎は座長、○は座長代理。敬称略
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2008-08-09(Sat)

大戸川ダム 床上浸水被害 確認できず

被害予測の根拠 現実と乖離 
記者リポートに拍手


毎日新聞の記者リポートに拍手を贈りたい。
被害を大きく見せて何が何でもダム建設・・・。

こういうやり方は駄目だと先日も総務省から勧告されたばかりではないか。

大戸川ダム建設の費用対便益(B/C)は、1.4だという。
しかし、その算定根拠の被害想定が過大だとすれば、便益の数値は小さくなる。
数値上もごまかしが存在するということになる。

もちろん、便益の算定根拠には、環境などへのマイナス影響は含まれていない。
もともと、それでいいというものではないが・・・。

しかも、「山のようだ」という河道の未整備状態を放置して、ダムを優先する。
地元住民のことも考えていない、ということではないか。





毎日新聞 2008年8月8日 地方版

記者リポート:建設の是非巡り、迷走する大戸川ダム 実像知るため現場を歩く /滋賀

 ◇床上浸水実態、確認できず

 国交省近畿地方整備局が淀川水系河川整備計画案の大戸川ダム(大津市)の治水効果を主張するため公表した被害予測が揺らいでいる。同局は82(昭和57)年の台風10号と同規模の洪水が起きた場合、下流で350戸の床上浸水を予測し、ダムができれば13戸に激減すると説く。しかし、当時の現場で記者が住民に聞き取りしても床上浸水は、これまでのところ1戸も確認できない。国は「一般的な手法で予測した」と説明するが、現実とかい離する被害予測の実態を探った。【服部正法】

 ◇被害予測、現実とかい離

 国直轄の同ダムは治水、利水などの多目的ダムとして計画。水没する約50戸は移転したが、同局は05年、利水の撤退などを理由に凍結を決定。しかし、一転して昨年8月、普段は水を流し、大雨時に貯める治水専用の「穴あきダム」として建設する方針を発表した。国はダムが大戸川や下流の淀川の治水に効果があるとするが、同局の諮問機関「淀川水系流域委員会」(宮本博司委員長)は同ダムの淀川での水位低下効果が19センチにすぎないことなどを理由に、建設を認めない中間意見書を今年4月に提出した。

 記者は被害の実像を確かめたくて、82年の現場を訪れた。同市太子地区は床上浸水するとされるが、70代の男性は「当時、避難はしたが、床上浸水はなかった。70年住んでいるが、(危険は)あれ1回。堤防さえしっかりしてくれればいい」と話した。さらに、近くの枝地区の田中善六さん(80)も「別の場所で山崩による通行止めはあったが、床上浸水はなかった」という。別の集落の女性(48)も「どこで床上浸水があったのか」と首をひねった。「滋賀県災害誌」には市全体で当時床上浸水は4棟と記載。最大でも4棟だった可能性も浮上した。ある行政関係者は「農作業小屋の浸水はあったかもしれないが、住宅の床上浸水は出てこない」と声をひそめた。

 同局は戦後最大降雨の53年(昭和28年)の台風13号による被害予測も試算。床上浸水は324戸で、ダムで35戸に減ると主張する。53年の決壊現場近くの同市森地区では、当時6歳だった女性は、床上浸水は決壊現場付近の「10戸程度では」と証言。地区中心部は床上浸水が無く、「ダムがなくても治水で困らない」との声もあり、53年の方は全体で十数戸とも推測できた。

 これらの証言を基に、記者は6月28日の滋賀面で、53年のダム予定地下流の大戸川流域の床上浸水は「多く見積もっても数十戸にはならない」とリポートした。翌29日、嘉田由紀子知事は同局が開いた説明会で記事を引用し、82年規模の洪水が発生した場合の「床上浸水350戸」の根拠について「予測はどのように出したのか」と追及。閉会後、知事は「現実と掛け離れている」と疑問を呈した。

 過去に堤防が決壊した現場付近は堤防最上部から計画高水位まで80センチ~1メートルの余裕部分がある。国は洪水当時の降雨量を基に現在の川の流量を計算し、計画高水位などを超えた個所は、すべて破堤すると仮定して床上浸水戸数を出すという。嘉田知事の疑問に対し、同局は「最悪の被害が想定される個所で破堤するとは限らないから(実際の被害が)想定被害と異なるのは当然」と回答。同局大戸川ダム工事事務所の寺井喜之副所長は「(計画高水位を超える流量を)安全なものとして組み込むことはない」と話す。流域委の宮本博司委員長や嘉田知事はダムの代替案として、計画高水位を超える流量を安全に流すため、堤防の高水位以上の部分の堤防強化をした場合のコストを示すよう要求。しかし、同局は高水位を超えて水を流す計画は認められないとの立場を崩さない。
 
◇最悪想定の整備は妥当か

 「ここでダムが必要なら、あらゆる場所でダムを造る必要がある」と話す前流域委員長の今本博健・京大名誉教授(河川工学)は「シミュレーションに値せず、(ダムがないと危険との)脅迫だ」と批判する。最悪の事態の想定は必要だろう。しかし、余りに現実とかい離するとしたら、常に整備の前提にすることは妥当なのか。

 「あれが川か。あんなん山や」。ダム推進派住民らによる「大戸川ダム対策協議会」の南部政一前会長(79)は早期建設を願う立場。一方で、河道に木や草が生い茂る大戸川の現状をこう嘆く。「ダムは、なかなかできず、川の改修も進まない。どっちつかずの状態で、殺生やで」。建設の是非で迷走した同局に置き去りにされた住民の叫びを聞いた。

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