2015-06-14(Sun)

高齢者の地方移住提言 (1)一極集中の是正には遠い

地方の負担増では困る 随分身勝手な国の論理だ 地域の持続を柱に据え

<各紙社説・論説>
読売新聞)東京圏の高齢化 膨張する介護需要へ備え急げ(6/10)
毎日新聞)東京圏の介護 危機を直視し対応急げ(6/5)
日本経済新聞)高齢者の地方移住は実現性が高い政策か (6/9)
北海道新聞)高齢者移住提言 地方の負担増では困る(6/7)
東奥日報)知恵出し合い議論深めよ/高齢者の地方移住(6/10)
秋田魁新報)高齢者の地方移住 地域の持続を柱に据え(6/13)
岩手日報)地方移住 呼び込み合戦ではなく(6/10)
福井新聞)高齢者の地方移住 随分身勝手な国の論理だ(6/13)
京都新聞)高齢者の移住  促進の先走りを危ぶむ(6/9)
神戸新聞)高齢者の移住/一極集中の是正には遠い(6/9)

概要版 「東京圏高齢化危機回避戦略」概要版
http://www.policycouncil.jp/pdf/prop04/prop04_digest.pdf
提言 「東京圏高齢化危機回避戦略
http://www.policycouncil.jp/pdf/prop04/prop04.pdf






以下引用

日本創成会議・首都圏問題検討分科会 提言
東京圏高齢化危機回避戦略」記者会見
http://www.policycouncil.jp/
日時: 平成27年6月4日(木)14時15分から30分程度
会場: 日経カンファレンスルーム(日経ビル6階)
資料
資料はこちらからもダウンロードできます。一部資料はExcelファイル版もございます。
概要版
東京圏高齢化危機回避戦略」概要版
http://www.policycouncil.jp/pdf/prop04/prop04_digest.pdf
提言
東京圏高齢化危機回避戦略
http://www.policycouncil.jp/pdf/prop04/prop04.pdf
資料1
東京圏高齢化危機回避戦略」図表集
http://www.policycouncil.jp/pdf/prop04/prop04_1.pdf
資料2
「一都三県における介護施設の収容能力の現状と見通し」
http://www.policycouncil.jp/pdf/prop04/prop04_2.pdf
資料3
「全国各地の医療・介護の余力を評価する」
http://www.policycouncil.jp/pdf/prop04/prop04_3.pdf
(資料3追加資料)「介護ベット準備率」算出に用いたデータについて
http://www.policycouncil.jp/pdf/prop04/prop04_4.pdf
(エクセル資料)※閲覧の際はいったんファイルを保存したうえで開くようにしてください。
• 一都三県の介護入所施設の収容能力の現状と見通し(資料2:EXCEL版)
http://www.policycouncil.jp/pdf/prop04/prop04_5.xlsx
• 全国344圏域の医療・介護余力レベルマトリックス(大都市、地方都市、過疎地域)
http://www.policycouncil.jp/pdf/prop04/prop04_6.xlsx
• 全国344圏域の医療・介護余力レベル一覧
http://www.policycouncil.jp/pdf/prop04/prop04_7.xlsx
• 全国344圏域 市区町村対応表
http://www.policycouncil.jp/pdf/prop04/prop04_8.xlsx

***************************************************



読売新聞 2015年06月10日 01時10分
社説:東京圏の高齢化 膨張する介護需要へ備え急げ


 東京と埼玉、千葉、神奈川の1都3県では、今後10年で介護需要が45%増え、13万人分の介護施設が不足する――。
 民間有識者で作る「日本創成会議」が、東京圏の急激な高齢化に警鐘を鳴らす推計を公表した。
 75歳以上の高齢者は、2025年までに全国で533万人増加する。団塊の世代がこの年齢層になるためだ。東京圏には、その3分の1の175万人が集中する。高度経済成長期に地方から移り住んだ世代が年老いる結果だ。
 介護だけでなく、医療サービスの不足も懸念される。東京圏の入院需要は、今後10年で20%超の伸びが見込まれる。
 地価の高い東京圏で、病院や介護施設を増やして、需要を賄うのは難しい。医療・介護の人手不足も壁になる。必要な人材を確保しようとすれば、地方の人口減に拍車をかける恐れがある。東京圏だけの問題にとどまらない。
 創成会議が解決策の柱として打ち出したのが、高齢者地方移住である。元気なうちに、医療・介護の受け入れ余力がある地方に住み替え、将来に備える。その候補地として、大分県別府市や北海道函館市など41地域を挙げた。
 地方移住の希望を持つ都市部の中高年層は少なくない。地方の雇用創出や経済活性化も期待できる。選択肢として検討に値するだろう。移住希望者に対し、相談窓口の整備や費用補助などの支援を強化することは必要だ。
 ただし、移住先での仕事の確保や家族の理解など、実現へのハードルは高い。移住者の医療・介護費を東京圏と地方でどう分担するのかという課題もある。
 そもそも、移住するだけの経済力がある高齢者は限られる。在宅医療・介護を充実させ、病院や施設に過度に頼らず、住み慣れた地域で暮らせるようにするのが、政府の政策の基本だ。その体制作りをおろそかにしてはならない。
 創成会議は、医療・介護分野でのロボットやICT(情報通信技術)の活用による業務効率化、空き家を利用した医療・介護拠点の整備なども提言している。限られた人材と土地を最大限に生かす努力が求められる。
 忘れてはならないのは、病気や要介護状態になるのを予防することだ。生活習慣の改善や適度な運動によって健康寿命を伸ばす。自治体や企業は、そうした対策に力を入れてもらいたい。
 東京圏の高齢化を乗り切るには多面的な取り組みが重要だ。



毎日新聞 2015年06月05日 02時35分
社説:東京圏の介護 危機を直視し対応急げ


 危機が迫っていると受け止めるべきだろう。東京都と神奈川、千葉、埼玉3県の「東京圏」の医療・介護に関する政策提言を、民間機関「日本創成会議」の分科会(増田寛也座長)が公表した。
 急速に高齢化が進む東京都や近隣3県は今後10年で介護ベッドなど施設が不足し、2040年には圏内の多くの地域で施設の受け入れ態勢が崩壊しかねないと警告した。介護の崩壊を政府は全力をあげて食い止めるべきだ。
 日本創成会議は昨年、地方の人口減少を警告する「消滅自治体リスト」を公表した。今回は、いわゆる団塊の世代が75歳以上になる25年以降を想定し、超高齢化に対応する能力を地域別に点検した。
 改めて裏付けられたのが東京圏の状況の深刻さだ。東京都と近隣3県で25年までに75歳以上の後期高齢者は175万人増える。とりわけ3県の介護需要は今後10年で5割程度増え、介護ベッドなどの余力は一気に減少する。
 現在でも東京23区では多くのお年寄りが周辺の地域に移住することで、介護需要をしのいでいると提言は指摘している。このままだと東京圏全体で介護や医療施設が飽和状態となり、多くのお年寄りが介護難民となりかねない。40年時点を推計した地域別リストでは東京圏の多くの地域で介護需要と施設の受け入れ能力に深刻なギャップが生じている。
 提言が、東京圏で介護や医療に最大約90万人の新たな労働力確保を迫られるとした点も重要だ。人材の多くを地方からまかなうことになれば、政府が是正に取り組むはずの東京一極集中が逆に加速してしまう。
 在宅介護を拡充し、住み慣れた地域で老後を過ごせるよう医療・介護を進める原則は大切だ。ただ、東京圏の場合、単身世帯の多さやコストの高さなど特殊な要因を抱えている。都県を超えた広域対策や、大規模団地の再生など多角的な取り組みを提言が促していることは理解できる。外国人労働者も含め、人材確保策の検討を急ぐべきだ。
 解決策として提言は地方移住にも力点を置いている。高齢者医療や介護施設に余力があると試算した41の地域を例示し、東京圏から移住する場合の「候補」として挙げた。
 中高年が元気なうちに移住を進めることは一案だろう。政府は高齢者が移住する拠点構想を検討している。就労年齢の高齢化に対応した雇用確保や、地域医療機関の維持など、綿密な環境整備が欠かせない。
 提言が危機到来を警告した25年は、東京五輪から5年後にあたる。政府は東京圏の抱える課題により神経を注ぎ、備えを急ぐべきだ。



日本経済新聞 2015/6/9付
社説:高齢者の地方移住は実現性が高い政策か


 東京圏で今後急速に膨らむ高齢者の介護・医療の需要にどう応えるのか。民間有識者でつくる日本創成会議がこの問題に関する提言をまとめた。
 同会議の試算では、東京圏で暮らす75歳以上の高齢者は2025年までの10年間で175万人も増える。介護サービスへの需要も埼玉、千葉、神奈川で5割程度、東京でも4割近く増える。
 東京では現在でも、特別養護老人ホームへの入居を待っている高齢者が4万人を超すとみられる。今後、ますます介護施設などの不足が深刻になるだろう。
 同会議は対策として、地方への高齢者の移住を打ち出した。東京圏とは対照的に医療や介護の受け入れ体制が整っている41地域を候補地として挙げた。
 様々な調査をみると、地方への移住を検討したいという人は中高年齢層でもかなりいる。しかし、実際に移住できるかといえば、家族の理解や仕事の確保など問題を抱えているのが実情だ。
 政府や自治体がまずすべきことは高齢者が地域で暮らし続けられるようにすることだ。生活習慣の見直しを助言したりして健康寿命を延ばす。在宅のまま介護を受けられるように人材の確保に努める。地方への移住を促す前に取り組むべき課題はたくさんある。
 政府は地方創生策として、元気な時から地方に引っ越し、将来、介護や医療サービスも受ける「日本版CCRC」構想を進めている。同会議の提言はこの構想を後押しする狙いもあるのだろう。
 まち・ひと・しごと創生本部によると、この構想を地方版の総合戦略に盛り込む予定の自治体が75あるという。政府は自由度の高い交付金を使って支援する方針だ。
 人材誘致は地域を活性化するうえで必要だが、政府からお金をもらえるからというなら、やめた方がいい。本当に需要があるのかどうか、冷静に判断すべきだ。
 政府の支援を受けて土地を造成したり、施設を建設したりしたが、結局失敗した事例は数多くある。横並びはもっとも危うい。
 地方移住を希望する人を後押しすることは悪い話ではない。空き家を使って高齢者に試しに地方で暮らしてもらうなど、地道な取り組みこそが大事だ。
 政府も地方に施設整備を促す前に、移住の障害になっている背景には何があるのか、まずはそこから慎重に検討すべきだろう。



北海道新聞 2015/06/07 08:50
社説:高齢者移住提言 地方の負担増では困る


 東京圏(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県)で高齢者が急増し、医療介護施設が不足するため余力のある地方への移住を促す―。
 こんな提言を、民間有識者らでつくる日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)が発表した。
 問題の深刻さはわかる。提言の視点が重要なのも理解できる。
 だが、高齢化の負担を地方に押しつけるような粗っぽい内容で、にわかには賛成しがたい。
 高齢者も地方も先行きに安心できるような対策が求められる。これを機に、政府は抜本的対策の議論を急ぐべきだ。
 提言によると、東京圏は今後10年間で、いわゆる団塊の世代が仲間入りすることで、75歳以上の高齢者が175万人増える。
 そのために医療サービスが追いつかなくなり、介護施設も不足し「高齢者が奪い合う事態になる」と指摘している。
 だからといって、地方を高齢者の受け皿にするというのは、あまりに短絡的だろう。
 すでに北海道をはじめ地方は急速な高齢化と人口減少に直面し、克服への道を探しあぐねている。
 医療や介護分野では、地方は東京圏以上に人材が不足している。施設も縮小傾向だ。地方に余力があるとの見方は納得しがたい。
 提言は高齢者の移住先としてふさわしい地域に、函館や室蘭など道内6地域を含む全国41地域を挙げた。だが、その選定基準には医療の質や在宅サービスの充実度などが考慮されていない。
 対象地域の中には移住者増への期待もあるが、医師や介護の担い手不足がさらに加速するといった不安の声も強い。当然だろう。
 必要なのは、東京目線ではなく、地方の実態をしっかりと把握した議論である。地方が態勢整備に苦心しているなら、政府は支援を惜しんではならない。
 地方の自立を後押しする施策を踏まえることも大事だ。
 同会議は以前、人口減少をめぐって「消滅可能性」という言葉を使った試算を発表し、議論を巻き起こした。政府が「地方創生」を重要課題とするきっかけとなった。
 衝撃を与えて、政策対応を促す手法は今回も同様と言える。
 ただ、その内容からは地域で頑張っている人たちへの配慮がなかなか感じられない。残念だ。
 人口減少や高齢化への対応策は暮らしの安心に直結する。それゆえに、高齢者や地方が抱えている思いをすくい取る丁寧な議論を欠いてはならない。



東奥日報 2015年6月10日(水)
社説:知恵出し合い議論深めよ/高齢者の地方移住


 東京圏の75歳以上の高齢者が今後10年間で175万人増え、医療や介護のサービスが追いつかなくなるとして、民間の日本創成会議が、高齢者の地方移住を促すよう政府や自治体に求める提言をした。介護施設や病院、人材に余裕があり移住先にふさわしい地域として、青森、弘前の両市を含む全国41地域を挙げた。
 創成会議は昨年、市町村の約半数が将来消滅する可能性があるとのショッキングな報告を出したが、今回も早速論議を呼んでいる。地方側からは、都会の高齢化の負担を地方に単に押しつける話であれば、にわかに受け入れがたいと、警戒する声が強い。
 県内の首長や医療福祉関係者からも「施設や人材に余力があるわけではない」と創成会議の評価と現実とのギャップを指摘する声や「医療費や介護給付費の増加による自治体の負担が増えない仕組みが不可欠」との意見が聞かれる。
 ただ、提言の中身は深刻な問題をはらむ。例えば、今後急増する東京圏の高齢者の需要を賄うには、介護や医療の人材を80万~90万人増やす必要がある。一方で、地方の高齢者人口は減少へと向かう。この状況を放置すれば、東京に人材が集められ、東京一極集中、地方の人口減少に拍車を掛けることになるだろう。
 東京圏の行政上の都合だけで移住を促すのなら空論に終わりかねないが、この提言を地方創生を考える契機ととらえ、高齢者移住を地域づくりにつなげる方策があるのか知恵を出し合い、議論を深める必要があるのではないか。
 政府は、高齢者の地方での受け皿として「日本版CCRC」の実現を検討している。CCRCは高齢者が移住先で健康でアクティブな生活を送り、医療介護が必要となった時には継続的なケアが受けられるコミュニティーづくりを意味する。米国で盛んだ。
 本格的な老年期に入る前から、リタイア後の移住先として本県を選んでもらう仕組みづくりは、人口減少対策として有効なはずだ。県が8日に示した人口減少対策「県総合戦略」の素案でも、社会減対策の一つとして、本県への移住と若者をはじめとする「人財の還流・定着の促進」を政策目標に掲げている。
 自治体の財政負担や人材の手当てなど克服すべき課題については、県などがリーダーシップをとり、地方側が提言し、国を動かすことも重要だろう。



秋田魁新報 (2015/06/13 付)
社説:高齢者の地方移住 地域の持続を柱に据え


 東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川の4都県)の75歳以上の高齢者が今後10年間で急増し、医療・介護の受け入れが困難になる。このため有識者でつくる「日本創成会議」は、医療・介護の施設や人材に余裕がある秋田市とその周辺など全国41地域に、東京圏から高齢者の移住を促す提言をまとめた。
 地方からは「乱暴だ」「負担を押し付けるのか」などと反発の声が上がっている。
 一方、退職者らの地方移住は人口減が著しい本県などにとって地域を持続させる手だてとなり得る。政府も地方創生施策の一つとして移住を挙げる。大都市の高齢者が健康なうちに地方に移り住み、将来、必要に応じて医療・介護が受けられる地域づくりを促進するとしている。
 移住者の思いを尊重しつつ、地方の負担増も避けて、移住の受け入れを活性化につなげることはできないだろうか。
 東京圏の75歳以上人口は、団塊の世代が全て後期高齢者(75歳以上)になる2025年までの10年間で175万人増え、総数で572万人になると推計されている。この介護需要に対応しようとしても、東京では土地の確保が難しい上、介護施設の定員1人当たりの整備費用は本県の2倍以上掛かる。人材不足も重なり、介護の施設整備には限界があるという。
 一方、本県の高齢者人口(65歳以上)は20年にピークを迎え、約35万6千人となる。要介護認定者は30年まで増え、その後は減少に転じるとみられる。介護の従事者や事業所が仕事を求めて東京圏に流出する懸念も出てくる。
 こうした見通しから創成会議は、東京圏から地方への高齢者の移住は介護事業の雇用を生み、人材の流出防止にもつながるとしている。しかし、介護を地方に押し付けることになりかねないばかりか、地元自治体にとっては介護保険の負担増ともなり、本県をはじめ地方には賛否両論ある。
 移住する高齢者にすれば、介護施設が整っているとしても、長年慣れ親しんだ場所から離れて暮らすのは決して簡単な話ではない。
 東京在住者を対象にした国の調査によると、50代男性の半数、60代男女の3割が地方に移住したいとの意向を示している。ただ、就労や生活の利便性、移住先の情報不足を懸念材料に挙げている。不安材料を的確に捉え、細やかに対応することが、移住の実現には欠かせない。
 東京圏で長年働いた本県出身者に的を絞り、移住を呼び掛ける手もある。定年退職を機に新たな人生を古里で過ごし、培ったノウハウを還元したいと思っている本県出身者は少なからずいるはずだ。
 どうやってその人たちを掘り起こし、移住条件を整えるか。移住を決断させるには、就労や生活の支援面で思い切った条件の検討が必要となりそうだ。



岩手日報 (2015.6.10)
論説:地方移住 呼び込み合戦ではなく


 遠野市で集落営農を行う宮守川上流生産組合は、常勤職員10人の半数を地域外から来た人が占める。静岡県から移り住んだ人もいる。
 技術を持つ人を外部に求め、職安を通じて雇用した。地元は人口減が進み、地域の維持が難しくなりつつある。高齢化で人手も足りず、パートの確保もままならない。
 既に高齢化した地方に、東京の高齢者を移住させようという政府方針に多田誠一組合長の疑問は尽きない。「医療や介護の負担で地方財政が持たない」と心配する。
 国の地方創生に関連し、地方への移住を進めて東京一極集中を緩和する論議が始まった。民間団体の日本創成会議は、高齢者の地方移住を促すよう政府に求めた。
 背景には東京圏の高齢者が急増し、医療や介護の体制が追いつかないことがある。移住先として病院や介護施設、人材に余裕のある盛岡など全国41地域が示された。
 政府は米国で盛んな「CCRC」の日本版を検討する。健康なうちに地方へ移り、介護が必要になっても暮らし続けてもらう。地方の態勢づくりは交付金で支える。
 人口減が深刻な地方は医療、介護分野で若者の雇用を生むメリットがある。だが要介護の高齢者が増えると、多田さんが危ぶむように自治体財政を圧迫しかねない。
 地方全体の活性化には高齢者だけでなく、若者や子育て世代を含むバランスのとれた移住を進める必要がある。国と地方が歩調を合わせた取り組みが不可欠だ。
 政府は5月、地方移住の国民会議をつくり、国民運動として進めると宣言した。既に都市部の若者や定年退職者が農村に定住する「田園回帰」の動きが見られる。
 これらに対応し、県や県内市町村の取り組みも本格化した。全県的な連携の仕組みをつくり、移住の情報発信や相談対応を強化する。
 ただ全国一斉の地方創生により、各地で似たような施策が行われている。希望者に紹介する空き家バンクは他県でも広く実施しており、移住者に奨励金や住宅改修の補助金を出す自治体も多い。
 これが過熱すると自治体間の競争が激化し、金額が跳ね上がることも予想される。単なる移住者の呼び込み合戦にしてはならない。
 引っ越した後、長続きしない例は少なくない。移住先進地といわれる島根県海士町(あまちょう)の定着率は55%にとどまる。本県でも気候の厳しさや人間関係になじめず、東京などへ戻るケースが散見される。
 移住者を長期的にサポートする人や仕組みが大切だ。その前提として遠回りでも、総合的な戦略に基づく魅力ある地域づくりが肝要になろう。



福井新聞 (2015年6月13日午前6時55分)
論説:高齢者の地方移住 随分身勝手な国の論理だ


 日本の高度な繁栄を支えてきたのは高齢者たちであり、特に団塊の世代の役割は大きい。東京圏ではこの世代の介護や医療対策に窮する時が近づき、処方箋として地方分散計画がクローズアップされてきた。
 高齢者の地方移住促進は政府が昨年末にまとめた「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に明記されている。「シニア世代を地方に呼び込め」という号令は、人口減に苦慮する地方の活力源にもなるわけだ。
 民間の日本創成会議が今月初めに同趣旨の施策を提言したことで、動きが加速してきた。東京圏の75歳以上の高齢者が今後10年で急増すると警告。介護施設や病院、人材に余裕がある26道府県41地域への移住を促すよう求めた。本県の福井・坂井地域も入っている。
 創成会議は昨年5月、市町村の約半数が将来消滅する可能性があるとの報告を出したが、明らかに安倍政権の地方創生戦略と連動している。ショッキングな表現で国民に危機意識を持たせ、政策を促進させる相乗効果を狙っている。
 人もカネも一極集中する東京がいずれ高齢者問題が深刻化することは織り込み済みだ。本県など地方から大量に若者を吸収しているが、女性の合計特殊出生率は全国最下位。良好な子育て環境がなく、それが高齢化を加速させている。
 国立社会保障・人口問題研究所の推計だと、東京圏では今後10年間で75歳以上の後期高齢者は175万人増え、572万人となる。増加数は全国の3分の1を占める。需要を賄うには介護や医療の人材を80万~90万人増やす必要がある。
 だがこれを進めれば地方の人材が一層流出。それにはまだ施設や人材に余裕があり、サービス費用も安い地方移住が良策。一挙両得に見えるが、国や大都市のご都合主義にすぎず、歓迎の一方「若い人材を吸い取り、重荷になると押し返す。地方は負担ばかり」という自治体の反発もある。
 「終(つい)の棲家(すみか)」を国から押しつけられる筋合いはない。心から住みたい所に住むのが当たり前。それが福井であるなら大歓迎である。
 政府は来年からの新型交付金で移住を後押しする。16年度予算で受け入れ拠点整備へモデル事業を実施。地方は交付金をてこに、施設整備を進めるという流れだ。空き家対策にもなる。
 健康なときから地方に移り住み、介護や医療が必要になっても暮らし続けられる退職者のコミュニティー-米国で盛んなこの考え方は「CCRC」と呼ばれる。4月の国調査で全体の11%に当たる202市町村が取り組む意向を示す。
 本県は高齢者受け入れに前向きだが、医療費増による財政負担増を懸念する自治体もある。国の財政措置がいつまでも継続されるわけではない。東京圏との濃密な連携や国の医療、介護制度の抜本改革も必要だ。
 急速に進む人口減と少子高齢化、社会保障費増、さらに東京のお荷物化。将来を見据え、的確な政策を打ってこなかった国家政策のツケが回ってきたのだ。



[京都新聞 2015年06月09日掲載]
社説:高齢者の移住  促進の先走りを危ぶむ


 民間団体「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)は、東京圏の高齢者が急増するとして、医療・介護の体制に余裕がある地方都市に移住を促すよう提言した。
 政府も呼応し、東京一極集中の是正や地方の人口減問題の改善などにつながるとして、高齢者移住を推進する方針を示した。
 危機感は理解できる。だが、移住促進策が独り歩きし、お年寄りの居住権を侵すような事態にならないかを憂慮する。
 老いても住み慣れた地域で暮らし続けられる社会にしよう-。そんな理想を目指して在宅ケアの充実に努めてきたのが日本の医療・介護だ。世界潮流でもある。会議の提言は根底から覆す口実になりかねない。慎重な議論を求める。
 提言では、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川4都県)の75歳以上人口は今後10年間で175万人増える。介護施設や高齢者住宅が不足するが、土地の確保が難しい。医療・介護の担い手も必要になるが、地方の若者流出に拍車をかける恐れがあるという。
 そこで受け皿があり、サービス費用も安い地方に出てもらおうという発想である。地域の介護施設数などから、移住適地として福知山市や富山市など41地域の名も列挙した。当該自治体から歓迎の声もあるが、「高齢者が来れば医療費支出が増える。若者に来てほしい」との困惑も少なくない。
 人口が急減する中、限られた施設や人材を有効活用すべきとの提言意図は分からぬでもない。
 移住高齢者向けの施設や住居を整えた米国の退職者共同体「CCRC」(約2千カ所)も念頭に置く。ただ、米国は裕福な高齢者を集めた営利事業の側面が強い。移住に抵抗が少ない国民性もある。
 日本でも老後は「故郷に帰りたい」「田舎暮らしをしたい」と望む人たちに、選択肢として移住環境を整えることはあってよい。医療・介護費用を転居前の自治体が負担する「住所地特例」を使いやすくする方策なども考え得る。
 だが、東京が大変だからと危機をあおり地方移住を促すやり方は、高齢者も受け入れ難いのではないか。優先すべきは、高齢者の尊厳を守る地域ケアの充実だろう。
 創成会議メンバーは元官僚が目につく。東京からの目線で、地方を一律に輪切りする姿勢が気になる。昨年も「消滅可能性都市」を名指しし、政府が即応して都市のコンパクト化策などを示した。政府が言いにくいことを「民間」の名で代弁していないだろうか。



神戸新聞 2015/06/09
社説:高齢者の移住/一極集中の是正には遠い


 東京への一極集中がもたらした深刻なひずみと言えないか。
 昨年、「消滅可能性都市」の公表で議論を呼んだ民間団体「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)が、今度は医療・介護の需要が増大する東京圏から地方へ、高齢者の移住を促進する提言を行った。
 移住先の有力候補に挙げたのが、京都府福知山市や大分県別府市など26道府県の41地域だ。いずれも医療・介護施設や人材に余裕があり、サービス費用も安いなど、体制が充実しているとされる。
 東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県は10年後の2025年、75歳以上の人口が今より175万人多い572万人に膨らむと予想される。
 介護施設やサービス付き高齢者住宅などの不足は深刻化が避けられない状況だ。新たに施設を整備しようにも土地の確保すら難しい。
 介護などの人材は25年までに、80万~90万人増やさなければならない。だが、人材を地方に求めれば、さらなる人口流出を招く。一極集中に拍車を掛ける恐れがあるのだ。
 東京圏の介護システムは崩壊の危機にひんしている。地方への移住促進は、こうした危機を脱するための窮余の策と言える。
 政府も一極集中是正に向け、地方創生の柱に掲げる。「人口減少問題の改善や消費需要の喚起、雇用維持・創出につながる」(菅義偉官房長官)と推進する方針だ。
 16年度に創設する新型交付金は、高齢者移住に取り組む自治体に優先配分するという。
 しかし、受け手である地方自治体の中には、財政事情が厳しい中、「負担が増すばかり」と訴える首長も少なくない。抜本的な解決に至らぬまま、ここへ来て「大都市で働いて税金を納め、老後の医療・介護は地方で担え」ではあまりに都合が良すぎるのではないか。
 住み慣れた地域からの移住が高齢者に経済的、精神的な負担を強いることも考慮すべきだ。
 兵庫県の井戸敏三知事は提言への反論ではないとしながら、「(高齢者問題への対応は)全都道府県共通の課題。地方に移住させれば解決する話ではない」と指摘した。
 対症療法だけでは、一時的な緩和策にしかならない。危機の要因を取り除くために、東京一極集中を根本から転換する必要がある。

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