2015-06-01(Mon)

戦争法案 国会審議 (2) 国民を置き去りにするな

専守防衛 定義を勝手に変えるな 疑念は膨らむばかりだ 「政府の判断」で大丈夫 歴史の評価に耐える議論を

<各紙社説>
北海道新聞)新安保法制 国会審議本格化 首相は正面から答えよ(5/29)
北海道新聞)新安保法制 国会審議入り 国のあり方 議論尽くせ(5/27)
河北新報)安保法案審議入り/歴史の評価に耐える議論を(5/27)
信濃毎日新聞)安保をただす 首相のやじ 国会の歴史に汚点残す(5/30)
信濃毎日新聞)安保をただす 専守防衛 定義を勝手に変えるな(5/29)
信濃毎日新聞)安保をただす 法案審議入り 疑問に正面から答えよ(5/27)
京都新聞)安保法制審議  疑念は膨らむばかりだ(5/31)
京都新聞)安保審議入り  建前では議論深まらぬ(5/27)
神戸新聞)安保法制審議/国民を置き去りにするな(5/29)
神戸新聞)安保法案審議/徹底したリスクの議論を(5/27)
中国新聞)安保法案審議入り 事の本質、具体的に語れ(5/27)
西日本新聞)安保国会審議 本当に縛りをかけるなら(5/30)
西日本新聞)安保審議入り 「政府の判断」で大丈夫か(5/27)




以下引用



北海道新聞 2015/05/29 08:55
社説:新安保法制 国会審議本格化 首相は正面から答えよ


 「丁寧に説明して国民の理解を得たい」という安倍晋三首相の言葉はうわべだけなのか。
 衆院特別委員会で安全保障関連法案の本格的な論戦が始まった。首相が出席して行われたきのうまで2日間の質疑で目立ったのは、首相や中谷元・防衛相の誠意を欠く答弁である。
 自明なことをかたくなに認めない。質問に正面から答えず、論点をずらしてはぐらかす。
 これではいくら時間をかけても議論は深まらず、国民の理解は到底得られない。猛省を促したい。
 集団的自衛権行使容認に関し、民主党の長妻昭代表代行が「専守防衛の定義が変わったのではないか」とただしたのに対し、首相は「全く変わりない」と否定した。
 政府は専守防衛について「相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使」することだとしている。
 しかし関連法案では、日本が直接攻撃されていなくても、「密接な関係にある他国」が攻撃を受ければ武力行使を可能にする。
 首相は「わが国の存立が脅かされる事態に国民を防衛するのは専守防衛だ」と説明したが、詭弁(きべん)と言わざるを得ない。
 他国領域での集団的自衛権行使に関し、首相は中東ホルムズ海峡での機雷掃海以外の「例外」について「念頭にない」と述べた。
 ところが邦人輸送中の米艦防護で他国領海に入る可能性をただされると「慎重な当てはめをしていく」と含みを残した。「例外」が際限なく拡大するのではないか。
 横畠裕介内閣法制局長官は武力行使の新3要件に合致すれば、相手国のミサイル基地などを攻撃することも憲法上認められるとの認識まで示した。これでは国民は何を信じていいのか分からない。
 野党各党は、新たな安保法制による自衛隊員のリスク増加についても繰り返し政府側の認識をただしたが、首相や中谷氏はかたくなに認めようとしなかった。
 関連法案では、他国軍の後方支援で日本周辺という地理的制約を取り払い、「現に戦闘行為を行っている現場(戦場)以外」なら地球上どこでも可能にする。
 弾薬供給や発進準備中の戦闘機への給油なども解禁する。
 危険が増大するのはだれが見ても明らかではないか。
 議論が深まらない責任の大半は政府側にあるが、野党側にも詰めの甘さがある。曖昧な答弁を許さず、厳しく追及すべきだ。



北海道新聞 2015/05/27 08:55
社説:新安保法制 国会審議入り 国のあり方 議論尽くせ


 戦後日本の安全保障政策に大転換を迫る安保関連法案がきのう、衆院で審議入りした。
 計11本に上る関連法案は複雑多岐にわたる。各法案の細部に至るまで、徹底的な審議が必要なのは言うまでもない。
 ただその前に与野党に求めたいのは、自国の安全確保や国際平和への貢献のために、日本はどうあるべきかという骨太の議論だ。
 それを明確にすることが安保法制議論の土台になるからである。
 安倍晋三首相のこれまでの国会対応は誠実だったとは言い難い。
 安保政策は国民の十分な理解と納得の上に成り立つことを肝に銘じ、誠意ある答弁を求めたい。
 今回の安保法制の出発点は昨年7月の閣議決定だ。
 歴代内閣の憲法解釈を変え、集団的自衛権の行使を容認した。海外での武力行使に道を開くものであり、平和主義の放棄に等しい。
 中国の軍事的台頭など日本を取り巻く安保環境の変化に対応するためには、日米同盟を強化して抑止力を高める必要があるというのが政府の言い分だ。
 だが戦後日本が戦争に巻き込まれず、曲がりなりにも平和を維持してきたのは、日米同盟の抑止力があったからというより、憲法の歯止めがあったからではないか。
 日本の非軍事分野での貢献は国際社会で評価され、それが外交上の発言力の裏付けになっている。それを手放せば、日本や世界の平和にむしろ逆効果にならないか。
 こうした議論をする上で欠かせないのは、閣僚、国会議員双方の真摯(しんし)な姿勢である。
 首相はきのうの国会答弁で「海外派兵は一般に憲法上、許されない。武力行使の新3要件のもと、集団的自衛権を行使する場合でも全く変わらない」と述べた。
 だが政府は先に、新3要件を満たせば他国領域での武力行使が「許されないわけではない」とする答弁書を閣議決定している。
 菅義偉官房長官や中谷元・防衛相は敵基地攻撃も可能との見解まで示している。首相の発言は明らかにごまかしだ。
 首相は、野党が「自衛隊のリスクが増える」と指摘していることについて「木を見て森を見ない議論だ」と批判した。
 だが自衛隊員が戦闘に巻き込まれ、殺し、殺される危険が増すか否かは決して枝葉末節の問題でなく、国のあり方にも関わる重要な論点だ。首相がそこを明確に語らないのも、やはり不誠実である。



河北新報 2015年05月27日水曜日
社説:安保法案審議入り/歴史の評価に耐える議論を


 安全保障関連法案の国会審議が、きのう始まった。「平和憲法」に基づく戦後の安保政策の分岐点となる重要法案である。それだけの法案にして、文言は曖昧で国民の理解も遠い。成立ありきの拙速な審議は厳に慎むべきである。
 歴史的な法案となれば、その内容、審議いずれもが「歴史の評価に耐え得る」ものでなければならない。政府は現状、反対・慎重に傾く世論をも背景に厳しく切り込む野党の質問に誠意をもって対応するよう求めておきたい。
 本会議における各党の代表質疑を経て、議論は衆院平和安全法制特別委員会で本格化する。論点は広範にある。洗いざらい俎(そ)上(じょう)に載せ、具体的事例と法案を付き合わせて、国民の疑問を一つ一つ解いていく姿勢が欠かせない。
 審議を深める鍵の一つは、法案の規定と現実対応のずれを排除することである。「できる、できない」を規定する法案と「する、しない」の政策判断、すなわち政府の対応を巧みに織り交ぜて、追及をかわすような答弁は、理解を遠ざけるだけだ。
 最大の論点は、集団的自衛権の武力行使を容認する新3要件の厳密性と、行使の及ぶ範囲の特定についてだろう。
 安倍晋三首相は「一般的に海外派兵は許されていない」としつつ、中東・ホルムズ海峡を念頭に停戦前の機雷掃海を「例外」と主張する。支離滅裂的で裁量の広がりを暗示する。中谷元・防衛相や菅義偉官房長官は他国領域での武力行使や敵基地攻撃も可能との見解を示す。法案の曖昧さを踏まえた本音に聞こえる。
 安倍政権は憲法の解釈を変えて集団的自衛権行使容認に踏み切った。同様に、都合の良い解釈で自衛隊派遣が左右されかねない法規定は危うい。その必要性の深い検証とともに「できる、できない」の明確化を図る必要がある。
 他国軍に対する後方支援で戦闘現場に接近するというのに、自衛隊員のリスクが増大しないという理屈も分からない。戦闘に巻き込まれそうになったら活動を中止し撤収するというが、国際社会で通用することなのか。現場指揮官が判断を誤ることはあり得るし、同盟国などを見捨てる格好で任務を放棄できるのか。
 日米同盟強化による「抑止力」への期待値を大きく取り込み、総合的評価として海外派遣の頻発に伴うリスクの高まりを否定する。そうした説明からは国民の安全と自衛隊員のリスクを一緒くたにした印象を受ける。周辺の安保環境の悪化を強調する一方、派遣機会拡大のもたらす危険性を過小評価するならば、まっとうな議論を望みにくい。
 国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能とする新法で、歯止めとされる国会の事前承認も特定秘密保護法が運用されている下で実のある審議が保障されるのか。
 法整備による切れ目のない対応は自衛隊派遣の日常化につながろう。今なすべきことを冷静に見詰め、その範囲で法案に落とし込む慎重かつ丁寧な対応が求められる。
 広く深い、かみ合う議論を重ね、禍根を残さぬ審議を願う。国権の最高機関、国会の質が厳しく問われる局面だ。



信濃毎日新聞 2015年05月30日(土)
社説:安保をただす 首相のやじ 国会の歴史に汚点残す


 安倍晋三首相は安全保障関連法案をめぐり「丁寧な説明」をすると訴えてきた。
 しかし、国会での首相の言動を見ていると、丁寧さはほとんど感じられない。逆に、荒っぽさがかなり目に付く。
 おとといの委員会審議がそうだった。民主党の辻元清美氏が機雷掃海に伴うリスクを追及しているとき、「早く質問しろよ。演説じゃないんだから」と、耳を疑うようなやじを飛ばした。
 辻元氏も「首相は延々と答弁したではないか」と反論。審議が一時止まる事態になった。
 自衛隊の他国軍支援を地球規模に広げる法案だ。隊員が抱え込むリスクや国民が被る影響など、野党が細部にわたって疑問点を追及するのは当然だし、政府は真摯(しんし)に向き合う責任がある。
 辻元氏の質問は国民の懸念を代弁したものだ。首相は陳謝したけれど、民意を軽んじる傲慢(ごうまん)な態度との批判は免れないだろう。野党は引き続き首相の姿勢を厳しくたださねばならない。
 首相のやじは初めてではない。2月にもあった。民主党議員が当時の農相の献金問題を追及していた際、「日教組はどうするの」などとやじを飛ばしている。
 27日の委員会では、自身へのやじに「議論の妨害はやめていただきたい。学校で習いませんでしたか」と野党議員をたしなめた。自分の言葉を棚に上げ、やじを繰り返す首相の姿は見苦しい。
 そもそも、首相は野党から批判されると、感情的になって強い不快感を示すことが多い。新たな安保法制も含め、強いこだわりを持っている政策に対する異論や反論に耳を傾けようとしないかたくなさと通じる。
 首相はリスクの高まりなどマイナス面にはほとんど言及せず、国民の安全に資するといった主張を繰り返している。丁寧という言葉を逆手に取って、持論を押し通すことで国会審議を乗り切る考えだとしたら問題だ。
 政府が出した法案は集団的自衛権の行使容認の基準をはじめ、曖昧な点が多い。国会はその問題点や疑問点を明らかにする場だ。首相らの答弁を聞いていると、審議は深まらずに、成立ありきで時間が過ぎる恐れがある。
 戦後日本の安保政策の大転換をめぐる重要な論議だ。首相の言動は品位と理性を欠き、国会の歴史に汚点を残す。



信濃毎日新聞 2015年05月29日(金)
社説:安保をただす 専守防衛 定義を勝手に変えるな


 苦しい答弁であることは、当の政府が一番よく分かっているのではないか。
 集団的自衛権を行使しても、戦後日本の基本方針である「専守防衛」は変わらない―。
 安全保障関連法案をめぐり、政府はそう繰り返している。両立するはずのないものだ。つじつまを合わせようとすれば、無理な説明にならざるを得ない。
 専守防衛はそもそも、どんな考え方か。過去、防衛庁長官が「憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいうもの」と答弁している。
 具体的には▽相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使する▽防衛力の行使は自衛のための必要最小限度にとどめる▽保持する装備も同様に必要最小限度とする―と説明していた。
 自衛隊が武力行使するのは、日本が攻撃された場合に限る。それが大前提だ。他国への攻撃を武力で排除する集団的自衛権とは相いれない。
 安倍晋三首相は衆院の特別委員会で「わが国の存立が脅かされる事態に国民を防衛するのは専守防衛だ」とし、集団的自衛権も含まれるとの考えを示した。
 定義を勝手に読み替え、日本だけでなく、他国が「攻撃を受けたとき」も対象に加えようとしている。これでは専守防衛の範囲は伸縮自在になってしまう。
 明らかにこれまでとは違う考え方なのに、政府は定義を変えたことも認めようとしない。
 安倍政権は昨年7月の閣議決定で、憲法解釈上「集団的自衛権は行使できない」としてきた縛りを外した。解釈改憲への批判をかわすため専守防衛は変わらないと強弁するしかないのだろう。ここにきて、強引な解釈変更のしわ寄せが出た格好だ。
 専守防衛の方針の下、政府は日本が攻撃された場合についても抑制的な姿勢を取ってきた。集団的自衛権の行使が加わることで、こうした防衛政策の在り方も変わる可能性がある。
 例えば、装備を自衛のための必要最小限度とする考え方だ。他国に脅威を与えるような攻撃的な兵器を持つことは控えてきた。自衛隊が海外で武力行使できるようになれば、装備増強の動きにもつながりかねない。
 憲法解釈変更の問題点があらためてはっきりした。国会で厳しくたださなくてはならない。



信濃毎日新聞 2015年05月27日(水)
社説:安保をただす 法案審議入り 疑問に正面から答えよ


 批判や疑問に相変わらず正面から答えようとしない。
 安全保障関連法案が審議入りした。安倍晋三首相の答弁は、これまでの繰り返しや一方的な主張に終始している。
 法案は、集団的自衛権行使のための武力攻撃事態法改正案など10法案を一括した「平和安全法制整備法案」と、他国軍支援のための新法「国際平和支援法案」の2本立てだ。疑問点は多い。
 まず、法整備の必要性だ。首相は、日本を取り巻く安保環境の厳しさを理由に挙げている。北朝鮮のミサイル開発や自衛隊による緊急発進(スクランブル)の増加などを指摘する。
 安全保障上の課題があるにしても、集団的自衛権の行使や他国軍支援の拡大が日本の安全とどう結び付くのか。政府から納得のいく説明は聞かれない。
 首相は、日米同盟強化で抑止力が高まれば、攻撃を受ける危険性が下がるとする。しかし、米国は今でも日米安保条約で日本防衛の義務を負っている。地球規模での米軍支援が日本防衛の強化に本当につながるのか。
 集団的自衛権を行使する基準も問題だ。新3要件では、他国への攻撃で日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合、他に適当な手段がなければ武力行使できる。
 具体的にどんな状況がこれに当たるのか、はっきりしない。首相は「一概に言えない」と述べ、政府が総合的に判断するとした。
 「海外派兵は一般に憲法上、許されない」としながら、停戦前の機雷掃海は「例外」とする。中谷元・防衛相は敵基地攻撃も可能との見解を示している。政府の考え方一つで武力行使が際限なく広がりかねない。
 自衛隊員のリスクも重大な論点だ。首相はきのう、安全確保を強調した上で「それでもリスクは残る」とした。「国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、負ってもらうものだ」とも述べている。
 任務拡大に伴うリスクの増大は依然、認めようとしない。他国軍支援について「非戦闘地域」の縛りをなくすなど、海外活動の危険度を高める法案なのに、自国防衛での隊員のリスクに論点をすり替えている。
 「丁寧に説明する」と言いながら、反対意見に耳を貸そうとせず不誠実な答弁を続けるのでは、議論の深めようがない。



[京都新聞 2015年05月31日掲載]
社説:安保法制審議  疑念は膨らむばかりだ


 安全保障関連法案をめぐる国会審議で、かみ合わない議論が続いている。29日の衆院平和安全法制特別委員会は、重要影響事態法案をめぐる岸田文雄外相の答弁をめぐって紛糾し、再開されないまま散会した。
 議論が深まらないのは、政府側の答弁が抽象的で、野党の質問に正面から答えないことが多いからだ。安倍晋三首相は、野党議員の質問中に「早く(私に)質問しろよ。演説じゃないんだから」とやじまで飛ばし、反発を買った。
 戦後の安保政策の大転換となる重要な法案審議である。野党の追及が厳しくなるのは当然のことだ。首相をはじめ政府には数の力におごらず、国民の不安や疑問に真摯(しんし)に向き合うようあらためて求めたい。
 これまでの審議から浮かんだ疑問点は多い。
 政府は憲法が禁じる海外での武力行使について「一般的に許されない」としながら、武力行使の新3要件を満たせば「例外」があり得るとした。首相は停戦前の中東・ホルムズ海峡での機雷掃海を該当例に挙げたが、機雷掃海は国際法上、武力行使に該当し区別はない。「受動的、限定的」だからといって例外扱いする理由になるだろうか。
 首相はホルムズ海峡の機雷掃海以外に、他国領域での武力行使は「今は念頭にない」とする一方で、「これが全てというのは差し控えた方がいい」と述べてもいる。例外の拡大に含みを残した言い方であり、これを曖昧な形で認めれば、海外での武力行使はしないという一線を守ってきた戦後日本の平和主義は明らかに変質する。
 なのに首相は、こうした集団的自衛権の行使まで専守防衛に該当するとした。専守防衛は日本が直接攻撃を受けて発動する個別的自衛権行使を指してきた。いくら自国防衛が目的でも、海外での武力行使を含む集団的自衛権を専守防衛と言い張るのはあまりにも乱暴だ。
 後方支援への疑念も深まる一方だ。米軍などの武力行使を自衛隊が後方支援する重要影響事態での活動対象地域として、首相は南シナ海を否定しない。
 南シナ海では、中国の海洋進出に対し、米国が偵察飛行を強化するなど警戒感を高め、偶発的な衝突が起きかねない状況となっている。不測の事態が起きて自衛隊が米軍の後方支援にあたればどうなるか。米側からは自衛隊による恒常的な警戒監視活動に期待の声が出ており、厳しい制約を設けておかなければ危険な方向に行きかねない。
 今回の法案では、自衛隊による後方支援が地球規模に拡大する上、活動地域は「非戦闘地域」から「戦場以外」に広がり、戦闘中の米軍などに武器弾薬などの提供も行う。敵対勢力からみれば一体的行動であり、当然ながら攻撃の対象となる。
 自衛隊の活動が広がれば、隊員のリスクは高まると考えるのが普通だが、政府は危険な状態になれば退避させるなどとしてリスク増を否定し続けている。負の側面を直視し、議論を深めてこそ国民の理解も進む。そのことを政府はまず自覚してほしい。



[京都新聞 2015年05月27日掲載]
社説:安保審議入り  建前では議論深まらぬ


 安全保障関連法案の国会審議が始まった。
 集団的自衛権行使の法制化など自衛隊の海外活動拡大を図り、戦後の安保政策を大きく転換する法案である。だが安倍晋三首相は党首討論と同様、建前的な答弁に終始し、「外国の戦争に巻き込まれる」との国民の懸念に答えたとは言いがたい。首相はこの調子で最後まで国会を乗り切るつもりなのだろうか。
 典型は集団的自衛権行使の3要件についての説明だ。
 新たな安保法制では3要件の一つを「日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある事態(存立危機事態)」とする。日本の安全に関係がなければ、同盟国への攻撃があっても参戦しないことを意味するが、日本が直接攻撃された場合に行使する個別的自衛権に比べて発動要件は曖昧だ。
 民主党の枝野幸男幹事長は「明白な危険」について判断基準を明確化するよう求めたが、安倍首相は「個別具体的な状況に即し、政府がすべての情報を総合して客観的に合理的に判断するため、一概に述べることは困難」と述べ、明言を避けた。これだと時の政権でどのようにも判断できることになる。首相はこれを「厳格な基準」と説明するが、納得できる国民がどれだけいるだろう。国会の事前承認もあくまで「原則」で、厳格な歯止めとは言えない。
 海外での武力行使についても首相は「憲法上、許されない」としながら、中東・ホルムズ海峡での機雷掃海は「例外的に」可能だとする。機雷掃海は「受動的、限定的」で、「必要最小限の武力行使」などの新3要件に該当するというのが理由だ。
 しかし、枝野氏が指摘したように掃海には制空権と制海権を押さえる必要がある。他国軍との共同対処で相手国から攻撃され交戦になっても、武力行使が拡大することはないのか。そもそも公明党はホルムズ海峡での機雷掃海には否定的だ。
 また、新法制では戦闘中の他国軍への後方支援が、従来の「非戦闘的地域」から「現に戦闘が行われている現場以外」へと拡大する。首相は安全確保に努めるとした上で「リスクは残る」としたものの、リスク増への懸念は否定した。
 首相は法案を「丁寧に説明する」と繰り返す。だが目立つのは不都合な部分に口をつぐみ、批判には「的外れ」と切って捨てる姿勢だ。これでは議論は深まらない。



神戸新聞 2015/05/29
社説:安保法制審議/国民を置き去りにするな


 安全保障関連法案は、衆院特別委員会で2日目までの審議を終えた。
 「存立危機事態」と「武力攻撃切迫事態」は何が違うのか。「非戦闘地域」と「戦闘現場以外」はどちらのリスクが高いのか-。
 こんなやりとりを、果たしてどれだけの国民が理解できるだろう。聞き慣れない用語が飛び交い、安倍晋三首相や政府側は何を聞かれても決まり切った答弁を繰り返すだけ。都合の悪い質問は「木を見て森を見ない議論だ」などと切って捨てる。
 これで理解が深まるはずもない。国民を置き去りにしたまま、気がつけば戦後日本の安保政策が大きく変わっていた。そんな展開は避けねばならない。政府は分かりやすい言葉で、正面から答えるべきだ。
 例えば「専守防衛」である。
 安倍首相は、集団的自衛権の行使も「武力行使の新3要件」を満たせば専守防衛に当たると明言した。
 政府は従来、日本が武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使するのが専守防衛と説明してきた。一方、集団的自衛権は日本が直接攻撃を受けていない場合でも密接な関係にある他国が攻撃されれば武力を行使できる。これも専守防衛とするのは明らかな拡大解釈である。
 民主党の長妻昭、辻元清美両氏が「定義を変えたなら、はっきり言うべきだ」などと連日ただしたが、首相は「方針は全く変わらない」と繰り返すだけだった。
 海外派兵の歯止めに関する見解も極めて曖昧だ。首相は「一般に、海外派兵は憲法上許されない」としつつ、中東・ホルムズ海峡での機雷掃海は例外とした。「一般に」と注釈を付けることで、「例外」が政府の判断で拡大する恐れがある。
 自衛隊の活動範囲拡大に伴うリスクについては、国内の災害派遣でもリスクはある、などと反論した。論点のすり替えと言わざるを得ない。
 問題なのは、こうした安倍首相の姿勢である。
 長々と持論を展開して質問をはぐらかし、質問者には「早くしろ」などとやじを飛ばす。さすがに委員長から注意を受けた。まず不誠実な態度を反省し、改めるべきだ。
 日本は「戦争する国」になるのか。多くの国民が懸念を抱く。国会は厳しい議論を徹底的に行い、安倍政権が目指す新たな安保法制の実像を明らかにする責任がある。



神戸新聞 2015/05/27
社説:安保法案審議/徹底したリスクの議論を


 安全保障関連法案が、きのうの衆院本会議で審議入りした。
 集団的自衛権の行使を法制化し、自衛隊の海外活動を飛躍的に拡大するなど、国の基本姿勢の転換につながりかねない内容だ。
 安倍晋三首相は「今国会での確実な成立を目指す」とあらためて明言した。しかし、世論調査では約半数が政府、与党の方針に反対や慎重な姿勢を示している。
 なぜいま、安保政策全般を見直さねばならないのか。多くの人が抱く根本的な疑問である。
 首相は「日本を取り巻く安全保障環境の変化」に対して「切れ目のない備えが不可欠」と、いつも通りの答弁を繰り返した。新たな法制が必要となる理由を説得力ある言葉で示せたとは言えない。「国民の幅広い支持を得たい」のなら、もっと具体的に説明すべきだ。
 もともと、安保関連法案については、審議入りの前から首相と中谷元・防衛相の発言の食い違いが指摘されるなど、分かりにくい内容だ。
 先の党首討論で、首相は他国領域での武力行使について「一般的に認められない」と明言した。一方、中谷氏は「集団的自衛権行使の新3要件を満たせば可能」と述べた。
 「一体、どっちなのか」と首をかしげた人は少なくないだろう。
 ただ、首相はイランなどの領海にかかる中東ホルムズ海峡での機雷掃海活動は「例外」と語っている。国民の反発を気にして言葉を選びながらも、他国領域での武力行使を念頭に置いていることは間違いない。
 きのうも、集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」の例について問われ、米国艦船を攻撃する他国のミサイル基地を自衛隊が破壊する可能性に言及した。
 踏み込んだ答弁といえるが、これでは日本が先制攻撃したと受け取られる恐れがある。「専守防衛」を逸脱しないか、今後、その点について議論を深める必要がある。
 首相は、外国軍の後方支援に当たる自衛隊員が直面する危険性について、安全確保策を講じても「リスクは残る」と初めて認め、リスクとは無関係とした姿勢を修正した。野党はさらに隠れた「本音」を引き出してもらいたい。
 法案の問題点を徹底的にあぶり出す。きょうから始まる特別委員会審議の役割は大きい。



中国新聞 2015/5/27
社説:安保法案審議入り 事の本質、具体的に語れ


 安全保障関連法案がきのう国会で審議入りした。戦後の日本では個別的自衛権の枠内で自衛力を保持する政府の憲法解釈が定着してきたが、大きな変更が加えられようとしている。
 安倍晋三首相は衆院本会議で「政治家は平和を願うだけではなく、果敢に行動していかなければならない」と述べた。政治生命を懸けると受け取っていいのだろうか。ただ、今後まともな質疑が行われるのか憂慮すべき兆しもあるようだ。
 政府側には議論を回避する姿勢が早くも見える。一つ一つ丁寧な議論に努め、間違っても強行採決に持ち込むことがあってはなるまい。法案の中身もさることながら、首相の政治姿勢が問われている。
 議論回避に映る一つに自衛隊員のリスクの問題があろう。
 首相はきのうの本会議で「それでもリスクは残る」と述べ、この問題について明言しないこれまでの姿勢を一部、軌道修正したようだ。とはいえ野党側が指摘する危険の増大については、依然として認めなかった。
 最近の閣僚らの発言も併せて考えると、事の本質を誠実に語ろうとしているとは思えない。中谷元・防衛相にしても22日の記者会見で「法整備で得られる効果はリスクよりもはるかに大きい。日米同盟の抑止力で安全性も高まる」とまで述べた。首をかしげたくなる。
 この関連法が成立すれば集団的自衛権の行使が可能となり、外国軍への後方支援も「現に戦闘行為を行っている現場」以外では行うことができる。従来より前線に近づくことは十分に考えられよう。国連平和維持活動(PKO)でも、治安維持や駆け付け警護が可能になる。
 つまり隊員の活動の範囲は確実に広がる。そのリスクをことさら少なく見せようとするなら国会審議や世論をミスリードすることにつながろう。
 法案の根幹に関わる重大な点というのに首相の感覚のずれは見過ごせない。おととい「木を見て森を見ない議論が多い」と反論した。「自衛隊員のリスク以前に国民のリスクが高まっている」という理屈も唱えたが、筋違いだろう。隊員のリスクと国民のリスクをてんびんに掛ける意味が分からない。
 国会審議では、まず自衛隊がどんな場面でどんな活動をするのか、分かりやすく説明すべきだ。リスクに関しても想定される一つ一つのケースでつまびらかにすることが求められる。
 例えば外国軍との共同行動を行った際、自衛隊だけの判断で活動を中止できるものかどうか。そうした本質を考えるべきではないか。その上で、危険の増大を覚悟してでも取り組むべき法整備だというのなら、そうはっきり説明してもらいたい。
 「他国の戦争に巻き込まれることは絶対にあり得ない」と首相は繰り返してきたが、これも疑わしい。日米同盟強化によって抑止力が高まるとしても、軍事的な貢献は当然、米国から求められよう。その反作用をあまりにも軽視してはいないか。
 きょうからの特別委員会の審議では、野党の存在価値が問われよう。民主党と維新の党は、集団的自衛権行使についての立ち位置が微妙に異なる。少なくとも、政権が拙速に審議を進めようとすることに異を唱える点で共闘を求めたい。



=2015/05/30付 西日本新聞朝刊=
社説:安保国会審議 本当に縛りをかけるなら


 新たな安全保障法制を目指す法案の国会審議が本格化している。序盤の論戦で気がつくのは、安倍晋三首相ら政府側が、同法制によって大幅に拡大するはずの自衛隊の活動範囲を、できるだけ小さく語ろうとしている点だ。
 例えば、集団的自衛権の行使容認に伴う自衛隊の海外派遣について、首相は「海外派兵は一般に禁じられている」と繰り返し答弁した。歴代内閣の憲法解釈と変わらないとアピールしたいようだ。
 それならば自衛隊が他国領域で武力行使することは不可能のようだが、そうではない。政府は停戦前でもホルムズ海峡での機雷掃海はできるとしている。ただ、これも首相は「例外」と強調する。
 自衛隊の他国軍への後方支援に関しても、首相は「安全な場所で活動することは、従来といささかも変更がない」と説明し、野党が懸念する自衛隊のリスク増大を否定している。
 新法制に対する国民の不安を意識し、変化を小さく見せて国民を安心させることで、法成立を円滑に進める狙いがあるのだろう。
 しかし、従来の法制と新法制とでは、その性格が決定的に違う。新法制下では、自衛隊は明確な歯止めのないまま、従来はできなかった多くのことができるようになる。安倍首相はその上で、政策判断として、これまでと大きく違うことはやらない‐と言っているにすぎないのではないか。
 法整備を成し遂げ、自衛隊の可動域をいったん広げてしまえば、後は政策判断を変更していろんなことができる‐。そんな思惑が透けて見えるようだ。
 首相は実際に、他国領域での武力行使について「ホルムズ海峡の機雷封鎖への対応しか念頭にない」としながらも、「安全保障において、これが全てと言うことは差し控えたい」と、武力行使する事例の拡大に含みを残している。
 「やらない」と「できない」は違う。本当に自衛隊の海外活動を限定的に運用するつもりなら、法案に「できない」ことを書き込み、縛りをかけるべきだ。



=2015/05/27付 西日本新聞朝刊=
社説:安保審議入り 「政府の判断」で大丈夫か


 安倍晋三政権が今国会で成立を目指す安全保障関連法案がきのう、衆院本会議で審議入りし、趣旨説明と質疑が行われた。
 初日の議論で取り上げられたのは、最大の論点である集団的自衛権行使の問題だ。
 わが国はこれまで、集団的自衛権の行使は許されないとの憲法解釈の下に、自衛隊の海外での武力行使を認めてこなかった。
 しかし、安倍政権が集団的自衛権の行使を容認したことで、自衛隊が歯止めなく海外での戦闘に参加するようになるのではないか、との不安が広がっている。
 法案では、集団的自衛権の行使が認められる要件として「日本と密接な関係のある他国への攻撃で、わが国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合(存立危機事態)などと規定している。
 政府は、どういう根拠でこの事態を認定するのか。政府が勝手な判断で「存立危機事態だ」と認定することはないのか。
 この点を問われた安倍首相は「一概に述べるのは困難」「攻撃国の意思などを総合的に考慮し、客観的、合理的に判断する」などと、抽象的な説明に終始した。
 これまでの自衛権発動は「日本が攻撃された場合」という明確な基準があった。それを変更し、具体的な基準を示さずに「政府が総合的に判断する」で済ませようというのは、「判断は政府に任せろ」と言っているに等しい。それを「歯止め」とは呼べない。
 また、安倍首相は集団的自衛権に関連し「従来通り海外での武力行使は認めない」としながらも、ホルムズ海峡の機雷除去は例外として容認する方針を示した。最初から例外が存在すること自体、政府が恣意(しい)的に判断すると認めたようなものだ。そのうち「例外」がどんどん増えるのではないか。
 この法案に関する政府の説明を聞いても、納得のいかない点が多い。日本の将来を左右する重要法案である。拙速は許されない。国民の理解が得られるまで、政府は法案の成立を急いではならない。

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