2015-06-27(Sat)

戦争法案 「違憲」法制 (8)国会延長 「違憲法案」を通すな 150620-26

撤回・廃案を決断せよ いくら時間をかけても違憲の疑いは晴れない 強引な審議は許されぬ

<各紙社説・論説>
毎日新聞)国会は「違憲法案」を通すな(6/25)
信濃毎日新聞)安保をただす 延長国会開幕 反対論に耳をふさぐな(6/26)
信濃毎日新聞)安保をただす 会期大幅延長 いくら時間をかけても(6/24)
中国新聞)国会大幅延長 強引な審議は許されぬ(6/24)
朝日新聞)安保法案 違憲の疑いは晴れない(6/23)
東京新聞)「違憲」の安保法制 撤回・廃案を決断せよ(6/23)
北海道新聞)新安保法制 国会会期延長 違憲でも押し通すのか(6/23)
毎日新聞)安保転換を問う 資源の確保…軍事とは結びつけるな(6/21)
東京新聞)地方議会から 憂う国民の声を聞け(6/18)
信濃毎日新聞)安保をただす 違憲法案 白紙委任にはさせまい(6/19)
西日本新聞)国会延長 安保法制は仕切り直しを(6/20)




以下引用



毎日新聞 2015年06月25日 02時30分
社説:国会は「違憲法案」を通すな


 きょうから約3カ月間の延長国会が始まる。安全保障関連法案をめぐるこれからの国会審議は、戦後70年の節目に国のあり方を決める大きな岐路となる。
 ここまで1カ月の審議を通じ、関連法案は「憲法違反」であるとの批判が高まっている。それなのに政府は本質的な問題に正面から答えない。答弁がころころ変わる。自衛隊の活動拡大には、法的安定性と国民の理解が不可欠だが、どちらも欠いている。
 安倍晋三首相は先週の衆院予算委員会で「国際情勢に目をつぶって、従来の(憲法)解釈に固執するのは、政治家としての責任放棄だ」と語った。だが、従来の憲法解釈との論理的整合性を重視するのは当然のことだし、法案に反対する人たちが国際情勢に目をつぶっているわけでもない。
 政府が憲法解釈変更の根拠とした1972年の政府見解は、憲法は「自衛の措置」を禁じていないが、その措置は必要最小限度にとどまるべきで、集団的自衛権の行使は許されない、と言っている。
 新しい憲法解釈では、同じ論理を使いながら「安全保障環境の根本的な変容」を理由として、結論だけを集団的自衛権の行使は許される、と正反対に変えた。
 こんな恣意(しい)的な解釈変更を認めれば、憲法の規範性は崩れ、国民は憲法を信頼できなくなる。論理的整合性がとれないのなら、憲法改正を国民に問うべきだ。
 私たちは、安全保障環境の変化に合わせて法制を検討することは否定しない。米国の力の低下や中国との緊張が続く尖閣諸島をめぐり、国民に漠然とした不安が広がっているのもわかる。だが、そういう抽象的理由では、憲法解釈を変更してまで集団的自衛権の行使を容認する説明にはならない。
 尖閣諸島の防衛は、個別的自衛権と日米安保で対処できる。
 首相が集団的自衛権行使の典型例としてこだわる中東の機雷掃海も、安全保障環境の変化とどうつながるのか理解に苦しむ。
 政府は、他国防衛でなく自衛のための「限定容認」だという。だが、中東有事で経済的理由のために集団的自衛権を行使する事例こそが、政府の判断次第で歯止めがかからなくなることを示している。認めるわけにいかない。
 集団的自衛権の行使容認のための法案は、撤回するか廃案にすべきだ。重要影響事態法案についても、世界中で自衛隊が米軍などに後方支援できるようにする内容である以上、同意できない。
 一方、国連平和維持活動(PKO)協力法改正案や国際平和支援法案は、関連法案から切り離し、修正のうえ与野党の幅広い合意を得る方向で検討してはどうか。
 安全保障環境の変化に対応するには、まず自国の守りを固め、同時に憲法の枠内で国際協力活動に取り組む必要がある。勢いにまかせて全部やってしまおうという乱暴な発想ではなく、法案を絞り込むべきだ。



信濃毎日新聞 2015年06月26日(金)
社説:安保をただす 延長国会開幕 反対論に耳をふさぐな


 安全保障関連法案の行方が懸かる延長国会が始まった。
 学者から法案が憲法違反と指摘され、国民の多くが反対しても、安倍晋三政権は一顧だにしない。法案を押し通そうとしている。
 これが民主主義なのか。そんな疑問すらわく。
 首相は会期延長に関し、「丁寧な説明を心掛けながら、成立を目指したい」と語った。
 国民の理解を得ることより、法案を米国に約束した夏までに成立させることに重きを置いているのは、政府側の通り一遍の国会答弁で察しが付く。
 国会の会期が大幅に延長されたのは、学者や市民らがおかしいものはおかしい、と声を上げ始めたからだ。この先、無理を重ねるほど、民意と政権の溝は深まっていくだけだろう。
 「安保法案は憲法に明確に違反している」
 当初の会期末だった一昨日、憲法学者や政治学者らでつくる「立憲デモクラシーの会」は会見を開き、法案撤回を求めた。
 衆院の憲法審査会で「違憲」と指摘した慶応大名誉教授の小林節氏は「審査会をきっかけに国民が目を覚まし、論争がクリアになった」と語った。
 同日夜、国会を多くの市民が取り囲み、「戦争法案絶対反対」といった抗議の声が響いた。作家や学者らの呼び掛けで昨年3月に発足した「戦争をさせない1000人委員会」などでつくる実行委員会が開いた集会だ。主催者によると長野県を含む全国各地から約3万もの人が集まった。
 実行委員会は5月中旬に法案が閣議決定されて以降、抗議の座り込みや集会を続けている。他のグループの参加もあり、市民の連携が深まっている。
 地方議会も呼応している。県内の市町村ではこれまでに半数以上の議会が廃案や慎重審議などを求める意見書や決議を6月議会で可決した。住民に近い議会の意思表明は重い意味を持つ。
 安倍政権は、歴代の政府が憲法解釈で禁じてきた集団的自衛権行使を容認した昨年の閣議決定も含め、自ら率先して守るべき憲法を軽視してきた。
 そんな姿勢に不信感が募るのは当然である。首相は法案反対の声が国民の間に広がっている現状を謙虚に受け止め、今すぐにごり押しをやめるべきだ。



信濃毎日新聞 2015年06月24日(水)
社説: 安保をただす 会期大幅延長 いくら時間をかけても


 違憲性が問われているのに是が非でも成立させようというのか。
 国会の会期が9月27日まで延長された。安全保障関連法案の今国会での成立を確実にするためだ。政府、与党のごり押しを許すわけにはいかない。
 95日間の延長は、現憲法下で最長になる。与党は80時間の審議を委員会採決の目安としてきた。法案を「憲法違反」とする専門家の批判などが響き、審議は想定より遅れている。
 大幅延長で政府、与党には「60日ルール」が視野に入る。法案の衆院通過後、60日以内に参院で採決されない場合、憲法の規定で否決されたとみなし、衆院で3分の2以上の賛成で再可決すれば、成立させられる。
 安倍晋三首相は「丁寧な説明を心掛け、成立を目指したい」とするものの、法案への疑問は膨らむばかりだ。
 衆院特別委員会の参考人質疑では、2人の元内閣法制局長官が法案を批判した。政府内で憲法解釈を担った人たちの指摘は重い。
 宮崎礼壹氏は「集団的自衛権の行使容認は限定的なものも含め憲法9条に違反している。法案の該当部分は速やかに撤回すべきだ」とした。行使は許されないとした1972年の政府見解を容認の根拠とするのは「黒を白と言いくるめる類いだ」と非難する。
 「合理的な理由がある場合は憲法解釈変更が許されないわけではない」とした阪田雅裕氏も、安倍政権の説明は過去の見解から「逸脱している」とする。ホルムズ海峡での活動について「中東有事にまで出番を広げるなら、限定的行使でも何でもない」とした。
 首相は「政治家は常に、必要な自衛の措置とは何か、どこまで認められるのかを考え抜く責任がある」と反論する。多くの専門家が憲法上認められる範囲を超えると指摘しているのに、正面から答えようとしない。
 共同通信社の最近の世論調査では、法案について「憲法に違反していると思う」との回答が56・7%、法案に「反対」は58・7%を占めた。政権が「十分に説明しているとは思わない」は84・0%に上る。国民の理解には程遠い。
 政府が「合憲性について自信を持っている」などと繰り返すばかりなら、議論は平行線だ。こんな状態でどれだけ審議に時間をかけても採決は正当化されない。あらためて法案の撤回を求める。



中国新聞 2015/6/24
社説:国会大幅延長 強引な審議は許されぬ


 長い国会の歴史でも異例の事態である。きょう会期末だった通常国会が9月27日まで95日間も延長されることになった。
 通常国会の延長幅としては最長であり、多くの野党の反対を押し切った格好だ。最大の焦点である安全保障関連法案を、何が何でも通したいという現政権の姿勢の表れだろう。
 しかし衆院での審議は現時点では与党が採決までの目安としていた80時間に遠く及ばず、採決のめどは立たない。法案そのものの違憲性も問われている。大幅延長は審議が行き詰まり、政府・与党が追い込まれた裏返しともいえる。その現実を度外視し、審議日数さえ確保すればいいという発想なら問題だ。
 むろん5月の法案提出の段階でも一定の会期延長は想定されていた。安倍晋三首相にしても8月上旬まで延ばせば、安保法案は参院でも十分可決できると踏んでいた節がある。
 終戦の日を前に国会を閉じ、戦後70年の「安倍談話」への野党からの批判を避けたい思惑もあったようだ。あえて談話を閣議決定はせず「個人的見解」にとどめる案が浮上したことには大幅延長を踏まえ、審議への影響を抑える狙いもありそうだ。
 さらにいえば余裕で臨むはずだった9月の自民党総裁選も会期中と重なり、無投票再選を前提にしなければ国会どころではなくなる。シナリオが狂い始めた安倍政権としては今後、綱渡りの国会運営を迫られよう。
 かといって肝心の法案の成立を焦り、強引に前に進めることは許されない。きのう政府側から「国民の理解を得られるよう審議を尽くしたい」との声も出たが、どこまで本心か。参院で議決ができない場合、衆院で再可決できる「60日ルール」は当然、念頭に置いていよう。
 国民が求めているのは、採決ありきの拙速な国会戦術ではない。国の行く末を左右する法案が、平和憲法と照らしてどうなのか。根源的な疑問に対する誠実な答えではないか。
 法案がよって立つのは、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更である。その違憲性を憲法学者たちが国会の内外で指摘したのに加え、おととい衆院特別委員会で「憲法の番人」だった内閣法制局の元長官2人が法案を厳しく批判した。
 国民の不安は募るのに政府・与党は正面から向き合おうとしていない。このままあいまいな答弁を繰り返して野党に時間ばかり費やさせ、揚げ句に強引に採決するのなら許しがたい。
 本来なら会期延長せず、廃案にしてもおかしくない。ただ延長が決まった以上、野党には法案の問題点を一から洗い出す粘り強い姿勢が求められよう。
 政府・与党は維新の党からの「対案」が出れば修正協議に応じ、採決への環境を整える意向という。ただ維新は会期延長には反対し、少し距離を置いて様子見をしているようだ。一つ言えるのは従来の維新のスタンスで修正したとしても、現法案に一定に沿う「歯止め」の強化はあっても違憲の恐れという本質論が置き去りにされかねないことだ。それでいいと思えない。
 そもそも政府が満を持して提出した法案を安易に修正すること自体、ずさんさを認めたことにならないか。この3カ月、徹底審議したとしても「白紙に戻す」しか結論はないはずだ。



朝日新聞 2015年6月23日05時00分
(社説)安保法案 違憲の疑いは晴れない


 これで安全保障関連法案の違憲の疑いは晴れた――。安倍政権がそう考えているとしたら、間違いだ。
 衆院の特別委員会はきのう、憲法や安全保障の5人の専門家から法案への意見を聞いた。
 安倍首相の私的諮問機関・安保法制懇のメンバーだった西修・駒沢大名誉教授は「限定的な行使容認であり、明白に憲法の許容範囲内だ」と述べた。
 西氏の主張は、日本は集団的自衛権を認めた国連憲章を受け入れており、憲法も明確に否定してはいないというものだ。
 ただ、歴代の自民党内閣は一貫して「憲法上、集団的自衛権の行使は認められない」との解釈をとり、西氏ら一部の憲法学者の主張を否定してきた。
 先の衆院憲法審査会でも、長谷部恭男・早大教授ら3人の憲法学者がそろって、すでに確立している政府の憲法解釈を時の内閣が一方的に変更してしまうことのおかしさを指摘した。
 自民党にすれば、法制懇にいた西氏によって長谷部氏らの違憲論による衝撃を打ち消したかったのだろう。しかし、その後の党内の動揺を見せつけられた後では、説得力は乏しい。
 きのうの特別委では、2人の元内閣法制局長官も、政府の解釈変更を批判した。
 阪田雅裕氏は「集団的自衛権の限定的な行使が、これまでの政府解釈と論理的に全く整合しないものではない」と一定の理解を示しつつ、ホルムズ海峡での機雷除去については「限定的でも何でもない」と指摘。「歯止めをなくして、日本が戦争をするかどうかを政府の裁量や判断に委ねていいと考えている国民は誰もいない」と語った。
 宮崎礼壹氏も「確立した憲法解釈を政府自身が覆すのは、法的安定性を自ら破壊するものだ」と断じた。
 こうした指摘に対し、安倍首相はその後の参院決算委で「その時々の国際情勢への対応をどうすべきか。これを考え抜くことを放棄するのは、国民の命を守り抜くことを放棄するのに等しい」と反論した。
 だからといって、時の政府の裁量で憲法の歯止めを外していいことには決してならない。首相の言い分はあまりに乱暴だ。
 政権は、国会会期を9月27日まで延長することを決めた。通常国会の延長幅としては、戦後最長となる。異例の大幅延長は、法案が合憲だと国民を説得することに自信を持てないことの裏返しではないか。
 時間をかけた議論はいいとしても、それで違憲を合憲にひっくり返すことはできない。



東京新聞 2015年6月23日
【社説】「違憲」の安保法制 撤回・廃案を決断せよ


 国会が約三カ月間延長されたが、「憲法違反」と指摘される安全保障法制関連法案をこのまま成立させてはならない。法案の撤回、廃案を決断すべきだ。
 今月二十四日に会期末を迎える今の通常国会の会期がきのう、九月二十七日まで九十五日間延長された。鈴木善幸内閣の九十四日間を抜いて現行憲法下で最も長い会期延長は、安倍内閣が提出した安保法制関連法案を確実に成立させるためにほかならない。
◆憲法学者の重い指摘
 安保法案は五月二十六日に衆院本会議で審議入りし、現在、衆院平和安全法制特別委員会で審議されている。衆院を通過した後、仮に参院での審議が遅れても、衆院で再び可決し、成立させられる日程を、大幅延長は想定している。
 安倍晋三首相は今年四月、米連邦議会での演説で、集団的自衛権の行使に道を開く安保法案を「夏まで」に成立させると語った。
 しかし、この法案は、どんなに審議を重ねても、成立させるわけにはいかない。憲法違反である可能性が否定できないからだ。
 歴代内閣は、集団的自衛権の行使を「違憲」とする憲法解釈を堅持してきたが、昨年七月、この解釈を変更して行使容認に転じたのが、安倍内閣である。
 従来の憲法解釈は、国会での長年の議論の積み重ねを経て確立されたものであり、一内閣の判断で解釈を正反対に変える暴挙はそもそも許されない。
 衆院特別委ではきのう参考人質疑が行われ、歴代内閣法制局長官のうち二人が、安保法案の違憲性を指摘した。今月四日の衆院憲法審査会では、自民党が推薦した参考人を含めて三人の憲法学者全員が、安保法案を違憲と断じた。
 三人以外にも、全国の憲法学者二百人以上が安保法案に反対する声明を出している事実は重い。
◆過ち繰り返す危険性
 菅義偉官房長官は「数ではない」と防戦に躍起だが、憲法学の主流の意見を故意に無視し、法案成立を強引に進めることが、賢明な政治であるはずがない。
 元法制局長官が安保法案を違憲と批判したことに対し、安倍首相はきのう参院決算委員会で「政治家は常に、必要な自衛の措置とは何かを考え抜く責任がある」と語った。その通りではある。
 ただし、憲法の枠内で、との限定が付いていることも、政治家は常にわきまえなければならない。
 憲法の枠組みを無視し、もしくは確立した憲法解釈を勝手に変えて、思うがままに安保政策を組み立てるというのなら、国家権力を憲法で縛る立憲主義は形骸化し、海外で武力の行使をしない専守防衛の歯止めは意味を失う。
 自存自衛を名目に、近隣諸国を侵略していった過去の戦争の過ちを繰り返す危険性すら高くなる。戦後日本の平和国家としての歩みにふさわしいとは到底言えない。
 安倍内閣は違憲批判を受けて、集団的自衛権の行使容認を正当化するために、最高裁による一九五九年の「砂川事件判決」を再び持ち出した。
 しかし、この判決は旧日米安全保障条約に基づく米軍駐留の合憲性が問われた裁判であり、裁判で議論もされず、判決でも触れていない集団的自衛権の行使容認について、この判決を論拠とするのは無理がある。
 そもそも、なぜ今、集団的自衛権の行使容認が必要なのか、安倍内閣は国会論戦を通じても、その根拠を明確に示せてはいない。
 首相は先週の党首討論で「全体として国際社会の変化を申し上げている」と述べ、ホルムズ海峡での機雷掃海や朝鮮半島有事の際、警戒監視に当たる米艦船の防護を行使例に挙げたが、憲法の解釈を変更してでも、すぐに可能にしなければならない切迫性はない。
 安倍内閣は法案成立に向けて、独自の対案をまとめる予定の維新の党との修正協議に前向きだ。
 しかし、法案が修正されても、集団的自衛権の行使に道を開いたり、戦闘現場近くで外国軍を後方支援できるようにする根幹部分が変わらなければ、法案がもたらす危うさに変わりはない。
◆国民を畏れなければ
 共同通信社が実施した直近の全国電話世論調査によると安保法案が「憲法に違反していると思う」との答えは56・7%に上り、法案への反対も前回五月の調査より10ポイント以上増え、58・7%に達した。
 安保法案は専守防衛を逸脱し、おびただしい犠牲の上に、二度と戦争はしないと誓った戦後日本の平和主義に禍根を残す内容だ。
 与党が衆参両院で多数を占めていても、民意を無視して法案を強引に成立させていいわけがない。
 国民を畏れ、政府自らが法案撤回を決断するか、国会が良識に基づいて廃案とすることを、会期延長に当たって強く求めたい。



北海道新聞 2015/06/23 08:55
社説:新安保法制 国会会期延長 違憲でも押し通すのか


 国会はきのう、24日までの会期を9月27日まで95日間延長することを決めた。
 通常国会としては過去最長の延長幅だ。集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案を、何としてでも今国会で成立させようという安倍晋三政権の意思の表れだろう。
 だが関連法案は、その土台が揺らいでいる。
 衆院憲法審査会で憲法学者3氏が違憲と断じたのに続き、きのうの衆院特別委員会の参考人質疑でも、元内閣法制局長官2氏が違憲などと批判した。
 政府は躍起になって合憲だと説明しているが、国民の多くは納得せず、今国会での成立に反対する声が強い。
 会期延長によって形式的に審議時間を積み上げ、違憲性が拭えない法案を無理やり押し通すことは許されない。
 第1次安倍内閣などで内閣法制局長官を務めた宮崎礼壹(れいいち)氏は参考人質疑で、集団的自衛権行使は「憲法上、許されない」と結論づけた1972年政府見解を安倍政権が行使容認の根拠としていることについて「黒を白と言いくるめる類いだ」と批判した。
 その上で「行使容認は限定的なものも含めて憲法9条に違反している」と言明し、関連法案の撤回を求めた。
 小泉純一郎内閣で長官を務めた阪田雅裕氏も、首相が集団的自衛権の行使例とする中東ホルムズ海峡の機雷封鎖について「わが国の存立を脅かす事態に至りようがない」と指摘し、「従来の政府見解を明らかに逸脱している」と強調した。
 現長官の横畠裕介氏は首相官邸の方針を追認するばかりだが、本来、法制局は憲法を頂点とする法体系が保たれているかをチェックする機関である。
 その長官経験者が法案を違憲としたことの意味は重い。
 今回の大幅延長は、法案の衆院可決後、参院で60日たっても採決されない場合、憲法の規定に従って衆院で再議決できる「60日ルール」の適用も視野に入れている。
 「夏までの成立」を米国に約束した首相としては、是が非でも今国会で成立させたいのだろう。
 だが共同通信社の世論調査では、関連法案が「憲法に違反していると思う」との回答は56%、今国会成立に「反対」が63%に上る。
 「対米公約」を優先して国民の声に耳をふさぐのは本末転倒である。法案は取り下げるべきだ。



毎日新聞 2015年06月21日 02時30分
社説:安保転換を問う 資源の確保…軍事とは結びつけるな


 集団的自衛権の行使として他国領内で武力行使することはあるのか。安倍晋三首相は衆院平和安全法制特別委員会で、「想定し得るのは(中東)ホルムズ海峡の機雷除去だ。他の例は念頭にない」と述べた。
 同海峡は、日本が輸入する原油の約8割が通過する要衝である。機雷で封鎖されれば、影響は大きい。しかし、直ちに国の存立が脅かされる事態に結びつくかといえば、大いに疑問だ。それが唯一の想定事例というのでは、「解釈改憲」してまで他国での武力行使を可能にする必要はあるまい。
 ◇低下する石油への依存
 安全保障関連法案では政府が「存立危機事態」と認定すれば集団的自衛権を行使できる。その具体例を自民党の高村正彦副総裁が、テレビ番組で示したことがある。
 「ホルムズ海峡から原油が全く来なくなって国内で灯油もなくなって寒冷地で凍死者が続出するというのは、国民の権利が根底から覆される状況ではないか」
 エネルギー資源の中でも天然ガスはマレーシア、豪州、インドネシアなどと輸入先の分散化が進んでいるため、ホルムズ経由は約3割にとどまる。問題は石油だ。
 しかし、エネルギー全体の中での石油の割合は下がっている。1973年度には国内で使われたエネルギー資源全体の75%を占めていたが、73年と79年の2度にわたる石油危機で原油価格は高騰し、供給途絶の不安も高まった。エネルギー安全保障の重要性を痛感した政府は、石油依存度の引き下げに取り組んできた。
 天然ガスや石炭、原子力などの導入を推進し、今では石油への依存度は40%台前半に下がっている。国内にはほぼ半年分の石油備蓄もある。
 ホルムズ海峡が封鎖されれば、原油価格が高騰したり、石油化学製品の原料になるナフサが不足したりするなど国内経済に悪影響が出ることは否定できない。しかし、「寒冷地で凍死者が続出する」という事態はどうにも想定しがたい。
 そもそも資源確保と軍事力を結びつける発想は、危うい。
 「帝国の存立亦正(またまさ)に危殆(きたい)に瀕(ひん)せり。事既に此(ここ)に至る。帝国は今や自存自衛の為(ため)、蹶然起(けつぜんた)つて一切の障礙(しょうがい)を破砕するの外なきなり」。対米戦争を始めた41年12月8日に公表された宣戦詔書である。
 国家存立の危機に至り、戦争を始めたという内容だ。存立危機事態に至れば発動できるという集団的自衛権行使の「新3要件」と重なる。
 戦前の日本は石油や鉄鉱石などの資源を求め、軍事力を背景に満州や東南アジアに侵攻した。そうした動きに反対する米国に、日本への石油輸出を止められたことが開戦につながった。対米戦争は資源を巡る「自衛」が名目だったのだ。
 その反省に立って戦後70年、日本が憲法のもと、他国で武力を行使しない平和国家を築いてきた歴史の積み重ねを忘れてはなるまい。
 エネルギー安全保障は国の最大の責務の一つである。それには資源の調達先の多様化を図るなど平時においての努力こそ必要だ。
 ◇平時に万全を尽くせ
 ホルムズ海峡は世界の海上輸送原油の4割が通過する。封鎖の影響は日本だけにとどまらず、世界経済を揺るがす。政情不安が続く中東の安定化に向け、軍事力ではなく外交努力で各国の協調を主導してほしい。
 今春、国際石油開発帝石がアラブ首長国連邦(UAE)、アブダビ政府系石油会社との間でアブダビ陸上油田の原油を40年間調達する契約を結んだ。アブダビの原油はホルムズ海峡を経ずに輸送できる。供給確保に加え、危険を分散する上でも大きな意味がある。首相が2度にわたってUAEを訪問した経済外交の成果という評価もある。
 友好関係にあるUAEやサウジアラビアとは鹿児島や沖縄で原油を共同備蓄し、有事に備えている。そうした資源関連の事業だけでなく、産業技術の開発や人材育成など幅広い分野で資源国との協力関係を深めていくことも大切なエネルギー安保であろう。
 米シェールガス・オイルやアフリカの天然ガスなどの調達を増やし、中東リスクを減らす努力も必要だ。
 国内でもやるべきことがある。石油や天然ガスなど輸入に頼らざるを得ない化石燃料から自前のエネルギーへの転換を進めることだ。太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーの導入拡大である。
 初期費用がかさんで電気料金を押し上げる、発電量が安定しないといった課題はあるが、克服するための技術開発などに政策資源を投入すべきだ。ところが、政府が決めた電源構成によると再生エネの割合は2030年でも2割強にとどまる。原発回帰ありきで、再生エネには後ろ向きでは中東頼みは改まらない。
 平時に万全を尽くさず、有事に自衛隊を派遣することだけを論じても説得力はない。



東京新聞 2015年6月18日
【社説】地方議会から 憂う国民の声を聞け


 国会審議中の安全保障関連法案をめぐり、廃案や慎重審議を求める意見書が各地の地方議会で相次いで可決されている。住民を代表する地方議会の懸念はすなわち、少なからぬ国民の声である。
 地方自治法九九条は、地方自治体の公益に関する事柄について、地方議会は国会や関係省庁に意見書を提出できる、と定めている。
 意見書に法的拘束力はないが、住民代表である議会の総意として尊重されるべきものである。
 安保法制を懸念する意見書は、法案が閣議決定された五月の愛知県の豊明、碧南両市や北海道小樽市に続き、六月に入ってからは、国会審議の行方をにらみつつ、すでに少なくとも三十を超す市町村議会で可決された。
 都道府県議会でも動きが出はじめ、十六日には、三重県議会が慎重な審議を求める意見書を賛成多数で可決した。
 これらの意見書に共通するものは、国民的合意のないまま、結論ありきで法改正を強行しようとする政府の姿勢への懸念である。
 例えば三重県議会は、国民の多くが政府の説明を不十分と感じていると指摘し、今の通常国会での成立にこだわらず審議を慎重かつ丁寧に進めるよう求めた。
 さらに踏み込んで廃案を求めた市町村議会も少なくない。
 例えば長野県大鹿村議会は「明確な憲法違反であり、違憲立法と言わざるを得ない」とした。
 直近の世論調査では、安保法案への安倍政権の姿勢に関し、「十分に説明しているとは思わない」との回答が八割を超えている。
 衆院憲法審査会に参考人として招いた憲法学者が全員「違憲」と断じても、政権は、憲法学を空理空論呼ばわりし、決めるのは学者ではなく政治家だと開き直る。
 あまりにも独善的である。
 人々の暮らしにより近い地方議会が国会審議にもの申し始めたのは、人々の気持ちに目を向けようとせぬ政府へのいら立ち、怒りがそれだけ大きくなってきたということであろう。
 憲法審査会が高知市で開いた地方公聴会では、一般公募で発言者に選ばれた主婦が首相に対し「立憲主義をしっかり勉強し直してください」と求めた。
 多くの国民が国会審議を、政府の姿勢を「これはおかしい」と感じているのである。
 大事なものは、国会議員の数の力だけか。世論のうねりを反映する地方議会の声に、為政者は、きちんと向き合うべきである。



信濃毎日新聞 2015年06月19日(金)
社説:安保をただす 違憲法案 白紙委任にはさせまい


 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案の矛盾が噴き出している。
 衆院憲法審査会で学者から「憲法違反」と指摘されて以降、国会や市民の間で、法案の正当性を問う声は高まる一方だ。
 もとをただせば、安倍晋三政権が昨年、集団的自衛権行使容認の閣議決定で、過去の見解をつまみ食いし、憲法解釈を都合よく変えたことが今の状況を招いた。
   <我田引水の安倍政権>
 つぎはぎの理屈のために国民には分かりにくさが増すばかりだ。憲法軽視、我田引水の政権の姿勢が強まっている。
 政権が法案を正当とする根拠は1972年の政府見解と、その下敷きとなる59年の砂川事件最高裁判決だ。
 安倍首相はおとといの党首討論でもこの二つを引き、「正当性、合法性には完全に確信を持っている」と言い切った。
 なぜ、この二つから行使容認が是と言えるのか。合憲とする根拠をあらためて点検しよう。
 72年の政府見解は、外国の武力攻撃で国民の権利が根底から覆される急迫、不正の事態を排除するため、やむを得ない場合に必要最小限度の自衛の措置を認めた。自国領土が侵害されて初めて行使できる個別的自衛権である。
 その上で、他国への武力攻撃を阻止する集団的自衛権の行使は憲法上許されない―とした。
 歴代内閣もこの見解を維持してきた。ところが、安倍政権は日本を取り巻く安保環境が変化し、他国への武力攻撃でも日本が脅かされることが起こり得るとし、自衛の措置として集団的自衛権は行使できると読み替えた。
 集団的自衛権は行使できないとの結論を導くための前提を踏襲しながら、正反対の結果を出した。こじつけとしか言いようがない荒っぽさである。
 もう一つの砂川判決を反論として引っ張り出すことにも問題が多い。政権幹部は「わが国が存立を全うするために必要な自衛の措置を取り得ることは国家固有の権能の行使として当然」とした判決の一部分だけを強調している。
 そもそも駐留米軍の合憲性が争われた事件で、最高裁が外国の軍隊が駐留しても9条の「戦力」には当たらないとした判決だ。集団的自衛権の行使について判断を示したわけではない。
   <反論の根拠にならぬ>
 しかも、いわく付きの裁判でもある。一審判決は駐留米軍が「戦力」に当たり、違憲とした。米側が判決破棄などを狙い、日本側に内政干渉したことが米公文書などで明らかになっている。裁判の正当性には今も疑義が残る。
 また、判決は日米安保条約に関して、高度の政治的問題は司法判断になじまない、とした。「統治行為論」として知られる。9条をめぐるその後の裁判に影響を与えてきた。憲法判断を避けた例は少なくない。
 政権側は当初、この判決を行使容認の根拠にしようとした。公明党などが「判決は個別的自衛権を認めたもの」と反発、一度は後ろに引っ込めた経緯がある。
 そこで頼ったのが72年見解だ。自衛の措置の範囲が「個別的自衛権に限定されたとは限らない」とも読めるとし、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に踏み切った。場当たり的で、容認ありきの姿勢を印象付けた。
 「ご都合主義」と批判されても安倍政権は意に介しない。
 流れを変えたのは、安保法案に対する憲法学者の見解だ。今月上旬の衆院憲法審査会で3人の学者がそろって安保法案は憲法違反と断じた。その後も「憲法9条の下で許される武力行使は個別的自衛権までで、集団的自衛権の行使は典型的な憲法違反だ」などと明快な主張を続けている。
 政権は違憲論の封じ込めに必死だ。自民党の高村正彦副総裁は「憲法の番人は最高裁であって憲法学者ではない」と言い放った。しかし、9条関係では憲法判断を避けた例があるように、番人になり得ているとは言い難い。
 安保法案が成立すると、政府の裁量で自衛隊の海外での武力行使が広がる恐れがある。その結果、日本が敵視され、リスクを高めることになるかもしれない。軍事の論理が社会で幅を利かせていき、人々の自由や権利が制限される恐れが否定できない。
    <3原則を踏みにじる>
にもかかわらず、安倍政権は憲法学者や国民の異論、反論に耳を傾けようとせず、選挙で白紙委任を受けたと言わんばかりに成立に向けて突き進んでいる。
 国民主権、基本的人権の尊重、平和主義―。現行憲法の3原則をあらためて確認したい。
 安倍政権による安保政策の転換で、原則が掘り崩されていることに危機感を持つ必要がある。白紙委任していいのか。国民にも厳しい問いが突き付けられている。



=2015/06/20付 西日本新聞朝刊=
社説:国会延長 安保法制は仕切り直しを


 政府と与党は、24日までの今通常国会の会期を大幅に延長する方向で調整に入った。安全保障関連法案の成立を確実にするためだ。
 安倍晋三政権は当初、関連法案を衆院特別委員会で80時間以上審議し、24日までに衆院を通過させ、8月初めまで延長した国会で成立させる日程を描いていた。
 しかし、安倍首相のやじ問題などで特別委が何度も中断し、審議時間は確保されていない。さらに衆院憲法審査会で参考人の憲法学者3人がそろって「法案は憲法違反」と指摘したことで、国民の法案への疑念が深まり、大幅延長が必要と判断したようだ。
 安倍政権は、法案成立の戦術として、維新の党との連携に狙いを定めたとみられる。自民、公明の与党だけで突き進むのではなく、修正協議を通じて維新の党を取り込み、強行採決の印象を薄めようという狙いなのだろう。
 安全保障以外の重要法案も審議中であり、一定の会期延長はやむを得ない面がある。また「安保法案への理解を深めるためにも、会期を延長して審議する」という主張も成り立つかもしれない。
 しかし、「集団的自衛権の行使容認は違憲」という憲法学者たちからの批判は、一連の安保法制の根幹部分に関わっている。安倍政権が集団的自衛権の行使をあきらめ、法案を全面的に書き換えない限り、「違憲」の評価を「合憲」に変えるのは難しい。多少の修正でクリアできる問題ではない。
 安倍首相が今国会での安全保障法案成立にこだわるのは、4月の米議会での演説で「この夏までに必ず実現させる」と約束したからではないか。国民の理解よりも「対米公約」を優先しているのだとすれば、本末転倒である。
 安全保障法案成立ありきの会期大幅延長は必要ない。ましてや「数の力」で強行採決を繰り返して早期成立を目指すのは論外だ。
 安倍政権は「法案は憲法違反」との指摘に謙虚に耳を傾け、国会を閉じていったん廃案にした上で、憲法論議からじっくりやり直すべきではないか。

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