2014-10-13(Mon)

アスベスト判決 「隙間のない救済」急げ (3)

石綿被害 最高裁判決  命を守るべき国の責任は重い 国は全面救済に乗り出せ 行政の怠慢による被害償え

<各紙社説>
愛媛新聞)泉南石綿訴訟判決 命を守るべき国の責任は重い(10/12)
徳島新聞)石綿最高裁判決 国は全面救済に乗り出せ(10/11)
高知新聞)【石綿禍訴訟】「隙間のない救済」急げ(10/12)
西日本新聞)アスベスト判決 国は対策見直し救済急げ(10/11)
熊本日日新聞)アスベスト判決 消極的対応の見直し迫る(10/12)
琉球新報)アスベスト訴訟 行政の怠慢による被害償え(10/12)



以下引用


愛媛新聞 2014年10月12日(日)
社説:泉南石綿訴訟判決 命を守るべき国の責任は重い
 経済や産業の発展が、労働者の命より優先されていいはずがない。そんな当然の大原則を、司法があらためて行政に突きつけた。
 大阪・泉南地域のアスベスト(石綿)の健康被害をめぐる2件の集団訴訟上告審で、最高裁が国の賠償責任を初めて認める判決を出した。
 石綿の危険性が明確に分かった1958年の時点で、国が排気装置の設置を「できる限り速やかに」義務づけるべきだったと認定。実際には71年まで規制しなかったことを違法と断じている。
 判決は、国の不作為や行政の怠慢を厳しく断罪するもので、画期的と評価したい。国の規制権限不行使についての司法判断は、流れとして確立されつつあり、その意義も極めて大きいといえよう。
 塩崎恭久厚生労働相は、原告への謝罪やさらなる救済措置などについて明言を避けたが、先延ばしや救済格差の放置は到底許されない。国は、遅きに失したとはいえ、これまでの限定的、消極的な対応を真摯(しんし)に反省し、苦しむ多くの患者の全面救済に、一刻も早く踏み出さねばならない。
 潜伏期間が数十年と長く、「静かな時限爆弾」と呼ばれる石綿被害では、昨年までに1万1千人以上が死亡。労災認定だけでも毎年千人近くに上り、今も増えつつある。だが、半世紀も前から健康被害が分かっていたにもかかわらず、石綿は安価で優れた建材として使われ続け、原則使用禁止はようやく2004年、石綿健康被害救済法の施行は06年。規制の大幅な遅れは明白で、企業はもちろん国の責任はあまりに重い。
 被害は、工場労働者だけでなく、周辺住民や建設労働者にも広がる。建設では700人以上が国や企業を提訴、係争中。国はこれまで、救済を労災か特別法での補償に限定してきたが、苦しみは同じでも労働者か住民かで補償内容に格差があるなど、患者の線引きは容認し難い。救済の門戸もより広げるべきで、実態調査に努めて被害の掘り起こしを続ける責務があろう。
 徹底した調査と原因究明は安全対策の強化につながり、何より二度と同じ過ちを繰り返さないために欠かせない。
 国内で過去に使用されたアスベストは総計約1千万トン。その多くが、現存する建築物に残る。高度成長期に建てられた建築物はこれから解体時期を迎え、また大震災時の建物の倒壊や解体、がれき処理で、石綿混じりの粉じんが拡散してもいる。最近では、運搬用麻袋に含まれた石綿の被害も新たに明らかになった。
 石綿被害は決して「過去の病」ではない。国は、失われずに済んだはずの命への痛切な反省をもって、現在進行形で拡大し続ける被害を食い止めねばならない。


徳島新聞 2014年10月11日付
社説:石綿最高裁判決 国は全面救済に乗り出せ
 大阪・泉南地域のアスベスト(石綿)被害をめぐる損害賠償訴訟で、粉じん対策を怠った国の責任を認める初の判決を最高裁が言い渡した。
 安全規制の権限を持つ国は、働く人の生命と健康を最優先しなければならない。そうした原則を明確に示した司法判断であり、意義は極めて大きいといえよう。
 石綿訴訟は大阪や東京、福岡など9都道府県で起こされているが、いずれも被害者は高齢化しており、残された時間は多くない。
 訴訟が長引けば、病気に苦しむ患者の救済が遠のくことになる。国は判決を真摯に受け止め、全面救済を急ぐべきである。
 判決が言い渡されたのは、泉南地域の2件の集団訴訟で、2陣の患者原告と遺族に約3億3千万円の賠償を命じた高裁判決が確定。原告が敗訴した1陣の二審判決は破棄され、高裁に差し戻された。
 訴えたのは、石綿を吸って肺がんや中皮腫などを患った元工場労働者や遺族である。
 泉南では明治時代に石綿紡績業が始まり、戦前は軍需産業に、戦後は鉄鋼や自動車産業に製品を供給してきた。最盛期には約200の石綿工場が集中し、日本の経済成長を支えてきたが、大半が零細で環境は劣悪だった。
 石綿は発症までの潜伏期間が数十年と長く、「静かな時限爆弾」と呼ばれている。健康被害が深刻となっても、既に工場は廃業していることが多く、原告らは国に被害補償を訴えるしか道はなかった。
 争点となったのは、国の安全対策が十分だったのかどうかだ。
 これについて、裁判長は「石綿の危険性について医学的知識が確立した1958年には、工場への排気装置設置が技術的に可能で、国が義務付けるべきだった」と指摘。71年まで義務付けなかったのは遅過ぎて違法だと認めた。
 国の規制の怠慢を厳しく捉え、被害救済を重視した判断といえよう。
 ただ、防じんマスクの着用を国が早期に指導しなかったことは違法とはいえないとし、石綿粉じん濃度の規制も適法だったとした点には疑問が残る。
 排気装置を設置する余裕のない小さな工場が多かったことを考えると、マスク使用や濃度規制の強化は、より効果的な対策になったのではないか。係争中の他の訴訟の行方に注目したい。
 国は2004年の筑豊じん肺訴訟と関西水俣病訴訟の最高裁判決で、規制権限を適切に行使しなかったとして、賠償責任を認定されている。
 これまでの石綿訴訟の中で、国は対応に怠りはなかったと主張してきたが、厳しく反省すべきだ。どこに問題があり、なぜ違法とされたのか。しっかりと検証し、被害が繰り返されないよう、労働や環境、医療など今後の行政に生かさなければならない。
 石綿は06年に製造、使用とも全面的に禁止されたものの、被害者は今後も増えるとみられる。
 患者に対しては労災認定に加えて、06年制定の石綿健康被害救済法による救済が行われている。しかし、専門家からは給付内容も財源も不十分だとの指摘が出ている。
 国は過去の怠慢が招いた被害であることを重く受け止め、より手厚い救済に乗り出すべきである。


高知新聞 2014年10月12日08時13分
社説:【石綿禍訴訟】「隙間のない救済」急げ
 アスベスト(石綿)による健康被害をめぐる2件の集団訴訟で、最高裁が初めて国の責任を認める判決を言い渡した。近年の公害訴訟などにみられる救済重視の流れに沿った司法判断といえる。
 後手に回った行政対応を「著しく合理性を欠き違法だ」と厳しく指摘した。同様の訴訟にも影響を与えよう。国は、被害拡大を招いた過去の怠慢を重く受け止める必要がある。
 今回の訴訟に費やされた8年余りの間に、原告のうち14人が死亡した。ほかの患者も高齢化や病状の進行で、救済に残された時間は少なくなっている。全面的な救済に向けた国の姿勢が問われよう。
 原告は、石綿製品の生産地として栄えた大阪・泉南地域の紡績工場に勤めた労働者やその遺族で、肺がんや中皮腫などを患った。
 最高裁の判決で、「2陣」の訴訟は国に賠償を命じた大阪高裁判決が確定。原告が敗訴した「1陣」の二審判決は破棄され、大阪高裁の差し戻し審で賠償額を審理する。
 最大の争点は、国の安全規制の在り方だった。最高裁は違法かどうかを判断する基準について、「国は権限を適時、適切に行使して国民の健康を守るべきだ」とした。
 具体的な規制では、1971年に工場への設置が義務付けられた排気装置で、石綿の危険性が医学的知見として確立していた58年には、義務化するべきだったと判断した。
 国の責任が明確になったことは大きな前進とはいえ、全面的な救済にはなお遠い。差し戻された原告はさらに決着まで時間を要し、労働時期が違法と認定された期間から外れた患者は請求が棄却された。また、同じく石綿被害に苦しむ建設労働者らの訴訟も、各地で続いている。
 現在、国の救済策は労災と、石綿健康被害救済法に基づく対応が柱になっている。同法制定時に、国が掲げた方針が「隙間のない救済」だった。
 だが、潜伏期間が数十年に及ぶ石綿被害では労災の請求が今も年間千人近くあり、両制度の給付の格差を指摘する声も根強い。
 司法が国の「不作為」を認定した以上、その責任に応じた救済の在り方をあらためて検討すべきではないか。判決を「隙間のない救済」へのきっかけにしなければならない。


=2014/10/11付 西日本新聞朝刊=
社説:アスベスト判決 国は対策見直し救済急げ
2014年10月11日(最終更新 2014年10月11日 10時36分)
 経済成長を優先するあまり必要な規制を怠り、その過ちをかたくなに認めなかった国の姿勢を厳しく断罪する判決といえよう。
 大阪府の工場でアスベスト(石綿)を吸い、肺がんなどを患った元労働者らの訴訟で最高裁は、排気装置義務付けなど必要な規制権限を行使しなかった国の責任を初めて認めた。科学的知見の進展に応じて法整備や行政指導で適切な対策を行ってきた-とする国の主張を退けた意味は重い。
 有害物質の健康被害を広く救済する司法の流れがある。国は判決を工場の粉じん対策に関するものと限定すべきではない。規制権限の不行使に国家賠償責任が認定された事実を率直に受け止め、石綿対策全体を早急に見直すべきだ。
 石綿被害は工場労働者と家族だけでなく周辺住民や建設現場の労働者などにも広がる。各地でさまざまな集団訴訟も起きている。
 現状は労災と特別な救済法に基づく補償に限定しているが、判決を踏まえて拡充を検討すべきだ。訴訟には加わっていない声なき被害者の掘り起こしも求めたい。
 石綿は安価で耐久性に優れ、「奇跡の鉱物」ともてはやされた。高度成長期から約50年にわたり輸入され、計1千万トンが建材を中心に使われた。危険性は早くから指摘されていたものの、代替物がないとの経済界の声もあり、全面使用禁止は先進国でも遅れた。
 石綿の粉じんを吸い込んでから発症までの潜伏期間は15~50年と長い。悪性のがんで原因の大半が石綿とされる中皮腫の年間死亡者は2006年に千人を超え、その後も毎年増え続けている。
 被害は今後、加速度的に顕在化するとみられる。石綿を吸い込んだ恐れのある人たちが早期に診断や治療を受けられる医療体制を整えねばならない。
 あと十数年で高度成長期に石綿を使った建物の解体がピークとなる。新たな飛散対策が重要だ。国は解体前の事前調査などを法改正で実現したが、不十分という専門家もいる。現在の省庁縦割りの対応を改め、連携を強化すべきだ。


熊本日日新聞 2014年10月12日
社説:アスベスト判決 消極的対応の見直し迫る
 経済成長を優先し、労働者の健康対策を怠った国の「不作為」を厳しく批判する判決だ。
 アスベスト(石綿)の健康被害をめぐり大阪・泉南地域の元工場労働者らが国に損害賠償を求めた2件の集団訴訟上告審で、最高裁は「労働者の生命や健康を守るための粉じん対策を怠った」として国の責任を初めて認める判決を言い渡した。2004年の水俣病関西訴訟の最高裁判決と同様に、国の責任を広く認め、被害救済を重視する考え方といえる。
 これで2陣の原告勝訴の大阪高裁判決が確定。原告敗訴だった1陣の二審判決は破棄され、大阪高裁に差し戻された。石綿被害をめぐる訴訟は各地で起こされており、最高裁判決は、全国で700人以上が原告となった建設アスベスト訴訟(県内原告は4人)の行方にも大きく影響するだろう。
 石綿は毛髪の約5千分の1の極細繊維からなる天然鉱物。安価で耐火性に優れるため、高度経済成長期に建材などへの使用が急増した。吸い込むと肺がんや中皮腫を起こすことが分かり、対策が進められたものの、中小・零細工場では取り組みが遅れたという。
 泉南訴訟の主な争点は、(1)工場への排気装置の設置(2)防じんマスクの着用(3)粉じん濃度の規制-について、国が適切な義務付けや対応をしたかどうかだった。判決は「石綿の危険性について医学的知識が確立した1958年には、工場への排気装置設置が技術的に可能。国ができる限り速やかに権限を行使し、設置を義務付け普及を図るべきだった」と指摘。国が71年まで義務付けなかったのは違法とした。
 防じんマスク着用に関しては国が早期に指導しなかったことは違法とはいえないと判断。粉じん濃度の規制も適法だったとした。
 水俣病関西訴訟の最高裁判決は被害の緊急性を重視し、「国の規制権限の不行使によって被害が拡大した」と断じた。同じ04年の筑豊じん肺訴訟も規制の遅れを違法とした。行政は「できる限り速やかに」対策を取るべきだとした今回の判決も、生命と健康を最優先させるべきだという原則を明確に示した司法判断といえる。
 最高裁判決を教訓としなければならない。加害者となった国は、まず被害者に謝罪すべきである。さらに判決を踏まえて幅広い救済を急ぐべきだろう。石綿被害は潜伏期間が数十年と長く、「静かな時限爆弾」と呼ばれる。労災認定だけでも毎年千人前後に上り、被害の全容はなお不明だ。国は広範囲な健康調査を実施し、被害者掘り起こしを進める責任もある。
 被害者の救済について、労災か特別法での補償に限定していた行政の消極的な対応は見直しを迫られている。実情に沿った救済制度の構築、医療体制の整備を求めたい。石綿を使った建物は各地に残っており、今後、解体工事がピークを迎え、新たな被害も懸念される。国は、過去の怠慢が招いた被害に真摯[しんし]に向き合い、石綿対策すべてを見直すべきだ。


琉球新報 2014年10月12日
<社説>アスベスト訴訟 行政の怠慢による被害償え
 アスベスト(石綿)被害に苦しむ患者、遺族らの訴えが司法に届いた。大阪・泉南アスベスト訴訟で最高裁は「粉じん対策を怠った」として、国の賠償責任を初めて認める判決を下した。
 安全規制の権限を持つ国が労働者の生命と健康を最優先させるべきだという原則を明確に示した点で、判決は評価できる。国は過去の行政の怠慢が招いた被害を深く反省し、判決を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
 これまでアスベスト被害は、労災や工場周辺住民らを対象にした石綿健康被害救済法で対応してきた。
 泉南アスベスト訴訟の原告は、被害補償を担うはずの中小紡績工場が廃業してしまったため国を訴えたが、そもそもアスベスト被害を認知しながら放置してきた国には責任がある。
 戦前、泉南地域で国が実施した調査では勤続年数20年を超えると石綿肺発症率が100%になるという衝撃的なデータもあった。
 それを知りながら対策を取らなかったのは、石綿の代替品開発が遅れたからだ。経済成長を支えた石綿製品の危険性に目をつぶり、労働者の健康を犠牲にしたとしか映らない。怠慢を超えて不作為と言わざるを得ず、判決が国の賠償責任を確定した意味は大きい。
 判決では、国が粉じん防止に有効な排気装置設置を1971年まで義務付けなかったのは違法だと認め、損害賠償を命じた。一方で工場では排気装置設置が第一次的手段であり、防じんマスクに関しては補助的対策にすぎないとして早期に着用指導しなかったことは違法とは言えないとも判断した。
 泉南訴訟と同様に建設労働者も訴訟を起こしており、そこでは防じんマスクの着用が争点だ。第一次的手段は現場で違うはずだ。被害の深刻さを認識していた国は、幾重にも安全対策を義務付ける必要があった。判決は、そこまで踏み込んでもらいたかった。
 アスベスト被害に関しては全国で14の裁判が起こされ、労災認定も年間約千人に及ぶ。建材など石綿を使った製品はまだ身近に存在し、被害はさらに拡大する恐れもある。県内でも基地従業員を中心に健康被害に苦しんでいるが、労災認定のハードルは高い。
 被害者は高齢化し、残された時間は少ない。訴訟を長引かせてはならない。国は自らの非を認め、被害者に謝罪し、補償を急ぐべきだ。

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