2014-10-03(Fri)

地方創生 成長戦略と整合性が取れるのか

「現に地方で暮らしている人々のことを置き去りにするようでは本末転倒」
「地方衰退の一因となった政策を温存しながら、地方の活性化をはかろうとしている」



-----そんなに容易に処方箋を示すことができる課題なのだろうか。
-----だが、地方創生は若い世代の地方回帰だけで実現するわけではない。現に地方で暮らしている人々のことを置き去りにするようでは本末転倒だろう。
-----急速に進む高齢化にどう対応し、人口減少の著しい地域をどう維持していくのか。産業振興は長年抱える難問だ。医療や福祉、交通網、除雪対策といった生活環境面の整備も欠かせない。これらを総合的に解決していかなければ、魅力ある地域づくりはできない。(秋田魁新報)

----市町村の存続自体が危ぶまれるとの試算もあり、文字通り死活問題になるとの認識だ。しかしここまで深刻化したのは「家庭の問題に国が関わるべきではない」を理由に財政当局が後ろ向きだったからではないか。人口減少が社会に何をもたらすかについて想像力が貧困だったともいえる。(福島民友新聞)

----少子化や都市への人口流出に対する自治体の危機感は極めて強い。
----かつて政府主導で進めた合併推進などの政策が、行政サービスの低下や自治体の借金増を招いた面もあることを忘れてはならない。
----首相は各閣僚に「従来とは異次元の施策を」とハッパをかけたが、新しい政策を進めるにあたっては政府が上から目線でレールを敷くのではなく、自治体側とともに知恵を出し合う共同作業が欠かせない。
----過疎の問題はいまに始まったことではない。簡単に見つかる解はない。だからこそ、霞が関の発想だけでなく、自治体側からの発信が重要になる。(朝日新聞)


----地方の人口減対策では、若い世代を中心とする東京圏への人口流出に歯止めをかけ、東京から地方への新たな流れを作る必要がある。そのためには、若者が移住・定住できる職場と生活環境を地方に確保することが欠かせない。
----首相は、石破地方創生相に「バラマキ型の対応をせず、一元的・効果的に政策を実施する」よう指示している。大切な視点だ。来年度予算の概算要求では、各府省が「地方創生」名目の事業を競って計上した。内容が類似した事業や、従来型の公共事業も目立つ。国土交通省は整備新幹線の予算まで盛り込んでいる。政策の効果を検証し、優先度の高い政策に予算を集中させねばならない。(読売新聞) 

-----なぜ今、地方創生なのか。その背景にあるのは人口減少に対する強い危機感である。
-----人口減少に加えて、政府・自民党の中には、安倍政権の目玉経済政策である「アベノミクス」の恩恵が地方に届いていないという危機感もある。この二つの危機感が統一地方選を前にして結びついたのが地方創生構想である。
-----しかし、現時点では懸念材料も少なくない。規制緩和を柱とする安倍政権の成長戦略と今回の地方創生は、政策的な整合性がとれるのだろうか。地方衰退の一因となった政策を温存しながら、地方の活性化をはかろうとしているようにもみえるのである。
-----地方創生が何を意味するのか、その具体的な中身はまだはっきりしない。地方への権限移譲を柱とする分権改革と地方創生の関係もあいまいだ。何よりも重要なことは、国が「上から目線」で画一的な政策を地方に押しつけるようなことがあってはならない、という点である。
----非正規雇用が依然として多く、格差解消にはほど遠い。県経済が比較的順調に推移しているにもかかわらず、「格差と貧困」の問題が目に見える形で改善していないのはなぜなのか。雇用を拡大すると同時に、その質を改善し、全体を底上げするような政策が必要だ。地方の自主性を尊重し、内発的な発展の契機を引き出し、国として側面から支援するような持続可能な仕組みをつくることが求められる。(沖縄タイムス)

<各紙社説・論説>
秋田魁新報)地方創生国会 本県も積極的な提案を(9/27)
山陽新聞)国の行政機関 地方への移転を今度こそ(9/27)
山陰中央新報)人口減少/長期間続く前提で施策を(9/26)
福井新聞)手腕問われる農地バンク 中山間地域の集積が課題(9/24)
福島民友新聞)創生本部始動/地方の意見や発想を生かせ(9/23)
沖縄タイムス)[地方創生]自主性と多様性生かせ(9/17)
朝日新聞)地方創生 目線は低く、息長く(9/15)
読売新聞)創生本部初会合 若者が働ける「地方」を作ろう(9/15)
毎日新聞)分権と地方創生 まちづくり権限委譲を(9/14)




以下引用

秋田魁新報(2014/09/27 付)
社説:地方創生国会 本県も積極的な提案を
 そんなに容易に処方箋を示すことができる課題なのだろうか。安倍晋三首相が内閣の最重要課題に掲げる「地方創生」だ。人口減への歯止めと地域活性化を目指している。
 スピード感を持って臨む姿勢は評価する。ただ、本県をはじめ、全国の自治体が長年模索しながら、なかなか有効な手だてを見いだせないできた課題である。安倍首相が「地方創生国会」と位置付ける臨時国会が29日召集される。地方の現状を十分に精査し、本質を突いた議論を求めたい。
 「地方の意見も聞きながら、従来とは異次元の大胆な政策をまとめる」。安倍首相は今月中旬、司令塔となる「まち・ひと・しごと創生本部」の初会合でこう強調した。臨時国会に地方の主体性を重視し、自治体の地域活性化策を後押しする地域再生法の改正案などを提出。年内に2020年までの5カ年計画「総合戦略」と、60年までの将来展望を示す「長期ビジョン」を決める方針も示した。
 石破茂地方創生担当相は、子育て支援や雇用創出などについて、従来の地方政策の効果検証チームを立ち上げる予定だ。しかし、関係省庁や地方自治体へのヒアリングなど、短期間でどこまで掘り下げた検証ができるのか疑問が残る。
 安倍首相は都内の講演で、内閣官房が8月に行ったインターネット調査で、都内在住1200人のうち4割が地方移住に前向きだったと紹介。「地方にこそチャンスがあると、若い世代が飛び込んでいけるような地方をつくりたい。これらの人たちの希望をかなえるだけで、景色は一変する」などと、地方創生に意欲を示した。
 だが、地方創生は若い世代の地方回帰だけで実現するわけではない。現に地方で暮らしている人々のことを置き去りにするようでは本末転倒だろう。
 本県でも課題が山積している。急速に進む高齢化にどう対応し、人口減少の著しい地域をどう維持していくのか。産業振興は長年抱える難問だ。医療や福祉、交通網、除雪対策といった生活環境面の整備も欠かせない。これらを総合的に解決していかなければ、魅力ある地域づくりはできない。
 地方創生のヒントは国ではなく、地方そのものにあるのは間違いない。
 本県が先月、国に提出した国家戦略特区案「人口還流・次世代創生特区」も、地方創生への一つの提案と受け止めることができる。産業の振興や雇用創出、県出身者の定年後のUターン促進、移住者への起業支援、第3子以降の保育料無償化など、総合的な対策で国の後押しを求めている。
 人口減少問題への危機感は、国も地方も共通だ。国に頼る姿勢を改め、本県をはじめ地方が積極的に声を上げ、議論に参画していかなければ、真の地方創生は実現できない。


山陽新聞(2014年09月27日 08時36分 更新)
社説:国の行政機関 地方への移転を今度こそ
 東京に集中する国の行政機関について、地方への移転を進める考えを石破茂地方創生担当相が記者会見などで示した。政府の最重要課題の一つとなっている東京一極集中是正に直結する施策であり、移転推進の姿勢を明確にしたことは大いに評価できよう。
 石破氏は、人口減少克服に向けた地方活性化策の一環として、東京にある本社機能の地方移転を民間企業に要請していく方針を強調した上で、「『隗(かい)より始めよ』で、国のいろんな機関も移転すべきではないか」と述べた。
 移転を想定する具体的な機関には言及しなかったが、「単なる思い付きにしないため、かなり精密に設計していかなければならない」と、本格的に進めていく意向を明らかにした。政府が率先垂範するのは望ましいことである。
 国機関の地方移転についてはこれまでも必要性が叫ばれ、1988年1月には閣議決定もされている。東京の過密解消や諸機能の過度な集中の抑制、地方の振興、民間部門の地方移転の促進などが狙いだった。
 移転対象となった行政機関などのうち、自衛隊関連の部隊を除き65機関がこれまでに移転を終えている。ただ、このうち東京圏以外に出たのは、醸造試験所(東広島市)、本州四国連絡橋公団(神戸市)、動力炉・核燃料開発事業団(茨城県東海村)=名称はいずれも当時=のわずか3機関だけである。
 関東地方を所管する省庁の出先機関がさいたま市にまとまって移転したり、特殊法人が横浜市に移ったりしている。東京外国語大や警察大学校など東京23区外に出ただけで都内にとどまるケースもある。ほとんどの移転先は東京の郊外といえる場所であり、一極集中の是正にはならず、むしろ東京圏を拡大したにすぎないのが実態である。
 閣議決定の趣旨をないがしろにする結果といえよう。移転には省庁などの抵抗が強く、実現が容易でないのは確かだ。石破氏には強い覚悟を持って進めてもらいたい。
 企業の本社機能移転で石破氏が例に挙げたのが、建設機械大手のコマツである。東京にある本社の教育部門を石川県小松市に移すなど、この10年余り、地方重視の取り組みをしてきたという。こうした企業を増やしていきたい。
 ただ、帝国データバンクが行った新たな拠点整備を検討している国内企業への調査では、厳しい状況が浮き彫りになっている。本社の移転候補先は東京都、大阪府など大都市圏に集中した。工場の新設・移転先は海外がトップで、2位愛知県、3位埼玉県などやはり大都市圏が多い。
 こうした現状を打破するためには、地方に立地した企業の法人税を優遇するといった大胆な施策が必要だろう。
 今度こそ、国機関の地方移転を実態あるものにし、企業の本社機能などの移転も実現しなければならない。


山陰中央新報 '14/09/26
論説 : 人口減少/長期間続く前提で施策を
 政府が、人口減少と少子化を克服する対策にやっと力を入れ始めた。数値目標を初めて掲げ「50年後に人口1億人程度を維持する」という。ただ、対策に過大な期待をかけるのは禁物だ。今後、何世代にもわたり人口減少が続くという事実を冷静に受け入れた上で、制度設計をしていく必要がある。
 政府の有識者会議の試算によると、仮に合計特殊出生率が2030年までに人口を維持できる2・07に急回復しても、人口減少が収まるのはその60年以上後だという。しかも、この想定自体が実現不可能に近いと思われる。
 14年上半期(1~6月)に生まれた赤ちゃんは前年同期比2・7%減の49万6391人で、1年間の出生数が初めて100万人を下回るかもしれない。上半期の人口の自然減は15万6245人と、減少が加速している。
 1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は、13年で1・43。05年に1・26まで落ち込んでからわずかに回復したが、2・07には程遠い。この水準が続くと、60年の人口は今より約4千万人減って約8700万人となり、65歳以上の人口が約4割を占める超高齢社会が到来する。
 人口が減少して社会の高齢化が進むと、さまざまな負の影響が出てくる。労働力人口の減少は経済成長の足かせとなる可能性がある。年金や医療など社会保障の維持が困難になる懸念もある。人口減少を食い止めるのは、国家的な課題といえる。
 出生率は長期的に低下傾向が続いてきたが、実は1組の夫婦が産む子どもの数は2人前後で、長い間、ほとんど変化していない。それでは、なぜ出生率が低下したのか。言うまでもなく、非婚化が急速に進んだためである。
 各種の調査によると、若者の9割以上は結婚したいと考えているが、結婚率は昔に比べて大きく下がった。その大きな原因と考えられるのは、1990年代以降の経済の低迷と非正規雇用の増加により、十分な所得のある若い男性の割合が少なくなったことだ。
 所得が少ない男性ほど結婚するのが難しいことは、よく知られているし、実態もそうなっている。経済状況を好転させ、雇用の安定化を図ることがまず必要だ。
 さらに、政府の支出のうち少子化・人口減少対策に重要な役割を果たすのは、出産や育児などを支援する「家族関係社会支出」である。日本のこの支出が国内総生産(GDP)に占める比率は約1%。フランスやスウェーデンの3分の1ほどにすぎない。予算をつぎ込むことを惜しんではならない。
 少子化対策の柱の一つは、女性が仕事と子育てを両立できる環境の整備だ。これ自体は正しい目標だが、実際は、子育て期には仕事をやめて家庭にいたいと考える女性も多い。従来の対策では、こうした層が視野の中心に入っていなかった。多様な生き方があることを認め、全ての女性を分け隔てなく支援する政策が望まれる。
 客観的に見て、どんなに知恵を絞ろうとも、長期にわたり日本の人口が減り続けることは避けられない。その事実を前提として政策運営をしていくべきである。


福井新聞(2014年9月24日午前7時25分)
論説:手腕問われる農地バンク 中山間地域の集積が課題
 小さな農地を集積・集約して借り上げ、意欲ある生産者に貸し出す公的機関「農地中間管理機構(農地バンク)」。国の成長戦略の一環として本年度から事業運用が始まり、既に全国46道府県にできた。本県では「ふくい農林水産支援センター」が4月に県の指定を受け、9月からは農地の出し手と受け手のマッチングを本格化。国が目標にしている農地集積率の8割達成に向け、農地バンクの手腕が問われる。
 国が農地の集積・集約を急ぐ背景には、農業従事者の高齢化や耕作放棄地の拡大がある。農林水産省の2013年の調査によると、普段から仕事として主に、農業に就いている基幹的農業従事者174・1万人のうち、65歳以上は106・7万人と全体の6割を超す。一方で40歳以下は17・8万人と1割しかいない。
 また耕作放棄地は農水省の10年の調査によると、39・6万ヘクタールで滋賀県の面積に匹敵する。このうち半分近くは農業を行っていない人が所有する農地だ。耕作放棄地は、ここ20年で倍増しており、今後も増える可能性は否定できない。本県の13年の基幹的農業従事者数は1・1万人で、うち65歳以上は8割に迫る。また10年の耕作放棄地は1738ヘクタールで00年から倍増した。
 国は今後10年間での農地集積率の8割達成を目標に掲げている。一方、12年度の集積率が65・1%の本県は、基本方針で18年度までに前倒しし、集積化での増加面積を5580ヘクタールとする。ふくい農林水産支援センターが7月下旬から約1カ月、借り受け希望者を募ったところ、586件で計7881ヘクタールの応募があった。
 ふくい農林水産支援センターは本年度、9月から12月にかけて農地利用配分計画を作成し、来年1月には受け手に権利を移したい意向だ。農地集積は応募数の上では、目標に達しているように見える。しかし事業に伴う農地権利の付け替え、仮押さえ、希望区域の重複も含まれ、全てを増加分としては計算できない。さらに出し手が、どれくらい応募してくるかなどマッチングの成立は未知数だ。
 また農地集積においては、中山間地域が取り残されることも懸念材料になっている。平野の外縁部から山間地を指す同地域は傾斜地が多く、面積が狭いなど耕地条件の悪さから平地ほど集積が進まないと予想されるからだ。生産性が低い同地域の農地を維持していくのは極めて難しく、これまでも国や県が支援してきたものの抜本的な解決策までは見いだせていない。
 中山間地域は流域の上流部に位置して農業・農村が持つ水源涵養(かんよう)、洪水防止、自然環境や景観の保全など多面的機能を持つ。平地とは違った観点での支援策の充実とともに、農地維持の取り組みの幅を広げるために機能をアピールし、多くの人に価値を共有してもらう手だてが求められる。


福島民友新聞 (2014年9月23日付)
社説:創生本部始動/地方の意見や発想を生かせ
 安倍晋三首相が掲げる「地方創生」に向けて政府は、人口減少対策や地域経済の活性化に取り組む「まち・ひと・しごと創生本部」を本格始動させた。
 創生本部は、国の地方戦略として、東京五輪が開催される2020年までの総合戦略と、今後50年間の長期ビジョンをまとめる。一部は来年度予算案にも反映させる。
 今秋の本県と沖縄県の知事選や来春の統一地方選に向けて、地方重視を演出する政治的なパフォーマンスではないかと批判されないためにも、地方の実態に精通した地方自治体の意向を尊重し、戦略や長期ビジョンをつくるべきだ。
 安倍政権は地方創生を成長戦略の新しい目玉戦略に位置付けている。秋の臨時国会には、政府や自治体の役割を定める「まち・ひと・しごと創生法案」を提出し、成立を図る方針だ。
 全国知事会など地方6団体は政府戦略に地方の意見を反映するよう要請していたが、これまでに判明した創生法案の中身を見る限り消極的のように受け取れる。地方の意見を聞き、地方からの発想やアイデアを積極的に取り入れることが肝心だ。
 少子化対策で政府は、「50年後に1億人程度の人口を維持」の目標を掲げる。市町村の存続自体が危ぶまれるとの試算もあり、文字通り死活問題になるとの認識だ。しかしここまで深刻化したのは「家庭の問題に国が関わるべきではない」を理由に財政当局が後ろ向きだったからではないか。人口減少が社会に何をもたらすかについて想像力が貧困だったともいえる。
 少子化対策では、地方に一日の長がある。適齢期を迎えた男女の出会いの場づくりから、子育ての支援、雇用の創出など幅広く、力を入れなければならない施策は自治体ごとに異なる。現場を知らない中央省庁の縦割り行政に任せるべきではない。自治体の独自の施策を基金で後押しして競争を促すなど方策はいろいろと考えられる。
 創生本部の初会合で安倍首相は「従来とは異次元の大胆な政策をまとめる」と強調した。副本部長の石破茂地方創生担当相もバラマキ型の対応をせず、一元的・効果的に政策を実施するよう職員に指示した。忘れずに実行してもらいたい。
 人口減少の影響を緩和し、地域を守るには、国土のグランドデザインをもう一度考えるべきだ。地域社会をどう維持するかの視点から「一極集中の是正」「国土の均衡ある発展」を超える新しい国土計画の理念を創出してほしい。


沖縄タイムス 2014年9月17日 05:30
社説[地方創生]自主性と多様性生かせ
 地方の問題に対する関心が低いとの印象を与えていた安倍政権が、来春の統一地方選を意識し、地方創生に向けた取り組みを加速させている。
 地方創生の司令塔となる「まち・ひと・しごと創生本部」の初会合で安倍晋三首相は、人口減少対策と地方の活性化を実現するため、「従来とは異次元の大胆な政策をまとめていく」ことを明らかにした。29日に召集される秋の臨時国会に地方創生関連法案を提出する予定だ。
 なぜ今、地方創生なのか。その背景にあるのは人口減少に対する強い危機感である。
 日本創成会議・人口減少問題検討分科会が5月に発表した消滅可能性のある自治体リストは、関係自治体だけでなく政界にも大きな反響を呼んだ。
 若年人口が減ることで地域経済の活力が奪われ、人口流出に拍車がかかる。全国知事会は7月、「少子化非常事態宣言」を発し、国・地方を通じた総合的な対策を求めた。
 人口減少に加えて、政府・自民党の中には、安倍政権の目玉経済政策である「アベノミクス」の恩恵が地方に届いていないという危機感もある。この二つの危機感が統一地方選を前にして結びついたのが地方創生構想である。
 しかし、現時点では懸念材料も少なくない。
 規制緩和を柱とする安倍政権の成長戦略と今回の地方創生は、政策的な整合性がとれるのだろうか。地方衰退の一因となった政策を温存しながら、地方の活性化をはかろうとしているようにもみえるのである。
    ■    ■
 地方創生が何を意味するのか、その具体的な中身はまだはっきりしない。地方への権限移譲を柱とする分権改革と地方創生の関係もあいまいだ。
 何よりも重要なことは、国が「上から目線」で画一的な政策を地方に押しつけるようなことがあってはならない、という点である。
 沖縄県は1人の女性が生涯に出産する子どもの数の平均を示す数値(合計特殊出生率)が全国で最も高く、人口の増加率も全国トップクラス。人口減少問題に対する深刻さの度合いは他府県と異なる。
 沖縄の場合、離島での雇用創出による人口流出防止と「格差と貧困」への対応が最も重要だ。少子化は、社会経済的な理由に基づく現象である。「非正規雇用のため給料が安く結婚に踏み切れない」「非正規雇用のため出産後の子育てに不安がある」と、ためらう若者も少なくない。
    ■    ■
 積年の課題であった失業率が改善されたとはいえ、非正規雇用が依然として多く、格差解消にはほど遠い。
 県経済が比較的順調に推移しているにもかかわらず、「格差と貧困」の問題が目に見える形で改善していないのはなぜなのか。雇用を拡大すると同時に、その質を改善し、全体を底上げするような政策が必要だ。
 地方の自主性を尊重し、内発的な発展の契機を引き出し、国として側面から支援するような持続可能な仕組みをつくることが求められる。 


朝日新聞 2014年9月15日05時00分
(社説)地方創生 目線は低く、息長く
 安倍首相が改造内閣の目玉政策に掲げる「地方創生」。これを進める政府の「まち・ひと・しごと創生本部」が先週、すべての閣僚が参加して初めての会合を開いた。
 人口減少に対応するため、2020年までの「総合戦略」や「50年後も人口1億人維持」の長期ビジョンを年内にまとめる。次の臨時国会には、地方創生の基本理念を定める法案も出すという。
 手をこまねいていれば約半数の市区町村が消滅する可能性がある――。民間の研究組織「日本創成会議」は5月にこんなショッキングな試算を公表した。政権には「アベノミクスの恩恵が地方には届いていない」という問題意識もある。
 少子化や都市への人口流出に対する自治体の危機感は極めて強い。安倍政権が地域の活性化に本腰を入れることについては賛成だ。
 ただし、かつて政府主導で進めた合併推進などの政策が、行政サービスの低下や自治体の借金増を招いた面もあることを忘れてはならない。
 首相は各閣僚に「従来とは異次元の施策を」とハッパをかけたが、新しい政策を進めるにあたっては政府が上から目線でレールを敷くのではなく、自治体側とともに知恵を出し合う共同作業が欠かせない。
 自民党には、来春の統一地方選で「地方重視」をアピールしたいとの思惑もうかがわれる。目先のことにとらわれず、息の長い取り組みが必要だ。
 政権の動きに合わせるように、全国町村会が先週、「都市・農村共生社会の創造」と題した提言を発表した。
 農村を、再生可能エネルギーの供給源として、あるいは企業のサテライトオフィスでの仕事と農業を両立させるような新たなライフスタイルの場としてとらえ直す。そのうえで農業・農村政策で政府と自治体が担うべき役割を整理し直したり、新たな交付金制度を設けたりすることを求めている。
 町村会が具体的な政策を盛り込んだ提言をするのは初めてだ。「人口減の局面で、農村の果たす役割やあるべき姿について、農村から問いかける必要を感じた」と会長の藤原忠彦・長野県川上村長は説明する。
 過疎の問題はいまに始まったことではない。簡単に見つかる解はない。だからこそ、霞が関の発想だけでなく、自治体側からの発信が重要になる。
 知恵を出せなければ消滅は免れない。自治体側にもこのぐらいの気概がほしい。


読売新聞 2014年09月15日 01時11分
社説:創生本部初会合 若者が働ける「地方」を作ろう
 地方の活力を高めるには、若い世代が安心して働き、結婚や出産、子育てができる社会環境を整えることが肝要だ。
 政府が、人口減対策や地域活性化など地方創生の司令塔「まち・ひと・しごと創生本部」の初会合を開いた。本部長の安倍首相は「異次元の大胆な政策をまとめる」と強調した。
 会合では、東京一極集中を是正するため、地方に若者を呼び込む拠点作りや雇用創出などを進めるとの基本方針を決めた。
 縦割り行政を排し、関係閣僚や官僚が積極的に地方の「現場」に足を運ぶことも確認した。
 地方の人口減対策では、若い世代を中心とする東京圏への人口流出に歯止めをかけ、東京から地方への新たな流れを作る必要がある。そのためには、若者が移住・定住できる職場と生活環境を地方に確保することが欠かせない。
 創生本部は年内に、50年後に人口1億人を維持するための長期ビジョンと、来年度から5年間の総合戦略を策定する。一部は来年度予算案にも反映させる予定だ。
 安倍政権は、地方創生について、成長戦略の新しい目玉政策に位置づけている。秋の臨時国会には、政府や自治体の役割を定める地方創生基本法案など関連法案を提出し、成立を図る方針だ。
 首相は、石破地方創生相に「バラマキ型の対応をせず、一元的・効果的に政策を実施する」よう指示している。大切な視点だ。
 来年度予算の概算要求では、各府省が「地方創生」名目の事業を競って計上した。内容が類似した事業や、従来型の公共事業も目立つ。国土交通省は整備新幹線の予算まで盛り込んでいる。
 政策の効果を検証し、優先度の高い政策に予算を集中させねばならない。石破氏は、その調整役として手腕を発揮してほしい。
 重要なのは、政府が、自治体や民間との建設的な対話を重ねて、「現場発」のアイデアを積極的に取り入れることだ。
 政府は、人口急減による自治体消滅に警鐘を鳴らす増田寛也元総務相ら12人の有識者会議の設置を決めた。有識者らは長期ビジョン策定に向け、政府に助言する。
 首相が先月末に行った有識者との意見交換会では、様々な提言が出た。技能を持つ人材の地方での就労を促す人材バンクや地方移住支援センターの設置、企業の本社機能の地方移転や地方採用枠の拡大などである。
 こうした発想を具体的な政策に着実に反映させたい。


毎日新聞 2014年09月14日 02時30分
社説:分権と地方創生 まちづくり権限委譲を
 第2次安倍改造内閣の下、政府の分権改革が大事な局面にさしかかってきた。地方が提案した国からの権限移譲について、政府は年内に対処方針を決めるためだ。
 安倍晋三首相は分権改革を地方創生と共に地方重視の両輪という認識で取り組む必要がある。とりわけ、農地を宅地や工業用地など他用途に転用する許可権限の移譲を地方側は一致して求めている。市町村が自主的なまちづくりができるよう踏み出す時である。
 提案募集方式は自治体の要望がある個別テーマについて権限移譲を進める。従来の方法と異なり、希望する自治体に限り権限を移譲する「手あげ」方式も選択できる。これまで126の自治体などからのべ1060の要望が寄せられたが、所管する中央官庁は約8割について対応できないと拒否している。
 現政権は分権改革に熱心といいがたい状況だった。民主党政権で創設された一括交付金制度は廃止された。地方に大胆に分権することが前提の道州制構想の推進を掲げながら、国の出先機関の見直しは事実上凍結している。地方の提案への消極対応も中央官庁が政権の熱意を見透かした側面は否定できまい。
 だが、首相に地方創生の熱意があるのなら地方行政でまちづくりの自由度を高める努力が欠かせない。人口減少の下、多くの自治体が都市計画の再点検を迫られるためだ。
 たとえば農地転用許可は4ヘクタール超の農地は国が許可権を握る。都道府県はそれ以下の面積で許可権を持つが2ヘクタール超の場合は国との協議を要しそれに多大な労力を費やす。地方側はかねて権限移譲を求めてきたが、農水省は優良農地の保全などを理由に拒否してきた。
 今回、全国知事会など地方6団体は結束して、この権限を自治の現場である市町村に移すよう求める提言をまとめた。都道府県の持つ転用権限はすでに多くの県で事務の特例として市町村に委ねられている。地方が結束したことは注目に値しよう。
 農地転用は一定の基準に従い、許可される。基準を明確にすることで地方に権限を移し、深刻さを増す耕作放棄地対策への取り組みに国と地方の連携を強化すべきではないか。
 ほかにも町村が都市計画を決める際に都道府県の同意を要することの見直しや、保安林の指定、解除権限の国から都道府県への全面移譲などを地方は提案している。いずれも官庁の抵抗の強い分野だ。
 分権改革では市町村による自主的なまちづくりを可能とする権限が積み残された領域となっている。第1次安倍内閣では分権改革を主導した首相が面目を施す好機である。


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