2015-06-23(Tue)

戦争法案 「違憲」法制 (7)安保法案 成立は許されぬ 撤回を 150618-19

「違憲」拭えぬ首相答弁  ぬぐえぬ法案の違憲性  首相は国民の問いから逃げるな


<各紙社説・論説>
朝日新聞)党首討論 空費される言葉たち(6/18)
毎日新聞)安保転換を問う 存立事態の認定(6/18)
東京新聞)「安保」党首討論 「違憲」拭えぬ首相答弁(6/18)
北海道新聞)新安保法制 党首討論 ぬぐえぬ法案の違憲性(6/18)
信濃毎日新聞)安保をただす 党首討論 驚くべき首相の発言(6/18)
新潟日報)党首討論 「違憲」との指摘に答えよ(6/19)
京都新聞)党首討論  国民の期待に沿えたか(6/18)
神戸新聞)党首討論/違憲法案の疑いは晴れず(6/18)
愛媛新聞)党首討論 首相は国民の問いから逃げるな (6/19)
徳島新聞)党首討論 安保法案 成立は許されぬ (6/18)
高知新聞)【安保党首討論】論議は一向に深まらない(6/18)
熊本日日新聞)安保法制討論 説明無理なら法案撤回を(6/18)
南日本新聞)[新安保政策 党首討論] 「違憲」の指摘に答えず(6/19)





以下引用



朝日新聞 2015年6月18日05時00分
(社説)党首討論 空費される言葉たち


 「このはし(橋)を渡ってはいけない。そう書いてあるのに、なぜ渡ってきたのか」
 「いえいえ、はし(端)は渡っていません。真ん中を通ってきたのです」
 こんな「一休さん」の説話を想起させるほど、きのうの党首討論の議論はまったくかみ合っていなかった。
 衆院憲法審査会で参考人として招かれた憲法学者3人が、安全保障関連法案を「憲法違反」と断じたあと、首相が初めて立つ、国会論戦の舞台である。当然、憲法をめぐり活発な議論が戦わされると期待した人も多かったはずだが、議論は低調で、首相と民主党の岡田代表が互いに「私の質問に答えていない」と言い合う始末だ。
 首相は、何のために討論の場に立っているのか理解していない様子だった。時間が限られていることを承知の上で、延々と持論を展開したり、岡田氏が「暴力を肯定した」とレッテルを貼ったりと、民主党批判に時間を費やした。法案への国民の理解を深めたいと本当に思っている人が取る態度ではない。
 「重要影響事態にどういうことが加われば存立危機事態になるのか」。岡田氏の質問に対し、首相は法案の定義をなぞるばかりで、あえて付け加えたのは「どういうことでなければ武力行使をしないのか、そんなことをいちいちすべて述べている海外のリーダーはほとんどいない」という言葉だった。
 岡田氏は「だからやはり憲法違反だ。(法案は)時の内閣に、武力行使するしない、憲法違反になるならないの判断を丸投げしているのと一緒。こんな国はどこにもない」と指摘。それでも首相は集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更について「昨年5月15日の私の記者会見以来、約300人の議員の質問に答えている。この正当性、合法性には完全に確信を持っている」と言い切った。
 何人の質問に答えようが正当性とは無関係だ。「憲法違反」の疑念は払拭(ふっしょく)されていない。
 討論を通じて改めてはっきりしたのは、首相は異論に耳を傾けようとしないし、異論をもつ人を説得する意思も持ち合わせていないということだ。
 維新の党の松野代表は「審議をすればするほど、内閣の説明が十分でないという人が増えていく。答弁されればされるほどよくわからなくなっていく」と指摘した。その通りである。
 こんな審議をどんなに重ねても、日本という国のありようを大転換させる重大法案の成立を許す免罪符にはならない。



毎日新聞 2015年06月18日 02時31分
社説:安保転換を問う 存立事態の認定


 ◇首相に白紙委任できぬ
 安全保障関連法案について「違憲法案」との批判が高まるなか、安倍晋三首相と民主党の岡田克也代表らとの党首討論が開かれた。
 集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」を認定する判断基準について、首相は「政策的な中身をさらすことになる。そういうことを述べる海外のリーダーはほとんどいない」としか答えなかった。ことは関連法案の根幹に関わる問題だ。首相の態度は、国民に丁寧に説明する姿勢からはほど遠い。
 従来の政府の憲法解釈では、我が国に対する直接の武力攻撃があり、他に適当な手段がない場合、必要最小限度の範囲で、自衛権の発動としての武力の行使ができるとしてきた。これが個別的自衛権であり、日本が武力攻撃を受けた場合に行使できるという、明確な基準があった。
 一方、憲法解釈変更を反映させた関連法案では、他国への武力攻撃によって我が国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある「存立危機事態」など新3要件を満たす場合に、集団的自衛権の行使が認められる。
 明白な危険があるという要件は、主観的で、最終的には政府判断にゆだねられる。武力行使の基準はこれまでと比べて曖昧になる。
 法案に対する国民の理解が深まらない一因には、そういう不明確な基準への不安があるように見える。だからこそ、政府は国会審議を通じて基準をより明確にし、わかりやすく説明する必要があるはずだ。作戦計画まで明らかにせよと求めているのではない。手の内をさらせないというレベルの話ではない。国民に具体的な基準やケースを示すべきだ。
 だが、首相はほとんど答えようとしなかった。これでは岡田氏が批判したように「時の内閣に武力行使の判断を丸投げしているのと一緒」であり、「白紙委任」に等しい。
 他にも首相答弁には疑問が多い。
 これまで首相は、集団的自衛権行使の例として、中東・ホルムズ海峡での機雷掃海にこだわってきた。2月の国会答弁では明示した。
 だが、党首討論で、背景となる安全保障環境の変化について問われると、首相は機雷掃海は「典型例ではなく、海外派兵の例外」と説明を修正した。
 また憲法解釈変更に関連して、1959年の砂川事件最高裁判決が認めた「自衛のための措置」について「どこまで含まれるか、常に国際状況を見ながら判断しなければいけない」と解釈の再変更の可能性を示唆した。これでは憲法の規範性などなくなってしまう。やはり首相に白紙委任することはできない。



東京新聞 2015年6月18日
【社説】「安保」党首討論 「違憲」拭えぬ首相答弁


 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障法制が再び主要な議題となった党首討論。法案には「憲法違反」との指摘が相次いでいるが、安倍晋三首相の答弁は、違憲性を払拭(ふっしょく)するには至らなかった。
 今国会二回目、四週間ぶりに開かれた党首討論。安倍内閣が提出した安保法制関連法案を、国権の最高機関たる国会の場で三人の憲法学者がそろって「違憲」と断じた後、首相が国会の場で議論に応じるのは初めてだ。
 安保法案は、政府が自らこれまで認めてこなかった集団的自衛権の行使に道を開き、外国軍の武力の行使と一体化する恐れがある後方支援に踏み込む内容だ。
 この法案が外国での武力の行使を禁じてきた憲法の枠内に収まるのか、それとも憲法違反なのか。党首同士の討論にふさわしい大きなテーマではある。
 しかし、残念ながら議論が深まったとは言い難い。むしろ、法案が違憲であるとの指摘に対して、首相が説得力のある反論をできなかったと言うべきだろう。
 岡田克也民主党代表は、どんな状況になれば集団的自衛権を行使する存立危機事態に当たるのかとただしたが、首相は「(武力の行使の新)三要件に当てはまるかがすべて。その時々に適切に判断する」「いちいちすべてを述べるリーダーは海外にはいない」などと詳細な説明を避けた。
 そもそも違憲と指摘される集団的自衛権の行使だ。行使の基準を明確にせず、政府の判断に委ねろというのでは国民は納得すまい。
 首相が「法案は憲法の範囲内。正当性、合法性には確信を持っている」といくら強調しても、説得力を欠く。「とても憲法に合致しているとは言えない」と、岡田氏が指摘するのも当然だろう。
 志位和夫共産党委員長は、後方支援は外国軍の武力の行使と一体化し、憲法違反と指摘した。
 首相は、後方支援は戦闘現場でない「安全な場所を選んで支援する」として武力の行使とは一体化しないと強調したが、後方支援は戦闘と一体化し、攻撃対象になり得るという戦場の現実を無視した合憲論は意味を成さない。
 安倍内閣は維新の党に安保法案成立への協力を期待するが、松野頼久代表は「独自案を党でまとめてしっかり示す」と述べる一方、与党との修正協議に「応じるつもりは全くない」と断言した。
 その言葉を違(たが)えず、違憲と指摘される安保法案の成立に手を貸すことがあってはならない。



北海道新聞 2015/06/18 08:55
社説:新安保法制 党首討論 ぬぐえぬ法案の違憲性


 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案をめぐり、安倍晋三首相はきのうの党首討論で、憲法学者らから違憲との批判が出ていることに反論した。
 しかしその主張は、憲法解釈を変更した昨年7月の閣議決定をなぞるにすぎず、まったく説得力を欠いている。
 政府や与党幹部がどれだけ躍起になって「合憲」だと説明しても、国民の理解は一向に広がっていない。そもそもの論理立てに無理があるからだ。
 政府・与党は24日までの国会会期を大幅に延長し、あくまで今国会で成立させる構えだ。
 だが法案の根拠への疑念をぬぐえない以上、撤回して一から安保論議をし直すのが筋である。
 民主党の岡田克也代表は、関連法案を「憲法違反だ」とした上で「時の内閣に武力行使するしないの判断を丸投げ、白紙委任するものだ。これでは立憲国家にならない」と批判した。
 首相は、法案は1959年の最高裁砂川事件判決や、72年の政府見解の「基本的法理の上に立ってつくりあげたもので、憲法の範囲内にある」と反論した。
 砂川事件判決は集団的自衛権の行使の是非が問われた裁判の判決ではなく、72年見解も行使は「憲法上許されない」と明記している。法案を合憲とする根拠たり得ないことは既に明白だ。
 政府が憲法解釈変更の理由とした「安保環境の根本的な変容」について、岡田氏が具体例を挙げるよう迫ったのに対し、首相は明確に答えられなかった。
 法の必要性の根拠を示す立法事実にさえ疑問符が付いた。
 共産党の志位和夫委員長は他国軍の後方支援について、国際的には武力行使と一体不可分の兵たんであり、他国の武力行使と一体化しないから合憲だという政府の主張は成り立たないと追及した。
 首相は「兵たんは極めて重要であり、だからこそ安全な場所を選んで行う」と述べたが、志位氏が指摘した通り、兵たんが相手の攻撃の格好の標的になるのは軍事的常識である。
 維新の党の松野頼久代表は、近く関連法案の対案を国会に提出する方針を示し、与党との「修正協議に応じるつもりは全くない」と言明した。
 政府・与党にはなお修正協議を探る動きがある。維新はこれに応じ、成立に手を貸すようなことがあってはならない。



信濃毎日新聞 2015年06月18日(木)
社説:安保をただす 党首討論 驚くべき首相の発言


 どんな事態になれば自衛隊は海外で武力を使うことになるのか。他国軍への後方支援で自衛隊は戦闘に巻き込まれないのか。
 知りたいのはこうした具体的なことだ。安倍晋三首相はきのうの党首討論で、またも詳しく語らなかった。
 丁寧に説明すると盛んに言っておきながら、いつまでたってもその気はないようだ。安倍政権はあくまでも今国会で安全保障関連法案を成立させる構えでいる。
 国民の理解を得ないまま、通すことは認められない。
 民主党の岡田克也代表、維新の党の松野頼久代表、共産党の志位和夫委員長が先月に続き、安保法案を中心に首相と論戦した。
 岡田氏は、集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」や、米軍などを後方支援できる「重要影響事態」についてただした。
 政府による定義の曖昧さがかねて指摘されている。安保法制の分かりにくさの代表例だ。
 どういうときに存立危機事態になるのかとの質問に対し、驚くべき答えが返ってきた。
 首相は事態を認定する判断基準に関し、「政策的な中身をさらすことになる。いちいち全てを述べるような海外のリーダーはほとんどいない」と言ったのだ。
 見過ごせない発言である。自衛隊による海外での武力行使が政府の裁量で広がりかねないことが問題視されているのに、疑念をさらに深める結果となった。
 松野氏は、世論調査で回答者の8割以上が法案について十分な説明がなされていないと答えていることなどを挙げ、首相が米国で夏までに法案を成立させると約束したことを問題にした。
 首相は松野氏を持ち上げつつも正面から答えなかった。
 志位氏は、憲法学者らが安保法案は憲法違反と指摘していることを最初に取り上げた。弾薬などを提供できるようにする後方支援は兵たん活動で、外国の武力行使と一体化する恐れが強い。攻撃の標的になると断じた。
 首相は憲法の枠内との認識を示すだけで、説得力のある説明はできなかった。
 法案が通れば、「専守防衛」に徹してきた日本の安保政策は大転換し、自衛隊が戦闘に関わる可能性は確実に高まる。国民の命と平和な暮らしを守るためとの首相の言葉は、法案の危うさを覆い隠す方便に思えてならない。



新潟日報 2015/06/19
社説:党首討論 「違憲」との指摘に答えよ


 法案の合法性に対して、矛盾を指摘する声が日増しに高まっている。十分に時間をかけて、議論を深めなければならない。
 安全保障法案が焦点になっている今国会で2回目の党首討論が行われ、民主党の岡田克也代表、維新の党の松野頼久代表、共産党の志位和夫委員長が安倍晋三首相に論戦を挑んだ。
 集団的自衛権の行使を可能にする法案については、憲法審査会で著名な憲法学者3人が「憲法違反」との見解を示しているのだ。
 政府は「合憲」としているが、国会審議の場でも丁寧な説明が必要だろう。法案の成立を急ぐことはあってはならない。
 討論では、岡田氏が集団的自衛権が行使できる条件とする「存立危機事態」についてただした。抽象的で、どのようにでも解釈できるからであろう。
 安倍首相は「その時々に適切に判断していく」と述べ、具体例は「政策的な中身をさらけ出すことになる」とかわした。
 「その時々」の政策判断で、憲法解釈を変更できるということなのか。法案の正当性を確信するといわれても説得力に欠ける。
 松野氏は法案の対案をめぐり「修正協議に応じるつもりは全くない」と政権側をけん制したが、首相は低姿勢だった。
 参院の選挙制度改革で、維新など野党4党が合意案をまとめたことについても、安倍氏は「敬意を表する」と秋波を送った。
 安倍氏は14日に橋下徹大阪市長と会談した。安保法案で維新の独自案を尊重して議論し、国会運営で協力を得たいという思惑も政権側にはあろう。
 今国会の会期末は24日に迫っている。当初は会期中に衆院で採決、8月中旬ごろまで会期延長し、参院で採決、法案成立という筋書きだったに違いない。
 憲法審査会での学者の意見が出て、潮目が変わったといえよう。法案の成立を期すために会期を大幅に延長するようだ。
 審査会では米軍などへの後方支援について、武力行使との一体化につながるとして「憲法違反」との意見が憲法学者から出た。
 討論で志位氏は、「武力行使と一体化しない後方支援」という議論こそ世界で通用しないと、強く批判していた。
 安保法案では他国軍への後方支援の活動範囲が拡大する。安倍氏は「安全な場所を選ぶ」とし、一体化論は国際法上の観点ではなく、「憲法との関係で概念を整理した」と答えた。
 こうした論理が一般市民にも理解できるだろうか。「重要影響事態」「存立危機事態」と言葉を造っても、大半の人は具体的なイメージがつかめないはずだ。
 「違憲」の指摘に対して、与党は1959年の砂川事件最高裁判決を根拠に合憲と訴えている。在日米軍の是非が問われた裁判で、集団的自衛権が問われたのではない。苦しい論法だ。
 自民党OBからも安保法案への批判が出ている。議論は熟していない。数の力で押し切るのは、許されることではない。



[京都新聞 2015年06月18日掲載]
社説:党首討論  国民の期待に沿えたか


 会期末を1週間後に控えた国会で、党首討論が行われた。今国会最大のテーマである安全保障関連法案は、衆院憲法審査会で憲法学者3人全員が憲法違反と指摘したことから、国会での議論の風向きが一変している。
 安保法案の合憲性が大きな論点となり、安倍晋三首相が初めて議論に応じる場として注目された。
 民主党と維新の党、共産党の野党3党首が質問に立ったが、安倍首相は質問者への逆質問も含めて、冗長な答弁に終始し、質問に正面から向き合わない印象は拭えなかった。
 「安保法案は違憲」という意見は立法府への重い問いでもある。だが、党首討論が自衛隊の海外活動の拡大に対する国民の疑念に応えたとは言い難い。質問がかみ合わなければ、討論は形式化する。野党の質問の仕方もひと工夫が要る。
 だが、責められるべきは質問を何とかかわそうとする政府の姿勢だ。肝心の衆院安保法制特別委員会では野党の質問と関係閣僚の答弁がすれ違う事態が続いている。この結果、政府への統一見解や関連資料の提出要求はすでに約30件にも上っている。
 討論で、武力行使の具体的な要件を問われた安倍首相は「政策的な中身をさらすことになる」と説明を突っぱねた。これでは議論は前に進まず、国民の理解は得られない。
 安全保障や武力行使に関する議論は難解で、国民になじみがない軍事用語を使うことは避けられない。ただ、武器や燃料を補給する後方支援を「兵たん」と表現するようでは、国民の関心は遠のくだけだ。
 世論調査では、今も法案への国民の批判や不安が根強い。最近の全国世論調査では、法案への安倍政権の姿勢について「十分に説明しているとは思わない」との回答が81・4%、逆に「十分に説明している」は14・8%にとどまる。
 法案の成立を担保する会期延長について、安倍首相は党首討論で言明を避けた。政府、与党内には9月上旬までの大幅な会期延長論が浮上している。
 国民生活に深く関わり、自衛隊員の生命まで左右する重要法案である。国民を置き去りにし、議論が深まらないまま、反対する野党を押し切る強行採決は決してあってはならない。
 違憲の疑いがある法案である。政府は今国会での成立にこだわらず、時間をかけた丁寧な審議を尽くすべきだ。



神戸新聞 2015/06/18
社説:党首討論/違憲法案の疑いは晴れず


 安倍晋三首相と野党党首による今国会2度目の党首討論が行われた。
 焦点の安全保障関連法案は、衆院憲法審査会で参考人の憲法学者全員が「違憲」と指摘したのに続き、地方公聴会でも陳述人6人のうち5人が憲法解釈の変更による法整備を厳しく批判した。幅広い分野の研究者らが反対を表明する動きも急速に広がりを見せている。
 法案の土台を揺るがしかねない疑念の高まりに、安倍首相がどう答えるのか。それが党首討論の最大の関心事だった。
 しかし、首相には、こうした疑念と向き合い、法案への理解を得ようとする真摯(しんし)な姿勢は見られなかった。「違憲」の指摘に対し、従来の政府見解や法案の条文を繰り返し読み上げるだけでは「正当性、合法性には完全に確信を持っている」とする根拠に乏しい。
 専門家の批判も世論の反対の声も耳に入っていないかのようだ。最終的には数の力で法案を通せばいいと考えているのではないか。首相がこうした態度を取り続けるなら、この先、国会の会期をどれだけ延長しても議論は深まらず、法案への国民の理解は得られないだろう。
 一方の野党も、法案の違憲性に迫り切れなかった。法案が想定する多くの「事態」は線引きが曖昧で、後方支援が他国の武力行使と一体化する恐れもある。論点は多々あるにしても、そもそも法案が憲法に合致しているかを問いただす論戦に力を集中すべきだったのではないか。
 足並みもそろっていない。
 民主党の岡田克也代表は、安保法案は「憲法違反だ」と断言し、「集団的自衛権はいらない」と言い切った。党内に政府の考え方に一定の理解を示す勢力がある中で、安倍政権との対決姿勢を鮮明にした。
 維新の党の松野頼久代表は法案の違憲性には触れず、独自の対案を出す方針を明らかにした。一方で「与党との修正協議に応じるつもりは全くない」とも述べた。与党との協調路線に傾く「大阪組」と、それに反発する党内勢力のバランスに苦慮している様子がうかがえる。
 安保政策は平和国家の針路を左右する。違憲の疑いが指摘される法案を通してしまうようでは立法府の存在意義が揺らぐ。与野党とも責任の重大さを自覚し、歴史の評価に耐える議論を国民の前で展開すべきだ。



愛媛新聞 2015年06月19日(金)
社説:党首討論 首相は国民の問いから逃げるな


 国民の疑問にまるで答えていない。戦後日本の平和主義を根底から覆す安全保障関連法案に対し、疑念は深まるばかりだ。
 今国会2回目の党首討論が行われ、安倍晋三首相と民主党の岡田克也代表ら野党3党首が、集団的自衛権の行使を容認した安保法案の合憲性などをめぐり論戦した。先日の衆院憲法審査会で、与党推薦を含む憲法学者3人全員が「違憲」と指摘。その後初めて首相が国会で議論に応じる注目すべき機会だった。
 だが、首相はこれまで同様、法案は国際情勢の変化に対応するものだといった持論に終始。45分間という限られた時間内に相手への批判を繰り返して話をそらすなど、その態度からは、野党の指摘に耳を傾けようという謙虚さも、国民に丁寧に説明して理解を得ようとの意思も全く感じ取れなかった。
 重大な審議における空虚なやりとりには失望を禁じ得ない。首相は自らの言動が国民の不信感を増大している事実を冷静に見つめ直さなければならない。
 「違憲」との指摘に対して、首相はこれまでの政府見解や砂川判決の無理やりともいうべき解釈を土台に「(法案の)正当性、合法性には完全に確信を持っている」と語気を強めた。だが、私たちは正しいのだ、と声高に主張するだけでは説得力はなく、到底納得できない。憲法論に踏み込まないよう、わざと論点を外してはぐらかすような態度は、説明できるだけの根拠を持ち合わせていない証左と受け取られても仕方あるまい。
 どのような事態になれば武力行使に至るのかとの判断基準は当然、明確に国民に説明されなければならない。
 だが、首相は従来通り「国の存立が脅かされる」など抽象的な要件を繰り返すだけで、判断基準を示すことを避けた。さらには「具体的なケースを述べると政策的中身をさらすことになる。いちいち全てを述べる海外のリーダーはほとんどいない」とした。
 時の内閣の判断次第で自衛隊を世界の戦場に送り出すことを自ら認めたに等しい。岡田氏の指摘のように、立憲国家に許されない行為を認め「白紙委任」するわけにはいかない。
 一方で維新の党の松野頼久代表に対しては「大変良い質問をしていただいた」と持ち上げる姿勢が際立った。首相は橋下徹大阪市長との会談後、維新に協力を働き掛けている。野党を分断し、与党だけの強行採決を避けて国民の批判を免れたいとの思惑があらわだ。だが、そうした「裏工作」で国民の理解を得られるはずもなかろう。
 首相は昨日の衆院予算委員会で「国際情勢に目をつぶり、従来の憲法解釈に固執するのは政治家としての責任放棄だ」と強調した。だが、国民に正面から向き合わず不誠実な審議を続けることこそ政治家としての責任放棄だと自覚してもらいたい。このまま「時間切れ採決」を待つことは断じて許されない。



徳島新聞 2015年6月18日付
社説:党首討論 安保法案 成立は許されぬ


 やはり安全保障関連法案は廃案にすべきだろう。
 きのう国会で開かれた党首討論で、安保法案について安倍晋三首相は合憲だと強調したが、納得のいく説明ではなかった。
 多くの憲法学者から「憲法違反」との指摘を受けたにもかかわらず、明確な反論ができない。そんな法案を成立させるわけにはいかない。
 討論で民主党の岡田克也代表と共産党の志位和夫委員長は、安保法案の主軸である集団的自衛権の行使は憲法に違反していると追及した。
 これに対して安倍首相は、法案は1972年の政府見解の基本的な論理に基づいて作られたと説明。59年の砂川事件最高裁判決も引用した。
 確かに72年の政府見解は、憲法9条の下でも例外的に自衛のための武力行使が許される場合があるとしている。
 しかし、これはあくまでも個別的自衛権についての話である。見解は、外国の武力攻撃による急迫不正の事態に対処するために、必要最小限度の措置なら個別的自衛権が認められる場合があるとしたのであり、その範囲を超える集団的自衛権の行使は憲法上許されないと結論づけた。
 結論を百八十度変えておきながら、基本的に変わらないとは一体どういうことなのか。今月初めの衆院憲法審査会で、憲法学者が「政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかない」と指摘したのは当然である。
 砂川判決も、在日米軍の合憲性が問われた事件であり、集団的自衛権を認めたものではない。
 安倍首相は、集団的自衛権での武力行使はそのときどきで適切に判断し、基準は「新3要件」で決まっていると強調した。
 だが、首相は中東・ホルムズ海峡での停戦前の機雷掃海ができる場合があると説明している。海峡が封鎖され、石油が輸入できなくなる影響は大きいが、国の存立が根底から覆される「存立危機事態」と言えるのだろうか。これでは、時の政権の判断次第ということになりかねない。
 政府は、憲法学者らの「違憲」の指摘に反論する文書で、新3要件について「ある程度抽象的な表現が用いられることは避けられない」とも記している。「いかなる事態にも備えておく」という理由だが、武力行使の範囲が際限なく広がる懸念がさらに大きくなったといえよう。
 安保法案に対しては、憲法学者だけではなく、自民党の元副総裁らも「地球の裏側で後方支援活動をすると、憲法違反になる行動を引き起こす」などと反対している。
 共同通信社が先月末に行った世論調査では、安保法案に48%が反対し、安倍政権が「十分に説明しているとは思わない」との回答が81%に上っている。
 政府、与党は法案を成立させるため、今国会の会期を延長させる方針だが、強引な運営は許されない。



高知新聞 2015年06月18日08時03分
社説:【安保党首討論】論議は一向に深まらない


 集団的自衛権の行使を可能とする安全保障関連法案は、憲法に合致しているのかいないのか。多くの国民の疑念はますます深まったのではないか。
 今国会2度目となる党首討論が行われ、安倍首相と民主、維新、共産の野党3党首が論戦を交わした。
 民主の岡田代表は多数の憲法学者が「違憲」との批判を強めていることを踏まえ、法案の合憲性をただした。安倍首相は1959年の最高裁砂川事件判決や72年の政府見解を引き合いに、従来の反論を繰り返した。
 すなわち最高裁は国の存立を全うするための自衛の措置を認めている。その自衛措置がどこまで含まれるかについては、国際状況を見て常に判断していかなければならない、と。
 砂川判決は集団的自衛権に触れたものではない。72年見解も集団的自衛権の行使は認めていない。にもかかわらず判決や見解の都合のいい部分を「つぎはぎ」し、憲法9条が禁じるとしてきた集団的自衛権を容認するという全く逆の結論を導いている。
 こうした「離れ業」が許されてよいのか。それがまかり通れば岡田氏が言うように、徴兵制さえ将来の首相や政府の判断で認められはしないか。そんな懸念が拭えない。
 自衛隊が米軍などを後方支援する「重要影響事態」や、集団的自衛権を行使する「存立危機事態」を認定する判断基準は何か。そう聞かれた首相は「政策的な中身をさらすことになる。いちいち全てを述べるリーダーは海外にはいない」と答えた。
 しかし各事態は実際にどんなケースが想定されるのか。国民は具体像を描けていない。判断基準を「白紙委任」するような法律を認めると、自衛隊の海外派遣がなし崩しに広がり、戦争に巻き込まれる可能性が高まりはしないか。国民の疑問に安倍首相の言葉は十分に答えているとは思えない。
 共産党の志位委員長は、法案にある「後方支援」とは「兵たん」のことで武力行使と一体化する、と追及。軍事攻撃の格好の標的となり、自衛隊が後方支援する場所が戦場となる恐れを強調した。自衛隊が負うリスクも関心の高い問題だ。政府はもっと率直に説明しなければならない。
 複雑で難解な安保法案について論じるには、党首討論の時間はいかにも短すぎる。時間も回数も増やして議論を深めるよう求める。



熊本日日新聞2015年06月18日
社説:安保法制討論 説明無理なら法案撤回を


 安倍晋三首相と民主党の岡田克也代表ら野党3党首による今国会2回目の党首討論が行われ、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案の合憲性などについて論戦が交わされた。
 首相は法案について「正当性、合法性には確信を持っている」と強調、今国会での成立に意欲を示したが、集団的自衛権行使の必要性については安全保障環境の変化など従来の主張を繰り返し、討論はかみ合わなかった。
 安保法案は戦後日本の在り方を大きく変えるものだが、多くの憲法学者が「違憲」とするなど根本的な疑問が突き付けられている。国会論議は深まらず、国民の理解も不十分なままだ。採決を強行する愚を犯すべきではない。
 岡田代表は、首相が安保法制が必要な具体例の一つとして挙げるホルムズ海峡での自衛隊による機雷掃海について、具体的にどんな安全保障上の変化があったのか、説明を求めた。
 首相は「どの国も一国のみで自国を守れない時代」「日本も役割を果たさねばならない」などと述べるにとどまった。重要影響事態や存立危機事態の判断基準についても「個別ケースに考えを述べるのは政策の中身をさらすようなもの。海外にはそんなリーダーはいない」と説明を避けた。
 岡田氏は「武力行使の判断を政権に丸投げさせるような法案で憲法違反」と断じた。
 共産党の志位和夫委員長は、自衛隊による後方支援について「武力行使と一体と見なされ、攻撃対象になるのは常識」と指摘。「国際法上、武力行使と一体化しない後方支援の概念があるのか」とただした。首相は後方支援について「憲法との関連で概念を整理した」とし、「安全な場所を選んで活動する」と述べたが、現実性を欠く。「安全」が机上の空論であることの証左ではないのか。
 維新の党の松野頼久代表は安保法案についての世論調査で、国民の多くが「よく分からない」と答え、「焦って成立させる必要はない」が大勢を占めていると強調。「首相が答弁すればするほど(法案が)分からなくなる」と皮肉ったが、テレビ中継を見てそう思った国民も多かっただろう。
 首相は、安保法制を合憲とする根拠に1959年の砂川事件最高裁判決や、72年の政府見解を挙げる。しかし、砂川事件判決は駐留米軍が違憲ではないと判断したもので、72年見解も、結論は「集団的自衛権の行使は憲法上認められない」だった。政府・与党はそれぞれの一部を抜き出し、継ぎはぎのように組み合わせて集団的自衛権の行使容認論を組み立てており、多くの憲法学者が「違憲」と判断する根拠となっている。
 このまま、与党が「十分に審議した」として多数決で採決を強行するなら、国民無視のそしりを免れまい。政府は集団的自衛権の行使が必要と言うなら、もっと具体的に、丁寧に説明するべきだ。それが無理なら、理屈の通らない法案となる。撤回するべきだ。



南日本新聞 ( 2015/6/19 付 )
社説: [新安保政策 党首討論] 「違憲」の指摘に答えず


 多くの憲法学者から安全保障関連法案は「違憲」と指摘されて初めての党首討論は、全く期待外れに終わった。
 安倍晋三首相は法案について、「正当性、合法性には完全に確信を持っている」と主張した。だが、合憲の論拠は、従来の説明を繰り返すばかりだった。
 国民への丁寧な説明にはほど遠い姿勢と言わざるを得ない。海外での武力行使を禁じた憲法との整合性はあるのか。指摘にしっかりと答えるべきだ。
 党首討論で首相は、存立危機事態や重要影響事態を認定する判断基準について岡田克也民主党代表に問われ、「いちいち全てを述べるようなリーダーは海外にはいない」と答えた。
 事実上の答弁拒否である。想定される基準が示されなければ論議はできない。国民の理解も深まらないだろう。
 岡田代表が「時の内閣に武力行使の判断を丸投げしている。これでは立憲国家にならない」と批判した。その通りである。
 これに対し、首相は「憲法の範囲内であるからこそ(法案を)提出した」と強弁した。根拠として繰り返したのは、最高裁が「必要な自衛の措置」を認めた1959年の砂川事件判決と、それに基づく72年の政府見解である。
 しかし、衆院憲法審査会の参考人質疑で、安全保障関連法案を「憲法違反」と断じた憲法学者は、砂川判決から集団的自衛権の行使容認は導けないと指摘した。
 長谷部恭男早稲田大教授は会見で「わらにもすがる思いで判決を持ち出したのかもしれない」とさえ述べている。
 こうした批判に一切答えず、首相は持論を展開し続ける。もはや、開き直りのようにも見える。
 一方の野党側の追及も、物足りなさが残った。岡田代表は、法案を「憲法違反」と述べたが、過去の政府見解との矛盾を論理的に突き切れなかった点は残念だ。
 首相は、維新の党の松野頼久代表に「大変良い質問をしていただいた」と秋波を送った。難局打開への「野党分断」策である。
 きのうの衆院予算委員会で首相は、集団的自衛権の行使を認めた昨年の閣議決定について「国際情勢に目をつぶり、従来の解釈に固執するのは政治家としての責任放棄だ」と述べた。
 国民の理解を得ないまま採決を急ぐようなことがあれば、それこそが「政治家としての責任放棄」である。

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