2015-05-17(Sun)

戦争法案 閣議決定 国会提出 (2)戦争に道を開く転換点

平和主義を捨て去るのか 「不戦」の誓いが守れるのか 日米同盟偏重に懸念拭えず 「平和法案」本質見極めよ

<各紙社説>
北海道新聞)新安保法制 周辺事態法改正 危うい米軍との一体化(5/17)
北海道新聞)新安保法制 集団的自衛権 専守防衛を踏み外すな(5/16)
北海道新聞)安保法案の閣議決定 平和主義を捨て去るのか(5/15)
河北新報)安保法制閣議決定/日米同盟偏重に懸念拭えず(5/15)
信濃毎日新聞)安保をただす 法案提出 国会の意義が問われる(5/16)
信濃毎日新聞)安保をただす 法案閣議決定 戦争に道を開く転換点(5/15)
京都新聞)安保法案国会へ  十把一からげは乱暴だ(5/16)
京都新聞)安全保障法制  国会は根本から議論し直せ(5/14)
神戸新聞)安保法案国会へ/懸念の声に応える論戦を(5/16)
神戸新聞)安保法案閣議決定/「不戦」の誓いが守れるのか(5/15)
中国新聞)安保法制閣議決定 これで国会を通すのか(5/15)
西日本新聞)安保法案閣議決定 「平和法案」本質見極めよ(5/15)




以下引用



北海道新聞 2015/05/17 08:55
社説:新安保法制 周辺事態法改正 危うい米軍との一体化


 日米両政府は4月に改定した防衛協力指針(ガイドライン)で「地球規模の日米協力」をうたった。
 その法的な裏付けになるのが、周辺事態法の改正である。
 1999年に成立した同法は、朝鮮半島有事を想定し、日本周辺に限って米軍の後方支援をする仕組みを定めている。
 改正案は、法律の名称を「重要影響事態法」と変えて地理的制約を取り払い、世界各地で米軍などへの支援を可能とする内容だ。
 派遣要件は甘く、自衛隊の海外活動が無制限に広がって世界各地の武力紛争に巻き込まれる可能性が高い。極めて危険な改正だと言わざるを得ない。
 ガイドライン改定の狙いは、厳しい財政事情を背景にした世界規模の米軍再編の一環として、自衛隊が米軍任務の一部を肩代わりすることにあった。
 そのためには、日本周辺に限定されている後方支援の範囲を地球規模に広げる必要がある。周辺事態法改正の狙いはそこにある。
 重要影響事態の定義は「わが国の平和および安全に重要な影響を与える事態」と曖昧だ。
 自衛隊派遣には国連決議を必要とせず、国会手続きも緊急時の事後承認を認めている。時の政権の判断次第でいつでも派遣が可能であり、歯止めはないに等しい。
 政府は重要影響事態の具体的ケースを示していないが、例えば南シナ海では中国が岩礁を埋め立て、フィリピンやベトナムなどとの領有権争いが激化している。
 南シナ海は日本が中東から原油などを輸入する際の海上交通路(シーレーン)上に位置する。
 中国と周辺諸国による武力紛争が起きれば、政府が「日本の平和に重要な影響を与える」として米軍などの後方支援に自衛隊を派遣する可能性は否定できない。そうなれば日中対立は決定的になる。
 法案では「現に戦闘を行っている現場」以外ならどこでも活動できるとし、弾薬提供や発進準備中の戦闘機への給油など軍事色の強い任務も解禁する。自衛隊が報復攻撃にさらされる恐れが強い。
 安保環境の変化に応じ、米国との防衛協力を見直すことは必要だろう。だがそれは「他国の武力行使との一体化」を禁じた憲法や、日本と極東の平和維持を目的とする日米安保条約の枠内で行うのが当然である。
 それを逸脱した対米協力を認めることはできない。



北海道新聞 2015/05/16 08:55
社説:新安保法制 集団的自衛権 専守防衛を踏み外すな


 政府は新たな安全保障関連法案をきのう、国会に提出した。
 計11本に上る関連法案の多くは憲法の平和主義をないがしろにしかねない重大な問題をはらんでいる。安倍晋三政権が進める安保法制整備にあらためて強く反対する。
 中でも問題なのは、集団的自衛権の行使を可能にする武力攻撃事態法改正案である。
 集団的自衛権は、密接な関係にある国が攻撃された場合、自国が直接攻撃されていなくても反撃する権利だ。
 歴代政権は憲法解釈上、行使できないとしてきたが、安倍政権は昨年7月、解釈を変更して行使容認を閣議決定した。
 戦後日本の安保政策の大原則である専守防衛を逸脱し、日本が攻撃されていなくても自衛隊が海外で武力行使できるようにする法案である。決して容認できない。
 法案の内容以前にまず問わなければならないのは、昨年7月の閣議決定の是非である。
 安倍政権が憲法解釈変更の根拠としたのは1972年の政府見解だ。憲法は「自国の存立を全うするために必要な自衛の措置を禁じていない」として個別的自衛権の行使を認める一方、集団的自衛権については「行使は憲法上許されない」と明記している。
 閣議決定はこの見解のうち「必要な自衛の措置を禁じていない」などの部分をつまみ食いし、結論だけをまったく逆に置き換えた。
 法案の成立は、政府によるこのような乱暴な解釈改憲を国会が追認することを意味する。それは立法府として自殺行為に等しい。
 集団的自衛権の行使要件は「国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」「他に適当な手段がない」「必要最小限度の実力行使」の三つである。
 どのような場合が「明白な危険」かは曖昧で拡大解釈の余地が大きい。国会の事前承認も「原則」にとどまる。米国に要請されるまま、自衛隊の海外での武力行使がなし崩しに拡大する恐れは強い。
 戦後日本は、専守防衛に徹することで国際社会から信用を勝ち得、それは経済的な繁栄の基礎にもなった。自衛隊は創設以来、戦闘で1人の死者も出していない。
 日本が引き続き平和国家の道を歩むのか、戦争できる「普通の国」に変わるのか。この法案の成否は今後の国のあり方に直結する。歴史の検証に堪える緻密で十分な審議が不可欠だ。



北海道新聞 2015/05/15 08:50
社説:安保法案閣議決定 平和主義を捨て去るのか


 憲法の平和主義を踏み外すものだと言わざるを得ない。
 安倍晋三政権は新たな安全保障関連法案を閣議決定し、きょう国会に提出する。
 歴代内閣が憲法上、許されないとしてきた集団的自衛権の行使に道を開き、他国軍への後方支援を地球規模に広げることが柱だ。
 海外での武力行使を禁じた憲法9条を踏まえ、専守防衛に徹してきた戦後の安保政策は根底から覆され、わが国が戦争に巻き込まれる可能性は格段に高まる。
 政府・与党は今国会の会期を夏まで延長し、成立を図る構えだ。
 事実上、改憲に等しい重大法案を、数の力で強引に押し通すようなことがあってはならない。
 安保政策と密接に関わる日本のあるべき国のかたちから各法案の細部に至るまで、徹底的な審議が不可欠だ。
■歯止めにならぬ要件
 新たな安保法制の最大の狙いは、中国の軍事的台頭に対抗するため、自衛隊の活動内容や範囲を大幅に拡大して日米同盟を強化することだ。その中核が集団的自衛権の行使を可能にする武力攻撃事態法改正案である。
 法案では、集団的自衛権が行使できる場合を「存立危機事態」と定義し、「国民の権利が根底から覆される明白な危険」があることなどを条件として明記した。
 「武力行使の新3要件」を条文に反映したもので、政府・与党はこれにより行使に歯止めがかかると説明している。
 だが中東ホルムズ海峡での機雷掃海が可能か否かで自民、公明両党の見解が割れたように、3要件自体が曖昧で、時の政権の判断次第で拡大解釈される恐れがある。
 そもそも昨年7月の閣議決定は、「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」と結論付けた従来の政府見解を強引にねじ曲げたものだ。憲法が権力を縛る「立憲主義」の観点からも、あらためて厳しく問い直す必要がある。
■武力行使と一体化も
 他国軍の後方支援では、ほぼ同じ内容の2法案が提出される。
 一つは朝鮮半島有事を想定して米軍への後方支援を定めた周辺事態法改正案だ。名称を「重要影響事態法」に変えて地理的制約を撤廃し、米軍以外も支援する。
 もう一つは「テロとの戦い」などを名目に戦う他国軍への後方支援を随時、可能にする恒久法「国際平和支援法案」である。
 2法案の目的はそれぞれ「日本の平和」「国際社会の平和」と異なるが、いずれも活動範囲は「現に戦闘行為を行っている現場」以外なら地球上どこでもよく、従来認めていない弾薬提供や発進準備中の戦闘機への給油なども行う。
 いつ戦闘が起きるか分からない場所でこうした活動を行うことは、もはや後方支援と言えず、憲法を逸脱した「他国の武力行使との一体化」そのものではないか。相手が自衛隊を敵とみなして攻撃対象にするのは明白だ。
 国連平和維持活動(PKO)協力法改正案では武器使用基準を緩和し、他国部隊を助ける「駆け付け警護」や、危険度の高い治安維持活動への参加を可能にする。
 武器使用基準の緩和は、憲法が禁じる海外での武力行使につながる懸念があるため、長年議論されながら認められてこなかった。安易な変更は許されない。
■国会の存在意義示せ
 新たな安保関連法案はいずれも重大な問題をはらみ、一つだけでも十分な審議時間が必要だ。
 ところが政府は、全11の関連法案のうち武力攻撃事態法など既存10法の改正案を「平和安全法制整備法案」に一本化し、新設の国際平和支援法案と2本立てにした。
 審議時間の短縮が狙いだ。乱暴にもほどがある。
 そもそも今回の安保法制の出発点である昨年7月の閣議決定から、法制を先取りした日米防衛協力指針(ガイドライン)改定に至るまで、政府は国会の関与を一貫して拒んできた。
 しかも首相は先の米議会での演説で、関連法案成立を「この夏までに実現する」と言明した。
 法案審議に先立ってまず問われるべきは、首相のこうした著しい国会軽視の姿勢だろう。
 安保法制は複雑で多岐にわたり、国民の理解は進んでいない。
 首相はきのうの閣議決定後の記者会見で「(法整備で)抑止力が高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなる」と述べた。
 だが、日米同盟一辺倒で防衛力強化を図れば日本と中国との緊張は高まり、東アジアの安保環境は逆に悪化するのではないか。
 こうした根本的な疑問から一つ一つ分かりやすく明らかにしていくことが、国会の責務である。
 政府のペースに引きずられ、おざなりな議論で成立を許すなら国会の存在意義が問われる。



河北新報 2015年05月15日
社説:安保法制閣議決定/日米同盟偏重に懸念拭えず


 「専守防衛」を掲げた戦後の安全保障政策を大きく転換し、「自衛」のための活動領域を格段に広げ、国際平和を支援する美名の下で自衛隊の広範な出動にも道を開く。
 一定の歯止めがあるにしても、自衛隊の「いつでも、どこへでも」派遣が現実味を帯びる。個別的自衛権を容認しつつ、貫いてきた「非戦」の放棄にも近づいていこう。
 歴史的転換を裏付ける安保法制の関連法案を、安倍政権はきのう、閣議決定した。15日にも国会に提出し、今国会で成立を目指すことになる。
 関連法案は、集団的自衛権行使を明記した武力攻撃事態法改正案など改正対象の法案10本を集約した日本の防衛に関わる「平和安全法制整備法案」と、国際紛争に対処する米軍など他国軍の後方支援を随時可能とするため新設する恒久法「国際平和支援法案」の2本で構成されている。
 集団的自衛権行使を容認する「存立危機事態」の定義は曖昧で、国会の状況に鑑みれば、実質、政府の判断に委ねられよう。「重要影響事態」の解釈も幅広く、際限のない派遣につながる恐れがある。
 新法に基づく自衛隊出動は電話閣議での決定を認め、歯止めとされる事前承認をめぐる国会審議も、衆参両院各7日の努力規定を盛り込んだ。
 後方支援は改正法案、新法両案にまたがり、適用次第で事前承認をすり抜けることは可能。厳格な歯止めとはほど遠く、憲法の規定による制約を逸脱する危うさが漂う。
 改正法案の一括化は、審議の加速化狙いの側面があり、審議の形骸化も懸念される。
 関連法案は安保環境の変化を背景に、日米同盟を強化し、海洋進出を強める中国への抑止力を高める一方、国力に陰りの見える同盟国を補完する形で、米国の世界戦略の一翼を担っていくというものだ。
 日本の安全性が高まり、国際的な秩序の回復、維持にも貢献できて、発展の基盤である平和が保たれるのであれば、国益にもかなうだろう。
 ただ、安保政策の大転換によっても、その道筋は容易に描けない。多くの国民が効果を計りかね、「急ぎ過ぎ」を危惧し、今国会での成立に反対、慎重姿勢を示す。
 当然だろう。法案は複雑で分かりにくく、国民不在で政府与党の擦り合わせが進んできたのだから。国の安全が軍事力だけで確保され難い現実も知っているのだから。
 安全保障強化に向けた多面的で長期的な戦略が一切示されず、それ以前に幅広い議論を欠いたまま、安倍晋三首相の意向を体現する形で、大改革を強行するとなれば、国民が抱える先行きへの懸念を排除できようはずがない。
 安倍首相は、閣議決定後の記者会見で法整備の意義を強調。早期成立の必要性を訴えた。法案の国会提出、審議に先行し日米防衛協力指針(ガイドライン)再改定に盛り込み、米側に成立を確約した。国会はもとより国民への説明軽視のそしりを免れない。
 日本の岐路に関わる重大案件である。前のめりに国民の理解を置き去りに成立を急いではならない。想像力の限りを尽くした徹底審議で、慎重な世論に応えるべきである。



信濃毎日新聞 2015年05月16日(土)
社説:安保をただす 法案提出 国会の意義が問われる


 安全保障関連法案が衆院に提出され、国会での安保論議がいよいよ本格化する。
 法案そのものとともに問題なのは、国会を軽視する政府の姿勢だ。このまま成立させることになれば、立法府としての存在意義が問われる。
 そもそも法整備の出発点から問題がある。集団的自衛権の行使を容認した昨年の閣議決定は、国会論議で積み上げてきた憲法解釈を政府の一存で覆した。改憲に匹敵する大転換にもかかわらず、国会は蚊帳の外に置かれた。
 安倍晋三首相の「わが軍」発言など、過去の答弁をないがしろにする例はほかにもある。今回の法案では、小渕恵三首相が「中東やインド洋は想定されない」とした周辺事態法を改め、地理的制約を撤廃しようとしている。
 政府は、法整備に先行して日米防衛協力指針(ガイドライン)を改定した。法案を国会に示してもいない段階で、自衛隊と米軍が地球規模で協力することを決めている。まず米政府と合意し、その後に裏付けとなる法案を審議するのは順序が逆だ。
 首相は、米議会での演説で夏までに成立させると約束もした。野党からの批判には「国会答弁などで、今国会で成立を図ると繰り返し言っている。国会軽視には全く当たらない」と強弁している。日程ありきの姿勢が鮮明だ。
 採決を急ぐため、10本の改正法案を一つにまとめた。集団的自衛権行使のための武力攻撃事態法改正、米軍や他国軍を世界中で支援できるようにする周辺事態法改正など、それぞれ自衛隊の在り方を大きく変える。本来、別々の法案にすべきものである。
 別立てにした他国軍支援の新法には、国会論議に縛りをかける条文が盛られた。首相から自衛隊派遣の承認を求められた場合、衆参両院がそれぞれ7日以内に議決するよう努めなければならないと定める。これも国会として、のめるものではないだろう。
 首相は「米国の戦争に巻き込まれるようなことは絶対にない」などと強調する。政府の判断次第であり得ることなのに、なぜ「絶対ない」と言い切れるのかは説明しない。丁寧に議論して理解を得ようという意思は感じられない。
 強引なやり方を許すことは、国会の自己否定になる。立法府の信頼が懸かることを議員一人一人が肝に銘じてもらいたい。



信濃毎日新聞 2015年05月15日(金)
社説:安保をただす 法案閣議決定 戦争に道を開く転換点


 新たな安全保障法制の整備に向け、政府が関連法案を閣議決定した。きょう国会に提出し、下旬の審議入りを予定している。
 憲法9条の縛りを次々に外し、自衛隊の活動を一気に拡大しようという法案だ。他国と同じように海外で武力行使できる国へと踏み出すことになる。
 戦後70年、平和国家として歩んできた日本の重大な転換点だ。改憲に等しい法案を容認することはできない。
   <地球規模で対米協力>
 閣議決定したのは、他国軍支援を随時可能にする新法の「国際平和支援法案」と、武力攻撃事態法や周辺事態法など10本の法律の改正案を一つにまとめた「平和安全法制整備法案」だ。
 自国の防衛だけでなく、国際社会の平和と安全を含めた「切れ目のない体制」の整備を目指している。集団的自衛権の行使、国際紛争に対処する米軍や他国軍への支援拡大、紛争後の治安維持活動への参加など、内容は幅広い。
 主眼は「日米同盟」の強化にある。日米防衛協力指針(ガイドライン)の改定で地球規模の協力を打ち出した。法案は、その裏付けになる。成立すれば、自衛隊は日米安保条約の枠を超えて世界中で米軍とともに活動できる。
 政府は、法案全体を「平和安全法制」と称している。平和の名の下、自衛隊を海外で武力行使できる部隊に変質させる。
 きのうの記者会見で安倍晋三首相は、集団的自衛権の行使は「極めて限定的」だと強調した。しかし、行使の基準は曖昧だ。政府の判断次第で歯止めはなくなる。
   <「戦死」の現実味>
 首相の言葉とは裏腹に、自衛隊の活動は自国の守りに徹する「専守防衛」から、いよいよ懸け離れる。「戦争法案」といった批判が野党から出るのも分かる。
 自衛隊の海外での活動は徐々に広がってきた。それでも、これまで銃弾を1発も放たず、殺すことも殺されることもなかった。「非戦闘地域」に活動を限るなど、曲がりなりにも憲法と折り合いを付けてきた結果だ。
 新たな法制は、事情を一変させる。より危険度の高い任務に当たることになる。
 イラク戦争後、2004年から人道復興支援で自衛隊が派遣された際、武器使用は正当防衛などに限定されていた。治安維持は担わず、オランダ軍や英軍に守られながらの活動だった。両国軍には死者が出ている。
 活動を「非戦闘地域」に限ったが、それでも当時の防衛庁は隊員の死を想定して対応を練った。武器使用を前提に治安維持を担うことになれば、戦闘で隊員が命を落とす事態は現実味を増す。
 アフガニスタンで北大西洋条約機構(NATO)が主導した国際治安支援部隊(ISAF)のような例に加わる可能性もある。タリバン政権崩壊後の01年に派遣され14年に戦闘任務を終えた。駐留外国兵士の死者は戦闘以外を含め約3500人に上ったとされる。
 治安維持活動一つ取っても重大な問題をはらむ。にもかかわらず政府は、集団的自衛権の行使や米軍支援の拡大などとともに一括で審議しようとしている。一つ一つ採決していては時間がかかるからだ。あまりに荒っぽい。
 首相は、今国会での成立に意欲を示してきた。先月、米議会での演説で「この夏までに必ず実現する」と確約している。
 6月24日までの国会会期を1カ月ほど延長し、6月中に衆院を通過、7月末までに成立―との日程が取りざたされる。
 国民にとって安保政策はただでさえ、なじみが薄い。まして今度の法案はたやすく理解できるものではない。世論調査では今国会での成立に反対意見が多い。数の力で押し切ることは許されない。
   <外交と両輪でこそ>
 首相は会見で、日本を取り巻く安保環境の厳しさを強調し、新たな法制の必要性を訴えた。北朝鮮の核・ミサイル開発、中国の海洋進出や軍事費増大など見過ごせない問題があるのは確かだ。
 とはいえ、力で対抗することが妥当なのか。安全保障は、防衛と外交の両輪がバランスよく回ってこそ成り立つ。防衛が突出すれば対話の妨げになりかねない。
 近隣国と信頼関係を築けないまま、政府が抑止力とする「日米同盟」強化を進めれば、かえって地域の緊張を高める。
 国際貢献についても同様だ。紛争解決に力を尽くすことに異論はない。しかし、軍事への傾斜は日本にふさわしくない。武力行使とは一線を画し、貧困対策など人道支援で独自性を発揮する―。そんな選択肢はある。
 アジアの安定、国際社会の平和と安全のために日本は世界でどんな役割を果たしていくべきか。国会は条文をめぐる議論に終始することなく、広く国民が納得できる針路を定めなくてはならない。



[京都新聞 2015年05月16日掲載]
社説:安保法案国会へ  十把一からげは乱暴だ


 自衛隊の海外活動拡大を図る安全保障関連法案が衆院に提出された。舞台は与党の密室協議から国会へ移り、国民にも見える形で与野党の論議が本格化する。
 他国軍への後方支援のための新たな恒久法「国際平和支援法案」と、武力攻撃事態法改正など10法案を一括した「平和安全法制整備法案」の2法案だ。憲法9条が禁じる海外での武力行使に道を開き、「専守防衛」の理念から一歩も二歩も踏み出す内容で、日本が築き上げてきた平和主義を変質させかねない。将来に禍根を残さぬように徹底的な審議を求めたい。
 ただ法案の組み立ては複雑で、理解しづらい。自衛隊の任務がどこまで広がるのか実感できないでいる国民は少なくない。
 与党協議で生煮えの部分も多い。例えば集団的自衛権行使は「存立危機事態」に限定するものの、与党内にも「基準があいまい」との懸念が残る。時の政権が恣意(しい)的に判断できる問題点をはらみ、歯止め策も十分でない。国民の懸念や不安を解消するには、具体的な事例に即して問題点を深掘りし、慎重、丁寧な点検が欠かせない。
 それにしても、新法以外の10本の法改正案を束ね、まさに十把一からげでの審議は乱暴過ぎる。野党の反発ももっともだ。
 政府側は相互に密接に関連するというが、さっさと国会審議を済ませたいとの意図が透ける。自衛隊法など一つ一つ時間をかけて審議すべき重要法案だ。とりわけ武力攻撃事態法は集団的自衛権行使を可能にする改正であり、審議を尽くさねばならない。
 政府は「この夏までに」(安倍晋三首相)法案成立を目指す構えだが、日程ありきで結論を出せる軽々しい法案ではない。
 首相は「米国の戦争に巻き込まれるようなことは絶対にない」と訴えたが説得力を欠く。「一線」を越えることで戦争加担につながらないか。少なくとも海外に派遣された自衛隊が紛争に巻き込まれるリスクは間違いなく高まる。
 2法案の名称にわざわざ「平和」を冠したのは「戦争法案」との野党の批判をかわすためとみられる。しかし、その強調こそが法案の危うさの裏返しとも言えよう。
 急ぎ足の安保法制論議に、国民の多くは漠然と不安を抱きつつも、日本が重大な岐路に立っていることを自覚していないのではなかろうか。国会論議をきちんと注視し、戦後、自衛隊は海外で人を殺さず、殺されもしなかった意味をいま一度深く考えたい。



[京都新聞 2015年05月14日掲載]
社説:安全保障法制  国会は根本から議論し直せ


 政府は自民、公明の与党合意を受け、集団的自衛権行使を盛り込んだ安全保障法制の関連法案をきょう閣議決定する。今月下旬にも国会審議が始まる予定だ。
 武力攻撃事態法など改正対象の法案10本を一括した「平和安全法制整備法案」と、新規の恒久法「国際平和支援法案」の2本から成る。平時から有事まで切れ目のない対応をするとして、これまで専守防衛に徹してきた自衛隊の任務を拡大し、日米の軍事協力を地球規模へ広げる内容だ。
 憲法9条が禁じる海外での武力行使に道を開き、戦後の安保政策にとどまらず、国柄まで変えてしまうような巨大法案である。にもかかわらず政府は、法案審議も始まっていないのに成立を前提に日米防衛協力指針(ガイドライン)を改定し、安倍晋三首相は米議会演説で今国会での法案成立まで公約した。野党が「国会軽視」と批判したのは当然だろう。
 法案は生煮えの部分が多く、歯止め策も不十分と言わざるを得ない。「外国の戦争に巻き込まれる」との国民の不安はなんら払拭(ふっしょく)されておらず、与党が数の力で押し通すようなことは許されない。安保政策の大転換を進めるのか、押しとどめるのか。国会は日本が重大な岐路にあることを自覚し、法改正や新法の必要性から議論し直すべきだろう。
 法案の最大の焦点は、安倍政権が昨年7月に閣議決定で憲法解釈を変更して容認した集団的自衛権の行使だ。武力攻撃事態法改正案に盛り込まれた。
 曖昧な歯止めの解釈
 密接な関係にある他国が武力攻撃された場合に、日本の存立が脅かされる明白な危険がある(存立危機事態)など3要件が満たされる場合に限って、他国を防衛する集団的自衛権を行使できるとした。
 だが「明白な危険」といっても解釈の幅は広く、どこまで歯止めになるか疑わしい。事実、中東・ホルムズ海峡での機雷掃海について安倍首相は「原油輸入が止まれば国民生活が行き詰まる」として行使を認めるが、公明は認めておらず、解釈は食い違う。集団的自衛権行使を憲法解釈変更だけで容認した問題も含め、徹底した議論を求めたい。
 存立危機事態に次いで深刻度が高い状況を想定する周辺事態法の改正では、事実上の地理的制約の撤廃と合わせて重要影響事態法と名称を変え、支援対象も米軍だけでなく他国軍にまで広げる。ただ国連決議などは派遣要件ではないため、米国の要請でなし崩しに自衛隊が派遣される「対米追従法」になりかねない。
 国会承認の形骸化も
 他国軍への後方支援では、これとは別に、支援を随時可能にする恒久法の国際平和支援法を新設する。これまでテロ対策特別措置法などでは活動区域を「非戦闘地域」に限ったが、「戦場以外」へと範囲が大幅に広がり、これまで認められなかった弾薬の提供や発進準備中の戦闘機への給油も可能になる。いくら後方支援といっても敵対勢力から見れば、一体の戦闘行為にほかならず、自衛隊員が攻撃されるリスクは格段に高まる。
 この新法では、例外なき国会の事前承認を義務づけたが、他国軍がどこでどのような活動を具体的に行うかは軍事機密として開示されず、国会承認そのものが形骸化しかねないとの指摘もある。国会のチェック機能をどう担保するかは、軍部の暴走を招いた先の大戦への反省からも重要だ。
 国会審議では、こうした問題を丁寧に一つ一つ点検しなければならない。
 変質する平和主義
 新たな安保政策が必要な理由として、中国の脅威が言われる。だが、安全保障は防衛力だけではない。外交や政治、経済、社会など総合的な関係の中で安定した秩序をどう構築するかにある。安倍政権はこれまでその努力が十分だったとは言いがたい。
 自衛隊と米軍の一体化を進め、抑止力を高めたとして、その先にあるものをよく見極める必要がある。過度な抑止力は、かえって東アジアの緊張を高め、危険な軍拡競争に陥らないとも限らない。
 同盟国に負担の共有を求めたい米国は、法案が成立すれば、日本に軍事的な要求を強めてくるのは間違いないだろう。既に米国の軍事関係者からは、南シナ海での哨戒などを期待する声が出ている。憲法9条はそうした要求を断る防波堤の役割も果たしてきたが、今回の安保法制では、その機能が弱まる。懸念するのは、日本が米国の国際戦略に組み込まれ、自衛隊の海外展開がエスカレートしていくことだ。当然、防衛費も膨らまざるをえない。
 平和主義の変質に結びつく法案である。国会審議では、自衛隊の活動の歯止め策にとどまらず、安倍政権が「積極的平和主義」の名の下に進めようとしている安保政策そのものも問われなければならない。首相が米議会で「この夏までに」と約束したような、短期間で結論を出せる軽々しい法案ではないはずだ。日本の針路を誤らないよう、審議を尽くしてもらいたい。



神戸新聞 2015/05/16
社説:安保法案国会へ/懸念の声に応える論戦を


 政府は、集団的自衛権の行使を可能にし、自衛隊の活動範囲を大幅に広げる安全保障関連法案を国会に提出した。焦点は、国会審議を舞台にした与野党の攻防に移る。
 法案は、憲法9条の下で海外での武力行使を禁じてきた戦後日本の平和主義を変質させ、「専守防衛」の理念を骨抜きにしかねない。
 幅広い国民の合意なしには進められない政策転換である。だが、肝心の国民の理解は深まっていない。
 国会審議は、法案の問題点を具体的に明らかにする重要な場だ。与野党ともに、国民の声に応える議論を尽くさねばならない。
 論点は多岐にわたる。今国会での成立にこだわらず、じっくり時間をかけて審議すべきだ。
 安倍晋三首相は会見で「米国の戦争に巻き込まれるようなことは絶対にない」と断言したが、「絶対に」の根拠は何か。「法整備で日米同盟の抑止力が高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなる」とするが、米軍と自衛隊の一体化でかえってリスクが高まるのではないか。
 集団的自衛権の行使が認められる「事態」の定義もあいまいだ。
 そもそも今、新たな安保法制が必要なのか。安倍首相が法整備の検討を表明してから1年。安保環境の変化を理由に挙げるが、法整備は、首相の意向で加速したり選挙に配慮して中断したりするなど政権の都合が優先されてきた。
 政府が、自衛隊法など10本の法改正案を束ねて一つの法案とした点も見過ごせない。日本の国際貢献の在り方や武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」への対応など、一つ一つ時間をかけて議論すべき法案がごちゃ混ぜになっている。
 国会審議の省力化を図ろうとする意図は明らかで、国民に理解を得ようとする態度とは程遠い。
 多くの疑問は残ったままだ。与党の数の力にまかせた強引な国会運営に陥れば、国民の信頼を失う。
 国民の懸念を受け止め、歯止めをかける野党の責任は重い。安保政策への立場の違いはあっても、徹底審議を求める姿勢は貫かねばならない。特に野党第1党の民主党は反対するだけでなく具体的な対案を示し、首相との論戦に挑むべきだ。
 議員一人一人が歴史的転換につながりかねない議論を担う。緊張感を持って審議に臨んでもらいたい。



神戸新聞 2015/05/15
社説:安保法案閣議決定/「不戦」の誓いが守れるのか


 政府はきのう臨時閣議を開き、安全保障関連法案を決定した。「専守防衛」を旨とする自衛隊の活動を飛躍的に拡大する内容だ。
 憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認した昨年7月の閣議決定を踏まえ、安保法制全般を見直す。自衛隊と米軍の連携を「地球規模」に広げることは防衛政策の歴史的な転換であり、戦後貫いてきた「平和主義」が揺らぐ恐れがある。
 安倍晋三首相は「国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、切れ目のない対応が必要だ」と述べた。
 しかし、憲法の制約を取り払って自衛隊活動を拡大する理由は何か。十分に納得できる説明はなく、むしろ海外派遣に歯止めが利かなくなり、戦闘に巻き込まれる懸念が増す。
 戦後の「不戦」の誓いから逸脱しかねない政府の方針は、国民の求める国の在り方に沿っているのか。
     ◇
 「国際平和支援法案」と「平和安全法制整備法案」。閣議決定された法案はこの2本である。
 ただ、平和安全法制整備法案は自衛隊法や武力攻撃事態法、周辺事態法、国連平和維持活動(PKO)協力法など10の法律の改正案を一括提案するものだ。新設を目指す国際平和支援法案と併せ、見直しがいかに広範囲に及んでいるかが分かる。
 これを政府と自民、公明両党は2月以来、わずか7回の協議で取りまとめた。法案は複雑で、細部まで議論を尽くしたとは言い難い。
 政府は先月末、米国と18年ぶりの防衛協力指針(ガイドライン)改定で合意した。内容は今回の法案を先取りしており、日米協議に向けて結論を急いだのは明らかだ。
 「日本として行けるところまで行け」。対米交渉を進める防衛省の幹部に対し、首相はそう指示していたという。自身の訪米の際には、国会に提案もしていない法案の「夏までの成立」を米議会で明言した。
 「一体、どこの国の首相か」と批判されても仕方がない。「国会軽視」と野党が憤るのは当然だ。
【まず「米国ありき」】
 首相が主導する安保法制の見直しは終始、米国との合意を念頭に置いて進められた。国会や国民への説明を後回しにした対応は本末転倒であり、到底容認できない。
 安倍政権の「米国ありき」の姿勢はこれにとどまらない。
 日本との協議を終えたカーター米国防長官は「日米の軍事的な協力はアジア太平洋地域だけでなく、世界で可能になる」と述べた。米議会では中東・ホルムズ海峡での機雷掃海活動や南シナ海での哨戒活動への自衛隊参加を期待する声が上がる。
 米国は国防予算削減を迫られ、日本に軍事的負担の肩代わりを求めている。日本の法整備を待つことなく米側の要求は高まっている。
 今回の法案では、朝鮮半島有事などを想定した「周辺事態法」を「重要影響事態法」に改正し、自衛隊の活動を事実上、日本周辺に限定していた制約を撤廃する。
 「日本の平和と安全に重要な影響を与える(重要影響事態)」と政府が判断すれば、地球上のどこであれ米軍などの後方支援に当たる。弾薬の提供にも道を開く。
 まさに米国が求める軍事連携の一つであり、「周辺」という文言の削除に米側の意向が垣間見える。
 「武力攻撃事態法」の改正は集団的自衛権行使を定めるものだ。米国など「密接な関係にある他国」への武力行使が発生し、「日本の存立が脅かされる明白な危険がある(存立危機事態)」などと政府が判断すれば、日本が攻撃を受けなくても自衛隊による武力行使が可能になる。
 首相はホルムズ海峡での自衛隊による機雷掃海活動に言及しており、これも米側の期待と一致する。
【歯止めを失う恐れ】
 問題は、「重要影響事態」であれ「存立危機事態」であれ、何がそれに当たるかが曖昧で、判断が政府に委ねられていることだ。緊急時は国会承認などが事後でよいとされ、チェックが機能しない危惧がある。
 新設を目指す「国際平和支援法」は、国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能にする恒久法だ。この法案は公明党の主張を入れて国会の事前承認を義務付けるが、イラク復興支援などの特措法で「非戦闘地域」とされた活動範囲が「戦場以外」に拡大される。どこまで活動の安全が確保できるかは疑問だ。
 共同通信の世論調査では、法案の今国会での成立や日米連携の地球規模の拡大に5割近くが反対し、多くの国民が懸念を抱いている。
 武器使用基準を緩和して1発の銃弾を撃てば、自衛隊員はこれまでにない危険にさらされるだろう。日本の平和貢献を称賛してきた国際社会の評価が変わる可能性もある。
 法案の内容は「平和主義」の理念を危うくする。いったん撤回して国民の声に耳を傾けるべきだ。



中国新聞 2015/5/15
社説:安保法制閣議決定 これで国会を通すのか


 安全保障関連法案が、きのう閣議決定された。きょうにも国会に提出される。集団的自衛権の行使容認を裏付ける武力攻撃事態法などの改正10法案から成る「平和安全法制整備法案」と、他国軍の後方支援を随時可能とする新法の「国際平和支援法案」である。
 安倍晋三首相はきのうの記者会見で「(野党の一部などから出ている)戦争法案などといった無責任なレッテル貼り」と述べた。それに抗したのか、国会提出の段になって一括法案に「平和」の2文字を冠したことには、違和感が否めない。
 戦後の日本では、個別的自衛権の枠内で自衛力を保持する政府の憲法解釈が定着していた。それを大きく転換し、集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈へとかじを切ったのが、昨年7月の閣議決定である。
 日本を取り巻く情勢がそれほど緊迫の度を増しているというのなら、いまさら数文字の言葉をいじるまでもなかろう。
 10本もの法案をひとくくりにして国会に提出する手法にしても乱暴ではなかろうか。
 一括法案には、武力攻撃事態法の改正のほか、周辺事態法の日本周辺という地理的制約を外す法改正、自衛隊員の武器使用基準を緩和する法改正などが含まれている。「周辺」概念の撤廃については歯止めなき自衛隊派遣につながる―などとして、自衛隊の国連平和維持活動(PKO)には一定の理解を示す民主党や維新の党も危惧しているほどだ。
 このほかにも歴代政権が是としなかった内容が含まれており、一つの法案ごとに十分な審議時間を費やすのが、国民の負託に応える国会のあるべき姿だろう。なぜ一括法案でなければならないか、記者会見で国民に説明すべきではなかったか。
 与党は審議時間を衆院で少なくとも80時間と見込んでいる。だが、一つの法案でも足りないくらいだ。ことほどさように、安倍政権は安全保障政策の転換に前のめりであり、それと裏腹に野党の指摘する「国会軽視」が透けて見えよう。
 与党協議で公明党は自衛隊派遣の「歯止め」を何より重視したという。国際平和支援法案では「例外なき国会承認」を要求し、自民党が譲歩したと成果を強調している。
 だが、同法案では衆参各院7日以内の議決といった「努力義務」も課された。そのほかの法案では国会の関与の度合いが相対的に弱いケースもあり、周辺事態法の改正案では「原則事前承認」としながら「緊急時の事後承認」も容認されている。これで歯止めになるのか。
 野党は「国会軽視」の現実を座視することなく、一つ一つ追及すべきだろう。政党政治の存亡にも関わる問題である。
 安倍首相は先日の米議会演説で安全保障関連法案を夏までに成立させると約束した。きのうの記者会見では「政権の発足以来、繰り返し語ってきた。選挙でも信を問うた」と述べた。
 だが昨年12月の総選挙は自ら「アベノミクス解散」と名付けたように、経済政策が争点だったはずだ。4月末の共同通信社の全国電話世論調査でも、今国会成立に「反対」が48・4%と賛成を上回る結果が出ている。いずれの法案も、今国会では成立を見送るべきだろう。



=2015/05/15付 西日本新聞朝刊=
社説:安保法案閣議決定 「平和法案」本質見極めよ


2015年05月15日(最終更新 2015年05月15日 10時43分)
 安倍晋三政権が今国会で成立を目指す安全保障関連法案がきのう、閣議決定された。近く国会で審議が始まることになる。
 政府はこの法案を「平和安全法制整備法案」「国際平和支援法案」と名付けた。高らかに「平和」をうたうネーミングだ。その一方で、この法案に反対する野党や識者らは「戦争法案」と呼ぶ。
 安倍政権が推進する安保法制の改定は、その名の通り日本と世界に平和と安全をもたらすのか。
 それとも、反対論者が主張するように、日本が国際紛争に関与していく危険を高めるのか。
 そこを見極めたい。平和主義・日本の将来に関わるからだ。
 ▼専守防衛の枠超える
 閣議決定された「国際平和支援法案」は新法で、「平和安全法制整備法案」は現行10法を一括して改正するものだ。内容は多岐にわたり、論理構成も複雑である。
 大づかみに説明すれば、目的は二つある。一つは日本の安全の確保、もう一つは国際平和への貢献拡大だ。
 この二つの目的のためとして、法案には自衛隊の活動の幅を広げる多くの条項が盛り込まれた。自衛隊は一気に、これまでできなかったことができるようになる。
 最も重要なのは、憲法9条の解釈変更に伴う集団的自衛権の行使だ。これまで日本は「専守防衛」を安全保障政策の根本に据えてきた。日本が攻められたときだけ反撃する、という大方針だ。
 しかし、今回の法案では、他国に対する攻撃があって「日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合(存立危機事態)なら、日本が実際に攻められていなくても、武力行使ができるようになる。
 日本が「専守防衛」の枠から踏み出すことになる。国民はそれを支持しているのだろうか。
 ▼国民の理解は進まず
 現時点でこの法案を前にした国民の多くの率直な感想は「ややこしくてよく分からない」だろう。
 無理もない。もともと安全保障分野は専門用語が難解である上、多すぎる中身を一度に詰め込んだからだ。作成も自民、公明両党の与党協議で進められ、論議の過程は国民の目にさらされなかった。
 一番分からないのは、これらの法改正がなされた場合、日本が背負うことになるリスクである。
 例えば、今回の新法では、国際社会の平和を乱す勢力と戦う他国軍に対し、自衛隊が海外で恒常的に後方支援できるようにする。自衛隊員が戦闘に巻き込まれて殺害されたり、相手を殺害したりする可能性がどれくらい高まるのか。
 記者会見でこうしたリスクを問われた首相は「災害派遣でも危険な任務はある。(訓練などで)任務遂行のリスクを可能な限り軽減してきた」と一般論でかわし、法整備に伴う新たなリスクについては語らなかった。会見は法案のプラス面のアピールに終始した。
 これほど大事な点を説明せずに法案への理解を求められても、国民は判断のしようがなかろう。
 ▼存在意義かけ論議を
 戦後の国会では、安全保障をめぐって数々の重要な論戦が展開されてきた。1度の国会では法案が成立せず、数度の国会をまたいで審議されたテーマもあった。
 しかし、安倍政権は法案成立を急ぐ。すでに法案を先取りした防衛協力指針(ガイドライン)を米国と取り決め、安倍首相が米議会の演説で「今夏までに(法案成立を)実現させる」と宣言した。まるで、国会が日米合意の追認機関であるかのような態度だ。
 国会は衆参とも、自民党と公明党の連立与党が過半数を占める。政権幹部はすでに、強行的な手法による可決、成立のシナリオも想定しているだろう。
 しかし、これらの法案の重みを考えれば、たとえ会期を延長したとしても、今国会だけの論議で決めてしまうのは拙速である。国民の理解は追い付いていない。期限を区切らず、国民の理解が進むまで徹底的に論議すべきである。
 特に野党の責任は重い。国会論戦を通じ、本当に「平和」を名乗る資格のある法案なのか、それとも戦争を招く危険な法案なのか、国民の前で明らかにすべきだ。
 論議不足のまま強行採決で成立という結果になるなら、それこそ国会は存在意義を失うだろう。

////////////////////////////////////////////////////////////

関連記事

テーマ : 政治・時事問題
ジャンル : 政治・経済

tag : 戦争法案 閣議決定 国会提出 安保法案

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

プロフィール

ajimu-ra

Author:ajimu-ra

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最近の記事
リンク
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ(タブ)
RSSフィード
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
カテゴリー
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
FC2ブログランキング
↓↓クリックお願いします↓↓

FC2Blog Ranking

ブログ内検索
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

フリーエリア
blogram投票ボタン