2014-10-15(Wed)

カジノ法案 日本にふさわしいのか 解禁ありきに反対

ギャンブル依存症 536万人 深刻な実態を直視せよ 成長戦略が「賭博」とは 

<各紙社説・論説>
毎日新聞)カジノ法案 解禁ありきに反対する(10/13)
信濃毎日新聞)カジノ法案 日本にふさわしいのか(10/13)
岩手日報)カジノ法案 負の側面見据え論議を(10/8)
愛媛新聞)新競技場とカジノ 五輪をだしに負の遺産生むな(10/6)
沖縄タイムス)[カジノ解禁法案]知事選で「賛否」を語れ(9/29)
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南日本新聞) [カジノ法案] 成長戦略が「賭博」とは(8/24)
神戸新聞)ギャンブル依存/病気と認識し対策を急げ(8/23)
沖縄タイムス)[ギャンブル依存]カジノ誘致を懸念する(8/23)
東京新聞)カジノ法案 副作用が大きすぎる(8/22)
高知新聞)【ギャンブル依存】支援の強化を急ぎたい(8/22)
毎日新聞)ギャンブル依存症 深刻な実態を直視せよ(8/18)
日経新聞)カジノ解禁のマイナス面 十分に検証を(7/27)
京都新聞)カジノ解禁  「経済優先」では危うい(7/10)
岩手日報)カジノ解禁の動き 悲劇を増幅させないか(7/1)
山陽新聞)カジノ法案 「負」の検証が欠かせない(6/24)
佐賀新聞)カジノ法案(6/24)
朝日新聞)カジノ解禁?―危うい賭けには反対だ(6/23)



以下引用

毎日新聞 2014年08月21日 07時07分(最終更新 08月21日 08時45分)
依存症:多い日本 ギャンブル536万人 厚労省研究班
 成人の依存症について調べている厚生労働省の研究班(研究代表者=樋口進・久里浜医療センター院長)は20日、パチンコや競馬などギャンブル依存の人が成人人口の4.8%に当たる536万人に上るとの推計を初めて発表した。インターネットから離れられないIT依存の傾向がある成人は421万人となり、5年前から約1.5倍に増えた。また、アルコール依存症の人は初めて100万人を超えて109万人に達し、女性は2008年の8万人から14万人に急増した。
 研究班は昨年7月、成人約4000人に面接調査を実施した。その結果、ギャンブルについては、国際的に使われる指標で「病的ギャンブラー」(依存症)に当たる人が男性の8.7%、女性の1.8%だった。海外の同様の調査では、米国(02年)1.58%▽香港(01年)1.8%▽韓国(06年)0.8%−−などで、日本は際立って高い。
 ギャンブル依存は、秋の臨時国会で本格審議されるIR推進法案(カジノ法案)が成立した場合の患者増を心配する声もある。研究班の尾崎米厚(よねあつ)・鳥取大教授(環境予防医学)は「パチンコなど身近なギャンブルが、全国どこにでもあることが海外より率が高い原因ではないか」と分析する。
 IT依存は、国際指標で「問題使用者」に当たる人が男性の4.5%、女性の3.5%に上った。若いほど高く、20〜24歳は男性の約19%、女性の約15%が該当した。スマホの普及が影響しているとみられる。
 一方、飲酒は「1年間で1度でも飲んだ」という男性は約84%、女性は約63%で、10年前と比べて女性が横ばい、男性は約3ポイント下がった。だが、アルコール依存症の推計数は03年の83万人から増えた。樋口院長は依存症対策について、「啓発と学校などでの予防教育、治療や社会復帰のシステム作りが必要だ」と話した。【清水健二】

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毎日新聞 2014年10月13日 02時35分
社説:カジノ法案 解禁ありきに反対する
 カジノ解禁をめぐる議論が熱を帯び始めた。「統合型リゾート(IR)整備推進法案」(カジノ法案)について、安倍晋三首相は参院予算委員会で「経済成長に資する」と述べ、改めて積極的な姿勢を表明した。
 一方、カジノ解禁を目指し法案をまとめた超党派の「国際観光産業振興議員連盟」は、ギャンブル依存症対策を念頭に、日本人の利用に一定の条件を付ける内容で法案を修正し、今国会成立を図る方針とされる。
 議連は先週、カジノ利用を当面外国人に限定する方向で議論をまとめようとした。だが、異論が出て幹部会で方針転換した。カジノ解禁には、負の側面からの徹底検証が必要だ。そもそも成長戦略の名の下、国を挙げて賭博を推進することに正当性があるのか疑問だ。解禁ありきで審議を進めることに反対する。
 この法案は、民間資本を導入しカジノやホテル、会議場などの施設整備を目指すものだが、核心はカジノ解禁だ。議連が方針転換したのは、外国人だけではカジノの採算が取れないことが自明だからだろう。
 日本人には、入場資格を設けたり入場料を徴収したりすることを想定する。だが、入場資格の線引きは容易ではない。解禁慎重派に配慮して日本人解禁の先送りを打ち出しながら方針を変えること自体ご都合主義的で、真剣にギャンブル依存症と向き合おうとしているとは思えない。
 2020年の東京五輪を見据え、観光客の増加、税収増などによる地域経済の振興、雇用の創出などプラスの側面を推進派は強調する。だが、米国では今年、開業間もないカジノが倒産し、カジノ産業の陰りが見えてきた。依存症対策など社会的コストも大きい。アジアにはマカオやシンガポール、韓国などに既にカジノがあり、共存できる見通しは定かではない。カジノ解禁による経済効果は、進出してくる外国資本にほとんど吸い上げられるのではないか。経済的観点からも疑問は尽きない。
 それ以上に考えるべきは、金を賭ける側が結局は損をするというギャンブルの特性だ。カジノは賭博性が特に高く損失もけた違いになる。
 弁護士や経済学者がアジアを中心にカジノを視察したところ、ギャンブル依存の揚げ句の自殺や失業、借金による家庭崩壊などの事例は枚挙にいとまがない。風紀も乱れ地域がすさむ。また、自国民から高い入場料収入を取っても、ギャンブル依存者数は減っていないという。
 日本には公営ギャンブルのほか、全国にパチンコ店があふれる。ギャンブルの全体像を踏まえた依存症対策についての議論が欠かせない。国会は諸外国の事例について実態を把握し、冷静に検討すべきだ。


信濃毎日新聞 2014年10月13日(月)
社説:カジノ法案 日本にふさわしいのか
 大掛かりな賭博(とばく)場をつくって地域振興や経済成長を期待することが、果たしてこれから
の日本にふさわしいのか。違和感を抱く人は少なくないはずだ。
 カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)の整備推進法案である。開会中の臨時国会で本格的な審議に入る。
 IRは、カジノのほか劇場、会議場、ホテルなどが一体化した施設を指す。法案は昨年末、自民党、日本維新の会、生活の党の推進派が議員立法として提出。先の通常国会で継続審議となった。
 観光客が増えて大きな経済波及効果がある、カジノ業者からの徴収金で自治体財政の改善も見込める―。推進派は導入の利点を挙げ、法案の早期成立を目指す。
 政府もIRを成長戦略の一つと位置づけている。安倍晋三首相は参院予算委員会で「投資が起こり、雇用が大きく創出される。経済成長にも資する」と述べ、今国会での成立に期待を示した。
 法案は、施行後1年以内にカジノ導入に必要な法整備を政府に求める内容。刑法は賭博を禁じているが、国が許可する特定の地域でカジノを解禁する。
 誘致の動きは活発だ。横浜、大阪、北海道、長崎、沖縄など各地の自治体や経済団体が名乗りを上げている。横浜、大阪、沖縄の3カ所にできた場合、経済効果は年間2兆円規模との試算もある。
 一方で見落とせないのが、負の側面だ。まず何よりも、ギャンブル依存症の問題がある。
 ギャンブルにのめり込み、衝動が抑えられなくなる。多額の借金を抱えて生活が破綻し、自ら命を絶つ人もいる。家族の経済的、精神的な被害も大きい。
 厚生労働省研究班の推計で、ギャンブル依存症の疑いがある人は国内に500万人以上いる。成人の5%近くに上り、世界的に見ても高い。パチンコや競馬が身近にある環境が要因とされる。
 依存症の人たちへの治療や支援の態勢も不十分だ。カジノ導入は、依存症の増加につながり、さらなる悲劇を招く恐れが大きい。
 推進派の議員連盟は懸念を踏まえ、当面は利用を外国人に限る規定を盛り込むという。そこまでしてカジノを造る必要はあるのか。
 マネーロンダリング(不正な資金の洗浄)に利用される恐れも指摘されている。地域経済への波及効果を疑問視する声もある。
 本当に地域のためになるのか、住民の声も踏まえて、冷静に検証することが欠かせない。拙速に事を進めるべきではない。


岩手日報(2014.10.8)     
論説:カジノ法案 負の側面見据え論議を
 カジノを中心に劇場、大型会議場、ホテルなどが一体となった統合型リゾート施設(IR)整備を政府に促す推進法案が、臨時国会の焦点の一つになっている。
 政府は2020年の東京五輪開催に向け、IRを海外から観光客を呼び込む「成長戦略の目玉」(安倍晋三首相)にしたい考え。超党派の議員連盟の幹部会は7日、利用を当面は外国人に限定し、日本人を除外する規定を盛り込んで法案を修正し、今国会中の成立を目指す方針で一致した。
 日本人にも開放するかは、関連法の整備段階で再度議論するとした。
 日本はギャンブル依存症者の割合も自殺死亡率も高いだけに、負の側面を見据えた慎重な審議が求められる。
 カジノ法案は自民、日本維新の会(当時)、生活の党が議員立法で昨年12月に国会提出。先の通常国会で審議入りしたが継続審議となった。自民党は今国会で早期成立の方針だが、公明党内に慎重姿勢が根強いことから、当面は同党内の議論を見守る構えだ。
 推進派にとってカジノは「地域経済を活性化させる起爆剤」。法成立後は、政府が解禁に向けた法整備を実施し、誘致に名乗りを上げた自治体から選んで認定する道筋を描く。大阪府や北海道などで誘致活動が活発化しており、ホテルやテーマパークなど業界の動きも加速している。
 大和総研の試算によると、横浜市、大阪市、沖縄県の国内3カ所にIRができた場合、雇用拡大効果も含め計約2兆円規模の経済効果が見込めるという。
 一方で、厚生労働省研究班は8月、ギャンブル依存症の疑いがある人が国内に500万人以上いるとの推計を初公表した。成人の約5%に上り、世界のほとんどの国が1%前後なのに比べ、日本は異常に高い。
 研究班代表の樋口進・国立病院機構久里浜医療センター院長は、パチンコやパチスロなどが普及し身近に接しやすいことが要因と指摘。カジノ解禁問題に対して「ギャンブルには必ず負の側面がある」と慎重な議論を求める。
 ギャンブル依存は、日本の高い自殺死亡率の一因。そのため、政府の自殺総合対策大綱(12年8月閣議決定)は「病的賭博等について調査研究を推進し、継続的に治療・援助を行うための体制整備を行う」と明記している。
 カジノは治安悪化、借金や失業、多重債務などの懸念もあり、反対世論は根強い。
 経済効果ばかり強調するのは将来に禍根を残す。リスクをしっかり把握する必要がある。その面の議論を後回しにして法案成立に突き進めば、拙速とのそしりは免れないだろう。


愛媛新聞2014年10月06日(月)
社説:新競技場とカジノ 五輪をだしに負の遺産生むな
 新国立競技場と、カジノ。疑問を禁じ得ない二つの巨大な計画が、「五輪のため」との美名の下、目先の利益最優先で、甘い見通しのまま進められようとしている。
 前回東京五輪から、今月で50年。人口も所得も右肩上がりで高度成長へ走りだしたころの日本とは、必要な設備も目指すべき「成長」も必然的に異なろう。成熟国家にふさわしい五輪のありかたを再考するとともに、五輪にかこつけて将来世代に負の遺産を残さないよう、「思いとどまる勇気」を持たねばならない。
 2020年東京五輪の主会場となる新国立競技場には、高額な整備費や、巨大すぎて景観を損なうことに批判が噴出した。日本スポーツ振興センター(JSC)は、スタジアムの高さを75メートルから5メートル低くし、当初3千億円とされた総工費は1692億円に抑える、と主張するが、実は2千億円超かかるとの試算も出ている。「改修で十分」との対案には「費用の大幅軽減はなされず建て替えないと無理」と、耳を貸す気配もない。公共事業の驚くべきずさんさと硬直性は、到底容認し難い。
 それでもJSCは現競技場の解体工事を強行する構え。だが入札さえ満足にできず、最初は不調、2度目は工事費内訳書を事前に開封したとして、官製談合も疑われる不手際で失敗。再々入札を余儀なくされ、7月開始の予定が12月中旬にずれ込むという。
 この際、遅れたことを奇貨として、改修や大幅縮小を含め抜本的に見直すべきだ。五輪の数十日のために、維持管理に年40億円以上もかかる施設を建ててしまえば取り返しがつかない。さすがに自民党の無駄撲滅を検証する部会も「五輪だから金をいくらでもかけていいという議論は、慎んでいただきたい」(河野太郎座長)と異議を唱えた。旧態依然の無責任な開発に歯止めをかける最後のチャンスであり見直しを強く求めたい。
 一方、カジノにホテルや会議場などを併設する統合型リゾート施設(IR)の整備を政府に促す推進法案も、今臨時国会で本格審議に入る。
 ギャンブルを「成長戦略の目玉」(安倍晋三首相)ととらえる発想そのものも受け入れ難いが、目当ての経済効果の試算も極めて甘い。五輪を機に外国人富裕層が大挙して来日、大金を落としてくれる上、利用者の7~8割を占める日本人が負けることが「前提」。治安対策やギャンブル依存症の治療など、社会的損失への配慮も不十分で、賭博を禁じる刑法を含めた社会のルール転換を拙速に進めることは、決して認められない。
 五輪や復興を、金もうけのだしに使ってはなるまい。前の50年から受け継いだもの、次の50年に残すべきものを真摯(しんし)に考え直してもらいたい。


沖縄タイムス 2014年9月29日 05:30
社説[カジノ解禁法案]知事選で「賛否」を語れ
 臨時国会が29日開会する。安倍晋三首相は地方重視の姿勢をアピールするため、臨時国会を「地方創生国会」と位置づけ、「まち・ひと・しごと創生法案」(地方創生法案)の成立を優先する考えだ。
 昨年12月、超党派の議員連盟が議員立法で提出した「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」も、今国会で本格的に審議される。
 沖縄と関係の深いこの法案は「統合型リゾート(IR)推進法案」とも呼ばれる。要するに、「カジノ解禁法案」のことである。
 カジノを含む国際会議場、ホテル、娯楽施設などを一体として整備し、新たな次元で観光振興を図ろう、という趣旨である。
 県はカジノ誘致について、ある時期まで「県民のコンセンサス形成が前提」との立場を堅持していた。仲井真弘多知事の姿勢の変化が明確になったのは、安倍首相も出席した昨年12月の沖縄政策協議会のときだ。
 仲井真知事はホテル業界や商工会、中小企業団体などの根強い慎重論を押し切って、唐突に、IRの候補地に沖縄を入れるよう要請したのである。
 「手を挙げないと競争に負ける」と仲井真知事は主張する。知事が積極姿勢を示し始めたことで、県内では、カジノ誘致をあて込んだ本土大手資本や外国資本の動きが活発になってきた。
 だが、県民のコンセンサスが得られたとは、とうてい言えない。むしろ、問題点が浮き彫りになり、慎重意見が広がっているのが現状だ。
    ■    ■
 カジノを含むIR誘致によって雇用が拡大し、税収も増える。外国の富裕層が増えれば観光振興にとっても大きなプラスになり、経済効果は計り知れない-それが推進派の言い分である。
 しかし、よくよく考えなければならない。厚生労働省の研究班が昨年実施した調査によると、ギャンブル依存症の疑いがある人は全国で推計536万人に上る。
 ギャンブルを我慢することのできない「病的賭博」の疑いのある男性は成人男性の8・7%に達するという。現在でもそうなのである。
 特有の問題を数多く抱える沖縄でカジノが合法化されたらどういうことになるか。
 ギャンブルがらみの犯罪、家庭崩壊、治療に伴う医療費の出費、暴力団の介入やマネーロンダリング(不正な資金の洗浄)など、予想される社会的な損失を一体、誰が負担するのか。そもそもカジノでもうけるのは誰なのか。
    ■    ■
 沖縄はカジノを含む統合型リゾートの有力候補地になっている。名護市辺野古への新基地建設とカジノがセットになって動きだしている側面もある。
 沖縄を「ミサイルとルーレットの島」にしていいのか。今、問われているのは、この島の将来像だ。
 11月の県知事選は、辺野古移設問題だけでなく、カジノについても争点にすべきである。立候補者は、カジノ誘致の是非を分かりやすい言葉で語り、議論を起こしてもらいたい。

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南日本新聞 (2014/8/24 付 )
社説: [カジノ法案] 成長戦略が「賭博」とは
 「カジノ法案」が秋の臨時国会で成立するかもしれない。旗振り役の安倍晋三首相は「成長戦略の目玉」と意気込んでいる。
 2020年の東京五輪・パラリンピックをにらみ、カジノとホテルが一体になった複合リゾート施設(IR)を整備し、海外観光客を呼び込むのだという。
 ちょっと待ってもらいたい。
 カジノは約130カ国で合法化されている。しかし、日本は公営ギャンブルを除いて賭博を禁じてきた。
 いきなり解禁して米国ラスベガスやマカオ、シンガポールと肩を並べることができるのか。
 訪日した外国人旅行者は昨年初めて1000万人を突破した。世界に日本をアピールする材料は、歴史と文化、四季の美しさ、和食など事欠かない。
 観光立国をめざす日本の新しい「おもてなし」に、カジノがふさわしいか疑わしくもある。イメージダウンが落ちではないか。
 厚生労働省研究班が先日、「ギャンブル依存症」を疑われる人は国内に推計500万人以上と発表した。男性に限れば438万人、8.7%に達する。
 カジノ解禁は依存症を深刻化させよう。反社会的勢力の資金源やマネーロンダリング(資金洗浄)の温床、また青少年への悪影響、治安悪化も懸念されている。
 こうした負の側面への対策が、とられているようにもみえない。いくら旗を振ろうと、どれほどの国民が納得するか疑問だ。
 政府は反対や懸念の声に耳を傾け、慎重の上にも慎重に検討すべきである。
 法案の正式名称は、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案だ。法案名にも、法案をまとめた超党派の「国際観光産業振興議員連盟」の看板からも、なぜかカジノの文字は消えている。
 昨年12月に自民党、日本維新の会、生活の党が衆院に法案を提出した。公明党や民主党、みんなの党は党内の慎重論に配慮し、共同提出から降りた。
 何となくうさんくさく、不安を拭い切れなかった議員は、議連の中にも少なからずいたということだろう。
 それに比べると安倍内閣の前のめりは際立つ。法案が継続審議扱いとなった後、内閣官房に検討チームを設けて、臨時国会での成立をにらんでいる。
 宮崎県をはじめ北は北海道から南は沖縄県まで、IR誘致に手を挙げた自治体は少なくない。約5兆円ともいわれる経済効果に飛びつく前に、まずは足元の地域住民の理解から得ていくべきだ。


神戸新聞 2014/08/23
社説:ギャンブル依存/病気と認識し対策を急げ
 ギャンブル依存症の疑いのある人が、成人の4・8%に当たる536万人に上るとの推計を厚生労働省の研究班が発表した。
 海外に比べても非常に高い割合だ。事態を深刻に受け止め、対策を急がねばならない。
 ギャンブル依存症は、病的にギャンブルにのめり込み、衝動を抑えられなくなる。「意志の問題」などと捉えられがちだが、世界保健機関(WHO)は「病的賭博」と呼び、精神疾患の一つとしている。仕事や学業がおろそかになる、人間関係が破綻する、などの問題を起こし、進行性のある病気だとされる。
 研究班は成人を対象にした面接調査の結果に基づき、依存症の推計値を初めて公表した。その実態がようやく見えてきたことになる。男性で438万人(8・7%)、女性98万人(1・8%)との推計だ。米国など世界のほとんどの国は1%前後で日本は際立って高い。
 海外ではカジノがあるのは特定の地域にとどまるのに対し、日本はパチンコやパチスロが身近な場所にある。研究班はギャンブルに接しやすい環境が依存症の割合が高い要因とみる。「ギャンブル大国」である現実を直視しなければならない。
 研究班の調査では、アルコール依存症は109万人で、それに比べてもギャンブル依存症は多い。
 依存症の特徴として、対象への欲求が抑えられなくなる▽ほかのことに関心がなくなる▽中断すると落ち着かなくなったり、いらだったりする‐などがあり、アルコールや薬物依存と共通する部分は多いという。
 ギャンブル依存によって多額の借金を抱えることは珍しくなく、家庭崩壊の例も目立つ。誰もが陥る可能性があるだけに注意が必要だ。
 社会問題を引き起こす深刻な病だが、受け入れてくれる医療機関はまだ少ない。薬物による治療法は確立されておらず、心理療法が中心になっている。患者同士が語り合うミーティングなどで自らを見つめ直し、回復につなげているという。
 依存症が治療の必要な病気であることへの理解を深めた上で、相談窓口の充実、治療環境の整備を進めていく必要がある。
 カジノとホテルが一体の複合リゾート施設の整備を進める「カジノ法案」が臨時国会で審議されるようだが、急ぐべきは依存症対策だ。


沖縄タイムス 2014年8月23日 05:30
社説[ギャンブル依存]カジノ誘致を懸念する
 世界保健機関(WHO)の国際疾病分類では「病的賭博」と記述されている。パチンコやスロット、競馬といったギャンブルにのめり込み、自分をコントロールできず、問題を起こすギャンブル依存症のことである。
 そのギャンブル依存の発症率が、日本は各国と比較して突出して高いと、厚生労働省研究班が発表した。秋の臨時国会で本格審議が始まる「カジノ法案」にくぎを刺す内容だ。
 研究班が昨年7月に実施した調査によると、ギャンブル依存症と疑われる人は、成人男性が438万人、女性が98万人で、合計536万人と推計。この数値は成人の約5%に上るもので、世界のほとんどの国が1%前後にとどまるのに比べてかなり高い。
 専門家は、カジノが特定の地域に限られる海外に対し、日本はパチンコやスロットが身近なところに普及していてギャンブルに接しやすいためではないかとみている。2008年の推計値と比べても高止まりの状態にあり、早急な治療環境の整備が必要と話す。
 6月に那覇市内のパチンコ店駐車場で、車内に放置された乳児が熱中症で死亡する痛ましい事件があった。母親は子どもを残したまま約6時間半、スロットに興じていたという。
 子どもの命といった最も大事なものよりもギャンブルを優先したのはなぜか。事件の背景として指摘されたのが、依存症の問題だった。
    ■    ■
 ギャンブル依存症が進行すると、配偶者への暴力や児童虐待などといった形で家族を傷つけることが多い。しかし家庭内という密室で起こっているため、病気の深刻さが理解されにくい。
 ギャンブル依存症は心の病である。意志の弱さや道徳を説いても解決しない。必要なのは適切な治療と支援だ。
 カジノとホテルが一体の複合リゾート施設の整備を進めるカジノ法案は、安倍政権の成長戦略とも重なり、前のめりに進む。そこで強調されるのは、外国人観光客の誘致や地域活性化の起爆剤にという経済的な側面である。
 厚労省研究班の代表を務める樋口進・国立病院機構久里浜医療センター院長は「ギャンブルには負の側面がある」と慎重な議論を求めている。
 今回の調査結果を基に、なぜ依存症患者が多いのか、きちんとした分析と、依存症対策の道筋を示すことが先決である。 
    ■    ■
 地方自治体のカジノ誘致合戦の中で、仲井真弘多知事は最も熱心に動く一人だ。県民意見が大きく割れているにもかかわらず、コンセンサスを得る前に既成事実化しようという手法は強引に映る。
 基地負担と引き換えの振興策のように沖縄が候補地に挙げられている点も気になる。
 お金持ちの外国人を相手にするカジノが、観光振興の打ち出の小づちとなるのか。カジノで潤うのが誰なのか見極めなければならない。
 今も、これからも、沖縄の観光振興の核は、地域が誇る自然や文化を守り生かしていくことである。


東京新聞 2014年8月22日
【社説】カジノ法案 副作用が大きすぎる
 ギャンブル依存症の疑いがある人は五百万人以上という推計が出た。そんな中でカジノを合法化する法案が脈動している。治安悪化や多重債務者の増加など危険な副作用が伴う裏面を強く警戒する。
 二〇二〇年に東京五輪・パラリンピックが開催されるまでに、統合型リゾート(IR)を整備する-。自民党などが議員提出したカジノ法案は、国際会議場や宿泊施設、レクリエーション施設などにカジノが一体となった複合観光施設をつくることをめざしている。安倍晋三政権の成長戦略の一つという位置付けだ。
 ある試算では、カジノが開設された場合、市場規模は二兆円から三兆四千億円にのぼり、間接的な波及効果も含めると最大七兆七千億円にもなるという。五十万人から七十九万人の雇用を生むという計算もはじき出されている。
 だが、あくまで皮算用にすぎない。競馬や競輪などの公営ギャンブルとは異なり、民間事業者が設置・運営する。ノウハウを蓄積した外資も参入することになろう。まず、カジノを合法化した場合、きちんと国が監視・管理できるのかという疑問が持ち上がる。そのような人材が確保できるのか。
 ギャンブル依存症患者に要する費用や治安対策費などを足し算していって、社会全体が背負うコストと税収増分とは、果たして見合うのか。米国や韓国ではマイナスの方が大きいという報告がある。法案の動機である経済効果は客観的に検証されねばならない。
 そもそも、賭博は胴元が儲かり、ばくち打ちは結局は損をする仕組みで成り立つ。カジノのプレーヤーはまず自分の資産を失い、親族や友人からの借金、さらにローンを重ね、失業。自殺や犯罪に走ることも起こりうる。
 とくに日本の場合、ギャンブル依存症の割合が極めて高い。厚生労働省の研究班の推計によると、依存症の疑いのある人は五百万人以上で、成人の約5%を占めるという。世界のほとんどの国では、1%前後にとどまっているのが現状だ。
 多重債務者問題が再燃する危険性は大きいといえる。暴力団が新たな資金獲得に向けて動き始めることも容易に予測される。マネーロンダリング(資金洗浄)に悪用される可能性もある。
 刑法で賭博が禁じられているのは、善良な風俗を守るためだ。青少年への悪影響もある。人間を悲劇に陥れる賭博で経済成長という発想自体がおかしい。


高知新聞 2014年08月22日08時08分
社説:【ギャンブル依存】支援の強化を急ぎたい
 実態はあまりに深刻といえる。パチンコや競馬などへの衝動を抑えられなくなる「ギャンブル依存症」だ。
 厚生労働省の研究班が、依存症と疑われる人が国内で536万人に上るとの推計を初めて公表した。成人の4・8%にもなる。ほとんどの国は1%前後にとどまるというから、日本でのまん延ぶりは突出している。
 これほど身近な病気でありながら、長年、個人の意志の問題とされてきたことと無縁ではあるまい。実態を直視して、予防や患者支援の在り方を見直す契機としなければならない。
 ギャンブル依存症は、強い快感を繰り返し経験するうちに感覚がまひし、より強い刺激を求めるようになる脳の病気である。調査によると、成人男性の8・7%、女性では1・8%に依存症の疑いがある。
 なぜ、これほど広がってしまったのか。研究班は要因に、海外ではカジノは特定の地域に限定されているが、日本では競輪、競馬の公営ギャンブルのほか、パチンコやパチスロが普及していることを挙げる。
 いったん依存症になれば意志の力だけではやめられず、多重債務に陥って家族や周囲の経済的な負担につながるケースが後を絶たない。うつ病やアルコール依存症といった合併症も多くみられる。
 ギャンブルに接しやすい環境が患者の発生を拡大させ、重大な健康被害をもたらす。現状を踏まえれば、社会問題と捉えるのが当然だろう。
 だが、本県を含め支援態勢は十分とはいいがたい。以前に比べ、自助グループなどが活動しているとはいえ、専門医の治療を受けられる医療施設や相談窓口はいまだに少ない。
 支援の遅れは、社会としての危機感の乏しさを表していよう。個人の資質と、問題を矮小(わいしょう)化してはならない。患者の広がりを国民的な病気の一つと認識し、専門医の育成やより効果的な治療法の開発といった対策を推し進める必要がある。
 ところが、安倍政権は依存症への懸念をよそに、カジノとホテルなどが一体化した複合リゾート施設の整備を解禁しようとしている。「成長戦略の目玉」とする思惑からだ。
 新たなギャンブル施設ができれば、その暗部も拡大しかねない。目先の経済効果を追うより、国民に広がる健康被害の防止を急ぐべきである。


毎日新聞 2014年08月18日 02時30分
社説:ギャンブル依存症 深刻な実態を直視せよ
 ギャンブル依存症は精神疾患の一つである。ギャンブルそのものを否定するつもりはなく、自分の責任で楽しんでいる人が大多数であるのは事実だが、薬物依存と同様にギャンブルをやめると手の震えや発汗などの症状が表れ、治療が必要になる人がいる。さまざまな刑事事犯や家庭内での暴力の原因にもなり、苦しんでいる家族は多い。日本の発症率は諸外国に比べ高いとされる一方で、治療に結びつく人は極めて低い。カジノ法案が臨時国会で本格審議されるが、ギャンブル依存症対策こそ急がねばならない。
 「意志が弱い」「自制心がない」などと個人的性格の問題のように見られがちだが、世界保健機関(WHO)やアメリカ精神医学会はギャンブル依存症を治療すべき精神疾患と位置づけている。「いつも頭のなかでギャンブルのことを考えている」「やめようとしてもやめられない」などの診断基準に該当しても、患者は自覚症状が乏しく問題を過小評価し、親族や友人らも疾患との認識がないため、しつこく金を無心されて貸してしまい、症状の深刻化を招くことが多いという。
 ギャンブルが楽しくて夢中になっているように見えても、依存症になると「やめなければならない」と強迫的に思い、借金返済ができない焦りに苦しみ、その苦しみから逃れるためにさらにのめり込む場合が多い。集中力が落ちて仕事が手に着かなくなり、仕事を失えばさらに金銭的に追い込まれる。不眠や幻視などの精神症状を表す人さえいる。
 巨額横領事件や殺人、強盗などギャンブルの金や借金返済のために起きる事件は意外に多いが、原因となっている依存症に注目されることはあまりない。家族の犠牲も深刻だ。金銭的困窮や配偶者への暴力、児童虐待だけでなく、無差別殺人事件を起こした容疑者にギャンブルによる借金苦の親から幼少期に捨てられた経験があった例もある。
 明るくしゃれた雰囲気の公営ギャンブルやパチンコ店が多くなり、子ども連れで気楽に入ることができることを問題視する専門家もいる。幼少期からギャンブルに触れることで抵抗感がなくなり依存症の連鎖を生む恐れがあるというのだ。
 治療法としては認知行動療法などが効果があるとされるが、薬物治療に比べて手間がかかる割に診療報酬が低いせいもあって専門の精神科医が少ないと指摘される。
 国はギャンブル依存症の調査研究に力を入れ、予防に向けた啓発や治療体制を拡充すべきだ。患者や家族の自助組織や非営利組織(NPO)の活動を後押しすることも必要だ。深刻な実態を放置してはならぬ。


日経新聞 2014/7/27付
社説:カジノ解禁のマイナス面 十分に検証を
 カジノの合法化に向けた動きが進んでいる。議員立法によって提出されたカジノ解禁法案が今秋の臨時国会で成立する可能性があり、各地の自治体もカジノ施設の誘致に名乗りを上げている。
 推進派は、経済の活性化や外国人観光客の増加に期待をかける。政府は法案の成立を見越して内閣官房に新しい組織をつくり、2020年の東京五輪に間に合うよう、具体案の検討を始める。
 だがカジノはギャンブルへの依存をはじめ、青少年への悪影響、反社会的勢力の暗躍、マネーロンダリング(資金洗浄)の懸念など、様々な負の側面を抱えている。国民の間にも強い反対の声や拒否反応がある。
 国や自治体は前のめりになっていないだろうか。社会に影響を与える懸念があるカジノの解禁を、拙速に進めるようなことがあってはならない。マイナス面を十分検証したうえで、幅広く意見を聴いて議論を尽くすべきだ。
 カジノを開くことは、刑法の賭博罪にあたる。そこでカジノ法案は指定された地域に限ってカジノを合法化し、ホテル、娯楽・商業施設、国際会議場などと組み合わせた統合型リゾート施設の整備を目指そうとしている。
 法案は昨年12月に自民、日本維新の会、生活の3党が提出した。会期末に審議入りし、秋の臨時国会の焦点になりそうだ。
 高齢化や人口減に悩む地方の自治体などが、カジノの誘致を疲弊した経済を立て直す起爆剤にしたいという思いは理解できる。新たな観光客が訪れ、地元の雇用が増えるという側面はあるだろう。
 ただ、日本にはすでに競馬や競輪などの公営ギャンブルに加え、パチンコ店なども身近にある。厚生労働省の調査では、日本のギャンブル依存者の割合は諸外国に比べて高い。実際にギャンブルで多重債務や家庭崩壊に追い込まれる人は少なくない。
 カジノの解禁は、こうした傾向をさらに強める心配がある。賭博依存への対応に支払う社会的、経済的コストは大きい。推進派の構想では、カジノの収益の一部を依存症の対策にあてるというが、本末転倒ではないだろうか。
 韓国やシンガポールのカジノでは、利用を外国人に限ったり、家族の申請を受けて入場の禁止措置をとるような制度がある。こうした実態も詳しく調べて公表し、議論を深めていく必要があろう。


[京都新聞 2014年07月10日掲載]
社説:カジノ解禁  「経済優先」では危うい
 カジノ解禁や誘致をめぐる動きが止まらない。
 先の国会で、カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)整備推進法案、カジノ解禁法案は継続審議になったが、誘致をめざす自治体のもとには海外の事業者が訪れ、売り込みを図っている。
 観光振興や経済活性化への期待がある半面、治安悪化などマイナス面の方が大きいとの指摘もある。
 カジノは刑法で禁じられた賭博に当たる。果たして、刑法から除外してまで今の日本に必要なものなのか。海外の事情など情報は少なく、国会での議論も国民の理解も深まってはいない。安易にカジノを解禁すべきではない。
 法案は昨年末に自民党、日本維新の会、生活の党が共同で提出した。指定した地域に限ってカジノを合法化し、国の管理下で民間事業者がカジノを核にホテル、劇場や商業施設などのIRを整備、運営。売り上げの一部を国や自治体に納付させる仕組みだ。
 カジノは現在、世界140カ所にあるとされ、韓国など特にアジアで増えているという。日本では1999年、当時の石原慎太郎東京都知事がカジノ設置構想を表明して以降、大阪府をはじめ、北海道や沖縄、長崎、宮崎各県なども誘致に意欲を示している。
 自治体財政を潤し、雇用拡大や地域経済活性化につながるとの期待からだが、懸念もある。
 一つは暴力団対策。内閣府の外局に監視・監督・違法行為摘発を担うカジノ管理委員会を設け、厳格なルールを作り、排除するという。資金洗浄対策には金融庁の専門家にも関与してもらうというが封じ込めるのは容易ではない。
 青少年への悪影響のほか、ギャンブル依存症の増加も心配される。日本は競馬、競輪、パチンコなどすでにギャンブル大国で依存症の人が559万人いるとされる。このうえ、カジノにまで手を広げるのは大いに疑問だ。
 自民党はカジノ解禁法を秋の臨時国会で成立させる構えだが、経済的な思惑ばかりが先走っているようにみえる。
 2020年の東京五輪と絡め、観光振興、経済成長の切り札と位置付ける安倍晋三首相や政府も同様だ。
 20年までに年間の訪日外国人観光客を2千万人に倍増させるためカジノを起爆剤にするつもりらしいが、考えてみるがいい。観光客は何にひかれて日本を訪れようとするのか。京都などに息づく文化か、和食か自然、それとも温泉…カジノでないことだけは確かだ。


岩手日報 (2014.7.1)
論説:カジノ解禁の動き 悲劇を増幅させないか
 カジノ解禁に向けた動きが進んでいる。6月に閣議決定した政府の新成長戦略には、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)について「観光や産業振興に資することが期待される」と記された。
 懸念されるのがギャンブル依存(病的ギャンブリング)。多重債務や自殺と密接に関連し、深刻な悲劇をもたらすだけに、解禁がさらなる悲劇の温床になる恐れが大きい。推進派は負の側面を見つめ、頭を冷やすべきだろう。
 パチンコ、パチスロ、競馬などにのめり込み、借金を重ね、借金をギャンブルで返そうとして借金が膨らみ、消費者金融やヤミ金に手を出す。家庭崩壊、ホームレス、さらには自殺…。ギャンブルがもたらす問題は深刻だ。
 本県沿岸部のある女性は東日本大震災で夫を亡くし、仕事にも身が入らない中、ふとギャンブルに手を出した。
 貯金はどんどん目減りするが、やめられない。幸い、親族のサポートで長いトンネルから抜け出したが、このままやめられなかったら、ギャンブル依存症になっていたかもしれない。
 盛岡市のNPO法人いわて生活者サポートセンターには「競馬で数千万円の借金を抱えた」など、深刻な相談が本人や家族から寄せられる。藤沢俊樹事務局長は「ギャンブル依存症は致死性の病気」と警鐘を鳴らす。
 日本でギャンブル依存が問題視されたのは、自殺者が年間3万人を超え社会問題化したことと関係する。原因の一つがギャンブルだ。内閣府の自殺対策に関する意識調査によると、ギャンブル依存症者は、ギャンブルをしない人に比べ4~20倍も自殺のリスクが高いことが分かった。
 ギャンブル依存は早期発見が難しい。アルコールや薬物依存のように、精神や行動上の明確な変化は把握されにくい。借金問題から表面化するケースが多いが、それも個人の懐具合に左右される。
 その結果、問題の発覚は事態が深刻化してからになってしまう。ギャンブル依存症者は国内に400万~500万人との推計もあるが、表面化するのはごくわずかだ。
 最も有効な対策は、ギャンブルのない環境に身を置くこと。にもかかわらず、カジノ推進法案が国会に議員立法で提案された。継続審議になったが、秋の臨時国会で成立の可能性も取りざたされる。
 東日本大震災から3年以上が経過したが、なお復興は遠い。阪神大震災では被災者のアルコール依存が問題となったが、東日本大震災被災者の生活再建が遅れれば遅れるほど、アルコールに加えギャンブル依存症者の増加も懸念される。政府はカジノに熱を上げている場合ではない。


山陽新聞 (2014年06月24日 08時13分 更新)
社説:カジノ法案 「負」の検証が欠かせない
 カジノとホテルが一体となった複合リゾート施設の整備に向け、自民党などが国会に共同提出していた「カジノ法案」の議論が動き始めた。通常国会は閉幕したが継続審議となり、秋の臨時国会で成立する可能性もある。
 カジノをめぐっては複数の自治体が誘致を表明しており、地域活性化の起爆剤にとの期待が出ている。2020年の東京五輪に合わせ、外国人観光客を増やそうとの狙いもある。ただ、ギャンブルによる治安悪化など“負の側面”に対する懸念も拭えない。カジノ解禁がもたらすメリットとデメリットを見極めることが欠かせない。
 法案は、カジノ付きのホテルをはじめ、国際会議場、レクリエーション施設などから成る複合リゾート施設を造り、観光と地域振興を図ることを政府に促す内容だ。カジノの合法化を目指す超党派の「国際観光産業振興議員連盟」がとりまとめ、自民党、日本維新の会、生活の党が昨年末に共同提出した。
 カジノを誘致するメリットとして挙げられるのは経済効果だ。ホテルなど巨額の建設需要が生まれるほか、雇用創出にもつながる。カジノ会社は売り上げの一定額を国や地方公共団体に納付することから、地方にもメリットは大きいとされる。大阪府と大阪市は大阪湾の人工島を候補地に挙げ、20年の開業に向けてカジノの誘致活動を展開している。沖縄県の仲井真弘多知事は沖縄振興の一環と位置付け、意欲を示している。
 一方、マイナス面への不安も少なくない。暴力団など反社会的勢力の介入やギャンブルの不正行為などを心配する声は根強い。法案では内閣府の外局に監視や違法行為摘発を担うカジノ管理委員会を設けるとしている。犯罪や不正を徹底的に排除するためには厳格な仕組みづくりが不可欠であり、拙速は禁物だ。
 賭け事にのめり込む「ギャンブル依存症」が増加するのではないかとの危惧もある。日本には500万人を超す依存症患者が存在するという推計もあり、これまで十分な手だてが講じられてきたとは言い難い。カジノがある韓国では、借金による家庭崩壊や依存症の増加などが社会問題になっている。
 法案を共同提出した議員によると、カジノ収益の一部を使って依存症について国が調査、ケアをする方策も検討するという。依存症を減らす取り組みとしては、手順が違うのではないか。
 世界有数のカジノがあるシンガポールでは、外国人は入場無料とする一方、自国民からは約8千円を徴収している。生活保護の受給者や破産申告者は入場できないようにするなど国民を依存症から守る規制に力を入れている。
 日本ではカジノをめぐる国民の理解は進んでいない。国会は、海外の状況を踏まえて功罪をしっかり検証し、議論を尽くさねばならない。


佐賀新聞 2014年06月24日 07時07分
論説:カジノ法案
 自民、日本維新の会、生活の3党が提出した複合型リゾート施設(IR)整備推進法案は、地域を限定して「カジノ解禁」を目指している。外国人観光客の増加による経済活性化の一方、社会への悪影響も想定される。慎重に検討すべきだ。
 IRはカジノやホテル、国際会議場、ショッピングセンターなどが一体的な施設。カジノは世界140カ国にあり、特にアジアで急増している。その理由は観光客誘致と経済効果の大きさだ。
 2010年にIRを誘致したシンガポールは、3年間で外国人観光客が6割増の1550万人になり、観光収入は8割増になった。約7万人の雇用創出にもつながったという。
 日本を訪れる外国人観光客は昨年初めて1千万人に達した。これを2千万人へ倍増させる計画で、観光の魅力アップの中軸にする考えだ。全国数カ所に造れば、5兆円程度の経済効果が期待できるとされている。
 カジノ解禁への動きを受けて北海道、大阪府、沖縄県など全国の自治体が誘致に名乗りを上げるなど関心は高い。ただ、日本では刑法で賭博が禁止されている。
 法案では、競輪や競馬など公営競技と同じように、国や自治体がカジノから納付金を徴収できるように規定した。カジノは民間運営が想定されており、収益の一部を教育、文化振興などに充てて社会還元を図ることで、違法性がなくなるという考えに立っている。
 刑法は基本法であり、地域を限定して特例を認めることが可能なのかは大きな論点だ。活性化のために地域を限定して違法行為を解禁してもいいという暴論は成り立たない。法的な整合性をきちんと取るべきだ。
 2点目の課題は暴力団排除の難しさである。北九州市では利権をめぐって殺傷事件や企業への攻撃などが頻発している。現状でも暴力団の壊滅や排除が困難な中、多額の現金が動くカジノで対策が可能だというのは説得力を欠いている。
 パチンコで社会問題化したギャンブル依存症や多重債務者を増やす恐れもある。自分の意思で使う金額や時間をコントロールできず、犯罪に走ったり、借金で家族を苦しめたりするケースが後を絶たない。カジノは状況をいっそう悪化させるのではないだろうか。
 シンガポールでは、外国人観光客の利用を第一に位置づけている。自国民からは入場料を取って抑制し、生活破たんの恐れがあるような人物の排除を実施しているという。依存症対策など社会的なコストも払っている。
 日本では公営ギャンブルの衰退が著しい。カジノは外国人の富裕層をターゲットにするとしても、併設のショッピングセンターなどを含め継続的な運営が可能なのか、十分な調査が必要だ。
 自治体の中には、カジノの納付金のほか法人事業税や固定資産税の収入を見込み、IR事業の研究に熱を入れているところもある。経済面だけではなく、闇の部分も認識すべきだろう。
 現状では課題ばかりが目立っている。3党は年内の法案成立を目指している。カジノの利点と課題を論議するのはいいとしても、国民の理解を深めた上で結論を出すべきだ。(宇都宮忠)


朝日新聞 2014年6月23日(月)付
社説:カジノ解禁?―危うい賭けには反対だ
 カジノ解禁への議論が動き出した。
 安倍政権が成長戦略の素案で「検討する」とうたったのに続き、自民、維新、生活の3党による法案が衆議院で審議され、次の国会へ引き継がれた。
 結論を先に言いたい。カジノ解禁には反対だ。利点より弊害のほうが大きいと考える。
 まず、不正な資金の洗浄(マネーロンダリング)に使われる懸念である。暴力団など国内外の反社会的勢力に利用されることを防げるのか。
 ギャンブル依存症に陥る人が出るのは避けられず、対策にかかる社会的、経済的コストも無視できない。青少年や地域社会の治安への悪影響も心配だ。カジノ監督機関は行政の利権と天下りの温床になりかねない。
 推進派は観光振興、とりわけ訪日外国人を増やす呼び水になると強調する。カジノを成長戦略に位置づける安倍首相や政府も同じ発想だ。
 ただ、海外旅行客の増加が著しいアジア各地にもすでにカジノがあり、競争に勝つのは容易ではない。民間運営が想定されているがノウハウはなく、外国の業者に頼らざるをえない。もうけはもっぱら海外へ、という可能性も小さくない。
 訪日客は円安や格安航空路線の充実に支えられ、昨年初めて1千万人を超えた。今年も好調だ。外国人は日本のどこにひかれるのだろう。
 世界文化遺産にも登録された富士山や無形文化遺産になった「和食」、東京・銀座や秋葉原などでの買い物だけではない。地方の温泉街や旧宿場町、東南アジアの人たちには珍しい北海道や東北地方の雪景色とスキーなど、関心は広がっている。
 各地の自治体や関連業界も観光振興に力を入れている。自治体間の競争が足の引っ張りあいを招く例もあったが、東海・北陸地方や瀬戸内海沿岸で広域での取り組みが始まるなど、工夫が見られる。
 こうした動きを後押しすることこそが、政府の役割ではないか。カジノを解禁すれば誘致合戦を招き、せっかく盛り上がってきた「地域の魅力磨き」は水をさされるだろう。
 このほど島根、鳥取両県を訪れた安倍首相は、新たな観光戦略を決めた政府の会議で、次のように語った。
 「日本の各地域には、魅力あふれる観光資源や物産品がたくさんある。しっかり発信し、地域活性化につなげたい」
 その通りだ。賭博施設で観光客を増やそうという危うい「賭け」はいらない。

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