2015-07-02(Thu)

東海道新幹線火災事故 開業後 初の認定 死傷者も初

国交省緊急会議 「テロも視野に安全対策詰めていく必要がある」(国交相)

国土交通省が、緊急会議を開いた。
太田国交相のほか、国交省やJR各社、警察庁の関係者らが出席した。

「テロについても視野に入れ、幅広い安全対策をしっかり詰めていく必要がある」(国交相)
乗客の手荷物を鉄道事業者が確認できるかどうかについて、JR側は現状の制度では難しい旨回答したようだ。
 
国交省は模倣犯の出現も考慮し、警察と連携した警備の徹底をJR各社に依頼。
JR各社は警備体制の強化として車両内や主要駅での巡回を増やす意向を示したという。
 
現行のルールでは、3キログラム以内であれば可燃性の液体を車内に持ち込めるが、これを見直す案の検討も提起された。
空港のようにすべての手荷物を検査する仕組みの導入は議題に上がらなかったらしい。

JR東海の金子慎副社長は「迷惑をかけて申し訳ない」と陳謝し、
関係各所と協力しながら安全に関する対策を強化していく考えを示した。

<各紙社説>
朝日新聞)新幹線放火―安全対策見直す契機に(7/2)
読売新聞)新幹線放火殺人 利便性損ねずに再発防ぎたい(7/2)
毎日新聞)新幹線放火 「安全の死角」総点検を(7/2)




以下引用



朝日新聞 2015年7月2日(木)付
社説:新幹線放火―安全対策見直す契機に


 日本の大動脈で、とんでもない惨事が起きた。神奈川県内を走行していた東海道新幹線「のぞみ」での火災だ。
 71歳の男がガソリンをかぶって焼身自殺し、巻き添えで乗客の女性(52)が亡くなった。26人が重軽傷を負い、43本の列車が運休した。
 国土交通省は、64年の東海道新幹線開業後で最初の列車火災事故と認定した。事故で乗客が死傷したのも初めてだ。
 定時運行と事故の少なさから、新幹線は日本の安全の象徴といわれる。車内で油をまき火を付けるという行動はおよそ予測しがたい。だが、被害が出た以上、国と鉄道各社は事実関係を調べ、安全対策に改善の余地がないか、考えるべきだ。
 人が悪意で起こす行為を、未然に防ぐことは難しい。
 スペインと英国では04~05年に列車爆破テロがあり、多数の犠牲者が出た。海外の事件を受け、日本の鉄道もテロを想定した対策を進めてきた。
 東海道新幹線では、新型車両のデッキに防犯カメラを設置した。乗務員や警備員が車内を巡回して不審物をチェックしているほか、警察との合同訓練も実施してきた。
 だが結果として、今回の事態は防げなかった。
 欧州の一部の国や中国では、列車の乗客の手荷物を乗車前に検査している。ただ新幹線は海外より運行本数が際立って多い。東海道新幹線は1日42万人が利用し、1時間に最大15本が発車する。空港並みの手荷物検査をするには要員や場所の確保にコストがかかり、乗客の利便性もそこなわれる。
 駅や車内の警戒をこれまで以上に強め、疑わしい荷物は念入りに中身を確かめる。そうした日常の警備できめ細かく目を光らせるのが現実的だろう。
 警察と協議し、より抑止効果が高いやり方を考えてほしい。
 日本の鉄道は、72年の北陸トンネル火災事故や、03年に韓国・大邱(テグ)で192人が死亡した地下鉄放火事件を踏まえ、燃えにくい車両づくりに取り組んできた。今回も新幹線の車両全体が炎上することはなかった。一方、女性の死因は気道熱傷で、煙や熱気を吸ったとみられる。
 新幹線の乗務員は、乗客が押した非常ブザーで異変に気づいたという。放火されても人的被害を最小限に抑えるため、煙感知器の設置や、排気設備の強化など、ハード面での改良も検討していく必要がある。
 新幹線は多くの国民の日常の足だ。痛恨の被害を、より一層の安心につなげてもらいたい。



読売新聞 2015年07月02日 01時37分
社説:新幹線放火殺人 利便性損ねずに再発防ぎたい


 乗客の利便性を損ねずに、再発防止を図る。難しい課題が浮き彫りになったと言える。
 走行中の東海道新幹線の列車内で、男が焼身自殺した。巻き添えで乗客の女性が死亡した。救急搬送された乗客は26人に上った。
 新幹線内での火災発生は初めてである。半世紀余りにわたり、高い安全性を誇ってきた新幹線で、たまたま乗り合わせた乗客が死亡した衝撃は大きい。
 神奈川県警は殺人と現住建造物等放火の容疑で捜査している。男が犯行に至るまでの行動の解明が焦点になる。
 火災発生後の乗務員の対応は、おおむね適切だったようだ。
 運転士は列車を緊急停止させた後、備え付けの消火器で即座に消火活動にあたった。車掌が乗客を後方の車両に避難誘導したのも、マニュアル通りの行動だった。
 車両の床面やシートには、燃えにくい素材が用いられている。こうした防火対策が被害の拡大を防いだ面もあろう。
 一方、女性が逃げ遅れた理由については、検証が必要である。
 排煙装置が車内にないことが、煙の充満を招いたとの見方もある。設備面で改善の余地はないのか。事件の教訓を安全性の向上に生かさねばならない。
 男は、油のような液体の入ったポリ容器をリュックサックから取り出して、犯行に及んだ。
 危険物の持ち込みを防ぐには、空港のように、乗客一人一人の手荷物検査を実施するしか手立てはないだろう。
 しかし、旅客機と異なり、発車間際に駅に着いても乗れる利便性が、新幹線の売り物である。1000人以上を乗せ、ピーク時には3分間隔で正確に運行する新幹線に手荷物検査を導入するのは、現実的ではあるまい。
 JRと警察が連携を強め、ホームや車内の巡回の頻度を高めることが求められる。
 東海道新幹線の大半の車両では、デッキに監視カメラが設置されているが、客室内は撮影していない。映像は原則として、トラブルなどがあった際の事後チェックに利用しているという。
 犯罪の抑止効果を高めるため、設置箇所を増やすことも検討すべきではないか。
 国内では、来年5月に主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が開かれる。2020年東京五輪・パラリンピックも控えている。
 テロなど不測の事態を想定した対策が急務である。



毎日新聞 2015年07月02日 東京朝刊
社説:新幹線放火 「安全の死角」総点検を


 思いもよらない事件が起きた。走行中の新幹線の中で男が焼身自殺し、煙を吸った乗客の女性が巻き添えで死亡、26人が重軽傷を負った。
 東海道新幹線の1日の平均利用者数は約42万人だ。高度の技術に基づく安全性の高さは世界的に知られる。日本の公共交通の大動脈だからこそ、その影響は大きい。
 安全対策のどこに死角があったのか。JR東海や国土交通省は、火災への備えや避難誘導など今回のケースを徹底的に検証し、安全対策の再構築に取り組んでもらいたい。
 自殺した男は、ポリタンクを1号車に持ち込み、油のような液体を体にかけて火をつけた。煙が車内に充満する混乱の中、乗客は後方の出口から2号車以降に避難した。亡くなった女性は、なぜ1号車と2号車の間のデッキに倒れていたのか。まずは解明が必要だ。
 避難の誘導には車掌が当たったという。狭い通路に乗客が殺到すれば、逃げ遅れる人が出る可能性がある。仮に男が1号車後方で火をつけていたら乗客はどこに逃げられたのか。警察の捜査とは別に、JR東海は、避難誘導や乗客への指示に見直すべき点がないか調べてもらいたい。
 新幹線内は、天井や床などに燃えにくい素材を使い、デッキに消火器も備えつけられている。だが今回、車内はまたたく間に猛煙で覆われた。被害の主な原因は煙だった。
 気圧を一定に保つため、新幹線は気密性の高い空調システムが採用される。換気装置はあるが、排煙のための仕組みは備えていない。
 国交省は火災発生時の煙対策についてさっそく対策会議を開き検討を始めた。煙対策は地下鉄火災などでも最重要だ。また、JR東海が計画するリニア新幹線の場合、区間の9割近くで地下かトンネルを通る。より排煙対策の必要性は増すはずだ。鉄道各社の知恵を集め、早急に対応を進めるべきである。
 多くの命を預かる公共交通だ。いくつもの「もし」を積み重ね、万が一の危険にさらされた時、被害を最小に抑える方法を常に練るべきだ。東京五輪・パラリンピックを5年後に控え、「もしテロだったら」という問いも非現実的とは言えまい。
 その際、乗客の安全確保は大前提になる。それでも、テロ対策で空港並みの手荷物検査を実施すれば、乗客の待ち時間は長くなり、利便性は損なわれる。現在も行われている監視カメラでの不審者の点検や、車掌らによる見回りをより強化するのがまずは現実的だ。
 米国の高速鉄道では、手荷物の抜き打ち検査を実施している。あらゆる対策を検討対象から排除せず、もしもへの備えに努めてもらいたい。

*************************************

日本経済新聞 2015/7/2 1:52
可燃液体、規定見直しも JR5社・国交省が緊急会議
 東海道新幹線放火事件を受け、国土交通省は1日、JR5社と緊急会議を開き、車両内や駅構内の巡回を強化し、3キロ以内の可燃性液体の持ち込みを認めている各社の規定の見直しを検討するよう求めた。
 会議には、新幹線を運行するJR東海、JR東日本、JR西日本、JR九州の4社と、2016年の新幹線開業を目指すJR北海道の幹部が出席。太田昭宏国交相は冒頭で「テロを視野にいれた安全対策を詰める必要がある」と述べた。
 JR各社は危険物の疑いがあれば乗客の荷物を点検し、点検を拒まれた場合は乗車を拒否できるが、JR側からは「実際にお客様の荷物を開けて調べるのは難しい」との意見が出た。
 20年東京五輪・パラリンピックに向けた警備態勢の強化、車両の排煙設備の安全基準や避難方法などについても意見交換した。


毎日新聞 2015年07月02日 東京朝刊
東海道新幹線の焼身放火:自殺の男、生活苦訴え 周囲に「年金少ない」

林崎春生容疑者の自宅から押収物を運び出す神奈川県警の捜査員=東京都杉並区で2015年7月1日午後0時18分、小川昌宏撮影
拡大写真
 神奈川県小田原市を走行中の東海道新幹線「のぞみ225号」で男が焼身自殺し、巻き添えになった乗客が死亡した事件で、自殺した林崎春生容疑者(71)=東京都杉並区西荻北=は年金を受給しながらも生活苦を周囲に訴えていた。神奈川県警は、自殺と生活状況との関連について調べている。【深津誠、一條優太】
 事件後、のぞみの車両に残されていた林崎容疑者のリュックサックには、小銭入れが入っていたが、現金はなかった。自殺を図る直前、「拾ったからあげる」と1000円札数枚を無関係の乗客に渡そうとしていたが、これだけが手持ちの現金だった可能性がある。リュックサックから見つかった手帳には、手書きのメモが書かれた紙切れがはさまれ、「年金相談」という文字と電話番号が記されていた。1日の林崎容疑者宅アパートの捜索では、キャッシュカードが見つかったが、預金通帳は発見されていない。借金の有無は判明していないという。
 林崎容疑者は、近所に住む女性(68)が経営する居酒屋の常連客だった。女性によると昨年、高齢を理由に清掃会社を辞め、年金を受給するようになった。だが「月の年金が約12万円で、約4万円の家賃と税金や光熱費を払うと手元にわずかしか残らない」などと受給額に不満を漏らしていたという。役所で「年寄りは早く死ねということか」と職員に詰め寄ったこともあった。
 アパートの大家の男性(49)によると、6・7月の家賃は6月末にまとめて振り込まれることになっているが、入金されなかった。これまで家賃を滞納したことはなかったが、1年ほど前には「生活が苦しいので家賃を安くしてほしい」と言っていた。
 林崎容疑者は岩手県から上京し、30代のころは流しの演歌歌手として居酒屋などで活動した。その後、鉄工所で働いたり、幼稚園の送迎バスの運転手をしたりしていた。居酒屋の常連でつくる草野球チームで仲間だった男性(73)は「まじめな男だった。経済的に追い詰められたのかもしれないが、人をまきこんだのが残念だ」と話している。
 ◇東京駅から乗車 カメラに改札通る姿
 林崎春生容疑者(71)が事件当日、東京駅から「のぞみ225号」に乗車していたことが神奈川県警の調べで分かった。東京駅の防犯カメラに、改札を通る姿や、ホームを歩く様子が映っていた。カメラの記録では、改札を通った時刻は6月30日午前10時42分で、のぞみの出発予定時刻の直前だった。林崎容疑者のズボンのポケットからは、自由席のチケットが見つかった。
 東京駅のカメラに映った林崎容疑者は、リュックサックを背負い、油のような液体を自分にかけるのに使ったポリタンクは手に持っていなかった。このため県警はポリタンクをリュックサックに隠して乗車した可能性が高いとみている。
 事件の直前、林崎容疑者は1号車の通路を行ったり来たりするなどしていた。目撃した乗客は、同容疑者がうろつきはじめたのは新横浜駅を過ぎたころだったと話している。
 1日の林崎容疑者宅での家宅捜索で、県警は、ガソリンなどを運ぶのに使う金属製携行缶1個を押収。20リットル用のもので、購入時期や、使用した痕跡の有無を調べる。また司法解剖の結果として、林崎容疑者の死因を焼死、巻き添えになって死亡した桑原佳子さん(52)の死因を気道熱傷による窒息と発表した。【福永方人、村上尊一】


日刊工業新聞 - 2015年07月02日
東海道新幹線火災事故-太田国交相「テロも視野に安全対策詰めていく必要がある」
 国土交通省は1日、6月30日に発生した東海道新幹線の火災事故を踏まえた緊急会議を開き、太田昭宏国土交通相が「テロについても視野に入れ、幅広い安全対策をしっかり詰めていく必要がある」と強調した。同会議で国交省側が、乗客の手荷物を鉄道事業者が確認できるのか問うたところ、JR側は現状の制度では難しい旨を伝えた。
 同会議には太田国交相のほか、国交省やJR各社、警察庁の関係者らが出席した。国交省は模倣犯の出現も考慮し、警察と連携した警備の徹底をJR各社に依頼。これに対し、JR各社は警備体制の強化として車両内や主要駅での巡回を増やす意向を示した。
 また、3キログラム以内であれば可燃性の液体を車内に持ち込める現行のルールを見直す案の検討も提起された。ただ、旅客機のようにすべての手荷物を検査する仕組みの導入は議題に上がらなかった。会議終了後、JR東海の金子慎副社長が記者団の取材に応じ、「迷惑をかけて申し訳ない」と陳謝するとともに、関係各所と協力しながら安全に関する対策を強化していく考えを示した。

--------------------------

毎日新聞 2015年07月01日 21時31分(最終更新 07月01日 22時05分)
新幹線放火:油持ち込み見直し要請 国交省がJRに
 国土交通省は1日、新幹線を運行するJR各社の責任者を集めた緊急会議で、駅や車内の警備強化を要請した。また、火災時の排煙や避難経路、警備上の改善点について各社に検証を求めた。
 太田昭宏国交相は会議で「火災にとどまらずテロについても、幅広い安全対策が必要」と指摘。JR側は車両や主要駅での警備員巡回を増やす意向を示した。
 今回の事件では、可燃性液体が持ち込まれ、惨事につながった。容器を含め3キロ以内なら可燃性液体を車内に持ち込める規定があるが、国交省は各社に規定の見直しを要請した。
 一方、新幹線車両は異常時に対応する排煙装置がなく、車内に煙が回りやすい。JR側からは「火災で電源を止め、空調も止まったので排煙が難しくなった」との意見が出た。このため国交省は「設備、避難誘導について検証が必要」として、各社に現状や改善点の報告を求めた。
 JR東海の金子慎副社長は「巡回や不審物の点検は工夫しているが、もっと効果的にできないか検討したい」と話した。【松本惇】


産経ニュース 2015.7.1 16:52
【東海道新幹線放火】JRと国交相が緊急会議 「利便性確保も重要」
JR旅客5社の幹部を集めて開かれた緊急会議であいさつする太田国交相(右)。左端はJR東海の金子慎副社長=1日午後、国交省
 東海道新幹線での放火事件を受け、太田昭宏国土交通相は1日、新幹線を運行するJR東日本、東海、西日本、九州と、来春から運行予定のJR北海道の幹部を国交省に集め、保安体制などについて協議する緊急会議を開いた。
 太田氏は冒頭で「車両の安全確保や警備体制の強化、危険物の持ち込みの規制など、火災やテロを視野に入れた対策をしっかりと詰める必要がある」と述べた。一方で、「安全の確保が何よりも大事なことは言うまでもないが、利便性の確保も大事だ」とも指摘した。警察庁の担当者も出席した。
 今回の事件は、男が車内に持ち込んだ油のような液体をかぶり、火を付けたとみられている。新幹線では、乗客の手荷物検査はなく、保安対策は警備員の巡回や防犯カメラの設置などが中心になっている。


読売新聞 2015年07月01日 19時18分
新幹線に火災想定の排煙設備・防煙マスクなし
 神奈川県小田原市を走行中の東海道新幹線車内で男が焼身自殺した事件で、亡くなった桑原さんは煙を吸ったことが死因とみられ、密閉性の高い新幹線は火災時の排煙が難しいという課題が浮かんだ。
 国土交通省やJR各社によると、新幹線は高速で走っても気圧が変化しないよう、車両の気密性を高くしている。換気装置はあるが、火災を想定した排煙設備はなく、煙が大量だと一気に車外へ排出できない。
 国交省は「バッテリーを増強すれば、より強力な換気能力を持たせることは技術的に可能」としているが、その場合は車体が重くなるなどして走行性能が低下するという。航空機には、火災時に客室乗務員が消火作業を行えるよう、防煙マスクや耐火手袋が機内に備えられているが、新幹線に防煙マスクなどはない。
 避難誘導にも課題が残った。JR東海のマニュアルでは、火災時には火元の車両から1車両分以上離れた車両に乗客を避難させることになっている。国交省によると今回もマニュアル通りの誘導のはずだったが、桑原さんは逃げ遅れた。同省は、車掌らから当時の状況を聞き取るとしている。


毎日新聞 2015年07月01日 15時00分
新幹線焼身放火:車両に排煙設備なく…対策後手に
 東海道新幹線の焼身放火事件で、新幹線車両には異常時に対応した排煙設備がなく、煙が車内に回りやすい構造だったことから、国土交通省は火災発生時の新幹線車内の排煙のあり方について検討することにした。【松本惇、本多健】
 JR東海などによると、新幹線はトンネルに入る際、車内の気圧が急激に変化する現象を防ぐため、車内の気圧を一定に保つ仕組みになっている。換気装置はあるが、排煙設備はないという。
 排煙設備がないことについて、JR関係者は「燃えにくい材料の使用に徹することで被害を最小限に抑える取り組みを続けた経緯があり、建物にあるような排煙設備は想定しにくかった」と説明したうえで「今回のように車内に持ち込まれた可燃物が発火し、大量の煙が出る事態への対応は難しい」と話した。
 また、JRによると、車内で火災が発生した場合、消火作業で感電する可能性があるため、マニュアルで送電を止めて停電にしたうえで消火をすることになっている。
 関係者によると、今回の事件では緊急停止直後の午前11時41分に、消火作業に備えるために送電を止めた。停電で車両間の自動ドアは手動で開閉する状態になり、乗客は車掌により後続車両へ誘導された。
 ただ、火元の1号車と2号車の間の自動ドアは停電によって開いたままになっていた可能性が高いという。このため結果的に2両目以降に煙が広がった可能性がある。
 2011年5月に北海道で発生したJR石勝線の特急脱線、炎上事故でも車両内に煙が充満したため、国交省が対策の検討を始めた。車両間のドアを閉める仕組みについて議論されたが、乗客の避難誘導を優先する必要があり、鉄道の安全水準を定める国の技術基準の変更には至っていない。


毎日新聞 2015年07月01日 01時05分
新幹線焼身自殺:開業以来車内で起きた初の火災
 東海道新幹線「のぞみ225号」で起きた火災は、1964年10月の東海道新幹線開業以来、車内で起きた初めての火災となった。
 JR東海によると、新幹線の車内は燃えにくい素材を使用しており、車内で火が燃え広がる可能性は低いという。延焼や煙の流れを防ぐため、各車両の前後には防火扉が設置されている。
 車両が炎上するような火災はこれまで起きておらず、2010年9月、JR長野駅に到着した長野新幹線「あさま521号」の車両下の電気配線が一部焼けた例があるが、すぐに消し止められた。
 走行中のトラブルは10年3月、山陽新幹線西明石−新神戸間で「のぞみ56号」車内に煙が立ちこめて異臭がし、気分が悪いと訴えた乗客1人が病院に運ばれたケースがある。車軸に動力を伝える歯車を収納する歯車箱からオイルが漏れていた。
 JR北海道では特急のトラブルが相次いだ。11年5月、石勝線トンネル(占冠=しむかっぷ=村)で特急が脱線、炎上し79人が負傷。13年7月には函館線を走行中の車両から出火し、乗客約200人が車外に避難した。また今年4月、北海道と青森県を結ぶ青函トンネル(全長53.85キロ)で、走行中の函館発新青森行き特急から煙が上がり、旧竜飛(たっぴ)海底駅から青森側約1キロ地点で緊急停車。乗客124人が同駅まで歩いて避難した。
 今回同様、乗客が火をつけたとみられる車両火災は03年8月、長野県南木曽町のJR中央線車内で起きている。島田トンネル内を走行中の中津川発松本行き普通列車で、乗客の男がペットボトルに入れていた灯油をまいて火をつけ、床など約7平方メートルが焼けた。自分も灯油をかぶり全身やけどで死亡した。
 海外では、韓国・大邱(テグ)市で03年2月、駅に到着した地下鉄車両に乗ってきた男がガソリンを床にまいて火をつけて火災になった事件がある。ホームに入ってきた対向の列車にも延焼し、200人近くの犠牲者が出た。
 インド・プッタパルティでは13年12月、走行中の夜行列車で火災が発生、車両のドアが開かず乗客が閉じ込められて多数の死傷者が出た。オーストリアでは00年11月、ケーブルカー火災で、日本人10人を含む155人が死亡した。【樋岡徹也】
 ◇新幹線の主なトラブル
 1993年8月 静岡県内を走行中の東海道新幹線車内で男がサバイバルナイフで乗客の胸を刺して殺害
 1999年6月 山陽新幹線福岡トンネル(福岡県久山町)で重さ約200キロのコンクリート塊が落下、走行中のひかりを直撃し屋根が大破
 2001年11月 東北新幹線上野−大宮間で送電が止まり、東北、上越、長野新幹線が一時運転見合わせ
 2004年10月 中越地震で、新潟県長岡市内を走行中の上越新幹線が脱線
 2010年1月 東海道新幹線新横浜−小田原間の架線が切れて停電し、3時間以上運転見合わせ
      3月 西明石−新神戸駅間を走行中の山陽新幹線車内で煙と異臭
      7月 山陽新幹線須磨トンネル内(神戸市須磨区)で保守車両が別の保守車両に追突し脱線
 2013年3月 秋田県大仙市で秋田新幹線が大雪で脱線。乗客ら約130人が約6時間にわたり車内に閉じ込められる


毎日新聞 2015年07月01日 東京朝刊
クローズアップ2015:新幹線焼身放火 大量輸送、監視に限界
 東海道新幹線の車内に男が油を持ち込んで火を放ち、2人が死亡した事件は、東日本大震災でも死者を出さなかった新幹線の「安全神話」を揺るがす形となった。鉄道の利用客に対して手荷物検査を実施している国もあるが、日本では利便性との兼ね合いから慎重な意見も根強い。2020年の東京五輪・パラリンピックに向けてテロを防ぐことができるのか。鉄道各社や警察当局は重い課題を突き付けられている。
 ◇「検査の時間はない」
 鉄道各社は大きなテロ事件などが起きるたびに対策を模索してきた。JR東海は1995年の地下鉄サリン事件後、駅や車内デッキの防犯カメラを増やし、警察と合同のテロ対策訓練を開始。2004年にスペインで死者191人を出した列車同時爆破テロが起きると、改札や車内の警備員を増員した。
 JR東日本も同様の対策を進めており、サミットなどの際は警察と協力して臨時に警備要員を増やすなどしている。近年では、ゴミ箱を透明化させ、不審物を発見しやすくするなど、利用者からの不審者・不審物情報の通報を強化する対策を打ち出す社も多い。
 しかし、各社とも自動改札の普及などで駅員数は減少傾向にあり、人的な対策には限界がある。東海道新幹線の場合、乗客一人一人に対して行われる車内検札が異常を発見する機会にもなっているが、今回は事件を防げなかった。
 現場となった1号車の検札は品川−新横浜間で行われたが、油をかぶって火を放った男は新横浜駅から乗車してきたという目撃情報があることから、この検札の対象にはならなかった可能性がある。
 では、航空機のように、鉄道でもX線による乗客の手荷物検査は可能か。東海道新幹線の1日の利用客は約42万人で、羽田−伊丹間の航空旅客1カ月分に匹敵する。国内外では在来線や地下鉄を狙ったテロが起きているが、東京メトロは1日約680万人が利用し、新幹線よりさらに1ケタ多い。
 国土交通省幹部は「飛行機と鉄道では、旅客数が違いすぎる。駅に検査機器を置く場所もないし、検査をするとなれば時間もかかり、物理的に難しい」と話す。発車直前でも乗り込める鉄道の利便性を考えると、時間がかかる検査はなじまないという。
 そもそもJR東海の旅客営業規則によると、容器を含めて3キロ以内なら、一部を除き、灯油などの可燃性の液体を車内に持ち込むことが認められている。旧国鉄時代に仕事などで少量を持ち込む必要がある利用客に配慮した結果とみられ、JR各社ともほぼ同様の規定となっている。仮にこの規定を見直しても、不正な持ち込みを防ぐ方法がないのが現状だ。
 国交省鉄道局の担当者は「いかにも危険だと分かるものを持っていれば駅員や警察が連携して対処できるが、隠し持っていたら対応できない」と明かす。あるJRの幹部は「危険物の持ち込みが可能だとテロリストに思われないような対策が必要だ」と話した。【本多健、坂口雄亮、松本惇】
 ◇中露は探知機導入
 米国や台湾などの高速鉄道でも、日本と同様に乗客の手荷物検査は行われていない。欧州諸国や韓国は駅に改札もなく、車内検札だけが行われている。ただ、英仏海峡トンネルを通ってロンドンとパリなどを結ぶ「ユーロスター」は、欧州でも例外的に厳しい。国境検査なしで欧州域内の自由な移動を認めるシェンゲン協定に英国が参加していないため、出入国審査とともにX線による手荷物検査が行われる。
 また、中国とロシアの高速鉄道は、金属探知機による身体検査とX線による手荷物検査などが行われている。特に中国は、在来線を含めた鉄道利用者すべてが検査対象だ。
 日本では現在、警察官が東京駅などの主要駅で不審者がいないか監視しているほか、新幹線車内にも乗り込んで警戒に当たり、防犯カメラも活用している。関係者によると過去のサミットなどの際に「テロなど不測の事態を防ぐために、新幹線に手荷物検査を導入できないか」という議論が警察庁内でされたことがあるが、やはり検査をすれば分刻みの運行はできなくなることが予想されることから「セキュリティーのために運行できなくなるのは本末転倒」として見送られた経緯があるという。
 北陸トンネルの火災事故(72年)や韓国・大邱地下鉄の放火事件(03年)などを機に、国は鉄道車両の耐火基準を強化してきた。新幹線の場合は仮に運転席が大破してもモーターへの電気供給を止めるなどして、安全に停止させる仕組みが整備されている。
 警察庁のテロ対策部門の担当者は「新幹線で火災や爆発が起きても航空機とはダメージが異なる。テロ情勢次第だが、利便性とのバランスを考えなければならない」と話し、検査導入には否定的だ。危機管理に詳しい日本大学総合科学研究所の河本志朗教授も「議論をすることに意義はあるが、100%安全という世界はない。利便性とリスクの折り合いを考えると現実には不可能ではないか」と語る。
 専門家の間には爆発物を持ち込ませないために、火薬の成分を検知するゲート式の検知機を活用すべきだという意見もあるが、軍事ジャーナリストの神浦元彰さんは「非常に高価で新幹線の全改札に設置することは難しい」と指摘。「不審な動きを見つけたら利用客がすぐに車掌に連絡するなど、小さなことを積み重ねてテロを防ぐしかないかもしれない」と話す。【長谷川豊、町田徳丈、隅俊之】


朝日新聞 2015年7月1日05時00分
(時時刻刻)新幹線、悪意に対策は 難燃性、炎上は防ぐ
 開業からの半世紀で、列車事故による死傷者がゼロだった東海道新幹線。安全を世界に誇る日本の大動脈が、乗客の放火という思いもよらない事態で危険にさらされた。5年後には東京五輪が迫るなか、テロ対策も含めた車内の安全はどう確保されているのか。▼1面参照
 乗客約800人を乗せた東海道新幹線「のぞみ225号」。神奈川県小田原市を走っていた30日午前11時30分ごろ、運転席に「ビー」という非常ブザーの音が鳴り響いた。
 運転士は緊急停止をかけた。車内を確認しようとデッキに出ると、1両目の最前列付近で火の手が上がり、壁や天井はオレンジ色の光に包まれていた。その中に、炎に包まれた男がいた。煙が充満する中、運転士は車両に備え付けの消火器で何とか消し止めたという。だが、自身もけがを負い、小田原駅に到着した後に病院で手当てを受けた。
 2人が死亡し、20人あまりが搬送される火災だったが、車両は炎上しなかった。国内の鉄道車両は、設計段階から防火対策が義務づけられているからだ。
 きっかけは1972年に30人が死亡した旧国鉄北陸トンネルの列車火災事故。国土交通省やJR各社によると、新幹線は地下鉄と並んで最も厳しい技術基準が定められている。天井は火がつかない不燃性の素材、シートや床は火が燃え広がらない難燃性の素材を用いる必要がある。
 乗客の放火で約200人が死亡した2003年の韓国・大邱(テグ)市の地下鉄火災事故以後は、対策が強化された。別車両への延焼を防ぐため、連結部の扉を閉めることが義務づけられた。消火器は全車両のデッキに備えて乗客に表示し、運転席にも2台が置かれた。
 01年の米同時多発テロ以降は、テロ対策でJR東海、西日本が東海道・山陽新幹線の主力車両「N700系」に防犯カメラを設置。1編成(16両)に60台を備え、ドア付近の様子を撮影、録画できるようになった。各車両の出入り口に非常用ブザーが設けられ、制服姿の警備員による巡回も導入された。
 ■荷物検査と利便性、両立難題
 新幹線車内の警備は、大きな催しがある時に強化されたこともある。2002年のサッカーワールドカップでは、静岡県警の警察官が選手の警備や熱狂的なファン対策で新幹線に同乗した。警視庁鉄道警察隊は現在も隊員が一部列車に乗り込んでおり、04年の自衛隊イラク派遣やスペイン列車爆破テロの際には、新幹線を標的にしたテロに備えて同乗する本数を増やした。
 ただ警視庁幹部は「すべての列車に乗るのは不可能。乗客を1人ずつ確認するのは難しい」と話す。
 東海道新幹線はピーク時、のぞみ、ひかり、こだまが1時間に計15本運行し、1日に約42万人を運ぶ。東京―新大阪間ののぞみの輸送能力は航空機の11倍の33万人にのぼる。鉄道各社も、乗車前の持ち物チェックなどで危険物の持ち込みを防ぐことについては「現実的ではない」と口をそろえる。JR東海の担当者は「数分おきに発車する列車に飛び乗ることができるのが新幹線の強み」と話す。
 27年に品川―名古屋間での開業をめざすリニア中央新幹線では、山梨実験線での体験乗車で、乗客に金属探知機でのチェックや手荷物検査をしている。JR東海は「営業時を見据えた対応」。1時間に上下各5本を運行する予定で、1本の定員は約1千人。実際に導入するかどうかは未定だ。
 鉄道の安全対策に詳しい関西大学の安部誠治教授(公益事業論)は「今回のような事件をゼロにするなら空港並みの手荷物検査が有効だ。ただ大量の旅客の流れを妨げてしまい、事件の頻度を考えれば現実的ではない」と話す。当面の対策として、車内や駅の巡回強化を挙げる。危機管理に詳しい河田恵昭・関西大教授は「東京五輪に向け、公共交通機関のテロなどの想定が不十分だ。事前の想定を重ねる必要がある」と指摘する。
 ■ユーロスター「空港並み」
 英国とフランス、ベルギーを結ぶ国際列車「ユーロスター」は、英仏海峡トンネルが長年、テロの対象とされてきたため、空港並みの安全対策が実施されている。
 1時間に2~3便がロンドンを発車するユーロスターは、すべての乗客が金属探知検査を受け、荷物はX線検査を受ける。
 欧州最長の高速鉄道であるスペインの「AVE」。駅での警備を担う「鉄道インフラ整備管理公社(ADIF)」によると、乗車前に乗客の荷物をX線検査装置で調べている。
 かつてスペインからの分離独立を主張した武装組織などのテロが国内で相次ぎ、2004年3月には首都マドリードでアルカイダ系組織による列車爆破テロがあり、200人近い死者を出したことなどが背景にある。
 ただ、乗客に金属探知機のゲートを通らせるなどの対策はしていない。国内や周辺国での大規模テロなどをきっかけに警戒度が上がった場合、通常よりも多くの治安要員を駅に配置するという。
 スペインの鉄道では、マドリードの近郊路線でもAVE同様の安全対策を導入することが議論になったこともあるが、乗客の利便性の問題などから不可能と判断されたという。
 フランスの高速鉄道「TGV」では、荷物検査や身体検査は行われていない。
 (ロンドン=渡辺志帆、ジュネーブ=松尾一郎)

////////////////////////////////////////////////////
関連記事

テーマ : 政治・時事問題
ジャンル : 政治・経済

tag : 東海道新幹線 火災事故 国交省 JR東海 新幹線放火

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

プロフィール

ajimu-ra

Author:ajimu-ra

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最近の記事
リンク
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ(タブ)
RSSフィード
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
カテゴリー
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
FC2ブログランキング
↓↓クリックお願いします↓↓

FC2Blog Ranking

ブログ内検索
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

フリーエリア
blogram投票ボタン