2015-05-18(Mon)

戦争法案 閣議決定 国会提出 (4)危険な法案は廃案にせよ

やり方が強引で乱暴だ 平和と語れば語るほど 政権の暴走に抗議する 「平和国家」が変容する

<各紙社説・論説>
徳島新聞)安保法案閣議決定 「平和国家」が変容する(5/15)
高知新聞)【安保法案安倍政治を問う】 時の政権次第にならないか(5/15)
佐賀新聞)安保法制閣議決定(5/15)
熊本日日新聞)安保法案閣議決定 国会で問題点を洗い出せ(5/15)
宮崎日日新聞)安保法案国会提出 首相はリスクも語るべきだ(5/16)
南日本新聞)[安保法閣議決定] 政権の暴走に抗議する(5/15)
南日本新聞)[安保法閣議決定] 平和と語れば語るほど(5/15)
琉球新報)安保法制国会提出 どこに歯止めがあるか 危険な法案は廃案にせよ(5/16)
沖縄タイムス)[安保法案国会提出]やり方が強引で乱暴だ(5/16)




以下引用



徳島新聞 2015年5月15日付
社説:安保法案閣議決定 「平和国家」が変容する


 安倍晋三首相が目指す安全保障政策の大転換がまた一歩前進することに、危うさを感じる。
 政府が新たな安全保障関連法案を閣議決定した。
 現憲法下では認められないとされてきた集団的自衛権行使を可能にするのをはじめ、自衛隊が地理的な制約なしに米軍や他国軍を支援できるようにする狙いだ。
 政府はきょう法案を国会に提出する方針だが、日本が戦後築き上げてきた「平和国家」の在り方が変容する恐れが強い。このまま成立させてよいはずがない。
 何が問題なのか、どこに危険性があるのか。国会は審議を尽くして、国民に明らかにしなければならない。
 安倍首相は閣議決定後に記者会見し、新たな安保法制の整備は国民の生命と平和な暮らしを守るためであり、日米同盟が強まることで日本のリスクが減少すると強調した。
 さらに集団的自衛権について、厳格な歯止めを定め、行使できるケースは限られていると理解を求めた。
 しかし、地理的制約が撤廃されれば、自衛隊の活動範囲は世界に広がる。「非戦闘地域」に限っている現在の縛りをなくし、「現に戦闘行為が行われている現場(戦場)以外」での活動も可能にするとしている。
 武器使用基準の緩和も併せて考えれば、自衛隊が戦闘に巻き込まれる可能性は高まろう。それが日本をより安全にする道といえるのか。
 首相が言うように、集団的自衛権の行使には、日本の存立が脅かされ、国民の生命や自由が根底から覆される明白な危険がある場合などの条件が付いている。だが、判断基準には曖昧さが残る。
 中東・ホルムズ海峡の機雷掃海を政府、自民党が可能とし、公明党が否定的であるのが典型例だ。石油の輸入停止は深刻な問題だが、集団的自衛権を行使しなければならない事態なのか。政府が必要と判断すれば認められることにならないか。疑問が次々と湧いてくる。
 首相の前のめりの姿勢に、国民が不安を募らせるのは当然だろう。共同通信社の世論調査では、今国会での成立に48・4%が反対している。
 審議に当たる国会の責任は重い。とりわけ、しっかりしなければならないのは野党第1党の民主党である。
 対決姿勢を打ち出してはいるものの、先月まとめた見解では、将来的に集団的自衛権の行使を容認する可能性を残した。
 党内が賛否で割れているためのようだが、そんな姿勢で「自民1強」の巨大与党に対抗できるのか。日本の安全と国民の生命をどう守るのか。明確な安保政策を示して論戦に臨んでもらいたい。
 政府、与党は会期を延長して夏までに法案を成立させる構えだが、数の力で押し通すことは断じて許されない。国民が厳しい目を注いでいることを忘れてはならない。



高知新聞 2015年05月15日07時58分
社説:【安保法案安倍政治を問う】 時の政権次第にならないか


 集団的自衛権の行使を含め、自衛隊の活動を飛躍的に広げる安全保障関連の2法案が閣議決定された。
 閣議決定というからには自民、公明の与党と政府の認識は一致していなければならない。ところが、集団的自衛権は具体的にどんなケースで行使できるのか。与党内にさえいまだに見解の相違がある。当然、国民の理解も深まっていない。
 法案はきょう国会に提出される見通しで、安倍首相は米議会で「今夏までの成立」を約束した。とてもそれが可能な状況とは思えない。
 「国民に丁寧に説明する」。記者会見での首相の言葉が本当ならなおのこと、期限など区切らず慎重に審議するのが最低限のルールである。
 集団的自衛権の行使を盛り込んだ武力攻撃事態法の改正など10法案を一括した「平和安全法制整備法案」。もう一つは、国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能とする新法の「国際平和支援法案」。
 「専守防衛」という戦後日本の平和国家としてのありようを大きく転換させる法案だが、核心部分はぼやけたままだ。
 集団的自衛権は、他国への武力攻撃であっても「日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合、「存立危機事態」と定義して自衛隊が武力行使できるようにする。
 存立危機事態とは何か。具体的に示されているのは、朝鮮半島有事などで避難する邦人を輸送する米軍船舶が攻撃される事例。しかし、これは従来の周辺事態法や個別的自衛権で対応できるのではないか、との声は根強い。
 日本が輸入する原油の8割が通過する中東・ホルムズ海峡が、機雷封鎖される事例も挙げられている。これに対し公明は経済的損失では該当しない、と一貫して反対している。
 与党内の「不一致」を国会でどう説明するのか。
ちぐはぐな歯止め
 自衛隊の海外派遣をむやみに拡大しないための「歯止め」も十分とは言えない。
 国際平和支援法案で自衛隊を海外派遣する際は、「例外なき国会の事前承認」が条件だ。一方、集団的自衛権の行使に関しては、事前承認は「原則」で事後承認も認めている。
 自衛隊が他国軍を後方支援する際の条件が厳しく、武力行使に踏み切るケースの方が緩い。何かちぐはぐではないか。
 後方支援の対象も、「国連決議」か「関連する決議など」に基づき活動している他国軍となっており幅が広い。
 自衛隊の海外派遣について、国会のチェックが適切に働くのか。時の政権の意向次第で派遣が恣意(しい)的に行われるのではないか。国民の最大の懸念はまだ何一つ払拭(ふっしょく)されていない。
 そもそも安保法制の整備は昨年7月、安倍政権が集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更を閣議決定したことが始まりだ。
 憲法9条が禁じてきた海外での武力行使に道を開く歴史的転換を、憲法改正によらず一内閣の閣議決定に基づき進めていく。こうしたやり方を認めることは、将来に禍根を残すと言わざるを得ない。
 国民の疑問に答えるために、具体的事例に即した国会審議を求める。



佐賀新聞 2015年05月15日 05時15分
論説:安保法制閣議決定


 集団的自衛権の行使を含む新たな安全保障政策の関連法案が閣議決定された。10本に上る関連法の一括改正と新法が定める自衛隊の活動範囲と内容は、これまでよりも拡大される。戦争に巻き込まれるリスクも高まるだけに、丁寧に論点を整理した上で議論を積み上げて判断すべきだ。
 新たな安保法制は、自衛隊法や武力攻撃事態法、周辺事態法、国連平和維持活動(PKO)協力法など現行法10本の改正案を一括した「平和安全法制整備法案」と、国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能とする新恒久法「国際平和支援法」で構成する。
 集団的自衛権を行使できる要件として「存立危機事態」を新設。さらに恒久法も整備することで、平時から有事まで「切れ目ない対応」を目指すとしている。
 歴代内閣が「国際法上、有していることは当然だが、行使は憲法上許されない」としていた集団的自衛権は、安倍内閣が昨年7月に憲法解釈変更の閣議決定に踏み切って行使に道を開いた。注目されるのは、その要件として新設された「存立危機事態」に歯止めがあるのかどうかだ。
 武力攻撃事態法改正案では、「存立危機事態」を「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」と定義する。「密接な関係にある他国」や「明白な危険」をどう判断するのかが重要になる。
 安倍首相は、中東・ホルムズ海峡が機雷で封鎖され、原油輸入が止まった場合などを例に挙げる。ただ公明党は備蓄や他の地域からの輸入など代替策があれば、存立危機事態にならないと反論しており、政権内でも意見が分かれている。定義があいまいになれば、その時々の政権の考え次第になってしまう。ここは詰めておくべき論点だ。
 さらに周辺事態法にあった地理的制約を外して、支援対象を他国軍にも広げる重要影響事態法案では、緊急時であれば国会承認は事後でもいいと認める。与党協議段階では歯止め策として「例外なき事前承認」が必要とされたが、法案にすべては反映されていない。国連決議も派遣要件ではないため、なし崩し的に自衛隊が派遣されるという懸念も残る。
 さらに重要影響事態に関しても政府の統一見解は「軍事的な観点をはじめ種々の観点から見た概念」としている。ここからは経済的、社会的な影響も踏まえて対応するという考えが見えてくるが、経済的な理由だけで派遣させていいのかについても議論の余地は残るだろう。
 自衛隊の活動拡大に伴って隊員が危険にさらされるリスクは高まる。国際平和支援法案では、活動できる範囲を「現に戦闘行為が行われている現場」以外とし、これまでの「非戦闘地域」よりも踏み込んだ。任務に弾薬提供も追加した。引き続き後方支援に徹するとはいえ、敵対勢力の攻撃対象となる危険性は高くならないか。
 安倍首相は米国に今夏までの法案成立を約束した。専守防衛に徹してきた日本の安全保障政策を大転換させるような法制だけに、あいまいさを残さず、緻密な議論を重ねるべきだ。(梶原幸司)



熊本日日新聞2015年05月15日
社説:安保法案閣議決定 国会で問題点を洗い出せ


 政府は14日、集団的自衛権行使を含め自衛隊活動を広げる安全保障関連法案を閣議決定した。きょう国会に提出される。
 安倍晋三首相は臨時閣議後の会見で「国民の命と平和な暮らしを守り抜く決意で決定した」と強調したが、どれだけの国民がその中身や必要性を理解しただろうか。戦後70年の節目に、日本の安全保障政策の大転換を図る法案である。将来に禍根を残さないよう、十分に審議を尽くすべきだ。
 閣議決定された法案は、従来の自衛隊法や武力攻撃事態法、周辺事態法など10本の法律の改正を一括した「平和安全法制整備法案」と、国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能とする恒久法「国際平和支援法案」の計2本。
 10法案をひとまとめにし、法案名に「平和」を冠する手法に、まず違和感がある。審議の迅速化を狙うとともに、野党から「戦争法案」などと批判があったことを意識してのカムフラージュと受け止められても仕方なかろう。
 法案の要となるのが集団的自衛権。同盟国などが攻撃された時、自国への攻撃と見なして反撃できる権利だ。安倍政権は昨年7月、憲法解釈を変更し「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合など「武力行使の新3要件」を満たせば行使可能とした。
 一連の法案によって、平時から有事まで「切れ目のない対応を可能にする」としており、4月下旬に米国と合意した日米防衛協力指針とも連動している。中国への抑止力になるとの見方もあるが、米軍と自衛隊の「一体化」が進む可能性があり、世界の武力紛争に巻き込まれる恐れは捨てきれない。
 今回の法案は与党協議を基にまとめられた。閣議決定前の最終確認では、自民、公明両党内から「いい仕上がり」と自賛する声もあったが、果たしてそうか。決定的な対立を避けるため玉虫色の決着を図った場面も少なくない。
 自衛隊が武力行使する際の新3要件について、「密接な関係にある他国」はどこかなど、曖昧で拡大解釈の余地を残す部分がある。他国軍の支援で自衛隊を派遣する際の国会承認では、公明の主張を取り入れ「例外なき事前承認」が国際平和支援法案に盛り込まれた。ただ周辺事態法を改称し、地理的制約を撤廃した重要影響事態法案では事前承認なしで自衛隊を派遣できるとされ、「抜け道になる」との指摘も出ている。
 こうした与党協議での問題点を洗い出すのが国会での野党の務めだ。そもそも集団的自衛権の行使容認は憲法上問題ないのか。そして今、あえて必要なものか。そうした根源的なところから議論をしなければならない。
 安保法制をめぐる与党の動きは、先の安倍首相の訪米に間に合わせるかのように駆け足で進められた印象が拭えない。重ねて強調する。法案はこの国の行く末に深くかかわる。時間をかけ、しっかり議論してもらいたい。



宮崎日日新聞 2015年5月16日
社説:安保法案国会提出 首相はリスクも語るべきだ


 戦後の安全保障政策の歴史的転換となる安保関連法案を国会に提出するにあたり、安倍晋三首相が臨んだ記者会見。自衛隊の海外活動拡大に伴い、隊員にリスクが及ぶのではないのかとの質問に対し、真正面から答えることを避けたり、戦争法案との批判を「レッテル貼りだ」と一蹴したりした。
 これが歴史的転換を成し遂げようとする首相の度量なのだろうか。多様な意見をくみ取り民主的に進める態度がなければ、一層、国民の政治不信は高まるだろう。
■核心避けたやりとり■
 自衛隊の危険が高まるのではと見解を尋ねられた場面のことだ。
 安倍首相は「自衛隊に殉職者がいないかのように思っている人がいるかもしれないが、1800人がさまざまな任務で殉職している。殉職者が全く出ない状況を実現したいし、一人でも少ない方がいいが、災害においても危険な任務が伴うことはもっと理解してもらいたい」と災害派遣などの話にすり替え、質問の核心を避けた。
 その後、法制では、例えば後方支援で危険が生じたら業務を中止、あるいは退避すべきことなど明確な仕組みを設けていると説明したものの、続けて「自衛隊は自ら志願し、危険を顧みず職務を完遂することを宣誓したプロフェッショナルとして…」と隊員のプロ意識の話を始めた。首相として、リスクをどう捉えているかという姿勢や覚悟は見えてこなかった。
 また別の記者が、なぜ今万全の備えを取る必要があるのか具体的な説明を求めると、予測困難な北朝鮮情勢と、何人もの日本人がテロの犠牲になったことを示したのみで、後は、抑止力が効果を生むとの従来の主張を繰り返した。
 これらの質問は今後の審議に欠かせない本質的な問いだ。まっすぐ、丁寧に返せないようでは、信頼を前提にした議論はできない。
■解釈変更から見直せ■
 15日、国会に提出されたのは「自衛隊法」など改正10法案を一括した「平和安全法制整備法案」と新法の「国際平和支援法案」。これらおびただしい数の法案を、夏までに成立させる計画だという。
 民主党などは法案を読み解く時間が必要だと審議入りを拒んだ。国民にも理解する時間が必要だ。
 また、今後の議論は細かな想定ごとでなく、まずは大局に立ち、法整備の発端となった集団的自衛権の行使容認について、根源的に見つめ直すべきだろう。憲法9条で定められた最低限の自衛措置の範囲を超えるとして、長らく認められてこなかったものだ。解釈変更ではなく、憲法改正が必要だとの内閣法制局の答弁さえある。
 慎重論、反対論もあるだろうと首相はなぜ大きく構えられないのだろう。「戦争法案などといった無責任なレッテル貼りは全くの誤りだ」。これがトップに立つ人間の言葉なのだろうか。正々堂々と議論し、到達点を見いだすのが政治ではないか。国民を失望させない議論を望む。



宮崎日日新聞 2015年5月15日
社説:安保法案閣議決定 平和国家の評価変えるのか


 いよいよ国会を舞台に与野党の攻防が始まる。安全保障関連法案が臨時閣議で決定し、15日に衆院に提出される見通しとなった。集団的自衛権行使など、自衛隊の活動範囲が大きく広がる法案だ。
 本紙の県民意識調査によると、法制について多くの県民が関心があると答えた。平和国家の概念が変わるかもしれない-という漠然とした不安、警戒心を抱いている人は多いのではないだろうか。
 なぜ今なのか。なぜ法案成立を急ぐ必要があるのか。政府、与党は分かりやすい言葉で説明し、多様な意見に耳を傾けるべきだ。
■「改憲」加速に警戒も■
 4月、安保法制に関するニュースが国民の頭上を駆け巡った。
 統一地方選前半戦により中断していた与党協議が再開されたのが14日。協議内容の実質合意に至ったのが27日で、すぐさま同じ日の深夜、舞台は米国に移り、日米両政府が新たな日米防衛協力指針(ガイドライン)を決定した。「切れ目のない連携」という安保法制の核心部分を先取りしたものだ。
 28日には日米首脳会談で同盟強化を確認、29日、安倍晋三首相は米議会で法案の成立を「この夏までに必ず実現する」と演説した。
 スピード感あふれる展開。政府、与党は米国と歩調を合わせスケジュールを描き、その通りに事を進めたのだろうが、置いていかれたのが国民だ。思考する時間も意見を交わす時間も与えられない。
 5月に入りゴールデンウイークが明けると、次は衆院憲法審査会が始まった。自民党は改憲論議を加速させており、「本丸は9条」だと野党は警戒を強めている。
 国民はそれらの動きをずっと見てきた。自民党の高村正彦副総裁は、安倍首相の米国での演説は決意表明を表したにすぎないと語ったが、実際、物事は進んだ。国民の理解は追いついていない。
■県民も関心高め注視■
 「わが国はこれまで国際的には『平和国家』と評価されてきた。それは70年続いてきた『戦争放棄』が生きていたからだ」。これは、「安保法制整備 丁寧な論議を」という見出しで本紙窓欄に載った串間市の男性の意見だ。
 男性の指摘通り、戦後70年、日本は平和を誓い守ってきた。そこに安倍首相は「積極的平和主義」を掲げ、目まぐるしい速さで国の在り方を変えようとしている。
 なぜ急ぐのか。中国の海洋進出や北朝鮮情勢など脅威的な事態は確かにある。ただ、武力行使の道を広げることが平和をもたらすのだろうか。国際社会と連帯し、平和を築く方法はもうないのだろうか。
 これについては専門家にも、国民にもさまざまな意見がある。国防の根幹が大きく変化するのでは-などと県民の関心も高い。十分に意見を交わす時間が必要だ。
 戦後70年の今年は、もう二度と戦争を繰り返さないと静かに考える節目になるはずだった。与野党の火花が激しく散る中で、平和を見つめ直す初夏となる。



南日本新聞 ( 2015/5/15 付 )
社説:[安保法閣議決定] 政権の暴走に抗議する


 この法案が成立すれば、自衛隊は「専守防衛」の衣を脱ぎ捨て、「地球の裏側」まで出かけて戦うことになりかねない。
 国民に信を問わないまま、日本国憲法を骨抜きにする政権の暴走に強く抗議する。
 安倍内閣が安全保障関連法案を閣議決定した。
 閣議決定後の記者会見で安倍晋三首相は、「アメリカの戦争に巻き込まれることは絶対にあり得ない」と断言した。「戦後日本の平和国家の歩みに胸を張るべき」とも述べた。
 クロをシロと言いくるめるようなものではないか。不誠実にすぎよう。
 きょうにも国会に提出される法案は、武力攻撃事態法や自衛隊法、周辺事態法など改正対象の法案10本を一括した「平和安全法制整備法案」と、国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能とする恒久法「国際平和支援法案」の2本である。
 安保法制の整備には二つの目的がありそうだ。「切れ目のない」対応と日米同盟強化である。
 武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」から集団的自衛権の行使を容認する「存立危機事態」まで、一括法案に盛り込まれた。
 その内容は、防護対象を米軍限定とした昨年の閣議決定の拡大解釈だったり、地理的制約の撤廃、他国を武力で守ったりである。
 「切れ目のない」対応とは要するに、「歯止めのない」自衛隊派遣を意味しよう。
 オバマ米政権は「リバランス」(再均衡)政策を掲げる。二つ目の目的の日米同盟強化は、負担肩代わりの点でも「渡りに船」だ。
 実際、中国が岩礁埋め立てを急ぐ南シナ海で、自衛隊の恒常的な警戒監視活動を望む発言が米側から相次いでいる。いずれ望まない紛争に巻き込まれかねない。
 他国軍支援はこれまで特別措置法で対応してきた。イラク戦争では「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」(地上部隊派遣を)の一言でイラク特措法が成立した。
 結果的に開戦は誤りだったが、いまだに日本政府はきちんとした検証を怠っている。失敗から教訓を学ばない政治が、恒久法を手にしたらどうなるのか。
 政府が法案を2本にまとめたのは、いざとなれば数の力で押し切る意思表示にみえる。戦後70年、海外で一度も武力行使しなかった日本の歩みを転換させる法案だ。強行採決は許されない。
 安保関連法をめぐる国会論戦は今月下旬から本格化する。国権の最高機関にふさわしい議論を与野党に求める。



南日本新聞 ( 2015/5/15 付 )
社説:[安保法閣議決定] 平和と語れば語るほど


 「私たちは、多くの嘘(うそ)いつわりを、/真実のように話すことができます。/けれども、私たちは、その気になれば、/真実を語ることもできるのです」
 先日亡くなった詩人、長田弘さんの詩「夏の午後、ことばについて」にある。
 閣議決定された安全保障関連の「国際平和支援法案」と「平和安全法制整備法案」には、そろって「平和」の名が冠された。
 戦後の日本は、不戦を誓う憲法のもと、「平和」国家を目指してきた。しかし、新たな安保法制は、国民にこれまでとは異なる道を歩ませるものだ。
 ことさら「平和」を強調し、真実を隠すような政府の姿勢に、長田さんの詩が思い浮かんだ。
 今回の安保法制は昨年7月、安倍政権が憲法の解釈を変えて集団的自衛権の行使を認める閣議決定をしたところから始まった。
 世界情勢の変化などを挙げ、「国民の命と暮らしを守るため」と、安倍晋三首相が主張する集団的自衛権は、自衛隊が他国の戦争に参加することを認めるものだ。
 その後まとめられた安保法制は、平時から有事まで、そして地球の裏側までも、自衛隊の「切れ目のない対応」を可能にした。
 他国軍の後方支援を可能にする国際平和支援法でも、自衛隊の活動域は「現に戦闘行為が行われている現場」以外に広がる。将来的に戦闘行為が行われる可能性もあるし、後方支援であっても相手から見れば攻撃対象になり得る。
 政府がいかに否定しようと、野党の一部が指摘するように「戦争法案」と呼ぶ方が実体を表しているように思える。
 「積極的平和主義」の看板を掲げる首相は、これまでもしばしば「平和」を口にしてきた。
 昨年の全国戦没者追悼式では、「不戦の誓い」に触れることなく「世界の恒久平和に、能(あた)うる限り貢献」すると強調した。4月の米議会演説では、安保法制の夏までの成就を約束し、「地域の平和のため、確かな抑止力をもたらす」と胸を張った。
 首相は著書で「自分の国を守るために戦わない国民のために、替わりに戦ってくれる国は世界中どこにもない」と述べる。「平和」は国民が血を流し、勝ち取るものだという考えなのだろう。
 安保法制の先には、首相が悲願とする憲法9条の改正がある。国防軍の設置や国民の義務も盛り込み、そこでも「平和のため」と繰り返すつもりだろうか。
 聞こえのいいフレーズは終わりにしたい。政治家なら真実の言葉で語るべきだ。



琉球新報2015年5月16日
<社説>安保法制国会提出 どこに歯止めがあるか 危険な法案は廃案にせよ


 憲法の規定を下位にある法律で改変する。各種世論調査でおしなべて反対が賛成を上回るのに、委細構わず突き進む。およそ立憲主義、法治国家、民主主義と程遠い光景がこの国で進行している。
 政府が新たな安全保障法制を閣議決定し、国会に提出した。提出が復帰記念日の5月15日なのが象徴的だ。われわれが帰ろうと切望した「祖国」はこんな国だったのか。ある種の感慨を禁じ得ない。
 会見で安倍晋三首相は、戦争に巻き込まれるとの批判は「的外れ」だと繰り返した。だが的外れどころか正鵠(せいこく)を射た批判だ。危険な法案を成立させてはならない。
「平和」の欺瞞
 閣議決定したのは「平和安全法制整備法案」と「国際平和支援法案」だ。いずれも「平和」の文字を入れたが、国民向けの姑息(こそく)な印象操作だ。首相が「軍隊」と呼ぶ自衛隊を地球の反対側にも出し、戦争当時国に武器も燃料も補給できるようにするのだ。これを「平和」と呼ぶのは欺瞞(ぎまん)だ。
 そもそも自衛隊法など10本の法改正案を束ねて一つの「平和安全法制整備法案」としたのがおかしい。国会審議を早々と終える狙いがあるのは明らかだ。「相互に密接に関連するから」と政府は説明するが、なぜ一括でなければならないか、個別ではなぜ駄目なのか、まるで説明になっていない。
 政府与党は一括で80時間程度の審議を想定しているという。だが10本の法案はそれぞれ「専守防衛」の国是に風穴を開けるほどの内容だ。従来ならそれぞれ優に100時間は超える。今回は、単純計算で言えばそれぞれをたった8時間程度で通過させようという考えなのである。
 安倍首相は成立どころか国会提出より前に米国議会で演説し、今夏での法案成立を約束してきた。これほど極端な国会軽視は見たことがない。これで成立を許すなら国会は存在意義すら疑われよう。
 首相は「米国の戦争に巻き込まれることは絶対にない」と強調した。だが米国は、財政難による軍事費削減の要請から、米国の戦争の肩代わりを日本に求めている。オバマ大統領が日米首脳会談で「日本は地球規模のパートナー」と述べたのはその肩代わりを意味する。
 ではその米国の要請を断れるのか。従来は「憲法の制約でできない」と言えたが、その制約がなくなるのだ。日本は戦後70年、ただの一度も米国の戦争に反対したためしがない。ベトナム戦争しかり、イラク戦争しかりである。その日本が突然反対できるようになるなど、信じられるわけがない。
ご都合主義的解釈
 安倍首相が辺野古新基地建設に遮二無二突き進むのは、尖閣をめぐる日中衝突に米国を引き込むため、質草として沖縄を差し出すという意味があるように見える。日中衝突には巻き込むつもりなのに、米国の戦争には巻き込まれないというのは都合が良すぎないか。ご都合主義と呼ぶほかない。
 首相は武力行使の新3要件を持ち出して「厳格な歯止め」を強調した。だが機雷でホルムズ海峡をタンカーが通れないことも「日本の存立が脅かされる明白な危険」に含むという。中東でもイラン以外の国から直接原油を運べ、ロシアや北米からも輸入できるのに、である。これも「存立の危機」なら政府解釈はまさに万能だ。どこに「歯止め」があるというのか。
 首相は自衛隊機のスクランブル発進の増加や北朝鮮のミサイルを持ち出し、不安をあおった。だから集団的自衛権行使が必要だという空気を醸成しようとするのだが、スクランブルもミサイルも全て個別的自衛権で対処する事案である。非論理的ではないか。
 米国が中東で戦争をした結果、「イスラム国」が生まれたように、軍事力の行使はかえって世界の危険を助長する。非軍事的貢献こそが国際的な安全保障につながるという事実を、むしろ日本は積極的に発信すべきなのである。



沖縄タイムス 2015年5月16日 05:30
社説[安保法案国会提出]やり方が強引で乱暴だ


 新たな安全保障法制の整備に向け安倍政権は、関連11法案を国会に提出した。これを受けて与野党の国会対策委員長が会談。与党は19日に特別委員会を設置し、21日に審議入りするよう提案したが、野党は早急な審議入りに反対し、日程調整は来週に持ち越された。
 戦後歴代の内閣が、憲法9条の下では認められないとしてきた集団的自衛権が行使できるような内容を盛り込んだ重大な法案である。野党が早急な審議入りを拒否したのは当然だ。憲法9条に基づく専守防衛は、戦後日本の「国是」であった。それを突き崩す恐れのある法案が国会に提出されたこと自体、重大な問題である。
 国会に提出されたのは、既存法10本の改正法案を1本に束ねた法案と、他国軍を後方支援するため、いつでも自衛隊を海外派遣できる新たな恒久法の計11本。これだけ「巨大な法案」を一挙に提出するのは、あまりにも乱暴で度が過ぎている。
 自民党は衆院での審議時間を「80時間程度」と説明したというが、これもとんでもないことだ。
 そもそも憲法で禁じられているものを法律でできるようにしようというのは、憲法が国家権力を縛る「立憲主義」の根幹を揺るがすものだ。
 憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認は「戦争の放棄」をうたった憲法9条の規範力を否定する。これだけ問題の多い法案であるにもかかわらず、安倍晋三首相が米議会で「夏までの成就」を約束したのは、国会を軽視したおごりの表れというしかない。法案の拙速審議は到底許されない。
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 安倍首相は14日の記者会見で、野党から「戦争法案」との批判が出ていることに対し、「無責任なレッテル貼りは全くの誤りだ」と批判した。
 しかし、武力攻撃事態法改正案は、日本と密接な関係にある他国が武力攻撃され「日本の存立が脅かされる明白な危険がある」場合を「存立危機事態」と定義し、日本が直接攻撃を受けていなくても武力行使ができるようにするものだ。
 安倍首相が「無責任なレッテル貼り」と頭から決めつけるのは、国民の疑問を封じようとするもので、その姿勢こそ疑問だ。首相が集団的自衛権が行使できるとする中東・ホルムズ海峡の機雷掃海は、停戦前なら武力行使に当たるとの認識もある。
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 政府・与党は、集団的自衛権が行使できる「存立危機事態」の定義に「武力行使の新3要件」を明文化し、自衛隊派遣の恒久法に「国会の例外なき事前承認」を要件とするなど「歯止め」がかかっているというが、戦争に巻き込まれるリスクは確実に高まる。
 安倍首相は、法整備と日米同盟強化で「抑止力が高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなる」との認識を示した。
 中国を想定した発言だとみられるが、冷え切った日中関係を改善せずに軍事力に頼ろうとするのは相手の軍備増強を招き、かえって抑止力を低下させる恐れがある。

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