2014-09-30(Tue)

首相所信表明 臨時国会(2014.9.30-11.30) 

核心の説明が足りない 大事なことを話さねば 国民の疑問に答える国会論戦を

平成26年9月29日
第百八十七回国会における安倍内閣総理大臣所信表明演説
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement2/20140929shoshin.html



<各紙社説・主張>
朝日新聞)臨時国会―課題は地方だけでなく(9/30)
読売新聞)所信表明演説 地方創生の具体論が問われる(9/30)
毎日新聞)首相所信表明 核心の説明が足りない(9/30)
日本経済新聞)国民の疑問に答える国会論戦を望む (9/30)
産経新聞)所信表明演説 地方消滅防ぐ青写真示せ(9/30)
東京新聞)首相所信表明 大事なことを話さねば(9/30)





以下引用

平成26年9月29日
第百八十七回国会における安倍内閣総理大臣所信表明演説
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement2/20140929shoshin.html
平成26年9月29日、第187回国会が平成26年11月30日までの会期で開会し、安倍総理による所信表明演説が行われました。

一 災害に強い国づくり
 先般の「平成二十六年八月豪雨」により、広島での大規模な土砂災害を始め、全国各地で甚大な被害が発生いたしました。
 亡くなられた方々の御冥福を謹んでお祈りするとともに、被害に遭われた皆様に、心からお見舞いを申し上げます。一日も早い生活再建に、全力を尽くしてまいります。
 土砂災害警戒区域にまだ指定されていない全国の危険箇所について徹底的な調査を行い、併せて、警戒区域の指定や国民への情報提供が、より万全な体制で行えるよう、制度の見直しを進めてまいります。
 今年の大雪災害では、放置された車両などによって、救助活動に支障を来しました。災害時にそうした車両を移動できるよう、災害対策基本法を改正いたします。インフラの整備だけではなく、避難計画の作成や周知、訓練の実施など、国土強靱(きょうじん)化を、更に推し進めてまいります。
 災害対応には、与党も野党もありません。国民の暮らしを守るため、災害に強い国づくりを、皆さん、共に進めていこうではありませんか。
二 復興の加速化
 福島は、今、実りの秋を迎えています。先日訪れた広野町(ひろのまち)では、復興を成し遂げた水田に、黄金色の稲穂が輝いていました。
 来月一日には、田村市に続き、川内村(かわうちむら)への避難指示を解除します。故郷(ふるさと)に帰還する皆さんが、安心できる暮らしを取り戻すことができるよう、健康や仕事などの不安を一つひとつ解消してまいります。
 中間貯蔵施設の建設も、福島の皆さんの御理解を得て、大きな一歩を踏み出すことができました。これを機に、除染を更に加速し、一日も早い福島の再生を成し遂げてまいります。
 岩手と宮城における高台移転や災害公営住宅の建設は、八割を超える事業が既に始まっています。
 被災者の皆さんの「心」の復興にも、大きく力を入れてまいります。仮設住宅への保健師の巡回訪問、子供たちが安心して遊べる居場所づくりなど、被災者の方々の心に寄り添いながら、きめ細かく、丁寧な取組を進めます。
 七月に宮城の東松島で出会った安部俊郎(としろう)さんは、地域の人たちと共に、地域に根づいた農業を進めています。農地の集積、多角化、六次産業化。それによって、農業者の所得を増やし、地域のにぎわいを創出する。私たちが目指す「攻めの農業」の姿が、ここにあります。震災で壊滅的な被害を受けた大地から、最先端の農業が花開こうとしています。
 今後も、暮らしを支える「生業(なりわい)」の復興を、力強く支援してまいります。
 二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックは、何としても「復興五輪」としたい。日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけとしなければなりません。開催に向けた準備を本格化します。六年後には、見事に復興を成し遂げた東北の街並みを背に、三陸海岸から仙台湾を通り、福島の浜通りへと、聖火ランナーが走る姿を、皆さん、世界に向けて発信しようではありませんか。
三 地方創生
(観光立国)
 「桃源郷のような別世界」
 東洋文化の研究家であるアレックス・カーさんは、徳島の祖谷(いや)に広がる日本の原風景をこう表現しました。鳴門のうず潮など、風光明媚(ふうこうめいび)な徳島県では、今年の前半、外国人宿泊者が、前の年から四割増えています。
 外国人観光客は半年間で六百万人を超え、過去最高のペースです。今年四月には、旅行収支が、大阪万博以来、四十四年ぶりの黒字となりました。
 更なる高みを目指し、ビザの緩和、免税店の拡大などに戦略的に取り組んでまいります。外国語を駆使しながら名所旧跡の案内ができる人材を、自治体の努力で育成できるよう、特区制度を活用して規制を緩和します。
 昨年度、沖縄を訪れた外国人観光客は過去最高となりました。「アジアの架け橋」たる沖縄の振興に全力で取り組み、この勢いを更に発展させてまいります。
 それぞれの地域が、豊かな自然、文化や歴史など、特色ある観光資源を活用できるよう、応援してまいります。
(個性を活かす)
 鳥取・大山(だいせん)の水の恵みを活かした地ビールは、全国にリピーターを広げ、売り上げを伸ばしています。
 「ふるさと納税が、ご縁となった」
 ふるさと納税してくれた人たちに、地元が誇る名産品をプレゼントする。自治体の工夫を凝らした努力が、「ふるさと名物」を全国の人に知ってもらう大きなきっかけとなりました。
 「ふるさと名物」を、全国区の人気商品へと押し上げる支援を、更に強化いたします。地域ならではの資源を活かした、新たな「ふるさと名物」の商品化、販路開拓の努力を後押ししてまいります。
 「ないものはない」
 隠岐の海に浮かぶ島根県海士町(あまちょう)では、この言葉がロゴマークになっています。都会のような便利さは無い。しかし、海士町(あまちょう)の未来のために大事なものは、全てここにある、というメッセージです。「この島にしかない」ものを活かすことで、大きな成功を収めています。
 大きな都市を真似るのではなく、その個性を最大限に活かしていく。発想の転換が必要です。それぞれの町が、「本物はここにしかない」という気概を持てば、景色は一変するに違いありません。
(地方創生国会)
 島のさざえカレーを、年間二万食も売れる商品へと変えたのは、島にやってきた若者です。若者たちのアイデアが、次々とヒット商品につながり、人口二千四百人ほどの島には、十年間で四百人を超える若者たちがIターンでやってきています。
 やれば、できる。
 人口減少や超高齢化など、地方が直面する構造的な課題は深刻です。しかし、若者が、将来に夢や希望を抱き、その場所でチャレンジしたいと願う。そうした「若者」こそが、危機に歯止めをかける鍵であると、私は確信しています。
 若者にとって魅力ある、町づくり、人づくり、仕事づくりを進めます。「まち・ひと・しごと創生本部」を創設し、政府として、これまでとは次元の異なる大胆な政策を取りまとめ、実行してまいります。
 若者がチャレンジしやすい環境を整えます。一度失敗すると全てを失う、「個人保証」偏重の慣行を断ち切ります。政策金融公庫と商工中金だけで、この半年間で、二万件を超える融資が個人保証なしで実行されています。更に政府調達では、創業から十年未満の企業を優先するための枠組みを新たに創り、新事業にチャレンジする皆さんの販路拡大を、政府一丸となって応援していきます。
 伝統ある故郷(ふるさと)を守り、美しい日本を支えているのは、中山間地や離島を始め、地方にお住まいの皆さんです。そうした故郷(ふるさと)を、消滅させてはならない。もはや時間の猶予はありません。
 この国会に求められているのは、若者が将来に夢や希望を持てる地方の創生に向けて、力強いスタートを切ることです。皆さん、一緒にやろうではありませんか。
四 地球儀を俯瞰する外交
 今が旬のサンマは、ベトナムではトマト煮が大人気。北海道の根室から輸出されています。
 地元の漁協や商工会議所の皆さんによる一体となった売り込みが、「根室のサンマ」を世界ブランドへと発展させました。「北海道の根室」から「日本の根室」へ。更には「世界の根室」へと。地方も、オープンな世界に目を向けるべき時です。
 世界に、自由で、大きな経済圏を創り上げる。引き続き、TPP交渉や、EU、東アジアとのEPA交渉など、経済連携を戦略的に推し進めてまいります。豪州とのEPAについて、早期の発効を実現し、経済的な絆を一層深めてまいります。
 「地域と世界の平和と安定に貢献する日本の取組を支持する。」
 就任後、主要国で最初に、日本を訪問してくださった、インドのモディ首相から、我が国が掲げる「積極的平和主義」について、強い支持を得ることができました。
 我が国は、米国を始め、自由や民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する国々と手を携えながら、世界の平和と安定にこれまで以上に貢献してまいります。
 その上で、いかなる事態にあっても、国民の命と平和な暮らしは守り抜く。その決意の下、切れ目のない安全保障法制の整備に向けた準備を進めてまいります。
 在日米軍再編については、現行の日米合意に従い、抑止力を維持しつつ、基地負担の軽減に向けて、全力で取り組みます。
 かつて、裏付けのない「言葉」だけの政治が、沖縄の皆さんを翻弄しました。学校や住宅に囲まれ、市街地の真ん中にある、普天間飛行場の現実は、あの三年三か月間、一ミリたりとも変わることはありませんでした。こんな無責任な政治を、二度と繰り返してはなりません。
 安倍内閣は、「言葉」ではなく、実際の「行動」で、負担軽減に取り組んでまいります。先月、普天間配備のKC―一三〇空中給油機十五機全機について、山口県岩国基地への移駐が完了しました。今後も、沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、沖縄県外における努力を十二分に行ってまいります。
 さて、総理就任以来、四十九か国を訪問し、延べ二百回以上の首脳会談を行いました。「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を、更に積極的に展開し、日本の立場を国際的に発信してまいります。
 基本的な価値や利益を共有し、最も重要な隣国である、韓国との関係改善に向け、一歩一歩努力を重ねてまいります。
 日本と中国は、切っても切れない関係であり、中国の平和的な発展は、我が国にとって大きなチャンスです。地域の平和と繁栄に大きな責任を持つ、日中両国が、安定的な友好関係を築いていくために、首脳会談を早期に実現し、対話を通じて「戦略的互恵関係」を更に発展させていきたいと考えます。
 ウクライナの安定確保のため、G7を始め国際社会と一致団結し、我が国としてできる限りの支援を行います。ロシアには、責任ある国家として、国際社会の諸問題に建設的に関与してもらうよう、対話を通じて働きかけてまいります。ロシアとの平和条約締結に向けて、粘り強く交渉を続けてまいります。
 北朝鮮が、拉致被害者を含む全ての日本人に関する包括的、全面的調査を開始しました。全ての拉致被害者の御家族が、御自身の手で肉親を抱きしめるその日まで、私たちの使命は終わりません。今回の調査が、全ての拉致被害者の帰国という具体的な成果につながっていくよう、「対話と圧力」、「行動対行動」の原則を貫き、全力を尽くしてまいります。
五 成長戦略の実行
(女性が輝く社会)
 先週ニューヨークで、ヒラリー・クリントン前国務長官と再会を果たしました。
 「前進あるのみ!」
 「女性が輝く社会」を目指す、安倍内閣の挑戦に、昨年、ヒラリーさんが、力強いエールを送ってくれました。
 日本から、世界を変えていく。今月、日本で初めての、女性をテーマとした国際会議を開催し、世界から、活躍している女性の皆さんにお集まりいただきました。日本社会が本当に変わるのか。今や、世界が注目しています。
 「待機児童ゼロ」は、確実に前進しています。この目標を掲げて以来二年間、従来の二倍のスピードで、保育の受け皿の整備が進んでいます。小学校の教室も一層活用して、放課後子ども総合プランを更に加速し、いわゆる「小一のカベ」も突き破ります。
 子育ても、一つのキャリアです。保育サービスに携わる「子育て支援員」という新しい制度を設け、家庭に専念してきた皆さんも、その経験を活かすことができる社会づくりを進めます。
 真に変革すべきは、社会の意識そのものです。上場企業では、女性役員の数について情報公開を義務付けます。国、地方、企業などが一体となって、女性が活躍しやすい社会を目指します。
 先日訪問した大阪の中小企業では、女性ならではのきめ細かな営業活動が、海外展開のチャンスを広げています。女性の活躍は、社会の閉塞感を打ち破る大きな原動力となる。その認識を共有し、国民運動を展開してまいります。
(岩盤規制改革)
 原子力規制委員会により求められる安全性が確認された原発は、その科学的・技術的な判断を尊重し再稼働を進めます。立地自治体を始め関係者の理解を得るよう、丁寧な説明、避難計画の充実支援などに取り組みます。徹底した省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の導入により、できる限り原発依存度を低減させてまいります。
 二酸化炭素を排出しない、未来のエネルギー。水素の活用を阻んできた、様々な省庁にまたがるがんじがらめの規制を、昨年、一挙に改革しました。
 「規制緩和のおかげです。」
水素ステーションがいよいよ商業化され、福岡の北九州を始め全国各地で、夢だった水素社会が、現実に幕を開けようとしています。日本の自動車メーカーは、世界に先駆けて、燃料電池自動車の販売に踏み切りました。
 民間のダイナミックなイノベーションの中から、多様性あふれる新たなビジネスが生まれる。大胆な規制改革なくして、成長戦略の成功はありません。農業・雇用・医療・エネルギーなど、岩盤のように固い規制に、これからも果敢に挑戦してまいります。
 その突破口が、国家戦略特区です。今月、本格スタートしたばかりですが、更に改革メニューを充実します。創業や家事支援に携わる、能力あふれる外国人の皆さんに、日本で活躍してもらえる環境を整備します。公立学校の運営を民間に開放し、グローバル人材の育成や、個性に応じた教育など、多様な価値に対応した公教育を可能にしてまいります。
 安倍内閣の規制改革に、終わりはありません。
 この二年間で、あらゆる岩盤規制を打ち抜いていく。その決意を新たに、次の国会も、更にその次も、今後、国会が開かれるたびに、特区制度の更なる拡充を、矢継ぎ早に提案させていただきたいと考えております。
(全国津々浦々に届ける)
 内閣発足から六百日余り。
 有効求人倍率は、二十二年ぶりの高水準となり、就業地別では、三十五の都府県で、仕事の数が求職者の数を上回っています。
 この春、多くの企業で、賃金がアップしました。連合の調査で、平均二%を超える賃上げは過去十五年間で最高です。中小企業・小規模事業者でも、一万社余りの調査において、六十五%で賃上げが実施されています。
 頑張れば、報われる。日本は、その自信を取り戻そうとしています。
 しかし、その効果は、まだ日本の隅々にまで行き渡っているとは言えません。消費税率引上げや、燃料価格の高騰、この夏の天候不順などによる景気への影響にも、慎重に目配りしていくことが必要です。
 私たちの改革は、いまだ道半ばです。社会保障改革、教育の再生、行政の徹底的な効率化など、各般の改革を、新内閣の総力を挙げて、更に前に進めてまいります。
 成長戦略を確実に実行し、経済再生と財政再建を両立させながら、「経済の好循環」を確かなものとする。そして、景気回復の実感を、全国津々浦々にまで届けることが、安倍内閣の大きな使命であります。
 引き続き、デフレ脱却を目指し、「経済最優先」で政権運営に当たっていく決意であります。
六 おわりに
 「天は、なぜ、自分を、すり鉢のような谷間に生まれさせたのだ?」
 三河の稲橋村(いなはしむら)に生まれた、明治時代の農業指導者、古橋源六郎暉皃(てるのり)は、貧しい村に生まれた境遇を、こう嘆いていたと言います。しかし、ある時、峠の上から、周囲の山々や平野を見渡しながら、一つの確信に至りました。
 「天は、水郷には魚や塩、平野には穀物や野菜、山村にはたくさんの樹木を、それぞれ与えているのだ。」
 そう確信した彼は、植林、養蚕、茶の栽培など、土地に合った産業を新たに興し、稲橋村(いなはしむら)を豊かな村へと発展させることに成功しました。
 今、「日本はもう成長できない」、「人口減少は避けられない」といった悲観的な意見があります。
 しかし、「地方」の豊かな個性を活かす。あらゆる「女性」に活躍の舞台を用意する。日本の中に眠る、ありとあらゆる可能性を開花させることで、まだまだ成長できる。日本の未来は、今、何を為(な)すか、にかかっています。
 悲観して立ち止まるのではなく、可能性を信じて、前に進もうではありませんか。
 厳しい現実に立ちすくむのではなく、輝ける未来を目指して、皆さん、共に、立ち向かおうではありませんか。
 御清聴ありがとうございました。

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朝日新聞 2014年9月30日(火)付
社説:臨時国会―課題は地方だけでなく
 安倍内閣の改造から初めてとなる臨時国会が開会した。首相が論戦の中心テーマに掲げるのは「地方創生」と「女性が輝く社会」である。
 首相はきのうの所信表明演説で、こう強調した。
 「若者にとって魅力ある町づくり、人づくり、仕事づくりを進める。これまでとは次元の異なる大胆な政策をとりまとめ、実行していく」
 「女性の活躍は、社会の閉塞(へいそく)感を打ち破る大きな原動力となる。その認識を共有し、国民運動を展開していく」
 確かに、これからの日本の人口減少を考えれば、ともに重要な論点ではある。少なくとも方向性に異議はない。
 ただし、このふたつをことさら強調する首相の姿勢には、来春の統一地方選をにらんだ得点稼ぎのにおいがする。この国会で議論すべき課題は、これだけにとどまるわけがない。
 安倍首相は先の通常国会で、集団的自衛権の行使を認める閣議決定を会期内にすませるため、自民、公明の与党協議を急がせた。最終的に閣議決定は閉会後となったが、あまりに短兵急な運びだった。
 ところが、首相は閣議決定の内容を実行に移すための関連法の改正は来年の通常国会に先送り。きのうの演説でも「切れ目のない安全保障法制の整備に向けた準備を進める」とあっさり触れただけだ。
 法案づくりに時間がかかる事情はあるにせよ、根強い反対を抑えて突き進んだあの性急さはいったい何だったのか。
 首相は、消費税率の10%への再引き上げを、臨時国会の閉会後に判断する構えだ。「アベノミクス」の成果を強調する首相だが、一連の政策が日本の経済再生に本当に有効だったのか、これからも成果が見込めるのか、論戦を通じて明らかにすべきだ。
 首相はまた、原子力規制委員会が求める安全性が確認された原発は再稼働を進めると語った。だが、御嶽山の突然の噴火は、火山列島と呼ばれる国土で原発を稼働させることの危うさを改めて思い起こさせた。
 この国会が政権の思い描く通りに進むかどうかは、ひとえに野党の力量にかかっている。
 先の通常国会では「責任野党とは政策協議を行っていく」との首相の分断策に、野党は押され気味だった。
 臨時国会を前に民主党は執行部を刷新、維新の党も政権との対決姿勢を見せる。野党は「多弱」の汚名を返上する気概を、論戦の中で示してほしい。


読売新聞 2014年09月30日 01時29分
社説:所信表明演説 地方創生の具体論が問われる
 地方創生や「女性が輝く社会」の実現を通じて日本の成長力回復を目指す。安倍首相の狙いは理解できる。肝心なのは、その具体論である。
 首相が衆参両院本会議で所信表明演説を行った。臨時国会を「地方創生国会」と位置づけ、地方の活性化と人口減対策のため、「これまでとは次元の異なる大胆な政策」を実行すると強調した。
 「若者こそが危機に歯止めをかける鍵」と語り、若者に魅力的な町づくりや観光・地場産業の振興などに努める考えも示した。
 首相の決意は伝わってくるが、各論の議論は始まったばかりだ。処方箋は明確ではない。今国会で成立を図る「まち・ひと・しごと創生法案」も、基本理念や国の役割などを定めるにとどまる。
 日本の人口は50年後に8700万人と、現在の3分の2に落ち込み、全国の自治体の半数が消滅するとの推計もある。1億人程度の人口構造を保つ、という政府目標の達成は容易ではない。
 政府は、自治体や民間とアイデアを出し合い、地域の実情に応じた対策を講じる必要がある。
 過去の国土開発計画のように旧来型の公共事業や交付金をばらまくのでは効果は限られる。町づくりの成功事例を検証し、費用対効果の観点で有望な政策に重点的に予算配分することが大切だ。
 首相は、女性の活躍を支援するため、子育て支援の拡充や、上場企業への女性役員数の公表義務づけに取り組む意向を表明した。女性の能力の活用は、成長戦略の一つの柱となろう。
 大胆な規制改革や、安全性の確認された原発の再稼働も着実に進め、「経済最優先」の方針に有言実行で取り組んでもらいたい。
 首相は、年内に是非を判断する消費税率の10%への引き上げに言及しなかった。どんな手続きと考え方で判断するのか、今後、丁寧に説明することが求められる。
 外交面では、環太平洋経済連携協定(TPP)など、経済連携を戦略的に進める考えを示した。首相は就任以来、49か国を訪問し、原発、高速鉄道のトップセールスなど経済外交を重視してきた。
 新興国の活力を取り込むことは日本経済の成長に資するし、経済力は外交カードとなる。外交と経済の好循環を目指したい。
 中国、韓国との関係改善も急務だ。中韓両国にも前向きな兆候があり、11月の北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)は首脳会談の好機となる。静かな外交で中韓との調整を進めたい。


毎日新聞 2014年09月30日 東京朝刊
社説:首相所信表明 核心の説明が足りない
 臨時国会が29日召集され、安倍晋三首相による所信表明演説が行われた。首相は地方と女性の活躍を重視しつつ経済成長を目指していく姿勢を強調した。
 野党と対決色の薄そうな課題を主軸に据える一方で、消費税の再増税や集団的自衛権行使を可能とする憲法解釈変更などの問題にはほとんど言及しなかった。臨時国会のテーマと頼む「地方創生」も構造的に人口減少に取り組む本気度が伝わったとはいいがたい。改造内閣の掲げる「実行実現」の中身が問われよう。
 通常国会が閉幕して3カ月を経てやっと始まる論戦だ。首相が演説で日中関係で「安定的な友好関係」を掲げ、首脳会談の早期実現に意欲を示したことは評価できる。
 だが、全体としてみれば、演説は内外の課題への方針を率直に訴えかけるものではなかった。
 さきの国会の閉幕後に行われた集団的自衛権行使を可能とする閣議決定について直接の言及はなく「切れ目のない安全保障法制の整備に向けた準備」を表明するなどにとどまった。いくら法整備を来年に先送りしたからといって、解釈改憲の具体的な中身の説明を進んでしないようでは、議論なき既成事実化を図ったとすら取られかねない。
 税率を10%に引き上げるかの判断を12月に迫られる消費増税問題も、さきの引き上げに伴う影響への「目配り」の指摘にとどめた。自民党の谷垣禎一幹事長は再増税をしない場合の財政への危険を強調するが、一方で先送り論も根強い。首相の基本姿勢を示すべきではないか。
 地方創生にも不安がある。首相は「人口減少は避けられない」との見方を悲観的だとまで言い切った。「次元の異なる大胆な政策をまとめる」と説明、各地で展開する地域再生の取り組みを紹介した。
 地方の人口減少問題が注目された端緒は民間研究機関による「消滅可能性自治体」の公表だった。人口減少の流れ自体は不可避だとしても地方での減少を可能な限り食い止めることが議論の主眼だったはずだ。
 首相も「地方が直面する構造的な課題は深刻」だと語った。だが、その背景以上に演説では「若者がチャレンジしやすい環境」「発想の転換」が強調された。国会に提出された基本法案は具体的な施策の中身まで示したものではない。「やれば、できる」と地方を督励するのであれば、それを裏付ける「異次元」政策のイメージをもっと語るべきだった。
 地方創生、女性の進出ともに政策に十分な中身が伴わなければ論戦の主役たり得ない。位置づけがあいまいな国会とならぬよう、野党も論点の提示に努めなければならない。


日本経済新聞 2014/9/30付
社説:国民の疑問に答える国会論戦を望む
 臨時国会が始まった。国政の目下の重要課題は経済再生である。アベノミクスの先行きは大丈夫なのか。消費再増税は予定通り実施するのか。地方は本当に立て直せるのか。国民が知りたいのはそういうことだ。疑問を置き去りにしない国会論戦にしてもらいたい。
 この国会では、安倍晋三首相が内閣改造に際して重点政策と位置付けた地方創生や女性の活躍に関する法案が審議される。首相は所信表明演説の紙幅の大半をこの2つのテーマに費やした。
 「やればできる」「政府一丸となって応援していきます」「一緒にやろうではありませんか」
 地方創生ではこう訴えた。伝えたかったのは、地方の発展は自らの創意工夫なしにはなし得ないとの思いだ。
 戦後の歴代政権は「国土の均衡ある発展」を掲げ、交通網の整備などに取り組んできた。ただ、一口に地方といっても事情は千差万別である。中央主導の地方振興対策は必ずしも効果的ではなかったし、無用な公共事業のばらまきは財政難の一因となった。
 首相は演説で町おこし・村おこしの成功例をこれでもかと並べあげた。重要なのは、これを聞いた地方が事例をまねるのでなく、やる気をまねるようになることだ。
 自治体の多くは霞が関頼みの体質から抜け出せていない。交付金制度の見直し、中央省庁からの職員派遣などを求める声もあるようだ。地方のやる気を引き出すのに必要なのは財源なのか、人材なのか、さらに別の手があるのか。活発な議論を期待したい。
 「経済再生と財政再建を両立させながら、経済の好循環を確かなものとする」。首相は国民の最大の関心事である消費税の8%から10%への引き上げの是非にはほとんど触れなかった。
 最終決断するのは臨時国会の閉幕後になる見込みだが、だからといって会期中ずっと「検討中」「まだ白紙」といった木で鼻をくくったような答弁ばかりでは、国民はかえって心乱されよう。来年の通常国会にどんな補正予算案を出すのかなども知りたいところだ。
 「悲観して立ち止まるのではなく……」「厳しい現実に立ちすくむのではなく……」。所信表明演説は国民を鼓舞する言葉で終わった。国民の政権への信頼なしに、アベノミクスの成功はない。臨時国会は「経済最優先」で当たってもらいたい。


産経新聞 2014.9.30 05:06
【主張】所信表明演説 地方消滅防ぐ青写真示せ
 安倍晋三首相が「地方創生国会」と位置付ける臨時国会の所信表明演説で、「ふるさとを消滅させてはならない。もはや時間の猶予はない」との危機感を表明した。
 わが国は人口減少という国難に直面している。超高齢化の問題と併せ、手をこまねいていれば人は地方を去り、衰退は加速される。それは日本全体が立ちゆかなくなることにつながる。
 トップリーダーが、地方に焦点をあて、人口減少対策に積極的に取り組む姿勢を明確にした意義は大きい。政府が総力を挙げるのはもとより、与野党も「日本生き残りへのラストチャンス」になるとの認識を共有し、大いに論じあってほしい。
 演説には気になる点もあった。多くの地方活性化の成功例を紹介したのは分かりやすい。だが、根っこにある人口減少などに対応しうる政策の青写真は、まだ見えてこない。
 国家ビジョンを描く大きな構想力が問われている。東京圏では高齢者の激増で医療や介護施設の不足が懸念される。人口激減地域では、拠点市への人口集約が急がれる。こうしたヒトの移動をどう実現するかを語る必要がある。
 首相は「景気回復の実感を全国津々浦々にまで届ける」ことの重要性も語った。地方経済を元気づける当面の対応は重要だ。しかし、地方創生を一時的な経済対策に矮小(わいしょう)化させてはならない。
 数十年先を見越した地方の姿や人口減少対策の全体図を示してほしい。
 首相が地方の自主的な取り組みの必要性を強調したのは妥当だ。地方が抱える課題はそれぞれに異なり、一律の「お仕着せ政策」を国が作ってもうまく機能しない。地方の力量も厳しく問われる。
 使い道を自治体に任せる「一括交付金」も課題だ。人材の派遣や民間のアイデアを結集する必要もある。仕掛けづくりの後押しを国は惜しむべきでない。国家百年の計といえる地方創生には、腰を据えた取り組みが必要だ。
 地方創生の関連法案も提出された。地方のやる気とアイデアを引き出せる、規制緩和や税財源移譲のあり方を具体化すべきだ。
 集団的自衛権をめぐる安全保障法制や「イスラム国」など新たな国際情勢への言及は十分でなかった。代表質問などを通じて丁寧な説明を求めたい。


東京新聞 2014年9月30日
【社説】首相所信表明 大事なことを話さねば
 安倍晋三首相の所信表明演説には、消費税率の10%への引き上げも、集団的自衛権という言葉も登場しなかった。国民の関心事に全く触れない演説では、説明責任を果たしたとはとてもいえない。
 「行間を読め」ということなのか。言質を取られることを避けたのか。そもそも説明する責任などないと、開き直っているのか。
 きのうの所信表明演説である。九月初めに発足した第二次安倍改造内閣は「地方創生」を最重要課題に掲げ、臨時国会も「地方創生国会」と位置付ける。
 首相は愛知県旧稲橋村(現豊田市)に生まれた明治期の農業指導者、古橋源六郎暉皃(てるのり)が植林や養蚕、茶栽培という土地に合った産業を興した例などを紹介し、「日本の中に眠る可能性を開花させることでまだまだ成長できる」と訴えた。
 人口減少や超高齢化社会の到来は日本全体、特に大都市圏以外の地域には深刻な問題だ。
 どう克服し、若者が将来に夢や希望を持てる地域の社会、経済をつくるのか。一部自治体の消滅という研究も発表され、地域再生は喫緊の課題だ。演説の多くが地方創生に割かれたことも理解する。
 地域の発展を妨げる規制の打破はもちろん、権限、財源の自治体への大胆な移譲も求めたい。
 ただ、国民が直面する課題はそれだけにとどまらない。
 まずは経済。実質賃金が上がらず、景気が四月の消費税増税で腰折れしても、消費税は来年十月、10%に再増税されるのか否か。国民の関心が集まるのは当然だ。
 しかし、首相は「慎重に目配りしていくことが必要だ」と素っ気ない。景気動向を見て、国会終了後の十二月に判断するつもりなのだろうが、国会論戦のためにも考えを示すべきでなかったか。
 もう一つは集団的自衛権の問題だ。安倍内閣は七月一日、政府の憲法解釈を変更し、行使を容認する閣議決定を行った。平和主義、専守防衛など、戦後日本の「国のかたち」を変える方針転換だ。世論調査でも依然、行使容認反対は六割を超える。
 なぜ堂々と方針を示して、国会論戦に臨まないのか。来年以降の法整備を念頭に「切れ目のない安全保障法制の整備に向けた準備を進める」と言うだけでは、説明を避けたとのそしりは免れまい。
 首相が自らの考えを、全国民を代表する国会の場で披歴しようとしないのは許されない。各党首はきょうから始まる代表質問で、徹底的に問いただすべきである。

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