2015-07-08(Wed)

長良川河口堰20年 堰維持に239億円

せき止め影響、議論続く 水利用低迷やアユ漁獲減少

----六日で本格運用開始から丸二十年となる長良川河口堰(ぜき)(三重県桑名市)の維持管理費が、来年三月末までに総額二百三十九億円に及ぶ見通しとなることが中日新聞社の調べで分かった。河口堰は約千五百億円で建設されたが、一九九五年の運用開始後も多額の税金が投じられている。造られると、莫大(ばくだい)な費用を必要とし続ける巨大公共事業の実態が浮き彫りになった。

----維持管理費二百三十九億円のうち、国を除く愛知、三重、岐阜の三県と名古屋市が全体の77%にあたる百八十三億円を負担。愛知、三重県と名古屋市は過去二十年間、河口堰で利用できるようになった工業用水や水道水をほとんど使っていないにもかかわらず、百七十四億円を払い、一部は水道料金に転嫁されている。(中日新聞)

◇◇◇◇◇◇◇

----「日本には大型公共事業を後で検証するシステムがない。我々は今後も粘り強く検証していく」。愛知県の大村秀章知事は有識者委を1年ぶりに開く意義をそう語る。

----河口堰の総工費は1500億円。国と愛知県や名古屋市、三重県、岐阜県が負担した。さらに毎年、維持費が約10億円かかる。そのコストに見合う事業なのか、今なお大きな争点になっている。
 
----河口堰の目的の一つは利水だ。河口堰で毎秒最大22.5立方メートルの水資源が生まれた。しかし使われているのは同3.6立方メートルと16%にすぎない。

国が河口堰の構想を作ったのは1960年代の高度経済成長期。愛知や三重は日本を支える重工業地帯として発展し、水需要も大きく拡大するはずだった。その後、産業構造の変化や各企業の節水の取り組みで、もくろみは大きくはずれた。

一方で「夏の水不足を緩和させる効果は高い」との声も自治体の間では根強い。2005年の渇水時には長良川の水を愛知に供給し、悪影響の緩和に一役買った。
 
----環境に与える影響でも意見が分かれる。
 「魚道を流れる5センチほどの小さな魚がアユです」。河口堰を管理する水資源機構は5月下旬、報道陣向けに魚道の見学会を開いた。「今年のアユの遡上は多い。河口堰のアユへの影響はほぼない」と機構は胸を張る。
 
ただ、この20年をみると、河口堰の運用前の93年に激減し、その後回復がみられない。機構は「全国的にアユの漁獲は減った。長良川に限ったものではない」と説明するが、長良川市民学習会の武藤仁事務局長は「悪影響は明白だ」と反論する。
 
事実、岐阜市は今年天然アユを「準絶滅危惧」に選定した。「放流などの手助けがなければアユは絶滅の可能性すらある」(武藤氏)。双方の主張はかみ合っていない。
(日経新聞)




以下引用

日本経済新聞 電子版 2015/7/4 2:07
長良川河口堰20年、止まらぬ論争 水利用低迷やアユ漁獲減少
 三重県桑名市の長良川河口堰(ぜき)が運用を始めて6日で20年の節目を迎える。4、5日に市民団体が今までを振り返るイベントを開くほか、開門調査を求めてきた愛知県も28日に有識者による検証委員会を実施する。推進派と反対派の対立はその後の公共事業のあり方を見直す契機にもなったが、事業そのものの是非は結論が見えない。
 「日本には大型公共事業を後で検証するシステムがない。我々は今後も粘り強く検証していく」。愛知県の大村秀章知事は有識者委を1年ぶりに開く意義をそう語る。
 愛知県は1月、開門調査に向けて国に質問状を提出した。これに対し国は今年5月、400ページにのぼる回答を寄せた。7月末の検証会合では有識者が回答を検討し、今後の対応を話し合う。
 河口堰の総工費は1500億円。国と愛知県や名古屋市、三重県、岐阜県が負担した。さらに毎年、維持費が約10億円かかる。そのコストに見合う事業なのか、今なお大きな争点になっている。
 河口堰の目的の一つは利水だ。河口堰で毎秒最大22.5立方メートルの水資源が生まれた。しかし使われているのは同3.6立方メートルと16%にすぎない。
 国が河口堰の構想を作ったのは1960年代の高度経済成長期。愛知や三重は日本を支える重工業地帯として発展し、水需要も大きく拡大するはずだった。その後、産業構造の変化や各企業の節水の取り組みで、もくろみは大きくはずれた。
 一方で「夏の水不足を緩和させる効果は高い」との声も自治体の間では根強い。2005年の渇水時には長良川の水を愛知に供給し、悪影響の緩和に一役買った。
 環境に与える影響でも意見が分かれる。
 「魚道を流れる5センチほどの小さな魚がアユです」。河口堰を管理する水資源機構は5月下旬、報道陣向けに魚道の見学会を開いた。「今年のアユの遡上は多い。河口堰のアユへの影響はほぼない」と機構は胸を張る。
 ただ、この20年をみると、河口堰の運用前の93年に激減し、その後回復がみられない。機構は「全国的にアユの漁獲は減った。長良川に限ったものではない」と説明するが、長良川市民学習会の武藤仁事務局長は「悪影響は明白だ」と反論する。
 事実、岐阜市は今年天然アユを「準絶滅危惧」に選定した。「放流などの手助けがなければアユは絶滅の可能性すらある」(武藤氏)。双方の主張はかみ合っていない。
 20年前、旧建設省の官僚として現場で河口堰にかかわった宮本博司氏(62)は言う。「事業の推進側は20年前に言っていたことがどこまで正しかったか検証し、逆に反対派は河口堰が生んだメリットを語らなければ、次の世代に何の教訓も残せない」。お互いの主張を繰り返すだけでは風化が進むだけだと危惧する。
 河口堰問題をきっかけに、国は1997年に河川法を改正し、環境保全や住民参加の仕組みを取り入れた。公共事業への国民の目は厳しさを増し、政府の投資額は20年で半分近くに減った。国の財政が厳しい中でどう有用な社会インフラを整備するか。長良川河口堰は今も大きな問いを投げかけている。

中日新聞 2015年7月6日 朝刊
河口堰維持に239億円 「長良川」20年
 六日で本格運用開始から丸二十年となる長良川河口堰(ぜき)(三重県桑名市)の維持管理費が、来年三月末までに総額二百三十九億円に及ぶ見通しとなることが中日新聞社の調べで分かった。河口堰は約千五百億円で建設されたが、一九九五年の運用開始後も多額の税金が投じられている。造られると、莫大(ばくだい)な費用を必要とし続ける巨大公共事業の実態が浮き彫りになった。
 維持管理費二百三十九億円のうち、国を除く愛知、三重、岐阜の三県と名古屋市が全体の77%にあたる百八十三億円を負担。愛知、三重県と名古屋市は過去二十年間、河口堰で利用できるようになった工業用水や水道水をほとんど使っていないにもかかわらず、百七十四億円を払い、一部は水道料金に転嫁されている。
 堰を管理する水資源機構中部支社(名古屋市)によると維持管理費は定員二十二人の管理所職員の人件費や設備更新費など。年によって変動はあるが、年間八億~十六億円程度かかる。
 河口堰には治水と利水の目的があり、国と東海三県、名古屋市が負担を分け合う。治水分は二〇一〇年度まで国55%、愛知、岐阜、三重県が15%ずつで、一一年度以降は国が全額負担。利水分は愛知、三重県と名古屋市が分担している。
 だが、堰建設で新たに使えるようになった最大毎秒二二・五〇立方メートルの水のうち、実際の利用は、愛知県知多半島地域の水道に毎秒二・八六立方メートルと三重県中勢地域の水道に毎秒〇・七三立方メートルの毎秒計三・五九立方メートルで、全体の16%にとどまる。計画時の過大な需要予測が原因で大幅な水余りになっている。
 残る84%の水を使うには導水路の整備が欠かせず、新たな税金投入が必要。二県一市によると、いずれも事業化のめどは立っておらず、将来使うかどうか現時点では不明だ。
 水資源機構などによると、一滴も使われていない水に対する負担の内訳は、愛知県の工業用水が四十五億円、三重県の工業用水が四十三億円、名古屋市の水道水が十三億円。工業用水分は一般会計からの貸し付けなどで賄うが、水が売れないため返済される見込みはない。水道水は水道料金に反映されている。
 使っていない水の分まで維持費を負担していることについて、愛知県は「現段階で需要はないが、将来的に使える貴重な水源」との立場。三重県の担当者も「需要が発生すれば事業化していく」と話している。
 水資源機構中部支社の担当者は「今後、利用者の必要に応じて水は使われると考えている」としている。
◆不要な公共事業典型
 <法政大の五十嵐敬喜名誉教授(公共事業論)の話>水需要の増加予測は建設当時に一部で盛り上がった中部地方への首都機能移転構想に伴うもので、根拠がない。誰も責任を取らないまま、市民がつけを払わされ続けている。不要な公共事業の典型だ。
 <長良川河口堰>洪水対策で河床を掘り下げる浚渫(しゅんせつ)に伴う海からの塩水の遡上(そじょう)を防ぐ「治水」と、水需要を満たすための「利水」の両機能を併せ持つ全長661メートルの多目的可動堰。伊勢湾の河口から上流5・4キロにある。国は1968年に基本計画を定めたが、反対運動などで着工は88年にずれ込み、95年に完成した。


朝日新聞2015年7月6日17時08分
長良川河口堰、運用開始20年 せき止め影響、議論続く
編集委員・伊藤智章
 長良川河口堰(かこうぜき、三重県桑名市)は6日、運用開始から20年を迎えた。ゲートで流れをせき止めることによる環境への影響などをめぐり、今も議論が続く。建設当時、数百人のデモ隊やカヌーに囲まれた現場はこの朝は静かで、作業員らが魚道点検や除草をしていた。
 河口堰脇の水資源機構の現場管理所では、西川英之総務課長が利水や治水の役割を説明。「今年はアユの遡上(そじょう)数が過去20年で4番目に多かった」とするコメントを読み上げた。妻と散策に来て河口堰脇の魚道をのぞいていた岐阜市の会社員(62)は「こんなによどんでいて大丈夫かなあ」。かつて1日で30匹取った趣味のアユ釣りだが、最近はせいぜい10匹だという。
 河口堰は事業費1500億円を国、東海3県と名古屋市で負担。本流にダムのない長良川での人工構造物建設への反対が1988年の着工前後から全国に広がった。水利用は伸びず、確保した毎秒22・5トンのうち愛知、三重両県で計3・6トンにとどまっている。(編集委員・伊藤智章)
http://www.asahi.com/articles/photo/AS20150706001151.html


岐阜新聞 2015年07月05日10:00
長良川河口堰運用20年 開門めぐる議論続く
 三重県桑名市長島町の長良川河口堰(ぜき)は6日、運用開始から20年を迎える。建設費約1500億円を費やした大型公共事業は治水や利水、農地への塩害対策を掲げているが、「環境に影響を与えている」といった批判は根強く、運用20年たっても開門をめぐる議論が続いている。
 河口堰は1995年、長良川河口から5.4キロ地点に10門の調節ゲートを幅661メートルにわたって建設。洪水時の水位低下を図るため、堰上流の川底をしゅんせつしたほか、淡水化した堰上流の水を愛知、三重両県の生活用水として利用している。
 一方、市民団体などは利水が河口堰の開発水量の16%にとどまり、鮎などの生態系にも影響があると指摘。愛知県の有識者会議の専門委員会は2011年に開門調査すべきとの報告書をまとめたが、岐阜、三重県は反対しており、実現の見通しは立っていない。

読売新聞 2015年07月06日
長良川河口堰巡り市民団体がシンポ 
 長良川河口堰(三重県桑名市)の全ゲートが閉鎖し、本格運用開始から6日で20年を前に、開門調査の実現を目指す市民団体「よみがえれ長良川実行委員会」は5日、岐阜市の長良川国際会議場でシンポジウムを開いた。約250人が参加し、国や東海3県に開門調査を求める宣言を採択した。

国などに開門調査の実施を求める宣言を採択した市民団体のシンポジウム(岐阜市で)
 同委員会共同代表を務める岐阜大の粕谷志郎名誉教授が「調査の実現に向けて、粘り強く民意をつくっていきたい」とあいさつ。同委員会のメンバーが、堰で確保した水のうち利用は2割に満たないことや、堰の建設後、アユの漁獲量が減少したことなど、堰の効果に対する疑問点と生態系に与えた影響を指摘した。
 また、「長良川に生きる」をテーマにした意見交換では、岐阜県羽島市の漁師大橋亮一さん(80)は「生きているうちに昔の長良川に戻してあげたい」と語った。長良川鵜飼い船の船頭・平工(ひらく)顕太郎さん(31)は「若い世代に川の恵みの素晴らしさを受け継いでいきたい」と訴えた。

しんぶん赤旗 2015年7月6日(月)
河口堰開門調査ぜひ 岐阜 閉鎖20年で長良川シンポ
 三重県桑名市の長良川河口堰(ぜき)が閉鎖されてから6日で20年を迎えるにあたり、開門調査を求める市民団体などでつくる実行委員会は、「よみがえれ長良川」と題し、4日に現地観察会、5日に長良川国際会議場(岐阜市)でシンポジウムなどを行いました。
 シンポ会場には300人が集まりました。パネリストは熊本県の荒瀬ダム撤去運動に取り組んだ、つる詳子・自然観察指導員熊本県連絡会会長、茨城県の霞ケ浦導水事業見直し運動をしている浜田篤信・元茨城県内水面水産試験場長、長良川の魚類に詳しい向井貴彦・岐阜大学准教授の3氏が務めました。
 向井氏は、ゲートが閉まり海へ移動する魚が減り、ヨシ原も激減したことを紹介。「20年もたてば多くの人が『こんな川だろう』と良さを忘れてしまうと当局は思っているのでは」と語り、若い人に川をよくできることを理解してもらう重要性を語りました。
 つる氏は、漁民、市民、農民それぞれのたたかいが荒瀬ダム撤去の力になったと話し、「特別な例で終わらせないよう続いて」と激励しました。
 浜田氏は、茨城県を流れる利根川も水門のせいでウナギやアユが減ったことを挙げ、「連携して運動したい」と呼びかけました。
 漁師の若手とベテランのトークでは、長良川で生計が立てられるようにする思いが語られました。集会は、開門調査を求める「宣言」を採択。実行委は6日、国土交通省に要請するとしています。


岐阜新聞 2015年07月06日09:15
「川守るため、英知を」 郡上で近藤正臣さん語る
吉田川を望む別荘のベランダに立つ近藤正臣さん。「当たり前にあるのが川。なのにそれを特別と思わなきゃいけない時代になっちゃったんだね」と語る=郡上市八幡町
 二十数年前に長良川河口堰(ぜき)=三重県桑名市=建設の反対運動に加わり、運用後は上流の岐阜県郡上市八幡町に別荘を建て、鮎やサツキマスなどの姿に目を凝らす人がいる。俳優近藤正臣さん(73)だ。「川守(かわも)り」を名乗り、河口堰の影響がないか川を見守ってきた。「20年たち、堰を開けろ、開けないの議論は無駄。穏やかに苦しみを分かち合う方法を見いだすべき」と静かに訴える。
 約35年前、ドラマのロケで訪れた郡上八幡に魅せられた。「なぜかビシッと引かれてしまった。何より水が良い。そして流れる川が『生きて』いた」。休みのたびに訪れ、長良川、支流の吉田川、亀尾島川など、さおを手にあちこち出掛けた。
 河口堰の反対運動は自ら加わった。「自然保護なんて大きすぎる。単に郡上八幡でサツキマスが釣れなくなるのが嫌だった」。だが、声は届かなかった。「20年前は挫折感だよ。終わりだ、とね」
 それから約5年が過ぎ、長良川の支流・吉田川のほとりに別荘を建てることにした。「河口堰ができてもちゃんとサツキマスや鮎は戻ってきてくれているのか。せめてそれを見守り続ける『川守り』になろうと思った」
 映画にドラマ、舞台と多忙な仕事の合間を縫って別荘で川面を見つめ、遡上(そじょう)してくるサツキマスや鮎を見守ってきた。「堰をぶっ壊せという声は聞く。だけど現実的じゃない。かといって閉め切ったままでは川にとって地獄が続く」。川魚の産卵や遡上の時期に数週間単位で開門するなど、より弾力的な運用を提言する。「みんなで考えれば、きっと良い知恵がある」と期待を込める。

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