2015-07-03(Fri)

新幹線火災 安全対策急務 利便性との両立課題 150701-03

各紙社説等 (2)引き出すべき教訓は 乗客の安全をどう守るか 安全対策をどう講じるか

<記事>
共同通信)【Q&A】新幹線放火で安全対策急務 利便性との両立課題(7/02)
<各紙社説・論説・主張>
産経新聞)新幹線火災 乗客の協力が惨事を防ぐ(7/2)
東京新聞)新幹線火災 引き出すべき教訓は(7/1)
東奥日報)テロも想定し安全確保を/新幹線火災(7/3)
福島民報)【新幹線放火事件】問われる危機管理意識(7/2)
新潟日報)新幹線火災 安全対策をどう講じるか(7/1)
信濃毎日新聞)新幹線放火 車内の安全に重い課題(7/1)
京都新聞)新幹線放火  安全確保へ検証十分に(7/2)
神戸新聞)新幹線放火/乗客の安全をどう守るか(7/2)




以下引用



(共同通信)2015/07/02 13:54
【Q&A】新幹線放火で安全対策急務 利便性との両立課題


 東海道新幹線の車内で放火事件が起き、新幹線の安全対策に注目が集まっています。
 Q 事件では男が油のような液体を持ち込みましたが、ガソリンなどの持ち込みルールは。
 A 可燃性の液体を持ち込むことは鉄道営業法などで原則禁止されていますが、JR各社の規定では、ガソリンや灯油は容器も含め3キロまで手回り品として持ち込めることになっています。国土交通省は事件を受け、規定の見直しを検討するよう各社に求めました。
 Q 航空機に搭乗する際には荷物検査があります。新幹線でも検査するようになりますか。
 A 国交省は「過去に議論したことはある」とした上で/(1)/利用者が多く、素早く乗り込める利便性へのニーズが高い/(2)/プライバシー上の問題がある/(3)/駅構内のスペースが狭い―といった理由から難しいとしています。
 Q 悪意があれば何でも持ち込めるのでは。
 A 駅員や車掌、巡回する警察官などが不審な人物に目を光らせていますが、混雑する中で危険物を隠して持ち込まれる恐れもあり、JR各社は監視カメラの増設や巡回の強化で対応しようとしてきました。
 Q 車内で火災が起きた場合の対策は。
 A 新幹線は車外に脱出しにくいため、国交省は地下鉄などとともに最も厳しい耐火基準を定めています。内装や座席に難燃性の素材を使っているほか、隣の車両への延焼を防ぐため、接続部の扉は開いたままにならないようになっています。また、1両に2本以上の消火器を備え、デッキのドア上部には監視カメラもあります。
 Q 事件では、煙を吸って被害を受けた乗客が多かったようですが。
 A 気密性を重視する新幹線車両には、換気装置はあるものの本格的な排煙設備はなく、車内に煙が充満しやすい傾向があります。スプリンクラーなど水による消火設備も、感電する恐れがあり、大量の水が必要で車両が重くなるため、設置されていません。
 Q 来年の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や2020年の東京五輪・パラリンピックを控えて、テロ対策が急務と言われています。
 A 国交省やJR各社は警備のあり方や車両設備の改善について検討を始めました。安全と利便性の兼ね合いをどう図るかが課題となりそうです。
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産経新聞 2015.7.2 05:03
【主張】新幹線火災 乗客の協力が惨事を防ぐ


 東海道新幹線は昨年、開業50周年を祝った。国土交通省によれば、開業後初めての、新幹線の列車火災事故である。
 71歳の男が走行中の車内で可燃性の油をかぶって焼身自殺し、巻き込まれた女性も亡くなった。26人が救急搬送され、ダイヤは大きく乱れた。
 神奈川県警が殺人と現住建造物等放火容疑で調べている。「世界一安全な乗り物」といわれる新幹線だが、悪意の犯行を防ぐ手立ては難しい。来年に主要国首脳会議(サミット)、5年後には東京五輪の開催を控え、テロの標的となる恐れもある。事件は、どんな教訓を残したか。
 今回の事件ではまず、無関係な乗客を巻き込んだ身勝手な犯行を憎むべきだ。一方で悲惨な状況下にあって、運転士は前後のトンネルを避けて列車を停止させ、自らも負傷しながら消火した。
 乗客らは混乱の中でパニックに陥らず、互いに助け合いながら後方の車両に移動した。こうした勇気ある冷静な行動がなければ、被害はさらに拡大したろう。
 延焼を最小限にとどめ、煙を遮断することができたのは、2003年の韓国大邱市の地下鉄放火事件や04年のマドリードの列車爆破事件の教訓を経て、車両間のドアや天井、座席などの素材改良を進めてきた成果でもある。
 事件は未然に防げなかったか。JRは3キロを超えるガソリンなどの持ち込みを禁じているが、容疑者は約10リットルのポリタンクをリュックサックに入れて乗車した。
 発見には空港並みの手荷物検査が有効だろうが、東海道新幹線は1日約42万人の乗客を運ぶ。一人一人の検査を実施すれば長蛇の列を生み、現実的ではない。乗客の利便性と100%の安全を両立させることは極めて困難だ。
 当面は乗務員による見回りの強化や防犯カメラの増設、集中管理を進めたい。五輪など厳重警備の実施期間には警察官、警備員を増強する「見せる警備」も必要だろう。爆発物や可燃物を機械的に検知できるゲートシステムの開発や、探知犬の育成などにも効果を期待したい。
 いずれも一般乗客の理解を必要とする。今回の事件では乗客同士の避難誘導などが被害の拡大を防いだ。乗客一人一人の目と行動に期待をこめて、普段から緊急時の行動について協力を求める車内アナウンスを徹底してはどうか。
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東京新聞 2015年7月1日
【社説】新幹線火災 引き出すべき教訓は


 よりによってなぜ新幹線だったのか。JR東海道新幹線のぞみ225号であった火災は、乗客の男が図った焼身自殺が原因だったようだ。動機の解明を急ぎ、安全管理の在り方を再検証しなくては。
 東海道新幹線が一九六四年十月に開業して以来、車内で起きた事件としては最悪の事態という。車両の不具合が引き金ではなかったにしても、二十人を上回る死傷者が出てしまったのは残念だ。
 火災が発生したのは六月三十日正午前。東京発新大阪行き下り列車は、神奈川県の新横浜-小田原間を走行中だった。
 先頭の一号車に乗っていた男がポリタンクに入った油のようなものをまき、自らかぶってライターで着火したという。白煙が充満し、巻き添えを食ったらしい女性の乗客一人が息を引き取った。
 気密性が高く、逃げ場のない車内で火を放つとは、およそ想像もつかない事件だ。多くの無関係の乗客が巻き込まれ、四十本余りの上下線が運休を強いられた。教訓を引き出すためにも、警察当局には徹底捜査を求めたい。
 運転士は列車を緊急停止して火を消し止め、乗客は後ろの車両に避難、車掌は駆け付けた。被害は最小限に食い止められたかもしれない。それでも、負傷者が相次いだ。事後の措置や、高齢者や子どもへの配慮は行き届いていたか。
 灯油やガソリンのような危険物の車内への持ち込みをどう防ぐのかも課題ではある。鉄道会社は持ち込むことができる手回り品を規則で制限しているが、手荷物検査は実施していない。
 来年の伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)や五年後の東京五輪を控え、警察当局にとって大量輸送の公共交通機関のテロ対策は欠かせない。欧州諸国の国際鉄道などで手掛けているような手荷物検査の必要性を説く声もある。
 しかし、一日の乗客が約四十二万人に上る東海道新幹線で実施するのはやはり非現実的でもある。航空機のように厳しい検査を課しては高密なダイヤは乱れ、乗客の負担は過大になる。
 駅構内の監視カメラの運用や警察官の車内巡回を強化し、不審者の発見や危険物、凶器の持ち込みを極力排除してほしい。車内の消火設備を充実させたり、乗務員の訓練を重ねたりすることも大事だ。
 日本の鉄道の安全確保は、乗客のモラルと信用に委ねられてきた面が強い。もし、その場に居合わせたらどうすべきか。私たちにも問い掛けはあるだろう。
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東奥日報 2015年7月3日(金)
社説:テロも想定し安全確保を/新幹線火災


 東京から新大阪に向かう東海道新幹線の車内で、71歳の男がガソリンをかぶり火を付け焼身自殺した。新幹線では初めての「列車火災事故」。男と巻き添えになった乗客の女性が死亡し、26人が気道熱傷や一酸化炭素中毒などで重軽傷を負った。思いも寄らないような事件が、実際に起きてしまった。
 運転士が緊急停止させて備え付けの消火器で火を消し止め、車両内に燃え広がることはなかったものの、多くの乗客が煙に巻かれた。新幹線で起きた事件・事故としては過去最悪の被害となり、1日当たり42万人もが乗り降りする列島の大動脈はかつてない混乱に陥った。
 韓国で2003年に男が自殺するため地下鉄の列車内に放火、約350人が死傷する事件があった。これを契機に国土交通省は新幹線などでの放火も想定。車両に高熱でも溶けにくい素材を用いたり、車両と車両の間のドアを常時閉められるようにしたりと対策を取った。今回、焼損は先頭車両の前方部分にとどまり、そのような対策が功を奏したとみることもできる。
 しかし、公共交通機関の安全対策が十分であるとは言い難い。来年の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や20年東京五輪・パラリンピックに向け、公共交通機関でのテロ対策という課題も突き付けられた形だ。
 危機管理の専門家は手荷物検査の必要性を説く。ただ乗客の流れが滞ることになり、鉄道各社は「非現実的」と口をそろえる。空港並みのチェックを導入すれば、1時間当たり最大15本(東海道新幹線)という高密度の運行は難しくなる。
 とはいえ、先進国にテロが拡散しつつあることを考えると、手をこまねいているわけにはいかない。利便性か安全確保かという問題は簡単には決着しないだろうが、警備のあり方を見直すなど、できうる限り両立に近づける方策が求められよう。
 スペインでは04年、約200人の死者を出したマドリードの列車同時爆破テロがあり、高速鉄道に乗車する際にはエックス線による荷物検査がある。05年にはロンドンの地下鉄などの同時テロで50人以上が亡くなった。日本だけが無縁というわけにはいかないだろう。公共交通機関でのテロも含め、さまざまな想定を重ねながら、安全対策に万全を期したい。
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福島民報( 2015/07/02 08:34 )
論説:【新幹線放火事件】問われる危機管理意識(7月2日)


 神奈川県小田原市を走行中の東海道新幹線で起きた放火事件は、誰もが安全を疑わない場にも危険が潜む現実を浮かび上がらせた。乗客が巻き添えになる痛ましい事件を再び許してはならない。運行中の車内は密室状態で、逃げ場が限られている。国、JR、警察は一体となって再発防止策を講じる必要がある。
 国内の交通機関では過去にも死傷事件が発生している。平成5年には静岡県内を走行中の東海道新幹線の車内で覚せい剤使用の男が出張帰りの会社員を刺殺した。2年後、同じ東海道新幹線の車内で男性が男に登山ナイフで刺され、重傷を負う事件が起きている。
 飛行機を利用する場合は厳重な手荷物検査がある。鉄道営業法でも、危険物の持ち込みは禁止されている。しかし、列車内で事件が続いても、警備員らによる巡回や防犯カメラによる監視などしか手だてがなく、手荷物検査は実施していなかった。東北新幹線や在来線も同様だ。
 不特定多数の人々が往来する駅構内で、一人一人の所持品を検査するのは現実的に難しいという事情は分かる。県内を見ても、福島、郡山両駅の利用者は1日当たり3万人を超える。全員を検査していては、列車の定時性は到底維持できまい。
 東北新幹線を運行するJR東日本は今後、警備員らによる駅構内や車内の巡回、車内放送による注意喚起を徹底するとしている。県警は鉄道警察隊による警戒活動を強化する方針だ。ただ、いずれも現在実施している対策の枠内にとどまる。
 東京五輪・パラリンピックを5年後に控え、今回の事件はテロ対策の観点からも大きな課題を突き付けた。相次ぐテロ対策として、鉄道利用者の手荷物検査を実施している国もある。国情の違いはあろうが、海外から見れば、日本の新幹線の安全性が揺らいだと映ったかもしれない。
 国の危機管理意識も問われている。安全対策に強く関わるべきだ。場所や時間を限定して手荷物検査を試験的に実施するなど、新たな対策を講じるのも検討に値するのではないか。現在の保安体制では、再び同じような事件が起きる不安を消せない。
 放火事件から一夜明けた1日、東海道新幹線の利用者から「手荷物検査は煩わしい」「新幹線の利便性が損なわれる」との声も上がった。うなずける部分もある。しかし、問われているのは国の対応だけではない。利用者も安全確保への意識を高めなければならない。(五十嵐 稔)
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新潟日報 2015/07/01
社説:新幹線火災 安全対策をどう講じるか


 新幹線の車内で火を付けるという極めて憂慮すべき事態が発生した。事実関係の解明を、早急に進める必要がある。
 東京発新大阪行きの東海道新幹線「のぞみ」が、神奈川県の新横浜-小田原間を走行中、車内で火災が起きた。
 新幹線は緊急停止したが、男女2人が死亡、重傷者を含めてけが人は20人を超え、新幹線で起きた事故や事件としては過去最悪の被害となった。
 神奈川県警によると、男が先頭車両でポリタンクに入った油のような液体をかぶり、ライターで火を付けたという。
 この男が死亡したほか、52歳の女性も死亡した。火災に巻き込まれたとみられる。トイレから爆発音が聞こえたという情報もある。
 約800人が乗っていた車内は炎に加えて、煙や油のような臭いが充満し、車内には非常ブザーが鳴り響いた。
 突然の出来事に、乗客の恐怖はいかばかりだったろう。
 高速で走行する車内は事実上、密閉された空間と言っていい。男は運転席に近い1両目の先頭の方で倒れていた。
 運転席に被害が及んでいたら、さらに大きな惨事につながった可能性がある。
 男は近くにあった所持品から東京都杉並区の71歳と判明した。焼身自殺を図ったらしい。
 その直前には、女性客に「お金をあげる」と千円札を差し出したり、「逃げなさい」と話したりしていたという。
 なぜ新幹線の車内でこうした事態を引き起こしたのか。県警は現住建造物等放火容疑で捜査を始めた。動機の究明が急がれよう。
 新幹線をめぐっては、2004年の中越地震で上越新幹線が走行中に脱線、13年にも秋田新幹線が雪の影響などで脱線したが、安全といわれる乗り物で起きた今回の事件の衝撃は大きい。
 とりわけ問題なのは、車内に可燃性の液体が簡単に持ち込まれたことだろう。実質的にフリーパスで乗車できる警備体制の弱さを突かれた形だ。
 事件を契機に、警備の在り方が焦点となるのは間違いない。
 新幹線は分刻みのダイヤで運行されている。多数の利用者がいる中で、危険物を所持しているかどうかを短時間でどういった手段でチェックするのか、難しい対応が迫られる。
 万が一の事態が起きたとき、乗客の安全をどう確保するかも大きな課題だ。
 東京・品川-名古屋の8割以上がトンネルとなるリニア中央新幹線ではなおさらだろう。
 それはテロ対策にも通じる。世界各地でイスラム過激派によるテロが相次いでおり、日本でも起きる恐れがあるからだ。
 来年は主要国首脳会議(サミット)が三重県志摩市の賢島で開かれる。2020年には東京五輪・パラリンピックが開かれ、多くの人が日本を訪れる。
 万全の安全対策をどれだけ講じることができるかが問われているといえよう。
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信濃毎日新聞 2015年07月01日(水)
社説:新幹線放火 車内の安全に重い課題


 走行中の新幹線車内で火が放たれる。想像だにしなかった事件で2人が死亡し、多数の重軽傷者が出た。安全を売り物にしてきた新幹線の歴史を揺るがす事態になった。
 事件のあった東海道新幹線は1日平均40万人以上が利用する大動脈だ。原因を徹底的に究明して、再発防止策を他の公共交通機関とも共有する必要がある。
 事件はきのうの午前11時40分ごろ、新横浜―小田原間を走行中の速達型「のぞみ」の車内で起きた。東京駅を出発して40分ほどたったころだ。
 警察によると、16両編成の先頭車両で71歳の男が油のような液体をまき、自分でもかぶり、ライターで火を付けた。男は死亡し、1号車後方のトイレの近くに倒れていた52歳の整体師の女性も亡くなった。
 詳細な経過の調べはこれからだが、男は焼身自殺し、女性はそれに巻き込まれたようだ。自殺とはいえ、卑劣極まりない犯罪だ。警察は現住建造物等放火の疑いで捜査している。
 車両には約800人が乗っていた。新横浜に止まった後、名古屋までノンストップの高速走行中だった。逃げ場のない密室に煙や異臭が充満する状況で、乗客が味わった恐怖は計り知れない。
 車両は非常ボタンで緊急停止した。開けられたドアからは手で口を押さえながら線路に降り、逃げ出す乗客もいたほどだ。
 男は油のような液体をポリタンクに入れていたという。
 ガソリンなどの可燃性の液体は法で持ち込みが禁止されているが、航空機搭乗時のように乗客の荷物を検査する態勢はない。危険物の持ち込みを防ぐには限界がある。自動改札化が進み、駅員の目が届きにくい事情もある。
 それでも20年前の地下鉄サリン事件、国外での鉄道テロなどが起きるたびに運行事業者と警察などが対策を話し合ってきた経緯がある。乗客にも呼び掛け不審物の発見に努める、車内の警察巡回を強化するなどの対策は今回、どうだったのか。検証すべきだ。
 東海道新幹線は昨年10月、開業から50年を迎えた。
 東京―新大阪間を最速2時間22分で結ぶようになった利便性とともに、乗車中の旅客の死亡事故ゼロという信頼が累計55億人以上の利用を促してきた。
 運行の技術的な安全だけでなく車内の安全をどう守っていくか。利用者の理解を得ながら検討しなければならない課題だ。
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[京都新聞 2015年07月02日掲載]
社説:新幹線放火  安全確保へ検証十分に


 開業から50年を経て、これまで衝突や脱線など列車事故による死傷者ゼロを続けている東海道新幹線で放火による乗客死亡という不測の事態が起きた。
 神奈川県内を走行中の東京発新大阪行きの「のぞみ」先頭車両で男が油をかぶって焼身自殺を図って死亡した。列車は緊急停止し、乗客の女性1人が煙を吸い込み、巻き添えで亡くなったほか、他の乗客計26人が気道熱傷などを負った。車体が炎上することは避けられたが、列車ダイヤが乱れた。
 警察は殺人と放火の疑いで捜査を始め、自殺した男の自宅を家宅捜索した。多数の乗客を乗せ高速走行する逃げ場のない車両に放火する行為は危険きわまりなく、刑事責任は重く問われるべきだ。
 国土交通省は新幹線で初めての列車火災事故と認定した。来年5月には三重県で伊勢志摩サミットがあり、参加国の要人や関係者が新幹線で移動することが予想される。5年後には東京五輪・パラリンピックも開催される。
 国やJR各社は、過去に築いた「安全神話」にとらわれず、新幹線の安全確保について検証と対策検討に全力を尽くす必要がある。
 東海道新幹線はピーク時には、1時間に「のぞみ」や「ひかり」など計15本を運行している。16両編成の定員は千人を超え、1日に約42万人を運んでいる。車内清掃を含めた折り返し運転の素早さが運転間隔を縮め、乗客の大量輸送を可能にしている。
 ガソリンなど燃えやすい液体の持ち込みは鉄道営業法で原則禁止しているが、乗客の荷物検査は行っていない。海外の高速列車では乗車前に手荷物検査を行っている例もある。手荷物検査に手間取ると、正確な発車時刻に列車に飛び乗れる新幹線の利点を損なう恐れがある。乗客の利便性も考え、慎重に検討してもらいたい。
 国交省は約350人が死傷した12年前の韓国の地下鉄での放火事件を重視し、新幹線車両の耐火基準を引き上げた。座席や床には燃えにくい繊維素材を使い、車両間のドアを常に閉じられる構造にしている。運転席やデッキには消火器を備えている。
 改札口や駅構内には在来線よりも監視カメラを多く配置し、新幹線の車内やデッキには防犯カメラも設置しているという。車両に乗り込んで検札や乗り換え案内に従事する車掌は3人程度とされる。車内の警戒や巡回態勢は十分なのか、ゼロベースに立った見直しは避けられない。
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神戸新聞 2015/07/02
社説:新幹線放火/乗客の安全をどう守るか


 時速200キロ以上で走る新幹線の車両内は密閉された空間だ。その中で予想もしない惨事が起きた。
 神奈川県小田原市を走行中の東海道新幹線の車内で、71歳の男がポリタンクに入った液体をかぶって焼身自殺した。たまたま乗り合わせた女性1人も巻き添えで亡くなった。熱気で気道を損傷した窒息死である。痛ましい限りだ。
 液体は灯油かガソリンとみられ、男は先頭車両の最前列付近で火を付けた。火は天井まで燃え上がった。
 事件のあった車両は自由席で、最前列まで乗客がいた。大勢の人が猛煙の中を後部の車両に避難したが、26人が気道熱傷や一酸化炭素(CO)中毒で負傷した。
 幼い子どもを連れて逃げる女性や途中でうずくまる人…。地獄のような状況だったに違いない。
 警察は殺人と現住建造物等放火の疑いで自宅を家宅捜索し、動機などを調べている。なぜ新幹線で焼身自殺に及んだのか、犯行に至る経緯を解明してもらいたい。
 男は液体を詰めたポリタンクをリュックサックに隠して車内に持ち込んだとみられる。可燃性液体の持ち込みは鉄道営業法で原則禁止されているが、阻止できなかった。
 国内の鉄道で乗客の荷物を検査している例はない。危険物や凶器のチェックはなされず、利用者のモラルに委ねているのが実情だ。
 事件は「性善説」に立つ日本の鉄道管理の弱点を突いたと言える。新幹線の車内で起きた過去最悪の被害であり、安全対策の在り方を早急に見直す必要がある。
 欧州などでは空港並みの荷物検査を行っている鉄道がある。日本も来年のサミットや5年後の東京五輪に向け、テロ対策が課題とされる。
 ただ、東海道新幹線は1日約42万人が利用する。交通の大動脈の利便性を損なわずにどのような対応が可能か、知恵を絞らねばならない。
 国土交通省は、新幹線を運行する東海、東日本、西日本、九州のJR各社と来春から運行予定のJR北海道の幹部による緊急会議を開いた。警察とも連携し、巡回強化をすぐに実施すべきだろう。
 今回、天井やシートなどに不燃性、難燃性の素材を用いる火災対策が被害拡大を食い止めた面はある。日本の技術力も駆使して新幹線の安全性を高める努力を重ねたい。
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