2010-07-21(Wed)
バス大異変!――知られざる公共交通の実像
東洋経済の特集
週刊東洋経済が「知られざる公共交通の実像――バス大異変!&タクシー&客船」と題して特集している。
バス業界の実像では、常態化している経営赤字を補うため、
・・・償却済みの古いバスを修理しながら大事に使うことで、減価償却費を抑えている。バスの償却期間は5年。一般的な耐用年数は10~15年。だが、「20年以上前のバスが使われている例もある」(国土交通省自動車交通局旅客課)。
と指摘している。
バスが炎上する事故などが問題になったが、さもありなんという気がする。
民主党政権が目指す「交通基本法」制定。
住民の“移動権”を保障する公共交通の重視・充実が柱になる。
安全確保を大前提としつつ、
・・・・高齢化時代を迎え、路線バスの役割は重要度を増すはずだ。
・・・・総合交通ビジョンではマイカーや鉄道ばかりが語られがちだが、バス、タクシー、客船にももっと目を向けるべきだろう。
と云う指摘は正しい。
東洋経済 2010/07/13 | 12:20
バス大異変!――知られざる公共交通の実像(1) -(4)
http://www.toyokeizai.net/business/industrial/detail/AC/31e0abd7b62709fae7b85f2835b2bc3a/
深夜の東名高速道路、海老名下りサービスエリアに、零時を過ぎたあたりから続々と色鮮やかな大型バスが集まってきた。その数、十数台。いずれも東京から関西方面に向かう高速バスだ。
休憩のためにバスから降り立った乗客の年齢層は20~30代。女性の姿も目立つ。新幹線では東京ー大阪間は1万4050円かかるが、バスなら3500円から。この安さが人気の理由だ。最近では運賃1万円超と高額ながら、ファーストクラス並みの乗り心地を実現したバスもある。
価格重視に乗り心地重視。多種多様な乗客の心をつかみ、高速バスの輸送人員はうなぎ上り。だが、バス業界全体を見れば、高速バスの輝きなどほんの一部にすぎない。乗合バス事業全体で見れば、ピーク時に100億人を超えた輸送人員は、現在では43億人と、半減してしまった。
2002年の規制緩和で乗合バス事業への新規参入が容易となった。しかし、輸送人員が減っている中での事業者増が、少ないパイの奪い合いになるのは自明の理。バス事業者の営業収入も減少傾向にある。「以前は利用客減を運賃値上げでカバーしていたが、もうそれも限界」と、あるバス事業者は悲鳴を上げる。
一方、規制緩和の結果、不採算路線の撤退も容易になった。そこで安易な路線撤退を防ぐため、事前に地元との間で協議の場を設けることを義務づけ、年間の廃止キロ数は何とか増加することなく抑えられている。
バス事業者の経営は厳しい。収支悪化の理由は運賃収入の低下をコスト削減で賄いきれないためだ。むろん、バス事業者は多大なコスト削減を行ってきた。たとえば民営バス会社の平均年収は、ピーク時(00年)には、全産業平均を上回る631万円だったが、現在では平均以下の458万円まで下がった。「人命を預かるバスの運転には特殊技能が必要。バス運転手の年収が全産業平均以下なのはおかしい」と、日本バス協会の船戸裕司常務理事は嘆く。
経費に占める減価償却費の割合も鉄道会社と比べて小さい。もともとバス会社の設備投資額が鉄道よりも少ないという面はあるものの、償却済みの古いバスを修理しながら大事に使うことで、減価償却費を抑えている。バスの償却期間は5年。一般的な耐用年数は10~15年。だが、「20年以上前のバスが使われている例もある」(国土交通省自動車交通局旅客課)。
零細バス事業者に新車を買う余裕はない。安価な中古車を購入する例も目立つ。中古バスの販売台数は増加傾向にあり、08年は1万6193台で、新車(1万5333台)を上回った。インターネット上では、中古車売買のサイトも多い。大型路線バスからハイデッカーの観光バスまで、あらゆるタイプのバスが売りに出ている。10年落ちで50万キロメートル以上走っているバスもある。こうしたバスなら、確かに安く買えそうだ。
これだけ経費を切り詰めても、収入低下に追いつかず、地方ではバス事業者の約9割が営業赤字というありさま。だが、それでも経営できるのは、路線維持のため国、都道府県、市町村から補助金が出るためだ。10年度は国の地方バス路線維持費補助制度として68億円、地方公共団体に対する地方財政措置として750億円が計画されている。補助金によって乗合バス事業の赤字の相当部分が補填される仕組みだ。
補助金頼みには後ろめたいイメージもある。だが、「赤字だから補助金というのではなく、自治体から運行委託を受けていると考えるべき」と、バス会社3社を傘下に持つみちのりホールディングスの松本順社長は胸を張る。確かにこうした発想も一理ある。
乗合バス業界で唯一の成長源である高速バスも、足元ではツアーバスという新たなライバルと激しいつばぜり合いを演じている。
ツアーバスとは、旅行会社が旅行商品として主催し、貸切バス会社に運行を委託する、いわばパックツアーの変型版だ。ツアーバス最大手のウィラートラベルも「当社は旅行会社」(村瀬茂高社長)と言い切る。路線バスではないため、料金(運賃ではない)設定も運行経路も自由自在。最近の乗合バスに義務づけられている車いすスペースも設置する必要がない。「彼らはその分だけ、客を多く乗せることができる」と、ある路線バス会社の幹部はぼやく。
「交通基本法」成立ならバスの存在はより重要に
とはいえ、ツアーバスも含めて高速バス全体が打撃を受けている、ある問題が存在する。高速道路料金の割引・無料化だ。
この施策によって、バスからマイカーに転じた人は多い。しかも、マイカー利用が増えた結果、高速道路が渋滞し、バス運行に支障が出るという事態まで生じる始末。会社によっては高速バス事業で得た収益を赤字の地方路線に充当しているが、それもままならない。高速バスの収益悪化は赤字路線の息の根を止めかねない。
政治に目を転じれば、民主党政権は住民の“移動権”を公共交通で保障する「交通基本法」の制定を目指している。高齢化時代を迎え、路線バスの役割は重要度を増すはずだ。
『週刊東洋経済』2010年7月17日号の特集「知られざる公共交通の実像――バス大異変!&タクシー&客船」では、規制緩和による混乱を乗り越え、再生を目指すタクシーや、バスと同じく高速道路の割引・無料化に翻弄される客船の新たな動きについてもリポートしている。
総合交通ビジョンではマイカーや鉄道ばかりが語られがちだが、バス、タクシー、客船にももっと目を向けるべきだろう。
(『週刊東洋経済』2010年7月17日号[7月12日発売] 特集「知られざる公共交通の実像――バス大異変!&タクシー&客船」より)
週刊東洋経済が「知られざる公共交通の実像――バス大異変!&タクシー&客船」と題して特集している。
バス業界の実像では、常態化している経営赤字を補うため、
・・・償却済みの古いバスを修理しながら大事に使うことで、減価償却費を抑えている。バスの償却期間は5年。一般的な耐用年数は10~15年。だが、「20年以上前のバスが使われている例もある」(国土交通省自動車交通局旅客課)。
と指摘している。
バスが炎上する事故などが問題になったが、さもありなんという気がする。
民主党政権が目指す「交通基本法」制定。
住民の“移動権”を保障する公共交通の重視・充実が柱になる。
安全確保を大前提としつつ、
・・・・高齢化時代を迎え、路線バスの役割は重要度を増すはずだ。
・・・・総合交通ビジョンではマイカーや鉄道ばかりが語られがちだが、バス、タクシー、客船にももっと目を向けるべきだろう。
と云う指摘は正しい。
東洋経済 2010/07/13 | 12:20
バス大異変!――知られざる公共交通の実像(1) -(4)
http://www.toyokeizai.net/business/industrial/detail/AC/31e0abd7b62709fae7b85f2835b2bc3a/
深夜の東名高速道路、海老名下りサービスエリアに、零時を過ぎたあたりから続々と色鮮やかな大型バスが集まってきた。その数、十数台。いずれも東京から関西方面に向かう高速バスだ。
休憩のためにバスから降り立った乗客の年齢層は20~30代。女性の姿も目立つ。新幹線では東京ー大阪間は1万4050円かかるが、バスなら3500円から。この安さが人気の理由だ。最近では運賃1万円超と高額ながら、ファーストクラス並みの乗り心地を実現したバスもある。
価格重視に乗り心地重視。多種多様な乗客の心をつかみ、高速バスの輸送人員はうなぎ上り。だが、バス業界全体を見れば、高速バスの輝きなどほんの一部にすぎない。乗合バス事業全体で見れば、ピーク時に100億人を超えた輸送人員は、現在では43億人と、半減してしまった。
2002年の規制緩和で乗合バス事業への新規参入が容易となった。しかし、輸送人員が減っている中での事業者増が、少ないパイの奪い合いになるのは自明の理。バス事業者の営業収入も減少傾向にある。「以前は利用客減を運賃値上げでカバーしていたが、もうそれも限界」と、あるバス事業者は悲鳴を上げる。
一方、規制緩和の結果、不採算路線の撤退も容易になった。そこで安易な路線撤退を防ぐため、事前に地元との間で協議の場を設けることを義務づけ、年間の廃止キロ数は何とか増加することなく抑えられている。
バス事業者の経営は厳しい。収支悪化の理由は運賃収入の低下をコスト削減で賄いきれないためだ。むろん、バス事業者は多大なコスト削減を行ってきた。たとえば民営バス会社の平均年収は、ピーク時(00年)には、全産業平均を上回る631万円だったが、現在では平均以下の458万円まで下がった。「人命を預かるバスの運転には特殊技能が必要。バス運転手の年収が全産業平均以下なのはおかしい」と、日本バス協会の船戸裕司常務理事は嘆く。
経費に占める減価償却費の割合も鉄道会社と比べて小さい。もともとバス会社の設備投資額が鉄道よりも少ないという面はあるものの、償却済みの古いバスを修理しながら大事に使うことで、減価償却費を抑えている。バスの償却期間は5年。一般的な耐用年数は10~15年。だが、「20年以上前のバスが使われている例もある」(国土交通省自動車交通局旅客課)。
零細バス事業者に新車を買う余裕はない。安価な中古車を購入する例も目立つ。中古バスの販売台数は増加傾向にあり、08年は1万6193台で、新車(1万5333台)を上回った。インターネット上では、中古車売買のサイトも多い。大型路線バスからハイデッカーの観光バスまで、あらゆるタイプのバスが売りに出ている。10年落ちで50万キロメートル以上走っているバスもある。こうしたバスなら、確かに安く買えそうだ。
これだけ経費を切り詰めても、収入低下に追いつかず、地方ではバス事業者の約9割が営業赤字というありさま。だが、それでも経営できるのは、路線維持のため国、都道府県、市町村から補助金が出るためだ。10年度は国の地方バス路線維持費補助制度として68億円、地方公共団体に対する地方財政措置として750億円が計画されている。補助金によって乗合バス事業の赤字の相当部分が補填される仕組みだ。
補助金頼みには後ろめたいイメージもある。だが、「赤字だから補助金というのではなく、自治体から運行委託を受けていると考えるべき」と、バス会社3社を傘下に持つみちのりホールディングスの松本順社長は胸を張る。確かにこうした発想も一理ある。
乗合バス業界で唯一の成長源である高速バスも、足元ではツアーバスという新たなライバルと激しいつばぜり合いを演じている。
ツアーバスとは、旅行会社が旅行商品として主催し、貸切バス会社に運行を委託する、いわばパックツアーの変型版だ。ツアーバス最大手のウィラートラベルも「当社は旅行会社」(村瀬茂高社長)と言い切る。路線バスではないため、料金(運賃ではない)設定も運行経路も自由自在。最近の乗合バスに義務づけられている車いすスペースも設置する必要がない。「彼らはその分だけ、客を多く乗せることができる」と、ある路線バス会社の幹部はぼやく。
「交通基本法」成立ならバスの存在はより重要に
とはいえ、ツアーバスも含めて高速バス全体が打撃を受けている、ある問題が存在する。高速道路料金の割引・無料化だ。
この施策によって、バスからマイカーに転じた人は多い。しかも、マイカー利用が増えた結果、高速道路が渋滞し、バス運行に支障が出るという事態まで生じる始末。会社によっては高速バス事業で得た収益を赤字の地方路線に充当しているが、それもままならない。高速バスの収益悪化は赤字路線の息の根を止めかねない。
政治に目を転じれば、民主党政権は住民の“移動権”を公共交通で保障する「交通基本法」の制定を目指している。高齢化時代を迎え、路線バスの役割は重要度を増すはずだ。
『週刊東洋経済』2010年7月17日号の特集「知られざる公共交通の実像――バス大異変!&タクシー&客船」では、規制緩和による混乱を乗り越え、再生を目指すタクシーや、バスと同じく高速道路の割引・無料化に翻弄される客船の新たな動きについてもリポートしている。
総合交通ビジョンではマイカーや鉄道ばかりが語られがちだが、バス、タクシー、客船にももっと目を向けるべきだろう。
(『週刊東洋経済』2010年7月17日号[7月12日発売] 特集「知られざる公共交通の実像――バス大異変!&タクシー&客船」より)
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