2015-07-12(Sun)

戦争法案 (14)法案採決まだ 徹底審議尽くせ 150708-11

期限切らず審議尽くせ 審議はまだ「入り口」だ 維新の対案 政権に利用されるな 与党の手助け役になるな

<各紙社説・論説>
朝日新聞)安保法制―首相の「丁寧な説明」?(7/11)
毎日新聞)安保転機を問う 民・維の対案(7/11)
東京新聞)「違憲」安保法制 審議尽くさず採決とは(7/11)
北海道新聞)新安保法制 法案採決の動き 審議はまだ「入り口」だ(7/11)
南日本新聞) [新安保法制 対案審議開始] 採決急いではならない(7/11)
信濃毎日新聞)安保をただす 地方議会 権利制限の議論深めよ(7/10)
愛媛新聞)維新が安保対案 採決ありきでない徹底審議貫け(7/10)
福井新聞)ぐらつく安保法制 日程ありきの議論は論外(7/10)
宮崎日日新聞)安保対案 全体像が見えてくる好機だ(7/10)

岩手日報) 維新の対案 「助け舟」とならぬよう(7/9)
山陽新聞)安保法制 採決を急ぐ段階ではない(7/9)
中国新聞)安保「対案」提出 期限切らず審議尽くせ(7/9)
高知新聞)【安保の対案】「出口」決めず審議尽くせ(7/9)
南日本新聞) [維新対案提出] 日程決めず審議尽くせ(7/9)
信濃毎日新聞)安保をただす 維新の対案 政権に利用されるな(7/8)
徳島新聞)維新の安保対案 政府案採決の具にするな (7/8)
西日本新聞)維新の安保対案 与党の手助け役になるな(7/8)




以下引用



朝日新聞 2015年7月11日(土)付
社説:安保法制―首相の「丁寧な説明」?


 安倍首相の国民への説明は「丁寧ではない」が69%。「丁寧だ」は12%。朝日新聞の6月の世論調査の結果である。
 安全保障関連法案について、政府与党は来週の衆院採決をめざしている。だが、この期に及んでも国民の理解は進んでいない。そんな現状を打破すべく、首相が自民党のインターネット番組に出演している。「安倍さんがわかりやすくお答えします! 平和安全法制のナゼ? ナニ? ドウシテ?」
 どのような説明がなされているか。たとえば、集団的自衛権についてはこうだ。
 「不良が、安倍晋三は生意気なやつだから今夜殴ってやろうと言っている時に、友達のアソウさんが、俺はけんかが強いから守ってやるよと一緒に帰る。そこに3人ぐらい不良が出てきて、私の前にいたアソウさんをまず殴った。で、私もアソウさんをまず守る。これが昨年の憲法解釈を見直す時に、限定的にできますね、と認めたこと」
 抑止力については「戸締まりをしっかりしていれば泥棒や強盗が入らない。隣のお宅に泥棒が入ったのがわかったら、すぐに警察に連絡する。そういう助け合いがちゃんとできている町内は犯罪が少ない。これがいわば抑止力」。
 複雑な国家間の関係を単純化する。わかりやすいかどうかはさておき、戦後日本の平和国家としての歩みを一大転換させる法案の説明にふさわしいたとえ話だろうか。聞けば聞くほど、ナゼ? ナニ? ドウシテ?が頭をもたげてくる。
 国民の「わからない」は「わかりたい」の裏返しでもあるはずだ。
 首相は「丁寧に説明したい」と繰り返すが、国会で個別事例に即した議論を迫られると、政府見解を長々と説明したりはぐらかしたりヤジを飛ばしたり。「説明は全く正しいと思いますよ、私は総理大臣なんですから」と言ってのけたことも。
 首相は何か、思い違いをしているのではないか。
 異なる意見を持つ者の間に橋を架ける。それが政治の、とりわけ首相の大事な仕事だ。
 そのために、数におごらず、「身内」ではない批判者や反対者の疑問や不安を真正面から受け止め、理を尽くし、情を傾けて説得する。すべての人の同意は得られなくても、橋を架ける努力をしたという事実は「次」への土台として残る。
 架橋を放棄し「身内」だけで編んだ綱は太く見えても弱く、短い。その上を渡るがごとき首相の政治姿勢は危うい。
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毎日新聞 2015年07月11日 02時34分
社説:安保転機を問う 民・維の対案


 ◇重要な論点が出された
 安全保障関連法案について、民主党と維新の党が国会に提出した対案と政府案との並行審議が始まった。
 両党が共同で提出した領域警備法案は、沖縄県・尖閣諸島に武装した漁民が上陸した場合などを想定し、自衛隊と警察、海上保安庁の連携を強化するものだ。現行法の枠内での運用改善にとどめた政府の考え方と開きがあり、議論を深めてほしい。
 武装集団による離島への不法上陸や、領海内での外国軍艦による違法な航行のように、日本への武力攻撃に至っていないが、純然たる平時ともいえない「グレーゾーン事態」が起き、警察や海上保安庁では対応しきれない場合にどうするか。
 政府・与党は、法整備を検討したこともあったが、議論が分かれたため、自衛隊に「海上警備行動」や「治安出動」を命じるための閣議決定を電話でもできるようにして迅速化することで落ち着いた。
 これに対し、領域警備法案は、領海や離島の警備は警察や海上保安庁の対応を原則としながらも、対応できない場合に備えて、あらかじめ「領域警備区域」を指定する。これにより、自衛隊が区域内で情報収集や不法行為への対応ができるようになる。区域内で事態が悪化して、自衛隊に海上警備行動や治安出動を命じる場合でも、現行法のような閣議決定は必要としない。
 領域警備法案には、自衛隊と警察機関の連携強化を明確にすることや、基本方針の策定など、評価できる点もある。だが、自衛隊の行動のハードルを下げることは、中国との緊張を「軍事対軍事」へエスカレートさせる危険性をはらむ。重要な論点であり、慎重な検討が必要だ。
 また、自衛権の行使や他国軍への後方支援などをめぐって、維新が単独で提出した対案についても、さらに突っ込んだ議論をすべきだ。
 維新は、集団的自衛権の行使を認めた政府案について、行使の前提となる新3要件はあいまいで、違憲の疑いがあると指摘する。そのうえで維新案は、日本への武力攻撃が発生する明白な危険がある「武力攻撃危機事態」に武力行使を認める。
 中東での機雷掃海のような活動は、維新案では不可能だ。しかし、集団的自衛権の行使や、憲法解釈変更を含む昨年の閣議決定を認めたものか否かは、判然としない。法案の根幹にかかわるだけに、はっきりさせてほしい。
 野党の対案がようやく出され、審議が始まったばかりである。政府・与党は来週にも衆院の特別委員会で関連法案を採決する方針というが、論外だ。徹底審議を求める。
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東京新聞 2015年7月11日
【社説】「違憲」安保法制 審議尽くさず採決とは


 憲法違反との指摘が相次ぎ、対案が提出されたにもかかわらず、なぜ成立を急ぐのか。戦後日本の専守防衛政策を根本から変える法案である。審議を尽くさないまま、採決に踏みきるべきではない。
 衆院平和安全法制特別委員会はきのう、政府提出の安全保障法制関連法案に加え、民主、維新両党が共同提出した武力攻撃に至らない事態に備える「領域警備法案」と、維新が単独提出した対案についても審議を始めた。
 とはいえ、政府・与党は、集団的自衛権の行使に道を開く政府提出法案がどれだけ違憲と指摘されても、法案の撤回や廃案、修正に応じるつもりは全くないようだ。
 首相は特別委で領域警備法案について「必要と考えていない」と一蹴、維新の対案についても、高村正彦自民党副総裁は維新との協議後、「画然とした差がある。埋めるのは大変だ」と語っている。
 政府・与党の関心はもはや、議論を深めることよりも特別委の審議をいつ打ち切り、衆院を通過させるかにあるのだろう。
 首相は特別委で「委員会で議論が深められ、時期が来れば採決することが民主主義の基本だ」と述べ、谷垣禎一自民党幹事長もきのうの党役員連絡会で「来週はヤマ場だ」と述べた。政府提出法案を早ければ十五日に特別委で、十六日に衆院本会議で可決し、参院に送付したい考えのようだ。
 首相が、米連邦議会で夏までの安保法案成立を約束したことが、それほど大事なのだろうか。憲法順守を求める日本国民と米国の、どちらを向いているのか。
 憲法学者の多くや世論調査では国民の過半数が「憲法違反」として反対する法案である。対案も含めて慎重に審議し、日本の安全保障のあるべき姿についての議論を尽くすべきではないのか。
 本紙のアンケートでは、回答した憲法学者二百四人のうち、九割に上る百八十四人が政府提出法案を違憲と断じている。
 菅義偉官房長官は「どのような意見が多数派か少数派かは重要ではない」と述べた。数に意味がないというのなら、与党多数の数の力を頼りに、法案成立を押し切ることがなぜできるのか。
 歴代内閣が堅持してきた、集団的自衛権の行使を違憲とする憲法解釈を一内閣の判断で変えた上、国民多数の反対を顧みずに安保法案を成立させようとする。憲法が権力を制限する立憲主義を、二重の意味で蔑(ないがし)ろにする行為である。断じて許すわけにはいかない。
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北海道新聞 2015/07/11 08:50
社説:新安保法制 法案採決の動き 審議はまだ「入り口」だ


 民主党と維新の党が提出した安全保障関連法案の対案の審議がきのう、衆院特別委員会で始まった。
 対案をめぐる論戦は政府案の問題点をあぶり出すことにもつながる。徹底的な審議が必要である。
 ところが政府・与党は、法案の来週の衆院通過に向けた動きを強めている。
 特別委では政府案が合憲か否かという「入り口」の議論が続いた。このため計11本に上る関連法案の具体的な内容に関する審議はほとんど進んでいない。
 各種世論調査では、法案についての政府の説明は不十分であり、今国会での成立には反対だとする声が強い。多くの地方議会も法案に反対したり慎重審議を求めたりする意見書を可決している。
 こうした民意を無視して採決を強行することは許されない。
 与党は関連法案の審議時間がきのうで100時間を超えたとして、15日に特別委、16日に本会議で採決し、衆院通過を図る構えだ。
 採決の前提は審議時間ではなく、議論が尽くされたかどうかだ。現時点では全く不十分である。
 野党側が法案は違憲だと指摘しているのに対し、政府側が納得いく反論をできていないからだ。
 安倍晋三首相はきのうの審議でも、合憲の根拠として1959年の最高裁砂川事件判決や、72年の政府見解を持ち出した。
 多くの憲法学者が指摘する通り、これらが合憲の根拠とならないことは既に明らかだ。法案の土台への疑義を拭えない以上、撤回して提出し直すのが筋である。
 関連法案は集団的自衛権行使のほかにも他国軍の後方支援拡大や、国連平和維持活動(PKO)での武器使用基準緩和など憲法に抵触しかねない内容がある。これら重大な論点も置き去りのままだ。
 与党は13日の中央公聴会実施で採決の環境は整うとしている。
 公聴会は有識者から意見を聞き、議論を深めるためのもので、採決への通過手続きではない。
 政府・与党は維新が反発して欠席し、与党単独の強行採決になるのを避けるため、採決を延ばすことも想定している。
 ただ参院が議決しない場合に衆院で再可決・成立させる「60日ルール」適用を視野に、事実上の期限となる24日までには衆院を通過させる方針だ。
 違憲の疑いが強い法案を数の力で押し切り、憲政史上に汚点を残すことがあってはならない。
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南日本新聞 ( 2015/7/11 付 )
社説: [新安保法制 対案審議開始] 採決急いではならない


 政府の安全保障関連法案に関して、維新の党や民主党が提出した対案との並行審議が衆院特別委員会で始まった。
 維新の対案は米軍への武力攻撃に対し、集団的自衛権ではなく個別的自衛権を拡張して防護することなどが柱である。
 与党は「先制攻撃になってしまう。国際法上は集団的自衛権だ」などと批判した。
 維新側は党内での認識の不一致をうかがわせた。
 対案提出者の小沢鋭仁氏は与党の指摘をおおむね認めたのに、幹事長の柿沢未途氏が明言を避けたからだ。
 集団的自衛権か個別的自衛権かで党内の認識が分かれていては、議論はかみ合わない。維新は見解の統一を急ぐ必要がある。
 国の存立に関わる安全保障問題で野党が対案を出すことに異存はない。
 維新の対案は、経済的危機を理由にした自衛隊の出動を認めず、その活動範囲に地理的制約を維持するものだ。国連決議に基づく平和協力では他国軍への武器や弾薬の提供も禁じた。
 政府案を否定する内容が多いが、危惧される点もある。
 与党は、維新が民主と共同提出した「領域警備法案」について問題視している。
 自衛隊が離島で不法行為の予防などにあたることが、逆に緊張を高めかねないとの指摘だ。
 自民党の高村正彦副総裁は維新との協議後、政府案の修正は困難という認識を示した。
 与党は、政府案を15日に特別委で、16日に本会議で採決し衆院を通過させる日程を崩していない。
 本音は日程ありきなのに、強行採決との非難を避けたいのだろう。政府案と対案の採決への参加を維新に求めている。
 しかし、維新が採決に参加したからといって、審議を尽くしたとは言えない。
 きのうの特別委で安倍晋三首相は、朝鮮半島有事の際の集団的自衛権行使の条件について、「邦人輸送中の米艦が攻撃される明白な危険がある時点で認定し得る」と答弁した。以前は「(相手国の)ミサイル発射の段階」と答えており、変更した形だ。
 こうした集団的自衛権の行使要件となる「存立危機事態」の定義さえ曖昧なのである。
 与党は、参院に送付した法案を議決しない場合に衆院で再可決する「60日ルール」を念頭に、採決を急いではならない。
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信濃毎日新聞 2015年07月10日(金)
社説:安保をただす 地方議会 権利制限の議論深めよ


 集団的自衛権の行使に道を開く安全保障関連法案に対し、全国の地方議会で懸念が広がっている。
 県内の市町村議会では6月定例会などで法案に反対したり、慎重審議を求めたりする意見書の可決が相次ぎ、きのうまでに54件になった。
 77市町村の過半数が反対、慎重の意思を示したことになる。
 県議会では法案撤回を求める意見書案は賛成少数で否決されたものの、慎重審議を求める意見書が可決されている。
 意見書には安倍晋三政権との距離感の違いや表現の濃淡もある。しかし、法案への理解が深まっていない現状を踏まえ、特定秘密保護法のときのような民意軽視の強行成立は認められないとの立場は共通している。
 政府・与党は来週にも衆院採決の構えでいる。国民に丁寧に説明し、理解を得るとしていた姿勢はもはやない。住民に近い地方議会からの「待った」の声に耳を傾けるつもりはないのか。
 安保法案に関しては、憲法違反との指摘をはじめ、審議するほどに問題点が出ている。国民生活への影響や基本的人権侵害への懸念も解消されていない。
 私たちの暮らしに関わってくる国民保護法もそうだ。有事における地方自治体の責務や国民の協力などを規定した法律である。
 小泉純一郎政権下で有事法制の一つとして整備された。有事体制への協力は自発的意思とはしているものの、国民の諸権利が制限される恐れが拭えない。
 自民党の高村正彦副総裁は今年1月、集団的自衛権を行使した場合、国民保護法の適用が想定されるとの認識を示した。
 安倍政権は当初、今回の安保法制整備で保護法の改定も検討していた。ところが、法案提出前に対象から外された。
 仮に改定案が出ていたら地方自治体の責務や住民の協力がどうなるか、暮らしの面から厳しく追及されているはずだ。安保法案を通しやすくするため、突っ込みどころを隠したともみられる。
 地方議会は保護法と安保法案の関わりについても議論を深める必要がある。地方自治体や住民が有事の際にどのような形で動員されるか、身近で切実な問題として理解できるのではないか。
 各議会は意見書にとどまらず、地方や暮らしの視点から法案の問題を掘り下げてほしい。
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愛媛新聞  2015年07月10日(金)
社説:維新が安保対案 採決ありきでない徹底審議貫け


 維新の党が、政府の安全保障関連法案の対案となる2法案を衆院に提出し、おととい審議入りした。集団的自衛権の行使ではなく、個別的自衛権の範囲を拡大して対処するのが柱だ。
 与党は政府案との隔たりが大きいとして、修正協議を見送る方向で調整に入った。来週中に政府案を衆院通過させる方針だという。到底容認できない。
 維新案は、集団的自衛権行使を容認した閣議決定の撤回を突きつけたともいえる。安倍政権がこだわる中東ホルムズ海峡の機雷掃海は認めず、他国軍の後方支援は従来の「非戦闘地域」に限定した。武器・弾薬提供を禁じた点も政府案と異なる。議論のたたき台として評価できよう。時間をかけて議論を深める姿勢を与野党に強く求める。
 与党が採決を急ぐ背景には、参院が議決しない場合に衆院で再可決できる「60日ルール」がある。9月27日まで大幅延長された国会で、会期内にできるだけ早く、確実に成立させるには来週中の衆院通過は譲れないというわけだ。身勝手な筋書きと言わざるを得ない。
 与党幹部からは、審議時間の蓄積を理由に採決環境が整ったとの発言が相次ぐ。肝心なのは中身だ。「同じ質問、同じ答弁が繰り返されている」とも言うが、その状況をつくり出しているのは真摯(しんし)に答えない政権側だと肝に銘じてもらいたい。
 衆院特別委員会で審議入りした際、自民の浜田靖一委員長は「強行(採決)するつもりは全くない」と言い切ったはずだ。与党は野党が1党でも採決に応じれば「強行ではない」と、維新に秋波を送ってきた。再可決ありきで採決日程を一方的に決める姿勢が、すでに「強行」だと自覚しなければなるまい。
 政府案への国民の懸念は強まっている。「憲法違反」との批判に政府与党は反論するが、その根拠が1959年の砂川事件最高裁判決と72年の政府見解では話にならない。どちらも「必要最小限度の自衛措置」を認めたとはいえ、個別的自衛権に限るのは内閣法制局の解釈からも明らかだ。歴代内閣が72年見解を基に「集団的自衛権は行使できない」との立場を積み重ねたことを忘れてもらっては困る。
 気掛かりなのは、維新の分かりにくい対応だ。二つの対案とは別に「領域警備法案」を民主党と共同提出したが、今月末の採決を与党に求めるよう持ち掛けたため足並みが一時乱れた。政府案の採決を先送りさせて60日ルールを封じる戦術だとしても、採決容認を前提とすれば政府与党を利することになる。
 労働者派遣法改正案の審議を思い起こしたい。維新は民主などと共同提出した同一労働同一賃金推進法案を単独で与党と修正し、改正案の採決に応じた。結果的に与党に手を貸したことを省みる必要があろう。
 同じ轍(てつ)を踏むようだと、国民の信頼を大きく損なうのは必至だ。維新は徹底審議の姿勢を貫かなければならない。
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福井新聞(2015年7月10日午前7時25分)
論説:ぐらつく安保法制 日程ありきの議論は論外


 多くの学者らが憲法違反と断じ、国民の理解も得られない安全保障関連法案の国会審議に関し、政府、与党は16日に衆院通過を目指す構えだ。批判に終始していた野党側も、維新の党と民主党が対案を衆院に共同提出した。戦後70年、日本の安全保障政策を大転換する重要法案だ。日程ありきで成立を急ぐ強権力行使は許されない。
 2党の共同提出案は、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態への対処を重視した「領海警備法案」。中国の海洋進出などを念頭に、尖閣諸島に上陸、占拠した武力勢力に対し、自衛隊と海上保安庁、警察が連携して排除する内容だ。日米同盟による集団的自衛権行使を軸とした政府案との違いを強調している。
 維新単独の2法案は自衛隊の活動を限定。政府が集団的自衛権行使の要件とする「存立危機事態」に代わり「武力攻撃危機事態」を創設し、個別的自衛権の範囲拡大で対処するのが柱。安倍晋三首相がこだわる中東・ホルムズ海峡での機雷掃海は対象外となる。
 ただ日本が攻撃されていないケースでも個別的自衛権が根拠になり得るか、維新党内にも異論がある。岸田文雄外相は8日の衆院特別委で、朝鮮半島有事の際、日本防衛のため公海上で警戒中の米艦船を個別的自衛権の拡張で守るのは国際法違反になると明言。対案を事実上否定している。こうした疑問点を含め、時間を割いて議論するべきだ。
 国会審議を見れば、安倍政権が集団的自衛権の「厳格な歯止め」とする「武力行使の新3要件」に関し、安倍首相や閣僚が曖昧発言を繰り返す。行使の具体的要件について首相は「政策的な中身をさらすことになる。いちいち全てを述べるような海外のリーダーはほとんどいない」と述べた。
 確かに、軍事戦略上は当然といえる発言かもしれない。だが安保法制が拡大解釈され、どこでも戦争のできる「普通の国」になることへの厳格な歯止めを議論するのが国会の努めだ。曖昧さは国民理解を遠ざけるだけであろう。
 今後、採決時期が焦点になるが、民主党は日程の協議自体に反対だ。維新の松野頼久代表は「国民の理解が得られないまま衆院で採決するのは認められない」とするが、党内には政府案と対案の7月末以降の採決日程も含め与党側との交渉を主張する意見がある。
 与党側は9月27日の会期末を念頭に、参院で議決されない場合、衆院で再可決・成立させる「60日ルール」が適用できるよう衆院通過を急ぐ構え。法案修正にも応じない方針だ。
 しかし、衆院特別委が沖縄で開いた参考人質疑では法案賛成の2人からも慎重審議を求める意見が出た。全国の300を超す地方議会が「反対」「慎重」を求める意見書を可決している。国連平和維持活動(PKO)協力法の成立にも3国会を費やしたはずだ。安倍首相が「50年間、100年間通用する法案だ」と強調するなら、国会をまたぐことに何の不都合があろう。
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宮崎日日新聞 2015年7月10日
社説:安保対案 全体像が見えてくる好機だ


 安全保障関連法案に対する野党の動きが見られた。維新の党、民主党は共同で「グレーゾーン事態」に対処する「領域警備法案」を衆院に提出した。また維新は、政府案よりも自衛隊の活動を限定する2法案を独自に提出した。
 与党は、対案提出に伴う政府案の修正は衆院段階では困難との姿勢を見せている。採決が遅れかねないとの懸念があるためだ。対案は多様な切り口から議論する機会を生む。採決日程優先ではなく、国民が法案について考えられる環境づくりを優先するべきだ。
自衛権の解釈で相違
 領域警備法案は、他国からの武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」に対処するためのもので、活動区域をあらかじめ決めて迅速に対応できるようにする内容だ。
 維新独自の対案は、政府案が集団的自衛権行使の要件とする「存立危機事態」に代わり「武力攻撃危機事態」を創設する。日本周辺で日本防衛のために動いている米軍への攻撃には、個別的自衛権の拡大で対応する考え。安倍晋三首相が主張する中東・ホルムズ海峡での機雷掃海は、対象外となる。
 周辺事態法に関しては、地理的概念を撤廃する政府案と異なり、対案は自衛隊活動の地理的制約など現行法の基本部分を維持する。
 これらの案には、自衛隊の権限拡大となり逆に緊張状態を増幅する懸念はないのか、日本が攻撃されていないのに個別的自衛権が根拠になり得るのか-など指摘がある。なぜこういった案を作成したのか狙いや内容について説明を聞く時間や、妥当性を十分に検討する時間が必要だろう。
 両党には与党側が描く採決日程にどう対応するのか考え方に隔たりがあり、批判合戦も起きたが、瀬戸際で共闘が維持された形だ。
採決日程優先するな
 野党からの対案が出たことで、政府案をさまざまな角度から考えるきっかけが生まれたと言える。
 共同通信の世論調査によると、安倍政権が法案について「十分に説明しているとは思わない」と答えた割合は84%に上っている。これまでの説明方法では、国民に内容が伝わらなかったのだ。
 対案と政府案の比較を通じ、何が論点になっているのかが浮き彫りになる可能性は高い。審議を尽くすことで、ようやく国民には全体像が見えてくるのではないか。
 しかし政府、与党は法案修正は困難との認識を示している。衆院平和安全法制特別委員会で15日に政府案を採決し、16日の衆院本会議で可決、通過を目指す方針だ。
 県内では8日までに5市町議会で、法整備反対や慎重審議を求める市民団体の請願や議員発議の意見書が可決された。6市町は請願書などを継続審議としている。
 しっかりと国民に根付いた議論ができたと、与党は胸が張れるのだろうか。国会の焦点は採決をめぐる駆け引きに移っている。国民はそのスピードから置き去りにされていないか。
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岩手日報 (2015.7.9)
論説:維新の対案 「助け舟」とならぬよう


 維新の党が8日、一部を民主党と共同で衆院に提出した安全保障関連法案の対案は、その中身より提出という行為自体の意味が問われよう。
 対案は、政府が集団的自衛権行使の要件とする「存立危機事態」に代わり「武力攻撃危機事態」を新設。現行憲法下で許容される個別的自衛権の範囲を拡大して対応することを柱とする。
 政府案策定を主導した自民党の高村正彦副総裁は、政府案との隔たりは大きいとの認識を示している。政府案は、従来の憲法解釈を変更して集団的自衛権行使を可能とした昨年7月の閣議決定が土台だから、当然の反応だ。
 政府側が折れる可能性は、まずあるまい。政府、与党は対案の「丁寧な審議」をうたいながらも特別委で15日に採決、翌16日の衆院本会議で可決する方針を崩していない。
 安倍晋三首相らが維新の対案を歓迎するのは、それによって審議が加速し、与党単独での「強行採決」との世論の批判を回避できるからだ。
 それよりも大きな利点が政府、与党にはある。安保法案と憲法との整合性をめぐる議論が、うやむやになってしまうことだ。
 6月初めの衆院憲法審査会で、参考人として招かれた憲法学者全員が「違憲」と断じて以降、国民各層に拡散した疑念は根強い。直近の共同通信世論調査では「法案は憲法違反」との回答が56・7%。「法案に反対」も58・7%に上り、前回調査を11・1ポイントも上回った。
 これに対し政府側は「正当性を確信している」(安倍首相)などと抽象論に終始。憲法解釈の変更について、同首相が安全保障環境の変化を論拠にするのは、最高法規の権威や国民の規範意識をおとしめこそすれ説得力はない。
 違憲の疑いに合理的な説明を欠く現状で提出された野党側の対案は、政府、与党に早期採決の口実を与える「助け舟」となりかねない。
 そうした懸念を押して維新が対案提出に踏み切った理由は、党最高顧問の橋下徹大阪市長のツイッターに見受けられる。いわく「野党は政府与党に対案をぶつけ、それを無視した与党にダメージを与える王道を歩むべき」。与党の対応次第で、審議拒否や採決拒否の可能性を示唆する。
 対案を十分審議しないのであれば拒否の理由が立つ-というのが橋下氏の理屈だが、世論の問題意識は各論ではなく、政府案自体の「違憲性」という根本にある。それを置き去りにして拒否に走っても国民には何の益もない。
 問題は、政府案と対案を比較する以前。審議は憲法問題に焦点を絞り、議論を尽くすべきだ。「スケジュールありき」など、とんでもない。
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山陽新聞 (2015年07月09日 07時41分 更新)
社説:安保法制 採決を急ぐ段階ではない


 安全保障関連法案の採決をめぐる与野党の駆け引きが活発化している。きのう、維新の党などが対案を示し、十分な審議時間を確保するよう求めた。これに対して自民党は来週の衆院可決を目指している。審議は大詰めを迎えているが、議論の中身は消化不良と言わざるを得ない。
 法案は5月末に審議入りした。与党は過去の安保関連法案の例を参考に、80時間の審議を目安に採決する目算だった。今月初めに既に80時間を超え、谷垣禎一自民党幹事長は「新たな論点が出ているわけでもない。出口を探る時期だ」と述べている。
 だが、これまでの議論を見る限り、出口が見えたとは言い難い。当初から指摘されてきた法案の曖昧さが解消されていないためだ。
 例えば海外での武力行使について安倍晋三首相は、中東・ホルムズ海峡での機雷除去を例外とした上で「他国の領海や領土に入っていくことは一般に許されない」とした。だが、中谷元防衛相は「武力行使の新3要件を満たせば、他国領域での武力行使は可能」と言う。その後、首相は中谷氏と同様の見解を示しており、自衛隊が海外で武力行使する「例外」が他にも広がるのかどうか分かりにくい。
 首相が集団的自衛権行使の典型例として再三挙げているのが、朝鮮半島有事で日本に避難する邦人を運ぶ米艦を防護するケースだ。これについて横畠裕介内閣法制局長官は、単に米輸送艦が攻撃を受けることが行使を容認する新3要件に当たるものではないと述べた。攻撃国の言動から日本にも武力攻撃が行われかねない状況が存在することが前提となるという見解だ。集団的自衛権行使に踏み切る要件を判断する難しさが明らかになったといえよう。
 維新の党が示した対案は、日本を守るために日本周辺で活動中の米軍が攻撃され、次は日本が攻撃される危険が明らかな場合を「武力攻撃危機事態」とし、個別的自衛権の範囲を拡大して米軍を守れるようにする。自衛隊が他国軍を後方支援する場合の「周辺事態」という地理的概念も維持し、対象を朝鮮半島有事に絞ってホルムズ海峡での機雷除去活動は除外する。
 与党は対案を丁寧に審議するとしつつも、来週中に採決する構えを崩していない。対案と比較することで議論を深めることができるのではないか。先を急がず、まずは対案を吟味すべきだろう。
 衆院憲法審査会で先月、憲法学者から政府の安保法制を違憲とみなす意見が相次ぎ、法案自体の議論は希薄になった。日本を取り巻く具体的な脅威を踏まえた上で、どんな場合に自衛隊がどう対処するのかという綿密な検証はまだ足りていない。自衛隊の海外展開に歯止めはかかるのか、他国の戦争に巻き込まれないかといった国民の本質的な疑問にも、政府は説得力のある答えを示すべきだ。
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中国新聞 2015/7/9
社説:安保「対案」提出 期限切らず審議尽くせ


 安全保障関連法案をめぐる与野党の動きが風雲急を告げている。きのうは民主党と維新の党が衆院に「対案」を提出した。
 集団的自衛権を容認する政府提出の法案は多くの憲法学者から「違憲」と指摘されているにもかかわらず、与党側は早ければ15日にも衆院の特別委員会での採決を図ろうと前のめりだ。
 「60日ルール」を意識しているのは間違いない。参院で議決されなくても再議決するためには、7月下旬を衆院通過のリミットとみているようだ。
 対案は、そうした拙速な審議に「待った」をかけ、より多角的な議論を促そうとしている。野党の役割を一定に果たすものといえるだろう。
 対案の中身は政府案と同様、複雑で多岐にわたる。
 維新の対案の柱は、政府案が集団的自衛権行使の要件とする「存立危機事態」に代えて設けた「武力攻撃危機事態」である。対象を日本周辺に限定し、そこで日本を守るために活動する外国軍への武力攻撃があったケースを想定している。日本への攻撃はまだないが、その明確な危険がある事態を指しているのだという。
 維新の側は「個別的自衛権を拡大した概念」と説明する。疑問が残る内容だが、集団的自衛権を容認する政府案と大きな隔たりがあるのは間違いない。中東・ホルムズ海峡での停戦前の掃海活動など、経済的危機を理由とした自衛権の行使も認めていない点も目を引く。
 一方、民主と維新が共同提出した「領域警備法案」は、日本への武力攻撃には至らないが、警察では対応できない「グレーゾーン事態」に備えるものだ。尖閣問題への対応が念頭にあるらしい。自衛隊と海上保安庁、警察の連携をスムーズにするのが狙いだが、グレーゾーンは一触即発の戦闘につながりかねない。こちらも政府案と違う点があり、突っ込んだ論議が必要なのは言うまでもない。
 だが、与党の側は両党の対案を踏まえた政府案の修正は見送り、このまま採決に突っ走る姿勢だ。それでいいのか。政府・与党はこの法案の審議時間の目安に80時間を挙げてきたが、野党案もそれと同じくらいの時間をかけてもおかしくはない。
 数の力に甘んじ、異論に耳を貸さずに押し通していいのか。おごりが過ぎよう。
 6月下旬の世論調査では、安保法案を「違憲」とみる人が半数以上を占め、「十分に説明しているとは思わない」と答えた人は8割を超えている。政府案だけに限っても決して審議が尽くされたとはいえない。
 採決をめぐる駆け引きが激しくなる中で、維新の姿勢も気掛かりだ。対案を民主と共同提出するに当たり、いったん物別れに終わった。審議時間を確保するために、採決の日程を与党側と擦り合わせることや、採決の際に特別委の出席を民主側に求めたからだという。
 政府案の議論が明らかに不十分であり、対案の審議の行方も見通せないまま、採決ありきで与党に協力するのは国民に対して不誠実だろう。
 野党が採決を欠席し「強行採決」となるのを避けたい政府・与党の思惑に安易に手を貸していいのか。国の根幹に関わる法案である。期限を切らずに徹底的に議論するほかない。
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高知新聞 2015年07月09日08時13分
社説:【安保の対案】「出口」決めず審議尽くせ


 維新の党が安全保障関連法案の対案となる2法案を衆院に提出した。他国からの武力攻撃に至らないグレーゾーン事態に対処する「領域警備法案」も民主党と共同で提出した。
 安保法案の論議を深める上では無意味とは言えまい。
 自民、公明の与党は安保法案を16日に衆院通過させたい意向だが、国民の理解が得られない中での採決は拙速だ。「出口」を決めず、対案を含めて徹底的に審議するよう求める。
 維新の対案の柱は政府が集団的自衛権行使の要件とする「存立危機事態」に代わって、「武力攻撃危機事態」を設けることだ。
 具体的には日本を守るために日本周辺で活動している米軍が他国から攻撃され、次は日本が攻撃されるという危険が明らかな事態を指す。その際、米軍を守るため武力行使できるとする。
 政府案の存立危機事態では武力攻撃の対象が「日本と密接な関係のある他国」となっている。これに対し維新案は「日本周辺で活動する米軍」と、より限定されている。
 維新案は「日本が攻撃される危険性がある」ことを条件としているが、政府案は日本に「戦禍」が及ぶ可能性があればよい。
 戦禍とは何か。政府は中東・ホルムズ海峡に機雷がまかれ、日本に原油が入らなくなるケースなども想定している。だが維新案は経済的危機を理由とした武力行使は認めていない。
 周辺事態法改正案に関しても、自衛隊活動の地理的制約を維持し米軍以外の支援はできないとする。他国軍の後方支援を随時可能にする恒久法「国際平和支援法案」の対案では、自衛隊の活動地域などを従来の「非戦闘地域」に限る。
 総じて、政府案に比べ法律の適用を厳格化する内容と言えよう。
  個別的自衛権を拡大
 最大の特徴は武力攻撃危機事態における武力の発動も、集団的自衛権の行使ではなく「個別的自衛権の拡大」で対応するという点だ。
 安保法案は、憲法解釈の見直しで集団的自衛権の行使を認めた昨年7月の閣議決定に基づいている。維新の対案はその根幹を揺るがすだけに政府案との隔たりは大きい。
 対案が出ることで、国民にはこれまで分かりにくかった安保法案の論点が一定、整理しやすくなるといった利点もあるかもしれない。とはいえ、維新案の「個別的自衛権の拡大」は憲法や国際法に照らして問題はないか。国会で吟味する必要がある。
 にもかかわらず対案提出から約1週間で採決というのは乱暴に過ぎよう。「野党は反対だけでなく対案を示すべきだ」と与党は言い続けてきたが、いざ出てきた案は形だけの審議にとどめる。これでは最初から「結論ありき」と批判されても仕方ない。
 与党側には対案の審議を通して安保法案の採決に維新の党の参加を促し、「強行採決」の批判を和らげたい狙いが指摘されている。
 実際、同党は労働者派遣法改正案をめぐり、与党と関連法案の修正協議を実施。派遣法改正案には反対しながら採決には参加し、法案の衆院通過に道を開いた。安保法案で同様の「妥協」を繰り返せば、多くの国民の不信を増幅させかねない。
 安保法案には「違憲」の批判が今も絶えない。野党は結束してその問題点を追及し続けるべきだ。
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南日本新聞 ( 2015/7/9 付 )
社説: [維新対案提出] 日程決めず審議尽くせ


 維新の党は、安全保障関連法案の対案となる2法案を衆院に提出した。個別的自衛権の範囲を広げつつ、対象を朝鮮半島有事に絞ったのが特徴だ。
 政府案を違憲と断じた小林節慶大名誉教授は維新の対案に「合憲」という認識を示している。対案を出すこと自体は評価できるし、内容も一考の価値がありそうだ。
 気になるのは、与党が対案提出を歓迎していることだ。維新の特別委員会出席が見込めれば、「違憲」との疑念が強い政府案の強行採決を避けられ、世論の反発を薄められるとの思惑だろう。
 維新には政府案と対案の採決日程を含めて、与党側と交渉するよう主張する意見がある。与党の思惑に自ら乗るようなものではないか。採決日程を決めるより審議を尽くすことを考えるべきだ。
 維新の対案は、政府が集団的自衛権行使の要件とする「存立危機事態」に代わって「武力攻撃危機事態」を設け、個別的自衛権の範囲拡大で対処するのが柱だ。
 安倍晋三首相は「政府案と並べて審議しどちらが良いかを議論してほしい」と述べた。
 これは表向きだ。与党内に維新案を評価する意見は少ない。自民の高村正彦副総裁は、政府案との隔たりは大きいという認識だ。
 谷垣禎一幹事長は「審議時間は相当積み重なり、野党側の論点はほぼ出尽くした」と述べた。与党が採決日程を検討し始めたタイミングでの対案提出も気になる。与党に取り込まれる恐れはないか。
 実際に今国会で前例がある。労働者派遣法改正案をめぐり、民主などと共同提出した「同一労働同一賃金推進法案」を維新は与党と修正した。その結果、法案の根幹部分が事実上骨抜きにされた。
 再び与党を助ける役回りを演じてはなるまい。野党として責任を果たすべきだ。
 一方、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態への対処で、維新、民主が共同で「領域警備法案」を提出した。両党がぎりぎりまで調整して実現した野党連携だ。巨大与党に対抗するためのスクラムと受け止めたい。
 政府、与党は16日の衆院本会議での可決、通過を目指している。参院が議決しない場合に衆院で再可決して成立させる「60日ルール」の適用が念頭にある。
 日程ありきの国会運営は許されない。ましてや安保政策を大転換させる法案である。まず政府案と並行して対案の審議を尽くしてほしい。
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信濃毎日新聞 2015年07月08日(水)
社説:安保をただす 維新の対案 政権に利用されるな


 維新の党がきょう安全保障関連法案の対案を衆院に提出する。集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」の考え方を外すなど政府案とは隔たりの大きい中身になっている。
 与党は政府案を来週、衆院通過させる構えだ。対案をまともに審議するつもりがないのは、はっきりしている。特別委員会で採決に踏み切る材料に使われる恐れが強い。政権側を手助けする展開にしてはならない。
 きのうの執行役員会で提出を正式に決めた。衆院議院運営委員会理事会で表明し、速やかな委員会付託を求めている。
 存立危機事態に代えて「武力攻撃危機事態」という考え方を打ち出したのが一つの柱だ。日本周辺で展開する米軍が攻撃を受けた際に限り、個別的自衛権の範囲拡大で対処するとしている。安倍晋三首相がこだわる中東での機雷掃海は認めない。
 政府が地理的制約を撤廃しようとしている周辺事態法は、基本部分を維持する。武力攻撃に至らないグレーゾーン事態に対処するため自衛隊活動を強化する「領域警備法案」も提案している。
 日本が攻撃されていないのに個別的自衛権を行使できるのか、領域警備法案は必要なのか―など疑問がある。
 一番の問題は、対案提出が委員会審議に及ぼす影響だ。
 自民党の高村正彦副総裁が「対案提出は政党として責任ある態度だ」とするなど、政権側から歓迎の声が続く。一方で15日の委員会採決、16日の衆院通過を目指して環境整備を進めている。
 委員会で政府案と一緒に採決すれば、維新の出席が見込める。自民、公明両党だけで強行採決したとの批判を避けたい与党にとっては好都合だ。
 執行役員会のあいさつで、松野頼久代表は「対案を1回や2回議論して、採決するというのは応じられない」と述べている。言葉通り、与党に徹底した議論を迫る必要がある。
 採決の前提となる中央公聴会は13日の開催が衆院の特別委員会で決まっている。維新は「対案について有識者の意見を聞きたい」と賛成し、時期尚早とする民主党や共産党と対応が分かれた。
 対案が採決強行に利用されるなら、結果的に与党に加担したことになる。提出するからには党として筋を通さなくてはならない。
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徳島新聞 2015年7月8日付
社説:維新の安保対案 政府案採決の具にするな


 維新の党がきょう、安全保障関連法案の対案を衆院に提出する。
 政府案が集団的自衛権行使の要件とする「存立危機事態」に代わって「武力攻撃危機事態」を新設し、個別的自衛権の拡大で対処するというのが柱である。
 憲法違反の疑いがある政府案とは隔たりがあり、国民が抱く不安に配慮したように見える。政府案の問題点を浮き彫りにさせる意義もあろう。
 ただ、対案も集団的自衛権の行使に当たる恐れがあり、不十分だ。短期間の対案審議を経て、維新が政府案の衆院採決に手を貸すのではないかとの不信感も拭えない。
 与野党は政府案と並行して徹底審議し、議論を尽くす必要がある。
 対案が掲げる武力攻撃危機事態は<1>条約に基づき日本周辺で日本防衛のために活動している他国軍への武力攻撃が発生し<2>これにより、日本に外部からの武力攻撃が発生する明白な危険がある-と認められる事態と規定した。
 政府案は米軍以外の他国軍も対象とし、日本の「存立が脅かされる」明白な危険があることを要件としており、それよりは限定的といえよう。
 しかし、日本が攻撃を受けていないのに武力行使ができるとする点は政府案と変わらず、個別的自衛権の範囲内といえるのか疑問が残る。
 「明白な危険」の有無を判断するのも時の政権であり、政府案と同じく、範囲が拡大する恐れは否定できない。
 そうした点をどう考えるのか、維新はしっかりと説明しなければならない。
 対案は中東・ホルムズ海峡での停戦前の機雷掃海など、経済的理由での行使を認めないとした。自衛隊を地球の裏側まで派遣させないとし、他国軍への後方支援の活動範囲も、戦闘が見込まれない「非戦闘地域」に限定している。
 いずれも政府案を否定するもので、当然のことだ。
 これに対して、政府は対案提出を歓迎し、修正協議に積極的な姿勢を見せているが、とても本音とは思えない。
 歓迎しているのは、対案をある程度の時間、審議することで維新が政府案の採決に応じ、与党単独の「強行採決」になるのを避けられると期待しているからではないか。
 政府、与党は来週にも政府案を衆院通過させる日程を描いている。だが、国民の理解は得られておらず、採決することは到底許されない。
 維新の松野頼久代表や橋下徹最高顧問は、対案が国会で十分に審議されない場合、衆院採決に応じない考えを示している。
 その態度が不安視されているのは、維新が先月、労働者派遣法改正案をめぐり、与党との取引に応じて衆院本会議の採決に出席した経緯があるからだ。
 今回も同様の行動を取るようなら、党の信用は大きく傷つこう。国民が厳しい目を向けていることを、忘れないでもらいたい。
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=2015/07/08付 西日本新聞朝刊=
社説:維新の安保対案 与党の手助け役になるな


 維新の党が安全保障関連法案の対案を作成した。きょうにも衆院に提出するという。
 政府が出している安保法案は、多くの憲法学者が「違憲」と指摘するなど問題が多い。野党として対案を出し、論議の幅を広げようという姿勢は評価できる。
 対案では、政府が集団的自衛権行使の要件とする「存立危機事態」を廃し、「武力攻撃危機事態」を新設する点が注目される。
 条約に基づき日本周辺で日本防衛のために活動している他国軍への武力攻撃が発生し、日本にも武力攻撃が発生する明白な危険がある事態(武力攻撃危機事態)では、首相は自衛隊に防衛出動を命じることができる-としている。
 この案では、ホルムズ海峡での機雷掃海など、経済的危機を理由にした自衛権の行使はできない。その他の部分でも政府案に比べ、自衛隊の活動拡大に抑制的だ。
 維新の党は「憲法学者に合憲性を確認した」としている。議論に値する対案だと言えよう。
 ただ、懸念されるのは、同党の対案が政府、与党による安全保障関連法案の成立への手助けになってしまわないか、という点だ。
 安倍晋三政権は会期を大幅に延長した今国会での法案成立に執念を見せている。早ければ今月中旬にも委員会で採決し、衆院を通過させるシナリオを想定している。
 野党が徹底抗戦して与党単独の強行採決となれば、政権に対する国民の目はますます厳しくなる。維新の党と修正協議や対案審議で協力することで、採決の手順に同調してもらって「強行」のイメージを少しでも和らげたい-。これが政権の描く国会戦術であろう。
 維新の党の対案審議は本来、望ましい。しかし、それが結果的に「違憲性」が疑われる政府案を衆院通過させる格好のアシストになってしまっては元も子もない。
 維新の党が本当に合憲性にこだわっているのなら、法案の修正協議でも国会戦術でも、安易に政府や与党と妥協すべきではない。ここは野党としての本領を、筋の通った行動で発揮してほしい。
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