2014-11-08(Sat)

川内原発再稼働同意 3・11前に戻るのか 安全神話の復活

納得いかぬ拙速な同意 無責任ぶりが目に余る 疑問を残したままの「見切り発車」だ 住民の安全守れるのか

----九州電力川内原発再稼働を鹿児島県知事が受け入れた。
県議会と立地自治体である薩摩川内市の市長、市議会の意見を踏まえての判断だという。
周辺30キロ圏内にある8市町の首長も、最終的に異議を唱えることはしなかった。(朝日)

----そもそも、新潟県の泉田裕彦知事が言うように、福島の事故原因は、まだ分かっていない。
原因不明のまま動かすというのは、同じ事態が起き得るということであり、対策が取れないということだ。
根拠のない自信によって立つ再稼働3・11以前への回帰であり、安全神話復活である。
 
川内をお手本に次は高浜、そして…。
原発再稼働の扉をなし崩しで開いてしまうことに、多くの国民は不安を抱いている。
再生可能エネルギーという“国産”の代替手段はあるのに、である。(東京)

<各紙社説・主張>
朝日新聞)川内原発再稼働―「ひな型」にはなり得ない(11/8)
朝日新聞)川内原発 再稼働同意は早すぎる(11/5)
毎日新聞)川内再稼働同意 住民の安全守れるのか(11/8)
東京新聞)3・11前に戻るのか 川内原発(11/8)
しんぶん赤旗)川内原発再稼働 問題山積のまま強行許されぬ(11/8)
****************************
北海道新聞)川内原発再稼働 納得いかぬ拙速な同意(11/8)
河北新報)川内原発再稼働へ/地元同意も不安解消されず(11/8)
信濃毎日新聞)原発再稼働 無責任ぶりが目に余る(11/8)
京都新聞)再稼働の判断  住民不安に目を向けよ(11/5)
神戸新聞)川内原発/再稼働へ多くの課題残し(11/8)
神戸新聞)噴火と原発規制/冷静な議論が欠かせない(11/7)
中国新聞)川内原発の再稼働 本当に「責任」持てるか(11/8)
西日本新聞)川内再稼働同意 「福島の教訓」生かせたか(11/8)
南日本新聞)[川内再稼働同意] 疑問を残したままの「見切り発車」だ(11/8)




以下引用

朝日新聞 2014年11月8日(土)付
社説:川内原発再稼働―「ひな型」にはなり得ない
 九州電力川内(せんだい)原発の再稼働を鹿児島県知事が受け入れた。県議会と立地自治体である薩摩川内市の市長、市議会の意見を踏まえての判断だという。周辺30キロ圏内にある8市町の首長も、最終的に異議を唱えることはしなかった。
 原発再稼働の可否について立地地域に法的な権限はない。しかし、実務上は「地元の同意」が不可欠になっている。知事の判断で川内原発再稼働はほぼ確実となった。新しい規制基準に基づいた原子力規制委員会の審査を経た再稼働は、川内原発が第一号となる。
 全国では12原発18基が規制委の審査にかかっている。合格した原発はすべて再稼働するとしている安倍政権は、川内を今後のひな型と位置づける考えだ。
 しかし、川内原発の再稼働を巡る手続きを振り返ると、とてもこのままでいいとは考えられない。原発の過酷事故に対する備えが不十分なまま再稼働に進んでいるからだ。
■住民の安全は不十分
 まず、避難計画だ。
 住民の安全に直結するものなのに、いまだに避難に必要なバスの確保や渋滞対策に見通しがつけられていない。いずれも、福島での事故の際に現場が最も混乱し、住民が危険にさらされた要因となった問題だ。
 福島での事故で、原発には制御しようのない危険があり、100%の安全はないことが明らかになった。
 それでも原発を動かすなら、被害を受ける立地地域の住民のリスクをできるだけ小さくする手立てを講じ、さらに十分なのか検証し、住民が納得するプロセスは欠かせない。
 10月に入り、県内で住民説明会が計6回開かれたものの、5回までは規制委の専門的でむずかしい審査内容に関することに限定して開催された。住民の再稼働に対する素朴な不安や提案をすくいとり、対策に反映させる場にはならなかった。
 参加者への事後アンケートでも「良くなかった」「あまり良くなかった」が47%に達し、6割の人が説明を受けても理解できなかった項目が一つ以上あったと答えている。
 県知事をはじめ首長や議会が最後は「(安全対策や住民避難も)国の責任」とした。県や市町村など地元自治体が再稼働の手続きに絡むのは、住民の安全が関係しているからだ。
 その国の対応も同様だった。県の要請を受けて、政府職員や幹部を送り込み、議会の場などで繰り返し「国が責任をもつ」と表明した。今月3日には宮沢経産相も乗り込んで、再稼働の必要性を訴えた。
■「責任をもつ」とは
 だが「責任をもつ」とはどういうことなのか。具体的には何も見えてこない。
 事故が起きた福島のその後を見ても、被災者の生活再建、廃炉・汚染水対策、除染作業や放射性廃棄物の処理と、国が責任をとりきれているものはない。事故の直接的な責任を負っているのは東京電力であり、賠償や国費の投入も、結局は電気の利用者や国民の負担だ。
 いったん過酷事故が起きてしまえば、立地地域は国の責任では対応しきれない打撃を受け、その影響は少なくとも数十年に及ぶ。そんな現実に目をつぶった責任論は空論だろう。
 むしろ国が立地地域に対して責任をもってやるべきことはほかにある。脱原発のための支援だ。安倍政権も原発依存の低減を掲げているではないか。
■脱原発依存こそ急務
 立地自治体がおしなべて再稼働に前向きなのは、過疎化が進み、原発を受け入れて交付金や税収を得ることでしか「まち」を維持できないからだ。
 原発依存から脱していくためには、原発に頼らざるをえない現実を変えていく努力が欠かせない。当然、立地自治体だけでは解決できない難題であり、だからこそ今から取り組むことが必要であるはずだ。
 地域の資源を活用した循環型の産業や人材の育成、あるいは原発推進に偏っていた予算の組み替え、電力システム改革や再生可能エネルギーの振興などと組み合わせたエネルギー政策――。電気の消費地も巻き込んでの議論を進めることこそ政府の責任だろう。
 朝日新聞が10月25、26日に実施した世論調査では、原発の運転再開に55%が反対した。各紙の世論調査でも国民の過半は再稼働には慎重だ。
 川内原発再稼働の手続きが規範となれば、原発の再稼働は立地地域が判断する問題となって、国民全体の民意と離れていく。果たしてそれでいいのだろうか。
 原発政策には使用済み核燃料の貯蔵や放射性廃棄物の処分など、地域と全体が対立しかねない問題が山積している。
 川内原発再稼働を巡る論議は、地域と国民全体の民意をどうすりあわせるのか、という問題を投げかけてもいる。


朝日新聞 2014年11月5日05時00分
(社説)川内原発 再稼働同意は早すぎる
 九州電力川内(せんだい)原発の再稼働をめぐり、きょうから7日まで地元の鹿児島県議会が臨時議会を開く。再稼働推進の陳情が採択される公算が大きい。
 だが現段階で川内原発の再稼働を進めることは無責任であり、反対である。
 原子力規制委員会も原発の安全設備の詳細な審査や保安規定に関する審査をまだ終えていない。県議会と知事は再稼働同意を急ぐべきでない。
 何よりも大きな問題は、住民の避難計画である。
 原発事故を経て、規制委は放射性物質が飛散する過酷事故が起こりうることを原発審査に採り入れた。過酷事故の際の対応手順などを審査するようになったのは前進である。
 だが、過酷事故が起こりうる前提で原発の防災対策を眺めると、他の部分に比べ住民避難計画の弱さが目立つ。整然と避難できることになっていたり、避難に必要なバスの台数さえ未確定だったりという具合だ。
 原発事故を踏まえ、道府県とおおむね30キロ圏内の市町村に避難計画策定が義務づけられた。しかし、規制委は計画作りに直接関与せず、国は地元自治体に「丸投げ」状態だ。
 現状では、避難計画をだれも審査しておらず、いざというときに使える保証がない。
 北陸電力志賀(しか)原発の事故を想定して実施された国の原子力総合防災訓練では、悪天候で船による住民避難ができなかった。同様なことが起きかねない。
 原発30キロ圏の全国155の自治体の首長を対象に朝日新聞が実施したアンケートでは、4割近い59人が避難計画も国の審査対象に含めるべきだと答えた。
 早急に何らかの法制化によって、実効性が担保された避難計画を策定すべきである。
 川内原発と名指しはしていないものの、規制委の火山噴火リスクの取り扱いには日本火山学会が異議を唱えている。噴火予測の限界やあいまいさの理解が不十分というのである。
 福島第一原発事故では、津波の危険性を主張する専門家はいたが、事故を防げなかった。
 規制委や各電力会社は、火山学会の主張に謙虚に耳を傾けるべきである。
 火山リスクは、原発に100%の安全をだれも保証できないことの象徴ともいえる。
 なのに立地自治体首長からは「福島で起きた津波や地震、原発事故に対応するのは十分、100%と言っていいと私は信じている」との発言も飛び出す。
 安全神話に回帰して、同じ失敗を繰り返してはならない。


毎日新聞 2014年11月08日 02時35分
社説:川内再稼働同意 住民の安全守れるのか
 住民を危険にさらす過酷事故は起き得る。それが福島第1原発事故の教訓である。この教訓を軽視したまま、再稼働に向けた手続きが着々と進められていくことに大きな疑問を感じる。
 九州電力川内原発の再稼働について審議していた鹿児島県議会は再稼働を求める陳情を採択、伊藤祐一郎知事も同意した。川内原発が立地する薩摩川内市の市長と市議会はすでに同意しており、事実上、地元の同意手続きはこれで完了する。新規制基準ができて以来の大きな節目となるが、再稼働に向けた課題がこれで解決したとは言い難い。
 そもそも、原子力規制委員会の手続きが終わっていない。再稼働までには、審査書に基づく工事計画と保安規定の認可を受ける必要がある。それなのに、なぜ、これほど急いで同意を表明する必要があるのか。来春の県議選での争点化を避けようとしたとの見方もあり、十分な検討を尽くした結果なのか、疑問が残る。
 私たちは再稼働を認めるにはいくつか条件があると主張してきた。特に、過酷事故が起きた時に住民の生命と健康を守ることは、地元の首長にとって絶対条件のはずだ。しかし、それに備えた避難計画は、要援護者への対応や、避難者の受け入れ体制などに不十分なところが残されている。計画を国が審査する体制もなく、実効性が担保されたとはいえない。このままでは事故時に混乱が避けられないのではないか。
 住民の納得が得られたかどうかも重要な要素だ。鹿児島県は周辺5市町で原子力規制庁の職員とともに住民説明会を開いたが、再稼働の必要性や、避難計画の実効性を問う声に、十分な説明はなく、補足説明会でも疑問の声は収まらなかった。
 出席者へのアンケートも、説明会への全体的な感想や、理解できなかったテーマを問う表面的な内容にとどまった。本来なら、住民の意見をくみ取り、納得を得るための仕組みが必要だが、その努力も工夫も足りなかったと考えられる。
 川内原発が過酷事故を起こせば、その影響をこうむるのは薩摩川内市にとどまらない。にもかかわらず、知事や九電が立地自治体と県の同意で十分としたことに納得していない住民も多いだろう。
 もちろん、再稼働の責任は地元だけにあるわけではない。本来なら、政府が原発に頼らない社会をどう構築していくかの道筋をきちんと示した上で、個々の原発の再稼働の可否を判断すべきだ。
 こうした条件が整わないまま、なしくずしに再稼働の手続きを進めることは、拙速であり、見切り発車と言わざるを得ない。


東京新聞 2014年11月8日
【社説】3・11前に戻るのか 川内原発
 鹿児島県が同意して、手続き上、川内原発の再稼働を妨げるものはない。ゼロから3・11以前へ。多くの疑問を残したままで、回帰を許すべきではない。
 何をそんなに急ぐのか。残された危険には目をつむり、不安の声には耳をふさいだままで、流れ作業のように淡々と、手続きが進んだようにも見える。
 「安全性は確認された」と鹿児島県の伊藤祐一郎知事は言う。
 原子力規制委員会の審査書は、規制基準に適合すると認めただけである。田中俊一委員長も「安全を保証するものではない」と話しているではないか。
◆責任など負いきれない
 「世界最高レベルの安全対策」とはいうが、未完成や計画段階にすぎないものも少なくない。
 知事は「住民には、公開の場で十分説明した」とも主張する。
 しかし、鹿児島県が先月、原発三十キロ圏内の五市町を選んで主催した、規制委による住民説明会の会場では「本当に安全なのか」「審査が不十分ではないか」といった不信や不満が相次いだ。
 再稼働への懸念を示す質問が司会者に遮られる場面もあった。なぜこんなに食い違うのか。
 「万一事故が起きた場合、政府が責任を持って対処する」
 鹿児島県の求めに応じ、政府が入れた一札である。
 だが、どのように責任をとるのかは、明らかにしていない。
 今年もあと二カ月足らず。何万という被災者が、放射能に故郷を追われて四度目の新年を迎えることになる。補償問題は一向に進展しない。
 原子炉の中で溶け落ちた核燃料の取り出し作業は延期され、地下からわき出る汚染水さえ、いまだに止められない。繰り返す。原発事故の責任を負える人など、この世には存在しない。
◆はるか遠くに降る危険
 議会と知事は、川内原発の再稼働に同意した。だが起動ボタンを押す前に、明確な答えを出すべき課題が、少なくとも三つある。
 法的根拠はないものの、地元の同意が再稼働への最後の関門だとされている。
 第一に、地元とはどこなのか。
 伊藤知事は「県と(原発が立地する)薩摩川内市だけで十分」というのが、かねての持論である。「(原発による)苦労の度合いが違う」というのが理由である。気持ちはわからないでもない。
 原発事故の被害は広い範囲にわたり、長期に及ぶというのも、福島の貴重な教訓である。
 福島の事故を受け、避難計画の策定などを義務付けられる自治体が、原発の八~十キロ圏内から三十キロ圏内に拡大された。
 福島の事故から二週間後、当時原子力委員長だった近藤駿介氏は、半径百七十キロ圏内でチェルノブイリ同様強制移住、二百五十キロ圏内で避難が必要になるという「最悪のシナリオ」を用意した。
 原発事故の深刻な被害が及ぶ地域には、「地元」として再稼働を拒む権利があるはずだ。
 次に、火山のリスクである。
 九州は、火山国日本を代表する火山地帯である。川内原発の近くには、カルデラ(陥没地帯)が五カ所ある。巨大噴火の痕跡だ。
 約四十キロ離れた姶良(あいら)カルデラの噴火では、原発の敷地内に火砕流が到達していた恐れがある。
 ところが規制委は、巨大噴火は予知できるという九州電力側の言い分を丸ごと受け入れてしまった。
 一方、「巨大噴火の予知は不可能」というのが、専門家である火山噴火予知連絡会の見解である。
 これほどの対立を残したままで、火山対策を含めて安全と言い切る規制委の判断は、本当に科学的だと言えるのか。適正な手続きと言えるのだろうか。
 三つ目は、避難計画の不備である。県の試算では、三十キロ圏内、九市町の住民が自動車で圏外へ出るだけで、三十時間近くかかってしまうという。
 入院患者や福祉施設の人々は、どうすればいいのだろうか。福島では、多くの要援護者が避難の際に命を落としているではないか。
 知事の自信と現場の不安。ここにも深い溝を残したままである。
◆代替エネルギーはある
 そもそも、新潟県の泉田裕彦知事が言うように、福島の事故原因は、まだ分かっていない。
 原因不明のまま動かすというのは、同じ事態が起き得るということであり、対策が取れないということだ。根拠のない自信によって立つ再稼働。3・11以前への回帰であり、安全神話復活である。
 川内をお手本に次は高浜、そして…。原発再稼働の扉をなし崩しで開いてしまうことに、多くの国民は不安を抱いている。再生可能エネルギーという“国産”の代替手段はあるのに、である。


しんぶん赤旗 2014年11月8日(土)
主張:川内原発再稼働 問題山積のまま強行許されぬ
 安倍晋三政権が全国で停止中の原発再稼働の突破口にしようとしている九州電力の川内(せんだい)原発(鹿児島県)について、鹿児島県議会が再稼働を求める陳情を県内外の反対を押し切って採択、伊藤祐一郎知事も再稼働を認めることを明らかにしました。立地自治体の薩摩川内市の議会と市長もすでに同意を表明しており、安倍政権と九電は強行する構えです。川内原発をはじめ全国の原発は、東京電力福島原発のような重大事故を防ぐ対策も、万一の場合の避難計画も整っていません。重大な問題を残したまま一部の同意だけでの再稼働強行は断じて許されません。
安倍政権が押し付けた
 安倍首相は原子力規制委員会の審査に「合格」した原発は再稼働させると繰り返してきました。原子力規制委は9月に新しい規制基準にもとづく審査書を交付、これをうけ小渕優子前経済産業相が鹿児島県に文書で再稼働を要請し、宮沢洋一新経産相も連休中の3日同県を訪れ、「万一事故が起きた場合は国が責任を持って対処する」と再稼働への同意を迫りました。
 鹿児島県議会と県知事の同意がこうした安倍政権の圧力によるものなのは明らかです。宮沢経産相は鹿児島入りした際、「せんだい」原発を「かわうち」原発と呼んでひんしゅくを買っていますが、ここにも「国策」を押し付けるだけで住民のことは考えない安倍政権の無責任な姿勢が示されています。
 川内原発の再稼働には問題が山積しています。安倍政権は規制委が「安全」と認めた原発は再稼働させるといいますが、川内原発に対する規制委の審査は原子炉設置の変更だけで、工事計画や保安規定についてはまだ審査中です。工事が完了した後の検査もあります。「安全」がいえるのは先の先です。
 規制委の基準自体も問題だらけです。規制委は福島原発の事故を踏まえ地震や津波の基準を見直したといいますが、福島原発事故の原因も究明されていないのに、どうして新しい基準が「安全」といえるのか。川内原発の場合、福島原発と違って火山噴火対策が大問題ですが、規制委は満足な審査をしていません。日本火山学会の原子力問題対策委員会は、火山対策の審査に使う火山影響評価ガイドそのものの見直しを求めています。規制委の審査が「安全」を保証していないのは明らかです。
 地元で開かれた説明会で質問が集中したのは事故が起きた場合の避難計画ですが、規制委は避難計画を審査の対象としていません。政府も自治体任せです。先日北陸電力志賀原発でおこなわれた政府の防災訓練でも、計画通り避難できない事態が続出しました。住民が不安をつのらすのは当然です。
県民・国民の声を聞き
 安倍政権や九電は、鹿児島県の知事と議会、薩摩川内市の市長と議会が同意すれば地元の同意が得られたと再稼働を強行する構えですが、ここにも問題があります。原発が事故を起こせば、漏れ出した放射能は広範囲に拡散します。福島原発事故のあと政府が避難計画の策定を求めた30キロ圏内だけでも鹿児島県内には九つの自治体があります。これらの自治体の意思を無視し、一部の同意だけで再稼働を強行するのは許されません。
 国民・県民の声を聞くなら、国も九電も川内原発の再稼働は断念し、「原発ゼロ」に向かうべきです。

********************************************

北海道新聞 (2014/11/08)
社説:川内原発再稼働 納得いかぬ拙速な同意
 鹿児島県の伊藤祐一郎知事がきのう、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)の再稼働に同意すると表明した。
 これで再稼働に向け大きく動きだした。原子力規制委員会の残された審査が終われば、新規制基準に適合した初の原発として年明けにも運転を始めるとみられる。
 しかし、国も地元も手続きを急ぐあまり、重大事故が発生した際の対応については課題を置き去りにしたままである。
 住民の不安は脇に置いた同意は、拙速のそしりを免れまい。
 川内原発については規制委が9月に安全審査の合格を認める許可書を出した。
 これを受け住民説明会が県内で開かれ、薩摩川内市議会が先月、再稼働に同意。県議会もきのう再稼働を求める陳情を採択した。
 最大の問題は住民の避難計画である。要援護者の避難や一斉に避難する際の渋滞対策などが依然として不十分だ。説明会でも住民から批判が相次いで出された。
 実効性ある避難計画は安全対策の肝だ。これを放置するというのは納得いかない。
 伊藤知事はかねて再稼働の同意について薩摩川内市と県だけで十分だと繰り返してきた。
 しかし、30キロ圏の自治体は避難計画を策定する必要がある。川内原発の場合、全域が入るいちき串木野市や北半分が入る日置市などがその対象だ。
 こうした自治体は義務を負いながら、自らの声を届けられないというのは明らかに矛盾している。
 泊原発は安全協定を結ぶ後志管内泊、共和、岩内、神恵内の4町村の同意が必要とされるが、再稼働が現実味を帯びれば範囲の拡大を求める動きが高まるだろう。
 福島第1原発事故の教訓からいっても、立地自治体以外の住民の声を生かすことが重要だ。
 宮沢洋一経済産業相は今月、伊藤知事に「万が一、事故が起きた場合、国が責任を持って対処する」と明言した。だが、具体的にどう責任を持つと言うのか。
 例えば火山対策だ。周辺に複数のカルデラ地形がある川内原発は噴火災害の危険性が心配される。
 規制委は九電の火山監視でも対応可能とする見解を示した。これに対し専門家から異論が出されている。御嶽山(おんたけさん)をみても、噴火の予知は極めて難しい。
 川内原発の場合、安全対策はまだまだ不十分だ。再稼働は、そうした問題点を一つずつ解決してからでも遅くない。


河北新報 2014年11月08日土曜日
社説:川内原発再稼働へ/地元同意も不安解消されず
 九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働が決まった。同県議会がきのう、再稼働を求める陳情を採択し、伊藤祐一郎知事も同意を表明。再稼働を認める地元の手続きが事実上完了したためだ。
 2011年3月の東京電力福島第1原発事故を受けた新たな規制基準に基づく再稼働は、川内原発が初めてとなる。
 安倍晋三首相や、原子力規制委員会の田中俊一委員長は過酷事故に対して「世界でもっとも厳しい」と評する新基準をクリアしたとするが、火山噴火の影響など原発の安全性や避難計画の不備といった防災への不安が解消されたわけではない。
 先月あった審査結果についての住民説明会で、参加者から批判と反発の声が相次いだ。聞くにつけ、国、県、九電に不安を訴える住民に真摯(しんし)に向き合い、思いをくみ取る姿勢が十分だったとは言えそうにない。
 事故の際、被害が及ぶ可能性がある原発の半径30キロ圏に位置し、避難計画の策定を求められながら、再稼働の地元同意をめぐり、蚊帳の外に置かれた近隣自治体の住民らの不満も強い。
 原発のリスクをゼロにはできないし、これで絶対安心ということもない。だからこそ、リスク回避に向けての徹底した取り組みが欠かせない。
 万一の際の「責任の所在」をはっきりさせておく必要もある。説明会では九電や規制委の担当者が答弁に窮したといい、住民らの不安は消えない。宮沢洋一経済産業相は「国の責任」を約束したが、一連の対応を見れば、極めて心もとない。
 「事故」と「被害」発生の両面でゼロを目指す努力を積み重ね、住民らの理解を深めていくことなしに、安定稼働はあり得ないことを肝に銘じるべきだ。
 安全神話が崩壊する様を見せつけられた被災地、東北の住民、とりわけ、いつ終わるとも知れない過酷な生活を強いられている福島の避難住民は再稼働を認める地元の判断を、どのように受け止めただろうか。
 「福島の原発事故の全容も解明されていないのに、なぜ動かすのか」
 福島県双葉町から鹿児島市に避難している自営業者は前のめりの対応が納得できない。多くはそれに似た思いではないか。
 地域経済の活性化は住民の安全確保が大前提だ。再稼働への同意を「やむを得ないと判断した」知事はもとより、強く働き掛け誘導した国も、決断の責任から逃れられない。
 福島の事故の検証も終わっておらず、教訓を生かす課題も残る。被害実態を踏まえれば、同意を得る範囲を広げるべきだ。
 再稼働は年明け以降の見通しだが、万一に備えた対策の、より一層の充実を図っていかなければならない。
 まずは何より、住民避難の実効性を高めることが肝要だ。あらゆる事態を想定し、被害回避に万全の備えを講じるべきだ。
 手続きの終了はゴールではない。安全審査中の他の原発についても拙速は許されない。


信濃毎日新聞 2014年11月08日(土)
社説:原発再稼働 無責任ぶりが目に余る
 鹿児島県の伊藤祐一郎知事と県議会が、九州電力川内原発の再稼働を認めた。
 原発が立地する薩摩川内市の市長と議会は既に同意しており、地元同意の手続きは「完了」したことになる。
 再稼働に向けた一連の動きで浮かび上がったのは、地元同意の範囲や住民の避難計画といった重要な問題を棚上げにしてきた政府の怠慢だ。誰が再稼働を最終的に判断するのか、責任の所在もはっきりしない。
 こんなずさんな手続きを、他の原発でも繰り返すのか。
<曖昧な地元の範囲>
 納得できない問題の一つが「地元同意」だ。川内原発で、薩摩川内市と鹿児島県だけが対象となるのは、両自治体が九電と安全協定を結んでいるためだ。電力各社はこれまで、主に立地自治体のみを「地元」としてきた。
 ただ、薩摩川内市の岩切秀雄市長が「『同意』ではない。法的に地元市長の手続きは何もない」と話したように、法律に基づいた手続きではない。
 東京電力福島第1原発の事故で、放射性物質は立地自治体を超え広範囲に飛び散った。深刻な影響を目の当たりにした各地の原発の周辺市町村から、立地自治体並みの「発言権」を求める訴えが相次いだのは当然と言える。
 こうした要請を承知していながら、政府は地元同意について検討してこなかった。鹿児島県内でも、半径30キロ圏内の自治体の議会や住民が「地元」に加えるよう要求している。が、「薩摩川内市と県のみ」とする伊藤知事の見解が、事実上のルールになった。
 宮沢洋一経済産業相も3日、鹿児島県を訪ねた際、地元の範囲について「県などの判断だ」と言い放った。あまりに無責任だ。範囲の基準を示さないのならせめて、要求している自治体の同意を得るよう、九電や鹿児島県に促すことはできたはずだ。
 政府が最終判断するという法的根拠もない。責任の所在が曖昧なまま、鹿児島県側は国主導を、政府は地元の意向を演出し、手続きを急いできた感が強い。
 住民の避難計画の不備も見過ごせない。国は福島の事故後、避難対策を準備する地域を、原発の半径10キロ圏から30キロ圏に広げた。
 自治体の避難計画づくりは難航している。入院患者や施設入所者の移送手段、受け入れ先が見つからない。原発に近い方の住民から順次避難するという内容が目立つけれど、住民は「パニックになったら役に立たない」などと実効性を疑っている。
<不安は置き去りに>
 避難計画の内容を審査する仕組みも、政府は整えていない。川内原発の再稼働が現実味を増した9月、急きょ鹿児島県の自治体の避難計画を点検し、安倍晋三首相が「具体的、合理的と確認した」と太鼓判を押した。これも根拠があっての判断ではない。
 川内原発再稼働の住民説明会では、追加した1回を除き、避難計画に対する質問を受け付けなかった。住民の強い不安を拭えないまま、薩摩川内市と鹿児島県は同意に踏み切っている。
 地元同意の範囲や、住民の理解を得られる避難計画は本来、再稼働の是非を諮る前に、整えておかなければならない。「福島の経験と教訓を生かす」という首相の言葉とは裏腹に、原発の施設面の審査を原子力規制委員会に委ねる間、同等に重要な課題について、政府は何ら手を打ってこなかったと言っていい。
 宮沢経産相は鹿児島で「事故が起きた場合は、国が責任を持って対処する」と述べている。
 国民は、事故後の福島を見ている。第1原発では汚染水の増加に歯止めがかからず、廃炉の先行きも見通せない。今も13万人近くが帰郷できず、国と東電が仕切る賠償や支援策は避難者らの生活再建に結び付いていない。
<安倍首相が説明を>
 国が責任を持って対処すると強調したところで、どれだけの人が安心できるだろう。
 福島の除染や廃炉に国費が投じられているように、「国の責任」は、国民が負担を引き受けることを意味する。その国民の多くは再稼働に反対している。
 福島の事故原因は究明できていない。「核のごみ」の処分法や処分先も決まっていない。一方、自然エネルギーの発電設備は急速に増えてきている。
 こうした状況でなぜ、民意を押し切ってまで原発にこだわるのか。どれくらいの期間、何基の稼働を必要とするのか。説得力のある説明は聞こえてこない。
 原子力政策のこれからを含め、川内原発再稼働の必要性、鹿児島県内での手続きの受け止め、今後の再稼働に政府としてどう臨むのか―といった点を、安倍首相自身が国民の前に出て、丁寧に説明するよう求める。
 地元住民や国民の不安、憤りを置き去りにしたまま、なし崩しに再稼働することは許されない。


[京都新聞 2014年11月05日掲載]
社説:再稼働の判断  住民不安に目を向けよ
 九州電力川内原発の再稼働が現実味を帯びてきた。
 原子力規制委員会の新規制基準に初めて「合格」した1、2号機について、立地自治体である鹿児島県薩摩川内市の岩切秀雄市長と市議会は10月下旬に再稼働に同意した。7日には伊藤祐一郞知事と県議会も同意する見通しで、必要な地元手続きが完了する。
 事故発生時の避難計画などをめぐる住民や周辺自治体の不安が根強い上、火山の影響評価の見直しも迫られている。県側には安全を最優先し、拙速を避ける冷静な判断を求めたい。
 鹿児島県を訪れた宮沢洋一経済産業相が「事故が起きた場合は国が責任を持って対処する」と約束し、伊藤知事は理解を示したとされる。再稼働を急ぎたい政府と、国主導を強調して住民の反発をかわしたい県側の思惑が一致したとみえる。
 原発の責任を国が負うのは当然だが、「万事国任せ」では困る。万一の事故で住民に直接対応するのは地元自治体だ。県や市は住民の命を守る使命があることを忘れてはならない。
 住民説明会では、再稼働を懸念する声の方が多かったという。理由の一つは避難計画で、一斉に避難する際の渋滞対策や要援護者の避難方法などが示されておらず、岩切市長も不備を認めている。「事故対策を完璧に整えてから再稼働の是非を議論すべきだ」とする住民の反応はもっともだ。
 地元同意の対象に、30キロ圏のいちき串木野市や日置市が含まれていないことも疑問だ。地元の範囲を明確に定めた法的枠組みはないが、事故の被害が及ぶ想定で避難計画を策定する30キロ圏の自治体が、地元同意の対象にならないのは矛盾する。これは関西電力高浜原発の再稼働判断に対する京都府内や滋賀県内の近接自治体の立場とも絡んでくる。
 川内原発には周辺火山の噴火による影響も指摘されている。原子力規制委は「影響の可能性は小さいとする九電の評価は妥当」と判断したが、日本火山学会の原子力問題対応委員会は規制委の審査基準について、噴火予測の限界や曖昧さを踏まえて見直すよう提言した。御嶽山の噴火で不安は高まっており、この問題を放置したままの見切り発車は許されない。
 電力各社は今冬の需給見通しを「安定」としており、再稼働を急ぐ理由にはならない。伊藤知事や県議会には住民の不安と真正面から向き合ってもらいたい。


神戸新聞 2014/11/08
社説:川内原発/再稼働へ多くの課題残し
 九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)が、再稼働に向けて一つのヤマを越えた。きのう、県議会に続き伊藤祐一郎知事が同意した。
 これで、地元の手続きは終わり、原子力規制委員会による設備検査などを経て、年明けにも再稼働第1号となる。多くの課題を抱えたままの見切り発車である。
 第一に、重大事故時の避難計画が不十分だ。実効性に不備があることは薩摩川内市の岩切秀雄市長も認める。住民から「順番が違う」との批判が出るのも当然ではないか。
 避難計画づくりで国は前面に出るとしたが、政府が派遣したのは資源エネルギー庁の職員だった。先月末の衆院予算委員会で、野党は「原発を推進する側の職員が実のある避難計画をつくれるか」と追及した。
 政府に3年前の原発事故を教訓にする姿勢はあるのだろうか。避難計画が形だけのものであってはならない。自力避難が難しい高齢者や障害者らを安全、確実に誘導する体制が整うまで再稼働は容認できない。
 第二に、「地元」はどこを指すのか、依然、不透明さを残す。原発事故は立地自治体、そうでない自治体の別なく放射能被害をもたらしたが、その教訓が生かされていない。
 事故後、防災体制づくりを求められた原発から30キロ圏の周辺自治体には、地元手続きへの「関与」を求める声は根強い。だが、知事も政府も電力会社も取り合おうとしない。「地元」が多くなると同意を得るのが難しくなるからだろう。こうした姿勢では理解は得られない。
 第三に、再稼働の判断は誰がするのか責任の所在が曖昧だ。規制委は「判断はしない。事業者か国にしていただく」との立場を崩さない。
 地元の同意手続きでも、国の責任を明確にすべきとの声があった。
 政府の新エネルギー計画では「国が前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう取り組む」とあるが、どう関与し、どんな手順で進めるのか、明確でない。
 政府は規制委の審査を通った原発を速やかに再稼働させる方針だ。不透明さや曖昧さを残したままでは、原発ごとに手続きがばらばらになる可能性がある。川内原発を再稼働の先例にしてはならない。
 厳正なルールと手続きの下で、安全が確認された原発のみ期間限定で動かす。その一線は譲れない。


神戸新聞 2014/11/07
社説: 噴火と原発規制/冷静な議論が欠かせない
 火山噴火の危険を原発の安全規制に、どう反映させるか。九州電力川内原発(鹿児島県)の再稼働に向けた手続きが進む中、あらためてその取り扱いが論議を呼んでいる。
 巨大噴火予測をめぐり、原子力規制委員会の審査基準を見直すべきだとした日本火山学会の提言について、規制委の田中俊一委員長が「今更のごとくそんなことを言うのは本意ではない」と珍しく気色ばんだ。
 巨大噴火は、川内原発の審査で論点になった。九電は稼働期間中に巨大噴火が起きる可能性は十分低く、起きるとしても変化をとらえて事前に核燃料を運び出すとした。規制委は審査基準を根拠に追認した。
 火山学会は、基準が噴火予測の限界を考慮していないなどとして見直しの必要性を提言したのである。
 原子炉等規制法は安全規制について、最新の知見を技術基準に取り入れると明記する。基準にどう反映させるのか、規制委は批判より関係者の英知を集めるのが先だろう。
 日本列島に壊滅的被害をもたらす恐れがある巨大噴火は、今後100年で最大1%の確率で起きる-。先月、神戸大学の巽好幸教授らが発表した試算は波紋を広げた。
 過去12万年に起きた火山噴火を分析し、噴出物が1千億トン以上の巨大噴火の可能性を算出。こうした巨大噴火は、鹿児島湾の姶良(あいら)カルデラ噴火や鹿児島県沖の鬼界(きかい)アカホヤ噴火などがあり、噴火による火砕流や降灰は各地の地層に残っている。
 同程度の噴火が九州中部で起きた場合、火砕流は九州の広範囲に広がり、降灰は列島のほぼ全土を覆う。縄文時代の鬼界アカホヤ噴火を最後に巨大噴火は起きていないが、いつ起きてもおかしくないという。
 火山の噴火予知は地震以上に難しい。巨大噴火の知見は限られ、対応策の研究を進める体制は整っていない。予算も人材も乏しい。社会の無理解、無関心が招いた結果であり、学会の努力不足を責められない。
 巨大噴火は数千年、数万年後かもしれないが、数カ月、数年先かもしれない。規制委は観測や予知の限界を認めた上で、現実にどんな対応が可能かを真剣に検討すべきだ。
 火砕流や降灰が広く覆う大噴火は手の施しようがあるまい。そうであるなら原発を放棄する道もある。
 火山学会を批判するだけでは済まされない大きな問題である。


中国新聞 2014/11/8
社説:川内原発の再稼働 本当に「責任」持てるか
 国民の多くに抵抗感があるのは変わらない。にもかかわらず、原発が年明けにも再稼働する可能性が高くなった。
 九州電力川内原発1、2号機が立地する鹿児島県薩摩川内市の市長に続き、同県の伊藤祐一郎知事がきのう、再稼働に同意した。これで地元同意の手続きが完了したことになる。
 宮沢洋一経済産業相は先日、現地を訪れた。伊藤知事に対し、事故が起きた場合には「国が責任を持って対処すると約束する」と述べている。
 しかし東京電力福島第1原発の事故で、今なお大勢の住民が避難を余儀なくされている現実がある。「責任」を持つと言っても、うのみにはできない。
 川内原発の安全性をめぐっては、原子力規制委員会が新たな規制基準に基づき審査し、9月に「合格」を出していた。それがここにきて揺らいでいる。
 問題とされているのは、原発周辺にある火山が噴火するリスクだ。日本火山学会は今月、予知には限界があることを踏まえ、規制委の審査基準を見直すべきだとする提言を出した。
 これに対し、規制委の田中俊一委員長は「もっと早急に発信してくるべきだ」と批判した。新基準作りの際になぜ言わないのかとの思いもあろうが、その分野の専門家の指摘は重く受け止めなければならない。
 地元住民からすれば、それ以上に心配なのが、火山のリスクを含め原発事故が起きたときに安全に避難できるのかということだろう。
 福島の事故を踏まえ、規制委はおととし、事故時の住民避難計画の策定を義務付ける自治体の範囲を原発の半径10キロ圏から30キロ圏に広げた。川内原発の場合、鹿児島県以外に薩摩川内市など2市だったのが、県内の9市町に増えている。
 それらの避難計画の中身を見ると、地元自治体自らが認めているように、とても十分とは思えない。とりわけ問題視されるのは、病院の入院患者や老人ホームなど福祉施設の入所者の避難である。
 医療設備やスタッフが不可欠のため、避難先探しは容易ではない。その結果、半径10キロ圏外については、確保できていない。地元説明会でも不安の声が相次いだという。
 計画の内容は、規制委が審査する対象ではない。政府の原子力防災会議が9月、川内原発周辺の自治体の避難計画を「確認」したが、計画の実効性には懸念が拭えない。
 というのも、きちんと機能するかどうかは、何度も訓練などを通じて検証することが欠かせないからだ。北陸電力志賀原発(石川県)の事故を想定した先日の防災訓練では、天候次第では船で避難できない課題が浮き彫りになっている。
 地元自治体の避難計画が不十分なまま川内原発が再稼働するようなら、なし崩しと言わざるを得ない。少なくとも、政府は自治体任せにせず、計画に足りない部分を補うべきだろう。
 川内原発を優先してきた規制委は今後、他の原発の審査を本格化させる。次の候補には、関西電力高浜原発(福井県)などが挙がっている。
 政府は地元住民の安全にどう責任を持つのか。原発を再稼働させる前に、安倍晋三首相自らが説明すべきである。



=2014/11/08付 西日本新聞朝刊=
社説:川内再稼働同意 「福島の教訓」生かせたか
2014年11月08日(最終更新 2014年11月08日 10時33分)
 鹿児島県議会が九州電力川内原発の再稼働を求める陳情を採択し、伊藤祐一郎知事も再稼働に同意すると正式に表明した。立地自治体の薩摩川内市に続く同県の同意で、再稼働に必要な地元手続きは完了したことになる。
 同原発は年明けにも、新規制基準に基づく初の再稼働となる見通しだ。それは、福島原発の事故以来、実質的に原発の利用を控えてきた日本が再び「原発を活用する国」に戻ることを意味する。
 経済界を中心に再稼働を期待する声はある。だが、地元住民の不安や懸念を解消する議論が尽くされたのか。「福島の教訓」は生かされたのか。疑問を拭えない。
 一連の地元同意をめぐる手続きで浮き彫りになったのは、むしろ再稼働に前のめりな政府の拙速と無責任ではなかったか。
 ▼不信根強い避難計画
 それを象徴するのが事故を想定した避難計画だ。住民には計画の実効性への不信感が根強いのに、計6回開かれた住民説明会で議論が深まったとは言い難い。
 中でも原子力規制委員会事務局の原子力規制庁による5回の説明会は、避難計画に関する質問を「説明の対象外」として答えず、会場に強い不満を残した。
 無理もない。政府は避難計画づくりの責任を地元自治体に丸投げしている。規制委は避難計画への関与権限を持たないからだ。
 これはおかしい。本来は実効性ある避難計画を再稼働の要件とし、規制委の審査対象にすべきだ。安全を守るための避難計画を検証する仕組みがない以上、納得できない住民がいるのも当然だろう。
 住民の疑問はさらに、再稼働の必要性、原発の安全性や災害対策など多岐に及ぶ。活火山の桜島から約50キロの距離だけに、火山噴火対策にも不安がくすぶる。国は説明責任を果たしたといえるのか。
 川内原発の防災対策重点地域となる半径30キロ圏の9市町のうち、いちき串木野、日置両市議会は再稼働への同意権限を求める趣旨の意見書を可決している。
 だが、伊藤知事は「同意は県と薩摩川内市で足りる」との姿勢を押し通した。同意表明の記者会見でも地元の範囲について「一律の拡大は賢明ではない」と述べた。
 再稼働の地元手続きは法令の定めがない。地元の範囲について政府はいまだに指針も示さない。それが地元に混乱を招いている。
 福島県では今なお10市町村が避難指示区域に指定され、県全体の避難者数は12万人を超える。
 福島の教訓を踏まえれば、原発周辺自治体の要望に配慮し、地域全体の合意形成に努めるのが国と鹿児島県の使命ではなかったか。知事も県議会もそうした取り組みが十分だったとは思えない。
 宮沢洋一経済産業相が3日に鹿児島入りし、「事故が起きれば、国が責任を持って対処する」と述べた。再稼働への「お墨付き」を求める地元に政府がようやく応じたかたちだ。だが、決意表明の域を出ず、具体的な責任の所在や内容が明確になったわけではない。
 ▼責任体制は曖昧なまま
 規制委は原発の新規制基準への適合性を審査するが、安全性を担保するものではない-という。政府は、その規制委が規制基準を満たすと判断した原発は順次再稼働させる-としている。ただ、個々の再稼働は電力会社の判断で、避難計画は自治体の責任-というのが政府のスタンスだ。
 誰が最終的に再稼働を判断し、万が一の事故が起きた場合の責任を誰がどう負うのかは依然、曖昧なままだ。再稼働を促す政府や電力会社と、不安を抱く地元住民の板挟みとなる自治体や議会の苦悩も今回、あらためて表面化した。
 より大きな問題は、政府がエネルギー基本計画で「原発依存度を可能な限り低減する」としながらその道筋を示さないことだ。
 再稼働で増える放射性廃棄物は最終処分場の当てがない。各種世論調査では再稼働に反対する国民の方が賛成する人よりも多い。一方で節電意識は高まり、再生可能エネルギーの活用も増えている。
 そうした原発の全体状況を踏まえ「脱原発」の行程も示して熟議すべきである。なし崩し的に再稼働へ突き進むのは許されない。
 政府は今回の地元手続きを「ひな型」とするのではなく、顕在化した問題や課題をきちんと総括して今後の教訓に生かすべきだ。


南日本新聞 ( 2014/11/8 付 )
社説:[川内再稼働同意] 疑問を残したままの「見切り発車」だ
 鹿児島県の伊藤祐一郎知事は九州電力川内原発1、2号機の再稼働に同意した。県議会が、再稼働を求める陳情を採択したことを受けての判断である。
 東京電力福島第1原発事故が起きて以降、新規制基準に適合した原発の立地県の知事と議会が、再稼働に同意するのは初めてだ。予定通りなら川内原発は、年明け以降に再稼働する。
 知事は同意について、「やむを得ないと判断した」と述べた。原発の必要性や安全性などで「政府の考えが明確に示された」とも説明した。
 あれだけ過酷な原発事故の後である。知事も議会も難しい決断だっただろう。だが多くの疑問を残したままの見切り発車が、事故後の再稼働手続きにふさわしいモデルとなるかどうかは疑わしい。
 知事が、再稼働に必要な同意を得る「地元」とする立地自治体の薩摩川内市と議会が賛成したのは先月下旬のことだ。それから10日後に知事と県議会が同意した。
 同意にあたって、もっぱら強調されたのは「新規制基準に基づく原子力規制委員会の厳格な審査が行われた」「宮沢洋一経済産業相の文書で、エネルギー政策上の原発の必要性と川内原発の安全性の確保が明示された」などである。
 ひとたび過酷事故が起きれば、被災地になるというのに、国や関係機関の「お墨付き頼み」が過ぎはしないか。
■不誠実な国の説明
 宮沢経産相が鹿児島県庁で「万一の事故の際は、国が関係法令に基づき責任をもって対処する」と語ったことも、知事や議会は大きく評価した。
 しかし、経産相の説明は、今年4月閣議決定した国のエネルギー基本計画の文言をなぞっただけである。再稼働を必要とする理由に挙げた中東の原油輸入の厳しさなどもそうだ。誠実さに欠ける説明で、重みも感じられない。
 経産相はまた、再稼働で同意が必要な範囲について「それぞれの地域で事情が異なる」と述べた。だがその後、菅義偉官房長官が「(2番手以降も)川内原発の対応が基本的なことになる」との見解を示した。
 時間がかかり、困難な同意を得る地元自治体はできるだけ少ない方がいい。これが国の本音なのだろう。伊藤知事がこだわった地元の範囲が、早くも利用された形だ。
 福島原発事故での地域への被害拡大を思えば、少なくとも同意の範囲は、避難計画の作成を義務付けられた半径30キロ圏の自治体まで広げるべきである。
 同意を得る範囲の問題は、自民党鹿児島県議団が党に「国が明確な基準を示すこと」を要請した。自民党は要請に従って、国民が納得できる範囲を定めるよう政府に迫ってほしい。
 県が、原発の新規制基準の適合性審査の住民説明会に関して、「おおむね理解が進んだ」と評価したのも納得できない。
参加者は対象住民のわずか1.5%の2990人。「理解が進んだとは、とても思えない」と県議会で批判されたのはもっともだ。
■廃炉に備えよう
 「次は川内原発が40年を経過して、廃炉問題が出てくる10年後くらいに、このようなことがあるのかなと思う」
 再稼働のような決断をまた迫られることがあるのか、と記者会見で問われた薩摩川内市の岩切秀雄市長は廃炉に言及した。
 脱原発は世論も望んでいる。本紙が5月に実施した電話世論調査で、「今後も原発を活用すべき」と答えた人は10.9%にすぎなかった。
 国もエネルギー基本計画に「原発依存度の可能な限りの低減」を掲げ、運転開始から40年前後になる原発は廃炉にする方針だ。
 岩切市長が言うように川内原発1、2号機は、2024年から相次いで運転40年を迎える。
 川内原発がこのまま再稼働したとしても、今後は廃炉に向けた備えこそ重要である。
 原発の建設時期から今まで、薩摩川内市は国の多額の交付金や九電の固定資産税、寄付金などで潤った。飲食業や建設業など原発絡みの仕事をする人も多い。
 このため、廃炉は地域経済に与える影響が懸念される。廃炉を見据え、地元で「新エネルギーに取り組み、関連工場を誘致したい」(岩切市長)、「自立した経済を目指すべき」(建設業)などという声が出ているのは当然だ。
 廃炉をスムーズに進めるためには、原発に代わる新しい産業の育成など国や県も知恵を絞る必要がある。
 経産省の原子力関連の小委員会は、九電など事業者や廃炉後の立地地域に対する支援策の議論を始めた。ただ、原発の延命につながるような安易な策は慎みたい。
 原発に依存しない経済や社会づくりは、福島の事故から学んだ最大の教訓のはずである。その方向性を国民に分かりやすく示すのは国の責務だ。
 しかし、地方にもできることはある。先に述べた薩摩川内市でのさまざまな声を実現させることもその一つだ。
 再稼働第1号になるのなら、原発に左右されない郷土づくりの先陣こそ目指すべきではないか。

////////////////////////////////////////////////////////
関連記事

テーマ : 政治・時事問題
ジャンル : 政治・経済

tag : 川内原発 再稼働 3・11 安全神話 復活

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

プロフィール

ajimu-ra

Author:ajimu-ra

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最近の記事
リンク
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ(タブ)
RSSフィード
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
カテゴリー
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
FC2ブログランキング
↓↓クリックお願いします↓↓

FC2Blog Ranking

ブログ内検索
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

フリーエリア
blogram投票ボタン