2015-07-15(Wed)

戦争法案 (15)  衆院採決は容認できない 150712-14

「殺し、殺される」国にするな  国民無視暴挙を許すな 採決断じて許されない 成立ではなく廃案しかない

<各紙社説・論説>
朝日新聞)生煮えの安保法制―衆院採決は容認できない(7/14)
毎日新聞)安保転換を問う 衆院審議  ◇国民無視の採決するな(7/14)
東京新聞)「安保」公聴会 違憲の指摘なぜ顧みぬ(7/14)
しんぶん赤旗)「違憲」の戦争法案 「殺し、殺される」国にするな(7/14)

秋田魁新報)安保法案衆院審議 まだ採決の時機でない(7/14)
信濃毎日新聞)安保をただす 中央公聴会 疑念は残されたままだ(7/14)
信濃毎日新聞)国民無視の暴挙を許すな 衆院採決へ(7/12)
神戸新聞)安保公聴会/採決の理由にはならない(7/14)
神戸新聞)安保と地方議会/懸念の声は全国で高まる(7/12)

山陰中央新報)安保法案/理解まだ深まっていない(7/14)
中国新聞)安保法案採決へ 数の力で押し切るのか(7/14)
高知新聞)【安保法案】広がる「NO」の意思表示(7/14)
宮崎日日新聞)安保法案 議論深めず採決は早すぎだ(7/14)
南日本新聞) [新安保政策・与野党攻防激化] 議論は深まっていない(7/14)

琉球新報)安保法制審議 成立ではなく廃案しかない(7/13)
沖縄タイムス)[安保法案 衆院攻防ヤマ場]採決断じて許されない(7/14)




以下引用



朝日新聞 2015年7月14日(火)付
社説:生煮えの安保法制―衆院採決は容認できない


 安全保障関連法案を審議する衆院特別委員会は中央公聴会を終え、いつ採決するか、与野党の攻防が激しくなっている。
 しかし、法案への国民の理解はいっこうに広がっていない。
 朝日新聞社の最新の世論調査によると、今国会で法案を成立させる「必要がある」という人は19%で、「必要はない」は66%。安倍首相による法案の説明が「丁寧ではない」という人は67%で、「丁寧」の15%を大きく上回った。
 「決めるべき時は決める」と首相はいう。だが、多くの憲法学者や内閣法制局長官OB、幅広い分野の有識者や市民団体が「憲法違反」の法案に対し、反対の声をあげ続けている。
 国民の理解が深まらない中での採決に同意することはできない。憲法論だけでなく、日本の安全をどう守っていくかの観点からも、国会での議論は多くの根本的な論点を積み残していると考えるからだ。
■憲法を外交に生かす
 一連の法案の、安全保障上の最大の目的は何か。
 米国のパワーが相対的に低下しつつある分を、自衛隊の支援によって補う。それにより、台頭する中国との軍事バランスを保つという考え方だろう。
 日中関係は確かに一筋縄ではいかない。
 だが冷戦期のソ連と異なり、中国は明確な「敵」ではない。米中は、そして日本も、経済を中心に相互依存関係にある。
 これからの日本は、中国といかに向き合うのか。この根源的な問いに答える議論が、十分になされたとは言い難い。
 何より懸念されるのは、日中の偶発的な軍事衝突がエスカレートし、拡大する事態だ。
 日米を軸とした防衛協力の信頼性を高めること。外交的に無用の摩擦を避けること。軍事的に具体的な危機管理策を整えること。それぞれに重要だ。
 そのうえで、さらに大事なことは、日中の両国民が一定の信頼感を保つことである。首脳同士がなかなか会えない現状を改めることこそ、互いの国民が安心感をもつ第一歩だ。
 戦後70年の節目の年である。韓国との関係も含め、日本の政治指導者の歴史認識をめぐる疑念が、周辺国との安全保障に影響を及ぼす負のサイクルは終わらせる必要がある。
 だからこそ、日本国憲法を日本の外交戦略の重要なツールとしたい。侵略と植民地支配の反省を踏まえ、専守防衛に徹する国際約束の意味を持つからだ。
■国力に応じた道筋を
 安全保障上、日本ができることには限りがある。
 米国が期待する南シナ海での自衛隊の活動拡大に踏み込むとなれば、日本は財政的、人的負担に耐えられるのか。肝心の日本自身の安全は守れるのか。
 人口減少、少子高齢化、巨額の財政赤字という日本の国力の現状とどう折り合えるか、ここでも国会の議論は足りない。
 南シナ海を「対立の海」にしてはならない。シーレーン防衛は本来、国際社会として取り組む課題だ。長期的には、日米豪、東南アジア諸国連合(ASEAN)、さらに中国も加える形で協力しなければ安定した地域秩序は築けない。
 そのために日本がどんな役割を果たすべきなのか。聞きたいのはそんな本質的な議論だ。
 11本もの法案を一度に通そうとする手法が、大事な論点を見えにくくしている面もある。
 中東ホルムズ海峡の機雷掃海が焦点になる一方で、尖閣を想定したグレーゾーン事態の議論は、民主党と維新の党の対案提出で緒に就いたばかり。
 海上保安庁では対応できない場合、どうするのか。自衛隊の行動を広げることが、中国との軍事的衝突へと発展する危険はないのか。日本を守るという意味で重要な論点なのに、議論はまったく生煮えのままだ。
■平和国家日本として
 国際貢献のあり方も議論が乏しい。国連平和維持活動(PKO)については、武器使用基準を実情に応じて見直すなど検討していい点もあろう。
 一方で、近年はPKOの活動が危険度を増しているうえに、法案は他国軍や民間人を助ける「駆けつけ警護」や巡回、検問など危険な任務を可能とする内容だ。現場の実情を踏まえた議論がここでも欠けている。
 戦後70年の歩みの延長線に、「平和国家日本」のブランドをどのように発展させるか。それが、日本がいま大事にすべき大きなテーマである。
 難民支援や感染症対策、きめ細かな貧困対策、紛争調停などに注力してこそ、国際社会での日本の信頼につながる。
 中東で武力行使をしないできた日本に対し、「平和国家」として一定の評価があることは、米国とは違う貢献をなしうる可能性を示している。
 違憲の疑いが濃いだけではない。安全保障の観点からも、数々の重要な論点を置き去りにした採決は決して容認できない。
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毎日新聞 2015年07月14日 02時34分(最終更新 07月14日 11時38分)
社説:安保転換を問う 衆院審議 国民無視の採決するな 


 安倍政権は、安全保障関連法案を週内に衆院の特別委員会で採決しようとしている。審議時間が100時間を超えて議論が尽くされたとしているが、単に時間が積み上がっただけで、内容は乏しい。審議が進むほど問題点が明らかになっており、採決の段階には至っていない。
 憲法学者による指摘がきっかけとなって、集団的自衛権の行使を認めた関連法案は憲法違反との批判が、国民の幅広い層に広がっている。
 同じ1972年の政府見解を用いながら、集団的自衛権の行使は「許されない」との結論を、安全保障環境の変化を理由に「許容される」へひっくり返した憲法解釈の変更は、論理的整合性がとれておらず、政府の裁量の範囲を超えている。
 政府によるこんな恣意(しい)的な憲法解釈の変更を認めることは、憲法は権力を縛るものだという立憲主義に反する。国の土台である憲法への国民の信頼は失われかねない。こうした国民の懸念に対し、政府は説得力を伴う説明ができていない。
 毎日新聞の今月初めの世論調査では、関連法案への反対は6割近くに達し、国民への説明が不十分との声は8割を超えた。審議が進むに従って反対が増えており、各種世論調査で同様の傾向が見られる。
 政府が「限定容認」だから憲法上許されるとしている点についても、歯止めはかからず、限定にならないことが浮き彫りになっている。
 我が国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある「存立危機事態」に、集団的自衛権の行使が許されるという要件は、極めてあいまいだ。
 野党が追及しても、政府は最後には「情報を総合し、客観的、合理的に判断する」と繰り返す。政府による拡大解釈がいくらでも可能だ。
 政府は昨年7月、集団的自衛権の行使容認を閣議決定したが、その後、沖縄県知事選などへの影響を考えて関連法案を国会に提出しなかった。法案が提出されて審議が始まったのは、閣議決定から1年近くたった5月26日になってからだ。
 それからわずか1カ月半で採決しようというのは、あまりに乱暴だ。民主党と維新の党の対案は、先週、国会に提出されたばかりである。
 国民の理解が進まず、むしろ反対が強まっているのに、法案採決の前提とされる中央公聴会が13日開かれ、採決日程が取りざたされている。
 反対論がこれ以上、高まらないうちに採決しようというのが、政府・与党の本音ではないのか。国民を置き去りにしたまま採決することは、到底、認められない。
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東京新聞 2015年7月14日
【社説】「安保」公聴会 違憲の指摘なぜ顧みぬ


 衆院特別委員会の中央公聴会では、政府提出の安全保障法制関連法案は憲法違反、との指摘が公述人から相次いだ。政府・与党はなぜ合憲性に対する疑義を顧みず、採決に踏み切ろうとするのか。
 安倍政権にとっては単なる通過儀礼にすぎないのだろうか。
 安保法案を審議する衆院平和安全法制特別委員会がきのう開いた中央公聴会では、五人の公述人が法案について意見を述べた。
 法案採決の前提とされる中央公聴会を終えたことで、与党側は早ければ十五日に特別委で、十六日に衆院本会議で法案を可決し、参院に送付したい考えなのだろう。
 安保法案は、歴代内閣が違憲としてきた集団的自衛権の行使に一転、道を開き、海外で戦闘に巻き込まれる危険性も高めるなど、戦後日本の専守防衛政策を根本から変質させる内容である。
 公聴会では与党推薦の二人が国際情勢の変化を理由に法案に賛成の旨を述べたが、野党推薦の三人は「歯止めのない集団的自衛権行使につながりかねない」(小沢隆一東京慈恵医大教授)「集団的自衛権行使が必要なら改憲手続きを踏むべきだ」(木村草太首都大学東京准教授)「専守防衛を逸脱する」(山口二郎法政大教授)とそろって法案の違憲性を指摘した。
 法律が憲法に適合するか否か最終判断するのは最高裁だが、憲法学者ら専門家の多くが違憲と指摘している事実は軽視し得まい。国権の最高機関の場で公述人が述べた意見を真摯(しんし)に受け止めようとしないのなら公聴会無視に等しい。
 専門家に限らず、法案に対する国民の目は厳しい。法案は違憲であり、政府側の説明も不十分で、今国会で成立させるべきでない、というのが、報道各社の世論調査に表れた国民多数の意見である。
 安保法案の審議時間は百時間を超え、菅義偉官房長官は記者会見で「維新の党の対案も出され、論点がだいぶ整理されてきている」と週内の採決に期待感を示した。
 しかし、これだけ審議時間を重ねても違憲の疑いを払拭(ふっしょく)するには至っていないのが現実だ。
 法案の必要性や妥当性についても、国民が納得できる説明をできないのは、この法案自体に欠陥があるからではないのか。
 「違憲」「欠陥」法案の採決を中央公聴会が済んだからといって強行すれば、政治に対する国民の信頼を著しく損なう。政府・与党が今、決断すべきは採決強行でなく、法案の撤回、廃案である。
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しんぶん赤旗 2015年7月14日(火)
主張:「違憲」の戦争法案 「殺し、殺される」国にするな


 安倍晋三政権は、戦後日本の国の在り方を根本的に転換する戦争法案について、今週中にも衆院安保法制特別委員会で採決を強行しようとしています。法案は自衛隊が海外で武力行使に乗り出すさまざまな仕掛けを盛り込んでおり、憲法9条に真っ向から違反することは明白です。戦後初めて自衛隊員が海外の戦場で「殺し、殺される」ことになる違憲の法案は廃案にする以外ありません。
イラク派兵の比でない
 自衛隊員が「殺し、殺される」―。この言葉が初めて問題になったのは2003年でした。
 自衛隊をイラクに派兵するイラク特別措置法を審議していた国会で、小泉純一郎首相(当時)が「(イラクで自衛隊員が)殺される可能性はないといえば、それは言えない、あるかもしれない」「たたかって相手を殺す場合がないかといえば、これもないとは言えない」(同年7月9日、参院外交防衛、内閣委員会連合審査会)と述べ、「殺し、殺される」可能性に言及したことが大きな問題になりました。
 実際、自衛隊はイラク・サマワに派兵される前、武器の使用が隊員らの生命・身体を防衛するために限られているのに、敵に損害を与える「制圧射撃」の訓練を行いました。派兵後は、宿営地がロケット弾などによる攻撃を繰り返し受け、死傷者を出す危険にさらされました。部隊の移動中に群衆に取り囲まれ、イラク人を殺傷する寸前の状況にまで至ったこともありました。
 こうした実態は、日本共産党の穀田恵二議員が衆院安保法制特別委員会(10日)で示した自衛隊内部文書に生々しく描かれています。
 それでもこの時、問題になっていたのは、自衛隊が「非戦闘地域」で行う「復興支援活動」でした。
 ところが、戦争法案は、イラク特措法などでは活動が禁止されていた「戦闘地域」でも自衛隊が弾薬の補給や武器の輸送などの兵站(へいたん)を行うことを可能にします。相手の攻撃対象になるのは不可避であり、攻撃を受ければ応戦し、戦闘に発展するのは明らかです。
 法案はまた、形式的に「停戦合意」があれば、依然として戦乱状態が続く地域に自衛隊を派兵し、治安活動を行うことを可能にし、任務遂行のための武器使用もできるようになります。さらに、日本の「存立危機」を口実にすれば、米国が海外で始める戦争に公然と参戦し、自衛隊が米軍と一体となって戦闘に乗り出すことも可能になります。
 自衛隊員が「殺し、殺される」危険は、イラク派兵の比ではありません。他国の国民を殺すことになれば、日本国民が憎悪の対象にもなります。
無責任極まりない態度
 安倍首相は自民党のインターネット番組(8日)で、戦争法案によって「国民や自衛隊員のリスク(危険)は下がる」と強弁しました。イラク派兵で自衛隊員が「殺し、殺されるかもしれない」と、こともなげに述べた小泉首相の態度は当時、強く批判されましたが、自衛隊員のリスクは上がるどころか下がると言ってのける安倍首相の態度はそれ以上に無責任極まりないものです。そうした首相の下で戦争法案が強行されれば自衛隊の海外派兵は一層際限がなくなります。法案を強行することは絶対に許されません。
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秋田魁新報 (2015/07/14 付)
社説:安保法案衆院審議 まだ採決の時機でない


 集団的自衛権の行使を可能にし、自衛隊の活動範囲を大幅に広げる安全保障関連法案について、政府・与党は15日に衆院平和安全法制特別委員会で採決、翌16日に衆院で可決・通過させたい考えだ。
 戦後日本が貫いてきた平和主義を転換させる重要法案である。それにもかかわらず、審議が十分尽くされ、議論が深まったとは言えない。法案が憲法違反との疑念も払拭(ふっしょく)されていない。何より国民の理解がいまだ進まず、反対も根強い。
 そんな中で採決するのは強引過ぎる。到底容認できない。今国会の会期を9月27日まで延長したが、会期にこだわらず十分に議論すべきだろう。それでも足りないようなら法案を一度廃案とし、一から議論をし直すべきだ。
 自民党は採決する理由について▽審議時間が当初目安としていた80時間を上回り、100時間を超えた▽論点はほぼ出尽くし、議論も深まった—などとしている。確かに時間は費やした。問題は実のある審議内容になっているかどうかだ。
 安倍晋三首相は「丁寧な説明」を心掛けると明言した。しかし、実態は持論の繰り返しが大半だ。今までの審議を見る限り、野党の追及と政府・与党の答弁はかみ合わず、双方が自説を述べ合うことに終始している。
 中でも法案が違憲か合憲かという肝心の疑問が一向に解けない。多くの憲法学者が違憲と指摘しているのに対し、首相は合法と確信する自分が正しいと繰り返すばかりだ。これでは国民は納得できないのではないか。
 16日の衆院通過を目指すのは参院での法案審議が紛糾して止まるケースを想定しているからである。法案の衆院通過後、60日以内に参院が議決しない場合は、衆院で再可決して成立させる「60日ルール」がある。これにのっとって会期内に法案を成立させるには、16日にも衆院を通過させる必要があるのだ。審議を尽くすというより、政治日程を優先しているのは明らかである。
 衆院での審議が進むにつれ、世論は法案反対に傾きつつある。共同通信社が6月に実施した世論調査によると、法案反対は58・7%で、5月の前回調査より11・1ポイント上昇した。
 反対や慎重審議の必要性を唱える地方議会も相次いでいる。この1年間に全国の地方議会から国会に安保関連の意見書が469件寄せられた。秋田県議会は安保法案の成立を求める意見書を可決したが、大半の463件が集団的自衛権の閣議決定の撤回や、法案の廃案ないし慎重審議を求める内容だった。
 与党幹部は「国民の理解が深まるのを待っていたらいつまでも採決できない」と本音を吐露したという。しかし、安保のような重要政策の変更であればあるほど、国民の理解や賛同が不可欠だ。国民を置き去りにした独断専行は許されない。
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信濃毎日新聞 2015年07月14日(火)
社説:安保をただす 中央公聴会 疑念は残されたままだ


 安全保障関連法案への根本的な疑念が残ったまま終わった。
 きのう開かれた中央公聴会である。にもかかわらず、政府・与党は公聴会を済ませたことで環境が整ったとし、今週中の委員会採決に踏み切る構えを強めた。認めることはできない。
 中央公聴会では与党推薦の有識者らが国際情勢の変化を理由に法案に賛成し、野党推薦の憲法学者らは反対した。
 木村草太・首都大学東京准教授は法案成立後に違憲と判断される可能性が高いとした上で、「憲法を無視した政策論は国民を無視した政策論だ」と訴えた。
 一方、安倍晋三政権は採決日程ありきの姿勢をあからさまにしている。首相はきのうも「(国民の)理解が進んできた」との認識をあらためて示した。
 各種世論調査や反対運動の広がりを見ても、首相の言葉通りになっているとは思えない。むしろ、問題を積み残したまま、成立に前のめりになっていることに不安を強めているのではないか。
 例えば、自衛隊が直面することになる危険だ。国会審議でも焦点となっている。
 法案が成立すれば自衛隊が後方支援と称して他国軍に弾薬の提供までできるようになる。
 戦闘に欠かせない「兵たん」を自衛隊が担うことを意味し、自衛隊員が攻撃の対象になる恐れが十分にある。
 国連平和維持活動(PKO)で他国軍部隊やNGO関係者らが武装集団に襲われた場合に自衛隊が助けにいく「駆け付け警護」も議論は深まっていない。
 自衛隊がPKOなどで世界各地で積極的に活動するようになっている。これまで一発の弾丸も発射しないで済んできたが、武器使用の拡大で武装勢力との銃撃戦が一気に現実味を帯びる。
 自衛隊の歴史や性質を変える切迫した問題なのに、政府は正面から答えなかった。
 国是としてきた「専守防衛」がどうなっていくかも国会での掘り下げが足りない。首相は防衛の基本方針であることに変わりはないとしているが、米国の軍事行動に日本がどんな形で関わることになるか、分からないままだ。
 首相は国民に丁寧に説明し、理解を得ると言い続けてきた。そんな考えがなかったことがはっきりした。採決に踏み切るなら、国民軽視も甚だしい。
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信濃毎日新聞 2015年07月12日(日)
社説:国民無視暴挙を許すな 衆院採決


 安全保障関連法案をめぐる動きがヤマ場に差し掛かろうとしている。与党は早ければ今週中に採決し、衆院を通過させる構えだ。
 国会会期は9月下旬まで大幅延長された。参院で審議に時間がかかった場合、与党は衆院で再可決して成立させることも視野に入れる。
 集団的自衛権の行使容認に対し憲法学者ら専門家から「違憲」との批判が絶えない。米軍などへの補給や輸送といった支援活動は他国の武力行使と一体化する恐れが強い。問題だらけの法案だ。国民無視の強行は許されない。
   ▽前のめりの政府与党
 「議論が深まったからこそ維新案が出てきた」。10日の特別委員会で安倍晋三首相は、そう主張した。対案の並行審議によって国民の理解が深まったとする。独り善がりの受け止めだ。国民の感覚とは懸け離れている。
 「審議時間が積み重なったので出口を考えていく」「野党側の論点もほぼ出尽くした」。自民党から、そんな発言が続いている。
 こうした言い分に納得する人がどれほどいるだろう。審議入りから、わずか1カ月半である。
 与党が目安にしてきた80時間を超えたからといって、採決する状況ではない。5野党が反対で一致したのは当然だ。
 法案は見掛け上、2本になっている。そのうち1本は10の改正法案をひとくくりにした。集団的自衛権の行使、世界中での他国軍支援、国際紛争後の治安維持など内容は多岐にわたる。一国会で審議を尽くせるはずがない。
   ▽丁寧な説明は聞けず
 論点が出尽くすどころか、基本的な疑問が残ったままだ。
 日本への攻撃がなくても武力行使するのに「専守防衛は変わらない」、自衛隊活動の範囲や内容を急拡大させながら「隊員のリスクは増えない」。政府の強弁が堂々巡りの議論を招いた。
 集団的自衛権については「新3要件に当てはまれば行使する」といった説明を繰り返している。他国への攻撃で日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される「存立危機事態」とは、どんな状況を指すのか。いくら審議を聞いても分からない。
 「重要影響事態」の定義も明確になっていない。「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態は千差万別だ。あらかじめ類型的に示すのは困難」などと曖昧さを残す。使い勝手のいい法律になるよう政府の裁量の幅を広くしておきたいのだろう。
 法整備の必要性は「安保環境が根本的に変容した」「もはや一国のみで平和を守れない」など抽象的な説明にとどまる。
 自国を防衛する上で現行法に不備があるのか。国際社会の平和と安定のため自衛隊は何ができ、何をすべきか。こうした議論は一向に深まらない。
 共同通信社が6月に行った世論調査で法案に「反対」との回答は58・7%だった。5月の調査より11・1ポイント上昇している。今国会での成立についても同様に反対が増えた。審議が進む中で問題点が鮮明になったからだろう。
 首相は夏までの成立を米議会演説で表明した。是が非でも「対米公約」を果たそうと政府与党は前のめりだ。「丁寧に説明し、国民の理解を得る努力を続ける」と再三、口にしながら、反対意見に耳を貸そうとしない。
 一方で、法整備を先取りするかの動きが見過ごせない。
 日米両政府は既に防衛協力指針(ガイドライン)を改定し、自衛隊と米軍の協力を地球規模に拡大することを打ち出した。
 米軍の統合参謀本部が先ごろ発表した「国家軍事戦略」は先進的安保能力を持つパートナーとして北大西洋条約機構(NATO)などとともに日本を明記し、関係強化を訴えている。
   ▽撤回すべき違憲法案
 衆院憲法審査会で参考人の憲法学者がそろって法案を「違憲」と明言して以降、批判は高まる一方だ。全国の全ての弁護士会も法案に反対している。
 昨年7月の閣議決定は、集団的自衛権を行使できないとした1972年の政府見解を引きながら結論部分をひっくり返した。政府内で憲法解釈を担ってきた内閣法制局の元長官は「黒を白と言いくるめる類いだ」と断じている。異例のことだ。
 集団的自衛権の行使を認めることは憲法9条を逸脱する。多くの専門家がそう主張している。国民の命を守るために必要だというなら、改憲を訴えるのが筋である。
 首相は合憲性に「完全に確信を持っている」とするものの、説得力のある根拠を示せていない。集団的自衛権とは無関係の砂川事件判決を持ち出さざるを得ないところに苦しさが見て取れる。
 そもそも昨年の閣議決定に無理があった。出発点が正当性を欠いている。撤回すべき法案だ。
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神戸新聞 2015/07/14
社説:安保公聴会/採決の理由にはならない


 安全保障関連法案を審議する衆院特別委員会が中央公聴会を開いた。これを受けて与党は今週中に採決を行いたい構えだが、出席した有識者5人の法案に対する賛否は分かれ、意見の隔たりは大きい。
 ただでさえ、自衛隊法、周辺事態法など10に及ぶ法改正案と恒久法制定案から成る実質11本の法案である。質疑の対象にされていない論点は山ほどあり、とても「議論を尽くした」といえる状況ではない。
 国民の法案への理解が深まったとはいえず、むしろ問題点が日々、浮き彫りになりつつある状況だ。
 今回も憲法学者らから「違憲」との指摘が相次いだ。憲法適合性に疑念があるのに数の力で押し通すようでは、政府、与党が「法の支配」を踏みにじることになる。
 公聴会開催を、採決を正当化する理由にしてはならない。むしろ有識者らの指摘を踏まえ、国会でさらに議論を深めるべきである。
 タウンミーティングやシンポジウムを開くなど、国民に直接説明する方策も考える必要がある。
 先月の衆院憲法審査会で3人の憲法学者が集団的自衛権行使について「違憲」と口をそろえたことは、まだ記憶に新しい。今回の公聴会でもその点が最大の論点となった。
 「違憲」と述べたのは野党推薦の憲法学者、小沢隆一東京慈恵医大教授と木村草太首都大学東京准教授。政治学者の山口二郎法政大教授も「専守防衛を逸脱し違憲」とした。
 出席した学者に限らず、憲法学者のほとんどは「違憲」か「違憲の疑い」としている。政府、与党は砂川事件をめぐる最高裁判決を「合憲」の根拠とするが、その主張を認める憲法の専門家はごく少数だ。
 もしこのまま法として可決、成立した場合、訴訟を起こされ違憲判決を受ける可能性が高いと、木村氏は指摘した。「集団的自衛権行使が必要なら憲法改正手続きを踏むべきだ」とも主張した。
 与党推薦の国際政治学者、村田晃嗣同志社大学長や外交評論家、岡本行夫氏は中国の軍事的台頭などを理由に法案を支持した。
 しかし、安全保障環境の変化は「合憲」の根拠にはなり得ない。違憲の指摘をクリアできるかどうか、決して曖昧にできない問題だ。多くの専門家と共に法案の是非を徹底的に議論すべきである。
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神戸新聞 2015/07/12
社説:安保と地方議会/懸念の声は全国で高まる


 政府、与党が今国会での成立を目指す安全保障関連法案について、全国の地方議会から「待った」の声が相次いで上がっている。
 国立国会図書館によると、6月末までに延べ約250件の意見書が地方議会から衆参両院に提出された。約6割が法案に反対し、4割弱が「慎重審議」を求めている。政府案を支持し、今国会での成立を求める意見書はほんの一握りだ。
 安倍政権が進める安保法制の大転換には、多くの国民が不安を抱いている。安倍晋三首相は「国民の理解は深まった」と述べたが、政府の説明は不十分で、とても理解を得たとは言えない。
 市町村を中心とした地方議会の動きを、津々浦々に広がる懸念の証しと謙虚に受け止めるべきである。
 政府、与党は今週中に法案の衆院通過を目指しているが、強行すれば民意との隔たりはますます大きくなる。ただでさえ政府の国会答弁は迷走しており、法案の問題点を整理して議論をやり直すのが筋だ。
 兵庫県内では、新温泉町議会が「廃案」を求める意見書を、尼崎、加西、豊岡市の議会が「慎重な審議」を求める意見書を可決した。政権与党の自民系と公明党の議員が賛成に回ったケースもあった。
 全会一致で慎重審議の意見書を可決した豊岡市議会の升田勝義議長は「国民が理解、合意できるようにしてほしいとの思いは全議員が賛同できた」と語っている。
 地方自治体も、安保政策と決して無関係ではない。現行の安保法制でも、日本に対する武力攻撃が発生した場合などに、自衛隊や米軍の行動を円滑にするため、自治体が管理する港湾や飛行場などの優先利用を求められる可能性がある。
 さらに今回の法案は、集団的自衛権行使の前提となる「存立危機事態」の際に地方自治体が担う「責務」を定めるとされている。地方の関与の在り方を含め、まだまだ不明な点が山ほどあるのが実情だ。
 法案の審議時間は100時間に上るが、重要なのは時間より議論の中身である。多くの疑問点を積み残したままの採決は許されない。
 自民党議員による報道圧力発言が発覚するなど、異論を封じる政権の体質に対する批判が高まっている。政府、与党はそうした世論とも向き合い、姿勢を改めるべきだ。
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山陰中央新報 ('15/07/14)
論説 : 安保法案/理解まだ深まっていない


 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案の衆院採決をめぐり与野党攻防が大詰めを迎えた。衆院平和安全法制特別委員会は、採決の前提となる中央公聴会を開いた。与党は15日に採決し、週内に衆院を通過させたい考えだ。
 安倍晋三首相は先に安保関連法案と維新の党などの対案が並行審議されたのを踏まえ「議論が深まったからこそ維新案が出てきた」と述べた。国民の理解も深まったとも語り、早期採決に意欲を見せている。一方で「分かりやすく説明したい」と自民党のインターネット番組に出演し、法案の必要性を説いている。
 しかし、本当に議論や国民の理解が深まったとは言えない。憲法学者から以前に違憲と指摘された際、首相は「合憲と確信している」と言明。自民党からは「国の安全を守るのは学者ではなく政治家」などの声が上がり、まともな議論にならなかった。集団的自衛権行使や自衛隊派遣にしても多くの点で論争は決着していない。
 世論調査では6割近い国民が法案に反対の意思を示し、説明不足との回答も8割を超えた。反対集会やデモは国会周辺から各地へと広がりを見せ、うねりになりつつある。この状況では、理は多くの国民をはじめ、採決に反対する側にあるといえよう。
 「戦力不保持」と「戦争放棄」を定める憲法9条の下で自衛隊による武力の行使は基本的に禁止されている。歴代政府は国際社会からの要請なども踏まえ、自衛隊に可能な活動の範囲を徐々に広げてきたが、「自衛」のための個別的自衛権の行使はできても、「他衛」の集団的自衛権の行使は認められないという立場をずっと取ってきた。
 安倍政権は、この枠組みを変え、集団的自衛権の限定的な行使なら問題ないという。衆院憲法審査会で、自民推薦の参考人だった憲法学者から「従来の枠組みで説明できず違憲」との指摘を受けても、論争を受けて立つ姿勢は見せなかった。
 首相は「国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険」(存立危機事態)という武力行使の要件があり、ホルムズ海峡の機雷掃海など限られた事例しか念頭にないとも強調する。一見厳しい要件にも見えるが、「存立」については与党内でも意見が割れ、事例もあくまで現時点のものだ。将来どう変わるか分からない。
 さらに集団的自衛権行使の典型例である朝鮮半島有事の際の米艦防護をめぐり首相は「ミサイル発射警戒中の米艦にミサイルが発射された段階で、国の存立が危うくなったと判断することもあり得る」と答弁。それでは防護が間に合わないと野党に追及されると「攻撃の明白な危険がある時点で認定し得る」と述べ、存立事態の定義の曖昧さが浮き彫りになった。
 また中谷元・防衛相は後方支援について「米軍などの航空機に自衛隊が空中給油機を使用することは法律上、排除されない」としているが、武力行使との一体化は、もっと議論が必要だろう。存立事態と認定した理由や経緯などを国会に説明するときに特定秘密保護法が壁になるとの指摘もある。多くの疑問を残したままでは、国民のための安全保障は成り立たない。
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中国新聞 2015/7/14
社説:安保法案採決へ 数の力で押し切るのか


 安全保障関連法案の衆院審議が最大のヤマ場を迎えた。
 きのう特別委員会で「採決の前提」とされる中央公聴会が開かれた。政府・与党側はこのまま15日にも委員会で採決する構えである。野党側が、この日程に反発しても強引に押し切るつもりなのだろう。
 菅義偉官房長官は「論点がだいぶ整理されてきた」と述べたが本当なのか。審議時間は、与党側が一方的に見立てていた80時間という目安は確かに上回っている。しかし採決する前提は審議時間ではなく、議論が尽くされて理解が深まったかどうかだ。現時点では全く不十分だと言わざるを得ない。
 現にきのうの公聴会でも、法案への根本的な疑問点があらためて浮き彫りになった。
 もともと法案の記述が曖昧であり、どのように解釈されてもおかしくない点である。野党が推薦した公述人、木村草太・首都大学東京准教授は、そこを突いたといえよう。
 集団的自衛権行使の前提条件として政府案が位置付ける「存立危機事態」について木村氏はこう言う。「『わが国の存立』という法案の言葉は曖昧不明確ゆえにそもそも違憲だ」。どんな場合に自衛隊が他国軍を支援できるのか明確でなく、法律としての安定性に欠くという。いっそ集団的自衛権行使が必要ならば憲法9条の改正手続きを踏むべきだ、とも指摘した。
 むろん国際情勢は流動的な要素があり、事前にどんな事態が起こりうるかは想定しにくい面があろう。それゆえに法案の曖昧さを容認する意見もある。
 しかし、私たちはそうは考えない。時の政権がその時々の判断で自衛隊を動かせる余地が大きければ、恣意(しい)的な運用が広がり、際限なく拡大していく恐れがあるからだ。
 国民の根強い不安を思えば、安全保障をめぐる新たな法律が必要だとしても、できる限り厳密に歯止めをかけるべきだ。そこが政府案に欠けている。
 先週来の特別委員会の政府側の答弁を見る限り、ここに至っても安定感に程遠い。例えば朝鮮半島など日本周辺有事の際、集団的自衛権が行使できる状況について安倍晋三首相は「米艦が攻撃される明白な危機がある段階」とした。先月の審議では「米艦にミサイルが発射された段階」と説明していた。つまり行使の対象が、いつのまにか拡大したことになる。
 焦点の一つである中東・ホルムズ海峡での戦時の掃海活動の条件について、岸田文雄外相が先週になって見解を修正し、陳謝したのも気になる。
 あまりにも場当たり的ではないか。肝心な部分で政府見解が簡単に変わるようでは困る。法案の中身もさることながら、内閣としての姿勢がいかに生煮えであることを象徴していよう。
 こうした状況が国民の不信感に拍車を掛けていることを、安倍政権は分かっているのだろうか。共同通信社の6月下旬の世論調査では法案について「説明不足」とする回答は84%に上っていた。自民・公明両党の支持者も含まれているはずだ。
 せめて今国会にこだわらず、十二分に審議時間をかけるのが筋であろう。このまま数の力で押し切るなら、将来に汚点を残す。首相自身が胸に手を当て、思いとどまるべきである。
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高知新聞 2015年07月14日08時08分
社説:【安保法案】広がる「NO」の意思表示


 安倍首相が10日の衆院平和安全法制特別委員会で、安全保障関連法案と維新の党などの対案が並行審議されたことを受け、「相当(国民の)理解が深まった」と述べた。
 同じ日の夜、国会前では安保法案に反対する若者ら約1万5千人が集まり、抗議集会を開いた。拳を挙げながら「憲法守れ」「戦争するな」などと訴えたという。
 政府・与党が法案の今週の衆院通過を目指す中、学者だけでなく若者ら国民があちこちで反対の声を上げている。こうした動きを見れば、「理解が深まった」とはとても言えないはずだ。
 国民が法案に危機感を抱く中、採決ありきの姿勢は認められない。
 国会前で訴えたのは「SEALDs(シールズ)」という学生らのグループだ。特定秘密保護法への抗議活動をしてきた学生を中心にことし5月に発足した。
 求めているのは自由と民主主義に基づく政治。安保法案への危機感から毎週金曜夜に集会を開いている。
 先月行われた会見では、メンバーは「人間の生き死にの問題が関わっている時に、今の社会は人ごとのようだ」と語っていた。
 今反対しなければ。自分が動かなければ。そんな思いが学生たちの原動力となっている。相手が変わるのを待つのではなく自ら行動する。そのスタイルは音楽も使って自由だ。
 自分たちらしいやり方で「NO」とはっきり意思表示する。これまで目立たなかった若い世代が抗議の表舞台に出てきた意味は重い。
 学生らの動きに象徴されるように、安保法案に対する反対の輪は全国で広がってきた。女性弁護士や宗教界などさまざまな層が反対を表明している。
 共同通信社が先月行った世論調査でも、安保法案に「反対」は6割近くあり、「賛成」の2倍以上に上っている。法案への安倍政権の姿勢については、8割以上の人が「十分に説明しているとは思わない」と答えている。
 だが、国会での審議では相変わらず答弁の曖昧さや質問とのすれ違いが目立った。首相の言う「丁寧な説明」とは程遠い。
 法案の中身とともに、身内の数の力で押し通そうとする強引さに国民は怒りを強めている。首相はその声に誠実に向き合うべきだ。
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宮崎日日新聞2015年7月14日
社説:安保法案 ◆議論深めず採決は早すぎだ◆


 安倍政権が集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更を閣議決定した昨夏から1年間に、全国の地方議会が国会に提出した安全保障政策関連の意見書が469件あった。このうち463件が、閣議決定撤回や安保関連法案の廃案ないし慎重審議を求めるものだ。
 国民の最も身近な議会に届いている不安の声は、安倍晋三首相に聞こえているのだろうか。政府、与党は早期に衆院を通過させたい考えだが、集団的自衛権の行使など議論が深まっていない点は多い。採決は時期尚早ではないか。
県内も慎重論根強く
 集計された意見書は昨年7月1日から先月末までに、40都道府県339議会(県議会6を含む)から両院事務局に提出されたもの。
 469件のうち、閣議決定撤回や安保関連法案廃案など反対姿勢が明確だったものは296件と6割を超えた。法案の慎重審議や、国民的合意がなければ安保法制を見直さないことを求めたものは167件だった。賛成意見書を可決した議会でも国会審議で「国民の理解を得る努力」を求めている。
 国民の側には、根強い反対や慎重論があることを示していると言えるだろう。
 県内では6月定例会までに、法整備に反対や慎重審議を求める請願や意見書が、県議会と8市8町議会に提出された。えびの市、門川町など5市町議会が意見書を可決。日南、西都市など6市町議会は継続審議となっている。
 一方県議会は慎重審議を求める請願を不採択とした。宮崎、延岡市なども反対の意見書や請願を否決または不採択としている。
 両院事務局によると、安保法案に関する意見書は、7月に入ってからも既に100件近く届いているという。ようやく地方で議論が渦巻き始めてきたと言えないか。安倍首相は国民との間に認識の隔たりがあることを自覚すべきだ。
多くの疑問解決せず
 国民が不安を募らせる理由として、安倍首相が反対や慎重意見に耳を貸さない姿勢を見せていることは大きい。法制化をなぜ急ぐのかなど説明も十分ではない。違憲との疑念も払拭(ふっしょく)できておらず、多くの点で論争は決着していない。
 例えば集団的自衛権行使に関し安倍首相は「国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険」(存立危機事態)という武力行使の要件があり、ホルムズ海峡の機雷掃海など限られた事例しか念頭にないと強調する。
 しかし「存立」については与党内でも意見が割れ、政府の裁量次第で将来どうなるか分からない。朝鮮半島有事の際の米艦防護をめぐっても、存立事態の定義の曖昧さが浮き彫りになっている。
 存立事態と認定した理由や経緯などを国会に説明するときに、特定秘密保護法が壁になるとの指摘もある。議論すべきことはまだまだあるはずだ。国民の疑問が晴れ理解が深まったときが、採決時期にふさわしいのではないか。
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南日本新聞 (2015/7/14 付)
社説: [新安保政策・与野党攻防激化] 議論は深まっていない


 安全保障関連法案を審議する衆院特別委員会はきのう、採決の前提となる中央公聴会を開いた。
 与党推薦の有識者らは、中国の軍事的な台頭などを理由に賛成した。野党推薦の憲法学者らは「専守防衛を逸脱し、憲法違反」などと批判した。
 公聴会を済ませ、与党は採決の環境が整ったとしている。15日に特別委で採決、16日には衆院通過の構えだ。
 ちょっと待ってほしい。
 審議は与党が目安とした80時間を超えて110時間前後になる。
 だが、公聴会は有識者らの意見を審議に反映させるために開くものだ。維新の党などの対案の審議も始まったばかりではないか。
 維新の松野頼久代表は、「15日に採決するなら、採決には加わらない」と強くけん制した。
 議論が深まったとはとても言えない。むしろ、本格的な審議はこれからである。
 そもそも法案は憲法違反の疑いを拭えない。いくら審議時間を重ねても国民の間に支持が広がらないのは、政府・与党の反論に説得力がないからだ。
 集団的自衛権の行使要件となる「存立危機事態」の定義も曖昧で、明確な歯止めを欠く。
 安倍晋三首相は、「国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険」という武力行使の要件があり、ホルムズ海峡の機雷掃海など限られた事例しか念頭にないと強調する。だが、事例は現時点でのものだ。
 国連平和維持活動(PKO)協力法の改正も見過ごせない。
 これまで国連統括下に限定していた自衛隊の活動を、国連が統括しない業務に参加できるようにするものだ。
 改正案は「国際連携平和安全活動」と位置付け、治安維持や人道復興支援などを行う。いわば有志国連合への参加である。これが果たしてPKOと呼べるのか。
 危険な任務への参加で、高まる自衛隊員のリスクの問題も納得できる説明がない。
 地方議会からは慎重審議などを求める声が相次いでいる。
 共同通信によると、集団的自衛権を認める憲法解釈変更を閣議決定した昨年7月から1年間に、国会に提出された安保関連の意見書が少なくとも469件あった。
 圧倒的多数が閣議決定の撤回や法案の廃案ないし、慎重な審議を求めた。「丁寧な説明」を繰り返す安倍政権だ。これらの声を無視することは許されまい。
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琉球新報 2015年7月13日 6:02
<社説>安保法制審議 成立ではなく廃案しかない


 集団的自衛権の行使を可能にする安保関連法案について、与党は15日の衆院平和安全法制特別委員会で採決し、16日の衆院本会議で可決・通過させる考えだ。審議が10日で100時間を超え、十分に審議が尽くされたと判断しているようだ。国民の理解が十分に広がらない中、多くの憲法学者が「違憲」と批判している法案を強行採決することなど許されない。
 安倍政権が集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更を閣議決定した昨年7月から1年間で、全国の地方議会が国会に提出した安全保障政策関連の意見書は少なくとも469件あり、うち463件が閣議決定の撤回や安保関連法案の廃案や慎重審議を求めている。これだけ地方議会から政府の姿勢に懸念が示されているのに、なぜ採決を急ぐのか。
 与党が16日の衆院通過を目指すのには理由がある。今国会での成立を確実にするよう「60日ルール」を使う余地を残すためのようだ。衆院が可決した法案を参院が受け取って、60日以内に採決されない場合は「否決された」と見なすことができる。その上で衆院で3分の2以上の賛成による再可決をすれば成立することができるのだ。
 自民が単独過半数に足りない参院で審議が滞って国会最終日までに再可決できなければ時間切れで廃案となるため、衆院通過を急ぐ必要がある。参院の存在を否定する再可決などもっての外だ。
 安倍晋三首相は自民党のネット番組で法案への理解を深めるために麻生太郎副総理兼財務相を「アソウさん」として登場させ「不良」に殴られたという例えを持ち出し「私もアソウさんを守る。これは今度の法制でできる」と述べている。あまりに国民をばかにしている。こうした例えをしなければ理解されないと思っていることこそ、法案が国民に浸透していないことを自ら示している証拠ではないか。
 審議では集団的自衛権の行使要件となる「存立危機事態」の定義の曖昧さも浮き彫りになっている。10日の委員会で安倍首相は朝鮮半島有事の際に集団的自衛権を行使する条件について「ミサイル警戒中や、邦人輸送中の米艦が攻撃される明白な危険がある時点で認定し得る」との見解を示し、従来説明より条件を緩めている。政府に行使要件の定義が存在していないのは明らかだ。欠陥だらけの法案は、成立ではなく廃案しか進む道はない。
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沖縄タイムス 2015年7月14日 05:30
社説:[安保法案 衆院攻防ヤマ場]採決断じて許されない


 政府与党は早ければ15日にも安全保障関連法案を衆院特別委員会で採決する方針だ。
 特別委での審議が110時間となり、有識者から意見を聞く中央公聴会も終わり「環境が整ったから」だというが、それは違う。
 100時間以上審議しても議論がかみ合わないのは、法案そのものに問題があるからにほかならない。公聴会では5人のうち3人が「憲法違反」を指摘するなど、採決できる環境でないことははっきりしている。
 13日の中央公聴会で、野党推薦の木村草太首都大学東京准教授(憲法学)は「日本への武力攻撃の着手がない段階での武力行使は違憲だ」と述べ、法案成立後に違憲判決を受ける可能性が高いことにも言及した。
 集団的自衛権の行使を可能にする安保法案には、憲法学者の大半が「違憲」で一致している。衆院憲法審査会でも3人の憲法学者が「違憲」と言い切り、内閣法制局長官経験者からも「違憲」の声が飛び出している。ことは立憲主義の根幹に関わる問題であり、法律家たちの危機感がひしひしと伝わる。
 公聴会では、集団的自衛権行使の前提条件「存立危機事態」のあいまいさも指摘された。
 最も重要な基準に明確な定義がなく、時の政府の裁量に任されるという一点をとっても、審議は不十分である。
 衆院特別委での15日の採決は絶対に許されない。
    ■    ■
 ここへきて安倍晋三首相は自民党のインターネット番組に出演し、法案の必要性の説明に躍起になっている。
 「安倍は生意気だから今度殴ってやると言う不良が出てきて、いきなり前を歩くアソウさんに殴りかかった。私もアソウさんを守る。これは今度の法制でできる」
 集団的自衛権をこう例えた。
 けんかならけがで済むかもしれないが、集団的自衛権の行使はミサイルを迎撃したり、武装集団に対処したりというものだ。
 公聴会では、安保法制が沖縄に及ぼす影響についての発言もあった。有識者から、米軍基地の恒久化や有事の際に標的となるなどの懸念が示された。
 沖縄に暮らす私たちにとって安保法案は、友達同士のけんかという軽い例えで済む話ではない。
    ■    ■
 そもそも10本の現行法の改正案をひとくくりにして審議する政府のやり方は乱暴で、最初から国民に分かってもらおうという意思が感じられない。
 共同通信社の6月の世論調査では、84%が法案の説明が足りないとし、63%が今国会成立に反対している。
 国民に最も身近な市町村議会からも廃案や慎重審議などを求める意見書が460件以上出されている。
 安倍首相は、採決について「決めるべき時は決める」と発言しているが、国民軽視も甚だしい。
 今は明らかに決めるべき時ではない。
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