2015-04-20(Mon)

高浜原発差し止め 再稼働認めず (2) 150414

安全神話に警鐘鳴らした 2度のノーかみしめよ 新規制基準への疑義は重い 安全審査の正当性揺らぐ

<各紙社説・論説>
新潟日報)再稼働差し止め 安全神話に警鐘鳴らした(4/15)
信濃毎日新聞)原発再稼働 2度のノーかみしめよ(4/15)
福井新聞)高浜原発再稼働認めず 重い警告どう受け止める(4/15)
京都新聞)高浜差し止め  新規制基準への疑義は重い(4/15)
神戸新聞)高浜差し止め/安全審査の正当性揺らぐ(4/15)
山陰中央新報)再稼働差し止め仮処分/多くの課題を示す判断だ(4/15)
中国新聞)高浜再稼働「差し止め」 新規制基準が問われる(4/15)
山陽新聞)再稼働差し止め 原発の安全性に重い警告(4/15)




以下引用



新潟日報 2015/04/15
社説:再稼働差し止め 安全神話に警鐘鳴らした


 東京電力福島第1原発事故が収束していないのに、再び「安全神話」にすがり、再稼働を進めようとしている政府と電力会社への警鐘といえよう。
 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の安全対策に問題があるとして周辺の住民らが再稼働差し止めを求めた仮処分申請で、福井地裁の樋口英明裁判長は再稼働を認めない決定をした。
 仮処分で原発の運転を禁止するのは初めてのことだ。関電は不服を申し立てる見通しだが、主張が通らなければ11月に想定する再稼働は不可能になる。
 樋口裁判長は昨年5月の関電大飯原発3、4号機(福井県おおい町)をめぐる訴訟でも、地震対策の構造的欠陥を理由に再稼働を認めない判決を言い渡しており、再び厳しい判断を示した形だ。
 高浜3、4号機は、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使う「プルサーマル」を前提としている。
 今年2月、九州電力川内1、2号機(鹿児島県)に続き、原子力規制委員会の審査に合格した。
 仮処分決定の理由として樋口裁判長は、福島事故後に定めた規制委の新規制基準について「合理性を欠く」とし、適合しても安全性は確保されていないと断じた。
 規制委の審査を根本から否定したといえる。
 さらに想定を超える地震が起きれば「250キロ圏内の住民に、人格権が侵害される具体的な危険がある」と指摘した。
 そもそも問題点は少なくない。規制委は高浜3、4号機で同時に事故が起きても対応できることを確認したとしているものの、1、2号機の原子炉に燃料がなく、停止していることが前提だ。
 高浜原発のある若狭湾沿いには原発が全国最多の14基あるが、複数にまたがって事故が起きた場合どうなるかといった集中立地の問題は考慮されていない。
 避難計画の実効性も疑問視されている。福島事故の教訓から、3府県にまたがる30キロ圏の全自治体を再稼働の同意対象に加えるべきだとの声は強い。多くの問題を積み残したままなのが実情である。
 政府は原発を「ベースロード電源」と位置づけ、2030年の電源比率で割合を18~19%とする方向で検討している。
 2割を切ることで、原発に批判的な世論への配慮をにじませているようにも見える。
 だが、この数字は再稼働だけにとどまらず、新規制基準で定めた40年を超えて運転するか、建て替えや新増設をして初めて達成可能となるものだ。
 核燃料サイクルや放射性廃棄物の最終処分といった重要な問題も事実上、先送りとなったままだ。
 今回の仮処分決定は、経済を最優先するあまり、原発回帰路線へと前のめりになっている政府のこうした姿勢にも、疑問を呈したといえよう。
 政府は再稼働方針に変更はないとしているが、福島事故がもたらしたものに正面から向き合い、仮処分決定の重みを厳粛に受け止めるべきだ。



信濃毎日新聞 2015年04月15日(水)
社説:原発再稼働 2度のノーかみしめよ


 福井地裁が福井県民らの仮処分の申し立てを認め、関西電力に高浜原発3、4号機の運転差し止めを命じる決定を出した。
 地裁は昨年5月の訴訟の判決でも、大飯原発3、4号機の運転を再開しないよう関電に命じている。原発がはらむ危険性と安全策の不備を2度にわたって認定したことになる。
 一連の判断は、脱原発を求める多くの国民の思いを代弁している。同時に、ルールを曖昧にしたまま再稼働を進める政府の無責任な姿勢を浮かび上がらせる。
 安倍晋三政権や関電をはじめとする電力各社は、司法判断を重く受け止め、これからのエネルギー政策、事業計画のあり方を見直さなければならない。
 仮処分をめぐって住民側は、耐震設計の目安となる揺れ「基準地震動」を超える地震などで、過酷事故に陥る危険があると訴えた。関電は、十分に安全性が確保できていると主張した。
 樋口英明裁判長は、基準地震動を超える場合だけでなく、基準を下回る地震であっても、施設が破損し、炉心損傷に至る危険があると認定した。さらに「原発の新規制基準は緩やかに過ぎ、合理性を欠く。適合しても安全性は確保されない」と踏み込んでいる。
 新規制基準を世界最高水準だとうたい、「適合した原発は再稼働する」と繰り返す政府に一石を投じている。原子力規制委員会は高浜3、4号機の新基準への適合を確認したが、田中俊一委員長自身が「(適合)イコール事故ゼロではない」とくぎを刺している。
 問題なのは政府の対応だ。高浜原発の半径30キロ圏には、京都府の7市町と滋賀県高島市も含まれるのに、再稼働の同意を得る範囲について判断を示さず、地元に丸投げしている。住民の避難計画の実効性も疑わしいままだ。
 福井県には高浜、大飯を含め14基の原発が集中し、電力会社は10基の再稼働を目指している。周辺住民との溝を埋めず、なし崩しに動かすことは許されない。
 住民と自治体、国、電力会社で原発の問題点や地域のエネルギー構想を話し合う場を設けてはどうか。立地自治体の経済は原発への依存度が高い。これに代わる振興策にも知恵を集めたい。
 樋口裁判長は大飯原発の判決でこう述べていた。「多数の人の生存そのものに関わる権利と、電気代の高い低いという問題を並べて論じ、当否を判断すること自体、許されない」。政府や電力会社に欠けている大事な観点だ。



福井新聞(2015年4月15日午前7時30分)
論説:高浜原発再稼働認めず 重い警告どう受け止める


 関西電力高浜原発3、4号機の安全対策は不十分として本県の住民らが再稼働差し止めを申し立てた仮処分で、福井地裁の樋口英明裁判長は再稼働を認めない決定を下した。同裁判長は昨年5月にも住民側の言い分を全面的に認め、大飯3、4号機の差し止めを命じる判決を言い渡している。今回も予想された結果だ。
 決定が即効性を持つ仮処分で原発の運転を禁止する決定は例がない。11月再稼働を見込んでいた関電は「到底承服できない」として地裁に異議と執行停止の申し立てを行う予定。政府は「粛々と進める」と静観するが、エネルギー政策や全国の原発差し止め訴訟にも影響を与えるだろう。
 政府は原発を「重要なベースロード電源」と位置づける。「世界で最も厳しい」と強調する原子力規制委員会の審査に合格すれば再稼働へ動くことになる。今回はその新規制基準をも一蹴、「緩やかすぎ安全性の合理性を欠く」と断じ、基準に適合しても再稼働を認めない決定をした。
 樋口裁判長は、関電が想定する耐震設計の目安となる基準地震動に関し「信頼に値する根拠は見いだせない」「楽観的」と指摘。全国の原発で2005年以降だけでも、想定外の地震が5回起きているとして「基準地震動を超える地震が到来すれば、炉心損傷する危険がある」と住民側の主張をそのまま認めた。
 関電側は「多重防護の考え方に基づく対策を講じ、安全性は確保されている」と反論してきたが、決定は万が一でも災害を引き起こさない基準を求め、施設の不備を指摘している。
 再稼働した場合「250キロ圏内の住民に、人格権が侵害される具体的な危険がある」との結論は、大飯原発訴訟と同様の導き方だ。このことは「ゼロリスク」に程遠い地震国日本における原発そのものの存在を全否定するに等しい。
 東京電力福島第1原発事故から4年たっても原因究明ができず、本県含め住民避難態勢にも課題が多い。経済性より憲法が保障する「人格権」を明確に位置付けた二つの判決・決定は、再稼働に前のめりな国に「待った」をかけた。国は国民の不安をどう払拭(ふっしょく)するのか。司法の重い警告である。
 だが現実的課題も横たわる。高浜3、4号機は今年2月、新規制基準の適合性審査に合格し、高浜町会がいち早く再稼働に同意。町長や知事の判断待ちだ。
 国策民営の原発判断が行政と司法で相反すれば、住民を抱える立地自治体は「股裂き状態」となり、困難な状況になりかねない。脱原発の世論は勢いを増し、原発から一部が30キロ圏内に入る京都府や滋賀県の「同意」判断も一層難しくなる。
 原発の安全性に関しては科学的、技術的見地による客観性の高い判断が求められてきた。過去の裁判では高度な専門性を理由に原発の危険性について科学的判断に踏み込まず、事実上、行政裁量に任せてきた。
 樋口裁判長は大飯原発訴訟で「学術的論議を繰り返すと何年たっても終わらない」と指摘したように早期判断に導いた。今後、上級審で一体誰がどのように判断していくのか、司法全体の責任は一段と重くなる。



[京都新聞 2015年04月15日掲載]
社説:高浜差し止め  新規制基準への疑義は重い


 原発の安全性に対する国民の不安が払拭されない中、再稼働を急ぐ電力会社と政府に、司法が強く「待った」をかけた。
 福井地裁は、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の運転を認めない仮処分を決定した。樋口英明裁判長は「(原子力規制委員会の)新規制基準に適合していても安全性は確保されていない」と断じた。
 仮処分で原発の運転を禁止するのは全国初で、仮処分は即時効力を持つ。関電は不服を申し立てる方針を表明したが、認められない限り再稼働はできなくなった。
 決定は福島第1原発事故の深刻さに鑑み、国民の安全は何よりも優先されるべきとし、原発には極めて厳格な安全対策が求められるという明快な判断だ。矢継ぎ早に進む再稼働に対する多くの国民の不安に応え、安全性判断に踏み込んで歯止めをかけた意義は大きく、画期的な決定と言える。
 高浜原発の2基は今年2月、九州電力川内原発(鹿児島県)に続き新規制基準に合格。関電は11月の再稼働を目指して地元同意手続きを進めている。政府は「世界一厳しい」基準とし、適合すれば安全性が確認されたとして順次再稼働させる方針を示してきたが、今回決定が「新規制基準は合理性を欠く」と否定した意味は重い。
 電力会社と政府は、7月の再稼働を目指して最終手続きを進める川内原発をはじめ、新規制基準の妥当性と他の原発の再稼働計画を再検討することが求められよう。
問われた人格権
 仮処分は昨年12月、再稼働が差し迫っているとして周辺住民らが申し立てた。争点となったのは重大な事故が発生する可能性だ。
 住民らは、関電が想定する基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)を超える地震により、放射性物質が飛散する過酷事故に陥る可能性があると主張し、人格権が侵害されると訴えた。これに関電側は「十分な安全対策を講じている」と反論していた。
 決定は、関電の地震想定は過去の地震の平均値から算出しており、基準を超える地震動が理論的にも経験上も起き得るとして「信頼に値する根拠が見いだせない」と指摘。基準未満の揺れでも耐震性不足から外部電源や主給水が絶たれる恐れがあり、「冷却機能喪失による炉心損傷に至る危険が認められる」とした。
 住民側の主張を認めた形で、再稼働した場合「250キロ圏内の住民に、人格権が侵害される具体的な危険性がある」と認定した。
 樋口裁判長は昨年5月にも福井地裁で、関電大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じる判決を下しており、控訴審が係争中。一方、大津地裁は昨年11月、京滋の住民らが求めた高浜、大飯両原発の計4基の再稼働差し止めの仮処分を「規制委が早急に再稼働を容認するとは考えがたい」と却下しており、判断が分かれた。
リスク「ゼロ」要求
 今回の福井地裁の決定で特に注目されるのは、高浜3、4号機が審査に適合した新規制基準そのもののに疑問を投げかけたことだ。
 基準地震動の想定や外部電源、使用済み核燃料プールの耐震性の不十分さについて規制の対象にしていないことを問題視。規制基準は「深刻な災害を引き起こす恐れが万が一にもないといえるような厳格な内容を備える」ことがなければならないとした。
 専門性の高い規制委の判断は、尊重されるべきだ。だが、規制委の田中俊一委員長は高浜原発について、「稼働に必要な条件を満たしているかどうかを審査した。イコール事故ゼロではない」と説明してきたことを忘れてはならない。
 司法の指摘は、限りなく事故のリスクを「ゼロ」にすることを求めたものだ。いまだに福島事故の収束や原因究明のめどが立たず、故郷に戻れない住民が多い中、万一の事故でも取り返しがつかないという大原則をあらためて提示したと言えよう。
懸念解消の努力を
 関電側は決定への異議と執行停止を求める一方、再稼働に向け「手続き自体は進んでいく」としている。だが決定は、関電の安全対策に対し「楽観的見通し」「多重防護の意義から外れる」と姿勢を疑問視している。
 関電は火力燃料費増による赤字経営の改善を掲げ、電力料金の値上げ申請でも再稼働の必要性をアピールしているが、利用者の公聴会では原発ありきの姿勢が強い批判を受けている。安全性への懸念に真摯(しんし)に耳を傾け、これを解消しない限り幅広い理解は得られないだろう。
 仮処分決定に対し、菅義偉官房長官は「再稼働の方針に変わりない」「粛々と進める」と強調した。福島事故を教訓に地震対策などを強化したと説明してきた新規制基準自体の正当性が揺らぐ中では、説得力を欠かざるを得ない。
 政府が安定的なベースロード電源とする原発の再稼働に司法が突き付けた判断は、将来の電源構成比率の議論にも影響を与える可能性がある。国民も注視しており、司法からの警告を軽視すべきではない。



神戸新聞 2015/04/15
社説:高浜差し止め/安全審査の正当性揺らぐ


 「原発を再稼働してはならない」とする司法判断がまた示された。
 周辺住民らが関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の再稼働差し止めを申し立てた仮処分で、福井地裁が決定した。決定に効力があり、関電が不服を申し立て、主張が認められなければ再稼働できない。
 原子力規制委員会は2月、高浜の2基は新規制基準に適合しているとする審査書を決めた。関電は、地元同意手続きを経て年内にも再稼働の方針と伝えられるが、大幅な見直しを迫られる可能性が高い。
 昨年5月の大飯原発3、4号機の運転差し止め判決に続き、司法が地震対策の甘さを指摘したことを重く受け止めねばならない。
 政府は、規制委の安全審査で合格した原発は再稼働させると明言している。だが、地裁の決定は新規制基準に適合しても安全性は確保されていないと批判した。規制委の審査に「合理性がない」としたことは、再稼働に向けた手続きの正当性を疑わせるもので、極めて重大だ。
 昨年の判決は2005年以降、全国の原発で5回、想定の地震動を超える地震があったことを挙げ、地震大国日本で、基準地震動を超える地震が大飯原発に来ないというのは根拠のない見通しだと指摘した。
 樋口英明裁判長は、高浜原発にも同じ理屈を当てはめた。想定を超える地震が起きれば、やはり炉心損傷の危険があるとした。
 基準地震動を大きく見ると、耐震補強工事にお金がかかり、出費を抑えたい電力会社は数値を低くしておきたがる。地震対策で関電は規制委の指摘をすぐに反映させず、譲歩の材料にしていると、批判されてきた。それがどれほど危ういことか。
 大飯、高浜両原発は立地条件が似ており、沿岸部から内陸にかけて断層が確認されている。敷地内に断層がないからといって油断できない。現在の地震学では予測に限界があるからこそ、最悪を想定して備えなければならない。関電にその自覚と責任感が欠けていないだろうか。
 4年前の原発事故では、250キロ圏の住民に避難勧告の可能性が検討された。それをもとに、運転差し止め判決も今回も250キロ圏内の住民の人格権侵害の恐れを認めた。その場合、兵庫県民も含まれる。
 新規制基準では人格権を十分に守れない。それを示した判決だ。



山陰中央新報 '15/04/15
論説 : 再稼働差し止め仮処分/多くの課題を示す判断だ


 原発再稼働に対して、司法が重大な判断を行った。福井地裁は、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働差し止めを求めて周辺の住民らが申し立てた仮処分を認める決定をした。免震重要棟が設置されていない点などが争点となったが、各原発の再稼働には、なお多くの課題が残っていることを示す結果となった。
 高浜3、4号機は2月、原子力規制委員会による新規制基準の適合性審査に合格し、立地する高浜町議会が再稼働に同意している。仮処分の決定は、原発事故が突きつけた多くの課題に関する議論が不十分にもかかわらず、新たな規制基準をクリアしたことで進めている国の政策に関する重い警告だ。
 東京電力福島第1原発事故から4年余。重大事故の原因究明の努力は道半ばで止まっている状況がある。重大な事故が起こった際の防災、避難態勢には不備があると指摘されており、高浜原発を含めて急速に進む再稼働の動きに、司法が「待った」をかけた形だ。
 原発の周辺住民らはこれまでの審尋の中で「福島での原発事故発生直後の対応に重要な役割を果たした免震重要棟が設置されていない高浜原発は、再稼働させるべきではない」と主張。
 また、耐震設計の目安となる基準地震動を超える地震などによって放射性物質が周辺に飛散する過酷事故に陥る危険性があることなどを指摘した上で、「再稼働の時期が差し迫っている」として仮処分の決定を求めた。
 関西電力は、福島の原発事故を教訓に、十分な地震や津波対策を取ったことを強調し「安全性は確保されている」と却下を求めていた。
 再稼働の動きに対し、同様に「福島の事故の教訓が生かされていない」との立場から司法が「待った」をかけた例としては、昨年5月に同じ福井地裁が関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転差し止めを命じた判決がある。
 だが、関電は判決を不服として控訴した上で、その結論を待つことなく再稼働に向けた作業を進めている。
 今回、住民が通常の訴訟の判決とは異なり、決定が出ればすぐに効力が生じる仮処分命令を求めたのは、こうした関電の動きがあったためで、福井地裁はその住民の主張を認める形で、仮処分命令を出した。
 福島の経験は、原発の過酷事故が起これば、一国の経済に多大な影響を与え、その存続すら危うくしかねない性格のものであること、いったん起こったら、将来の世代にまで多大な悪影響を与えるものであることを教えた。
 再稼働を含めた原発の今後は本来、基準に合致しているかどうかという技術論や、ごく数が限られた立地自治体の議会や首長の議論や判断のみによって決められるべきものではない。より広い市民の広い参加の下、技術論だけでなく、社会や倫理の問題まで視野に入れた奥深い議論の結果、決められるべきものである。
 それは原発のほかに、代替手段がないのかも重要な論点だ。議論には時間がかかる。今回の仮処分決定を機に、しっかりとした議論を積み上げる必要がある。



中国新聞 2015/4/15
社説:高浜再稼働「差し止め」 新規制基準が問われる


 日本の原発政策にまたしても大きな疑問が投げ掛けられた。福井県の関西電力高浜原発3、4号機について、福井地裁がきのう再稼働を認めないという仮処分を決定した。
 差し止めを求めた周辺住民の申し立て通りである。仮処分という手段で、原発の運転を禁止する決定は例がない。すぐに効力を持つ点では裁判とはまた違った意味がある。
 この2基は、2月に再稼働に向けて原子力規制委員会の適合審査を通ったばかりだ。その根拠となった国の新規制基準について「合理性に欠く」と断じたことが、決定の最大のポイントといえるだろう。
 関電は異議と仮処分の執行停止を申し立てる構えだが、主張が認められない限り、決定には従わなければならない。既に立地する高浜町議会の同意を得て目指していた11月の再稼働に影響を与えるのは必至だ。まさしく土壇場で司法が待ったをかけた格好になる。
 今回の決定には、電力会社のみならず原発再稼働を次々と容認する規制委への不信感が色濃くにじんでいよう。
 要約すれば次の通りとなる。高浜の2基は基準地震動、つまり耐震設計の目安となる揺れの根拠が信頼できない。よって想定外の地震によって重大事故を起こし、周辺住民に危険を及ぼす恐れがある。なのに規制委の新規制基準は緩やかすぎて、たとえ適合したとしても安全性は確保されない、と。
 決定を下した樋口英明裁判長は昨年5月の福井地裁判決においても同じ関電の大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じている。今なお高裁で審理中だ。それだけに突出した判断だと見なす向きもあろう。
 焦点の新規制基準にしても、福島第1原発事故の教訓を踏まえて重大事故への対策は強化された。曲がりなりにも再稼働の議論のベースになっている。合理性に欠くというなら、どこが不足でどうあるべきだとの具体論も要る。確かにその点では決定が生煮えの印象もあろう。
 この夏の再稼働へ動きが進む鹿児島県の九州電力川内(せんだい)原発に関しても、住民が差し止めを求めた仮処分申請の可否が22日に言い渡される。政府からすれば一連の動きを様子見しているのかもしれない。しかし安倍政権が「世界一厳しい」と自賛してきた国の基準に対して司法から疑問が突き付けられた以上、黙殺などできないはずだ。
 菅義偉官房長官は記者会見で仮処分は関電が対応する問題として「国は当事者ではない」とも述べた。そもそも人ごとではない。これまで通り「結論ありき」で再稼働に前のめりでいいのかが問われていることを、忘れてほしくはない。
 規制委は新たに再稼働が想定される愛媛県の四国電力伊方原発の審査で既に最終局面に入っている。ここでも基準地震動の扱いが焦点となってきた。四国において大地震の要因となりうる中央構造線のリスクを、どれほど評価するかである。
 裁判所に批判された規制基準で何事もなかったように議論を急ぐなら、逆に住民の不安を招きはしないか。しかも2030年の日本の原発比率をめぐる議論が大詰めだ。今こそ立ち止まり、さまざまに考えるべき機会がやってきたと捉えたい。



山陽新聞(2015年04月15日 08時03分 更新)
社説:再稼働差し止め 原発の安全性に重い警告


 原子力規制委員会の審査に合格した原発に、司法が待ったをかけた。関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の安全対策は不十分だとして、周辺の住民らが再稼働差し止めを申し立てた仮処分で、福井地裁が再稼働を認めない決定をした。原発の運転を禁じる仮処分は全国で初めてである。
 3、4号機は2月に規制委の審査に合格し、11月の再稼働を目指して手続きが進んでいる。関電は「承服できない」と決定に不服を申し立てて争う構えだ。だが、決定はすぐに効力を持つため、今後、福井地裁や次に審理を行う上級審で関電の主張が認められるまで再稼働できない。
 申し立ては、福井県や京都府などの住民らが昨年12月に行っていた。再稼働の時期が迫っているため、時間がかかる通常の訴訟でなく、即効性がある仮処分を選択した。
 樋口英明裁判長は、関電が想定している基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)は「信頼に値する根拠が見いだせない」とした。炉心損傷の危険を訴えた住民の主張を認め、再稼働した場合は「250キロ圏内の住民に、人格権が侵害される具体的な危険がある」と判断した。
 樋口裁判長は昨年5月、関電大飯原発3、4号機(福井県おおい町)運転差し止め訴訟でも再稼働を認めなかった。原発は、個人の生命や平穏な生活を保障する憲法上の人格権より劣位に置かれるべきだとした。
 そもそも高浜原発3、4号機は手続き上でも課題を残していた。京都府と滋賀県は一部が避難計画策定が必要な半径30キロ圏内(緊急防護措置区域)に含まれている。このため、立地県と同様に再稼働に関する同意権を与えるよう求めていた。
 だが、関電は両府県に地元同意権を認めていない。ひとたび事故が起きれば、広範囲に被害が及ぶ原発の「地元」をより広くとらえるべきだという声に応じなかった。
 そこへ下された今回の決定である。関電がなおも再稼働を求めるのなら、周辺自治体への配慮と安全性の厳格な再検証は欠かせまい。
 今回の決定は、国のエネルギー政策にも影響を及ぼそう。政府は原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、2030年度に電源構成比率で2割弱とする方向で議論している。5月に正式決定する見通しだ。
 構成比率は、福島の原発事故後につくった新規制基準をクリアした原発を順次再稼働させることが前提となっている。「新規制基準は合理性を欠く」とした今回の決定をどう踏まえるのか。課題を突き付けられたといえよう。
 原発のリスクに対する国民の不安は拭えていない。再稼働に前のめりな政府や電力会社の姿勢に疑問を持つ人も少なくない。そうした懸念を、国や事業者は真摯(しんし)に受け止めるべきである。

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