2008-12-01(Mon)

「ダム建設ありき」の転換  抵抗の背景は何があるのか?

国交省河川局の抵抗 突き破るチャンスの芽育てよう 

ダム建設をめぐり、熊本、滋賀、京都、大阪の知事らが相次ぎ「反ダム」宣言し、治水は、自らの手で責任を持つことを表明した。
長野県で田中前知事が「脱ダム宣言」以降、ダム推進勢力の巻き返しもあったが、
「ダムによらない治水」を唱え、流域自治の立場から「ダム建設ありき」の転換をめざす流れが加速している。

この流れに対して、国交省幹部は、
「急峻(きゅうしゅん)な日本の地形にはダムが適している。水害の危険性が高まることを住民に説明できるのか」
「技術者として(ダムという)最適の治水方法を選ぶのは当然」
などと、傲慢な態度をとり続けているようだ。

技術者が、ダムを選ぶのは当然、とうそぶくのには呆れる。
日本国土は、河川は、技術者のためにあるのではない、と言い返したくなる。
日本の公共事業が、社会経済情勢の変化に対応できずにきた根源に、技術者の狭い発想があるのかと思いたくなる。

いや、そんな発想の技術者は多くはないだろう。まじめな技術者・官僚も多いと考えたい。
改正河川法に携わった元河川局長の尾田栄章氏や竹村公太郎氏、近畿地方整備局の河川部長だった宮本博司前流域委員長など見て分かるようにまじめな官僚も多いはずだ。

だが、国交省内には、まともな意見が通らない現実がある。やはり、政治力学が働いているのだろう。
その力学を突き破るには、さらなる運動が必要だ。

そしてそのチャンスの芽が生まれている。
金子大臣が「事務方に任せるだけでは(ダム見直しは)なかなか進まないということだ」と
官僚らに事前相談もなく「ダム計画の在り方を検討する機関を省内に設ける」と決めたという。

政治家が、KY(空気読めない)でなければ、いまの「ダム建設ありき」の河川行政がおかしいと思うのは常識だろう。
当然、地方自治を主張する知事らの意見を無視することはできない。
このチャンスの芽を育てよう。

(追記に記事)


毎日新聞 2008年11月30日 東京朝刊
クローズアップ2008:知事相次ぎ「反ダム」宣言 治水、自らの手で
 ◇地元軽視に反発
 滋賀、大阪、京都、三重の4知事が11日、国に大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)の建設凍結を求める共同見解を公表した。熊本県の蒲島郁夫知事が9月、川辺川ダム建設に反対を表明したのに続く動きで、政策決定の主導権を取り戻したいという自治体の意思の表れでもある。国土交通省はダムの必要性を強調するが、金子一義国交相はダム計画を見直す検討機関の設置を表明。知事たちの動きは、地元の意向を軽視してきた国のダム行政への包囲網を狭めつつある。

 共同見解を主導したのは滋賀、京都、大阪の3知事だった。

 滋賀県の嘉田由紀子知事は「(対立してきた淀川の)上下流が、国の力がなくても助け合う政策を作れることを確認した」と強調する。治水事業はかつて都道府県の仕事だったが流域の自治体間で対立が目立ち、1964年に重要河川は国の直轄事業になった経緯があるからだ。3知事は会談を重ね、携帯電話やメールでもやりとりしながら合意にこぎつけた。

 97年の河川法改正も後押しした。ダム建設などを国の一存で決める手法が問題になった長良川河口堰(ぜき)の反省から、国は建設前に知事らから意見を聴くようになった。4知事は今後、同法に基づき知事としては初めて意見を国交省に提出する。

 歴史的合意だが、背景には国の言いなりになれない3府県それぞれの理由があった。

 嘉田知事は公約に「ダム凍結」を掲げ06年に初当選した。水害に詳しい環境社会学者で「(ダムを造っても)水害はゼロにできない」「ダムは環境に劇薬」が持論だ。ダムに頼らない治水を目指し、庁内に担当部署も設けた。

 大戸川ダムは建設費1080億円で、約3割は3府県の負担。京都府には洪水の多い桂川の改修に予算を回したいとの意向がある。山田啓二知事は「治水は自治体が責任を負うべきだ」と訴える。

 大阪府は財政再建途上。橋下徹知事は「私学助成や障害児施策を削ってきたこともあり優先順位を考えた」「地方のことは我々に責任をなすりつけていただいて結構だ」と話した。

 しかし自治体側の取り組みには限界もある。知事の「反ダム」の起点となった熊本県。ダム以外の治水策を検討する協議機関を国と県が共同で設置することに合意したが、開催時期などは決まっていない。村の中心部が水没する五木村で予定されていた地域振興策について、国交省は「ダム中止なら実現は無理」との姿勢。国が治水データと水没補償の予算を握る中、財政難の熊本県が独自で案を練るのは困難だ。

 他のダムへの影響はあるのか。15年度完成を目指す群馬県の八ッ場(やんば)ダム。大澤正明知事は「(大戸川ダムと)地元の考え方、治水・利水の必要性が違う」と述べ、見直しの必要はないとの考えを示す。

 しかし、議論が再燃する可能性はある。08年5月、群馬を含む下流の1都5県議が「考える会」を発足させるなど、09年度の本体着工を前に反対の動きが活発化している。地元の長野原町でも現在は目立った反対運動はないが、度重なる完成時期の延期から国への不信感を抱く住民も少なくない。【野田武、高橋克哉、伊澤拓也】

 ◇計画見直し、カヤの外−−国交省河川局
 知事らから「ノー」を突きつけられた国交省。幹部は「急峻(きゅうしゅん)な日本の地形にはダムが適している。水害の危険性が高まることを住民に説明できるのか」と反論する。「技術者として(ダムという)最適の治水方法を選ぶのは当然」との声も出る。

 背景には、ダム建設を進めてきた国交省河川局の影響力低下への懸念がある。

 01年に建設、運輸両省が合併して国交省となった際、花形だったダム担当の「開発課」が廃止され他の部署に吸収された。公共事業見直しに合わせ、ダム見直しも強いられてきた。96年以降に中止したダム事業(直轄・補助)は08年9月1日現在、計108事業に上る。95年のピーク時には計405事業あった計画が155事業に減った。川辺川ダムや大戸川ダムが建設中止となれば、組織がさらに弱体化しかねず、河川局は問題の行方に神経をとがらせる。

 しかし金子国交相は14日、ダム計画の在り方を検討する機関を省内に設けると表明。「どう進めるか、私が主導する」と宣言した。

 関係者によると、河川局の担当者らに事前の相談はなかったという。河川局にクギを刺すためとの見方があるが、裏付けるかのように、国交相は会見の最後に強調した。「事務方に任せるだけでは(ダム見直しは)なかなか進まないということだ」【高橋昌紀】
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 ■ことば
 ◇大戸川ダム
 滋賀県を流れる淀川水系・大戸川の中流に国が68年に計画。治水、利水、発電が目的だったが、利水と発電は不要になり国交省は05年に建設を凍結した。07年8月、豪雨時だけ水門を閉めて水をためる治水専用ダム(貯水容量2190万トン)に計画変更した。建設費は当初740億円の予定だったが、1080億円に増加。水没予定地などの55戸が移転しており、用地費など600億円は支払い済み。
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 ◆国が計画・建設中の主なダム◆
ダム名 水系   所在地
サンル 天塩川  北海道
平取  沙流川   〃
津軽  岩木川  青森
鳥海  子吉川  秋田
田川  鳴瀬川  宮城
八ッ場 利根川  群馬
湯西川  〃   栃木
設楽  豊川   愛知
利賀  庄川   富山
足羽川 九頭竜川 福井
大戸川 淀川   滋賀
尾原  斐伊川  島根
横瀬川 渡川   高知
城原川 筑後川  佐賀
川辺川 球磨川  熊本
奥間  比地川  沖縄

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