2015-05-30(Sat)

口永良部島で噴火、警戒レベル5 全島民が避難

火山活動の監視強化を 研究と観測態勢の充実を 避難島民の支援万全に

<各紙社説・主張>
朝日新聞)口永良部島―火山活動の監視強化を(5/30)
読売新聞)口永良部島噴火 円滑避難に生きた事前の備え(5/30)
毎日新聞)口永良部島噴火 避難島民の支援万全に(5/30)
日本経済新聞)火山の活発化に着実な備えを (5/30)
産経新聞)口永良部島の噴火 研究と観測態勢の充実を(5/30)
東京新聞)口永良部島噴火 火山と共に生きるには(5/30)

<報道>
毎日新聞)クローズアップ2015:口永良部島噴火 前兆少なく予測困難(5/30 朝刊)
朝日新聞)(時時刻刻)断続的噴火に警戒 マグマ噴火か、初のレベル5 口永良部島(5/30 朝刊)
朝日新聞)口永良部島で噴火、警戒レベル5 全島民が避難(5/30 朝刊)




以下引用



朝日新聞2015年5月30日(土)付
社説:口永良部島―火山活動の監視強化を


鹿児島県・口永良部島(くちのえらぶじま)の新岳(しんだけ)がきのう、爆発的な噴火を起こした。
 噴煙が高さ9千メートル以上まであがり、空気を巻き込んだ火山灰が斜面を流れ下る火砕流は海まで達した。相当な規模である。
 やけどした人が出たが、島にいた約140人がみな島外に避難できて不幸中の幸いだった。
 今後、噴火が拡大するのか、終息に向かうのか。避難解除までどれぐらいかかるのか――。
 残念ながら、現在の火山学で精度よく予測することはできない。予断や希望的観測を排し、火山活動の動向を見守りたい。
 人的被害が最小限で済んだのは、新岳が昨年8月に34年ぶりに噴火してから、観測が強化され、地元の人たちも十分に警戒していたからだ。
 直前の噴火警戒レベルこそ5段階のうち「レベル3」(入山規制)だったが、気象台は噴石の飛散や海に達する火砕流発生の可能性があると注意を呼びかけていた。
 住民も、昨夏の噴火時に約半数が島外に一時避難するなど、火山島に住むリスクを熟知しており、注意が浸透していた。
 総務省消防庁によると、噴火時に逃げ込むシェルターのない活火山は全国に多いが、新岳には17カ所設けてあった。
 さらに特筆したいのは、火砕流の到達範囲が危険区域を予測するハザードマップと、ほぼ合致したことである。
 もちろん、噴火の規模や火口の位置が事前の想定と近かったからではあるが、物心両面での準備が大事だとわかる。
 昨秋の御嶽山(おんたけさん)噴火、今月に入っての箱根大涌谷の火山性地震多発など、各地で火山活動が活発になっている。日本が世界有数の火山国であると思い起こすには十分だろう。
 折しも政府はきのう、活火山法の改正法案を閣議決定した。
 死者・行方不明63人を出した御嶽山の噴火災害を受けて、国が常時監視する火山について、周辺の自治体や観光事業者らに避難計画づくりを義務づけることなどが柱だ。
 現在47ある常時監視火山の周辺延べ130市町村で、避難計画があるのは20しかないという。関係者がよく話し合って、ハザードマップや警戒避難態勢を早くつくってもらいたい。
 将来にわたって重要なのは人材の育成である。火山は個性豊かで個別の研究も欠かせない。火山研究者が国内に110もある活火山より少ない状況は、着実に改善しなければならない。
 政府も市民も、火山にもっと関心を払うべきだろう。



読売新聞 2015年05月30日 01時20分
社説:口永良部島噴火 円滑避難に生きた事前の備え


 大規模噴火にもかかわらず、人的被害は軽微で済んだ。備えの大切さを印象付けた。
 鹿児島県屋久島町の口永良部島にある新岳が噴火した。噴煙は9000メートルに達し、火砕流も発生した。
 屋久島町は直ちに、自衛隊や海上保安庁に支援を要請し、島民ら約140人に島外避難を指示した。政府も、首相官邸に対策室を設置し、救援活動を指揮した。
 7時間半後には全員が、町営フェリーや海保の巡視船などで隣の屋久島に移った。円滑な避難は、今後のモデルケースとなろう。
 新岳は昨年8月、34年ぶりに噴火した後、小康状態だった。今年初めに、再び火山性地震が増え始め、再噴火が警戒されていた。
 注目すべきは、屋久島町の噴火に備えた取り組みだ。
 前回の噴火まで、島内の避難所は、火口に近い地域にしかなかった。このため、火口から4キロ余り離れた高台にある鉄筋コンクリート造の元NTT関連施設を、新たに避難所として整備した。
 島民は、この施設までの避難訓練を実施していた。気象庁も、再噴火に警戒するよう、住民説明会を繰り返し開いた。
 今回の噴火直後に、島民と観光客らの8割超に当たる約120人が避難所に退避した。自宅待機の島民も含め、全員の安否をスムーズに確認できたのは、島を挙げての準備があったからだろう。
 気象庁は、噴火直後に、5段階の噴火警戒レベルを「3(入山規制)」から「5(避難)」に引き上げた。2007年の新基準導入後、最高の「5」となった火山は初めてだ。
 新岳は、爆発的噴火を繰り返しており、活動が1か月以上続いたこともある。火山活動の長期化を念頭に、政府や自治体は、島民の生活支援に取り組むべきだ。
 屋久島町が島民の帰還の可否を判断するには、新岳の活動データを集め、分析する必要がある。観測体制を充実させたい。
 国内では、各地で火山活動が活発化している。昨秋には、御嶽山の噴火で多数の犠牲者が出た。箱根山の一部地域では、4月から続く活動が静まらない。桜島も噴火を繰り返している。
 警戒が必要な火山の周辺自治体のうち、8割以上で避難計画が未整備だ。政府は活動火山対策特別措置法改正案を閣議決定した。関係自治体などに避難計画の策定を義務付けたことが柱だ。
 口永良部島の取り組みを参考に、備えを急がねばならない。



毎日新聞 2015年05月30日 02時31分
社説:口永良部島噴火 避難島民の支援万全に


 鹿児島県屋久島町の口永良部島(くちのえらぶじま)・新岳(しんだけ)で爆発的噴火が起きた。噴火に伴って火砕流が発生し、一部は海岸に到達した。火口から9000メートル以上にも達した噴煙は、日本が火山国であることを思い知らせた。
 幸いにも82世帯137人の島民は全員の生存が確認されたが、島外への避難を強いられた。火山活動が長期に及ぶ恐れがあり、現時点では帰島時期は見通せない。政府や関係自治体は火山活動の観測を強化するとともに、避難島民の支援に万全を期してもらいたい。
 口永良部島は火山島で、噴火を繰り返してきた。1933〜34年にかけての噴火では、8人の死者が出た。昨年8月にも小規模な噴火があり、気象庁は火山の活動状況を5段階で表す噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から3(入山規制)に引き上げていた。住民も避難訓練を継続して実施していたという。こうした備えが、人的被害を最小限に抑えることにつながったと言えるのではないか。
 専門家によれば、今回の噴火はマグマ自体が噴出する「マグマ噴火」の可能性が高い。昨年9月の御嶽山(おんたけさん)(長野・岐阜県境)噴火は、マグマの熱で温められた地下水が気化して起きる水蒸気噴火だった。マグマ噴火は一般により規模が大きくなる。気象庁は「爆発力が強い噴火や規模の大きな噴火が今後発生する可能性はある」と警戒を呼びかけている。
 口永良部島の島民はフェリーなどで約12キロ東の屋久島に逃れた。避難所は屋久島島内に5カ所ある。生活支援に加え、精神的なケアなどについても関係機関によるきめ細かな対応が求められる。
 2011年の東日本大震災をきっかけに、日本列島は地震と火山の活動期に入ったと指摘する専門家もいる。九州に限っても、熊本県の阿蘇山・中岳が昨年11月に噴火し、鹿児島市の桜島も爆発的噴火を繰り返している。
 気象庁が常時観測している火山は現在47あるが、周辺市町村の8割以上で噴火に備えた避難計画が作成されていない。このため政府は、活動火山対策特別措置法(活火山法)改正案を閣議決定した。常時観測対象に追加予定の3火山を含む50火山の周辺129市町村を「火山災害警戒地域」に指定し、市町村や集客施設に避難計画策定を義務づける。火山ごとに市町村や専門家らが参加する「火山防災協議会」も設置する。
 火山国日本では、いつ、どこで大規模な噴火が起きても不思議ではない。予知は難しく、日ごろの備えが重要となる。政府は改正法案の成立を急ぎ、各地の火山対策の充実に努めてもらいたい。



日本経済新聞 2015/5/30付
社説:火山の活発化に着実な備えを


 鹿児島県の口永良部島の新岳で爆発的な噴火が起こり、130人余りの島民全員に島外への避難指示が出た。国や自治体は住民らの安全確保を第一に、迅速な避難の手助けや的確な情報発信に全力をあげてほしい。
 同島では昨年8月に小規模な噴火が起こり、気象庁は警戒レベルを引き上げていた。今回の噴火は火砕流を伴う激しいものだったが、いまのところ大きな人的被害は出ていない。国は住民のほか、近くを航行する船や航空機にもきめ細かに警戒情報を出し、被害を最小限に抑えてもらいたい。
 噴火が長引く恐れもある。2000年に噴火した伊豆諸島の三宅島では、島民が5年にわたり長期の島外避難を余儀なくされた。国や自治体はそうした事態も想定し、島民の避難先での生活支援策をいまから考えておくべきだ。
 今回の噴火を、列島全体で火山活動が高まっていることの表れとみる専門家は多い。桜島や阿蘇山で噴火が続き、昨年9月の御嶽山(長野・岐阜)噴火では多くの登山者が犠牲になった。箱根山(神奈川)や蔵王山(山形・宮城)でも警戒水準が引き上げられた。
 これらは4年前の東日本大震災との関連が疑われている。巨大地震の後には地殻のひずみが変わり、噴火しやすくなると考えられている。海外の巨大地震でも直後にたびたび噴火が起きてきた。
 ただ噴火の予測は難しく、前兆とみられる火山性地震が続いても噴火には至らない場合もある。正確な情報を知り、日ごろから着実に備えておくことが肝要だ。
 列島に110ある活火山のうち、噴火すると周辺への影響が大きい火山は47にのぼる。箱根山など37火山では噴石や降灰を予測した地図が公表されている。住民や観光客らはこれを参考にして行動すれば、被害を防げるはずだ。
 一方で、自治体や専門家らを集めて防災対策を練る協議会が未整備の火山もある。国と自治体が連携して協議会の役割を強め、対策づくりを急ぐべきだ。



産経新聞 2015.5.30 05:01
【主張】口永良部島の噴火 研究と観測態勢の充実を


 鹿児島県屋久島町の口永良部島の新岳で29日午前、爆発的な噴火が発生した。屋久島町は全島民に島外避難を指示し、一時滞在者を含む約140人が同日午後、船で屋久島に避難した。
 気象庁によると、噴火に伴って発生した火砕流は約2キロ離れた海岸まで到達し、上空9千メートルまで噴煙があがった。同庁は噴火の8分後に「噴火警報」を発令し、噴火警戒レベルを3(入山規制)から5(避難)に引き上げた。
 やけどを負った男性がヘリコプターで搬送されたが、人命にかかわる被害は報告されていない。町の対応や住民の避難行動は、おおむね適切だったと考えられる。
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 昨年9月の御嶽山(おんたけさん)噴火では、多くの登山者が犠牲になった。箱根では今月初旬から、火山活動の活発な状態が続いている。多くの研究者が、東日本大震災以降は日本列島の火山活動が全体的に高まっていると指摘する。
 日本には、110の活火山が連なる。一部の地域を除けば「最寄りの火山」がある。噴火への備えや火山とともに生きる心構えを再確認したい。
 口永良部島で噴火が起きる直前の閣議で、政府は活動火山対策特別措置法の改正案を決定した。
 御嶽山噴火を教訓とした改正案では、自治体や観光業者に避難計画の策定を義務づけることなどが盛り込まれ、常時監視の対象を47から50火山に増やす。今国会での成立を目指す。
 最も重要な課題は、火山観測態勢の強化と、研究・観測を担う人材の育成である。
 最寄りの火山でどんな噴火が起こり得るのかを理解しなければ、避難計画も立てられない。防災・減災には、火山を知ることが不可欠である。しかし、観測態勢も研究人材も近年は縮小・衰退の傾向が続いてきた。
 大学や研究機関と自治体が連携し、火山ごとに観測態勢の強化に取り組むことが重要だ。国は、それを支える必要がある。
 住民が地元の火山について学び、常時観測の一翼を担うといった取り組みも有効だろう。
 人材の育成には、長期的な視野が求められる。高校の理科教育のあり方や、博士課程修了者の身分など、教育、科学界全体の問題点が、火山研究の人材不足を招く大きな要因となっていることを忘れないでもらいたい。



東京新聞 2015年5月30日
【社説】口永良部島噴火 火山と共に生きるには


 鹿児島県・口永良部島(くちのえらぶじま)の新岳(しんだけ)が二十九日午前、噴火した。御嶽山(長野、岐阜県)や箱根山(神奈川県)など、日本列島では火山活動が活発化している。南の島から学ぶべきことは多い。
 口永良部島で二十九日、爆発的な噴火が起き、火砕流も発生した。噴煙は九千メートルまで上がり、航空機への影響が心配されるほどだ。地下のマグマが噴出したマグマ噴火の可能性が高い。長期化し、規模が拡大する恐れがある。
 同島は水深六〇〇メートルほどの海底からそそり立つ火山の、五合目から上が海面に出ているような島だ。「全島避難」も仕方がない。
 早くから気象庁や京大などが観測を続け、噴火警戒レベルは3(入山規制)だった。4(避難準備)への引き上げも検討されていたという。火山の動きをかなり正確につかんでいたといえる。
 噴火後、住民は迅速に避難している。午後には全島民がフェリーで島を離れた。けがをした人はいるが、犠牲者を出さずにすんだ。しっかりした避難場所があったことなどが役立ったのだろう。
 新岳の噴火の歴史をみると、一九三一年から三五年、六六年から八〇年に活動が活発だった。死傷者が出たこともある。火山は災害だけでなく、温泉などの恵みもある。繰り返し起きる噴火を上回る魅力が島にはあるようだ。国や自治体は、避難した住民が安全に帰還できる日まで、十分な対応をしてほしい。
 御嶽山が昨年秋、水蒸気爆発してから噴火のニュースが多くなった。東日本大震災後、火山活動が活発化したと警告する専門家もいる。噴火予知は、御嶽山のような水蒸気爆発は難しいが、今回のようなマグマが関与する噴火ではかなり信頼できる。
 噴火から学ぶことは多い。(1)火山情報に敏感になる(2)安全な避難場所や避難路を知る(3)非常用の持ち出し袋などを用意する(4)緊急時、家族や職場などとの連絡方法を確認する-などだ。
 一方、観測を強化しても、直前予知や規模の把握は難しいことをあらためて知った。同じ鹿児島県で、九州電力の川内原発の再稼働が近い。原子力規制委員会で再稼働が認められたのは、九州電力が大規模噴火を何年も前に察知できると主張したからだった。
 自然の力の前では、人間はもっと謙虚でなければならない。これも川内原発から百五十キロ離れた火山から学ぶべきことだ。

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毎日新聞 2015年05月30日 東京朝刊
クローズアップ2015:口永良部島噴火 前兆少なく予測困難



噴火警戒レベル
拡大写真
 爆発的噴火とともに火砕流が発生し、全島民が避難した口永良部(くちのえらぶ)島(じま)(鹿児島県)。気象庁は噴火が起きた昨年8月以降、噴火警戒レベルを3(入山規制)に上げて監視を強めていたが、さらにレベルが引き上げられないまま噴火に至った。今回、火山性微動などの前兆は観測されなかったといい、噴火予知の難しさが改めて浮かぶ。東日本大震災以降、活動が活発化した国内の火山は増えており、予断を持たない警戒が必要になっている。
 ◇監視強化に限界
 「直前の現象がなく噴火する火山だった」。29日夕、気象庁の小泉岳司火山対策官は、噴火の前兆をとらえる難しさを訴えた。
 気象庁は昨年8月の小規模な噴火以降、隣の屋久島に観測用の高感度カメラを設置し、火山ガスも調べるなど観測態勢を強化した。火口周辺には、それ以前に設置された分も含め▽地震計6台▽噴火を捉える空振計3台▽地殻変動を観測する傾斜計1台と全地球測位システム(GPS)4台▽観測用カメラ2台−−が置かれ、3月には機動観測班2人が島に入った。
 噴火警戒レベルは全国31火山が設け、上げ下げの統一的な基準はない。各研究機関の意見を参考にその都度、気象庁が判断する。
 震度3の有感地震が発生した23日、気象庁は地元関係者らと作る「火山防災連絡会」を島内で開いた。そこで決まったのは「昨年8月より大きい噴火があればすぐにレベルを5に引き上げて避難。有感地震が24時間以内に複数回発生したらレベル4(避難準備)」という対応だった。
 だが、レベル4は結局、発表されなかった。気象庁によると、噴火の10〜15分前に地震計や傾斜計、GPSのデータに変化はなく、昨年9月の御嶽山(長野・岐阜県境)噴火では11分前に観測された火山性微動もなかった。機動観測班も異常は感じなかったという。
 実は火口に近い場所にあった地震計3台は、昨年の噴火で壊れ、入山規制のため修理できなかった。この影響について、小泉火山対策官は「壊れていなければ何らかの前兆をとらえた可能性は否定できないが、何とも言えない」と話す。
 ただ前兆が皆無だったわけではない。同島や桜島(鹿児島市)を監視する京都大火山活動研究センターの井口正人センター長が指摘するのは(1)火山性地震(2)山体膨張(3)火山ガス増加(4)3月以降に観測された高温の溶岩や火山ガスが噴煙や雲に映って明るく見える「火映(かえい)」。今月23日にあった震度3の地震は震源が浅く、警戒が必要だったという。
 しかし噴火に至る経緯は火山によってまちまちで、同じ形態を繰り返すとも限らない。気象庁も(1)〜(4)を把握した上で「地震以外に特段の活動の高まりがない」との結論を出していた。
 箱根山では気象庁が今月6日、有感地震の変化などを受けて噴火警戒レベルを2に上げたが、ロープウエーで火口の間近にも行ける観光地と、住民137人の島では、周知の方法も異なる。今回は、事前のレベル引き上げがなくても火山防災連絡会で確認した通りに全員が避難できており、小泉火山対策官は「島の中で注意喚起をしてきた」と、島民への情報提供に問題はなかったことを強調した。【久野華代、伊藤奈々恵】
 ◇震災後、火山活発に
 東日本大震災以降、全国で火山活動が活発さを増している。火山の噴火と地震との連動性は科学的に明らかにされていないが、巨大地震後に噴火が続いた例は国内外にある。専門家は、日本列島が火山の活動期に入った可能性を指摘し、一層の警戒を求めている。
 国内の火山活動は、地震を引き起こす海底のプレート(岩板)運動と関連が深いと考えられている。プレートの沈み込み帯では溶けた岩石がマグマとして上昇して火山を形成するとみられ、東日本は日本海溝、西日本は南海トラフとほぼ平行に活火山が分布し「火山フロント(前線)」と呼ばれる。噴火した口永良部島も、この前線に位置する。
 東日本大震災後、昨年9月に御嶽山で水蒸気噴火が発生。噴火は小規模ながら死者・行方不明者63人と戦後最悪の火山被害を出した。1年半前に出現した新島と合体した小笠原諸島の西之島(東京都)は、現在も噴火しながら拡大を続けている。
 海外では20世紀以降、マグニチュード(M)9以上の地震が5件発生しているが、その全てで3年以内に震源域から数百キロ圏内にある火山が噴火している。
 火山噴火予知連絡会長の藤井敏嗣・東京大名誉教授は「今回の口永良部島は昨年8月の噴火から一連の流れで驚きはないが、巨大地震が起きる時期は地殻が異常な状態になる。日本列島が活動期に入った可能性は十分ある」と指摘する。
 ただ、大震災と火山活動との関連性ははっきりしていない。気象庁によると、震災直後、全国110活火山のうち北海道から九州まで全国の20火山で一時期活動が活発化し、数カ月後に平常に戻った。このうち現在、震災前より噴火警戒レベルが上がったのは▽草津白根山(群馬県)▽箱根山(神奈川、静岡県)▽阿蘇山(熊本県)−−にとどまる。昨年噴火した御嶽山は、震災直後は変化がなかった。地殻のひずみが大きな震源域近くの東北地方でも変化がみられない火山はある。
 国内で大規模地震の後に噴火が起きた例としては、江戸時代中期の宝永地震(1707年)の49日後の富士山噴火がある。逆に平安時代の富士山の貞観(じょうがん)大噴火(864年)は、東日本大震災と同規模と想定される貞観地震(869年)や南海トラフが震源の巨大地震とされる仁和地震(887年)の前だった。震源域と火山との距離、噴火の規模などを科学的に関連付けるのは難しいのが実情だ。【千葉紀和】
 ◇避難計画、人材カギ 活火山法改正案閣議決定
 29日に閣議決定された活動火山対策特別措置法(活火山法)の改正案で、気象庁が常時観測する50火山(現状は47火山)の周辺129市町村は「火山災害警戒地域」に新たに指定され、指定市町村には避難計画作成が義務付けられる。口永良部島のある屋久島町は作成済みだったが、内閣府によると、常時観測中の47火山のうち周辺市町村の8割以上で作成されていない(3月末時点)。未作成の市町村が多い背景には、火山に詳しい人材の不足があり、今後どう人材を確保するかが課題として残る。
 まだ計画作りに着手できていない自治体の担当者は「火山に詳しい担当者や専門家など人材が乏しく苦労しているため、作業は遅れ気味だ」と打ち明ける。
 人材の確保について、改正案は「国と地方公共団体は、火山研究・観測のための施設や組織の整備、大学など研究機関の連携強化と、火山現象に関し専門的な知識・技術がある人材の育成と確保に努めなければならない」とした。だが、人材の供給源として火山専門家が従来求めている国立の研究機関設置などについて、内閣府は「内閣府に設ける火山防災対策推進検討会議で検討を進める」と述べるにとどまった。【狩野智彦】
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 ◇世界の巨大地震と、その後に起きた噴火
1952年 カムチャツカ地震(M9.0)=ソ連(当時)
      →翌日にカルピンスキ山、3カ月以内に他2火山、3年後にべズイミアニ山が1000年ぶりに噴火
  57年 アンドレアノフ地震(M9.1)=米国
      →4日後にビゼベドフ山が噴火
  60年 チリ地震(M9.5)=チリ
      →2日後にコルドンカウジェ山、1年以内に他3火山が噴火
  64年 アラスカ地震(M9.2)=米国
      →2カ月後にトライデント山、2年後にリダウト山が噴火
2004年 スマトラ沖大地震(M9.1)=インドネシア
      →4カ月後にタラン山、1年3カ月後にメラピ山が噴火
  10年 チリ中部地震(M8.8)=チリ
      →1年3カ月後にコルドンカウジェ山が噴火
 ※Mはマグニチュード、内閣府の資料を基に作成



朝日新聞 2015年5月30日05時00分
(時時刻刻)断続的噴火に警戒 マグマ噴火か、初のレベル5 口永良部島


 口永良部(くちのえらぶ)島(鹿児島県屋久島町)で29日に起きた噴火。噴火警戒レベルが全国で初めて最高の「5」に引き上げられ、全島民が避難した。噴火はどんな仕組みで起き、いつまで続くのか。事前の備えは生きたのか。
 「今後も爆発力の強い、規模の大きな噴火が発生する可能性がある」。記者会見した気象庁の北川貞之火山課長は、警戒を強めるよう呼びかけた。
 レベルが5に引き上げられたのは、2007年の導入以来初めて。爆発的な噴火により、噴煙は高さ9千メートル以上にあがり、火山灰やガスが斜面を流れ下る火砕流も火口から2キロ以上離れた海岸に達した。
 日本大の遠藤邦彦名誉教授は「噴煙柱が高く上がり、その中で重いものがすぐに火砕流として流れ下ったようだ。高温でエネルギーが大きいことを示している。噴煙も黒く、『マグマ噴火』が起きたのではないか」と指摘する。
 昨年9月の御嶽山の噴火は、地下水にマグマの熱が伝わって起こる「水蒸気爆発」で、影響は火口周辺にとどまった。マグマと地下水が接触して起こる「マグマ水蒸気爆発」や、マグマそのものが噴出する「マグマ噴火」は、より大規模な噴火になりやすい。気象庁も「規模からみて水蒸気噴火ではない」とみる。
 口永良部島は粘り気が比較的強い安山岩質のマグマで、断続的に噴火を繰り返してきた。1回で終わった例もあれば数カ月おきに数年間続いた例もある。東京大地震研究所の金子隆之助教は「噴火を繰り返す状態に入った可能性がある。いつ警戒を解けばよいか判断は難しいだろう」と話す。
 今回の噴火は、警戒を強めていた矢先に起きた。昨年8月、噴煙の高さが今回の10分の1以下の噴火が起き、警戒レベルが1から3に引き上げられた。その後も、白色の噴煙が上がり火山性地震が起こるなど活発な状況が続いていた。
 火口から2キロの範囲は立ち入りが規制され、火砕流が流れる方向も想定されていた。ただ、警戒レベルは、住民に避難準備を求める4には引き上げられていなかった。体に感じる地震が1日に複数回起きるなど引き上げ条件に当てはまる現象が観測されていなかったためだが、震度3の地震が今月23日に起きた際にレベル4に上げるよう気象庁に伝えた研究者もいた。
 東京大地震研究所の中田節也教授は「レベル4以上を経験していないので判断基準があいまいだ。今回の経験を踏まえ基準を見直すべきだ」と指摘。鹿児島大の井村隆介准教授も「予測には大きな幅があり、住民の生活に影響を与える警戒レベルの変更を機械的にできるところまで成熟していない」という。
 ■犠牲者ゼロ、生きた経験 防災計画見直し、避難先を変更
 口永良部島の島民ら137人は、爆発的噴火から約6時間後に全員が島を離れ、避難先の屋久島に向かった。昨年8月にあった34年ぶりの噴火で、自主避難した経験が生きた。
 屋久島町の地域防災計画では、新岳噴火の際の1次避難先は島内各地にあるシェルターなど、2次避難先は町立金岳小学校などと定めていた。
 だが、8月の噴火では火砕流は発生しなかったものの、噴煙が島民の多くが集まる本村(ほんむら)地区に近い集落まで押し寄せた。そこで消防団は西に約1・5キロ離れた番屋ケ峰(標高291メートル)にあるNTTの旧中継局を避難先とし、島民が避難した。
 この経験から、町は1次避難先を、火口から約4キロ離れ、鉄筋で噴石にも耐えられる旧中継局に変更。150人が3日間暮らせる水や食料を備蓄し、夜も避難できるよう山道に誘導灯を設置した。
 昨年11月には防災訓練を実施。島民約90人が旧中継局まで避難し、船に乗り込む手順を確認した。高齢者をシェルターまで避難させる分担を集落ごとに決め、消防団が逃げ遅れの有無を確認する態勢もつくった。
 避難指示が出た今回の噴火。住民は番屋ケ峰に避難し、フェリー入港が確認できると本村港に移動した。全島避難の場合、定期便の町営フェリーと海保の巡視船を利用する計画もできていた。
 噴火時、本村地区の町役場・口永良部島出張所にいた職員の川東久志さん(55)は「前回の噴火の教訓が生きた」と話す。顔にやけどを負った人もいたが、避難はスムーズにいったという。
 島民の屋久島での避難生活について、荒木耕治町長は「(期間は)全く読めない。子どもからお年寄りまでいるので、きっちりケアしたい」と話した。
 ■列島、火山活動活発化
 近年の火山噴火では、2000年に、最大で住民1万6千人が避難した有珠(うす)山(北海道)と全島が避難した三宅島(東京都)の例がある。
 昨年は御嶽(おんたけ)山(長野県、岐阜県)が噴火して多くの登山者が犠牲になった。桜島(鹿児島県)では爆発的噴火が今年は600回近く起きている。
 4月には噴火警戒レベルが未導入の蔵王山(山形県、宮城県)で地震が増えてレベル2相当の火口周辺警報が出された。今月は箱根山(神奈川県)で火山性地震が増えて、警戒レベルが2に引き上げられた。
 日本全体で火山活動が急に高まったように感じられる状況について、火山噴火予知連絡会長の藤井敏嗣・東京大名誉教授は「20世紀は火山噴火が少なかったが、今の状況が普通の状態かも知れない」と話す。
 日本は、地球の陸地面積のわずか0・25%しか占めないが、活火山の7%が集まる火山列島だ。
 東北まで火山灰が達した1914年の桜島の大正噴火のような大規模な噴火が近年はない。藤井さんは「これからは、もっと大きい噴火が別の火山で起きることも覚悟した方がいい」と話した。
 政府は29日、昨年の御嶽山噴火を受け、国が常時監視する火山について、火山周辺の自治体や観光事業者らに避難計画策定を義務づける活動火山対策特別措置法(活火山法)の改正法案を閣議決定した。今国会での成立を目指す。
 気象庁は、全国110の火山のうち、現在の47火山に3火山を加え、50火山を監視対象にする。改正法案では、50火山周辺の129市町村を国が「火山災害警戒地域」に指定。市町村に避難の場所や経路などを盛り込んだ具体的な避難計画の策定を義務づける。内閣府によると、現在、47火山の周辺延べ130市町村で、避難計画を策定したのは20にとどまる。



朝日新聞 2015年5月30日01時56分
口永良部島で噴火、警戒レベル5 全島民が避難


 鹿児島県屋久島町口永良部(くちのえらぶ)島の新岳(しんだけ)(標高626メートル)で29日午前に起きた爆発的な噴火で、島にいた住民ら137人はフェリーや防災ヘリ、海上保安庁の巡視船などで東に約12キロ離れた屋久島に全員避難した。気象庁は「今後も爆発力が強く、規模の大きい噴火の可能性はある」としており、先行きは見通せない。同日午後の政府の災害対策会議では、避難生活の長期化も念頭に置いた対策を確認した。
 噴火が起きたのは29日午前9時59分。気象庁によると、爆発的噴火は約5分間続いた。新岳の火口から火砕流がほぼ全方位に流れ、北西の斜面では火砕流の勢いで木がなぎ倒されていた。谷筋を伝って、火口から北西に約2キロ離れた向江浜(むかえはま)地区の海岸まで一気に達したと見られる。火口付近では火山灰が降り積もり、直径50センチから1メートルほどの噴石が確認された。噴煙は一時高さ9千メートル以上まであがった。同日夜も噴火が続いており、噴煙が火口から1千メートルほどの高さまで上がっている。
 屋久島町は噴火から約20分後の午前10時20分、口永良部島全島に島外避難を指示した。島は面積約36平方キロメートルの火山島。爆発的な噴火があった当時、島内にいたのは住民ら137人。総務省消防庁のまとめでは、125人が町営フェリーで、6人が海上保安庁の巡視船で、やけどを負った70代の男性ら3人が鹿児島県防災ヘリで、3人が自分の船で、それぞれ屋久島に向かった。午後5時半すぎ、町営フェリーが屋久島に到着、住民らは車やバスで公民館など3カ所の避難所に向かった。
 口永良部島最大集落の本村地区に住む日高由美さん(36)は、必要な荷物をリュックに詰めフェリーに乗った。「いつ戻れるか心配。電気は2日間ぐらいもつと聞いたが、冷凍庫に食べ物もまだ残っている。家や、お墓のことも気がかりです」と話した。
 気象庁は爆発的な噴火があったとして、新岳の噴火警報を発表。噴火警戒レベルを5段階のうち「レベル3」(入山規制)から「レベル5」(避難)に引き上げた。5への引き上げは、2007年12月にレベルが導入されて以来初めて。
 警察庁などによると家屋の被害は確認されていない。新岳は昨夏34年ぶりに噴火し、気象庁は警戒レベルを1(平常)から3に引き上げた。島の約半数の住民が一時、島外に自主避難した。今年に入り、新岳から放出される火山ガスが急増。福岡管区気象台は2月、火口から半径2キロへの噴石の飛散や火砕流が発生する可能性があるとし、注意を呼びかけていた。
 気象庁によると、今回の噴火の前兆について、顕著な火山活動の高まりは観測されていなかったという。23日に火山性地震が一時的に増え、震度3の有感地震を1度観測したが、警戒レベルの引き上げは見送っていた。
 29日午後開かれた政府の災害対策会議では、避難所の環境整備や仮設住宅の準備も含め、長期の避難生活に支障が出ないよう対応することを申し合わせた。

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