2015-04-04(Sat)

辺野古移設 「独立国」と言えぬ農水相決定 民意無視して米国追従か

既成事実化は許されぬ 誰のための不服審査か 政府は沖縄の声を聞け 政府は民意に耳を傾けよ

<各紙社説・論説・主張>
朝日新聞)政府と沖縄―捨て石にしてはならぬ(4/1)
毎日新聞)辺野古移設 沖縄と敵対ばかりでは(3/31)
東京新聞)辺野古工事 既成事実化は許されぬ(3/31)
しんぶん赤旗)沖縄県指示の停止 「独立国」と言えぬ農水相決定(3/31)
岩手日報)普天間移設問題 打開の責務は国にある(4/3)
信濃毎日新聞)辺野古移設 誰のための不服審査か(3/31)
福井新聞)沖縄県指示の効力停止 民意無視して米国追従か(3/31)
山陰中央新報): 普天間移設問題/対話の扉を開くべきだ(3/29)
徳島新聞))辺野古移設で対立 政府は沖縄の声を聞け (3/28)
西日本新聞)辺野古問題 政府は説得を放棄するな(4/1)
熊本日日新聞)辺野古移設 政府は民意に耳を傾けよ(4/2)
南日本新聞) [辺野古作業] ミゾが深まるばかりだ(4/1)




以下引用



朝日新聞 2015年4月1日(水)付
社説:政府と沖縄―捨て石にしてはならぬ


 沖縄県の翁長雄志知事が、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設作業を止めるよう沖縄防衛局に指示したことに対し、林芳正農水相が指示の効力を一時的に停止する決定を出した。
 沖縄の意見に耳を傾けることなく、ひたすら移設作業を続けようという政府の姿勢は「沖縄いじめ」とさえ見える。政府は行政手続きに血道を上げるのではなく、ていねいに沖縄との対話の道を探るべきだ。
 もとはといえば、沖縄防衛局が知事から許可を得た岩礁破砕区域の外に大型コンクリートブロックをいくつも沈めたことが発端である。県は当初、必要な手続きを取るよう防衛局に求めたが、防衛局は応じなかった。県はさらに現地調査ができるよう米軍との調整も要求したが、これも拒否された。翁長知事が岩礁破砕許可の取り消しに言及したのも無理からぬことだ。
 防衛局が農水相に提出した行政不服審査請求や、知事の指示の執行停止申し立てという手法はいかにも強引だ。本来は行政庁の処分で不利益を受ける国民を救済する制度。防衛局が申し立て、審査するのが同じ政府内の農水省というのも、公平性の観点から疑念をぬぐえない。
 翁長知事は農水省に意見書を提出した際、「沖縄県民の痛みを感じない、感じようとしない政府の姿勢があることを国民の皆様に知っていただきたい」と訴えた。
 今年は戦後の沖縄にとって節目の年にあたる。70年前の4月1日、米軍が沖縄本島に上陸を開始した。沖縄戦での死者20万人以上。本土防衛の捨て石とされ、県民の4分の1が命を落としたと言われる。
 普天間飛行場は当時、住民を収容所に移している間に米軍が建設した。その返還のため、なぜまた同じ沖縄の辺野古が使われなければならないのか。
 菅官房長官は再三、「辺野古移設は16年前、当時の県知事と市長が同意した」と口にする。だが当時の県知事、稲嶺恵一氏は15年の基地使用期限を条件とした。名護市長の故岸本建男氏も、基地使用協定の締結などを条件に掲げた。現行計画にこうした条件はない。現行計画での移設容認を公約にして当選した知事も名護市長もいない。
 「辺野古移設こそ、唯一の解決策」と繰り返す政権に対し、県民からは「もう日本のための捨て石にはならない」との声が聞こえてくるようになった。これ以上、沖縄に基地負担を押しつけるやり方は、決して解決策と呼べるものではない。



毎日新聞 2015年03月31日 02時31分
社説:辺野古移設 沖縄と敵対ばかりでは


 国と沖縄が行政法を使ってお互いに対抗措置を繰り出し、対立をますます深めている。両者は一刻も早く話し合いの場を持ち、この異常事態に終止符を打つべきだ。
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡り、翁長雄志(おながたけし)知事が海底作業を停止するよう防衛省の沖縄防衛局に指示した問題で、農相は知事の指示の効力を一時的に止める執行停止を決めた。
 経緯はこうだ。翁長知事は今月23日、防衛局が辺野古沖の許可区域外で岩礁を破壊した可能性が高いとして、海底作業を停止するよう指示した。従わなければ、埋め立て工事に必要となる昨年8月の県の岩礁破砕許可を取り消す考えも示した。
 翌日、今度は防衛局が対抗措置として、行政不服審査法に基づき、知事の指示に対する審査請求と執行停止を農相に申し立てた。今回の執行停止はこれを受けたものだ。
 根拠となっている行政不服審査法は、その法の趣旨について、行政庁の違法・不当な処分について国民に不服申し立ての道を開くと定めている。目的は行政に対し国民の権利や利益を守ることにある。
 政府は、国が一事業者として私人と同じ立場で申立人になることは認められると主張する。仮に法的にそれが可能だとしても、法の趣旨から離れたところで、地方自治体を相手に国が国に訴えることや、国の訴えを同じ国が判断することに、強い違和感を抱かずにいられない。
 翁長知事は執行停止について「国が申し立て、農水省が審査する対応は、審査が公平公正に行われたか理解できず、残念だ」と批判した。
 政府のこれまでの姿勢をわかりやすく言えば、次のようになる。
 辺野古移設の手続きは前知事時代に決まったことで、沖縄はこの期に及んで覆すべきでない。移設は普天間の危険除去のためであり、断固として進める。移設が頓挫し、普天間が固定化されてもいいのか−−。
 だが、沖縄の多くの人々は、普天間の危険性が除去されても、辺野古に新基地ができて固定化されれば、県全体としては負担軽減につながらないと感じている。政府の説明は沖縄に届いていない。
 知事は先週、農相に出した意見書で「安全保障が大事だという思いは共有するが、負担を沖縄だけが背負うのではなく、国民全体で考えるべきだ。沖縄の痛みを感じようとしない政府の姿勢を国民に知ってほしい」と述べた。
 政府内の推進派は、こうした声を感情論だといって切り捨てがちだ。だが、沖縄と敵対してばかりいては、県民感情は悪化する一方だ。県民の共感や理解のないまま政策を進める態度は、政治とは呼べない。



東京新聞 2015年3月31日
【社説】辺野古工事 既成事実化は許されぬ


 民意を背景にした沖縄県の判断は、またも退けられた。サンゴ礁を破壊しかねない名護市辺野古での海底掘削調査はこのまま進む。県民が拒む米軍基地新設を既成事実化することは許されない。
 痛みを懸命に訴える沖縄県民の声を、巨大な権力が踏みつぶしているように見えてならない。
 翁長雄志知事が防衛省沖縄防衛局に出した辺野古沿岸部での作業停止指示について、林芳正農相はきのう、その効力を一時的に停止することを決めた。防衛局は行政不服審査法に基づく正式な裁決が下るまでの間、掘削調査を継続できるのだという。
 農相の決定を受け、菅義偉官房長官は記者会見で「引き続き粛々と対応したい」と繰り返した。
 沖縄県側が何と言おうとも、このまま作業を進め、辺野古での米軍基地新設を後戻りできないくらいに既成事実化したいのだろう。
 沖縄県と政府が法的手続きを取り合うのは異常だ。対立が先鋭化した状況で、米軍への基地提供という日米安全保障条約上の義務を円滑に果たせるのだろうか。
 辺野古をめぐる現在の混乱の原因は、在日米軍基地の約74%が集中する現状を沖縄差別と感じ始めた県民と真摯(しんし)に向き合おうとしない安倍内閣の側にある。
 安倍内閣が辺野古での米軍基地新設の根拠とするのは、仲井真弘多前知事による沿岸部の海面埋め立て許可だ。
 しかし、仲井真氏による「県内移設」受け入れは、体裁は整っているが、自らの公約を踏みにじるものであり、県民の意思を反映していない。しかも、昨年の県知事選で明確に拒否されたものだ。
 県は、仲井真氏の許可に法的な瑕疵(かし)がないか検証している。翁長氏は検証終了まで作業中止を求めているが、安倍内閣は耳を傾けようとせず、政権首脳部と翁長氏との会談もいまだ実現していない。
 これでは県民が反発するのも無理もなかろう。安倍晋三首相は胸襟を開いて翁長氏ら沖縄県民と対話し、真の負担軽減に向けた解決策を見いだすべきではないか。日米関係ばかりを優先して沖縄を切り捨てる愚を犯すべきではない。
 「沖縄の方々の理解を得る努力を続けながら…」。首相は今年二月の施政方針演説でこう述べた。首相が沖縄県民がたどった苦難の歴史と米軍基地を背負う苦悩とに向き合う誠意があるのなら、言葉を実行に移すべきだ。沖縄との溝をこれ以上、深めてはならない。



しんぶん赤旗 2015年3月31日(火)
主張:沖縄県指示の停止 「独立国」と言えぬ農水相決定


 沖縄の米軍普天間基地(宜野湾市)に代わる名護市辺野古の新基地建設問題で、翁長雄志知事が防衛省沖縄防衛局に対して出した作業停止指示について、林芳正農林水産相が効力の一時停止を決定しました。新基地建設が遅れれば日米両国の信頼関係に悪影響が出るなどという沖縄防衛局の申し立てを追認した言語道断の決定です。
「日米関係の悪化」が口実
 農水相の決定は、沖縄防衛局が行政不服審査法に基づき、翁長知事による作業停止指示の執行停止を申し立てていたのを受けたものです。同法は行政庁の違法、不当な処分について国民に不服申し立ての道を開くことで「国民の権利利益の救済を図る」のが目的です。国自体が申し立てをすることを基本的には予定していません。沖縄県民の多数が反対している新基地建設を強行するための申し立てが法の趣旨に反するのは明白です。
 農水相は、申し立てを「適法」としました。しかし、新基地建設をなりふり構わず推進する安倍晋三政権の下にある国の機関(沖縄防衛局)の申し立てを同じ国の機関(農水相)が審査して、公平性が保たれるはずがありません。菅義偉官房長官は農水相の決定について「公正、中立の立場から審査し、執行を停止した」と平然と述べましたが、どんな理屈を並べようが、同法をねじ曲げ、悪用したことは誰の目にも明らかです。
 農水相の決定は、翁長知事の作業停止指示によって新基地建設が「大幅に遅れる」ために「普天間飛行場周辺住民に対する危険性や騒音の継続による損害」、「日米両国間の信頼関係への悪影響による外交・防衛上の損害」などが生じることを避ける「緊急性」があるとした沖縄防衛局の申し立てをおうむ返しにしただけです。
 翁長知事は農水相に提出していた意見書(27日)で、普天間基地を抱える宜野湾市民を含め県民は昨年の知事選で「(辺野古への)移設による負担継続ではなく、米軍基地負担を否定する道を選んだ」とし、「(政府が)辺野古移設を『唯一の解決策』であると決めつけて、普天間飛行場の負担の大きさを執行停止の理由として述べることは、…沖縄県民の痛みを感じない、感じようとしない政府の姿勢がある」と指摘していました。この声に全く耳を貸さない農水相の決定は審査の名に値しません。
 翁長知事が辺野古沖のボーリング調査など海底面の現状変更作業の停止を指示したのは、県が岩礁破砕を許可した区域外で沖縄防衛局が巨大コンクリートブロックを投下しサンゴ礁を破壊している問題に端を発しています。県は情報提供や調査協力を再三要請し必要があれば岩礁破砕許可を取るよう伝えていました。これを無視して作業を強行している防衛局に作業停止などを求めたのは当然です。
知事支える運動と世論を
 「日米関係が悪化するから、日本国内法に基づく必要な許可を得ないままに作業を続行させてよいというのであれば、それは主権を持つ一つの独立国家の行動ではない」(翁長知事の意見書)という声こそ、政府は真摯(しんし)に受け止めるべきです。
 沖縄県民の意思を踏みにじり、新基地建設をあくまで押し付けようとする安倍政権を包囲し、知事を支える運動と世論を一層強め、広げる必要があります。



岩手日報(2015.4.3)
論説:普天間移設問題 打開の責務は国にある


 沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)移設をめぐる政府と翁長雄志知事の対立は、民意の在りかをめぐる見解の相違が背景だろう。双方に理屈があり、一概にどちらが正しいとも誤りとも判じ難い。
 事態はこじれ、司法対決の可能性が取り沙汰されるに及び、沖縄基地負担軽減担当相を兼ねる菅義偉官房長官は今週末、同県を訪問し知事と会談する意向を固めた。
 訴訟になれば国と県の対立は決定的となり、それ自体が国益を大きく損ねる。市街地のど真ん中にあって四方を宅地に囲まれ、米高官も「世界一危険な飛行場」と認めた普天間の現状は、結果的に固定化される懸念がある。
 今回の会談で一気に雪解けが進む見込みは薄いだろう。しかし少なくとも継続的な対話の門戸は閉ざさないよう、本来の議論に徹する努力を双方に強く求めたい。
 普天間返還の日米合意は1996年。合意は名護市辺野古沿岸部への移設とセットだが、知事選などで示された民意は県内移設反対が大勢を占めてきた。この間、民主党の鳩山由紀夫政権下で「県外移設」から「やはり県内」に転じるなど、沖縄を翻弄させる政治の迷走もあった。
 今回の問題の発端は2013年暮れに、2期目当選時の公約を翻して辺野古移設容認に傾いた仲井真弘多前知事の判断だ。翌年には、予定地に漁業権を持つ名護漁協が補償交渉に同意。政府は仲井真氏の任期満了間際に移設に向けた海底作業に着手した。
 各種行政手続きは踏んでいる-というのが政府の立場。これに対し、かねて仲井真氏を支持してきた翁長氏は同氏の変節に異を唱え、那覇市長を辞して昨年11月の知事選に立候補。仲井真氏に10万票の差を付け当選した。
 さらに知事選に先立つ同年1月の地元名護市長選、12月の衆院選でも全4小選挙区で自民候補が敗退。9月の名護市議選も、移設反対派が過半数を維持した。沖縄の民意は反・辺野古-というのが翁長知事の立場だ。
 しかし同知事も、普天間の危険性除去という大目的については見解が不明確。法廷闘争になれば不利とみられる中で、反対を言い続けることには限界もあるに違いない。
 他方、政府は仲井真県政からの行政の継続性を主張するが、沖縄振興策の拡充などをアメに同氏の翻意を強力に促したのは政府。地方選挙の意義を顧みない姿勢には、強権的との印象を禁じ得ない。
 安全保障は国の専権。だからこそ、国が率先して打開策を見いだすべきだろう。国策は、地方の自治権にどれほど優先するものか。そうした観点からも、全国の「地方」が推移を注視する理由がある。



信濃毎日新聞 2015年03月31日(火)
社説:辺野古移設 誰のための不服審査


 こんなやり方が認められるのか。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐる農相の決定だ。
 沖縄県の翁長雄志知事が沖縄防衛局に出した作業停止指示について、効力を一時的に停止する―とした。
 辺野古では、知事の指示を無視して海底ボーリング調査が続けられている。移設に向け、なりふり構わず作業を進める政府の姿勢にあらためて異を唱えたい。
 県は、防衛局が投入したコンクリートブロックによるサンゴ礁の損傷を問題視し、県の漁業関連の規則に基づいて作業停止を指示した。これに対して防衛局が取り消しを求め、所管する林芳正農相に審査請求し、結果が出るまでの執行停止を申し立てていた。
 辺野古移設を進めたい政府の内輪のやりとりだ。国に不都合な決定になるはずがない。案の定、防衛局の主張を認めている。作業停止によって「日米両国間の信頼関係への悪影響による外交・防衛上の損害といった回復困難で重大な損害が生じる」とした。
 防衛局の申し立ては、行政不服審査法に基づく。国や自治体の行政処分で不利益を受けた国民が取り消しなどを求めるための手続きである。政府が自治体の反対を押し切って作業を進めるために使うことは妥当なのか。本来の趣旨に照らして疑問が大きい。
 知事の許可が必要な点で国は私人と変わらないため申し立ての資格がある―。決定書では、そんな判断も示された。言い訳がましい主張がかえって政府の強引さを印象付ける。
 指示取り消しの審査請求については、4月23日を期限に県の意見を聞き、結果を出す。こちらも防衛局の言い分を認めることになるだろう。農相が指示を取り消した場合、県が決定の無効を求めて提訴することも考えられる。
 これ以上、対立を深めるべきではない。辺野古移設に反対する沖縄の民意は、昨年の知事選などではっきり示されている。にもかかわらず、作業を強行する政府の対応にそもそも問題がある。
 「粛々と進める」と繰り返すばかりで、地元の声に耳を貸そうとはしない。中谷元・防衛相は、作業が遅れるほど「普天間の危険性除去が遅くなる」と、県をけん制している。理解を得ようという姿勢には程遠い。
 辺野古の問題は、地方の声を顧みようとしない政府の姿を端的に示している。沖縄だけでなく、地方全体に関わる問題だという意識を共有したい。



福井新聞 (2015年3月31日午前7時30分)
論説:沖縄県指示の効力停止 民意無視して米国追従


 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐり、翁長雄志沖縄県知事が出した沿岸部での作業停止指示について、沖縄防衛局が求めた指示取り消しの審査請求。林芳正農相は防衛局の主張を認め、作業停止指示の効力を一時的に停止する決定を下した。
 作業が遅延すれば「日米両国間の信頼関係、外交・防衛上に回復困難で重大な損害が生じる」との防衛局側の主張を丸のみした。
 知事の主張は、防衛局が許可なく岩礁破砕をしている可能性が高く、作業を停止しなければ調査できないとの立場だ。菅義偉官房長官は知事の指示を「違法性が重大かつ明白で、無効なものだ」と非難したが、政府のやり方はあまりに一方的で、公正性に欠ける。
 この岩礁破砕許可は、沖縄防衛局が当時の仲井真弘多知事に申請、昨年8月に認められた。ただ県の指示に従うことや、申請外の行為をした場合には許可を取り消すことがある―などが条件が付いている。
 翁長氏は昨年11月の知事選で「辺野古移設阻止」を公約に掲げ、移設推進の仲井真氏を破って当選した。政府が言うように「行政の継続性」は重要な観点。だが県は防衛局がボーリング調査のために投入した大型コンクリート製ブロックがサンゴ礁を押しつぶしている状況を確認した。しかも許可区域外の岩礁破砕に当たる蓋然(がいぜん)性が高いとなれば、知事権限を行使するのは当然のことといえる。
 審査請求に対し、農相は防衛局と県から意見を聞いた上で採決する。数カ月かかりそうだが、請求を容認すれば県は採決無効を求め提訴する構えだ。法廷闘争になれば沖縄と国の相互不信は一段と深刻化する。
 谷垣禎一自民党幹事長は「前知事と違うことを言うのは、どういう根拠があるのか」と言い、いまだ実現していない首相との会談にも言及、「自分の主張だけをぶつけるなら、会う意味がない」と述べた。
 これはおかしな話だ。知事が就任以来7回も上京しながら、首相や官房長官にも会えないのは、辺野古移設に反対する知事への拒絶であろう。沖縄振興予算さえ減額するほどだ。
 今回の行政不服審査法に基づく防衛局の対抗措置は異例である。本来、申し立ては国民の権利保護が目的であり、国が利用するのは趣旨に沿わないとの専門家の厳しい指摘もある。
 4月に訪米する首相は首脳会談で辺野古移設を確認し、強固な同盟関係をアピールする方針だ。県の主張を一蹴して米国追従に走る政府は夏ごろの着工目指し調査作業を着々進める。
 しかし「移設反対」の民意は名護市長選、昨年12月の衆院選でも明確に示された。これを無視する政府の政策に県民の憤りは強い。戦後70年。基地に苦しみ続ける沖縄に、安倍首相の「寄り添う」という言葉が空々しく聞こえる。



山陰中央新報 '15/03/29
論説 : 普天間移設問題/対話の扉を開くべきだ


 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐり、政府と沖縄県の対立が深まっている。翁長雄志知事はサンゴ礁の損傷などを理由に、辺野古沿岸部での海底ボーリング調査などを停止するよう指示したが、沖縄防衛局は作業を継続。対抗措置として農林水産省に指示の執行停止と取り消しを求める手続きを取った。
 政府は「指示は違法性が重大かつ明白で無効」として譲らず、法廷闘争も辞さない構えだ。そうなれば両者の相互不信は拭い難いものになる。安倍晋三首相や菅義偉官房長官が翁長氏に会い、対話の扉を開くことが必要だ。沖縄の民意を顧みずに強気一辺倒で突き進むなら、その先には、さらなる対立と混乱しかない。
 防衛局に指示を出した際、翁長氏は作業停止の期限を今月末に設定。「それまでに停止を報告しなければ、岩礁破砕許可を取り消すことがある」と警告した。そうなると海底の岩石を砕いたり、土砂を採取したりする作業はできなくなるため、国は農相による翁長氏の指示の執行停止を決定するとみられる。
 このため作業停止措置の正当性を主張する意見書を農相に提出した県が、さらなる対抗策として作業中止の仮処分申し立てなどを模索することも予想される。ただ、政府関係者は「訴訟になっても、100パーセント負けることはない」と話している。
 焦点になっている岩礁破砕許可は、辺野古移設に向け沖縄防衛局が仲井真弘多前知事に申請、昨年8月に認められた。県の指示に従うことや、申請外の行為をした場合には許可を取り消すことがある―などが条件。県の埋め立て承認と並んで、移設作業には不可欠だ。政府は翁長氏による許可取り消しの警告に不快感をあらわにし「行政には継続性がある」と強調している。
 しかし翁長氏は昨年11月の知事選で「辺野古移設阻止」を公約に掲げ、移設推進派の仲井真氏を破って当選した。防衛局がボーリング調査のために沈めた大型コンクリート製ブロックがサンゴ礁を押しつぶしている状況を確認。それが許可区域外の岩礁破砕に当たる蓋然(がいぜん)性が高いとして、知事権限を行使し、沖縄の立場を訴えたと言える。
 これに対し、政府は「ブロック設置は地殻そのものを変化させる行為ではなく、岩礁破砕に当たらない」と主張。自民党の谷垣禎一幹事長は「前知事と違うことを言うのは、どういう根拠があるのか」とし、首相との会談が実現していないことも「自分の主張だけをぶつけるなら、会う意味がない」と述べた。
 ただ翁長氏が就任以来7回も上京しながら、首相や官房長官にいまだに会えないのは異常と言えるだろう。知事選ばかりか名護市長選や衆院選の沖縄4小選挙区全てでも、はっきりと示された「辺野古移設反対」の民意に耳を傾けたくないように見られても仕方ない。
 首相は4月の訪米時にオバマ大統領との会談で辺野古移設を確認し、強固な同盟関係をアピールしたいという。だが、このまま沖縄の民意を無視して辺野古移設にこぎつけたとしても、基地を取り巻く住民らの不信や怒りはくすぶり続ける。それが「島ぐるみ闘争」のような形で爆発するようなことになれば、同盟が根底から揺らぎかねない。



徳島新聞 2015年3月28日付
社説:辺野古移設で対立 政府は沖縄の声を聞け


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐり、政府と沖縄県の争いが全面対決の様相になってきた。
 翁長雄志知事が、辺野古沿岸部での海底ボーリング調査を停止するよう指示したのに対し、政府は無視して作業を続けている。
 双方は法廷闘争も辞さない構えだ。このままでは対立が決定的になり、修復できなくなる恐れがある。
 ここまで事態が悪化した原因は、沖縄の声を聞かず、強引な手法をとってきた政府の側にあろう。政府は作業を中止し、県との話し合いを始めるべきだ。
 翁長知事は、指示から7日以内に作業を停止しなければ、海底の岩石採掘などの岩礁破砕に関する許可を取り消すと警告している。作業停止の期限は今月30日である。
 知事が停止を指示したのは、防衛省がボーリング調査のため投入した大型コンクリート製ブロックが、岩礁破砕の許可区域外でサンゴ礁を傷つけている可能性が高く、作業を止めて県が調査する必要があると判断したためだ。
 県は、岩礁破砕許可が取り消されれば、防衛省はボーリング調査を続行できなくなると主張している。
 これに対して防衛省は、県の破砕許可は不要と反論。対抗措置として、行政不服審査法に基づき、指示の執行停止を求める申立書などを林芳正農相に提出した。
 菅義偉官房長官は「翁長氏の指示は違法性が重大かつ明白で無効だ」と批判する。
 だが、県の潜水調査では、1カ所でサンゴ礁の損傷が確認されている。他の地点も確かめ、問題があれば是正させたいというのは県として当然ではないか。
 防衛省は昨年8月にボーリング調査を始め、翌9月に中断した後、今月再開した。
 翁長知事は、前知事による埋め立て承認の是非を検証する有識者委員会を1月に設置し、検証が終わるまで調査を再開しないよう求めていた。
 それを一顧だにせず、抗議する人たちを力で排除しての強行だった。乱暴なやり方に「これが民主主義なのか」と県民から怒りの声が上がったのはもっともだろう。
 菅官房長官は「わが国は法治国家だ」「法令に基づき、粛々と工事を進める」としている。
 しかし、前知事が公約に背いて踏み切った辺野古の埋め立て承認は、昨年11月の知事選で大敗を喫したことで県民からノーを突き付けられた。
 昨年の名護市長選と衆院選でも、移設賛成派は完敗した。沖縄の民意は明確に示されている。それを無視して進めることが正当な方法といえるだろうか。
 翁長知事は就任後、安倍晋三首相と菅官房長官に一度も会えていない。
 安倍首相はきのうの参院予算委員会で「国と地元がさまざまな取り組みについて連携を深めていく中で、翁長氏との対話の機会も設けられると考えている」と述べた。
 首相は中韓両国首脳との会談開催をめぐり、前提条件を付けるべきではないとし、対話のドアは常にオープンだと強調している。
 その姿勢を沖縄に対しても貫いてもらいたい。地元の理解と協力を得ようとするなら、まずは県民の声に耳を傾けるべきである。



=2015/04/01付 西日本新聞朝刊=
社説:辺野古問題 政府は説得を放棄するな


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設作業をめぐって、政府と沖縄県が互いに複雑な行政措置を応酬し、対立を一段と深刻化させている。
 林芳正農相は今週初め、沖縄防衛局が進める辺野古沿岸部の埋め立て関連作業について、翁長雄志(おながたけし)知事が出した作業停止指示の効力を一時的に停止すると決定した。
 簡単に言えば、翁長知事が政府による埋め立て関連作業の「ストップ」を指示したのに対し、政府の一員である農相が「当面はストップさせない」と判断し「ゴー」の許可を与えたということだ。
 農相が知事の指示を否定したのは、「移設作業が大幅に遅れれば、日米両国間の信頼関係に悪影響を与え、外交・防衛上の重大な損害が生じる」などとする防衛局の言い分を認めたからだ。
 翁長知事はこの決定を不服として、移設阻止に向けた対抗措置の本格検討を始めた。埋め立ての前提となる岩礁破砕許可の取り消しや、前知事が出した埋め立て承認の取り消しも視野に入れている。
 ただ、今回の農相決定によって、防衛局は移設関連作業を当面、継続できることになった。政府は移設着手を既成事実化することで沖縄の抵抗を弱めようと考えているようだ。また、4月末に予定される日米首脳会談に向け、普天間飛行場移設の順調な進展をアピールしたい思惑もあるのだろう。
 しかし、政治日程を優先するあまり、政府は沖縄を説得する努力を放棄してはいないか。
 安倍晋三首相は参院予算委員会で「機会があれば、官邸として意思疎通を図っていきたい。信頼関係を構築したい」と語った。首相が本気なら「機会があれば」などと言わず、早速沖縄に出向いて知事を説得してはどうだろうか。
 政府が沖縄の民意を無視したまま移設を進めても、政府や米軍に対する県民の反感が増すだけだ。県民感情が極度に悪化すれば、日米安保体制はかえって不安定になる。泥沼化の危険性を理解するなら、政府の取るべき姿勢は「対立」でなく「対話」であるはずだ。



熊本日日新聞2015年04月02日
社説:辺野古移設 政府は民意に耳を傾けよ


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐり、翁長雄志[おながたけし]知事がサンゴ礁の損傷などを理由に海底作業を停止するよう沖縄防衛局に指示した問題で、林芳正農相は、知事の指示の効力を一時的に停止することを決めた。
 農相は今後、指示そのものを取り消すかどうかを審査する。農相が取り消しを裁決した場合、県はその無効を求める仮処分を那覇地裁に申し立てる方針で、前知事による辺野古埋め立て承認を取り消すことも視野に入れる。
 ただ、農相の裁決には期限が設けられていない。政府は夏ごろには辺野古の埋め立てに着工したい意向だ。政府関係者は「県の言い分は法的に無効で訴訟になっても100%負けることはない」と断言。安倍晋三政権は必要な作業を「粛々と続ける」としている。
 しかし、法廷闘争となれば、国と県の溝は一層深まる。国は沖縄の民意を黙殺してはならない。菅義偉官房長官は、4日に予定される米軍キャンプ瑞慶覧[ずけらん]の西普天間住宅地区返還式典に合わせて沖縄県を訪問し、翁長知事と会談する意向を固めた。対話による事態打開を期待したい。
 翁長知事は昨年11月の知事選で「辺野古移設阻止」を掲げ、推進派だった前知事を破って初当選。今回、防衛局が沈めた大型コンクリート製ブロックによるサンゴ礁の損傷を理由に、ボーリング調査などの停止指示を出した。
 これに対し、防衛局は「外交・防衛に損害」として行政不服審査法に基づき、水産資源保護を担当する農相へ審査請求。裁決が出るまで緊急的に指示を無効とする執行停止も申し立てた。指示の一時的停止はこれを受けたものだ。
 しかし審査請求は本来、国民の権利救済を目的に、行政庁の処分取り消しなどを求める制度だ。地方自治体を相手に国(防衛局)が申し立て、農水省が審査する「逆用」ともいえる手法には疑問が残る。翁長知事も決定に対し、「審査が公平公正に行われたかどうか理解できない」と述べている。
 安倍政権が基地移設の根拠としているのは前知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認だが、それが民意を反映した結果でなかったことは知事選が証明した。名護市長選や衆院選の沖縄4小選挙区でも「辺野古移設反対」の意志ははっきりと示された。
 国は国益や法を振りかざすばかりでなく、この現実と真正面から向き合うべきだ。翁長知事は就任以来7回も上京しながら安倍首相や菅官房長官には会えない異常事態が続いた。政府が民意から逃げているようにも見える。
 政府内には「(安全保障政策という)知事の権限でない議論に踏み込むのは生産的ではない」という声もある。しかし、国と地方は本来、対等だ。日米関係ばかりを重視し、なし崩し的に移設作業を進めれば、基地を取り巻く不信や怒りはますます募る。今必要なのは、沖縄の基地負担軽減に向けた誠意ある話し合いだ。



南日本新聞 (2015/ 4/1 付 )
社説: [辺野古作業] ミゾが深まるばかりだ


 両者のミゾが深まるばかりだ。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐる翁長雄志知事と安倍政権との対立は、裁判にもつれ込む雲行きとなった。
 安全保障政策をめぐって県と国が法廷で争うのは、異常な事態と言わざるを得ない。
 問題がこじれた主因は安倍政権の強引さにある。「沖縄の方々の気持ちに寄り添う」と本気で思うなら、反対の声とも丁寧に向きあうべきではないか。
 翁長氏が沖縄防衛局に出した作業停止指示について、林芳正農相はその効力を一時的に停止すると発表した。
 防衛局が行政不服審査法に基づき、知事の指示の無効を求めていた。主張が認められたことで、防衛局は沿岸部の埋め立てに向けた海底ボーリング調査を続ける。
 それで済むはずもない。翁長氏は「国が申し立て、農林水産省が審査する」ことに疑問を呈した。審査が公平公正だったか、という根本的な疑問だ。
 行政不服審査法は公権力の行使に対して、国民に不服申し立てを認めることで、国民の救済を図ることを目的とする。
 安倍晋三首相は「沖縄防衛局が農相に対し審査請求を行うことは可能」と国会で答弁し、問題はないとの認識を示した。
 法の趣旨からすれば、あべこべの認識ではなかろうか。公権力の審査請求が法的に可能としても、違和感は拭えない。
 請求に対する審査結果(裁決)は4月下旬以降とみられる。ここでも防衛局の主張が認められ、知事の指示は正式に取り消される可能性が高そうだ。
 翁長氏は防衛局に作業停止を指示した際、「腹は決めている」と強調した。
 知事周辺では取り消し無効を求める仮処分の申し立てや、埋め立てに使う県外の土砂搬入を規制する条例案の作成など、次の一手を検討する動きが出ている。
 政府も裁決後は「司法の戦い」となる展開を想定する。対決は長期戦になりそうだ。
 法廷闘争には前例がある。米軍用地の強制使用に必要な代理署名を拒否した大田昌秀知事(当時)を政府が提訴し、1996年に最高裁で国側勝訴が確定した。
 だが、それで沖縄の基地問題が解決したわけではない。法的に正しいと謙虚さを欠くことが、在るべき政治ではないはずだ。
 首相は訪米を控え、普天間移設を着実に進める必要に迫られている。だからといって、沖縄の痛みから目をそらしてはならない。

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