2008-09-06(Sat)
「限界集落」 大都市にもある
「住宅政策」の市場化促進 行政の政策の貧困さ物語っている
「限界集落」は65歳以上の高齢者が過半数を超え、コミュニティ機能が困難で、消滅の危機を抱えている超過疎地の集落のことをいうらしい。
そんなところが大都市中心部・新宿にあった。
もちろん、交通インフラなど中山間地とは違うが、高齢化率が高く、地域コミュニティが困難を抱えていることは事実だ。
京都の綾部市が「水源の里条例」をつくり、活性化への支援をはじめるなど各地で「限界集落」対策がとりくまれている。
ところが、東京都住宅整備課は「困窮者を優先入居させる必要があり、単身高齢者が増えた」と、住宅政策として適切だとしているという。
大都市の公営住宅には、高齢者が集中する傾向が各地でみられ、住民が孤立し、「孤独死」が増えている。高齢者・住民の生存にかかわる問題だ。
都の認識は、公営住宅は「困窮者を優先入居」させさえすればいい、「セーフティネット」という発想だ。
この発想の根本的な間違いは、多くの生活困窮者が公営住宅に入居できない現実を無視し、公営住宅を減らすことを前提に置いていることにある。
東京では応募が20倍を超え、全国でも10倍を超える。収入の低い入居資格者であっても多くの人が入居できない現実がある。所得格差と貧困の拡大で、困窮者は増大している。
にもかかわらず、政府は、公営住宅の入居要件をより厳しいものにした。収入基準を引き下げ、入居資格対象者を絞り込んだ。既存入居者の追い出しにやっきになっている。
困窮者が増大しているもとでの「困窮者を優先」というのは、より貧困層を選別することに他ならない。
「構造改革」路線で、格差と貧困を拡大し困窮者を増やしておきながら、より貧困層を選別する。
これが、政府の「セーフティネット」政策だ。
この真の目的は、住宅市場の民間開放の促進にある。公営住宅を膨らむ需要(困窮者の増大)に応じて供給(新規建設や借り上げなど)するのでなく、売却・縮小し、民間に開放しようという狙いがある。
日本国憲法は、国民の健康で文化的な生活を営む権利(生存権)を保障している。
公営住宅法は、この憲法に基づいて定められた。住宅供給は生存権を保障する基本だ。
この立場を貫くのでなく、より貧困層だけを選別するというのでは、安易で貧困な発想というほかない。
「限界集落」は、過疎地であろうと都会であろうと、生存権にかかわる問題である。
国民の命・生活を守るのが政治と行政の役割だ。それを放棄し市場化をすすめる政治の転換こそ求められている。
東京新聞 2008年9月6日 夕刊
【社会】
新宿に『限界集落』 大規模都営住宅 65歳以上入居が半数
東京都新宿区の大規模都営団地で、住民の過半数が六十五歳以上となる超高齢化が進んでいることが、同区社会福祉協議会の調査で六日分かった。高齢化に加え建て替えで高齢者が集中したことが原因で、高齢化率トップの群馬県南牧村並みの「限界集落」が都心に生まれたことになる。区社協は孤独死の増加も心配されるとして、対策に取り組み始めた。
中山間地で高齢化率が五割超の「限界集落」は存続が困難とされる。インフラの整った都市の事情は異なるが医療など支援が重要。国立社会保障・人口問題研究所は団塊の世代が多い都市部の都道府県で高齢化が進むとみており、「限界集落」が地域の中心都市に現れる可能性もあり、新たな都市問題となりそうだ。
超高齢化が判明したのは総戸数約二千三百戸の「戸山団地」。一九九〇年から全十六棟の建て替えが進んでおり、新宿区社協は、約六割の新住民が入居した昨年末以降、成富正信・早大社会科学部教授と調査を開始。
団地住民が大半を占めるこの地区の住民基本台帳調査で高齢化率が51・6%に達したことや独自調査から、区社協は住民の過半数が六十五歳以上と推定。高齢化率は19・8%の区平均を上回り、七十五歳以上の約六割が独り暮らしとみている。
約三百四十世帯が暮らす二号棟のあるフロアには、独り暮らしの1DKばかり三十五室が並ぶ。住民の鴛谷幸男さん(79)は「ドアを閉めると中の気配が分からない」と孤立感を話す。共用階段の電球取り換えも、七十歳を超える世話役には危険で維持管理も重荷だ。
区社協は住民の高齢化に加え、棟によっては1DKが半数近いなど単身者用に偏った建て替えが、独り暮らしの高齢者の増加につながったと判断。家族向けを増やすなど多様な街づくりを工夫すべきだったと指摘する。
都住宅整備課は「困窮者を優先入居させる必要があり、単身高齢者が増えた」と、住宅政策としては適切とする。しかし、都市の公営住宅に高齢者が集中する傾向は各地でみられ、成富教授は「人間関係が希薄な都会は住民が孤立しかねない」と、対策を訴えている。
「限界集落」は65歳以上の高齢者が過半数を超え、コミュニティ機能が困難で、消滅の危機を抱えている超過疎地の集落のことをいうらしい。
そんなところが大都市中心部・新宿にあった。
もちろん、交通インフラなど中山間地とは違うが、高齢化率が高く、地域コミュニティが困難を抱えていることは事実だ。
京都の綾部市が「水源の里条例」をつくり、活性化への支援をはじめるなど各地で「限界集落」対策がとりくまれている。
ところが、東京都住宅整備課は「困窮者を優先入居させる必要があり、単身高齢者が増えた」と、住宅政策として適切だとしているという。
大都市の公営住宅には、高齢者が集中する傾向が各地でみられ、住民が孤立し、「孤独死」が増えている。高齢者・住民の生存にかかわる問題だ。
都の認識は、公営住宅は「困窮者を優先入居」させさえすればいい、「セーフティネット」という発想だ。
この発想の根本的な間違いは、多くの生活困窮者が公営住宅に入居できない現実を無視し、公営住宅を減らすことを前提に置いていることにある。
東京では応募が20倍を超え、全国でも10倍を超える。収入の低い入居資格者であっても多くの人が入居できない現実がある。所得格差と貧困の拡大で、困窮者は増大している。
にもかかわらず、政府は、公営住宅の入居要件をより厳しいものにした。収入基準を引き下げ、入居資格対象者を絞り込んだ。既存入居者の追い出しにやっきになっている。
困窮者が増大しているもとでの「困窮者を優先」というのは、より貧困層を選別することに他ならない。
「構造改革」路線で、格差と貧困を拡大し困窮者を増やしておきながら、より貧困層を選別する。
これが、政府の「セーフティネット」政策だ。
この真の目的は、住宅市場の民間開放の促進にある。公営住宅を膨らむ需要(困窮者の増大)に応じて供給(新規建設や借り上げなど)するのでなく、売却・縮小し、民間に開放しようという狙いがある。
日本国憲法は、国民の健康で文化的な生活を営む権利(生存権)を保障している。
公営住宅法は、この憲法に基づいて定められた。住宅供給は生存権を保障する基本だ。
この立場を貫くのでなく、より貧困層だけを選別するというのでは、安易で貧困な発想というほかない。
「限界集落」は、過疎地であろうと都会であろうと、生存権にかかわる問題である。
国民の命・生活を守るのが政治と行政の役割だ。それを放棄し市場化をすすめる政治の転換こそ求められている。
東京新聞 2008年9月6日 夕刊
【社会】
新宿に『限界集落』 大規模都営住宅 65歳以上入居が半数
東京都新宿区の大規模都営団地で、住民の過半数が六十五歳以上となる超高齢化が進んでいることが、同区社会福祉協議会の調査で六日分かった。高齢化に加え建て替えで高齢者が集中したことが原因で、高齢化率トップの群馬県南牧村並みの「限界集落」が都心に生まれたことになる。区社協は孤独死の増加も心配されるとして、対策に取り組み始めた。
中山間地で高齢化率が五割超の「限界集落」は存続が困難とされる。インフラの整った都市の事情は異なるが医療など支援が重要。国立社会保障・人口問題研究所は団塊の世代が多い都市部の都道府県で高齢化が進むとみており、「限界集落」が地域の中心都市に現れる可能性もあり、新たな都市問題となりそうだ。
超高齢化が判明したのは総戸数約二千三百戸の「戸山団地」。一九九〇年から全十六棟の建て替えが進んでおり、新宿区社協は、約六割の新住民が入居した昨年末以降、成富正信・早大社会科学部教授と調査を開始。
団地住民が大半を占めるこの地区の住民基本台帳調査で高齢化率が51・6%に達したことや独自調査から、区社協は住民の過半数が六十五歳以上と推定。高齢化率は19・8%の区平均を上回り、七十五歳以上の約六割が独り暮らしとみている。
約三百四十世帯が暮らす二号棟のあるフロアには、独り暮らしの1DKばかり三十五室が並ぶ。住民の鴛谷幸男さん(79)は「ドアを閉めると中の気配が分からない」と孤立感を話す。共用階段の電球取り換えも、七十歳を超える世話役には危険で維持管理も重荷だ。
区社協は住民の高齢化に加え、棟によっては1DKが半数近いなど単身者用に偏った建て替えが、独り暮らしの高齢者の増加につながったと判断。家族向けを増やすなど多様な街づくりを工夫すべきだったと指摘する。
都住宅整備課は「困窮者を優先入居させる必要があり、単身高齢者が増えた」と、住宅政策としては適切とする。しかし、都市の公営住宅に高齢者が集中する傾向は各地でみられ、成富教授は「人間関係が希薄な都会は住民が孤立しかねない」と、対策を訴えている。




