2014-09-30(Tue)

首相所信表明 臨時国会開幕 (3)

なぜ肝心なことを言わぬ 「地方創生」を盾にするな 不人気政策には触れず 「言葉だけの政治」は誰か 

<各紙社説・論説>
神戸新聞)所信表明演説/「地方創生」を盾にするな(9/30)
中国新聞)所信表明演説 「地方創生」まだ見えぬ(9/30)
山陽新聞)臨時国会開幕 「地方創生」へ濃い論戦を(9/30)
徳島新聞)臨時国会開会 「地方創生」へ具体策示せ (9/30)
高知新聞)【所信表明】なぜ肝心なことを言わぬ(9/30)
西日本新聞)首相所信表明 もっと具体論を聞きたい(9/30)
熊本日日新聞)所信表明演説 異論ある政策こそ説明を(9/30)
南日本新聞)[所信表明演説] 不人気政策には触れず(9/30)
琉球新報)所信表明 「言葉だけの政治」は誰か(9/30)




以下引用

神戸新聞 2014/09/30
社説:所信表明演説/「地方創生」を盾にするな
 臨時国会が召集され、安倍晋三首相が所信表明演説を行った。
 地域活性化と人口減少克服のため「地方創生」に取り組み、「女性の活躍」とともに経済成長の2本柱に位置付ける考えを表明した。震災復興の加速、日中・日韓関係の改善にも意欲を示し、堅実に政策を実行する姿勢をアピールしたといえる。
 特に地方創生をめぐっては全国の先進事例をふんだんに盛り込み、他の自治体にも発想の転換を迫った。上からの押し付けでなく、地域の個性を生かす視点は重要だ。
 だが、安倍首相には本当に地方や女性の苦悩が見えているのだろうか。明るい未来ばかりが強調され、若者や女性に多い非正規労働や格差拡大に苦しむ地方の現実が見過ごされてしまわないかと心配だ。
 政府は地方、女性それぞれの関連法案を提出する予定だが、首相から具体的な説明はなかった。今国会で成立を目指す労働者派遣法改正案は不安定な非正規雇用を増やす、との批判もある。
 きょうから始まる国会審議で、首相や関係閣僚はこうした疑問や懸念にしっかりと答えてもらいたい。
 一方で首相は、集団的自衛権行使に向けた安全保障法制や、消費税率10%への再引き上げにはほとんど言及しなかった。世論を二分するテーマで、相変わらず考えを正面から語ろうとしない。
 昨年の臨時国会は「成長戦略国会」と名付けながら、国民の知る権利を脅かす恐れのある特定秘密保護法を成立させた。「好循環実現国会」を掲げた先の通常国会では、自身の悲願でもある集団的自衛権行使を認める憲法解釈変更を急いだ。
 文句のつけようがない表看板を掲げながら、国民の反発が予想される重要政策は見えにくい与党協議の場を使って思い通りに進めていく。高い支持率を背景に、国会軽視ともいうべき姿勢を強めている印象だ。
 今国会の「地方創生」「女性の活躍」も反対しにくいテーマだ。会期中に政権運営に直結する福島、沖縄県知事選を控え、年内には消費税再増税の判断が迫る。野党の攻撃を避けたい思惑もあるのだろう。
 地方と女性は、ともに人口減少社会を乗り越える鍵である。政権が求心力を保つための「隠れみの」で終わらせてはならない。野党は徹底した政策論争を挑んでもらいたい。


中国新聞 2014/9/30
社説:所信表明演説 「地方創生」まだ見えぬ
 掛け声ばかりが目立った印象が強い。安倍晋三首相がきのう開会した臨時国会で所信表明演説を行った。
 首相は今国会を「地方創生国会」と位置付ける。来年春の統一地方選に向け、地方の活性化を後押しする姿勢をアピールする狙いがあるのは確かだろう。
 ただ所信表明では、先進的な取り組みを進める地域の事例を並べた以外は、「やれば、できる」「発想の転換が必要」といった抽象的な表現が多かった。
 政府として、どう地方創生を実現しようとしているのか。その道筋が見えてこない。
 若者のIターンが増えている島根県海士町の定住促進策、鳥取県の大山の水を使い全国にリピーターを広げている地ビール…。首相が所信表明で示した事例の一部である。
 これらが地域の特性を生かし実績を挙げているのは間違いない。それぞれの地域の自治体や企業、住民が独自の取り組みを進めた成果である。
 政府には、まだ限定的な先進事例を、どのように他の地域にも広げていくのかが問われよう。その点について、首相は「まち・ひと・しごと創生本部」を創設し、これまでと次元の異なる大胆な政策を取りまとめて実行すると強調した。
 だが具体策として出したのは、ベンチャー企業の支援などにすぎない。今国会に提出する地方創生関連の法案にも触れなかった。これでは踏み込み不足と言われても仕方あるまい。
 首相が今国会のもう一つの柱に据える「女性が輝く社会」の実現についても物足りなさが残る。所信表明では「真に変革すべきは、社会の意識そのもの」と語ったが、具体的に言及した政策は従来の延長線上にとどまった。
 政府は当初、今国会に提出する女性の活躍推進法案で、企業に女性登用の目標を数値で定めるよう義務付けることを検討していた。しかし企業側の反対で数値目標の義務化を見送る方針という。
 気になるのは、地方の再生や女性の社会進出の促進といった難しい問題に、首相が地に足を着けて取り組む覚悟があるのかということだ。
 4月の消費税の増税以降、個人消費の回復は遅れ、景気全体も変調が指摘されている。神通力を失いつつあるアベノミクスに代わる当面の「看板」として、地方と女性を掲げたとの見方もあるようだ。
 まず安倍政権に求められるのは、実効性のある具体策を示すことである。政府の本気度が試されよう。
 さらに見過ごせないのは、来年10月に消費税を再び引き上げるかどうかの判断について所信表明で全く触れなかったことだ。首相はこれまでに、7~9月の国内総生産(GDP)を参考にして年末に決める方針を示している。
 国民の関心が非常に高い問題である。あらためて現時点での考え方を述べるべきではなかったか。
 首相は安全保障関連の法整備にもほとんど言及しなかった。来年の通常国会に審議を先延ばししたのが理由だろう。
 だが7月に集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をして以降、初めての国会でもある。首相はしっかりと説明すべきだ。


山陽新聞(2014年09月30日 07時40分 更新)
社説:臨時国会開幕 「地方創生」へ濃い論戦を
 臨時国会が召集され、安倍晋三首相が所信を表明した。きょうから、第2次安倍改造内閣になって初めての与野党論戦が始まる。政府が重要テーマに掲げる「地方創生」や「女性の活躍」のほか、来年秋に消費税を10%に引き上げることの是非など課題はめじろ押しだ。中身の濃い議論を繰り広げてもらいたい。
 政府はきのう、地方創生に関する2法案を閣議決定した。東京圏への人口の過度な集中を是正し、地方に活力を生み出す取り組みを進める「まち・ひと・しごと創生法案」と、地域支援策の申請窓口を一元化し、自治体負担を軽減する地域再生法改正案である。ともに臨時国会での成立を目指している。
 首相は所信表明で、若者が定住する魅力的な街づくりの必要性を強調し、「大きな都市をまねるのでなく、個性を生かしていく。発想の転換が必要だ」と訴えた。
 安倍政権が地方重視を打ち出した背景には、来年春の統一地方選を控えて、地方にアピールしたいという思惑もあるようだ。だとしても、東京一極集中に歯止めをかける抜本策が喫緊の課題であることは言うまでもない。早急に策を講じなくてはならない。
 鍵を握るのは、従来型の省庁縦割りや、ばらまきの発想から抜け出せるかどうかである。2015年度予算の各省庁の概算要求を見ると、過疎地対策として、中心集落に商業・農業施設を集約してインフラを維持していくことを軸にした類似の事業を、国土交通省、総務省、農林水産省がそれぞれ打ち出している。
 こうした施策を整理していく必要がある。受け身でなく、自治体が地域の実情に即して主体的に進められるかどうかも大切なポイントとなる。地方創生を看板倒れに終わらせぬよう、政府は全力で取り組む必要がある。
 野党は安倍政権にしっかり対峙(たいじ)すべきだ。民主党は発信力不足との評価がつきまとう海江田万里代表の下、政権にいた当時に要職を担った実力者を執行部に起用し、巻き返しを期す。日本維新の会と結いの党が旗揚げした「維新の党」は初の論戦に臨む。
 とはいえ、政府は、集団的自衛権行使容認に伴う関連法案など、野党と対決色が強まりそうな法案は来年の通常国会に先送りする方針だ。統一地方選や臨時国会会期中に行われる沖縄県知事選などへの影響を考慮して“安全運転”で審議に臨むとみられる。
 差し迫った重要課題はほかにも多い。消費税再増税の判断や環太平洋連携協定(TPP)交渉、施行を12月に控えた特定秘密保護法の運用基準作りなどである。
 「自民1強」の国会で、野党は存在感を発揮できない状況が続いてきた。総じて安倍政権との対立軸を明確にできず、国会審議は緊張感を欠いている。このままでは国会の存在意義が問われる。野党の奮起を求めたい。


徳島新聞 2014年9月30日付
社説:臨時国会開会 「地方創生」へ具体策示せ
 臨時国会が開会し、安倍晋三首相が所信表明演説を行った。第2次安倍改造内閣が発足して初めての与野党論戦の場となる。
 安倍首相は、地域活性化と人口減少克服を目指す「地方創生」国会と位置付け、所信表明演説の多くを地方創生と女性の活躍推進に割いた。
 地方の人口減少は深刻さを増しており、地域活性化は最重要課題だ。女性政策も他の先進諸国に比べて対応が遅れている。積極的に取り組まなければならない。
 一方で、7月に閣議決定した集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更については、全く触れなかった。12月に可否を判断する消費税再増税への言及もなかった。
 反対しにくいテーマを前面に掲げる一方、賛否が割れる重要政策の議論を避けようという意図がうかがえる。来年春に統一地方選を控え、安全運転に徹したいのだろうが、国会軽視と見られても仕方あるまい。
 国民受けの悪い課題を隠してはいけない。安倍首相は異なる意見に耳を傾け、国会で丁寧に説明すべきである。
 地方創生について、首相は所信表明で徳島県など各地の取り組みを盛り込みながら「大きな都市をまねるのではなく、個性を生かしていく。発想の転換が必要だ」と呼び掛けた。
 地方の人口減少や超高齢化を「構造的な課題」と指摘。その上で「若者こそ危機に歯止めをかける鍵」とし、「若者が将来に夢や希望を持てる地方」づくりの重要性を強調した。
 そうした認識に異論はない。所信表明では若い起業家への融資要件の緩和や、政府調達の優遇制度による支援なども挙げた。だが、全般的に具体性に欠け、地方創生への道筋を示したとは言い難い。
 政府が今国会に提出する「まち・ひと・しごと創生法案」も「地域特性を生かした就業機会の創出」といった基本理念を提示するにとどまっている。
 どうすれば若者を地方に呼び戻せるのか、雇用を生み出すためには何が必要か。自治体からは、地方が自由に使える交付金の創設を求める声も出ている。与野党の枠を超えて知恵を出し合い、議論を深めてもらいたい。
 女性政策でも「女性が輝く社会」「待機児童ゼロ」といったスローガンが目立ち、具体策は乏しかった。論戦を通じて実効性のある政策を打ち出すよう求めたい。
 原発政策では、安全性の確認を前提に再稼働を進める姿勢を鮮明にしたが、難航する福島第1原発の汚染水対策や廃炉には触れなかった。
 安全保障関連の法案提出を、来年の通常国会に先送りしたのも問題である。集団的自衛権行使を可能にする閣議決定を急いだのは、何のためだったのか。
 執行部を一新した民主党や初陣となる維新の党など、野党に求められるのは、これらの問題を厳しく追及することである。
 先の通常国会の論戦では、個々の政策で党内調整がつかないことなどから、迫力に欠ける場面が多かった。それでは、国民の支持を得ることなど到底できまい。
 「1強多弱」の状況が続く中、野党の存在意義が問われていることを忘れないでもらいたい。


高知新聞 2014年09月30日08時13分
社説:【所信表明】なぜ肝心なことを言わぬ
 臨時国会などの冒頭で首相が語る所信表明は、国の針路を国民に丁寧に示すためにある。
 しかし、きのう召集された臨時国会で安倍首相は国民が本当に知りたいことを語っただろうか。多くの国民は、肝心なことが述べられていないと感じたはずだ。
 まずは集団的自衛権の行使容認をめぐる安全保障法制の問題だ。国民の賛否が割れていたにもかかわらず、短い国会審議の後、7月に行使容認を閣議決定した。
 決定後、「説明不足だ」という国民の批判を考慮したのだろう、政府は関連する法案の提出を臨時国会から来年の通常国会へと先送りした。
 そんな経緯があるからこそ国民は、法案の具体像を知りたかったはずだ。憲法9条に基づく「専守防衛」が政府の憲法解釈や新たな法律で変更されれば、一番影響を受けるのは国民だ。
 ところが首相は「切れ目のない安全保障法制の整備に向けた準備を進めている」と述べただけだ。「いかなる事態でも国民の命と平和な暮らしを守る」と力を込めたが、法制化で「命と平和」を心配している国民の不安は何ら解消されていない。
 しかも政府は先日、日米防衛協力指針(ガイドライン)改定は、年内にこだわらないとの方針を示した。首相は年内改定を目指して、7月に閣議決定したと説明してきた。方針の変更なら理由を国民に説明すべきだった。
 一方で首相が力を入れたのは「地方創生」だ。「ふるさとを消滅させてはならない」は、スローガンとして悪くない。ただし、具体的にどんな政策を国民に示すかが鍵となる。
 首相はあらためて「次元の異なる大胆な政策を」と述べたものの、それではどんな活性化策かよく分からない。
 もう一つ強調した「女性の活躍」もむろん重要だ。労働人口が減る中、女性が働きやすい環境を整えることは男性の働き方や生き方にも直結する。ただ、こちらも「女性が輝く社会を目指す」と理念先行が目立った。
 今国会は、こうした課題に加え原発再稼働や消費税率10%への再引き上げの判断など重要テーマがめじろ押しだ。安倍首相は所信表明では語り尽くせないことがあったはずだ。国会審議で国民の疑問にしっかりと答えてほしい。それには、野党による腰を据えた追及が欠かせない。


=2014/09/30付 西日本新聞朝刊=
社説:首相所信表明 もっと具体論を聞きたい
2014年09月30日(最終更新 2014年09月30日 10時34分)
 臨時国会が召集され、安倍晋三首相が所信表明演説をした。
 第2次安倍改造内閣の発足後、初の本格的な論戦となる国会の幕開けである。首相は「地方創生国会」と位置付け、地域活性化と人口減少の克服に取り組む決意を示した。「女性の活躍」とともに、この2本柱で「経済最優先」の政権運営を目指すという。
 地方創生のモデルとなる全国各地の活動例を取り上げ、「若者が将来に夢や希望を持てる地方」づくりを訴えた。だが具体策に乏しく、今国会で成立を目指す地方創生関連法案にも言及しなかった。
 女性の活躍についても「社会の閉塞(へいそく)感を打ち破る大きな原動力となる」「国民運動を展開する」などと力説したが、政府の新たな数値目標などは示さなかった。
 いずれも重要政策として位置付けるのであれば、幅広い国民の理解と協力が不可欠なはずだ。
 また「掛け声倒れ」に終わりはしないか。来春の統一地方選をにらんだ選挙対策ではないのか‐。そんな疑念を払拭(ふっしょく)するためにも、実現に向けた道筋を具体論で丁寧に説明してほしかった。
 テーマによっては、あえて深入りを避けるような姿勢も目立った。来年10月から予定通り消費税率を10%に引き上げるかどうかは「慎重に目配りをしていく」と述べるにとどめた。
 集団的自衛権の行使容認に伴う安全保障法制の見直しは「整備に向けた準備を進めている」という経過報告だった。
 消費税再増税の是非はこの臨時国会閉会後の12月に直近の経済指標を総合的に勘案して判断する構えだという。安保法制も来年の通常国会への先送りを決めている。
 首相としては、野党に付け入る隙を与えないためにも、「安全運転」に徹したつもりかもしれないが、それでは物足りない。
 ここは野党の出番だろう。安倍政権は山積する政治課題にどう取り組むつもりなのか。きょうから始まる代表質問で野党各党は徹底的な政策論争を挑み、国会論戦で存在感を発揮してもらいたい。


熊本日日新聞 2014年09月30日
社説 所信表明演説 異論ある政策こそ説明を
 第187臨時国会が29日召集された。安倍晋三首相は所信表明演説で、地域活性化や人口減少対策として掲げる「地方創生」と、「女性の活躍」推進を強調。成長の原動力とする考えを表明した。
 一方、7月に閣議決定した集団的自衛権の行使容認については「切れ目のない安全保障法制の整備に向けた準備を進める」としただけだった。閣議決定後、初の本格的な国会である。与党協議をはじめ閣議決定に至った経緯、安保関連法整備の準備状況を説明する責任があったはずだ。
 年末の消費税再増税の判断についても言及はなかった。国論を二分するような「不人気政策」についてはあえて触れず、安全運転に徹する戦略だろうが、それでは国民への説明責任は果たせまい。異論がある政策こそ、国会の場で活発な論議を尽くすべきではないのか。野党の奮起を望みたい。
 目玉政策である地方創生について、首相は人口減少や超高齢化など「構造的な課題は深刻」と指摘。全国各地の地域活性化の取り組みを紹介し、若者が将来に夢や希望を持てる地方をつくると訴えた。しかし、「やれば、できる」「気概を持てば」など精神論が目立ち、具体性を欠いた。
 女性政策でも「日本から、世界を変えていく」など耳に心地よい言葉が多用された。だが、政府は女性の活躍推進法案で、企業に対して女性登用の目標を数値で定めるよう義務付けることを見送るという。それで実効性が確保できるのだろうか。
 女性の活躍に関して「真に変革すべきは社会の意識そのもの」という主張に異論はあるまい。ただ地方創生にせよ、女性の活躍にせよ、成長戦略の一環として語られることへの違和感は拭えない。
 外交では、「最も重要な隣国」である韓国との関係改善に向けて努力を重ねると強調。中国についても、「安定的な友好関係」を築くために第2次政権発足以来実現していない首脳会談に意欲を示した。言葉だけでなく、具体的な働き掛けを急ぐべきだ。
 原発については、九州電力川内原発を念頭に、原子力規制委員会の審査で安全性基準への適合が認められたものは再稼働を進める、と明言。一方で、省エネと再生可能エネルギーの導入で原発依存度を下げる意向も表明するなど、極めて分かりにくいものとなった。
 東京電力福島第1原発事故自体への言及がなくなったことも気にかかる。昨年2月の通常国会の施政方針演説では「事故の反省に立ち、妥協することなく安全性を高める新たな安全文化を創り上げる」と安全性確保へ意欲を示していた。その後も廃炉や汚染水対策に国が前面に立つと強調していたが、今回、ついに触れなかった。
 廃炉作業の現状や汚染水対策が難航していることについて説明し、国が今後どのように対応するかを明らかにする必要があったはずだ。原発事故で古里を追われた人たちは大きな傷を抱えたままだ。国会での論戦を期待したい。


南日本新聞 ( 2014/9/30 付 )
社説:[所信表明演説] 不人気政策には触れず
 秋の臨時国会が召集された。
 安倍晋三首相は所信表明演説で人口減対策と地域活性化に向けた「地方創生」や、経済成長のために「女性が輝く社会」を目指すと表明した。また、有効求人倍率や賃金上昇をアベノミクスの成果とし、今後も「経済最優先」で政権運営に当たると強調した。
 来春の統一地方選を意識してアピールする狙いは明らかだ。
 一方、閣議決定による憲法解釈変更で行使を容認した集団的自衛権や、来年10月に予定される消費税率10%への引き上げなど、世論の批判がある課題に踏み込んだ発言はなかった。
 第2次安倍改造内閣が発足して初の国会である。国政全般について首相の考えを国民に伝える重要な演説で、不人気な政策への言及を避けたのは不誠実と言わざるを得ない。
 集団的自衛権の行使容認について、首相はこの演説で「いかなる事態にあっても、国民の命と平和な暮らしは守り抜く。その決意の下、切れ目のない安全保障法制の整備に向けた準備を進める」と述べるにとどまった。
 行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定がなされたのは通常国会閉会後の7月で、本格的な国会はこの臨時国会が初めてだ。首相には与党協議など閣議決定にいたる経緯や、安保関連法の準備状況を説明する責任があるはずだ。
 12月に判断する消費税率再引き上げの可否についても直接の言及はない。経済対策の関連で「消費税率引き上げや、燃料価格の高騰、この夏の天候不順などによる景気への影響にも慎重に目配りし」と述べただけだ。
 臨時国会の会期は11月末で終わる予定だ。十分な審議時間を確保できないと野党側から異論が出たが、与党が押し切った経緯がある。これでは「集団的自衛権の閣議決定と同じやり方だ」と野党から批判されても仕方ない。
 今後の国会審議の中で、首相はこうした難題についての「所信」を明らかにすべきだ。
 首相は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題に絡み「かつて、裏付けのない言葉だけの政治が沖縄の皆さんを翻弄(ほんろう)した」と民主党政権を批判した。「こんな無責任な政治を、二度と繰り返してはならない」と対決姿勢をあらわにした。
 民主党は執行部を一新し、安倍政権への攻勢を強める構えだ。新党「維新の党」など他の野党も存在感発揮を狙っている。「1強多弱」といわれる国会にあって、活発な論戦で政府の政策の問題点を明らかにしてほしい。


琉球新報 2014年9月30日
<社説>所信表明 「言葉だけの政治」は誰か
 「巧言令色鮮(すくな)し仁」という言葉がまず頭に浮かんだ。それが否定しようのない実感だ。
 安倍晋三首相は第187臨時国会で所信表明演説をした。さまざまな課題に言及したが、沖縄に関する部分は、現実に安倍政権が進めていることと裏腹の美辞麗句が並んでいる。誠実性を感じられぬ内容に不信の念を禁じ得ない。
 首相は「かつて裏付けのない、『言葉』だけの政治が沖縄の皆さんを翻弄(ほんろう)した」と述べた。「最低でも県外」と述べながら挫折した鳩山由紀夫元首相を批判しているのは間違いない。
 安倍首相は続けて「安倍内閣は、『言葉』ではなく、実際の『行動』で負担軽減に取り組んでいく」と述べた。「基地負担の軽減に全力で取り組む」とも述べている。
 しかし安倍政権が実際に取っている「行動」は、辺野古の新基地建設の強行である。このどこが「負担軽減」なのか。それと正反対の「負担押し付け」以外に、表現のしようがないではないか。
 安倍首相の指示により辺野古沖の掘削調査が強引になされたことを県民は知っている。暴力的な警備も周知の通りだ。世論調査で県民の8割が掘削強行に反発している。そんな中、首相は演説で「今後も沖縄の気持ちに寄り添う」と述べた。悪い冗談としか思えない。
 首相は普天間飛行場配備の空中給油機の岩国基地移駐を誇らしげに語ったが、移駐後1カ月間、ほぼ3日に1日、普天間に飛来したのが確認された。これこそ「裏付けのない、『言葉』だけの『負担軽減』」ではないか。真に沖縄の負担を軽減するなら、単に1機種の、しかも再飛来付きの「移駐」などではなく、県外・国外への海兵隊丸ごとの移駐しかあるまい。
 米国の元駐日大使の証言や米国の公文書により、1990年代以降も、沖縄の海兵隊を撤退してもよいとする米国に対し、日本政府が引き留めた実態が明らかになっている。政府が引き留めをやめれば、海兵隊移駐はすぐにでも実現できるのだ。
 演説は女性施策を強調したが、待機児童対策は予算の制約で遅々として進まない。原発再稼働の方針も示したが、汚染水対策に触れないまま安全性を強調したのも、無責任との印象を否めない。世論調査では集団的自衛権の行使容認や原発再稼働への反対が多数を占める。首相はまず、そうした民意にこそ耳を傾けるべきだ。

故事ことわざ辞典
※ 巧言令色鮮し仁
【読み】 こうげんれいしょくすくなしじん
【意味】 巧言令色鮮し仁とは、言葉巧みで、人から好かれようと愛想を振りまく者には、誠実な人間が少なく、人として最も大事な徳である仁の心が欠けているものだということ。
【巧言令色鮮し仁の解説】
【注釈】 「巧言」とは、口先巧みに言葉をあやつること。
「令色」とは、人にへつらうような愛想のよい顔つきのこと。
「鮮し」は「少なし」と同意だが、原典に沿えば「鮮し」と書く。
「仁」とは、他人を思いやる心を元にして自己を完成させる、最高の徳のこと。
『論語・学而』『論語・陽貨』にみられる言葉。
【出典】 『論語』


/////////////////////////////////////////////////////////////////

関連記事

テーマ : 政治・時事問題
ジャンル : 政治・経済

tag : 首相所信表明 臨時国会

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

プロフィール

ajimu-ra

Author:ajimu-ra

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最近の記事
リンク
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ(タブ)
RSSフィード
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
カテゴリー
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
FC2ブログランキング
↓↓クリックお願いします↓↓

FC2Blog Ranking

ブログ内検索
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

フリーエリア
blogram投票ボタン