2015-07-05(Sun)

骨太の方針と成長戦略 (1)格差拡大なおいっそう  150617-30

財政への危機感が薄い 心もとない財政の健全化 経済成長頼みは甘すぎる

<各紙社説・論説・主張>
朝日新聞)日本の財政再建 やはり先送りは危うい(06/30)
毎日新聞)骨太の方針 財政への危機感が薄い(06/29)
熊本日日新聞)骨太方針 経済成長頼みは甘すぎる(06/29)
新潟日報)骨太方針 財政再建の道筋ぼやけた(06/28)
北海道新聞)骨太の方針 問題の先送りにすぎぬ(06/25)
中国新聞)骨太方針 財政再建、本気度見えぬ(06/25)
読売新聞)骨太方針素案 財政再建への踏み込みが甘い(06/24)
山陽新聞)骨太方針 心もとない財政の健全化(06/17)
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産経新聞)新成長戦略 寄せ集めでは期待できぬ(06/24)
河北新報)成長戦略素案/これで明るい展望持てるか(06/24)
日本経済新聞)成長力を大きく高める戦略といえるか (06/23)




以下引用



朝日新聞 2015年6月30日05時00分
(社説)日本の財政再建 やはり先送りは危うい


日本の財政は、借金漬けだ。国の借金残高は今年3月で1053兆円、国内総生産(GDP)の2倍と先進国の中で最悪の水準であり、債務危機にあえぐギリシャをも上回る。借金の8割強は、国債である。
 今年度予算では、財源不足を補うための36兆円余の新たな国債や、満期を迎えた分の借り換えなどで、総額170兆円の国債を発行する。
 こんなに借金を重ねて大丈夫なのか。発行後に国債が売買される市場で国債価格が急落(金利が急上昇)しないのか。
 ■市場に潜む危うさ
 国債の大半は、国内の資金、もとをたどれば国民の貯蓄でまかなわれている。逃げ足の速い海外マネーに頼っているわけではないから、大丈夫。こう説明されることが多い。
 おカネの流れを見れば、その通りだ。ただ、この流れに潜む構図を見落としてはならない。
 「異次元」とも称される、日本銀行による大胆な金融緩和策である。
 この政策の柱として、日銀は大量に国債を買っている。昨年秋の緩和策第2弾を経て、そのペースは、政府が市場で発行する分の最大9割に及ぶ。
 日銀が政府から国債を直接買う「引き受け」は、法律で禁じられている。かつて政府の戦費調達などに日銀が手を貸し、激しいインフレを招いた反省からだ。現状は金融機関を経て購入しているとはいえ、引き受けも同然と言える。
 何が起きるか分からないのが、市場だ。「日本の国債だけは価格が暴落しない」というわけにはいかない。投機筋などによる売り浴びせをきっかけに混乱が広がれば、企業の借り入れや住宅ローンの金利が急上昇し、景気の悪化に伴って税収が減る一方、国債の利払いは増える。ギリシャの惨状は遠い外国の話ではなくなる。
 そんな事態を避けるには、政府が「借金を返していく」という姿勢を示し続け、「すき」を見せないことだ。今は日銀が国債の大量購入で波乱の芽を封じ込めている格好だが、日銀の黒田総裁自身が政府に財政再建の大切さを説いていることがそれを物語る。
 ■成長頼みは禁じ手
 20年度の基礎的財政収支の黒字化を目指す政府の財政再建策は、借金を返していく意思を問う試金石だ。
 ところが、である。
 毎年名目で3%台という、実現が難しい成長を前提として、税収も伸びていくと見込む。増税については、1回延期した消費税率の10%への引き上げこそ織り込むものの、それ以上は封印。歳出の抑制・削減策も、メニューこそ並べたが、具体案や実行への道筋は先送りした。
 経済成長に伴う税収増を目指すのは当然としても、それに頼ることは「期待」頼みの財政再建であり、禁じ手だ。確実な手段は、歳出の削減と増税の二つ。ともに痛みを伴う。
 まずは歳出の抑制・削減だ。あらゆる分野にメスを入れる必要があるが、焦点は国の一般会計の3分の1を占める社会保障分野だ。高齢化に伴い、放っておけば毎年1兆円近いペースで増え続ける。
 医療や介護、年金など、社会保障は「世代」を軸に制度が作られ、現役世代が高齢者を支えるのが基本的な仕組みだ。しかし、同じ世代の中で資産や所得の格差が開いていることを考えれば「持てる人から持たざる人へ」という軸を加え、制度を改めていくことが不可欠だ。
 財政難の深刻さを考えれば、歳出の抑制・削減だけでは間に合わず、増税も視野に入れるべきだ。
 柱になるのは消費税の増税である。景気にかかわらず増えていく社会保障をまかなうには、税収が景気に左右されにくく、国民全体で「薄く広く」負担する消費税が適している。3年前に政府が決めた「社会保障と税の一体改革」は、そうした考え方を根本にすえる。
 安倍政権は10%を超える増税を否定するが、それではとても足りない。欧州の多くの国が付加価値税(日本の消費税に相当)の税率を20%前後としていることからも明らかだ。
 所得や資産に課税する所得税や相続税も、豊かな層に応分の負担をしてもらう方向で見直す。そんな税制を目指したい。
 ■避けられない痛み
 いずれも痛みを伴う改革だ。しかし、社会保障を持続可能にし、将来世代へのつけ回しをやめるには、避けて通れない。
 財政の再建から逃げ、放置すれば、いずれ破綻(はたん)しかねない。いったんそうなれば、国民の生活がもっと大きな痛みを強いられる。
 選挙で選んだ代表を通じ、法律を改正して制度の再設計や負担増を受け入れるのか。金利急騰といった市場の圧力に追いたてられて取り組むのか。
 民主主義の手続きに基づく負担の分かち合いを選びたい。
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毎日新聞 2015年06月29日 02時32分
社説:骨太の方針 財政への危機感が薄い


 政府は、経済財政運営の指針「骨太の方針」を、あす閣議決定する予定だ。2020年度までの新たな財政健全化計画が柱だ。
 国の借金は1000兆円を超え、今回の計画は再建の一歩に過ぎない。だが、歳出抑制は「目安」にとどまり、借金返済は高い経済成長を前提とした税収増頼みだ。危機感が乏しいと言わざるをえない。
 健全化の指標とする基礎的財政収支は、社会保障費や公共事業費などの政策経費を新たな借金に頼らず税収などでどれだけ賄えるかを示す。15年度の赤字は16.4兆円(国・地方の合計)に上る。政府は20年度までの黒字化を目標にしており、その道筋を描けるかが焦点だった。
 骨太の方針は、国内総生産(GDP)の成長率を「実質2%、名目3%」に高めるとした。内閣府の試算では、この水準の成長が続くと、赤字は7兆円圧縮される。
 しかし、日本経済の実力である潜在成長率は0%台半ばに過ぎない。政府は新しい成長戦略も閣議決定するが、人材育成やIT(情報技術)活用など内容は小粒で、成長底上げに力不足の感は否めない。
 さらに、高成長を続けても20年度に9.4兆円の赤字が残る。歳出改革が重要だが、具体策は乏しい。
 中間目標として、18年度の赤字の対GDP比を1%程度に縮小(15年度は3.3%)する方針が盛り込まれた。政策経費は社会保障費だけで年1兆円近く増える計算だが、全体の伸びを18年度までの3年で計1.6兆円程度に抑えるという。
 だが、歳出抑制は、厳格な目標ではなく、あいまいな「目安」とされた。経済動向に応じて柔軟に財政出動を行う方針も明記したため、歳出抑制は骨抜きになる恐れがある。
 社会保障費の抑制につながる裕福な高齢者の医療費負担増や年金減額もほとんど言及されなかった。痛みを伴う改革は先送りされた形だ。
 17年4月の消費再増税を控え、歳出抑制による景気悪化を避けたいという「成長重視派」が優勢だった。「経済再生なくして財政健全化なし」という安倍晋三首相の意向を反映したものだ。だが、歳出の効率化を進めなければ、再増税に対する国民の理解も得られないだろう。
 骨太の方針は、日本経済の現状について「四半世紀ぶりの良好な状況」との認識を示した。この機をとらえて思い切った歳出改革に踏み出さないのなら、いつ着手するのか。
 健全化計画は、首相が昨年、消費再増税の延期を決めた際に策定を表明した。だが、財政への信認をつなぎとめられるか不安が残る。16年度予算編成に向け、首相は歳出改革で明確な指示を出すべきだ。
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熊本日日新聞 2015年06月29日
社説:骨太方針 経済成長頼みは甘すぎる


 政府は、新しい経済財政運営の指針「骨太方針」と成長戦略の素案をまとめ、公表した。30日に閣議決定する方針だ。
 新たな借金をせずに政策経費を賄えるかを示す国と地方の基礎的財政収支を、2020年度に黒字化する目標は堅持したものの、名目で3%を超える高い経済成長による税収増をあてにしており、全体として厳しさを欠く。
 一般歳出の伸びを1兆6千億円程度に抑えた過去3年間の基調を18年度まで継続することを「目安」としたが、具体的な数値目標は示さなかった。「経済再生なくして財政健全化なし」との安倍晋三首相の考えを色濃く反映した内容となった一方で、経済成長を促す新たな成長戦略は大学改革による技術開発力の底上げなどにとどまり、内容は小粒で手詰まり感も漂う。
 国の借金は14年度末時点で1053兆円を超す。国民1人当たり約830万円にも上り、深刻度は主要国で最悪だ。にもかかわらず、安倍政権に危機感は感じられない。財政健全化は将来世代への責任を果たすことだ。政府は楽観論を排し、着実で実効性のある道筋を示すべきだ。
 骨太方針では、16年度から5年間の「経済・財政再生計画」を盛り込み、18年度までを「集中改革期間」とした。20年度に基礎的収支を黒字化するために、18年度の赤字を国内総生産(GDP)比で1%程度に下げる中間目標を設定。進み具合が不十分であれば追加措置で対応するという。
 だが、少子高齢化が加速する日本で、名目3%の高成長を見越した財政見通しは甘すぎよう。現在(15年度)の基礎的収支の赤字額はGDP比で3・3%、約16兆4千億円に上る。消費税率が17年4月に10%に引き上げられることを織り込んだ内閣府の試算では、実質2%、名目でも3%を上回る高い経済成長を実現しても、20年度は9兆4千億円の赤字が残るという。しかも、過去20年の実質成長率は平均0・9%程度であり、名目成長率は一度も3%に届いていない。
 今年1~3月期のGDP改定値は年率換算で実質3・9%増と高い伸びを示したが、個人消費は依然として力強さを欠く。米国の利上げやギリシャ債務問題、中国経済の減速など、世界経済の不安材料も枚挙にいとまがない。
 歳出抑制に向け、もっとしっかりと踏み込むべきだ。計画では社会保障費に関して、過去3年間で1兆5千億円程度の伸びにとどめた実績を目安とするという。それは、従来の予算編成方針が延長されるということだ。数値目標もないならば、与党が税収増を前提に歳出拡大の圧力を強めるのは目に見えている。
 これでは、国民だけでなく、海外の市場関係者にも日本政府の財政再建姿勢に疑念を抱かせよう。今は安定している国債相場(長期金利)の急変にもつながりかねない。政府は、抜本的に計画を見直すべきではないか。
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新潟日報 2015/06/28
社説:骨太方針 財政再建の道筋ぼやけた


 政府が経済財政諮問会議で示した「骨太方針」の素案は、財政再建の達成を経済成長による税収増に頼る形となった。
 歳出抑制の数値目標は示さず、過去3年間の実績並みに抑える目安を設けただけだ。
 力不足は否めない。デフレ脱却による経済再生の姿勢を優先したい気持ちは分かるが、どちらともつかない玉虫色の方針や課題の先送りは、いつか行き詰まりを呼ぶ恐れが拭えまい。
 骨太方針は、政府の経済財政運営の基本的な考えを盛り込み、予算編成や税制改正に反映させる文書である。
 安倍晋三首相が昨年11月に消費税率10%への再増税を1年半延期することに決めた。市場の信認を手放さないため、策定方針を打ち出したものだ。
 方針の中で、2018年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を国内総生産(GDP)比で1%程度に抑える中間目標が新たに設けられた。
 借金をせずに政策経費をどれだけ賄えるかの指標であるプライマリーバランスは、20年度に黒字化する大目標がある。
 そこへのステップを刻んだことの意義はあるだろう。だが、そのほかの方針は個別政策の列挙といえ、数字の裏付けが薄く、具体性が足りない。
 20年度黒字化の堅持はしたものの、目標をどう達成するかの道筋がぼやけているのだ。
 歳入増は名目で3%を超える高い成長率が前提だ。
 経済政策アベノミクスの金融政策が市場を刺激してデフレ脱却への空気が生まれ、続く財政出動によって経済活性化の取り組みが続けられた。
 だが、成長率3%への道のりははるかだ。しかも内閣府試算によると、経済成長を織り込んでも20年度には9兆4千億円の赤字が残るのだという。
 アベノミクスの成果を確かにするべき成長戦略の成否が鍵を握ることになる。だが、これも見通しは良くない。
 骨太方針と同時に公表した新たな成長戦略は、女性の活躍や中高年の転職支援で少子高齢化に対応し、外国人旅行者の受け入れ拡大による観光振興や地域活性化をうたっている。
 労使紛争での「解決金制度」の検討や、経済力に応じた医療費・介護利用料の負担増、耕作放棄地への課税強化など、これからの議論であり賛否が割れる課題も盛り込まれている。
 法人税実効税率引き下げを盛り込んだ昨年に比べ目玉に乏しい上に、どこまで実現可能性が見込めるのか定かではない。
 「経済再生なくして財政再建なし」とする首相官邸と財務省の対立が、骨太方針を中途半端な形に押し込めたといえる。
 経済成長で財政再建できれば理想的だ。だが、それで見通しを甘くしてはならない。
 危機的な国家財政は次世代への負の遺産となる。現状に向き合い、成長と財政再建の両立を追求してもらいたい。
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北海道新聞 2015/06/25 08:55
社説:骨太の方針 問題の先送りにすぎぬ


 政府は、経済財政運営の基本指針である「骨太の方針」の素案を示した。近く閣議決定する。
 財政健全化計画が盛り込まれ、国と地方の政策経費を税収などでまかなえるかどうかを表す基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を2020年度までに黒字化する目標を堅持した。
 そのために、PB赤字の対国内総生産(GDP)比を現在の3・3%から18年度に1%へ縮小する中間目標を掲げ、それまでの3年間を集中改革期間とする。
 だが、そもそも名目3%、実質2%の高い経済成長率による税収増をあてにした計画である。
 しかも歳出削減の具体策に乏しく、中間目標を検証した後、必要な追加措置をとるという。これでは問題を先送りしたも同然だ。
 来年夏に参院選を控え、国民に不人気な歳出カットに踏み込みたくないとの政治的意図が働いたと疑われても仕方あるまい。
 素案では、経済成長を重視する安倍晋三政権の意向をくんで、歳出規模についての厳格な数値目標の設定は見送られた。
 代わりに、これまでの実績を踏まえ、集中改革期間に、社会保障費も含む政策経費の伸びを合計で1・6兆円に抑えることが「目安」とされている。
 ただし、あくまで目安であり、各年度の歳出には柔軟に対応する方針だから、財政規律としての縛りはほとんど期待できない。
 歳出削減策としては、価格の安い後発医薬品の使用割合を前倒しで引き上げることが目立つ程度で、残りは実効性が疑わしい。
 政府は、17年4月に消費税率を10%に引き上げる。景気の腰折れを防ぐ名目で、予算措置を伴う対策が準備される可能性が高い。
 景気頼みの財政健全化計画を救うために財政出動が正当化され、中間目標の達成はますます危うくなるだろう。
 20年度のPB黒字化は国際公約でもある。集中改革期間に成果を挙げられず、10%を超える消費税増税の検討に追い込まれるような事態は論外だ。
 かつて小泉純一郎政権が実施した社会保障費の一律カットといった乱暴な手法も許されない。
 素案は、高所得者の年金給付の抑制なども検討課題とした。社会保障と税の一体改革で、国民が納得できる給付と負担の全体像を早急に示す必要がある。
 格差解消に向けた資産課税の強化など、歳入面の改革も急がなければならない。
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中国新聞 2015/6/25
社説:骨太方針 財政再建、本気度見えぬ


 ばら色のシナリオをいつまで描き続けるつもりなのか。
 政府が示した新しい経済財政運営の指針「骨太方針」の素案を見る限り、本気度が感じられない。国際公約でもある財政再建をめぐり、高い経済成長による税収増を当てにする姿勢がさらに鮮明になったからだ。
 2020年度に基礎的財政収支の赤字を黒字化する―。民主党政権時代から国が掲げる目標まで、あと5年である。達成するには、歳出抑制や増税といった確実な健全化への道筋こそ求められたはずだ。
 しかし骨太方針に盛り込まれた財政再建計画には、途方もない借金漬けの現実を直視する厳しさは見られない。
 安倍晋三首相が掲げる「経済再生なくして財政健全化なし」の路線が土台なのだろう。
 折しもきのう、東京株式市場の日経平均株価終値がITバブル期を超える高値をつけた。株高自体は悪いことではないが、将来への不安が先に立つ。現政権は目先の「景気回復」に浮かれ、財政再建や国民の痛みを伴う難しい政策はあえて先送りしている感がある。
 財政再建計画は、そうした政権の空気を反映していよう。まずは高い成長率を前提にしている点が疑問である。国内総生産(GDP)の伸び率が実質2%という試算を採用している。しかし、過去の実績からすれば現実的な想定とは到底思えない。しかも、この楽観的な試算でさえ、20年度の基礎的財政収支の赤字見通しは10兆円近い。
 なのに示された歳出削減や抑制の方は根本的な解決策には程遠かろう。割安なジェネリック医薬品(後発薬)の普及率引き上げ、医療・介護で高所得者の負担増などが挙げられたが、これだけでは心もとない。
 さらには政府・与党内の綱引きの結果、歳出の上限が設けられなかったのにも首をひねらされる。財政再建の「集中改革期間」とする18年度までの3年間で、歳出の伸びを1兆6千億円程度に抑えるという目安にとどまった。これにしても、従来通りの努力を続ける水準にすぎない。一応は膨らみ続ける社会保障に切り込む姿勢は示すが、どこまで実行力を伴うか。
 首相の頭には小泉政権が社会保障費の年2200億円の一律カットを掲げ、反発を受けた過去がよぎるのかもしれない。デフレ脱却を優先し、先の消費税増税時のような内需への冷や水を避けたい考えもあろう。
 しかし国と地方の借金は計1千兆円を超える。健全化目標を20年度に置く議論ばかり目立つが、大変なのはその後だ。団塊世代が75歳以上となって社会保障費がさらに増大するからだ。だからこそ長期の財政見通しを楽観を排して描くべきである。このままではツケを負わされる将来世代に顔向けできない。
 高い成長率を前提にしているのに、同時に示した成長戦略はインパクトが弱い。医療や観光を重点分野にし、人材活用やIT促進をうたうが、とりあえず思いついた施策を並べた感もある。目標が先行し、具体策に乏しい項目も少なくない。
 単に財政再建を先送りする言い訳とすれば、成長戦略を毎年出す意味さえ問われる。人口減と超高齢化の時代に突入しつつある日本の現実を見据えた経済財政運営が必要である。
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読売新聞 2015年06月24日 01時24分
社説:骨太方針素案 財政再建への踏み込みが甘い


 経済成長と財政再建の二兎を追う基本的な考え方は妥当だが、歳出削減への強い意気込みが感じられない。
 政府が、「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)の素案をまとめた。
 2020年度に国と地方の基礎的財政収支を黒字化する政府目標の達成に向け、18年度の赤字を国内総生産(GDP)の1%程度に抑える中間目標を設けた。
 18年度までの3年間を集中改革期間と位置づけ、政策経費の歳出増加額を計1・6兆円程度に抑える「目安」を示した。毎年1兆円ほど増える社会保障費を、3年で1・5兆円の伸びにとどめる。
 甘利経済再生相らは、歳出の上限設定に難色を示したが、それでは経済成長による税収増などが、野放図に歳出拡大へ回される恐れがある。麻生財務相らの主張に沿って、歳出増に一定の歯止めを設けた意義はあろう。
 懸念されるのは、今後の歳出を想定通りに抑制するための具体的な方策が乏しいことである。
 政策経費の伸びの目標額は、13~15年度の実績をもとに定めた。高齢化は進行しており、今後も同様に抑え込める保証はない。不断の歳出改革が不可欠だ。
 ところが、裕福な高齢者の医療費負担増や、年金課税の強化などの重要課題について、素案はほとんど言及しなかった。
 医療費削減の柱とされた後発医薬品の「普及率80%以上」の実現時期も、踏み込み不足だった。慎重な厚生労働省に配慮し、「18~20年度末のなるべく早い時期」という曖昧な表現に落ち着いた。
 08年のリーマン・ショック後に緊急対策として導入した地方交付税の別枠加算は、「平時モードに切り替えを進めていく」とするにとどめ、廃止を見送った。
 歳出カットに対する各府省や地方自治体の反発を恐れ、腰が引けていると言わざるを得ない。
 日本の債務残高は、1000兆円を超え、既に先進国で最悪の財政状況だ。団塊の世代が75歳以上に達する25年度以降を見据えれば、痛みを伴う制度改革にも早めに手をつける必要がある。
 そもそも今回の財政再建策は、実質2%という高成長が前提だ。成長率が1%にとどまれば、20年度の基礎的財政収支の赤字幅は、7兆円も増える。厳しい現実を忘れてはなるまい。
 20年度の黒字化目標を着実に実現し、その先の財政健全化に布石を打つ。こうした視点から、歳出改革の具体策を補強すべきだ。



山陽新聞(2015年06月17日 08時09分 更新)
社説:骨太方針 心もとない財政の健全化


 政府が、経済財政運営の指針となる「骨太方針」の骨子をまとめた。新たな借金をせずに政策経費を賄えるかどうかを示す国と地方の基礎的財政収支について、2020年度に黒字化する目標の達成に向け、18年度に赤字額を国内総生産(GDP)比で1%程度に抑える中間目標を明記している。
 基本方針として「経済再生なくして財政健全化なし」を掲げ、経済成長による税収増を重視する一方、歳出の増加を抑える歳出改革に関しては、具体的な取り組みや抑制額の数値目標は示さなかった。成長頼みの指針と言わざるを得ず、財政健全化への道筋は見通しにくい。
 国と地方の基礎的財政収支の赤字額は、15年度で約16兆4千億円に上り、赤字のGDP比は3・3%となっている。政府が骨太方針で描くシナリオは、18年度のGDPが順調に伸びれば500兆円台後半~600兆円程度と見込んでいる。赤字額を6兆円程度に縮小すれば、GDP比1%程度との中間目標を達成できるという。だが、その実現可能性には疑問が拭えない。
 そもそも政府の想定は、GDPが名目3%超の極めて高い成長率で伸びることを前提にしている。だが、14年度の名目GDPの成長率は1・6%にとどまっているのが実情だ。日本の経済は米国や中国など海外の景気に左右される面があり、国内経済が3%超の成長率で伸びるとの想定は甘いとの指摘もある。
 骨太方針で「聖域なく進める」と掲げている歳出改革についても、踏み込み不足の感は否めない。例えば、社会保障分野では、負担能力に応じた公平な負担、安価なジェネリック医薬品(後発薬)の使用促進などに取り組むとしている。だが、目標とする削減額は示されなかった。
 毎年1兆円規模で増え、国の予算の約3割を占める社会保障費の抑制は、歳出削減の重要な鍵である。国民にとって「痛み」を伴う分野の改革だからこそ、より具体的な取り組みや数値を示すことが欠かせない。
 一方、政府は、リーマン・ショック後の税収減を補うため09年度以降、地方自治体に配分している特別な財政支援を、18年度までに終えることを目指す方針を固めた。財政健全化の一環として、骨太方針に明記する考えだ。
 特別な財政支援は15年度では約1兆円に上る。地方の税収の回復を背景に、既に14年度から段階的に減額しているとはいえ、地方税収の動向を慎重に見極めながら終了させるべきだろう。
 政府は骨太方針を今月末に閣議決定した後、財政健全化目標の達成に向け、さらに詳細な改革目標を盛り込んだ工程表を年内に策定するという。個別政策ごとに改革の実行時期や収支をどの程度改善させるかを定めた上で、成果を検証しながら柔軟に対応していくことが求められる。
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産経新聞 2015.6.24 05:03
【主張】新成長戦略 寄せ集めでは期待できぬ


 「岩盤規制」の打破を掲げ既得権益に切り込もうとした昨年と比べ、安倍晋三首相の覚悟が伝わってこない。これで、政権が目指す高い成長は本当に果たせるのか。
 政府が閣議決定を目指す新たな成長戦略の素案を示した。骨太方針とともに政権の経済運営の柱となる重要戦略だ。
 企業の投資や人材育成などを促して生産性を高める。それこそが、人口減時代に懸念される成長の限界を打ち破るカギだという問題意識は妥当である。
 だが、「生産性革命」「第4次産業革命」などと華々しい文言が並ぶ割に個別政策は力不足だ。首相の指導力というより、各省庁から政策を寄せ集めただけという印象が強い。これでは過去の政権の失敗と同じ轍(てつ)を踏みかねない。
 効果的に実施できるよう、迅速に具体化を図り、着実に成長につなげていくことが肝要だ。そのための実行力を示してほしい。
 素案は、ロボット開発やIT投資の促進、専門知識を持つ外国の人材活用などで生産性を高めることに主眼を置いた。投資を促すための官民対話も創設する。農業や医療・介護、観光分野などを地方の基幹産業とする「ローカルアベノミクス」も柱のひとつだ。
 規制緩和や税制改正を通じた成長戦略は、成果を挙げるまで時間がかかる地道な積み重ねが求められることにも留意すべきだ。
 雇用の流動化など道半ばの改革はいまだに多い。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の早期妥結や、法人税の実効税率を20%台に引き下げる道筋の明確化などあらゆる手立てを講じ、0%台にすぎないといわれる潜在的な成長力を高めなければならない。
 今回の成長戦略では、アベノミクスが「第2ステージ」に入ったとの認識を示した。企業収益や所得・雇用環境の改善で経済の好循環が進んでいるためだという。
 ただ、構造改革の手綱を緩めることは許されない。聞こえのいい政策を並べて予算をつぎ込むばかりでは、とても持続的な成長など期待できまい。
 注意したいのは、財政再建との両立である。骨太方針に盛り込む財政健全化計画は名目3%以上の高い成長が前提だ。成長に伴う税収増に多くを期待するからには、これまで以上に成長戦略の実効性が求められよう。それがなければ両立はあり得ない。
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河北新報 2015年06月24日水曜日
社説:成長戦略素案/これで明るい展望持てるか


 大胆な金融緩和による第1の矢と、機動的な財政出動という第2の矢、実行途上にある第3の矢・成長戦略を加えたアベノミクスで、「日本経済はかつての強さを取り戻しつつある」という。
 政府がまとめた、安倍政権にとって3回目となる成長戦略の素案は、そうした現状認識から始まる。
 アベノミクスによる円安株高で、企業収益は過去最高を記録し、その収益が賃上げに向けられ消費は持ち直しの兆しがある。人手不足が顕在化するほど雇用情勢は改善した。「経済の好循環は着実に回り始めている」と指摘する。
 だが果たして、そうだろうか。いいとこ取りの自画自賛ではないのか。
 大幅な賃上げは大企業が中心で、中小企業や地方になかなか波及しない。雇用も職種に偏りがあり、しかも低賃金の非正規雇用が増えているのが実態といえよう。
 素案は成長戦略を「企業や国民のデフレマインドを払拭(ふっしょく)するための構造改革」と位置づける。だが、これで家計の節約志向を吹き飛ばし、明るい展望を持って暮らしていける自信を国民が持てるのかどうか。疑問というしかない。
 新産業の創出や技術革新を通じた安定雇用、所得向上につながる具体策に乏しいと言わざるを得ない。
 楽観的な現状認識に立脚した素案である。従って、デフレ脱却はもはや視野に入り、これからは人口減少社会の中で、いかに生産性を高めるかが重要だと強調する。
 日本経済の実力である潜在成長率は1%未満にとどまっているとされる。この向上なくして高成長は望めない。
 現状認識には違和感を抱かざるを得ないとしても、素案が、生産性向上の鍵とする人材、技術、設備に対する投資は確かに欠かせない。
 だが、その列挙された項目の実効性には疑問符が付く。
 人材面では女性や高齢者らの活用を掲げ、助成金を拡充して中高年の転職を促し、非正規で働く女性の正社員化を進めるという。が、中高年が転職前と同等の待遇を受けられるかどうかは不明だし、正社員化を図るための具体策はこれからの検討課題だ。
 大学改革の推進で技術開発力を底上げするとはいうものの、人材育成や技術革新にはそれ相応の時間が必要だ。しかも交付金の多寡で大学を競わせる。それで研究にしっかり取り組めるものかどうか。
 こうした成長戦略の力不足を補うかのように首相は、企業の投資を促すため、政府と産業界による官民対話の場を創設すると表明した。賃上げを実現した「政労使会議」同様、優遇する企業に今度は投資での「貢献」を求める。
 民間活力を「喚起」するのではなく「強要」する図式だ。このことは、そうしなければアベノミクスの好循環が保てない証しでもあろう。それが経済の現状ではないのか。
 前回の成長戦略は曲がりなりにも、その最終目標に「国民が豊かさを実感できるようにすること」を挙げていた。納得し難い現状認識から説き起こされた今回の素案は、そこから一歩も二歩も後退した印象を否めない。
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日本経済新聞 2015/6/23付
社説:成長力を大きく高める戦略といえるか


 政府が成長戦略の素案をまとめた。「日本再興戦略」の改訂版で、安倍晋三政権の下でつくる3回目の戦略だ。全体として力不足は否めない。
 日本経済の実力である潜在成長率は1%未満にとどまっているとされる。人口減の逆風を乗り越えてこれを高めるには生産性の向上が不可欠だ。今回、成長戦略がそこに焦点をあてたのは妥当だ。
 国家戦略特区を使って「岩盤規制」の一部に風穴をあけようとしているのは、前進といえる。一例は医療分野だ。
 病院や薬局に行かずに、スマートフォン(スマホ)などを使って医師の処方箋が必要な医療用医薬品(処方薬)を買えるようにする規制緩和を、一部地域で実施する方針を示した。これを突破口に遠隔診療をさらに進めるべきだ。
 社外取締役の仕事の明確化や情報開示ルールの見直しなど、企業統治の強化策を通じて企業の稼ぐ力を後押しするのも評価できる。しかし、ほかに見るべき取り組みは少ないのではないか。
 大学改革では、経営の自由度が高い「特定研究大学」や、人工知能などを研究する「卓越大学院」をつくるという。新しい器をつくるのはよいが、本当に日本の科学技術や大学発ベンチャーの抜本的強化につながるのか不明だ。
 「第4次産業革命」といった言葉ばかりが躍って具体策を伴わないものも多い。「ローカルアベノミクス」と銘打って、農業や観光などの予算要求の根拠に各省庁が利用しそうな項目もある。
 安倍政権は中長期的に物価変動の影響を除いた実質で2%、名目で3%を上回る経済成長をめざしている。今回を含むこれまでの成長戦略でそれが実現できると本当にいえるのか、疑問が残る。
 「戦略」というからには、小粒の追加策をたくさん並べることが目的ではないはずだ。積み残してきた難題に真正面から向き合う姿勢が弱いのではないか。
 政府は法人実効税率をできるだけ早く20%台に下げる道筋を示すべきだ。環太平洋経済連携協定(TPP)に加え欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の交渉も急いでほしい。解雇の金銭解決などの課題も残っている。
 規制改革で企業の新陳代謝と技術革新を促すとともに、若者や女性、高齢者、外国人が就労しやすい環境をつくる。そんな成長戦略の基本を忘れてはならない。
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