2015-07-16(Thu)

戦争法案 (18)採決強行 憲法も民意も踏みにじる暴挙 

民意を無視した暴挙だ 国民の声に耳ふさぐ政権に抗議する 民意顧みぬ政府の野蛮 廃案にして審判を仰げ

<各紙社説・論説・主張>
京都新聞)安保の強行採決  民意を無視した暴挙だ(7/16)
神戸新聞)安保強行可決/与党は聞く耳を持たないのか(7/16)
山陰中央新報)安保法案採決/国民の声に耳を傾けよ(7/16)
山陽新聞)安保法案 議論は尽くされていない(7/16)
中国新聞)安保法案の強行可決 国民の声を無視した暴挙(7/16)
徳島新聞)安保法案強行可決 暴挙は断じて許せない(7/16)
高知新聞)【安保法案採決】「決めるべき時」ではない(7/16)
西日本新聞)安保法案 自公強行可決 「違憲立法」は許されない(7/16)
佐賀新聞)安保法案採決 国民無視の強行だ(7/16)
宮崎日日新聞)安保法案強行可決 国民の声は聞こえているか(7/16)
南日本新聞) [委員会強行採決] 国民の声に耳ふさぐ政権に抗議する(7/16)
琉球新報)安保法案強行採決 民意顧みぬ政府の野蛮 廃案にして審判を仰げ(7/16)
沖縄タイムス)[安保法案採決強行]憲法を破壊する暴挙だ(7/16)




以下引用



[京都新聞 2015年07月16日掲載]
社説:安保の強行採決  民意を無視した暴挙


 主権者である国民も、法治国家の根幹を成す憲法も軽んじる暴挙と言うほかない。
 政府・与党はきのうの衆院特別委員会で、集団的自衛権の行使を含む安全保障関連法案の採決に踏み切った。
 民主党など野党が審議続行を求め、怒号が飛び交う中、構わず数の力で押し切った。今国会で法案を成立させるための「日程ありき」の強行採決である。
 各メディアの世論調査では、法案に「反対」が「賛成」を大きく上回る。国民の多くは憲法違反と考え、今国会での成立に否定的な声が過半数を占める。
 特別委の採決に先立つ締めくくり質疑で、安倍晋三首相は「国民に十分な理解を得られていない」ことを認めた。
 ならば、さらに審議を続け、説明を尽くすのが筋だろう。その責任を放棄した採決強行は、もはや国民の理解を得られない法案であることを認めたに等しい。
 多くの憲法学者らが指摘する「違憲」の疑念は晴れないばかりか、ますます深まっている。自衛隊員のリスク増大への懸念についても、政府は説得力のある根拠を示すことなく否定を続け、国民の不安は募る一方だ。
 政府・与党はきょうにも本会議で可決する方針だが、このまま衆院を通過させるべきではない。
 政府が早期成立にこだわるのは、首相が米議会演説で「公約」していることや、来年夏の参院選への影響を最小限に抑える思惑からだろうが、身勝手な都合にすぎない。
 60年安保(日米安保条約改定)やPKO協力法を引き合いに、首相は今回の法案も時がたてば評価されると考えているようだ。だが、それを独断専行の理由にするなら民主主義は成り立たない。
 安倍首相に必要なのは、丁寧な国会運営と、国民の声に真摯(しんし)に耳を傾ける姿勢だ。
 締めくくり質疑で首相は「理解が進むよう努力を重ねていきたい」とも述べたが、そのためには質問の論点をそらさず、正面から向き合う答弁が欠かせない。
 連日、国会周辺や京都など全国各地で、法案に反対する集会やデモが行われている。国民に身近な市町村議会からも廃案や慎重審議などを求め、450件を超す意見書が国会に提出されている。
 世論調査に表れた支持率低下は、法案への不安を無視した強引な政権運営への批判である。首相は厳しく受け止めるべきだ。
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神戸新聞 2015/07/16
社説:安保強行可決/与党は聞く耳を持たないのか


 安全保障関連法案が衆院特別委員会で可決された。野党議員の怒号が飛び交い、議場が混乱する中で、与党単独での採決が強行された。
 歴代政権が憲法9条に基づき認められないとしてきた集団的自衛権の行使を可能にするなど、日本の安保政策を大転換させる内容だ。
 与党はきょうの衆院本会議でも数の力で強行可決する構えである。
 憲法学者が「違憲」と指摘し、国民が「説明が不十分だ」と訴えても全く聞く耳を持たない。民意に背を向けた与党の姿勢は、国会の歴史に汚点を残すことになるだろう。
 安倍晋三首相はきのう初めて「国民の十分な理解を得られていない」と認めた。「理解が進むよう努力を重ねる」とも語った。
 本当にそう考えるのなら、国民や学者らの声に謙虚に耳を傾け、法案の是非を再検討すべきだ。独善的な姿勢では決して理解は得られない。
       ◇
 自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態法、国連平和維持活動(PKO)協力法、米軍行動円滑化法…。
 安保法案のうち1本は、こうした法律改正案を一つに束ねたものだ。関係する法律は計10本に及ぶ。
 併せて国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能とする恒久法の制定も目指す。形式上は二つの法案だが、中身は多岐にわたる。
複雑で難解な法案
 国会の審議時間は110時間に達した。与党は「目安となる80時間を超え、審議は尽くされた」として採決に踏み切ったが、事実は逆だ。まだ多くの論点を積み残している。
 過去、国会で80時間以上かけて審議したのはほとんどが単独法案で、3国会にまたがった有事関連法の審議も対象法案は3本にとどまる。
 それらと比べれば、国会提出からわずか2カ月での委員会採決は急ぎ過ぎだ。国民の理解が追い付かないのは当然と言える。
 与野党の質疑では「重要影響事態」「存立危機事態」「武力攻撃事態」「緊急対処事態」などの耳慣れない言葉が飛び交う。
 違いが分かりにくく、安倍首相や中谷元・防衛相も答弁に窮する場面が何度もあった。そのような難解な法案の成立を今国会だけで目指すこと自体、無理がある。
 ところが、首相は4月の米議会演説で「この夏までの成就」を明言した。日米防衛協力指針(ガイドライン)の見直し合意を受けて胸を張ったのだろうが、国会審議より対米公約を先行させる首相の言動は本末転倒と言うしかない。そうした前のめりの姿勢が、不信や混乱を招いていることは否定できない。
 法案が閣議決定された4月、「国民が法案の意味を理解するまで1、2年かけて議論すべきだ」という町の声を記事で紹介した。法整備が必要だと言うなら、一つ一つ時間をかけて説明してもらいたい。それが多くの国民の率直な思いだろう。
 そうした要請に応えようとしない政府、与党の対応は「国民不在」と批判されても仕方がない。
重い「違憲」の指摘
 何よりも憲法学者らが相次ぎ法案を「違憲」と指摘した事実は重い。だが、政府、与党には真摯(しんし)に向き合う姿勢が見られない。
 歴代内閣は憲法の制約の下、日本が武力攻撃を受けた場合にのみ個別的自衛権の発動を認めてきた。
 集団的自衛権を行使して日本を攻撃していない他国に武力を行使すれば、「先制攻撃」と受け取られる恐れは否定できない。許される憲法解釈の範囲を逸脱しかねず、歴代内閣法制局長官も「違憲」や「違憲の疑い」があるとする。
 しかし、首相は「憲法学者は安全保障の専門家ではない」などと取り合わず、議論を深めようとしない。法案の根幹に関わる問題を無視して自らの主張を押し通すばかりだ。
 そもそも、急いで安保政策を見直す理由は何なのか。
 首相は、邦人が巻き込まれたテロや北朝鮮の核兵器開発などを挙げ、「厳しい現実から目を背けてはならない」と語る。安保情勢の変化に対応するため、米軍などとの協力を拡大する。それには集団的自衛権の限定的な行使が必要だと力説する。
 だが、抽象的な議論だけでは法整備の理由にならない。対処すべき具体的な事実を示す必要がある。官僚として法案作成に携わった経験がある野党議員のそうした疑問にも、政府側の明確な答弁はない。
 「起こらないとは限らないという理由だけで法律をどんどん変えるのか」。そうした質問にも、首相は日本の存立を脅かす事態が発生する可能性があるなどと繰り返すのみだ。議論が深まらない原因の大半は政府、与党の側にある。
 異論に耳を傾けようとしない姿勢は「独り善がり」と言うしかない。強引な政治手法を改めなければ、有権者に見放される。
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山陰中央新報 ('15/07/16)
論説 : 安保法案採決/国民の声に耳を傾けよ


 自民、公明両党は衆院平和安全法制特別委員会で集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案の採決に踏み切り、与党単独で可決した。審議が110時間を超えたとはいえ、報道各社の世論調査では反対の声が依然として多数を占める。各地で反対運動も広がり、閣僚からも「理解が進んでいない」との声が出ている。採決は世論を無視した強行と言わざるを得ない。
 政府、与党は16日にも衆院本会議で可決し法案を参院に送る構えだ。なぜそんなに急ぐのか。衆院本会議の採決に国民の代表として自信を持って臨めるのか。与党の衆院議員はもう一度国民の声に耳を傾けるべきだ。
 安倍晋三首相はわずか数日前に「私も丁寧に説明してきた」と述べたが、この日の締めくくり総括質疑では「理解が進んでいないのも事実だ」と前言を撤回した。
 閣僚からも「理解が進んできたと言い切る自信はあまりない」(石破茂地方創生担当相)、「より深い理解の下で国の安全保障は考えられるべきだ」(塩崎恭久厚生労働相)との指摘がある。
 理解が進まない理由の一つは、政府側の答弁が明確でないことだ。多くの憲法学者による「法案は憲法違反」との指摘にきちんと反論していない。集団的自衛権を行使する場合の新3要件の定義、具体的な活動内容も曖昧なままだ。
 首相は「確固たる信念で政策を前に進めていく」と強調。菅義偉官房長官は「いつまでもだらだらやるべきではない。決めるときは決めることが必要だ」と述べた。
 しかし「だらだら」は政府側の答弁で、審議の時間数よりも重要なのはその内容だ。時間が来れば「決める」のではなく「立ち止まる」という政治判断もある。
 民主党など野党各党は締めくくり質疑に応じた上で、採決には強く抗議した。対案を提出した維新の党も与党側との修正協議が折り合わず、維新案は否決された。維新を採決に巻き込んで「強行」のイメージ回避を図ろうとした与党側の思惑は失敗した格好だ。国会での幅広い合意を形成できなかった与党の国会運営は厳しく責任が問われるべきだ。
 政府、与党が衆院採決を急ぐのは、参院で法案審議が難航しても60日たてば「否決」と見なし、衆院で再可決・成立させる「60日ルール」の適用が念頭にあるためだ。16日に衆院を通過させれば、9月中旬以降の再可決が可能となり、9月27日の国会会期末までの成立は確実になる。しかし「衆院3分の2以上」という議席数で押し切ろうという国会運営は国民の納得が得られるだろうか。
 ほとんどの世論調査では法案に「反対」や「評価しない」の声が過半数に上る。内閣支持率も下がりつつある。審議を積み重ねるにつれて法案そのものと、安倍政権の姿勢への不信感が増しているのが実態ではないか。
 法案に反対する集会が各地に広がり、学生や子供を持つ母親たちのグループも声を上げている。地方議会からも法案の撤回や慎重審議を求める意見書提出が相次ぐ。
 問われているのは、憲法は権力を監視するという立憲主義と、国民を代表する議会制民主主義の実態である。
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山陽新聞(2015年07月16日 07時59分 更新)
社説:安保法案 議論は尽くされていない


集団的自衛権の限定的な行使を可能にすることなどを柱とする安全保障関連法案がきのう、衆院平和安全法制特別委員会で可決された。野党は審議が不十分などとして反対し、激しく怒号が飛び交う中での採決となった。
 これまでも指摘してきた通り、国会審議が進むにつれて関連法案の曖昧さが浮かび上がっている。自衛隊の武力行使や他国軍への後方支援を認める基準などをめぐり、政府の答弁が安定せず、分かりづらい場面が多くあった。
 安倍晋三首相は先週も次のような答弁をした。朝鮮半島有事の際に集団的自衛権を行使する条件について「ミサイル警戒中や、邦人輸送中の米艦が攻撃される明白な危険がある時点で認定し得る」と述べた。首相は先月末には「米艦に『艦対艦ミサイル』が発射された段階」と話し、「それから認定していては間に合わない」と野党が追及した。先週の首相答弁は、行使の要件を緩めたことになる。
 集団的自衛権は、わが国が「存立危機事態」にあると政府が認定した場合に行使できる。その条件について政府は具体的な状況も示しているが、結局は、その時々の状況を「総合的に判断する」などとして明確にしないケースが目についた。日本から遠く離れた中東・ホルムズ海峡での機雷除去についても、存立危機と認める要件を満たすのかといった当初からの疑問は依然として解消されていない。
 共同通信社が先月実施した全国電話世論調査では、法案への賛成約28%に対し、反対が約59%と5月の前回調査より約11ポイント増えた。
 計11本の法律からなる関連法案の中身は込み入っており、審議を通して論点が整理されることが期待された。5月下旬の審議入りから審議時間は110時間を超えたが、政府の説明不足もあって、国民の理解にブレーキがかかっている格好だ。きのうは首相自身も「国民の理解が進んでいないのも事実」と認めた。
 先週、維新の党などは、個別的自衛権の範囲を拡大して米軍を守れるようにする対案や、離島防衛を想定した領域警備法案を提出した。政府が集団的自衛権の行使で行おうとしているのと同等の活動が個別的自衛権の範囲内で可能とする見解をはじめ、掘り下げてみるべき論点があるように思えるが、1週間では議論は深まりようがなかった。
 対案の提出が遅かったことは否めないものの、真剣に吟味しようという姿勢が政府に見えなかったのは残念だ。
 法案はきょうの衆院本会議で可決される見通しだ。与党の数の力で法案の成立は可能となる。だが、国民に理解が広がっていない現状は軽視できない。どんな状況で自衛隊が海外に出て行くのか。歯止めはかかるのか。もっと明確にすることが必要だ。日本の安全保障政策を大転換させる関連法案を生煮えの議論で通してはならない。
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中国新聞 2015/7/16
社説:安保法案の強行可決 国民の声を無視した暴挙


 理屈ではなく力ずくで、国を大きく変えるつもりのようだ。きのう安全保障関連法案は衆院特別委で怒号が飛び交う中、与党が強行可決した。
 法案自体を「違憲」とする指摘が憲法学者などから相次ぎ、国民の間にも反対の声や疑問視する見方が強い。それでも日程ありきなのだろう。今国会での成立へ与党はなりふり構わず突き進む。果たしてこれで民主主義国家といえるだろうか。
 さらに看過できないのは、安倍晋三首相の姿勢である。安保法案について「まだ国民の理解は進んでいない」ときのうの採決前に自ら認めた。前日には、石破茂地方創生担当相も同様の見解を示していた。首相は「国民に丁寧に説明していく」とも述べたが、数の力で可決した今となっては説得力を欠く。
 安倍政権は国民に理解されていないことを承知で、安全保障政策を大きく転換する重要法案を押し通した。つまり首相自ら民主主義を否定したに等しく、暴挙としか言いようがない。
 可決されたのは改正10法案を一括した法案と国際平和支援法案である。与党は審議が110時間を超え、想定した時間を大きく上回ったとして採決に踏み切った。だが多岐にわたる法案の軸は、歴代政権が憲法9条に基づき認められないとしてきた集団的自衛権の行使を解禁することだ。「平和国家」の姿が変えられようとしているのに、とても議論を尽くしたとはいえまい。一方的に審議を打ち切ったのは理不尽である。
 そもそも集団的自衛権の行使を「違憲」とする声を完全に無視する姿勢でいいのか。政府が昨夏、行使容認を閣議決定した際にも合憲性が問われたが、5月の法案の提出後に、いよいよ疑問の声が強くなった。
 政権の立場からは誤算だったろう。衆院憲法審査会において自民党推薦を含め参考人の憲法学者全員が「違憲」と明言したのに加え、内閣法制局長官を務めた元官僚らからも同じ見解を突きつけられた。なのに開き直って政府・与党が「合憲」の一点張りを崩さないことが国民の不信感に輪をかけている。
 衆院で議論を尽くしたと言い張る法案の中身を見ても、分かりにくいこと極まりない。
 例えば集団的自衛権行使に関わる「存立危機事態」などの概念は曖昧な答弁を繰り返し、最後は「政府が総合的に判断する」と逃げる。海外任務の拡大で自衛隊のリスクは常識的に考えれば高まるはずが、ここに至っても認めようとしない。
 こうした説明なら、理解したくても無理だ。報道各社の世論調査を見ても「審議が不十分」が多数を占めることに、率直な受け止めは表れていよう。それを知りながらの採決強行は、国民をばかにしていると言われても仕方あるまい。
 戦後日本は平和憲法の下で不戦を誓ってきた。この法案は、その歩みを覆しかねない。60年安保や1990年代の国連平和維持活動(PKO)協力法の審議と同様、再び国民の不安に背を向けた国会運営がなされた。
 法律を作ってしまえばやがて時がたち、反対の声も薄れるとの目算らしい。自衛隊も日米安保条約も当初は違憲とされたはずだと自民党の幹部は発言している。しかし、それが正しい道だったかどうかは別の問題だ。米国に従属して憲法9条を形骸化させてきた流れを、なし崩し的に強めていいはずはない。
 安倍政権の振る舞いに対する異論を封じるかのような動きがこのところ目立つ。おごりからだろう。自民党の若手議員の勉強会では「マスコミを懲らしめる」などの暴言も飛び出した。
 物言えぬ空気からか、法案審議へ違和感を持つ議員もいるはずだが声が聞こえてこない。特に平和の党としてブレーキ役を自任していた公明党は、いまの事態をどう説明するのだろう。
 政府・与党はきょうの衆院本会議で法案を通過させ、参院に送る構えだ。だが国民をないがしろにしたまま、成立させることは決して許されない。
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徳島新聞 2015年7月16日付
社説:安保法案強行可決 暴挙は断じて許せない


 衆院の特別委員会で、与党が安全保障関連法案の採決を強行し、可決した。野党が抵抗する中での暴挙である。
 法案は歴代内閣が認められないとしてきた集団的自衛権の行使に道を開き、戦後日本が歩んできた平和国家の在り方を大きく変える恐れがあるものだ。
 国の将来に重大な影響を与える法案にもかかわらず、異常な形で採決が行われたことに、強い怒りを覚える。
 採決に先立ち、安倍晋三首相は「国民に十分な理解を得られていない」と認めた。前日には「理解が進んできたと思う」と語っていたが、否定しきれないと分かったのだろう。では、なぜ採決を急いだのか。
 特別委での政府の説明は説得力に欠け、審議をすればするほど疑念が深まった。反発がさらに強まる前に通してしまおうと考えたのだとすれば、断じて許されない。
 納得できる説明ができず、国民の理解を得られないのなら廃案にすべきだ。
 法案には数々の問題がある。中でも見逃せないのは、集団的自衛権の行使は憲法違反だとの指摘である。
 政府は、1972年の政府見解を合憲論のよりどころとしている。だがそれは、必要最小限度での個別的自衛権を認めたうえで、集団的自衛権は憲法上、許されないとしたものだ。
 もう一つ、政府は砂川事件の最高裁判決も持ち出したが、これも集団的自衛権を認めた判例ではない。
 いずれも無理があるのは明らかだ。多くの憲法学者をはじめ、歴代の内閣法制局長官らが異を唱えているのは当然だろう。
 集団的自衛権の行使は限定的で、厳しい歯止めをかけると政府は強調している。武力行使できるのは、国の存立が根底から覆される明白な危険があるなど、三つの要件を満たす場合だけだというのだ。
 しかし、どんな事態が「明白な危険」に当たるのかは、総合的、客観的に判断するという。極めて曖昧であり、時の政権が恣(し)意(い)的に決める恐れは消えない。
 自衛隊の活動範囲が際限なく広がる懸念も、払(ふっ)拭(しょく)できていない。
 法案は、朝鮮半島有事を想定した現行の「周辺事態」から、事実上の地理的制約を撤廃した。「非戦闘地域」に限ってきた他国軍への後方支援は、「現に戦闘行為を行っている現場(戦場)」以外に大幅に拡大する。
 さらに、後方支援では弾薬の提供や戦闘作戦行動のため発進準備中の航空機への給油・整備まで可能にする。戦場以外なら、憲法が禁じる「他国の武力行使との一体化」にならないと政府は主張するが、到底容認できない。
 安倍首相は、日本を取り巻く安保環境が変化したから法案が必要だと、繰り返し述べている。
 備えが重要なのは言うまでもない。だが、なぜ「専守防衛」の個別的自衛権では国民を守れず、集団的自衛権が必要なのか、説明は不十分だ。
 今春に改訂した日米防衛協力指針は、自衛隊と米軍の協力を地球規模に拡大することを打ち出した。集団的自衛権の行使容認は、日本のためというより、むしろ米軍への協力強化のためではないのかとの疑念が浮かぶ。
 与党は、特別委の審議が116時間に及び、議論は出尽くしたと言うが、重要なのは内容であり、時間ではない。しかも法案は11本分を2本にまとめたものであり、その意味でも審議時間は足りない。
 多くの疑問点が残っている。このまま衆院を通過させてはならない。
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高知新聞 2015年07月16日08時08分
社説:【安保法案採決】「決めるべき時」ではない


 集団的自衛権行使の解禁を柱とする安全保障関連法案が衆院の平和安全法制特別委員会で自民、公明の与党の賛成で可決された。野党が抵抗する中、与党が採決を強行した。
 これに先立つ締めくくり質疑で安倍首相自身、「国民に十分な理解を得られていない」と認めている。首相は「決めるべき時には決める」とも主張してきたが、今が「その時」だとは到底言えない。
 与党はきょう衆院本会議で採決する構えだ。数の力に任せた強引なやり方は断じて認められない。
 安保法案について、首相は数日前の同特別委では「相当(国民の)理解が深まった」と言っていた。締めくくり質疑での認識とは全く逆である。このちぐはぐさは何なのか。
 専守防衛に徹してきた戦後日本のありようを、根本から変える重要法案の審議である。首相の言葉はあまりにも軽い。首相にとって「国民の理解」などはどうでもいいことなのか。そう疑われても仕方ない。
 中谷防衛相も集団的自衛権の行使を容認する新3要件の歯止め効果など、「論点は整理され(議論は)深まってきた」と述べている。
 本当にそうだろうか。
 新3要件について与党は「日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合などに厳しく制限していると強調する。ただし具体的な事例を問われると「(敵国に)中身をさらすことになる」「総合的に判断する」とかわしてきた。
 これでは自衛隊の武力行使や海外派遣が、時の政権の意向次第になりはしないか。与党の説明をいくら聞いてもその恐れは拭えない。
 自衛官のリスクについても同様だ。新安保法制の下では自衛隊の活動が地球規模に広がる。他国軍への弾薬の提供など後方支援の内容も、より「軍事色」が強まる。自衛官が殺し殺されるリスクが高まりはしないか。
 国民が抱く多くの懸念が現状では何一つ解消されていない。
 非は政府にある
 「いつになったら『分かりました』となるかというと、何カ月延ばしても同じだ」
 安保法案に対する国民の理解に関して、自民党の二階総務会長はこう語った。だが、理解されないことの非は国民の側にあるのではない。政府、与党の側にある。
 歴代政権が憲法9条に照らして禁じてきた集団的自衛権の行使を、一内閣の閣議決定でひっくり返す。そもそもの出発点から間違っている。
 その無理を押し通すための「前段」として、安倍政権は集団的自衛権の行使容認に前向きな人物を内閣法制局長官に充てた。異例の首のすげ替えにより、行使を認めてこなかった法制局の見解を変えることにつなげた。
 「安保法案は違憲」という批判に対しては、1959年の最高裁砂川判決や72年の政府見解を挙げて反論する。しかし砂川判決は集団的自衛権に言及しておらず、政府見解の結論も集団的自衛権の行使を認めていない。
 無理に無理を重ねて導き出した閣議決定と、それに基づく安保法案について、いくら時間をかけて説明されても安易に「分かりました」となるはずがないのである。
 政府、与党がやるべきなのは強行採決ではなく、法案の撤回である。あらためて強くそれを求める。
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=2015/07/16付 西日本新聞朝刊=
社説:安保法案 自公強行可決 「違憲立法」は許されない


2015年07月16日 10時33分
 憲法に基づき、国民の意思をくんで政策を実行する。民主主義の国なら、ごく当たり前のことだ。
 その大原則が、いとも簡単に突き崩された。これは、まさに「政権の暴走」と言っても過言ではあるまい。
 安倍晋三政権が今国会で成立を目指す安全保障関連法案の採決が衆院の特別委員会で強行され、自民、公明両党による「数の力」で可決された。
 戦後日本の安全保障政策を根本から大転換させる重大な法案であるにもかかわらず、安倍政権は一気呵成(かせい)に突き進む構えだ。
 本当にこれでいいのか。
 最大の問題は法案が憲法違反である疑いが極めて濃厚なことだ。
 安倍政権は昨年7月、歴代の内閣が憲法上行使できないとしてきた集団的自衛権について、行使できるよう閣議決定で憲法解釈を変更した。その集団的自衛権の行使に道を開く法案である。
 これに対し、憲法学者から「解釈変更の限界を超えており、憲法違反だ」とする声が続々と上がっている。象徴的なのが、国会の憲法審査会で与党推薦の学者が「違憲」と明言したことだ。
 歴代の内閣法制局長官を含む専門家が「違憲」と警告する法案を政府と与党が数を頼んで成立を急ぐ。立憲主義の危機である。
 国民の理解も支持も、十分に得ていない。ほとんどの報道機関の世論調査で、法案成立に反対する回答が賛成を上回っている。共同通信社が6月下旬に実施した調査では反対が58・7%で、賛成は27・8%にとどまった。5月下旬の調査より反対が10ポイント以上増えている。国会で審議すればするほど国民の疑念は膨らんでいるのだ。
 全国各地でデモや集会が行われ、地方議会が意見書を出すなど、法案反対の動きが広がっている。東京・日比谷公園で14日開かれた集会には、2万人超(主催者発表)が参加した。
 「憲法違反」と指摘され、民意にも沿わない法律を成立させてはならない。あらためて一連の安全保障法案の撤回、廃案を求める。
 そもそも、安倍政権は異論や反論に耳を傾ける姿勢があるのか。安倍首相は国会で法案の問題点を問われ、「(法案は)まったく正しいと思いますよ。私は総理大臣なんですから」と答えた。
 権力者のやることだから正しい-という理屈は独裁国家ならともかく、民主主義国家では通用しない。首相に近い議員は「(法案に反対する)マスコミを懲らしめるには広告料をなくすのが一番」などと放言する騒動まで起こした。
 確かに、わが国を取り巻く東アジアの安全保障環境は変化している。関連法制の整備も含め、不断に体制を見直す努力は必要だ。
 しかし、立憲主義に背くような政権に国の針路を左右し、国民の権利や自由に関わる安全保障政策の転換を任せていいのだろうか。
 「戦争がまた始まりそうな気がしてね」。日比谷公園の抗議集会にやってきた75歳の男性は、終戦直後に幼い妹を栄養失調で亡くしたという。「この前はね、デモで土砂降りの中を歩いたんだよ」
 憲法と国民を軽んじるな。
 「政権の暴走」を阻止し、戦後70年の民主主義を守るために、私たちも声を上げ続けたい。
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佐賀新聞 2015年07月16日 05時06分
論説:安保法案採決 ◆国民無視の強行だ


 与党の自民、公明両党は衆院平和安全法制特別委員会で集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案の採決に踏み切り、与党単独で可決した。審議が110時間を超えたとはいえ、報道各社の世論調査では反対の声が依然として多数を占める。各地で反対運動も広がり、閣僚からも「理解が進んでいない」との声が出ている。
 野党が採決に反対して委員長席に詰め寄り、混乱の中で行われた採決は世論を無視した強行と言わざるを得ない。政府、与党は16日にも衆院本会議で可決し法案を参院に送る構えだ。なぜそんなに急ぐのか。衆院本会議の採決に国民の代表として自信を持って臨めるのか。与党の衆院議員はもう一度、国民の声に耳を傾けてほしい。
 安倍晋三首相はわずか数日前に「私も丁寧に説明してきた」と述べたが、この日の締めくくり総括質疑では「理解が進んでいないのも事実だ」と前言を撤回した。
 閣僚からも「理解が進んできたと言い切る自信はあまりない」(石破茂地方創生担当相)、「より深い理解の下で国の安全保障は考えられるべきだ」(塩崎恭久厚生労働相)との指摘がある。
 理解が進まない理由の一つは政府側の答弁が明確でないことだ。多くの憲法学者による「法案は憲法違反」との指摘にきちんと反論していない。集団的自衛権を行使する場合の新3要件の定義、具体的な活動内容も曖昧なままだ。
 首相は「確固たる信念で政策を前に進めていく」と強調。菅義偉官房長官は「いつまでもだらだらやるべきではない。決めるときは決めることが必要だ」と述べた。
 しかし「だらだら」は政府側の答弁であり、審議の時間数よりも重要なのはその内容のはずだ。時間が来れば「決める」のではなく「立ち止まる」という政治判断が求められるときもある。
 民主党など野党各党は締めくくり質疑に応じた上で、採決には強く抗議した。対案を提出した維新の党も与党側との修正協議が折り合わず、維新案は否決された。維新を採決に巻き込んで「強行」のイメージ回避を図ろうとした与党側の思惑は失敗した格好だ。国会での幅広い合意を形成できなかった与党の国会運営は厳しく責任が問われるべきだ。
 政府、与党が衆院採決を急ぐのは、参院で法案審議が難航しても60日たてば「否決」と見なし、衆院で再可決・成立させる「60日ルール」の適用が念頭にあるためだ。16日に衆院を通過させれば、9月中旬以降の再可決が可能となり、9月27日の国会会期末までの成立が確実になる。しかし「衆院3分の2以上」という議席数で押し切ろうという国会運営は国民の納得が得られるだろうか。
 ほとんどの世論調査では法案に「反対」や「評価しない」の声が過半数に上る。内閣支持率も下がりつつある。審議を積み重ねるにつれて法案そのものと、安倍政権の姿勢への不信感が増しているとみるべきではないか。
 法案に反対する集会が各地に広がり、学生や子どもを持つ母親たちのグループも声を上げている。地方議会からも法案の撤回や慎重審議を求める意見書提出が相次ぐ。問われているのは、憲法は権力を監視するという立憲主義と、国民を代表する議会制民主主義の実態である。(横尾章)
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宮崎日日新聞 2015年7月16日
社説:安保法案強行可決 ◆国民の声は聞こえているか◆


 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案が衆院平和安全法制特別委員会で可決された。
 国民の理解が十分深まったと言えないまま、騒然とした強行採決場面がニュースに映しだされた。テレビを前に、複雑な思いを抱いた県民も多かっただろう。国民の理解と世論をないがしろにした安倍政権の強硬姿勢は、後世にも問われることになろう。
曖昧表現目立つ首相
 安保関連法案の理解が進まなかった理由を国民の側から考える。やはりトップである安倍晋三首相の姿勢や発言の影響が大きい。
 国会審議の答弁では論点をすり替えたり、主張をまくし立てたりと、質問に真正面から答えようとしない場面が多かった。質疑が成り立たないのだから、話の筋を理解するのは極めて困難だ。
 曖昧さを残す内容も目立った。集団的自衛権の行使について尋ねられると「わが国に戦禍が及ぶ蓋然(がいぜん)性を総合的に判断する」と答えた。誰がどのように責任を持って判断するのか全く見えない。
 その行使の前提とする「存立危機事態」の定義についても「単なる経済的影響にとどまらず、国民の生死に関わる深刻、重大な影響が生じるかを総合的に評価する」と答弁。具体例に中東・ホルムズ海峡が機雷で封鎖された場合を挙げたが、それがなぜ、国民の生死に関わる深刻な事態なのか納得できる説明はなく、これもまた「総合的に評価」するという。
 憲法が厳しく制限してきた武力行使を、その時々の政府が評価し判断するという危うさ。どうなるか分からないが政府に任せよ、というメッセージだけ発せられても、頭から疑問符は消えない。
 説明は「一般的に」「例外的に」と次第に複雑化した。首をひねる国民の姿を、安倍首相はどれほど想像できていただろうか。
民主政治原点に戻れ
 報道各社の世論調査では、説明不足を指摘する声や反対の声が高い。それにもかかわらず安倍首相は「私も丁寧に説明して(国民の)理解が進んできたと思う」と述べていた。ところが15日は「国民の理解が進んでいないのも事実だ」と一転。遅すぎる。早く認め豊かな議論の土壌を耕すべきだった。
 審議開始後の自衛隊のリスク論に象徴されるように、安倍首相が核心に触れようとしない姿勢は議論を上滑りさせた。その間、国民の知る欲求は満たされなかった。ようやく野党の対案で論点が整理され始めようとしていた矢先の、強行採決。国民の知る権利が保障されているとは言い難い。
 審議の最中に起きた報道圧力問題も忘れられるものではない。
 なぜ理解を促す努力をしないのか。それは自信がないからか。憲法違反の疑念を抱えた法案は熟考されればされるほど問題が噴出する。しかし国民と共に築き上げるのが民主政治だ。衆院本会議の採決を控え、与党議員の心に国民の姿が映っていることを祈りたい。
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南日本新聞 (2015/ 7/16 付 )
社説: [委員会強行採決] 国民の声に耳ふさぐ政権に抗議する


 安倍政権はきのうの衆院特別委員会で、安全保障関連法案を与党だけで強行採決した。
 歴代政権が一貫して禁じてきた集団的自衛権の行使を、憲法解釈を変えて認めた閣議決定から1年余り。憲法9条の下で抑制的だった安保政策の大転換である。
 これほどの重要法案を数を頼んで押し通すやり方は到底認められない。安倍政権に強く抗議する。
 法案には憲法違反の疑念がいまだに拭えない。
 憲法学者の大半や「法の番人」を自任する内閣法制局の歴代長官らが、解釈変更による集団的自衛権の行使容認に異を唱えている。
 「(違憲の)法案を多数決で承認したら、国会が憲法を軽視し、立憲主義に反する」(小林節慶応大名誉教授)などと、国会をけん制する指摘もあった。
 国民の理解も依然深まらない。世論調査では6割近い国民が法案に反対し、説明不足との回答は実に8割を超えた。
 反対集会やデモは国会周辺から鹿児島市など全国へ広がり、大きなうねりとなっている。
 法案はきょうにも、衆院を通過し参院へ送られる。与党は参院が議決しない場合、衆院で再可決して成立させる「60日ルール」の適用をにらむ。
 それでは重要法案に参院の意思が反映されないことになる。徹底審議を求めたい。
 もとより国民の支持が得られないなら、法案を撤回すべきだ。
■「戦争に備える国」
 そもそも、なぜ今、集団的自衛権が憲法解釈を変えてまで必要なのか。
 安倍晋三首相らは「東アジアの安全保障環境が根本的に変わった」と特別委で再々強調した。
 南シナ海での強引な「領土」拡張や、尖閣諸島で続く公船の領海侵犯など中国の軍事的な台頭に加え、北朝鮮の核ミサイル疑惑が念頭にあるのは間違いない。
 中央公聴会で、外交評論家の岡本行夫氏は「膨大な海域で日本人の命と船舶を守ることは、単独では無理だ」と訴えた。
 国民の間にそうした不安や、中国や北朝鮮の振る舞いに反発があるのは事実である。
 だからといって、憲法を無視して、立憲主義にもとる法案をつくってよいことにはならない。
 集団的自衛権の行使容認への道を振り返ってみたい。
 始まりは2013年11月、国家安全保障会議(日本版NSC)創設関連法の成立である。
 この会議は首相や防衛相ら4者だけの常設組織だ。「戦争をしない国」から「戦争に備える国」になることを意識していることは明らかだった。
 12月には、米国からより高度な情報などを得るためとして特定秘密保護法を強引に成立させた。
 武器の輸出を緩めたのは昨年4月だ。新たに「防衛装備移転3原則」を閣議決定し、即座に運用指針が施行された。
 今年4月になると、日米防衛協力の指針(ガイドライン)も改定した。国会の議決もなしに集団的自衛権の行使を反映させている。
 安保法案はこうした一連の流れの中にある。
 海外での武力行使は平和国家日本のイメージを喪失させ、国益を大きく損ねかねない。
 発足から61年の自衛隊はこれまで1人の戦死者も出していない。法が成立すれば、自衛隊員が戦争に巻き込まれ、殺し殺される危険は格段に高まる。
 「血の同盟」を命じる覚悟が安倍政権にあるのか。あらためて問いたい。
■重い国会の責任
 国会の責任も重い。
 安保法案で国会は、自衛隊の活動に事前や事後の承認を求められている。政府は歯止め策の一つと強調する。
 しかし、特定秘密保護法が立ちはだかっている。
 集団的自衛権を行使する「存立危機事態」では、政府がそう認定した理由などを国会に報告すると規定している。
 だが、中谷元・防衛相は情報源や具体的な数値などは特定秘密保護法に基づき、非公開になると説明した。
 政府の判断で秘密にできるということだ。これで国会が期待される役割を果たせるだろうか。歯止めになるのか疑問だ。
 参院ではこうした懸念をただしてほしい。特に野党は対案を積極的に出してはどうか。
 衆院で維新の党と民主党が対案を出した。離島での自衛隊の警備活動が軍事的な緊張を高めかねないとの批判も浴びた。それでも論議を深めたことは確かだ。
 安保法案は、他国軍の後方支援や国連平和維持活動(PKO)など多様な論点をはらむ。
 「違憲」論争も何ら決着していない。安倍首相らは過去の最高裁判決や政府見解を持ち出し、「合憲」と繰り返すばかりだ。
 国の存立に関わる重要法案が、違憲性を疑われるようではあまりに心もとない。国会も学者任せにせず、問い続けるべきである。
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琉球新報 2015年7月16日 6:01
<社説>安保法案強行採決 民意顧みぬ政府の野蛮 廃案にして審判を仰げ


 平和国家たる戦後日本の礎が、あっけなく覆された。われわれは新たな「戦前」のただ中にいる。
 与党は衆院特別委員会で安全保障関連法案を強行採決した。歴代内閣が禁じてきた集団的自衛権行使に道を開く法案だ。憲法学者の大多数が違憲と指摘し、各種世論調査で国民の大半が反対する中での強行である。今は専制国家の時代か、ここは民主主義の国なのかと目を疑うほどの野蛮な光景だ。
 与党は衆院本会議でも強行採決する構えだが、民意に背く強行は許されない。国の形を一変させる法案だ。少なくともいったん解散し、国民の審判を仰ぐべきだ。
審議時間の偽装
 与党は「過去の重要法案と遜色ない審議時間だ」と言い繕うが、それは偽装にほかならない。
 特別委での審議は110時間を超え、確かに過去20年で4番目の長さとなった。だが法案は「平和安全法制整備法案」と「国際平和支援法案」の2本である。ことに前者は、周辺事態法や武力攻撃事態法など10本の法律の改正案を一つに束ねている。
 過去、武力攻撃事態法や国連平和維持活動(PKO)協力法は単独で約90時間を費やした。今回、束ねられた法案もそれぞれ専守防衛の国是に風穴を開けるほどの内容だ。それなのに、1本当たり実質的にたった数時間の審議で強引に可決したのである。
 時間だけではない。論議の質も問題だ。集団的自衛権行使の要件として安倍晋三首相は「存立危機事態」など新3要件を持ち出し、「厳格な歯止め」を強調した。だが要件は全て抽象語だ。何が対象になるか、首相は「手の内は詳細に言えない」と例示を避けた。憲法解釈も首相の胸先三寸で決める、「法治」ならぬ「人治」の国だ。どこに歯止めがあるか誰も分からない状態で、「審議を尽くした」と言えるはずがない。
 わずかに示した例では、ホルムズ海峡のタンカーも対象という。経済的利益のために軍を出すわけである。地理的限界もないから地球の裏側にも出動だ。他国軍に武器弾薬や食料も提供する。「兵站(へいたん)」を受け持つのを参戦と見るのは国際常識だ。参戦の機会を桁違いに広げておいて「わが国の安全が高まる」と言うのは、どう見ても倒錯の論理である。
 大戦後の集団的自衛権行使の例を見ると、ハンガリー民主化弾圧、ベトナム戦争、プラハの春弾圧と、全てが大国による小国への軍事介入だ。行使が相手国の怨嗟(えんさ)の的となるのは想像に難くない。今後、日本がテロの標的となる可能性は飛躍的に高まるだろう。
国民理解の結果
 この集団的自衛権行使容認で、米国が日本に米国の戦争の肩代わりを求めてくるのは火を見るより明らかだ。日本は戦後、米国の武力行使にただの一度も反対したことがない。徹頭徹尾、対米従属の国が、今後は突然反対できるようになるなど、空想に等しい。
 首相は明言しないが、専門家は、集団的自衛権行使の「本丸」は南シナ海での米軍の肩代わりだと指摘する。ベトナムやフィリピンの近海に自衛隊が出動するわけだ。日中間の偶発的衝突の危険性はにわかに現実味を帯びる。
 与党はよく「国民の理解が進んでいない」と言うが、言葉の使い方がおかしい。各種世論調査を見ると、審議が進むにつれ法案への反対は増えている。理解が広がらないどころか、国民はむしろ、政府の説明に無理があると知り、法案の危険性を「理解」した結果、反対を強めているのだ。
 衆院可決から60日たって参院が採決しなければ、衆院で再可決してよいとする暗黙の了解が、国会にはあるとされる。今回の強行採決がこの「60日ルール」から逆算してなされたのは間違いない。
 こんな単なる数合わせで戦後日本の在り方を根本から変えていいのか。このままでは参院の審議もまともになされるとは思えない。やはり廃案にすべきだ。
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沖縄タイムス 2015年7月16日 05:30
社説:[安保法案採決強行]憲法を破壊する暴挙だ


サクッとニュース
安保法案採決は憲法を軽んじ主権者を無視した暴挙というほかない
首相自ら「国民の理解が進んでいない」と認める中での強行
国民の多くが「ノー」という法案を強引に成立させるべきではない

安保法案の強行採決を伝える家電量販店のテレビ=15日午後0時28分、那覇市・ベスト電器天久店
 これほど憲法を軽んじ、立憲主義をないがしろにした事例がかつてあっただろうか。
 ほとんどの憲法学者が安全保障関連法案を違憲だと指摘し、世論調査で過半数の国民が法案に反対し、およそ8割の人たちが慎重審議を求めているにもかかわらず、数の力で採決を強行する。主権者を無視した暴挙というほかない。
 憲法と民主主義を守るためにも「違憲」法案を成立させてはならない。
 集団的自衛権の行使容認を柱とする安保関連法案が15日、衆院の特別委員会で自民、公明両党の賛成多数で可決された。法案は、自衛隊法、武力攻撃事態法など現行法の改正案10本を一括した「平和安全法制整備法案」と、他国軍の後方支援を随時可能とする「国際平和支援法案」という名の新法1本。
 法案の審議時間が14日までに113時間を超え審議は尽くされたと与党は主張するが、これだけ多様な法案を一括して提出したこと自体が問題なのであって、過去の審議時間は参考にならない。
 安倍晋三首相自ら「国民の理解が進んでいる状況ではない」と認めているように、採決できる状況にないことは誰が見ても明らかだ。
    ■    ■
 法案は、憲法9条の下で抑制していた「軍事力」を積極的に運用し、米軍を地球的な規模で支援していくねらいがある。
 だが、どのような状況の時に集団的自衛権を行使するのかという肝心な点について、政府の答弁は迷走を続けた。安倍首相は「総合的に判断する」と説明するが、解釈の余地を広げ、時の政権の恣意(しい)的な判断に委ねるようなものである。
 武力の行使という国の命運にかかわる事態があいまいで、文言の理解が内閣の中でも与野党の間でも共有されていないというのは致命的だ。
 自衛隊は「自国防衛のための必要最小限度の実力組織」だというのが政府の公式見解である。しかし、安保法案と「日米防衛協力のための指針」(日米ガイドライン)によって日米軍事一体化が進めば、自衛隊の役割は大きく変わる。
 法律でもない事務方が決めた指針が、憲法の規範を突き崩し、安保条約の規定を超えて最高法規のように作動するのである。日米ガイドラインとリンクした安保法案が対米従属法案と批判されるのはそのためだ。
 安倍首相は、米国で安保法案を夏までに成立させることを約束した。
 安倍首相は、中国を念頭に、安保法案によって「抑止力が向上する」と繰り返し強調する。それはほんとうだろうか。
 軍事力を過信し、対話の努力を欠けば、相互不信が高まり、不安定な軍備増強を招くおそれがある。いわゆる安全保障のジレンマと呼ばれる事態だ。東アジアはすでに安全保障のジレンマに陥っており、安保法案が逆に抑止力を低下させる可能性が高い。
 沖縄にとって深刻なのは、安保法案とガイドラインに基づいて沖縄要塞(ようさい)化が進められていることだ。名護市辺野古の新基地建設はその一環である。
    ■    ■
 安保法案が強行採決された15日、国会前では朝から抗議行動が続いた。テレビ・ニュースを見ていて胸に突き刺さったのは「安倍のために死んでたまるか」という強烈なシュプレヒコールだった。
 安倍政権は、この言葉の意味を深刻に受け止めるべきである。
 この若者のシュプレヒコールは、国民の理解が得られていないどころか、法案そのものに対する拒否反応が極めて強いことを物語っている。
 「敵意に囲まれた基地は機能しない」のと同じように、主権者である国民から「ノー」を突きつけられた安保法案は違憲訴訟にさらされ脆弱(ぜいじゃく)にならざるをえないだろう。
 そもそも国民から「ノー」を突きつけられた法案のために海外で武力行使の任務に従事する自衛隊員の苦悩や迷いを為政者は考えたことがあるのか。リスクが増えるのかどうかさえまともに答えられない政府の姿勢は誠実さを欠く。
 この状況の中で法案を強引に成立させるべきではない。
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