2015-03-24(Tue)

安保法制与党合意 (3) 海外派遣に歯止めかけよ

なし崩しは許されない 国民置き去りに進めるな 厳格な歯止めが必要だ 軍事偏重が平和国家崩す 禍根残す急激な軍事化

<各紙社説・論説>
徳島新聞)安保法制与党合意 海外派遣に歯止めかけよ (03/21)
高知新聞)【安保法制合意 安倍政治を問う】なし崩しは許されない(03/21)
西日本新聞)安保法制合意 国民置き去りに進めるな(03/21)
佐賀新聞)安保法制の与党協議(03/21)
熊本日日新聞)安保法制骨格 与党合意は拙速にすぎる(03/21)
南日本新聞) [安保法制合意] 厳格な歯止めが必要だ(03/22)
琉球新報)安保法制見直し 軍事偏重が平和国家崩す(03/17)
沖縄タイムス)[安保法制与党合意]禍根残す急激な軍事化(03/21)



以下引用



徳島新聞 2015年3月21日付
社説:安保法制与党合意 海外派遣歯止めかけよ


 自衛隊の活動範囲や役割が際限なく広がるのではないか。そんな懸念が拭えない。
 安倍政権が整備を目指す新たな安全保障法制の骨格について、自民、公明両党が正式に合意した。
 集団的自衛権行使や他国軍への後方支援など5分野にわたって、自衛隊活動を拡大させる際の方向性を示したものである。
 一定の歯止め策は挙げているが、曖昧な表現にとどまっており、どこまで実効性を持たせられるかは不透明だ。
 戦後日本が堅持してきた「平和主義」と「専守防衛」の理念を骨抜きにすることは許されない。今後、政府が本格化させる法案化作業を厳しく見守る必要がある。
 骨格に盛り込まれた5分野は<1>武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」への対応<2>周辺事態法の改正<3>他国軍を後方支援するための恒久法制定の検討<4>国連平和維持活動(PKO)協力法の改正<5>集団的自衛権の行使-である。
 いずれも、これまで自衛隊ができないとされてきた活動を、一定の条件を満たせば可能にしようとするものだ。
 例えば、周辺事態法は朝鮮半島有事の際の米軍支援を想定しており、地理的制約があると認識されてきた。
 骨格は、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態などと認められれば、米軍や他国軍を支援できると改める方向性を示した。
 これにより、地理的制約がなくなり、支援対象も米軍以外に広がることになる。
 また、PKO協力法以外での海外派遣は、時限法の特別措置法で対応してきたが、恒久法は随時派遣を可能にする。派遣の是非についての国会審議も不要になる。
 問題が多いにもかかわらず、拡大を抑制する方策は明確ではない。
 骨格は自衛隊の海外活動について、周辺事態法による派遣では「原則国会の事前承認を要する」としているが、恒久法での派遣では「国会の事前承認を基本とする」と書き分けた。
 国会承認を求めた公明党は、厳しい制約を課すことができたと解釈しているが、自民党からは「事後承諾もあり得る」との声が出ている。
 どちらにも取れる表現になったのは、来月末に予定される日米防衛協力指針(ガイドライン)の再改定をにらんで法案化作業を急ぐ自民党が、「日程優先」で重要論点の詰めを先送りしたためだ。
 骨格は、他国の武力行使との一体化を防ぐ枠組みを設けることも明記した。だが、安倍政権は「現に戦闘行為を行っている現場(戦場)」以外なら一体化しないとの立場を取っており、有効な枠組みになるかどうかは見通せない。
 さらに、集団的自衛権の行使では、昨年閣議決定した武力行使の新3要件を「条文に過不足なく盛り込む」としたものの、「国民を守るために他に手段がない」との要件の扱いは明示しなかった。
 このままでは、自衛隊がいつでも、どこにでも派遣されるようになりかねない。
 例外なく国会の事前承認を要件とするなど、公明党は来月再開する与党協議で、厳格な歯止めがかかるよう主張してもらいたい。
 政府は5月中旬の法案提出を目指している。国会はそれを待たず、問題点を追及すべきである。



高知新聞 2015年03月21日08時13分
社説:【安保法制合意 安倍政治を問う】なし崩しは許されない


 集団的自衛権の行使容認を踏まえた新たな安全保障法制の骨格について、自民、公明両党が合意した。
 あくまで「途中経過」の位置付けだが、米軍以外の他国軍の後方支援も可能とするなど自衛隊の活動が飛躍的に拡大する内容だ。専守防衛に徹する「国のかたち」を大きく変える法整備が、性急に進められていくことに強い危惧を覚える。
 新安保法制で何がどう変わるのか。ひと言で言えば自衛隊活動のグローバル化だ。
 日米安全保障条約で自衛隊が米軍と共同で危険に対処する場所は、「日本の施政下の領域」や「極東」である。朝鮮半島有事を想定した周辺事態法も事実上、「日本周辺」に限られる。
 一方、米中枢同時テロ後にインド洋で行った他国軍艦船への給油やイラクでの人道復興支援活動などはその都度、特別措置法を制定して実施した。
 新安保法制ではこうした「縛り」を取り払う。
 周辺事態法を改正し「周辺」という地理的制約を外す。代わりに日本の平和と安全を脅かす「重要影響事態」を導入。政府が同事態と認定すれば、地球の裏側にも自衛隊を派遣できる。とはいえ重要影響事態とは何を指すのか、不明瞭と言わざるを得ない。
 重要な影響がなければ自衛隊は動かせないのか、というとそうではない。新たな恒久法を整備し、他国軍が国際社会の平和と安定のために活動している場合、自衛隊が後方支援できるようにする。恒久法なのでいちいち特措法を制定する手間も省ける。
 後方支援の内容も広がる。
 他国軍への武器、弾薬の提供や、戦闘行動のため発進準備中の航空機への給油の解禁などが検討される。
 政府は「戦場以外での活動なら、憲法が禁じる他国の武力行使との一体化には当たらない」とするが、そんな都合のいい理屈が敵対する側に通じるだろうか。「日本も敵と一体」とみなされ、紛争にずるずる巻き込まれる恐れは高まるに違いない。
歯止めは利くのか
 自衛隊が「質」「量」ともに活動を拡大させることに対し、法制の骨格には「国連の決議がある」ことなど歯止めも盛り込まれてはいる。恒久法に基づく自衛隊の派遣要件は「国会の事前承認が基本」だ。
 しかし事後承認もあり得るとする自民に対し、公明は「例外なしの事前承認」を求めている。溝は埋まっておらず歯止めが機能するか疑問だ。
 集団的自衛権行使を認めた閣議決定では、行使に必要な新3要件も定めた。ところが、骨格には「国民を守るために他に手段がない」との要件は明示されていない。
 さまざまな外交努力を尽くすことで集団的自衛権を安易に行使しないよう戒める。そんな重要な要件さえ省く合意は認め難い。そもそも解釈改憲による集団的自衛権の行使容認にも世論調査での支持は少ない。
 日本は平和憲法の下で、国際紛争は武力に頼らず外交努力での解決を目指してきた。戦後70年の歩みを多くの国民は誇りに感じていよう。その針路を変える安保法制への理解を得るのは並大抵ではないことを、政府与党は肝に銘じるべきだ。慎重な議論と丁寧な説明を欠いたまま、なし崩し的に安保法制を成立させることは許されない。



=2015/03/21付 西日本新聞朝刊=
社説:安保法制合意 国民置き去りに進めるな


 自民、公明両党はきのう、新たな安全保障法制に関する与党協議会を開き、集団的自衛権行使や他国軍への後方支援などの分野で、自衛隊の活動を拡大する法制の骨格について正式合意した。
 昨年7月、安倍晋三政権は従来の憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を認める閣議決定を行った。今回の与党合意によって、この閣議決定を具体化する法案作成作業が本格的に始まる。
 集団的自衛権とは「自国と密接な関係にある国が攻撃を受けた場合、自国が攻撃を受けていないにもかかわらず、武力で反撃する権利」である。言い換えれば「他国の戦争に参加する権利」だ。
 戦後の歴代内閣は「日本は憲法で集団的自衛権の行使を禁じられている」との解釈を踏襲してきた。しかし、安倍政権は一内閣の判断で、事実上の改憲とも言える解釈変更に踏み切った。閣議決定そのものに疑義があると、あらためて指摘しておきたい。
 それから9カ月足らずで、政権は具体的な法案づくりに乗り出すという。閣議決定ならまだ内閣の方針表明だが、法律ができれば、自衛隊が「他国の戦争に参加する」事態が現実となりうる。
 日本の安全保障政策は、安倍政権のかじ取りによって、大きくカーブを切りつつある。私たちは今、その大転換のただ中にいる。
 ▼拡大に歯止めなく
 与党合意による法制の骨格は「切れ目のない法制整備」を掲げ、自衛隊の活動を拡大させる。
 「グレーゾーン事態への対処」「他国軍後方支援のための周辺事態法改正」「自衛隊海外派遣を随時可能とする恒久法新設」「国連平和維持活動(PKO)協力法改正」「集団的自衛権の行使」の5分野が、その柱である。
 こうした多岐にわたる法制整備の性格を総括すれば、「歯止めなき拡大」と言えそうだ。
 周辺事態法から「周辺」の地理的制約をなくし、自衛隊が地球の反対側にも後方支援に出掛ける。国際協力では、自衛隊が武器を使用して現地の治安維持に参加する。政府が必要な事態だと判断すれば、日本から遠く離れた場所でも自衛隊が武力行使できる-。
 法制化が実現すれば、自衛隊の海外での活動は、これまでとは比較できないほど広がり、同時に任務に伴う危険も増す。米軍の活動との一体化も進むだろう。
 その一方で、拡大する活動にかける「歯止め」をどうつくるかは、曖昧なまま先送りされた。
 与党合意は「歯止め」として、国際法上の正当性、国会の関与などの民主的統制、自衛隊員の安全確保の3原則を示したが、どこまで実効性があるかは不透明だ。
 恒久法に基づく自衛隊の派遣要件も「国会の事前承認を基本とする」という表現で、例外的に事後承認する余地が残ったとも読み取れる。できるだけ歯止めをかけず、自衛隊をフリーハンドで動かしたい政権の思惑が強くにじむ。
 ▼政治日程が優先か
 与党が今回合意した法整備の骨格は、とにかく分かりにくい。
 安保法制にはもともと難しい用語が多いが、今回はさらに「重要影響事態」や「新事態(存立危機事態)」など新たな概念も登場した。それが従来の諸事態とどこが違い、どこが重なり合うのか、短時間で理解するのは困難だ。
 この分かりにくさの原因は、目的も手段も違う自衛隊のさまざまな活動を一緒くたにして俎上(そじょう)に載せ、一気呵成(かせい)に法制化しようとする政権の姿勢にある。
 政府と自民党が与党合意を急いだ背景には、4月の安倍首相の訪米に合わせ、日米防衛協力指針(ガイドライン)を改定するため、その前に国内法整備の道筋を付けておきたかったからだ。
 また公明党には、支持層に不人気な安保論議を早く済ませ、来週から始まる統一地方選への影響を避けたいとの思惑があったとみられる。いずれも政治日程ありきの判断と言わざるを得ない。
 報道各社の世論調査を見ても、安保法制改定への支持は広がっていないのが現状である。
 国民の十分な理解も支持もないまま、自衛隊の活動拡大へ突き進む安倍政権の姿勢は危うい。これほど重大な政策転換なのに、国民を置き去りに進めてはならない。拙速を避け、国民が納得できるよう国会で徹底的に議論すべきだ。



佐賀新聞 2015年03月21日 05時00分
論説:安保法制の与党協議


 自民、公明両党が新たな安全保障法制の骨格について正式に合意した。昨年7月の集団的自衛権行使を容認した閣議決定を踏まえた関連法案の整備だが、集団的自衛権がかすんでしまうほど、多岐にわたって自衛隊の活動を拡大する内容が打ち出された。
 きのう与党協議会で合意した法制の骨格は、「途中経過」(協議会座長の高村正彦自民党副総裁)との位置付けだ。政府が4月中旬までに法案を提示し、与党協議を再開して審査し、5月中旬の法案提出を目指す。
 法制の骨格となる「具体的な方向性」は、他国軍の後方支援を目的に自衛隊の海外派遣を随時可能とする恒久法など5分野で、自衛隊活動を広げる内容になっている。安保法制に慎重だった公明党は歯止めを求め、取り入れられた部分もあるが、海外活動が拡大することに変わりはない。
 武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」への対処では、自衛隊法を改正し、自衛隊による防護対象に「米軍および米軍以外の他国軍隊の武器等」を加える法整備を検討するとした。昨年7月の閣議決定で対象を米軍に限ったばかりだが、「準同盟国」と位置付けるオーストラリア軍を念頭に拡大する。日本の防衛に義務を負っていない国であり、前のめりの感じは否めない。
 朝鮮半島有事を想定して自衛隊の米軍後方支援を定めた周辺事態法も改正し、米軍以外の他国軍への支援も可能にする。周辺事態の定義は「そのまま放置すれば(中略)わが国の平和および安全に重要な影響を与える事態」で、事実上は地理的制約があった。法制化では「周辺」の文言を削除する見通しだが、具体的にどんな事態を想定しているのか判然としない。
 他国軍を後方支援する恒久法をめぐっては、自衛隊派遣について原案では「国際機関(地域機関を含む)の要請または国連による支持表明」があれば可能としていたが、「国連決議または関連する国連決議」に限定した。原案よりは歯止めを厳格化したことになろうが、従来のように必要に応じてつくってきた特別措置法よりも国内の手続きはハードルは下がるように思えてならない。
 十分な時間がなかったためか、自民、公明両党がそれぞれに都合よく解釈できるあいまいな表現も目立つ。例えば、恒久法の派遣要件に「国会の事前承認を基本とする」とした。公明党は厳しい制約を課したと受け取り、自民党は事後承認もあり得るとの立場で、認識に隔たりがある。
 具体的に法案の文言として落とし込んだ後、しっかりとした解釈を確認したい。安保政策の大転換であるだけに、拡大解釈を招かないように再開後の与党協議や国会審議で精緻な議論が必要になる。法制化で歯止めを明確にしておかなければ、将来に禍根を残す。
 政府は自衛隊と米軍の軍事協力の強化を目指した日米防衛協力指針(ガイドライン)の再改定を4月末に控えている。新たな安保法制の内容が色濃く反映されることだろう。だが国会での法案審議のときに修正の余地がないというのも困る。
 憲法が許す行為かどうかをとってみても、どれも慎重を期した議論が不可欠なものばかり。一気に進めるものではない。(宮崎勝)



熊本日日新聞2015年03月21日
社説:安保法制骨格 与党合意は拙速にすぎる


 自衛隊の海外派遣がなし崩し的に拡大するとの懸念が膨らむ。集団的自衛権の行使容認などを踏まえ、自民、公明両党は新たな安全保障法制の骨格について合意した。中間的位置付けとしているが、戦後日本の安全保障政策の大転換となるテーマを、わずかな回数の与党協議で結論付けたのは拙速にすぎよう。
 骨格には、(1)集団的自衛権の行使を可能にする武力攻撃事態法、自衛隊法の改正(2)国際紛争に対処する他国軍を後方支援する恒久法の制定(3)日本の平和に資する活動をする他国軍支援のための周辺事態法改正(4)国連平和維持活動(PKO)協力法改正(5)武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」への対処-が明記された。
 与党協議は自衛隊の任務と活動範囲の拡大を図りたい政府・自民党の主導で進められた。歯止めをかけたい公明党は、自衛隊の海外派遣に際しては▽国際法上の正当性▽国会の関与など民主的統制▽自衛隊員の安全確保-を求め、骨格に盛り込まれることになった。
 しかし骨格には、両党がそれぞれ都合よく解釈し得るあいまいな表現が目立つ。とうてい議論が深まっているとは言えない。
 焦点の一つとなっている恒久法に基づく自衛隊派遣の際の国会関与では、「原則、国会の事前承認」を主張する自民党に対し、公明党は「例外なしの事前承認」を求め、「事前承認を基本とする」との文言で合意した。両党の主張の折衷案となったが、自民党は事後承認もあり得るとの立場だ。
 4月の統一地方選への影響を回避するためか、対立しそうな重要論点での先送りが目立つ。肝心の集団的自衛権行使を容認する新たな要件の解釈でも、両党の見解は割れたままだ。
 要件の柱は「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から崩される明白な危険がある」ケース。
 安倍晋三首相はホルムズ海峡で自衛隊の機雷除去が可能と主張するが、公明党は日本有事の寸前に限定されるとの見解を変えていない。法制化しても、ホルムズ海峡への派遣の可否は明確になりそうもない。これでは時の政権の判断にゆだねられることになる。
 朝鮮半島有事を想定して自衛隊の米軍後方支援を定めた周辺事態法を改正し、米軍以外の他国軍への支援も可能にする。
 これまでは「中東やインド洋は想定されない」などの政府答弁があったが、法制化では「周辺」の文言を削除して、こうした地理的制約は撤廃される見通しだ。具体的にどんな事態を想定しているのかも判然としない。
 政府は法案作成作業を本格化し、4月中旬に概要を与党協議会に提示する見通しだ。あらためて与党協議が始まるが、政府は5月中旬の法案提出を目指している。大型連休中の安倍首相の訪米などをにらんだスケジュールだが、それとは関係なく丁寧に議論を進めるべきだ。拙速に拙速を重ねては将来に禍根を残すことになる。



南日本新聞 ( 2015/3/22 付 )
社説: [安保法制合意] 厳格な歯止めが必要だ


 自民、公明両党は自衛隊の任務と活動範囲を広げる新たな安全保障法制の骨格について正式合意した。政府の集団的自衛権の行使容認などを踏まえたものだ。今後、政府が法案化の作業に入る。
 論議が複雑なため自衛隊内から「よく分からない」との声が漏れている。しかし、一番戸惑っているのは国民ではないか。
 政府・与党には国会審議を通じた丁寧な説明が求められる。
 これまでの経緯から、新たな法整備は自衛隊をいつでもどこでも海外へ派遣できるようにすることだろう。
 与党協議でことさら後景に押しやられた感が強いが、その中心は集団的自衛権の行使だ。
 憲法9条の下、海外での武力行使を禁じて専守防衛に徹してきた戦後日本の防衛政策の大転換である。法制化に当たっては厳格な歯止め策が最も重要だ。
 他国軍への後方支援と国連平和維持活動(PKO)以外の活動も法制化の柱である。
 だが、これら三つの柱の歯止め策ははっきりしない。
 集団的自衛権の行使について公明党は、武力行使の新3要件の一つ「国民を守るために他に手段がない」を法案に明記するよう求めたのに、骨格は触れなかった
 新たな要件を設けても法案化しなければ制約にならない。もっとも要件そのものの定義もあいまいだ。
 他の二つの要件「国民の生命などが根底から覆される明白な危険」とはどんな事態を指すのか。「必要最小限度の実力行使」はどの程度までか。法整備の前にこれらを具体化してもらいたい。
 他国軍への後方支援は、朝鮮半島有事の際の米軍支援を想定した周辺事態法から「周辺事態」を削除することで、米軍以外へ支援を広げるものだ。
 法案審査で議論される見込みだが、自衛隊を地球上のどこへでも派遣できることにつながる。
 また、これまで自衛隊派遣のたびに作ってきた特別措置法に代わって設ける恒久法も、いつでも自衛隊を海外へ派遣して他国軍の後方支援を可能にする。
 恒久法は国連決議や国会の事前承認を派遣要件とする。だが、決議の性質や承認の在り方などあいまいな点が残された。
 今回、与党が合意した骨格は「国民を守るため、切れ目のない法整備」を再三強調している。
 もとより、防衛政策は国民全体の安全に関わる問題だ。国民の理解と支持があってこそ、新たな防衛政策も成り立つことを政府は肝に銘じるべきである。



琉球新報 2015年3月17日
<社説>安保法制見直し 軍事偏重が平和国家崩す


 世界の紛争地で武力を行使する他国軍を日本が支援することが現実のものとなり、海外での自衛隊の武力行使にも道を開く恒久法が定められようとしている。
 自民、公明両党による与党協議で、新たな安全保障法制の骨格原案が判明し、「具体的な方向性」が示された。公明党は朝鮮半島有事の米軍支援を想定した周辺事態法を改正し、米軍以外の他国軍を支援することを容認した。自民党のほぼ思惑通りの見直しである。
 恣意(しい)的な紛争事態の認定に地理的制約を掛けた「周辺事態」は実質的に廃止される。集団的自衛権の行使を憲法解釈で容認する政府が認定すれば、地球の裏側でも米軍を主軸とする他国軍の後方支援が可能となる。
 端的にいえば、恒久法制定によって自衛隊の海外派遣がなし崩しに拡大する懸念が拭えない。米軍の要求に沿って、日本が歩んできた平和国家の道を大きく踏み外す危険極まりない安保法制に姿を変えることを意味する。
 自公両党は5月半ばに関連法案を国会に提出するとしているが、軍事偏重が際立つ安保法制の見直しは許されない。
 世界の安全保障環境は変化するものの、それに対処する上で欠けてはならない視点がある。
 軍事的な手段には限界があることを自覚することであり、自国の軍事的行動を相手方や周辺国がどう受け止めるかを見極めることだ。
 遠藤誠治成蹊大教授はこの重要な視点が安倍政権には欠落していると指摘している。その例に中国との関係を挙げる。
 オバマ米政権が「中国と戦争しない仕組みづくり」に腐心しているのに対し、同盟国の日本は「戦争になったらどうするか」を優先的に検討しているとの指摘である。
 「抑止力」強化をうたう行動が脅威となり、相手国を軍備増強に走らせ、緊張が増す悪循環に陥る。今の日中の関係が当てはまる。
 自衛隊の海外派遣拡大に直結する恒久法制定が国際社会にどんなメッセージを放つのか。安保法制を何のために見直すのか、議論は深まらない。
 国際法上の正当性や国民の理解、自衛隊員の安全確保など、公明党が主張した海外派遣の歯止め策を三つ講じたが、集団的自衛権の行使を認め、周辺事態や非戦闘地域の制限的概念を撤廃する以上、歯止めの実効性は極めて不十分だ。



沖縄タイムス 2015年3月21日 05:30
社説[安保法制与党合意]禍根残す急激な軍事化


 打ち上げ花火のように次から次に新語、造語が飛び出す。何を議論しているのか、正直、よく分からない。統一地方選を意識して重要な論点を先送りし、わずか1カ月余りで結論をまとめる。国の行く末を左右する安全保障法制の大がかりな変更であるにもかかわらず、国会論議は空回り気味。こんな形で安保政策の大転換が図られていいわけがない。
 自民、公明両党は20日、自衛隊の活動領域を大幅に拡大させるための「安全保障法制整備の具体的な方向性」について、正式に合意した。5月中旬の国会提出を目指すという。
 与党の共同文書は、新たな法整備が必要な分野として(1)武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」への対処(2)他国軍支援のための周辺事態法の改正(3)自衛隊の海外派遣を随時可能とする恒久法の新設(4)国連平和維持活動(PKO)協力法の改正(5)集団的自衛権の行使-の5分野を挙げている。
 なぜ今、安保法制の全面刷新なのか。なぜ今、自衛隊を海外に出して武力行使を可能にするのか。そもそも安倍政権は、遠い海外で、誰のために、何をしようとしているのか。そういう基本的な問題について、国民の間に共通理解ができているとは言い難い。
 与党協議では「周辺事態」「グレーゾーン事態」に始まって、「武力攻撃事態」「武力攻撃予測事態」「存立事態」「重要影響事態」「緊急対処事態」などの新語、造語が飛び交った。何が何だか、ちんぷんかんぷんだ。
    ■    ■
 過去の政権が自衛隊の海外派遣について抑制的に対処してきたのは、憲法9条の下で集団的自衛権の行使を「憲法に反する」として認めてこなかったからだ。
 安倍政権は昨年7月、閣議決定によって憲法解釈を変更した。憲法に照らして「使えない」はずのものを一片の閣議決定によって「使える」ようにし、その前提で今回、自衛隊の海外派遣の枠組みを大幅に拡大したのである。
 周辺事態法を改正して地理的制約を外し、戦闘する米軍の後方支援を地球規模に広げる考えだ。
 周辺事態法の改正には合意したものの、「周辺事態」に代わる新たな「重要影響事態」が具体的にどのような事態を想定しているのかは明らかになっていない。
 海外派遣の際の国会の事前承認や、集団的自衛権の行使に絡む「武力行使の新3要件」の位置付けけなどは合意に至らず、先送りされた。
    ■    ■
 日本人は自らが当事者になる戦争や戦闘に耐えられるのだろうか。安保法制の全面刷新が指し示す未来は、そのようなものである。国民不在の政策転換が極めて危険なのは、戦後日本の原点が根底から覆されることが予想されるからだ。

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