2015-03-23(Mon)

安保法制与党合意 (2) 際限なき自衛隊活動拡大

どこまで歯止めをなくす 一気呵成の進展危うさ募る 拙速に過ぎる与党合意何が歯止めか分からない

<各紙社説・論説>
北海道新聞)安保法制骨格の与党合意 際限なき自衛隊活動拡大(03/21)
東奥日報)歯止め明確にする議論を/安保法制の与党合意(03/22)
岩手日報)安保法制整備 結論を急ぐべきでない(03/22)
河北新報)安保法制実質合意/一気呵成の進展危うさ募る(03/19)
信濃毎日新聞)安保をただす 法整備の骨格 問題先送りの与党合意(03/21)
京都新聞)安保法制  拙速に過ぎる与党合意(03/21)
神戸新聞)安保法制の議論/どこまで歯止めをなくす(03/18)
中国新聞)安保法制与党合意 「先走り」が過ぎないか(03/21)
山陽新聞)安保法制合意 何が歯止めか分からない(03/21)




以下引用



北海道新聞 2015/03/21 08:50
社説:安保法制骨格の与党合意 際限なき自衛隊活動拡大


 安倍晋三政権が整備しようとしている新たな安全保障法制は、憲法9条のもと、専守防衛に徹してきた戦後の安全保障政策の大転換となる。
 自民、公明両与党はきのう、法制の骨格で合意した。政府はこれを踏まえ、4月下旬に米国との間で防衛協力指針(ガイドライン)を改定し、その後、関連法案を国会に提出する方針だ。
 骨格は《1》集団的自衛権行使に向けた武力攻撃事態法などの改正《2》他国軍の後方支援のための恒久法制定や周辺事態法改正―が柱だ。
 首相は、中国の軍事的台頭など国際環境の変化を強調し、国民の命を守るためには新たな安保法制が必要だと説明している。
 だが「力には力」で安易に対抗することは日本の平和と安全を逆に脅かす。あらためて反対する。
 憲法に基づく平和外交に一層磨きをかけ、努力することにこそ力を注ぐべきだ。
■歯止めにならぬ要件
 集団的自衛権は日本が直接、武力攻撃を受けなくても、密接な関係にある国が攻撃された場合、共に反撃する権利である。
 安倍政権は昨年7月の閣議決定で、行使できないとしてきた従来の憲法解釈を変え、国民の権利が「根底から覆される明白な危険がある」「他に適当な手段がない」「必要最小限度の実力行使」の3要件を満たせば行使可能とした。
 骨格では、この3要件を武力攻撃事態法などの条文に「過不足なく盛り込む」としている。
 首相は3要件によって「日本が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況」でなければ集団的自衛権は行使できないと説明する。
 一方で、中東ホルムズ海峡が機雷封鎖されて日本への原油供給が滞った場合の行使は可能との認識を示している。
 原油供給が滞るという経済的被害と、武力攻撃による被害を同列に扱う乱暴な見解だ。こうした拡大解釈の余地が大きい3要件を、いくら詳細に法律に盛り込んでも歯止めにはなるまい。
 行使容認は中国や北朝鮮に軍拡の口実を与え、東アジアの安保環境は一層、悪化するだろう。
■いつでも派遣可能に
 他国軍への後方支援の枠組みも大きく変える。
 自衛隊による後方支援を定めた現行法は、日本周辺有事で米軍に限って行う周辺事態法だけだ。
 インド洋での給油活動や、イラク復興支援名目の活動では、それぞれ目的と期間を限定した特別措置法を作って対応した。
 骨格では、日本が国際貢献を名目にいつでも、どこでも、どの国に対しても後方支援できるような恒久法を作る方針を示した。
 公明党は当初、反対していたが、「国連決議または関連の決議がある」「国会の事前承認を基本とする」ことを派遣条件とすることで容認した。
 だが、これでは武力行使を認める国連決議ではなく、非難決議などでも派遣が可能だ。国会承認も例外的に事後を認める余地を残しており、歯止めになっていない。
 一方、周辺事態法も「わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態」であれば、地理的制約なしに、米軍以外でも支援できるようにする。
 弾薬提供や発進準備中の航空機への給油といった軍事色の強い任務も解禁する方向だ。活動場所は「現に戦闘を行っている現場」以外なら戦場付近でも可能にする。
 自衛隊が相手から敵と見なされ、攻撃される可能性が格段に高まるのは明白だ。
■国会の軽視甚だしい
 与党協議は2月中旬に始まり、わずか1カ月余りで決着した。
 政府・自民党が合意を急いだのは、4月下旬から予定する首相の訪米や、それに合わせたガイドライン改定をにらんでのことだ。
 法案の国会審議に先立ち、対米公約によって新たな安保法制を既成事実化する狙いである。
 安保政策には国民の幅広い合意が不可欠だ。今回のような大転換であればなおさらだろう。国民不在の手法は認められない。
 公明党は与党協議で、自衛隊の海外派遣に当たり「国際法上の正当性」「国会の関与など民主的統制」「自衛隊員の安全確保」を求め、今後の法整備の前提となる原則として骨格に盛り込まれた。
 だが骨格の内容はこれらの原則を既に踏み外している。なぜ拙速に合意したのか。協議が長引いて統一地方選に影響するのを恐れたのなら姑息(こそく)である。「平和の党」の原点を忘れてはならない。
 国際紛争への関与を厳しく制限する現行の安保法制は、国会などでの長年の議論の積み重ねで形作られた。一内閣の判断で変えることは許されない。野党は問題点を徹底的に洗い出してほしい。



東奥日報2015年3月22日(日)
社説:歯止め明確にする議論を/安保法制与党合意


 自民、公明両党は新たな安全保障法制に関する与党協議会で、集団的自衛権の行使容認などを踏まえ自衛隊の任務と活動範囲を拡大する法制の骨格について正式合意した。政府は4月12日の統一地方選前半戦後に法案化の協議に入り、5月中旬にも閣議決定、通常国会へ提出する。
 だが、歯止めとなる国会承認の在り方など派遣要件は不透明なままだ。統一地方選後の法制化で歯止めを明確にしなければ、将来に禍根を残す。自衛隊の海外派遣に際限がなくなる法制化は避けなければならない。安保政策の大転換だけに、慎重を期した議論が不可欠だ。
 骨格は集団的自衛権の行使を可能にする武力攻撃事態法・自衛隊法改正、国際紛争に対処する他国軍を後方支援する恒久法の制定、周辺事態法改正、国連平和維持活動(PKO)協力法改正、武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」への対処を明記した。
 まず肝心の集団的自衛権の行使を容認する新たな要件の解釈が割れたままだ。要件の柱は「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」ケース。首相は中東・ホルムズ海峡で自衛隊の機雷除去が可能と主張するが、公明党は日本有事の寸前に限定されるとの見解を変えていない。
 骨格には公明党の要請で、自衛隊海外派遣に際し▽国際法上の正当性▽国会の関与など民主的統制▽自衛隊員の安全確保-を盛り込んだが、法制化してもホルムズ海峡への派遣の可否を明確にしそうもない。これでは時の政権の判断にゆだねることになる。
 朝鮮半島有事を想定して自衛隊の米軍後方支援を定めた周辺事態法を改正し、米軍以外の他国軍への支援も可能にする。周辺事態の定義は「そのまま放置すれば(中略)わが国の平和および安全に重要な影響を与える事態」で、地理的な制約が事実上あった。法制化では「周辺」の文言を削除する見通しだが、具体的にどんな事態を想定しているのか判然としない。
 公明党は恒久法に基づく自衛隊派遣を例外なく国会の事前承認とするよう求めていたが、骨格は「国会の事前承認を基本とする」と例外の余地を残している。与党合意にかかわらず、安保法制に世論の理解が深まっているとは言い難い。法制化の過程では拙速を避けた論議が必要だ。



岩手日報(2015.3.22)
論説:安保法制整備 結論を急ぐべきでない


 集団的自衛権の行使を容認する昨年7月の閣議決定を受けた新たな安全保障法制に関し、自民、公明両党は法制整備の骨格で合意した。
 与党協議は、政府の意を受ける自民党が原案を示し、公明党が修正を加えるという段取りで進んだ。合意は基本的に自衛隊活動を拡大する方向だが、海外派遣要件など、無秩序な拡大に歯止めをかけたい公明党との細部の詰めは4月中旬以降に先送りされた。
 最終合意の前段で協議を中断したのは、4月に日米防衛協力指針(ガイドライン)の改定や統一地方選を控えるのが理由という。ガイドラインは、新たな安保法制の内容との整合性が求められ、改定直後の首相訪米時の首脳会談などにも反映される。
 一方、統一地方選を重視する公明党としても、協議が長引き選挙期間と重なるのは避けたい。現時点での「休戦」には、双方にメリットがあったということだ。
 当然ながら、議論は生煮えだ。自衛隊の他国軍などへの後方支援を随時可能にする恒久法制定に関し、骨格は「国会の事前承認を基本とする」と明記。公明党は「厳しい制約」との解釈だが、自民党は事後承認もあり得るとの立場を崩していない。
 朝鮮半島有事など、日本周辺での米軍後方支援を定めた周辺事態法の改正では、地理的制約を外し、米軍以外の他国軍への支援も認める方向。しかし「周辺事態」に代わる「重要影響事態」の定義などは不明確なままだ。
 尖閣諸島周辺での中国の動きを念頭に置くグレーゾーン事態への対処でも、米軍以外に守る範囲を広げることを検討するが、公明党は防護対象を明確化する判断基準を求める。具体的に、どういう事態で自衛隊が派遣されるのか、イメージを描きにくい。
 政府は4月12日の統一選前半戦後に内閣法制局を交えた法案化作業を行い、5月中旬までに閣議決定して法案を提出するスケジュールを描く。以後は通常国会で与野党が激突するが、2月半ばに始まった与党協議は実質6回。骨格合意を、そのまま法案に落とすほどに議論が熟しているとは認めがたい。
 現在の安保法制は東西冷戦を背景として体系化された。その崩壊後、国際情勢は流動化。テロとの闘いという従来の戦争観とは異なる状況も顕在化する中で、法制を見直す必要はあるにせよ、わが国の安保政策の大転換が拙速に過ぎては将来に禍根を残す。
 周辺国との関係がギクシャクする現状では、外交的な配慮も不可欠。平和国家としての歩みを堅持しつつ法整備を目指す意味を国内外に知らしめるのに、結論を急いでは要らぬ誤解を招きかねない。



河北新報 2015年03月19日木曜日
社説:安保法制実質合意/一気呵成の進展危うさ募る


 どうしても自衛隊が海外で活動する機会を広げたいということなのだろう。安全保障環境の変化を受けた措置だとしても、専守防衛を踏み越えかねない危うさが募る。
 安全保障法制の骨格をめぐって、きのう実質合意した自民、公明の与党協議についての評価である。政府が目指す「切れ目のない安保法制」を「制約のない自衛隊派遣」に陥らせてはならない。
 安保法制は主に、密接な関係にある同盟国などへの攻撃に共同で対処する集団的自衛権行使、武力行使に至らないグレーゾーン事態への対応、平和協力活動など国際貢献の3分野で検討を進めている。
 焦点の集団的自衛権の行使に関し、武力行使の新3要件に該当する、直接攻撃されなくても日本の存立が脅かされる「存立危機事態」を武力攻撃事態法に盛り込む方針については、判断を先送りした。
 今後、政治日程もにらみつつ、調整を進める。ただ、具体的な事態の明確化を図る文言を法律に落とし込むのは容易ではなく、拡大解釈の恐れは残ることになるだろう。
 既存の事態法には個別的自衛権に関わる「武力攻撃予測事態」の規定もあり、混乱なく集団的自衛権発動の事態との仕分けができるか疑問だ。
 与党協議はグレーゾーン事態や国際貢献の分野で自衛隊の活動を広げる枠組みづくりが先行する形で進んだ。
 グレーゾーン事態では米軍に加え、他国の軍隊を守れるように自衛隊法を改正。国際貢献のうち米軍などを対象とする後方支援の拡充は周辺事態法改正と恒久法新設で対応し、平和維持や復興支援は国連平和維持活動(PKO)協力法の改正などで臨む方針。複雑な法体系は「派遣拡大優先」の証しのようにも映る。
 集団的自衛権が発動されれば影響は甚大だが、そうした事態の頻発は考えにくい。むしろ、安倍晋三首相が掲げる積極的平和主義に基づく国際貢献としての自衛隊海外派遣の「日常化」が懸念される。
 周辺事態法に「重要影響事態」を新設し、遠隔地の有事でも後方支援できるよう、周辺事態の削除を検討。地理的制約を解いてしまえば、派遣の歯止めを失うことになる。容認するわけにはいかない。
 新たな恒久法と組み合わせれば、「いつでもどこへでも」派遣は可能となりかねない。個々の事案に応じた特別措置法は迅速な対応を難しくする半面、拙速な決定を避けることにつながった。その意義をかみしめてほしい。
 武器使用を緩和し、弾薬の提供を容認することも検討されている。戦闘に巻き込まれる可能性を含め、ハードルを下げることで生じるリスクを軽んじるべきではない。
 国際紛争に対処する他国軍の後方支援は、国連決議を前提とすることにした。当然だ。ただ、国会の事前承認を「基本とする」では派遣を制約する効果は乏しい。
 周辺各国との強固な友好関係の確立と国際社会の安定・発展に向けて、わが国は平和憲法に沿いつつ、いかに対応すべきなのか。針路を左右する重要な選択である。あれもこれもと欲張って、一気呵成(かせい)に進める案件ではない。



信濃毎日新聞 2015年03月21日(土)
社説:安保をただす 法整備の骨格 問題先送りの与党合意


 自民、公明両党が新たな安全保障法制の骨格に合意した。折り合いが付かない点を先送りした内容だ。
 与党の間にさえ埋め難い溝がある。法整備できる状況ではない。
 自衛隊の活動分野ごとに「具体的な方向性」を示している。▽武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」への対処▽周辺事態法改正▽他国軍を後方支援するための恒久法制定▽国連平和維持活動(PKO)協力法改正▽集団的自衛権行使―などだ。
 昨年7月の閣議決定と同様、自公それぞれが都合よく解釈できる表現を含んでいる。例えば、恒久法による海外派遣の要件が挙げられる。「国会の事前承認を基本とする」と記した。事後承認になる場合があるのかどうか、これでは分からない。
 PKO法の改正では、PKO以外の人道復興支援などを可能にする。こちらの派遣要件には「関連する国連決議等がある」との表現が見られる。「等」の解釈次第で厳しさが変わる。決議なしでの派遣を目指す自民と、決議を前提にしたい公明の妥協策だろう。
 集団的自衛権を行使する「新事態」は、名称や定義が書かれていない。朝鮮半島有事などを想定した「周辺事態」に代わる「重要影響事態」を含め、どんな状況なのかはっきりしない。
 自衛隊の任務が歯止めなく広がるのではないか―。もともと昨年の閣議決定は、そう感じさせる危うさがあった。法整備の協議が進む中で、懸念は消えるどころか膨らむばかりだ。海外での活動を拡大しようという政府、自民党の姿勢が鮮明になっている。
 与党の合意を受け、政府は法案化の作業を進める。4月中旬に法案の概要を与党に提示する見通しだ。この間、協議は中断する。4月の統一地方選で安保政策に目が向くのを避けようというのであれば、姑息(こそく)なやり方だ。
 自民は大型連休前に法案を固める方針を確認した。政府は、自衛隊と米軍の役割分担を定めた日米防衛協力指針(ガイドライン)を大型連休中に改定しようとしている。安倍晋三首相の訪米も予定される。それまでにまとめようと慌ただしく進めているのだろう。
 共同通信社による先月の世論調査で、安保法制について「時間をかけるべきだ」との回答が過半数を占めた。日程ありきの進め方は国民の理解を得られない。



[京都新聞 2015年03月21日掲載]
社説:安保法制  拙速に過ぎる与党合意


 いつでも、どこへでも自衛隊を派遣できるようにする-。新たな安全保障法制をめぐる与党協議で鮮明になったのは、できる限り制約を取り払いたいという安倍晋三政権の前のめりな姿勢だった。
 自衛隊の海外派遣がなし崩しに拡大すれば、日本が国際紛争に巻き込まれる危険性は高まる。戦後70年にわたって堅持してきた平和主義の原点に立ち返り、いま一度冷静な議論が欠かせない。
 自民、公明両党はきのう、新たな安保法制の骨格について合意した。集団的自衛権の行使容認を踏まえ、「切れ目のない対応」を目指すとして5分野で自衛隊の任務を広げる。米軍以外の他国軍支援のための周辺事態法改正や、集団的自衛権の行使を可能にする武力攻撃事態法改正などがずらりと並び、「専守防衛」からは程遠い。
 政府・自民は与党協議で、自衛隊の任務拡大を矢継ぎ早に打ち出した。集団的自衛権行使を容認した昨年7月の「解釈改憲」強行に加え、その閣議決定さえ踏み越えるやり方は看過できない。
 グレーゾーン事態では、防護対象を米軍に限らずオーストラリア軍の艦船などにも広げ、公明さえ「閣議決定の拡大解釈だ」と反発したほどだ。他国軍への後方支援を随時可能にする恒久法の制定も閣議決定になかった。
 与党協議は自衛隊の海外活動を広げたい政府・自民に対し、公明がどこまで歯止めをかけられるかが焦点だった。だが公明がブレーキ役を果たしたとは言い難い。
 例えば後方支援の恒久法をめぐり「国会の事前承認を(派遣の)基本とする」と明記された。公明は厳しい制約を課すことができたと解釈するが、自民は事後承認もあり得るとの立場を崩さない。
 地理的制約を事実上撤廃する周辺事態法改正で、周辺事態に代わる概念として提案された「重要影響事態」も位置付けが不明確であり、重要論点が先送りされた。
 拙速に過ぎる与党合意は、来月の統一地方選を重視する公明の事情に加え、大型連休中の首相訪米や日米防衛協力指針(ガイドライン)改定など外交日程が背景にある。日本の安保政策の重要な岐路に立っているのに、日程優先で生煮えにとどまった感が強い。
 政府は法案作成を急ぎ、5月にも法案を国会に提出する予定だ。与党協議で既成事実化する安保法制に国民の不安は大きい。国会の場で、国民に見える形で徹底的に審議すべきだ。将来に禍根を残すことがあってはならない。



神戸新聞 2015/03/18
社説:安保法制の議論/どこまで歯止めをなくす


 政府と自民、公明両党が取りまとめを急ぐ安全保障法制の全体像が明らかになった。
 国際法上の正当性などがあれば、自衛隊をいつでもどこにでも派遣できる。米軍以外の国の軍との連携や後方支援も可能にする。他国への武力攻撃が「国民の権利が根底から覆る明白な危険がある」と判断すれば共に武器を取って戦う。
 与党が目指す新たな安保の姿はこのようなものだ。
 安倍政権は昨年、集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。歴代内閣の憲法解釈では、海外での武力行使や他国との武力行使の一体化に当たり行使できないとされていた。それを覆した閣議決定は「解釈改憲」と批判されている。
 見過ごせないのは今回、その閣議決定すら踏み越えて自衛隊任務の拡大を図ろうとしていることだ。
 従来の法制を大きく見直す動きは予想できた。とはいえ、このままでは「専守防衛」の基本姿勢が根底から揺らぐ恐れがある。戦後70年間、日本が掲げ続けた「平和主義」に関わる転換であり、なし崩しで決めることは許されない。
 もともと昨年の閣議決定は米軍との連携だけを明記した。しかし、今回は対象国をその他の国に広げるという。自ら設定した一線を逸脱する議論はお手盛りというしかない。
 安倍晋三首相は集団的自衛権行使の判断基準について「武力で対処しなければ、日本が攻撃を受けた場合と同様の深刻・重大な被害が国民に及ぶことが明らかな状況」などと語るのみだ。どのような事態か、いまだに曖昧で具体性を欠く。
 正当防衛に限定しない武器使用の拡大も含め、憲法の制約で「できない」とされていた活動をことごとく「可能」とする。「日本の平和と安全を守る」法整備とは軍事への歯止めを次々になくすことなのか。
 公明党は「自衛隊の海外派遣に一定の歯止めはかかった」とするが、協議が終始、自民党ペースで進んだ印象は否めない。「平和の党」の理念と存在意義が問われる局面だ。
 与党は今国会での関連法案成立を目指す。だが世論調査では約半数が審議に「時間をかけるべき」としており、理解を得たとはいい難い。
 結論を急がず、見直しの是非を含めて幅広く議論を重ねるべきである。それが政府、与党の責務だ。



中国新聞 2015/3/21
社説:安保法制与党合意 「先走り」が過ぎないか


 難解な用語を出しては引っ込め、出しては引っ込めした印象が拭えない。新たな安全保障法制に関する自民、公明による与党協議のことである。
 骨格についてきのう正式合意したが、結論の先送りも目立つようだ。協議を始めて1カ月余りしかたっていない。4月の統一地方選を控えて、懸案はいったん腹に納めたいのだろう。
 それにしても自衛隊の活動範囲を大幅に広げようという動きだ。法制の仕組みも複雑だが、平和国家の行く末に関わる論議としては先走りが過ぎないか。
 例えば朝鮮半島有事を想定し、米軍に後方支援できると定めた周辺事態法の改正だ。「周辺事態」という事実上の地理的制約を廃し、米軍以外の他国軍への支援も可能にするという。
 外務省の説明によると、4月末に改定する日米防衛協力指針(ガイドライン)で「周辺事態は地理的な概念ではなく事態の性質に着目した概念である」と定義している。「事態の性質に着目した概念」とは、漠然としていて理解に苦しむ。具体的にどのような事態を想定しているのか、判然としない。
 集団的自衛権については「存立危機事態」という概念も浮上したが、分かりにくい。政府が昨年7月の閣議決定で定めた「武力行使の新3要件」に該当し、集団的自衛権を行使できる新たな「事態」を指したつもりだったのだろうが、今回は先送りされた。
 さすがに与党間で合意できなかったのだろう。閣議決定の記述自体が曖昧であるため、拡大解釈が生じかねない。政府は日本のシーレーンの機雷掃海を想定していたが、機雷敷設が武力攻撃と同等の深刻な被害をもたらすのか、公明党内では疑念が根強いようだ。
 自衛隊海外派遣を随時可能にする新法の恒久法をめぐっても、自公が一致したとはいえまい。恒久法に基づく後方支援や国連平和維持活動(PKO)以外の人道復興支援への派遣要件について、公明党は例外のない国会の事前承認を求めているが、自民党は例外の余地を残したいという思惑がある。
 合意文には「国会の事前承認を基本とする」とあり、含みを持たせている。「基本とする」とは何を意味するのか。今回は骨格に関しての合意であり、精緻な歯止めをかけられないのなら再検討すべきだろう。
 同時に、安全保障の新たな枠組みが逆に日本の平和と安定を損なうことはないのか、徹底的に議論されなければなるまい。武力攻撃する意図がないとしても、果たして相手に正確に伝わるのかどうか。自衛隊員の身の安全にも関わる問題だ。
 日本はこれまで自衛隊を海外に派遣した場合、武力行使と受け止められないよう、「後方地域」などの概念を組み立てて対処してきた。恒久法でなく時限立法でもあった。憲法9条を逸脱しないことを前提に、解釈を積み重ねてきたといえよう。
 合意文は「国会の事前承認」とともに、「他国の『武力の行使』との一体化を防ぐための枠組みを設定すること」を周辺事態法改正や恒久法整備の要件にしている。4月には法案化に向けて与党協議に入る見通しだが、この要件を逸脱することはないのか。慎重の上にも慎重であるべきだ。



山陽新聞 (2015年03月21日 08時39分 更新)
社説:安保法制合意 何が歯止めか分からない


 集団的自衛権行使や他国軍への後方支援などを盛り込む新たな安全保障法制の骨格について、自民、公明両党が正式合意した。政府が関連法案の作成に着手し、5月に国会に提出される見通しだ。
 合意内容をみると、自衛隊の海外での活動に大きく道が広がる。だが、全般的に活動の歯止めとなる規定はあいまいで拡大解釈の余地もある。何が歯止めか分かりにくく、このまま法制化されれば「専守防衛」の基本方針を踏み越えかねない懸念が拭えない。
 朝鮮半島有事を想定している周辺事態法から地理的概念を事実上なくし、現に戦闘が行われていない地域であれば、補給や輸送など他国軍への後方支援を可能にする方向だ。自衛隊派遣のための恒久法も制定する。
 集団的自衛権に関しては、有事対処の基本法である武力攻撃事態法に、国の存立を脅かすような事態を想定した「新事態」を加えて、行使を可能にする。
 国連平和維持活動(PKO)の武器使用基準も拡大する。武力攻撃に至らないグレーゾーン事態への対処では、共同で警戒監視に当たっている米軍などを守れるようにする。
 与党協議では派遣の根拠などが焦点となった。活動の制約を減らしたい自民党に対し、公明党は後方支援に際し、例外なしに国会の事前承認を求めたが、結局は「事前承認を基本とする」という表現で先送りされた。
 人道復興支援活動に関する国際法上の正当性は「国連決議または関連する国連決議等がある」となった。「等」が入ることで欧州連合(EU)など国連以外の決議にも応じる可能性が出てくる。
 それにしても分かりにくい議論である。自民党は当初、自衛隊海外派遣のたびに特別措置法を制定せずに済むよう、恒久法で海外活動全般を包括する考えだった。だが、公明党の反対で、新法と既存法の改正を組み合わせることになり、より複雑化した。
 たとえば、武力攻撃事態法には、切迫度の高い順に武力攻撃事態、武力攻撃予測事態、緊急対処事態がある。新たに加わる「新事態」は日本の存立を脅かす事態を想定している。改正周辺事態法には国の平和と安全に重要な影響を与える「重要影響事態」を設ける。朝鮮半島有事などのどの局面にどう当てはまるのか、抽象的概念が先行し、極めて理解しづらい。
 中東ホルムズ海峡での機雷除去が集団的自衛権行使で可能かどうかも、地理的概念を外して対応したい自民党と、地理的制約を歯止めとして慎重な公明党の間で見解を詰め切れないままである。
 周辺事態法からも地理的概念を外せば、自衛隊の活動拡大に対する歯止めは見えづらくなる。政府はそうした懸念に答えると同時に、国民が理解し判断できるよう、もっと法整備の論点を整理し、分かりやすく説明すべきだ。

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