2015-06-15(Mon)

高齢者の地方移住提言 (2)都会の論理は賛同できぬ

地方の視点反映した議論を 受け皿の意向を踏まえよ 数合わせでは無理がある

<各紙社説・論説>
山陰中央新報)高齢者の地方移住/受け入れ支援策が必要だ(6/6)
山陽新聞)高齢者の移住 地方受け入れに条件必要(6/13)
愛媛新聞)高齢者の地方移住提言 安直な数合わせでない解決を (6/7)
高知新聞)【高齢者の移住】まず地に足着けた議論を(6/6)
西日本新聞)高齢者地方移住 数合わせでは無理がある(6/10)
熊本日日新聞)高齢者の地方移住 都会の論理は賛同できぬ(6/9)
宮崎日日新聞)高齢者移住提言 地方の視点反映した議論を(6/11)
南日本新聞)[高齢者地方移住] 受け皿の意向を踏まえよ(6/13)
琉球新報)高齢者移住 抜本的対策こそ必要だ(6/8)




以下引用



山陰中央日報 ('15/06/06)
論説 : 高齢者地方移住/受け入れ支援策が必要だ


 民間団体「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)が、東京圏の高齢者地方移住を提言した。医療・介護の施設や人材に余裕がある地域を独自に調べ、26道府県41地域を挙げている。山陰地方では松江、米子、鳥取が候補になったが、受け入れには十分な支援と議論が必要だ。
 創成会議は昨年、市町村の約半数が将来消滅する可能性があるとの報告を出し、安倍政権に地方創生を促した。現在、全国の自治体では地方創生総合戦略の作成が進んでいるが、そのなかで東京一極集中を是正するために、首都圏のシニア世代を地方に呼び込む方策が重要なテーマになっている。
 一方、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川の4都県)では、高度成長期に流入した「団塊の世代」が退職し、介護や医療が必要な年齢に近づき、対策が急務となった。東京圏では今後10年間で、75歳以上の後期高齢者は175万人増え、572万人となる。その増加数は全国の3分の1を占める。需要を賄うには、介護や医療の人材を80万~90万人増やす必要がある。
 逆に地方の高齢者人口はピークを越え始め、この状況を放置すれば東京に介護、医療の人材が吸収され、一極集中に拍車を掛ける恐れがある。解決策の一つとして政府が挙げるのが「日本版CCRC」の検討だ。CCRCとは「健康なときから移り住み、介護や医療が必要になっても暮らし続けられる退職者のコミュニティー」を意味する。
 シニア世代の移住は、うまく回せば地方の雇用を守り経済を維持するチャンスだ。国内では202市町村がCCRCに関心を示す。自治体が地方創生の戦略をつくる際に、医療や介護の将来見通しを立て、Uターンなどの受け入れ策を検討するべきだ。
 移住は、都市部の自治体に、介護施設整備の負担を軽減できるメリットがある。必要な施設を地方に分散整備できれば、都市と地方の好ましい連携が生まれるだろう。菅義偉官房長官も「地方の人口減少問題の改善や地域の消費需要の喚起、雇用の維持・創出につながる」と述べ、地方創生の柱として高齢者移住を推進する方針を示した。
 政府は来年からの新型交付金で移住を後押しする。地方側は交付金をてこに、施設整備を進めることができる。また、当面は増え続ける空き家を利用した移住支援や、移住者の生活見守りサービスを行う組織づくりなど、ソフト面の充実に交付金を生かす方法もある。
 地方には「高齢者は医療費を圧迫する」として、懸念がある。移住を国民的な運動に高めるには、この懸念を拭い去るような「地方への支援」と、国の医療や介護制度の見直しが待たれる。
 老後はふるさとに戻って生活を楽しみ、地域貢献もしたいという高齢者には魅力的なプランだ。まずは地方側から具体策を示すことが必要だろう。現在、地方のUIターン政策は、若者世代を中心に、子育て支援、就業支援に力を入れるが、今後はシニア対策も含めて議論してほしい。
 ただ、やはり主体は東京圏と国だ。高齢者の生活を守るために、東京圏と国はその責任として、移住や地方との連携も含めた、骨太のシニア対策をつくるべきだ。



山陽新聞(2015年06月13日 08時18分 更新)
社説:高齢者の移住 地方受け入れに条件必要


 地方から人を集めて繁栄を謳歌(おうか)してきた東京圏は今後、急速に高齢化が進み、医療・介護サービスが逼迫(ひっぱく)して介護施設を奪い合う深刻な事態が生じかねない―。有識者らでつくる「日本創成会議」がこう指摘し、急増する東京圏の高齢者の地方への移住を促すよう提言した。
 同会議は昨年、人口減少により全国の半分の自治体が将来消滅する可能性があることを明らかにし、政府が地方創生を推進する契機となった。それに続く衝撃的な内容といえよう。
 提言では、東京圏の1都3県では2025年までに75歳以上の後期高齢者が175万人増え、介護施設のベッド数が13万床不足すると試算した。高度成長期に地方から集まった団塊の世代が医療や介護の需要が高まる75歳を迎えるためだ。現在でも東京都区部の介護施設は不足し、周辺地域の施設を利用する傾向がある。今後は不足が東京圏全体に及んでいくことになる。
 東京圏の深刻な高齢化問題について、懸念する声はあったものの、本格的な対策はとられてこなかった。提言が具体的に数字を挙げて問題提起した意義は大きい。東京圏への就職や進学に関し、将来の医療や介護のリスクを知っておくことが重要だろう。
 土地が高い東京圏で介護サービスなどを充実させるには、地方に比べてコストがかかる。その上、東京圏で必要となる医療・介護人材を確保しようとすれば、地方から若者らを新たに呼び込むことになり、東京一極集中が加速してしまう。
 このため提言は、地方への移住促進を対策の柱に据えた。もちろん国や自治体が高齢者に移住を強いることはできないが、地方への移住希望は高まっている。東京在住者への政府の調査では、50代男性の51%、女性の34%が地方移住に前向きだった。こうした人々の背中を押すことが狙いといえよう。
 移住先の候補として、全国41地域が列挙された。岡山県では岡山、玉野市や東備地区などの岡山地域、香川県では高松、坂出、三豊の3地域が該当し、広島県はなかった。独自の指標に基づき、医療・介護の受け入れ余力があるとした地域である。
 だが、岡山市の特別養護老人ホームが2200人余りの定員に対して待機者が少なくとも6千人いるなど、各地で施設や人材が不足しているのが実態だ。現状のままでは、大幅な受け入れは難しい。
 地方側としては、財政負担も懸念材料だ。税金を東京圏で払ってきた人々が年老いてから地方に来て医療や介護のサービスを受けることになれば、地方の国民健康保険や介護保険の収支が悪化する。移住前の自治体が医療・介護のサービス料を負担するといった、受け入れ自治体にツケを回さない制度改革が不可欠である。早急に仕組みづくりを始めるべきだろう。



愛媛新聞 2015年06月07日(日)
社説:高齢者の地方移住提言 安直な数合わせでない解決を


 「東京の都合」を優先した、なかなかに刺激的な一つの「提案」が示された。
 今から10年後、団塊の世代が全員75歳以上となり、超高齢・多死社会が到来する。公的医療介護サービス不足は明らかで、「介護難民」は全国で43万人に及ぶ。この「2025年問題」の解決策として、民間団体「日本創成会議」が、余力があるとした松山、新居浜圏域など26道府県、41地域に東京圏の高齢者の移住を促すよう、政府や自治体に求める提言を発表した。
 大胆な提言は、関心を集めて対策の加速を促すためのショック療法、警鐘と受け止めるべきであろう。人口減や「2025年問題」自体は、東京だけの課題でも、今に始まった話でもない。しかし、政治の危機意識は鈍く、社会保障制度の再構築は遅れに遅れている。国民の側もそれぞれに、老後をどこで、どう支え合って過ごすか、真剣に考える契機としたい。
 よもや提言を真に受け、無責任に行政が移住を強いるようなことはあるまい。とはいえ、安直な発想の独り歩きや、対策の方向性の「ずれ」を危惧する。
 「解決」とは、やみくもに施設を増やすことや、東京一極集中是正の名の下、人を「数合わせの移住」に追い立てることでは決してない。急ぎ取り組むべきは、誰もが「住み慣れた地域で最後まで安心して暮らせる」よう、施設に頼らない在宅医療・介護の拡充を図り、地域力を高めることであろう。
 厚生労働省は実際、医療介護費削減を主眼に「施設から在宅へ」の流れを打ち出し、「地域包括ケア」を目指して地域全体の医療体制を再編する構想を進めてもいる。東京圏だけが構想を放棄し、施設を求めて地方へ―とは身勝手な話で、国が描く将来像とも矛盾しよう。
 政府は提言を「地方創生」政策の追い風に、高齢者移住を加速する考えという。だが地方の側は、ただ人口を増やすことだけが地方創生ではないことを、あらためて肝に銘じたい。
 医療・介護の人材は、東京で足りないなら地方はもっと足りない。その育成と待遇改善は、長く叫ばれながら一向に進まない。昨年の合計特殊出生率は9年ぶりに低下したが、全国一低いのは東京。若い子育て世代への手厚い支援なくして、高齢者だけが住みやすい街などあり得ない。何より多くの人が老後の不安を抱え、「ついのすみか」を求めて漂流せざるを得ない社会は、到底幸せとは言えまい。
 地方からヒトやカネを吸い上げ、成長してきた東京は、巨大な地方。日本創成会議は、全国の自治体の約半数が消滅する可能性があるとの試算を昨年公表した。しかし、地方創生が奏功すれば皮肉にも東京全体が「消滅可能性都市」になる。移住を焦り、地縁血縁の薄い転入者同士の「ミニ東京」を目指すことが発展ではない。老いゆく国、日本の課題が凝縮する「東京の教訓」を忘れてはならない。



高知新聞 2015年06月06日08時03分
社説:【高齢者の移住】まず地に足着けた議論を


 深刻化が見込まれる東京圏の高齢化対策として、有識者でつくる「日本創成会議」が、高齢者の地方移住を促す政策提言を発表した。医療・介護施設や人材に「余裕」があるとして、移住先の候補に本県中央部など全国の41地域を挙げた。
 高齢者の移住は、政府が昨年末にまとめた人口減少対策の総合戦略にも明記されている。菅官房長官も、東京一極集中の是正と、地方創生を図る柱として推進する方針を示した。
 一石二鳥を狙う提言といえるが、実効性には疑問もある。東京圏の医療・介護問題をどう解決するかという視点に立脚しており、机上の「数字合わせ」という印象は拭えない。地方の実情を踏まえ、まず地に足を着けた議論を深める必要があろう。
 団塊の世代が75歳以上となる2025年にかけ、東京圏の高齢化率は急速に上昇する。創成会議は、医療・介護需要の高まりに伴って施設が不足し、人材確保のため東京圏への人口流入が加速しかねないとする。対策の具体化が急がれることは間違いない。
 とはいえ、長期にわたり地方から人材を吸い上げてきた「都会の論理」にほかなるまい。移住の候補地に挙げた地方の実態をどれだけ踏まえているか疑問符が付く。
 候補地の基準としたのは、人口当たりの病床数などだ。単純に数字をみると、移住先として本県は高い評価となろう。だが、地理的・社会的な要因を考えれば、決して「余裕」がある状況とはいえまい。
 本県は高齢者世帯の割合が全国的に高く、家庭の介護力は強くない。このため施設利用者が多くなり、特別養護老人ホームの定員約3900床(昨年12月現在)に対し、入所待機者は約3千人(同10月)に上る。他の地域もそれぞれ、数字からは推し量れない事情を抱えていよう。
 移住の規模が大きくなれば当然、受け入れ地域の医療費や介護給付は膨らむ。その負担はどう賄うのか。軽視できない課題である。
 地方側にもむろん、移住促進を消費の喚起や雇用の創出につなげたいという期待がある。
 ただし、政策誘導を図る前に、東京圏に住む高齢者自身のニーズがどこにあるのかを十分に把握すべきだろう。東京圏の医療・介護体制はいずれにしても充実させなければならない。



=2015/06/10付 西日本新聞朝刊=
社説:高齢者地方移住 数合わせでは無理がある


 東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県)は急速な高齢化で医療や介護施設が不足するため、余力のある地方へ高齢者の移住を促す-。有識者でつくる日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)が、こんな提言を出した。
 東京圏の介護問題や地方の人口減少の深刻さは分かる。だが、提言は高齢者対策を単なる地域間の数合わせでしのぐような印象を拭えない。
 提言によると、東京圏は今後10年間で75歳以上の高齢者が推計175万人増える。不足する医療・介護の施設や人材を高齢者が奪い合う事態になるという。対応策として地方移住を打ち出し、候補地に北九州市や長崎市、大分県別府市など全国41地域を示した。
 東京圏の「介護危機」への警鐘としては意義があろう。元気なうちに移住を望むのであれば、後押しする政策はあっていい。経済効果などで期待する地方もある。
 だが、高齢者が長年の生活環境から離れるのは簡単ではない。地方暮らしになじめるか個人差もある。受け入れる地方では医療費など財政負担が増加しかねない。医療や介護の担い手は地方でも不足が指摘され、41地域に本当に余力があるのか疑問も禁じ得ない。
 政府は高齢者が住み慣れた地域で暮らし続ける「地域包括ケア」を基本に、在宅医療や在宅介護を提唱してきた。提言はこうした理念とどう整合性を図るのか。
 戦後、東京圏は地方から大量の若者を吸収して発展した。その若者層の高齢化問題はまず東京圏の努力と責任で対応すべきだろう。
 地方の優先課題は若者層の呼び込みだ。高齢者に偏る移住を地域活性化につなげるには、より工夫が要る。高齢者向けの雇用確保、地域医療機関の維持など周到な環境整備が欠かせない。過去の移住の成功事例や失敗事例を検証して生かすことも重要である。
 高齢化や人口減少は暮らしの基盤に関わる。大切なのは東京圏だけの都合ではない。地方の実情や国全体としての方向性なども踏まえて、丁寧な議論をすべきだ。



熊本日日新聞 2015年06月09日
社説:高齢者の地方移住 都会の論理は賛同できぬ


 高齢者対策を怠ってきた東京圏(東京、千葉、埼玉、神奈川の4都県)の責任放棄のようにもみえる。何より、長年頑張ってきたお年寄りはどう思うのだろう。
 民間団体「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)が、東京圏の75歳以上の高齢者が今後10年間で急増するとして、医療や介護施設、人材に余裕があるとする26道府県の41地域に、高齢者の移住を促す提言を発表した。
 菅義偉官房長官も、東京一極集中の是正に向けた地方創生の柱として推進する方針を示した。
 しかし地方創生は、人口が増えれば解決するような簡単な問題ではない。自治体側でも期待と困惑が交錯している。高齢者が家族を離れ、縁もゆかりもない地域に移住することへの違和感や、新たな負担増につながるのではという懸念も強い。
 「東京圏の高齢者問題をどう解決するか」という問いへの単なる「数合わせ」ともいえる提案で、容易には賛同できない。国全体の高齢者対策をしっかりと描き、高齢者も地方も安心できるような施策を構築すべきだ。
 東京圏の75歳以上の人口は2025年までに175万人増え、572万人になると推計されている。増加数は全国の3分の1を占め、医療や介護の人材を80万~90万人増やす必要がある。しかし、地価が高い都市部では新たな施設整備が難しく、人材確保にも限界があるのが現実だ。
 安倍晋三政権は米国のCCRCにならい「日本版CCRC」を検討しているが、提言はこの方針に沿ったものだろう。CCRCとは「健康な時から地方に移り住み、介護や医療が必要になっても暮らし続けられる退職者のコミュニティー」を意味する。
 創成会議は、75歳以上に提供できる介護施設のベッド数などを基に地方の“余裕”を評価。41地域を移住先として選んだ。県内では熊本市と八代市が入った。
 確かにシニア世代の移住は地方の雇用を守り、経済を維持するチャンスとなろう。移住を希望する人もいる。しかし、地方への移住は転居費用をはじめ個人の負担が大きい。長年住み慣れた場所を離れることに二の足を踏む高齢者も多いだろう。望まない移住を迫られる可能性も否定できまい。
 受け入れ余裕があるとされた所も今後高齢化は進む。特別養護老人ホームの待機者を多く抱えた所もあり、高齢者を取り巻く環境はさまざまだ。そうした個別事情を抜きにした今回の提案からは大都市の論理しか伝わってこない。
 東京圏は施設の不足ばかりを強調するが、国は、高齢者が住み慣れた地域、なじんだ人間関係の中で暮らし続けられるよう、在宅医療や在宅介護を軸にした「地域包括ケア」を掲げている。提言はこうした施策とも矛盾する。
 自分が高齢者なら-と考えてみたい。最期を見届けてくれる子どもの近くに住みたい。そんな素朴な願いをかなえることこそが、施策の原点ではないか。



宮崎日日新聞 2015年6月11日
社説:高齢者移住提言 地方の視点反映した議論を


 本県が民間団体「日本創成会議」による東京圏の高齢者の地方移住促進提言で、移住先候補に選ばれなかったことに対し、県内では複雑な反応が見られている。
 医療、介護の受け入れ余力がないのは事実だと冷静に受け止める見方がある一方で、県内の体制にどんな不足があり、どう充実させていけばよいか分析が必要だとの考え方もある。ショッキングとも言える今回の提言は、本県がどんな針路を取るべきか見つめ直すきっかけともなり得る。
■本県は候補にならず■
 東京圏の75歳以上の高齢者が今後10年間で急増するとして、同会議は介護施設や病院、人材に余裕がある26道府県41地域への高齢者移住を促すよう、政府や自治体に求める提言を発表した。
 有力候補地とされた41地域は、複数の市町村にまたがる「2次医療圏」(全国344地域)から選ばれた。同会議が、急性期医療や介護の将来的な提供能力の余力を7段階でランク付けし評価した。
 本県は7医療圏あり、急性期医療は上から2番目のレベル6だったものの介護はレベル2と見なされた医療圏があったり、生活の利便性が保たれないため対象外とされたりした医療圏もあった。
 河野俊嗣知事は「宮崎としても受け入れる思いはある。ただ、医療、介護費の財政的負担増が課題。手当ては必要」と指摘した上で「余力の問題で候補に挙がらなかった。足りない部分を分析し、充実を図る必要はある」と述べた。
 候補になった自治体側にも厳しい財政事情の中で負担増を懸念する声があり、提言が実現するかは不透明だが、「余力がある」「ない」と線引きされたショックは小さくない。それぞれの自治体が突然、現実や未来像を突き付けられた提言だったと言えるだろう。
■財政負担へ不安の声■
 シニア世代の地方移住については、政府が昨年末にまとめた人口減対策の総合戦略にも明記されており、提言が取り組みを加速させることも予想される。
 東京圏では介護需要増大に伴い、介護施設やサービス付き高齢者住宅などの不足が心配されている。介護や医療の人材を80万~90万人増やす必要もあり、何も手を打たなければ東京圏に人材が集められ、東京一極集中に拍車を掛ける恐れがあるのだという。
 都市で解決すべき問題だと片付けられない理由がそこにある、とされる。ただ「医療や介護だけを理由に移住するのでは、地方は負担ばかり」という本音も候補になった自治体側から聞かれる。本県を含め、全国的に議論されるテーマになってくるのは間違いない。
 県内では特別養護老人ホームの待機が多く、特に都市部は10年先も状況は変わらないという見通しがある。そんな中で全国的課題にどう向き合っていくか。政府には都市からの視点先行でなく、地方の声を最初から対等に聴き、施策に反映してほしい。



南日本新聞 ( 2015/6/13 付 )
社説:[高齢者地方移住] 受け皿の意向を踏まえよ


 民間団体「日本創成会議」は、東京圏の高齢者が今後急増するとして、地方への移住を促すよう政府や自治体に提言した。
 団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者になる2025年が迫っている。提言は深刻化する東京圏の医療・介護施設や人材不足への対策として打ち出された。
 超高齢化への備えは都市、地方を問わない大きな課題だ。ただ移住の受け皿になる地方には「負担の押しつけになる」という懸念もある。地方の意向や実情を十分踏まえるべきだ。
 創成会議によると、東京など4都県では今後10年で75歳以上の人口が175万人増え、572万人となる。増加数は全国の3分の1を占める。
 こうした医療・介護の需要を賄うには人材を80万~90万人増やす必要があるが、新たな施設整備や増員は困難とした。
 有力な移住先としてリストアップされたのは、鹿児島市など26道府県の41地域だ。施設や人材に余裕があるためという。
 確かに東京圏の医療・介護危機は深刻だ。だが、地方から若者を吸い上げることで繁栄してきたのもまた、東京圏である。
 ならば、都会で老いていく人々を守る責任もあるだろう。まず自前の解決策を示してほしい。
 地方への移住が進めば、医療・介護分野の雇用拡大につながると期待する向きがある。 
 とはいえ、一律に受け入れの余力が大きいとみなすのは早計だ。地方でも特別養護老人ホームの入所待ちは珍しくない。
 移住受け入れが進めば、医療と介護の給付費の膨張につながるという問題もある。自治体の間に困惑が広がるのはもっともだ。
 政府は高齢者の地方移住をめぐって「日本版CCRC」と呼ばれる構想を検討している。
 CCRCは「健康な時から移り住み、医療・介護が必要になっても暮らし続けられる退職者のコミュニティー」を意味する。
 来年度からモデル事業を始め、新型補助金で移住を後押しする方針という。
 政府が期待するのは東京一極集中の是正と地方創生への効果だろう。だが、思惑通り進むか未知数だ。
 そもそもどこで暮らすかは個人の自由である。住み慣れた土地を離れたくないという高齢者も多かろう。不本意な移住を迫られては本末転倒だ。
 東京圏のシニア世代にはどれだけ地方への移住希望があるか。移住論議の前に、そのニーズをきちんと見極めてほしい。



琉球新報 2015年6月8日 6:01
<社説>高齢者移住 抜本的対策こそ必要だ


 東京圏の75歳以上の高齢者が今後10年間で急増するとして、医療・介護の施設や人材に余裕のある宮古島市など地方へ移住を促す提言がまとまった。
 提言を発表したのは民間の日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)。菅義偉官房長官は東京一極集中の是正に向けた地方創生の柱として高齢者移住を推進する方針を示した。
 急速に高齢化が進む東京圏で、2040年には同圏内の多くで介護が崩壊しかねないという。確かに深刻な報告だ。
 しかし、「地方創生」と聞き心地のいい言葉を使いながら、東京圏の介護崩壊を地方に押し付けるような安易な施策では納得できない。求められるのは国全体の抜本的な高齢者対策だ。
 提言は、国立社会保障・人口問題研究所の推計で、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川の4都県)の75歳以上の人口は、25年時点で15年に比べ175万人多い572万人となり、増加数は全国の3分の1を占めると予想した。その上で医療・介護の施設や人材に余裕のある26道府県の41地域に移住を促すよう政府や自治体に求めている。
 政策研究大学院大名誉教授の松谷明彦氏(マクロ経済学)は、今回の提言を「数合わせで解消できる状況ではなく、現実を見据えた対策とは言えない」と批判している。なぜなら「高齢になるほど家族や友人のそばで暮らしたいと考える人も多く、地方へ動かせばよいというものではない」からだ。
 今回宮古島市が移住先として提案されたが、同じ指標によると那覇市と宜野湾市は介護ベッド準備レベルが少ない。本島北部地域の医師不足も指摘されて久しい。県全体でみると、決して医療・介護が充実しているわけではない。
 県全体で人口増が続いているが、離島や本島北部で人口が減少傾向にある。25年をピークに全県も減少に転じることが見込まれている。県も10年後を見据えて医療・介護を整備しなければならない。
 少子高齢化対策は避けて通れない重要政策だ。東京圏で施設が足りなくなるから、縁もゆかりもない地域に移住させるという発想は理解できない。制度設計の過程で高齢者や地方の意見は反映されているのか、高齢者増に伴う自治体負担はどうするのか。きめ細かな議論を積み重ねる必要がある。

//////////////////////////////////////////////////////////

関連記事

テーマ : 政治・時事問題
ジャンル : 政治・経済

tag : 高齢者 地方移住 日本創成会議

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

プロフィール

ajimu-ra

Author:ajimu-ra

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最近の記事
リンク
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ(タブ)
RSSフィード
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
カテゴリー
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
FC2ブログランキング
↓↓クリックお願いします↓↓

FC2Blog Ranking

ブログ内検索
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

フリーエリア
blogram投票ボタン