2014-11-25(Tue)

総選挙 争点 経済 消費税増税 集団的自衛権 原発・・・

アベノミクス―抱えたリスクこそ課題 集団的自衛権の行使 戦争できる国にするのか 原発政策 安易な回帰は許されない

<各紙社説>
朝日新聞)(衆院選)アベノミクス―抱えたリスクこそ課題(11/24)
読売新聞)主要な争点 経済再生の具体策を議論せよ(11/24)
毎日新聞)安倍政治を問う 集団的自衛権(11/24)
東京新聞)問われる経済政策 この道を続けるのか(11/24)  
北海道新聞)<2014衆院選>原発政策 安易な回帰は許されない(11/24)
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読売新聞)安倍政権総括 経済最優先で「好循環」目指す(11/23)
毎日新聞)安倍政治を問う…原発再稼働 脱依存の道が見えない(11/23)
日本経済新聞)経済再生へ「アメ」より改革案を競え(11/23)
東京新聞)週のはじめに考える デフレ脱却と経済社会(11/23)
北海道新聞)<2014衆院選>集団的自衛権の行使 戦争できる国にするのか(11/23)




以下引用

朝日新聞 2014年11月24日(月)付
社説:(衆院選)アベノミクス―抱えたリスクこそ課題
 来年10月に予定されていた消費再増税の先送りを、安倍晋三首相が表明した。自らの経済政策の成功を確かなものとするためだという。
 「消費税を引き上げることで景気が腰折れすれば、国民生活に大きな負担をかける」。7~9月期の経済成長率が予想外のマイナスに沈んだことにも触れながら、首相は説明した。
 17年4月には必ず増税し、財政再建の旗は降ろさないという。日本政府の深刻な財政難を考えれば、再度の先送りは許されないだろう。増税先送りで穴があいた社会保障の財源をどうするのかも重要な課題だ。
 同時に増税先送りは、安倍政権の経済政策がはらむ「危うさ」への警戒を促している。
 いわゆる「アベノミクス」が依存する、「異次元」とも称される大胆な金融緩和と、財政政策。つまり日本銀行と政府を巡る問題である。
■目に見えぬ危うさ
 日本経済は90年代末から、物価が下がり続けるデフレに苦しんできた。デフレからの脱却と、そのための大胆な金融緩和を掲げて2年前、安倍政権は発足した。その主張を実行したのが、昨年3月に就任した日本銀行の黒田東彦総裁だ。
 黒田総裁は目標を「2年間で物価を2%上昇させる」ことに据え、昨年4月から膨大な国債を買い入れることで市場にお金を供給する「異次元緩和」を開始。最近になって物価の上がり方が鈍ったと見るや、10月末に追加緩和も決めた。
 物価が将来、どれほど上がると考えるか。消費者や市場関係者らの期待(予想)に働きかけるのが異次元緩和だ。円安や株高を促す効果も期待された。
 安倍首相は「経済政策は確実に成果を上げつつある」と強調する。確かに雇用の指標は改善した。一方、1人当たりの賃金上昇は、物価上昇には追いつかず、実質では減少を続けている。そのため消費も伸びない。
 金融緩和で円安が大幅に進み、輸出企業の円換算での利益は増えた。しかし、輸出量の伸びは鈍く、国内での生産も増えないため、恩恵は下請け企業などには広がっていない。
 この現実をどう見るか。2年間の経済政策を評価する際のポイントの一つではあろう。
 しかし、現状を見るだけでは、安倍政権の経済政策の是非は判断できない。政策の主役である異次元緩和がはらむリスクが、今は目に見えないからだ。
 追加緩和の結果、日銀が買い入れる国債の量は、政府が新たに発行する国債の9割相当に増えた。日銀が事実上、国の借金を肩代わりしているに等しい。国の財政に対する信認が失われれば、膨大な国債を抱える日銀、そして日銀が発行する通貨への信認も失われかねない。そうなれば、国債売りや円売りを誘発して日本経済の土台を揺るがすことになる。
■選択肢奪った政策
 その危うさを認識しているからだろう。黒田総裁はかねて、消費増税の先送りで財政健全化に対する市場の疑念が膨らめば「日銀として対応のしようがない」と繰り返し訴えていた。10月末の追加緩和も、景気てこ入れで再増税の決断を後押しするため、との見方があった。それでも安倍首相は増税を先送りした。追加緩和が政府の財政規律を緩めたという見方が、市場関係者からは出ている。
 記者会見で首相は「私たちが進めている経済政策が間違っているのか、正しいのか。論戦を通じて明らかにしてまいります」と述べた。「アベノミクス」に対する批判はあっても、ほかの選択肢が示されたことはない、とも指摘した。
 しかし、異次元緩和にいったん入ったら、政策を転換することは極めて困難である。仮に日銀が国債購入をやめれば、国債売りや円売りのリスクが顕在化しかねない。市場や経済に混乱をもたらすことなく、今の政策をどうやって終えるのか。政策の「出口」に至る道筋が示されなければ、政策の妥当性を判断することは、無理なのだ。
 首相自身が異次元緩和以外の選択肢がない状況をつくったと言える。
■脱デフレの歩み方は
 異次元緩和は当面続けるしかない。「出口」を探れるのは、今回の選挙期間を遠く超えた先のことになるだろう。
 それを前提に、経済政策について有権者が問いかけることができるのは、これまで通りにデフレ脱却の道を突き進むのか、異次元緩和のリスクと限界を踏まえて経済運営をより慎重に進めるのかということだろう。
 デフレ脱却を優先すれば財政再建の比重は下がるだろうし、リスクを気にすれば財政再建も急がざるをえない。
 いずれにしても細く険しい道だ。異次元緩和の目標を何にし、「出口」の条件となる財政再建はどう進めるのか。有権者が選ぶに足る道筋を示すことが、各党には求められる。


読売新聞 2014年11月24日 01時31分
社説:主要な争点 経済再生の具体策を議論せよ
◆安全保障法制をどう整備するか◆
 デフレを完全に封じ込め、安定した成長軌道を実現できるか。日本経済は正念場にある。
 中国は、海と空で軍事力を背景とした覇権主義を強めている。北朝鮮の核・ミサイルの脅威も変わらない。
 将来にわたり平和で豊かな日本を築くには何が必要か。衆院選で各党は、経済と外交・安全保障の具体策を活発に論じるべきだ。
 ◆問われる成長戦略
 最大の争点は、経済政策「アベノミクス」継続の是非だ。
 安倍首相は、株価上昇や雇用情勢の改善など、これまでの成果を踏まえ、「景気回復には、この道しかない」と強調している。
 自民党は政権公約で、企業の競争力強化のため、法人税改革や基礎研究支援、規制改革を掲げる。アベノミクスの「第3の矢」である成長戦略を強化する狙いだ。
 法人税減税の進め方や、岩盤規制とされる農業・医療分野の改革にどう取り組むか、掘り下げた処方箋を示してほしい。
 民主党は、景気回復の遅れについて「安倍政権の経済失政」と批判する。アベノミクスの恩恵は大企業など一部に偏っているとして、非正規労働者の待遇改善や正規雇用の拡大などを通じた「厚い中間層の再生」を掲げる。
 雇用拡大や所得向上には、企業の活力強化が欠かせない。その具体策を示すことが求められる。
 消費増税の先送りについて、主要政党は容認しており、歳入減で社会保障財源への大きな影響は避けられない。
 ◆最適な電源構成を探れ
 他の財源確保策や、給付抑制を含む、年金、医療、介護など社会保障制度の効率化について、議論を尽くすことが必要だ。
 経済再生には、安価で安定した電力供給が不可欠である。
 九州電力川内原子力発電所が年明けにも再稼働する見通しとなった。安倍政権は、関係自治体との調整に積極的に動いた。
 首相は、再生可能エネルギーの導入などで、原発依存度を極力低減させると主張している。
 民主党は従来、「2030年代の原発稼働ゼロ」を掲げながらも、安全性が確認された原発については再稼働を容認してきた。
 各党は、原子力、火力、再生エネなどを組み合わせた最適な電源構成について、さらに論議を活発化させることが大切である。
 来年の通常国会は、安全保障法制の整備が重要課題となる。
 安倍政権は今年7月、憲法解釈を見直し、集団的自衛権行使を限定容認する新見解を決めた。平時から有事まで「切れ目のない対応」を可能にした意義は大きい。
 疑問なのは民主党の対応だ。
 解釈変更に反対したが、行使の是非は示していない。党内に賛否両論を抱えるためで、政権を担当した政党として、責任ある対応ではない。早急に党見解をまとめなければ、論戦に参加できまい。
 新見解は、自衛隊の後方支援活動の拡大を可能にした。国連平和維持活動(PKO)に参加中の自衛隊が他国軍などを助ける「駆けつけ警護」も容認した。
 自由度が高まる自衛隊の国際平和協力活動を通じて、日本がより大きな役割を果たすことは、世界の平和と安定だけでなく、日本自身の安全を確保することにもつながろう。
 どんな役割を担い、どう歯止めをかけるのが適切か、各党は、議論を深めてもらいたい。
 ◆人口減対策も重要だ
 日本が直面する中長期的な課題に関する論戦にも期待したい。
 若年女性の激減により、40年に自治体の約半数が消滅する可能性がある――。今春、そんな民間推計が地方に衝撃を広げた。
 安倍政権は「地方創生」を掲げ、人口減対策や地方活性化に取り組み始めたが、まだ効果的な具体策をまとめるには至っていない。
 妊娠・出産・子育ての切れ目ない支援、東京一極集中の是正、地方での若者の雇用確保など、論点は多岐にわたる。自治体や民間のアイデアも取り入れながら、地域の実情に応じた施策について、議論を重ねることが重要だ。
 今年6月、改正国民投票法が与野党8党の賛成で成立し、憲法改正の国民投票を実施する環境が整った。自民党内では、16年にも憲法改正原案の国会提出を目指す案が浮上している。
 今後の焦点は、憲法のどの条項を、どう改正するかという点だ。各党は、どんな「国のかたち」を目指すのか、具体案を提示してもらいたい。


毎日新聞 2014年11月24日 02時30分
社説:安倍政治を問う 集団的自衛権
 ◇真正面から論戦深めよ
 安倍政権は政権発足から2年間、戦後日本の針路を転換するような安全保障政策を次々と実行に移してきた。共通するのは、中国の脅威に対抗するため日米同盟を強化するという結論ありきで、議論が極めて不十分だったことだ。その典型が集団的自衛権の行使を容認するため憲法9条の解釈を変更した7月の閣議決定といえる。
 安倍晋三首相は、衆院選の最大の争点を消費増税の先送りとアベノミクスの継続の是非と位置づけているが、集団的自衛権をはじめとする安全保障政策についても国民に説明し、数々の疑問に答える責任がある。
 ◇中国をけん制する狙い
 安倍自民党は2012年の前回衆院選で、民主党政権を「外交敗北」と批判し、「主権と領土・領海を断固として守る」と訴えて政権再交代を果たした。沖縄県・尖閣諸島をめぐり日中の緊張が高まったことへの国民の危機感とナショナリズムが安倍政権の誕生を後押ししたのだ。
 なぜ集団的自衛権の行使を認める必要があるのか。首相は目的を「国民の命と平和な暮らしを守るため」と語り、行使容認で「抑止力が強化され、日本が戦争に巻き込まれる恐れがいっそうなくなる」という。
 首相の視線の先にあるのは、ここでもやはり中国の存在のようだ。
 中国の軍備拡張や海洋進出に対し、肝心の米国は対テロ戦争の疲れや財政事情から昔ほど頼りにならない。将来、尖閣諸島をめぐって日中の軍事衝突が起きた場合、米国が軍事介入する保証はない。いざという時に米国を巻き込めるようにするには、集団的自衛権の行使を容認して、日米の軍事一体化をいっそう進めておく必要がある−−。こんな首相の認識が背景にあるのではないか。
 集団的自衛権だけではない。
 安全保障に関する秘密情報を漏らした公務員らに厳罰を科す特定秘密保護法の制定。安全保障に役立つと判断すれば武器輸出が可能になる武器輸出三原則緩和。非軍事的目的なら他国軍への援助を認める政府開発援助(ODA)大綱改定への動き。
 いずれも中国けん制を意識した日米同盟の強化や、豪州、東南アジア諸国連合(ASEAN)との連携強化の狙いがある。
 中国の挑発的行動が国際社会の懸念材料になっていることは間違いない。同盟強化は必要だ。だが、その方法が集団的自衛権や特定秘密保護法の制定なのかは疑問がある。首相は「命と暮らしを守る」と言うばかりで、その間をつなぐ論理的説明をほとんどしてこなかった。
歯止めもあいまいだ。集団的自衛権の行使を認めた閣議決定は、国民の権利などが「根底から覆される明白な危険がある場合」に、必要最小限度の集団的自衛権の行使を認めるとしている。ところが、どういう場合が「明白な危険」にあたるのか、範囲がはっきりしない。
 首相は中東・ホルムズ海峡の機雷掃海も集団的自衛権の行使対象になるというが、日本周辺の有事に限定したい公明党は慎重で、解釈に隔たりがある。それだけ恣意(しい)的解釈が可能だということだ。
 ◇身勝手な争点の設定
 来春には集団的自衛権の行使容認を具体化する関連法整備が国会で予定されている。衆院選で民主党など野党はもちろんだが、公明党も集団的自衛権の行使容認の対象を詰め、歯止めをかける論争をしてほしい。
 公明党は閣議決定の際に「歯止めがかかった」と言っているのだから、現実にどう歯止めがかかるのか国民に明らかにする責任がある。
 閣議決定という手法も大いに問題がある。歴代内閣は過去40年以上、集団的自衛権の行使は「憲法上許されない」との憲法解釈を積み上げてきた。それを安倍内閣は一内閣の判断だけで、結論を「憲法上許容される」へ逆転させる解釈改憲を閣議で決めた。このことは、憲法は国民が国家権力を制限するためにあるという立憲主義の精神にもとる。
 衆院解散・総選挙に踏み切った首相には、長期政権を確かにし、安定した政治基盤のもとで憲法改正に取り組みたい狙いがあるとみられる。
 そうであれば首相は衆院選で、集団的自衛権の行使容認の閣議決定について論戦を受けて立つべきだ。
 菅義偉官房長官は先日、衆院選の争点について「何を問うかは政権が決める」と述べ、集団的自衛権は国民に信を問うほど重大な政策変更ではないと語った。政権が一方的に争点の設定をできるかのような論理は、不遜だと言わざるを得ない。
 首相自身は今年2月、憲法解釈の変更をめぐって「最高の責任者は私だ。選挙で国民から審判を受ける」と述べている。そこまで言った以上、逃げるわけにはいくまい。
 憲法9条の根幹に関わる変更は、解釈改憲でなく憲法改正の手続きを経るべきだ。衆院選で真正面から論戦を深めないまま、選挙に勝ちさえすればお墨付きを得られるという姿勢を取るべきではない。


東京新聞 2014年11月24日
【社説】問われる経済政策 この道を続けるのか  
 アベノミクスは大企業や富裕層の富を増やせば経済はうまく回るとの発想である。現状は格差拡大、中間層没落の流れだ。この道を続けていいのか。
 安倍晋三首相は、消費税増税の延期と衆院解散の意向を表明した記者会見で、こう強調した。
 「あれ(前回総選挙)から二年、雇用は改善し賃金は上がり始めている。ようやく動き始めた経済の好循環、この流れを止めてはならない」
 「デフレから脱却し、経済を成長させ、国民生活を豊かにするためには、たとえ困難な道であろうとも、この道しかない」
◆実態とは異なる数字
 異次元金融緩和、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」からなるアベノミクスの成果を強調し、この経済政策の継続を訴えた。
 首相が誇示した成果は▽雇用が百万人以上増加▽有効求人倍率は二十二年ぶりの高水準▽今春闘は平均2%以上、給料がアップし過去十五年間で最高-である。
 確かに表面上の数字はこの通りだが、実態となると異なる。雇用の改善で増えたのは非正規雇用ばかりで正社員は減少した。
 給料は増えたが、それ以上に物価が上昇しているため、物価上昇分を差し引いた実質賃金は九月まで十五カ月連続で前年同月を下回った。
 アベノミクスの正体は、低賃金の労働者を大量に増やすとともに、雇用と給与が安定した中間層の実質的な収入をも押し下げたということだ。
 要するにアベノミクスの恩恵は、株などの資産を持つ富裕層をまず潤し、次に非正規とはいえ職を得られた雇用弱者に及ぶ。
 しかし、中間層には賃上げの継続が実現しないかぎり波及しないのだ。アベノミクスに対し「格差を拡大させ、中間層を疲弊させる」との批判が向けられるゆえんである。
 かつて日本経済が輝きを放っていたころは、一億総中流といわれたように「分厚い中間層」が消費活動を支え、経済社会に安定をもたらしていた。
 消費税増税で個人消費が大きく落ち込み、国内総生産(GDP)が二期連続でマイナスになったのは、中間層の先細りが主因だったのは間違いない。
 「富める者が富めば、富の滴が下層に落ちる」
◆富裕層を富ます政策
 新自由主義から派生したトリクルダウン理論は、安倍政権の経済政策に通底する思想である。だが、株価の大幅上昇とは裏腹に実体経済は改善せず、中小企業や地方への恩恵もない。
 経済の司令塔である経済財政諮問会議に財界人が重用され、経営者や富裕層寄りの政策が確実に進められてきた。
 「世界で一番企業が活躍しやすい国」を目指すとして、法人税の引き下げや派遣労働者の増大・固定化につながる規制緩和、残業代ゼロや年功賃金の見直しなど人件費コストの圧縮が後押しされる。企業の論理がまかり通り、中間層は細っていく。
 また「稼ぐ力を高める」を掛け声に、原発や武器(防衛装備品)を官民で海外に売り歩いたり、賭博を合法化するカジノ施設の解禁、国民の大切な年金資金をリスクにさらす株運用の比率を大幅に増やす年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)改革を進める。
 成長戦略のためにすべてが許されるわけではない。節度が必要だ。
 政権が多用するフレーズに「頑張った人が報われる社会に」がある。大きな経済格差や機会の不平等を考慮せずに「報われないのは努力が足りないから」といった強者の論理になる。非正規労働の処遇放置や低所得者対策の貧しさから、社会的弱者への思いが至らないのではないか。
 首相は同じ会見で「アベノミクスに対して失敗した、うまくいっていないとの批判があるが、ではどうすればいいのか。具体的なアイデアは一度も聞いたことがない」と胸を張ってもいる。
◆別の道の具体像示せ
 野党はやはり「別の道」をしっかりと示す必要がある。民主党は「分厚い中間層の再生」を掲げるが、具体的にどうやって実現していくのか。共産党は「消費税10%にストップ」というものの、財源確保の代替案を含めて、明快に示してほしい。
 経済政策で今、問われるのは、デフレからの脱却であり経済の再生であるのは言をまたないが、そのために国民や働く人が不幸になったのでは本末転倒である。富める者よりも、まず低所得者や、障害者ら社会的弱者が先に潤う道があっていい。


北海道新聞 (2014/11/24)
社説<2014衆院選>原発政策 安易な回帰は許されない
 露骨な「原発回帰」である―。
 九州電力の川内原発1、2号機(鹿児島県)が年明けにも再稼働する見通しになっている。原子力規制委員会の新基準に適合した第1号になる。
 これを皮切りに停止している全国の原発も後に続く可能性が出てきている。
 福島第1原発事故以来、原発の「安全神話」が崩壊し国民に依然不安感がある。施設から30キロ圏内の自治体が再稼働の判断に関与を求めているのは、そのためだ。
 政権はこうした声をすくい上げる意思がないように見える。そうであってはなるまい。
 原発政策は今回の衆院選の重要な争点であるべきだ。
 各党には将来のエネルギーのあり方を含め、具体的な公約を掲げ論議を深めてもらいたい。
 ■2年前の公約どこへ
 時計の針を、2年前の衆院選に戻す。
 当時、政権党だった民主党は公約に「30年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」と掲げた。
 野党だった自民党も「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立」と曖昧な表現ながら脱原発の方向性を打ち出した。
 ところがどうだ。政権を取り戻した昨夏の参院選では、規制委の審査で再稼働が認められれば「地元自治体の理解が得られるよう最大限努力する」と後退させた。
 そして今春、安定供給を支える「重要なベースロード電源」と位置づけ原発回帰を決定的にした。
 その象徴が川内原発である。
 規制委は9月に「合格証」を交付した。だが責任者である田中俊一委員長も「安全を保証するものではない」と説明した。
 規制委はあくまで技術的、科学的な面から基準に適合するか審査するにすぎない。そこに国が稼働の是非を丸投げしている。これでは責任の所在が明確ではない。
 例えば、原発を所管する宮沢洋一経済産業相だ。今月、現地で「万が一、事故が起きた場合、国が責任を持って対処する」と明言した。だが、事故時の被災者への賠償の仕組みはまったく不十分だ。
 住民の避難計画では、要援護者の避難や一斉に避難する際の渋滞対策などが固まっていない。国が避難計画の実効性を検証するすべもない。
 こんな口約束で再稼働に踏み切っていいわけがない。
 ■再生エネ普及に道を
 規制委には13原発20基が審査を申請している。北海道電力泊原発は終了の見通しが立っていないが、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)などは審査が進む。
 それだけではない。建設中の電源開発の大間原発(青森県)も年内にも審査を申請する構えだ。
 原発ゼロでも電力は不足しているとは言えない。なのに火発用の原油、ガスのコストが高騰しているからといって原発を選択する。安易すぎる。
 原発に替わる再生可能エネルギーの普及は時代の要請だ。
 「今後3年間、再生可能エネルギーの最大限の導入促進を実施」。自民党も参院選公約でそう掲げた。問題は1年を過ぎても具体的な道筋が示されていないことだ。
 それがないから電力会社が、再生エネの固定価格買い取り制度に基づく新規電力購入契約を中断するといった混乱が起きている。
 確かに太陽光や風力は出力が気象条件に左右される。それを補うには電力会社の垣根を越えて融通し合う仕組みが欠かせない。
 当然、新規参入を促すため、送配電網を広く公平に利用できる発送電分離を含めた電力システム改革も進めなければならない。
 ■次世代にツケ回すな
 使用済み核燃料を「資源」として再活用する核燃料サイクルは完全に行き詰まっている。
 高速増殖炉原型炉「もんじゅ」は、トラブル続きで実用化はほぼ絶望的である。使用済み核燃料の再処理工場(青森県六ケ所村)も操業開始の先延ばしが続き、依然めどが立たない。
 もはや使用済み核燃料は「資源」と呼べない現実がある。
 こうした「原発のごみ」は放射能が安全な水準になるまで数万年かかるとされる。
 しかも、全国の原発内で行き場のない使用済み核燃料の貯蔵量は1万4千トンを超え、すでに限界容量の約7割に達している。これ以上、厄介な「ごみ」を増やしてはならない。
 脱原発を前提に、すでにたまった「ごみ」をどうするか。これまで原発の恩恵を受けてきた世代が真剣に向き合う必要がある。
 未来にツケを回すわけにはいくまい。解決するのは政治の責務である。

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読売新聞 2014年11月23日 01時18分
社説:安倍政権総括 経済最優先で「好循環」目指す
 ◆画期的な集団的自衛権の行使容認
 衆院選は、2年近くの第2次安倍内閣の功罪を評価、検証する貴重な時機となる。それは国民の審判にも直結しよう。
 日本の政治は、2006年から12年まで毎年、首相が交代する異常事態が続いた。衆参ねじれ国会も重なって、「決められない政治」が恒常化し、国際社会での日本の存在感も低下した。
 ◆政治の閉塞感を払拭
 その状況を打破したのが安倍内閣だ。昨年7月の参院選大勝で衆参ねじれを解消し、久々に安定政権を築いたことは、政治の閉塞感を払拭する効果も生んだ。
 「お友達内閣」と揶揄(やゆ)された第1次内閣の失敗を教訓とし、菅官房長官を中心に危機管理を重視した。憲法改正、安全保障など「安倍カラー」の強い課題よりも、経済再生を先行させ、政策の優先順位にも慎重に目配りした。
 与党が、旧日本維新の会などに法案修正の協議を積極的に持ちかけ、民主党との分断を図る国会戦術の奏功も見逃せない。
 反面、自民党が突出する「1強多弱」は、緊張感を欠く政治を招いた。今秋の内閣改造後、政治とカネの問題が噴出し、女性2閣僚が辞任する遠因となった。
 経済政策「アベノミクス」は、金融緩和、財政出動、成長戦略の3本の矢で、デフレ脱却の礎を築いた。日銀の「異次元緩和」などにより、政権発足時から、円安が30円以上も進行し、株価は約7000円も上昇した。
 ◆デフレ脱却は道半ばだ
 輸出企業を中心に大企業の業績は好転し、有効求人倍率など雇用情勢も改善した。今年の春闘では賃上げの動きが広がった。
 だが、4月に消費税率を8%に引き上げたこともあって、物価上昇に賃金が追いつかず、9月の実質賃金は前年比3%減少した。
 所得の増加が民間消費を増やして、さらなる企業収益を生む「経済の好循環」は、道半ばである。中小企業や地方にアベノミクスの恩恵が及ばず、経済格差が拡大したとの指摘も少なくない。
 景気回復が足踏みする中、15年10月の消費税率10%への引き上げを17年4月に先送りしたのは、妥当な判断である。
 首相は今秋の臨時国会を「地方創生国会」と位置づけた。人口減対策と地方活性化の総合戦略などの策定に向け、地方創生関連2法を成立させたが、女性活躍推進法案などは廃案となった。
 首相は昨年3月、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を決断した。「聖域なき関税撤廃が前提でない」との理屈で、自民党公約との矛盾を避けたのは、“大人の知恵”と評価できるが、日米の関税協議は難航している。
 外交・安保分野では、安倍首相の積極姿勢が目立った。
 今年7月、集団的自衛権の行使を限定容認する新たな政府見解を決定したのは、日米同盟の抑止力を強化する画期的な意義を持つ。内閣法制局や公明党を巻き込んだ合意形成は現実的な対応だ。
 国家安全保障会議(NSC)の創設や、「積極的平和主義」を掲げる安保戦略の策定、武器輸出3原則に代わる防衛装備移転3原則の決定などは、国際社会から高い評価を受けている。
 昨年12月に成立した特定秘密保護法は、安全保障に関する機密を米国などと共有・交換するうえで不可欠な法制だ。戦前の治安維持法になぞらえるような一部の批判は、暴論というほかない。
 国民の知る権利や報道の自由を守るため、国会の監視機関などの実効性を高めることが大切だ。
 米軍普天間飛行場の移設問題で昨年12月、沖縄県知事の公有水面埋め立ての承認を得たのは大きな前進だ。ただ、今年11月の知事選では、辺野古移設に反対する知事が誕生した。移設実現には、引き続き地元調整が課題となる。
 ◆外交を害した靖国参拝
 中国、韓国とは首脳会談が開けず、外交関係が停滞した。
 領土や歴史認識への頑(かたく)なな中韓両国の姿勢に負う面が大きいが、昨年末の安倍首相の靖国神社参拝が問題を悪化させたのは否めない。米国の「失望」も招いた。
 中国の独善的な海洋進出を批判する一方で、水面下の交渉を通じ、尖閣諸島の日本の領有権を損ねることなく、今月の日中首脳会談を実現したのは成果である。
 慰安婦問題に関する河野談話の検証作業は、作成過程で外交的配慮が事実関係に優先していたことをあぶり出した。日本が慰安婦を強制連行したかのような誤解を解く努力が引き続き求められる。


毎日新聞 2014年11月23日 02時30分
社説:安倍政治を問う…原発再稼働 脱依存の道が見えない
 原発に頼らない社会をどう築くのか。原発過酷事故から3年8カ月を経て、なお、その姿は見えない。この2年間の安倍政権のエネルギー政策を一言でいえば、事故を忘れたかのような「原発回帰」である。
 今年4月に政府が閣議決定した「エネルギー基本計画」は、「原発依存度を可能な限り低減する」といいつつ、「重要なベースロード電源」と位置づけた。一方で、原発を含めた電源の構成比率については先送りしている。
 ◇民意くむ姿勢なく
 もし、本気で「原発に依存しない社会」をめざすなら、その道筋をきちんと示した上で、電源構成を含めた目標を持ち、総合的に政策を打っていくのが政治の役割だ。個々の原発の再稼働の可否も、脱依存政策の大きな枠組みの中で判断していくのが筋だろう。
 にもかかわらず、安倍政権はそれを怠ってきた。ここから透けてみえるのは、原発再稼働の既成事実を積み重ねることで、なるべく多くの原発を動かしたいという思惑だ。
 実際、九州電力川内(せんだい)原発についても、新しい規制基準への合格だけをよりどころに再稼働を進めようとしている。避難計画の実効性や、周辺自治体の住民の納得は、置き去りにされたままだ。毎日新聞が9月に実施した世論調査では6割近くの人が再稼働に反対しているが、そうした民意への配慮もない。これでは、「規制基準を厳しくしたから放射能の大量放出は起きない」という新たな安全神話を許してしまう。
 脱依存政策に不熱心であることの副作用は、電力会社による再生可能エネルギーの接続保留問題にもつながっている。再生エネは、脱原発依存に加え、新たな産業の創出にも、地域振興にも結びつく。それなのに、最大限導入するための政策を徹底してこなかったためにチャンスを逃すとすれば、大きな失策だ。
 原発立地自治体への交付金制度など、これまで原発推進を前提に構築されてきたさまざまな社会制度の見直しも、ほとんど進んでいない。老朽原発の廃炉を進めやすくする制度は検討されているが、全体としてまだまだ不十分で、これも脱原発依存を妨げている。
 さらに大きな問題は、原発政策の決定の仕方が事故前と変わらず、国民の合意を取りつける姿勢も見えないことだ。
 民主党政権は、討論型世論調査などの手法を用いて、まがりなりにも国民的合意を得ようとした。その結果、「2030年代に原発ゼロ」を打ち出した。一方、安倍政権は、エネルギー基本計画の策定にしても、原発政策の具体化や電源構成の検討にしても、原発推進を担う経済産業省の審議会を専ら利用する旧態依然とした方法を踏襲している。こんな体制を取り続ける限り、原発依存から逃れられないのではないか。
 再稼働と並んで見逃せないのが、使用済み核燃料の扱いだ。政府は使用済み核燃料を全量再処理し、取り出したプルトニウムを再び原子炉で燃やす「核燃料サイクル」政策を継承している。その要となるのが再処理工場と高速増殖炉だが、いずれも技術と安全の両面で疑問があり、コストも見合わない。
 ◇解決見えぬ核ゴミ問題
 核不拡散の面でも問題が大きい。日本は核兵器の材料になるプルトニウムを国内外に47トンも所有しているが、消費できるめどはない。こうした状況で再処理を始めれば、国際社会から疑念を持たれかねない。
 原発政策のいかんによらず、核のゴミの最終処分問題は残る。政府は昨年末、「国が前面に立ち候補地を選定する」と方針を転換し、経産省の専門部会が選定基準を検討している。だが、核のゴミの最終処分はどの国も頭を悩ませている難題であり、選定方法を小手先で変えただけでは解決できない。大事なのは関係者が納得して合意できるやり方を確立することだが、そのための努力はなされていない。脱依存政策に基づき核のゴミの総量に上限を設けるといった政策も検討されていない。
 事故前への回帰は原発輸出の推進にも顕著に表れている。経済政策を最優先する政権の表れであり、日本のメーカーに原発建設の技術を依存しつつ、世界の核技術を管理下におきたい米国の意向にも沿った方針だ。しかし、原発輸出は、事故のリスクも核拡散のリスクも、あわせて輸出する。そのマイナス面に無頓着すぎるのではないか。
 安倍政権が懸念するように、脱原発を進めれば、燃料費の高い火力発電所のたき増しなどによる経済への影響はあるだろう。それを見込んだ上で、省エネも進めつつ、どのように電力供給を確保するのか。コストを、だれが、どう負担するのか。確かに決して簡単な課題ではない。
 だが、これだけの事故を経験した国民の多くが脱原発を望んでいる以上、その実現に向けて努力することこそ、政治の使命だろう。


日本経済新聞 2014/11/23付
社説:経済再生へ「アメ」より改革案を競え
 降ってわいたような解散・総選挙だが、経済の再生にはどうすればいいのかをあらためて議論する良い機会ともいえる。痛みの伴わない安直な対策で有権者に幻想を振りまくことだけは願い下げだ。「アメ」をすぐ配ることよりも、中長期的な視野に立って経済を強くし、生活を安定させるための改革案を競い合うべきだ。
足踏みする「第3の矢」
 7~9月期に予想外のマイナス成長となるなかでの総選挙だけに経済が大きな争点になるのは間違いない。とりわけ安倍晋三首相が推し進めてきたアベノミクスの是非が問われるのは当然だろう。
 懸念されるのは、経済悪化の「罪」の押しつけ合いや、おカネをどう配分するかの議論に終始することだ。野党は経済指標の悪化を奇貨として、十把ひとからげにアベノミクスを否定することに全力をあげそうな気配だ。一方、自民党からは「景気を悪くした増税を決めたのはそもそも民主党の野田政権だ」という声も聞かれる。
 消費税増税や景気悪化の悪影響を受けた人々への配慮は必要だ。だが、同時に先進国で最悪の財政をどう立て直すのか、膨らむ社会保障費をどう賄うのかといった議論をしなければ政治家として無責任である。有権者も甘い言葉だけささやくような候補にはノーを突きつけなければならない。
 振り返って、安倍政権の2年間の経済政策運営をどう評価すべきだろうか。
 安倍政権登場前の日本経済の最大の足かせは超円高だった。大胆な金融緩和というアベノミクスの「第1の矢」を首相が任命した黒田東彦日銀総裁が進めたことで、円高が是正されたのは成果といえる。株価上昇やグローバル企業の業績改善につながったからだ。
 誤算は円安が必ずしも輸出量の増加に結びつかなかったことだ。このため、設備投資や生産への波及効果は限られ、むしろ輸入価格上昇という円安の負の面が際だってしまった面がある。
 機動的な財政政策という「第2の矢」は公共事業依存という問題を残したが、景気の下支えや消費増税によるマイナス面を和らげる役割は果たした。予想より悪影響が長引いているものの、消費増税を実行したのは厳しい財政状況を考えれば間違いではなかった。
 最大の問題は「第3の矢」である成長戦略が物足りないことだ。金融緩和や財政出動は基本的に経済を一時的に改善させる効果しかない。潜在成長力を底上げする「第3の矢」こそが本丸だが、大きな前進があったとは言えない。特に首相が一丁目一番地と強調する規制改革で足踏みが目立つ。
 財政・金融政策には副作用もあり、いつまでも使い続けるわけにはいかない。成長力を高める「第3の矢」が力強く放たれるまでは、アベノミクスを高く評価することはできないだろう。
 安倍首相や自民党の候補者に求められるのは、今後実行する「第3の矢」の中身や時期を明示することだ。野党にもアベノミクス批判だけでなく、独自の成長戦略をはっきりと示してもらいたい。
民間の活力を引き出せ
 成長戦略の基本は民間の活力を引き出すことであり、その環境を整えるのが政府の仕事だ。諸外国に比べて高すぎる法人税の大幅な減税は競争条件を改善し、海外から投資を呼び込むうえで欠かせない。技術の進歩に法や規制が追いつかず、イノベーションが抑えられている現状も打破すべきだ。
 貿易や投資を促進する自由貿易協定(FTA)の推進で日本は後れを取っている。環太平洋経済連携協定(TPP)の実現はもちろん、欧州などとのFTA妥結も急ぐ必要がある。人口減少時代を迎えるなかで、女性や外国人の雇用を増やし、労働力を量・質ともに強化していくのも待ったなしだ。
 増税の先送りによって財政への信認が失われないようにするためには、信頼に足る財政健全化計画を策定することが不可欠である。
 そこでは消費増税を核とする増収策をどう実現していくかはもちろん、膨らむ一方の社会保障費をどう抑えていくかも示す必要がある。小手先の経費抑制だけでなく年金や医療を持続可能な制度にどう改革していくのかも重要だ。
 各党が示すべき経済再生策は目の前の有権者だけでなく、次世代の利益にもつながるものでなければならない。


東京新聞 2014年11月23日
【社説】週のはじめに考える デフレ脱却と経済社会
 衆議院選挙です。デフレ脱却はなぜ必要なのか。そして争点のひとつ、少子高齢化時代の経済社会はどんな姿がふさわしいのでしょうか。
 時代が成熟するとはこういうことか。そう感じさせられたのは、子どもの声をめぐるトラブルです。今月五日付の社説「保育所の新設 子どもの声は騒音か」で取り上げました。保育所に、子どもの声がうるさいと抗議や訴訟が相次いでいる。
 論説室でも議論になりました。「みんな子どもだったのに」「元気な声がうるさいなんて」「いや、静かに暮らす権利もある」
 少子高齢化はデータを示すまでもありません。子どもが減り、六十五歳以上の高齢者はすでに四人に一人です。
 今のままで十分。静かで落ち着いた暮らしがしたい-。活力を失いつつあるデフレ時代の心理が表れている気がしたのです。
◆物価下落は好ましい
 デフレ心理を浮き彫りにした数字があります。日銀の生活意識調査で、物価上昇は「どちらかといえば、困ったこと」と86%が回答しました。「物価下落は好ましい」とする人が「困ったこと」を上回りました。
 デフレ脱却に向けて、日銀が異次元金融緩和に踏み切る前の調査で、当時の白川総裁は「今の日本では『物価の上昇は許容できない』という感覚が広く定着している可能性を示唆している」と分析しています。
 このところ、物価が上がって暮らしを圧迫しています。デフレ脱却というけれど「わざわざ物価を上げる必要があるのか」という疑問が、まだ多くの人の気持ちの中にあるのではないでしょうか。
 なぜデフレはいけないのか。デフレは物価が持続的に下がる状態です。需要が不足してモノが売れない。売れないから価格が下がる…。これが連鎖していく不況の状態です。物価は下がるのですが会社が倒産したり、雇用が減り、賃金が下がったりしてしまいます。
 ただ、どこまでも物価が上がっていきかねないインフレと違い、デフレには下方硬直性があり、進行が遅い。年金などで安定した収入があり、貯金がある高齢者は居心地がいいはずです。
◆失われる若い活力
 でも未来を担い、これから活躍しようとしている若い人たちは困ります。需要は伸びないし、事業を起こすためにお金を借りると、物価が下がった分、実質負担が増える。チャレンジ精神が萎(な)えて、経済はますます活力を失います。
 アベノミクスでは日銀が異次元緩和を断行しました。カンフル剤であるお金をたくさん流して物価を上げながら経済を活発にし、企業収益や賃金を上げる。この好循環を実現することで、デフレ脱却を目指しました。
 ところが、実現が怪しくなっています。円安は為替差益で輸出企業の収益を押し上げ、株価を上昇させましたが、実体経済の改善にはつながっていません。逆に、物価だけ上がって賃金は伸びず、暮らしは厳しくなりました。特に四月の消費税増税後は多くが家計防衛に走り、経済成長率はマイナスです。
 このままデフレ脱却がうまくいかないと何が起きるでしょう。ひとつは経済の停滞、デフレが続く状態です。さらに悪いケースでは賃金や生産が伸びないのに物価だけが上昇する。インフレと不況が同居するスタグフレーションです。
 アベノミクスには何が足りないのでしょうか。考えられるのはデフレの原因に正面から向き合う姿勢です。
◆求められる構想力
 団塊の世代が続々と年金生活に入ります。高齢者から若者まで、経済が成長軌道に戻っても自分の年金が増えたり、介護や医療費負担が減ることはないと、ほとんど諦めている。後ろ向きのデフレ心理が強力です。
 もうひとつは格差です。成長が強調されるほど、果実は力のある企業や株を保有する富裕層に偏る。その一方で、経済的な理由で学業を諦めたり、卒業しても安定した職に就けず、奨学金も返済できない青年がいる。低所得にあえぐシングルマザーがいる。消費の拡大どころではありません。
 成熟期にある日本の経済成長は容易ではありません。デフレは克服しなければいけないが、成長はわずかでしょう。むしろ分配や、負担の公平に重点を置き、格差に苦しむ人たちに政策を集中することで、安心と期待、夢と可能性が開けて新たな活力が生まれるのではないのか。
 直面する課題を成長や景気や株価としてではなく、福祉社会の発展や格差の縮小として捉え直す構想力が政治家に求められています。簡単ではない。だからこそ挑戦してもらいたい。


北海道新聞(2014/11/23)
社説<2014衆院選>集団的自衛権の行使 戦争できる国にするのか
 民意を無視した手法をこれ以上、許してはならない。集団的自衛権行使容認の閣議決定のことだ。真に日本の安全を守ることにつながるのか。今回の衆院選で、国民は厳しい目で見極める必要がある。
 中国の軍事的台頭や北朝鮮の核・ミサイル開発など東アジアの安全保障環境の変化に対処するため、安倍晋三政権は従来の憲法解釈が禁じてきた集団的自衛権行使を認めて日米同盟を強化し、抑止力を高める道を選んだ。
 現在、米国政府と再改定作業を進めている日米防衛協力の指針(ガイドライン)では、行使容認を反映させ、自衛隊が世界各地で米軍と共に武力を使えるようにする方向だ。
 専守防衛を柱とする戦後日本の安保政策の大転換であり、本来は閣議決定前に国民の信を問うべき重大テーマである。
 ところが国会での議論さえ十分に行わず、関連法の整備も統一地方選への影響を考慮して来年の通常国会後半に後回しするという。こんな争点外しは認められない。
■世界中で米国に協力
 集団的自衛権は同盟国などが攻撃された際、自国への攻撃がなくても一緒に反撃する権利である。
 国連憲章51条は主権国固有の権利と認めているが、日本政府は憲法9条に照らし、「国を防衛するための必要最小限度の範囲を超える」として行使を禁じてきた。
 安倍政権が行使を容認したのは、国際社会における米国の相対的影響力が低下する中、中国などに対抗するため、日本が従来より踏み込んで米国の軍事力を補完する役割を担うためである。
 ガイドラインの中間報告では、これまで事実上、日本周辺地域に限定してきた自衛隊の活動範囲について地理的制約を取り払い、世界中どこでも米軍に協力する体制を整える方針を明確にした。
 自衛隊が米国の戦争に巻き込まれたり、日本が報復攻撃の標的になったりする恐れはないのか。抑止力強化は軍拡競争を招き、日本の安保環境は逆に悪化しないか。
 首相はこうした疑問にこれまで正面から答えていない。明確に説明すべきだ。
■集団安保にも道開く
 閣議決定では、集団的自衛権行使に当たり、「国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」などの武力行使の3要件を満たす必要があるとした。
 首相はこれによって行使は限定的だと強調する。だが何をもって「明白な危険」と判断するかはあいまいだ。行使は時の政権の解釈次第で、歯止めはないに等しい。
 さらに首相は、国連決議に基づく武力行使を伴う集団安全保障への参加も、3要件を満たせば可能との見解を示している。集団安全保障は閣議決定で一言も触れていない。あまりにも乱暴である。
 そもそも安倍政権が憲法解釈変更の根拠とした1972年の政府見解は結論で「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」と明記している。首相は、この見解の一部を都合よくつまみ食いして、結論だけを正反対に変えてしまった。
 一内閣の勝手な判断で解釈変更が許されるなら、国民の基本的人権や自由を守るため国家権力を縛る最高法規としての憲法は、その意味を失ってしまう。
 今後の手順にも問題がある。
 ガイドライン再改定を先行させ、自衛隊法などの関連法改正案は来年の通常国会後半で成立させる段取りだ。
 再改定での米国との約束によって集団的自衛権の行使容認を既成事実化した上で、関連法を整備するのは順序が逆である。
■民主党は立場明確に
 今回の衆院選で、自民党は集団的自衛権の問題を争点から外すことを画策し、「平和の党」を自任する公明党も同調している。
 山口那津男代表は当初、集団的自衛権に「断固反対」と明言し、解釈改憲を批判していたはずだ。なぜ行使容認に転じたのか納得いく説明をしてほしい。
 性急でずさんな閣議決定を反映し、与党間では中東海域での機雷除去などに関し見解が食い違っている。どんな事例で行使を認めるか統一した具体像を示すべきだ。
 気がかりなのは野党第1党の民主党である。行使容認派を党内に抱え、立ち位置が定まっていないため、これまで首相にいいように主導権を握られてきた。
 ことは国の行方にかかわるテーマだ。公約にきちんと見解を掲げ、議論を戦わせる必要がある。
 首相が衆院選で勝利し、政権を維持すれば憲法改正による国防軍の創設も視野に入ってくる。
 首相は日本を平和国家から戦争をする「普通の国」に変えてしまうつもりなのか否か、はっきり語らなければならない。

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