2008-10-15(Wed)
地方銀行が危ない 不動産不況 リーマン破綻が追い打ち
米金融不安の影響 不動産投資にそまった地銀に直撃
地銀が危ない最大の要因は、建設・不動産業の倒産ラッシュにあるらしい。
アーバンコーポレイションに創建ホームズ、セボン、都市デザインシステム……。
建設・不動産業界が8月の負債総額ベースで、全業種の7割強を占めたという。
地銀はこの間、不動産向け融資を増やしていった。
総貸出残高に占める比率が「一時、6割近くにも達していた」地銀もあるという。
金融当局が、昨年春ごろから、地銀界の不動産向け融資が多いと警鐘を鳴らしていたらしい。
しかし、地銀各行は聞かなかった。聞けなかったのかもしれない。
一方、メガバンクは、「真っ先に不動産向け融資の圧縮に走った」という。
中央三井信託銀行、みずほ銀行や三菱東京UFJ銀行などだ。
気がついたら、メガバンクは逃げて、危ない不動産ディベロッパーのメインにされていた。
三菱地所や三井不動産といった大手企業はメガバンクの牙城だから、
「地銀としてはいきおい新興デベロッパーにのめり込んでいくしかなかった」という事情もあるようだ。
経過をみると地銀にとって、やむを得ない選択だったのかもしれないが、
やはり、大手銀行や大手不動産会社が「勝ち組」になる必然性が見て取れる。
しかし、地域に根差し、地域を支え、地域とともに生きてきた地方の金融機関ならば、
地域に貢献し、地域のために地道に経営するべきだろう。
そんな地銀もあるのだから・・・・
週刊東洋経済 08/10/14 | 12:30
地方経済疲弊にリーマン破綻が追い討ち、続々と赤字に転落する地銀
「まさに泣きっ面に蜂」。北國銀行関係者が顔を歪める。
北國銀がメインバンクを務めてきた東証1部上場の中堅ゼネコン、真柄建設が民事再生法の適用を申請して事実上倒産したのは、今年7月5日のこと。それからわずか2カ月余りにすぎない9月中旬、同行を再び“悲劇”が襲ったのだ。
日産プリンス石川販売や日産サティオ石川など地元・石川県を営業エリアとする日産系ディーラー3社と、米国投資銀行大手、リーマン・ブラザーズの連続破綻――。これにより、ディーラー3社に対する貸出債権36億7400万円のうち、担保などで保全されていない25億円が焦げ付く見通しとなったうえ、保有していたリーマン発行の円建て普通社債20億円が無価値となるおそれが出てきたのである。
真柄破綻を受け、北國銀は7月10日、2009年3月期業績予想の減額修正に踏み切っている。47億円の貸出債権が回収不能となり、期初に30億円の黒字を見込んでいた9月中間期の最終損益は10億円の赤字に転落。通期ベースでは何とか黒字を確保するものの、期初予想の60億円が20億円へと激減するというものだ。
そんな中、降って湧いたともいえる新たな倒産劇。同行ではリーマンなどの破綻が業績に与えるインパクトについて「状況を精査してまとまり次第、公表する」としているが、想定された損失リスクがすべて現実化すればもはや、通期でも最終赤字への転落は不可避だ。行内の一部からは「こんなことになるのなら、真柄を潰させるんじゃなかったな」といった声も聞こえてくる。
メガバンクが逃げていつの間にかメインに
北國銀だけではない。今、地域金融機関の経営が苦境に立たされている。サブプライムショックを発火点とした景気後退色の強まりを受け、昨年秋以降、与信コストが急速に膨らみ、収益・財務基盤をむしばみつつあるのだ。今年4〜6月期に地銀110行が強いられた不良債権の損失処理額は1488億円。前年同期に比べて665億円も増加した。
そして、こうした与信コスト膨張の最大の要因とされているのが、「未曾有」(金融筋)といわれる建設・不動産業の倒産ラッシュだ。帝国データバンクの集計によると、今年上半期の建設業の倒産件数(負債金額1000万円以上)は1633件で前年同期比16・2%増、不動産業は201件で同7・5%の増加。さらに8月には建設が307件で前年同月比12・9%増、不動産が33件で同37・5%増となるなど、ここに来てその増勢ぶりには一段と拍車がかかりつつある情勢だ。
アーバンコーポレイションに創建ホームズ、セボン、都市デザインシステム……。8月はしかも、大型倒産続発とあって、負債総額ベースで見れば、建設・不動産業界だけで全業種の7割強を占めるという超突出ぶり。「まず新興不動産会社が経営に行き詰まり、大口の焦げ付きが引き金となって工事を請け負っていた建設会社も破綻するという悪循環」。三井住友銀行幹部の一人は、その一極集中化の図式をこう解説する。
金融筋によると、従来、地銀にとっての最大の貸出先は「消費者金融をはじめとしたノンバンク」だった。しかし06年12月、上限金利の引き下げや総量規制を盛り込んだ改正貸金業法が公布されると、状況は一変。利ザヤ縮小などで財務内容が劣化しかねないと見た地銀側が消費者金融向けの与信を徐々に絞り始める。それが端的な形で表れたのが、07年9月のクレディア(当時、東証1部上場)の破綻。負債総額は757億円に上ったが、その借入先には静岡銀行を筆頭に岐阜、清水、東和、静岡中央、西京など数多くの地銀が名を連ねていた。
だが、消費者金融向けの融資を引き揚げるにしても、ただ単にそれを寝かせているだけでは収益を生むはずもない。引き揚げた資金の受け皿となる新たな貸出先を見つける必要があったのだ。こうして一斉に資金が向かっていったのが当時、「再生事業」「証券化」といった、一見、スマートなセールストークで不動産を買いあさり、急速に資金需要を膨らませていた新興デベロッパーをはじめとする不動産業界だった。
金融庁筋によると、都内に本店を置くある地銀では、総貸出残高に占める不動産向け融資の比率が「一時、6割近くにも達していたところがあった」という。そこにサブプライムショックとそれに誘発された市場の混乱、さらには地価下落や信用収縮の嵐が襲いかかったのだ。
実は金融当局は、サブプライム問題が火を噴く以前の昨年春ごろから、地銀界の不動産向け融資への傾斜ぶりにしきりと警鐘を鳴らしていた経緯がある。地銀各行の頭取クラスが出席して全国地方銀行協会で毎月開かれる例会。これに金融庁幹部が出席して「(不動産向け融資比率の上昇が)いささか憂慮すべき状況にある」と指摘、暗に貸し出しを自制するよう求めたのだ。
しかし、地銀各行の反応は鈍かった。むしろ動いたのは金融庁サイドの意向を伝え聞いた大手行だった。りそな銀行幹部によると「真っ先に不動産向け融資の圧縮に走ったのが、中央三井信託銀行。それにみずほ銀行や三菱東京UFJ銀行などのメガバンクが一斉に追随していった」らしい。中には、自らが主幹事(アレンジャー)を務めてまとめた協調融資さえ引き揚げようとしたところもあったとされる。
実際、8月13日に破綻したアーバンの借入実績(単体ベース)の推移を見ると、こうした大手行の“逃避行”ぶりは如実だ(下表参照)。06年3月期までは短期借り入れ、長期借り入れのいずれでもみずほ、三菱東京UFJなどが調達先上位を占めていたのが、07年3月期になると大手行はリスクの高い長期融資からまず引き揚げて大きく後退。代わって、広島銀行や関西アーバン、東京スターなどが上位陣に顔を出すようになる。そして今年3月末の残高実績では、1年以内に返済期限の来る長期借り入れでわずかに中央三井信託が5位に名を連ねているだけ。あとの大手行はすべて上位からその姿を消した。
「気がついたらメインにされていた」。破綻時で計128億9900万円のアーバン向け与信を抱え、うち未保全の44億円が焦げ付くことになった広島銀関係者はこう悔やむと同時に、みずほなど大手行の“引き際”の鮮やかさに舌を巻く。
地場ゼネコン延命に新興デベの活用も
小泉改革以来続く公共投資の削減で、ノンバンクと並ぶ地銀の有力貸出先だった地場ゼネコンは、軒並み青息吐息に陥っている。一方で、不動産向け融資を拡大するにしても、三菱地所や三井不動産といった大手企業はメガバンクの牙城。それだけに「地銀としてはいきおい新興デベロッパーにのめり込んでいくしかなかったのではないか。その代わり、マンションなどの建設工事に地場ゼネコンを絡ませるようデベロッパー側に頼み込み、事実上受注を斡旋して、地場ゼネコンの延命に手を貸していた地銀もあったようだ」。こう振り返る金融関係者も少なくない。
日ごとに深刻さを増す地銀の窮状に、金融当局も危機感を強めてのことだろう。新しい金融検査年度がスタートした8月上旬。金融庁は全国11財務局管内の15道府県に幹部級職員を派遣。計16地銀と中小企業および商工会議所など51社・団体首脳に融資姿勢や業況、資金繰りを直接ヒアリングするなど実態把握へと乗り出した。各地の経営指導員450人を対象に、中小企業の資金繰りなどに関するアンケート調査も実施している。
債務者企業の財務内容が悪化しているから、金融機関が融資を絞って、建設・不動産などの倒産が続発しているのか。それとも、金融機関が貸し渋り姿勢を強めていることで債務者企業の財務内容が悪化し、倒産に追い込まれているのか――。まずは実情を見極めたうえ、負のスパイラルを断ち切ろうというわけだろう。
不良債権を無理やりつくりだすようなこれまでの金融検査の姿勢も9月以降、転換。検査の重点を「中小企業の実態を踏まえた積極的かつ円滑な金融仲介機能が発揮できる態勢が構築できているか」にシフトし、「金融機関が貸し出しに過度に慎重になるような、重箱の隅をつつくような検査はしない」(茂木敏充・前金融担当相)というソフト路線も打ち出した。
「これまではリスク管理体制を構築したうえで、リスクテイクするよう監督してきたが、これからはまずリスクテイクして、そのうえでリスク管理するよう指導する、ということ」と、佐藤隆文長官ら金融庁幹部は口をそろえる。
だが、そうはいっても銀行側からすれば、あらかじめ貸倒引当金などの与信費用を積むことを前提にするかのような融資など、「それこそ邪道」(横浜銀行関係者)。下手をすれば与信費用だけが膨らみ、収益・財務基盤のさらなる低下をも招きかねない。関西地盤のある地銀幹部は「金融当局がどう言おうと、結果的に自分で自分の首を絞めることになろうとも、現時点ではやはり、貸せるところにしか貸せない」と本音を漏らす。
地銀関係者にとって、リーマンショックの震度と深度がなお見極めがたいことも、不安材料だ。サムライ債のデフォルト問題とともに、「とりわけ気掛かり」(千葉銀行幹部)としているのが、リーマン日本法人とともに3845億円の負債を抱えて倒産したリーマン・ブラザーズ・コマーシャル・モーゲージの行方。賃貸マンション・アパートや大型のオフィスビルなど商業用不動産向けノンリコースローンなど不動産担保融資を主力としていたからだ。
「今後破綻処理を進めていく過程で、同社の貸し出しに強い回収圧力がかかるのは必至だ。その結果、資金繰りに行き詰まって立ち行かなくなる不動産会社などが出てくれば、新たな破綻劇と金融機関の損失拡大につながるおそれがある」。大手行幹部の一人はこう指摘する。
苦境打開に向けて、各地銀が模索せざるをえないのは生き残りを懸けた再編である。泉州銀行―池田銀行、荘内銀行―北都銀行の経営統合が相次いで表面化した今春、地銀界はさまざまな合従連衡のうわさ話に揺れた。「統合を2行だけで終わらせたくない」とする荘内銀行の町田睿頭取の意向が伝わると、みちのく銀行や北日本銀行がこれに合流するとの見方が急浮上。融資先である地元コンクリート会社の破綻などで08年3月期に多額の赤字計上を迫られた島根銀行には、広島銀による救済統合構想も取りざたされた。そしてトヨタ景気に沸き、再編無風地帯ともいわれてきた東海地区でも、中京銀行と愛知銀行の統合などがまことしやかに取りざたされた。
だが、こうした再編観測はここに来てピタリと鳴りを潜めた。「景気が目に見えて悪化していく中では、相手の資産内容がどこまで傷んでいるのか、互いに疑心暗鬼だけが先に立ち、容易に再編へと踏み切れない」(上位地銀幹部)からだ。
とりあえずは貸し剥がしもせず、かといって追い貸しや新規融資に走ることもなく、ひたすら嵐が通り過ぎるのを待つ――。地銀界を覆っているのは、何やら退嬰的ともいえるそんなムードである。
(週刊東洋経済)
地銀が危ない最大の要因は、建設・不動産業の倒産ラッシュにあるらしい。
アーバンコーポレイションに創建ホームズ、セボン、都市デザインシステム……。
建設・不動産業界が8月の負債総額ベースで、全業種の7割強を占めたという。
地銀はこの間、不動産向け融資を増やしていった。
総貸出残高に占める比率が「一時、6割近くにも達していた」地銀もあるという。
金融当局が、昨年春ごろから、地銀界の不動産向け融資が多いと警鐘を鳴らしていたらしい。
しかし、地銀各行は聞かなかった。聞けなかったのかもしれない。
一方、メガバンクは、「真っ先に不動産向け融資の圧縮に走った」という。
中央三井信託銀行、みずほ銀行や三菱東京UFJ銀行などだ。
気がついたら、メガバンクは逃げて、危ない不動産ディベロッパーのメインにされていた。
三菱地所や三井不動産といった大手企業はメガバンクの牙城だから、
「地銀としてはいきおい新興デベロッパーにのめり込んでいくしかなかった」という事情もあるようだ。
経過をみると地銀にとって、やむを得ない選択だったのかもしれないが、
やはり、大手銀行や大手不動産会社が「勝ち組」になる必然性が見て取れる。
しかし、地域に根差し、地域を支え、地域とともに生きてきた地方の金融機関ならば、
地域に貢献し、地域のために地道に経営するべきだろう。
そんな地銀もあるのだから・・・・
週刊東洋経済 08/10/14 | 12:30
地方経済疲弊にリーマン破綻が追い討ち、続々と赤字に転落する地銀
「まさに泣きっ面に蜂」。北國銀行関係者が顔を歪める。
北國銀がメインバンクを務めてきた東証1部上場の中堅ゼネコン、真柄建設が民事再生法の適用を申請して事実上倒産したのは、今年7月5日のこと。それからわずか2カ月余りにすぎない9月中旬、同行を再び“悲劇”が襲ったのだ。
日産プリンス石川販売や日産サティオ石川など地元・石川県を営業エリアとする日産系ディーラー3社と、米国投資銀行大手、リーマン・ブラザーズの連続破綻――。これにより、ディーラー3社に対する貸出債権36億7400万円のうち、担保などで保全されていない25億円が焦げ付く見通しとなったうえ、保有していたリーマン発行の円建て普通社債20億円が無価値となるおそれが出てきたのである。
真柄破綻を受け、北國銀は7月10日、2009年3月期業績予想の減額修正に踏み切っている。47億円の貸出債権が回収不能となり、期初に30億円の黒字を見込んでいた9月中間期の最終損益は10億円の赤字に転落。通期ベースでは何とか黒字を確保するものの、期初予想の60億円が20億円へと激減するというものだ。
そんな中、降って湧いたともいえる新たな倒産劇。同行ではリーマンなどの破綻が業績に与えるインパクトについて「状況を精査してまとまり次第、公表する」としているが、想定された損失リスクがすべて現実化すればもはや、通期でも最終赤字への転落は不可避だ。行内の一部からは「こんなことになるのなら、真柄を潰させるんじゃなかったな」といった声も聞こえてくる。
メガバンクが逃げていつの間にかメインに
北國銀だけではない。今、地域金融機関の経営が苦境に立たされている。サブプライムショックを発火点とした景気後退色の強まりを受け、昨年秋以降、与信コストが急速に膨らみ、収益・財務基盤をむしばみつつあるのだ。今年4〜6月期に地銀110行が強いられた不良債権の損失処理額は1488億円。前年同期に比べて665億円も増加した。
そして、こうした与信コスト膨張の最大の要因とされているのが、「未曾有」(金融筋)といわれる建設・不動産業の倒産ラッシュだ。帝国データバンクの集計によると、今年上半期の建設業の倒産件数(負債金額1000万円以上)は1633件で前年同期比16・2%増、不動産業は201件で同7・5%の増加。さらに8月には建設が307件で前年同月比12・9%増、不動産が33件で同37・5%増となるなど、ここに来てその増勢ぶりには一段と拍車がかかりつつある情勢だ。
アーバンコーポレイションに創建ホームズ、セボン、都市デザインシステム……。8月はしかも、大型倒産続発とあって、負債総額ベースで見れば、建設・不動産業界だけで全業種の7割強を占めるという超突出ぶり。「まず新興不動産会社が経営に行き詰まり、大口の焦げ付きが引き金となって工事を請け負っていた建設会社も破綻するという悪循環」。三井住友銀行幹部の一人は、その一極集中化の図式をこう解説する。
金融筋によると、従来、地銀にとっての最大の貸出先は「消費者金融をはじめとしたノンバンク」だった。しかし06年12月、上限金利の引き下げや総量規制を盛り込んだ改正貸金業法が公布されると、状況は一変。利ザヤ縮小などで財務内容が劣化しかねないと見た地銀側が消費者金融向けの与信を徐々に絞り始める。それが端的な形で表れたのが、07年9月のクレディア(当時、東証1部上場)の破綻。負債総額は757億円に上ったが、その借入先には静岡銀行を筆頭に岐阜、清水、東和、静岡中央、西京など数多くの地銀が名を連ねていた。
だが、消費者金融向けの融資を引き揚げるにしても、ただ単にそれを寝かせているだけでは収益を生むはずもない。引き揚げた資金の受け皿となる新たな貸出先を見つける必要があったのだ。こうして一斉に資金が向かっていったのが当時、「再生事業」「証券化」といった、一見、スマートなセールストークで不動産を買いあさり、急速に資金需要を膨らませていた新興デベロッパーをはじめとする不動産業界だった。
金融庁筋によると、都内に本店を置くある地銀では、総貸出残高に占める不動産向け融資の比率が「一時、6割近くにも達していたところがあった」という。そこにサブプライムショックとそれに誘発された市場の混乱、さらには地価下落や信用収縮の嵐が襲いかかったのだ。
実は金融当局は、サブプライム問題が火を噴く以前の昨年春ごろから、地銀界の不動産向け融資への傾斜ぶりにしきりと警鐘を鳴らしていた経緯がある。地銀各行の頭取クラスが出席して全国地方銀行協会で毎月開かれる例会。これに金融庁幹部が出席して「(不動産向け融資比率の上昇が)いささか憂慮すべき状況にある」と指摘、暗に貸し出しを自制するよう求めたのだ。
しかし、地銀各行の反応は鈍かった。むしろ動いたのは金融庁サイドの意向を伝え聞いた大手行だった。りそな銀行幹部によると「真っ先に不動産向け融資の圧縮に走ったのが、中央三井信託銀行。それにみずほ銀行や三菱東京UFJ銀行などのメガバンクが一斉に追随していった」らしい。中には、自らが主幹事(アレンジャー)を務めてまとめた協調融資さえ引き揚げようとしたところもあったとされる。
実際、8月13日に破綻したアーバンの借入実績(単体ベース)の推移を見ると、こうした大手行の“逃避行”ぶりは如実だ(下表参照)。06年3月期までは短期借り入れ、長期借り入れのいずれでもみずほ、三菱東京UFJなどが調達先上位を占めていたのが、07年3月期になると大手行はリスクの高い長期融資からまず引き揚げて大きく後退。代わって、広島銀行や関西アーバン、東京スターなどが上位陣に顔を出すようになる。そして今年3月末の残高実績では、1年以内に返済期限の来る長期借り入れでわずかに中央三井信託が5位に名を連ねているだけ。あとの大手行はすべて上位からその姿を消した。
「気がついたらメインにされていた」。破綻時で計128億9900万円のアーバン向け与信を抱え、うち未保全の44億円が焦げ付くことになった広島銀関係者はこう悔やむと同時に、みずほなど大手行の“引き際”の鮮やかさに舌を巻く。
地場ゼネコン延命に新興デベの活用も
小泉改革以来続く公共投資の削減で、ノンバンクと並ぶ地銀の有力貸出先だった地場ゼネコンは、軒並み青息吐息に陥っている。一方で、不動産向け融資を拡大するにしても、三菱地所や三井不動産といった大手企業はメガバンクの牙城。それだけに「地銀としてはいきおい新興デベロッパーにのめり込んでいくしかなかったのではないか。その代わり、マンションなどの建設工事に地場ゼネコンを絡ませるようデベロッパー側に頼み込み、事実上受注を斡旋して、地場ゼネコンの延命に手を貸していた地銀もあったようだ」。こう振り返る金融関係者も少なくない。
日ごとに深刻さを増す地銀の窮状に、金融当局も危機感を強めてのことだろう。新しい金融検査年度がスタートした8月上旬。金融庁は全国11財務局管内の15道府県に幹部級職員を派遣。計16地銀と中小企業および商工会議所など51社・団体首脳に融資姿勢や業況、資金繰りを直接ヒアリングするなど実態把握へと乗り出した。各地の経営指導員450人を対象に、中小企業の資金繰りなどに関するアンケート調査も実施している。
債務者企業の財務内容が悪化しているから、金融機関が融資を絞って、建設・不動産などの倒産が続発しているのか。それとも、金融機関が貸し渋り姿勢を強めていることで債務者企業の財務内容が悪化し、倒産に追い込まれているのか――。まずは実情を見極めたうえ、負のスパイラルを断ち切ろうというわけだろう。
不良債権を無理やりつくりだすようなこれまでの金融検査の姿勢も9月以降、転換。検査の重点を「中小企業の実態を踏まえた積極的かつ円滑な金融仲介機能が発揮できる態勢が構築できているか」にシフトし、「金融機関が貸し出しに過度に慎重になるような、重箱の隅をつつくような検査はしない」(茂木敏充・前金融担当相)というソフト路線も打ち出した。
「これまではリスク管理体制を構築したうえで、リスクテイクするよう監督してきたが、これからはまずリスクテイクして、そのうえでリスク管理するよう指導する、ということ」と、佐藤隆文長官ら金融庁幹部は口をそろえる。
だが、そうはいっても銀行側からすれば、あらかじめ貸倒引当金などの与信費用を積むことを前提にするかのような融資など、「それこそ邪道」(横浜銀行関係者)。下手をすれば与信費用だけが膨らみ、収益・財務基盤のさらなる低下をも招きかねない。関西地盤のある地銀幹部は「金融当局がどう言おうと、結果的に自分で自分の首を絞めることになろうとも、現時点ではやはり、貸せるところにしか貸せない」と本音を漏らす。
地銀関係者にとって、リーマンショックの震度と深度がなお見極めがたいことも、不安材料だ。サムライ債のデフォルト問題とともに、「とりわけ気掛かり」(千葉銀行幹部)としているのが、リーマン日本法人とともに3845億円の負債を抱えて倒産したリーマン・ブラザーズ・コマーシャル・モーゲージの行方。賃貸マンション・アパートや大型のオフィスビルなど商業用不動産向けノンリコースローンなど不動産担保融資を主力としていたからだ。
「今後破綻処理を進めていく過程で、同社の貸し出しに強い回収圧力がかかるのは必至だ。その結果、資金繰りに行き詰まって立ち行かなくなる不動産会社などが出てくれば、新たな破綻劇と金融機関の損失拡大につながるおそれがある」。大手行幹部の一人はこう指摘する。
苦境打開に向けて、各地銀が模索せざるをえないのは生き残りを懸けた再編である。泉州銀行―池田銀行、荘内銀行―北都銀行の経営統合が相次いで表面化した今春、地銀界はさまざまな合従連衡のうわさ話に揺れた。「統合を2行だけで終わらせたくない」とする荘内銀行の町田睿頭取の意向が伝わると、みちのく銀行や北日本銀行がこれに合流するとの見方が急浮上。融資先である地元コンクリート会社の破綻などで08年3月期に多額の赤字計上を迫られた島根銀行には、広島銀による救済統合構想も取りざたされた。そしてトヨタ景気に沸き、再編無風地帯ともいわれてきた東海地区でも、中京銀行と愛知銀行の統合などがまことしやかに取りざたされた。
だが、こうした再編観測はここに来てピタリと鳴りを潜めた。「景気が目に見えて悪化していく中では、相手の資産内容がどこまで傷んでいるのか、互いに疑心暗鬼だけが先に立ち、容易に再編へと踏み切れない」(上位地銀幹部)からだ。
とりあえずは貸し剥がしもせず、かといって追い貸しや新規融資に走ることもなく、ひたすら嵐が通り過ぎるのを待つ――。地銀界を覆っているのは、何やら退嬰的ともいえるそんなムードである。
(週刊東洋経済)




