2015-07-18(Sat)

新国立競技場 白紙に 強行政治の行き詰まりだ

批判の声に耐えられず 混乱招いた決断の遅れ 無責任体制が迷走招く あまりに遅すぎる決断

舛添知事ツイッター 新国立問題で首相を批判
(東京新聞 2015年7月18日 夕刊)

新国立競技場の建設計画見直しをめぐり、東京都の舛添要一知事は17日夜、自身の公式ツイッターで、
政府が6月末に工費を2520億円と決定しながら、数週間後に安倍晋三首相が計画を「白紙撤回」したことに、
「主張の整合性よりも内閣支持率が優先か」などと批判した。
 
舛添知事の公式ツイッターは、1回につき1~2文をつぶやくことが多いが、17日夜は計5文を発信。

内容はすべて新競技場についてで、
「安倍総理は、1カ月前から見直しを検討したと言うが、それなら6月29日になぜ政府案を決定したのか」
と急な方針転換をいぶかしんだ。

その上で「この大失策に至った経過を検証し、責任者を処分することが不可欠だ」と強調した。


<各紙社説・論説・主張>
朝日新聞)新国立競技場問題―強行政治の行き詰まりだ(7/18)
読売新聞)新国立競技場 計画の白紙撤回を評価したい(7/18)
毎日新聞)「新国立」白紙に 混乱招いた決断の遅れ(7/18)
日本経済新聞)新競技場の見直しは当然だ (7/18)
産経新聞)「新国立」白紙に 祝福される聖地を目指せ(7/18)

東京新聞)新国立競技場 やっと常識が通ったか(7/18)
北海道新聞)「新国立」白紙 国民が納得する施設を(7/18)
東奥日報)決断遅らせた無責任体制/新国立競技場見直し(7/18)
秋田魁新報)新国立競技場 過大施設撤回は妥当だ(7/18)
岩手日報)「新国立」白紙に 無責任体制が迷走招く(7/18)

河北新報)新国立競技場/身の丈に見直すのは当然だ(7/18)
信濃毎日新聞)新国立競技場 批判の声に耐えられず(7/18)
京都新聞)新競技場見直し  あまりに遅すぎる決断(7/18)
山陰中央新報)新国立競技場見直し/責任明確にし抜本的に(7/18)
高知新聞)【新国立競技場】遅すぎた見直しの検証を(7/18)

熊本日日新聞)新国立計画見直し このタイミングはなぜか(7/18)
南日本新聞)[新国立見直し] 今度は建設に責任持て(7/18)




以下引用


朝日新聞 2015年7月18日(土)付
社説:新国立競技場問題―強行政治行き詰まり


安倍首相の言葉が空々しい。
 「国民の声に耳を傾けて」「世界から称賛される大会に」
 2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の計画見直しに、首相がやっと重い腰を上げた。
 わずか1週間前、国会で「時間的に間に合わない」と否定したのは、首相自身だった。
 急な心変わりは、審議を重ねるほど異論が高まった安全保障関連法案を、衆院で強引に採決したタイミングと重なり合う。
 せめて競技場の問題では、民意にこたえる指導者像を演じることで内閣支持率の低落傾向に歯止めをかけたい。そんな戦術と勘ぐられても仕方ない。
 空前の財政難のなか、競技場に無謀な巨費を投じる愚策だった。丁寧な説明と合意づくり、完成後もにらんだ長期の収支計画など、公共事業に求められる水準にほど遠い代物だった。
 「白紙に戻し、ゼロベースで見直す」(首相)との方針転換は至極当たり前の決定である。
 政府と東京都、大会組織委員会など各関係組織は、五輪・パラリンピックを成功させる国際責任を果たすとともに、後世の国民スポーツの底上げに資する堅実な計画を練り直すべきなのは言うまでもない。
■あいまいな責任所在
 問題の核心はむしろ、なぜ、この土壇場まで決断ができなかったのか、である。誰の目にも明らかな問題案件であり続けたにもかかわらず、なぜ止められずにここまできたのか。
 そこには、日本の病んだ統治システムの姿が浮かび上がる。すなわち、責任の所在のあいまいさである。
 下村文科相は情報が上がってくるのが遅れたと逃げ、事業主体の日本スポーツ振興センターは、計画変更の判断は文科省に責任があると押しつけあった。
 3千億円でも4千億円でも立派なものをと主張してきた大会組織委の森喜朗会長はきのう、「僕は元々、あのスタジアムは嫌だった」「誰も責任はない」と言い放った。
 当初予算からほぼ倍増した建設費と、完成後の維持費をどう工面するのか。政府の説明にはいくつも疑問が突きつけられ、あやふやに終始した。
 「誰が責任をとるのか」。舛添要一・都知事が漏らした怒りの声はもっともだったが、その知事も含めて今に至るも、誰が最終責任者なのかが見えない。
 本紙が報じた国会議員の発言は驚くほかなかった。「責任の行き着く先は、安倍晋三と森喜朗という2人の首相になるから誰も鈴を付ける人がいない」
 権力を握った者がにらみをきかせれば、無理が通る――。露呈したのは、首相や有力政治家が絶対君主のようにふるまい、たとえ同じ政党のメンバーでも異論を言えない。そんな日本の政界の有り様である。
■民意軽視が常態化
 世論に押された末の今回の決定は、安倍流政治の行き詰まりも物語っている。
 競技場問題が迷走した過程で一貫していたのは、異論を遠ざける姿勢だった。政策決定の責任者たちが、国民の声に耳をふさぐことが常態化している問題は深刻だ。
 「デザインが景観にそぐわない」「巨大すぎる」「工費が膨れあがりかねない」。国際コンペで採用されたデザインについては当初から、建築界や市民団体から異論が噴出していた。
 昨年5月に基本設計案を了承した時も含め、見直す機会は何度もあった。デザインが決まったのは「民主党政権のときだ」と下村文科相は責任転嫁めいた釈明もした。
 だが、ことごとく引き返すチャンスを逃してきたのは安倍政権だったことを猛省すべきだ。
■安保と原発にも通底
 民意を顧みず、説明責任を避け、根拠薄弱なまま将来にわたる国策の決定を強行する――。
 それは競技場問題に限った話ではない。国民が重大な関心を寄せる安保関連法案や、原発関連行政にも通底する特徴だ。
 首相や閣僚らが意味不明な国会答弁を重ね、国民の疑問は置き去りにされている安保法案。国民の安全に関する最終責任がどこにあるのか見えないまま、再稼働に突き進もうとしている原発の問題。
 そのいずれでも国民の多数がはっきりと強い懸念を示している。国民の命と安全に直結する問題だというのに、首相は国会での数の力で押し通し、異論に敬意を払おうとしない。
 政治権力者が民意に耳をふさぐなら、学者や市民の異議申し立てが熱を帯びるのは当然だ。これ以上、政治と国民の距離を広げてはならない。
 急に競技場計画を見直す理由として、首相は「主役は国民一人ひとり、アスリートの皆さんです」と語った。ならば安保も原発も、あらゆる政治課題でも、主役は国民一人ひとりであることを悟るべきだ。
 今回の競技場問題から、くむべき教訓は広く、重い。
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読売新聞 2015年07月18日 01時24分
社説:新国立競技場 計画の白紙撤回を評価したい


 安倍首相が、新国立競技場の建設計画を白紙に戻すことを表明した。
 財政難の中、2520億円もの巨費を投じて建設に突き進むことには、そもそも無理があった。「ゼロベースで計画を見直す」とする首相の決断を評価したい。
 計画に対しては、世論の批判が強まる一方だった。与党内からも疑問視する声が上がっていた。
 首相は、「国民、あるいはアスリートたちからも大きな批判があった」ことを見直しの理由に挙げた。2020年東京五輪・パラリンピックについて、「みなさんに祝福される大会でなければならない」とも強調した。
 国を挙げて東京五輪を成功させるには、大会のシンボルである新国立競技場に不信の目が向けられる事態は避けねばならない。
 工費膨張の元凶だった2本の巨大アーチ構造に見切りをつけた首相の判断は、遅きに失したとはいえ、適切である。
 計画見直しにより、19年のラグビーワールドカップに間に合わなくなっても、やむを得まい。
 下村文部科学相や、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長らは、五輪招致の際、新国立競技場の斬新なデザインが、高い評価を得たと強調してきた。抜本的な計画変更は、国際的な公約違反に当たるとも訴えた。
 だが、建設コストの削減が、国際オリンピック委員会(IOC)が開催都市の負担軽減を目的に進める五輪改革の趣旨に合致することは間違いない。
 デザイン変更に伴う違約金が発生しても、巨大アーチを取りやめることによるコスト節減で、容易に補えるだろう。
 1300億円の建設費を想定した12年の国際コンペで、審査委員長を務めた建築家の安藤忠雄氏は、16日の記者会見で、「コストについて、徹底的な議論はなかった」と釈明した。
 当初から関係者にコスト意識が乏しかったというわけだ。巨大アーチ構造は工費がかさむことが分からなかったのだとしたら、専門家として、お粗末である。
 首相は、下村文科相と遠藤五輪相に対し、直ちに新たな計画作りに着手するよう指示した。
 重要なのは、五輪までに確実に完成させることだ。工期は限られているだけに、デザイン選定や基本設計で失敗は許されない。
 責任の所在や権限があいまいだったことが、これまでの迷走の原因である。それを教訓に、作業を効率的に進めねばならない。
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毎日新聞 2015年07月18日 02時31分
社説:「新国立」白紙に 混乱招いた決断の遅れ


 総工費が2520億円に膨らみ、国民の批判が集中している新国立競技場の建設計画が白紙に戻ることになった。安倍晋三首相は2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長らと会談後、「ゼロベースで計画を見直し、できる限りコストを抑制したい」と話した。「負の遺産」としないためには当然の判断だが、混乱を招いた責任はどこにあるのか今後の検証が必要だ。
 財源のめどが立たず、景観を損ねるなど、さまざまな問題や矛盾を抱えた計画であることは以前から指摘されていた。事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が7日に開催した有識者会議では、年間の修繕費が約10億円もかかり、これとは別に完成後50年間で1000億円を超える大規模修繕費が必要になることも明らかになった。五輪後に設置を先送りした開閉式屋根の工事費などを加えれば最終的には3000億円を超える恐れが出てきた。
 各種の世論調査では計画の見直しなどを求める人が圧倒的多数を占めた。それでも安倍首相は工期を理由に見直しには否定的で、菅義偉官房長官も現行案が「国際公約」であることを挙げ、「安易にデザインを変更することは、我が国の国際的信用を失墜させかねない」と計画を強行する姿勢を見せていた。
 政府が一転見直す方針を固めたことが明らかになったのは、国民の幅広い同意が得られていない安全保障関連法案を衆院本会議で強行採決した日だった。安保法案が支持率低下の要因となる中、国民の支持をつなぎ留めたいとの思惑があったのではないか。
 安倍首相は記者団に対し「国民の声に耳を傾け」、方針転換を決断したと強調した。そうであれば、安保政策、沖縄の普天間移設問題、原発政策についても国民の声に謙虚に耳を傾ける姿勢を示してほしい。
 混乱の原因は責任の所在が明確でなかったことにもある。膨れ上がった建設費の不足を補うため下村博文・文部科学相が東京都の舛添要一知事を訪ね、約500億円の費用負担を要請したが、舛添知事から負担の根拠を問われ、満足な返答ができなかった。新しい計画の策定にあたってはJSC、文科省の責任や役割分担を明確にしたうえで国民に開かれた議論を進めてほしい。
 新国立は19年9月開幕のラグビー・ワールドカップで使用しないことになり、工期に余裕は生まれたが、残された時間は長くない。代替案を公表している建築家グループは現行デザインの設計、施工を進めてきたチームが引き続き担当することで効率的な作業が可能になるとしている。ぜひ検討してほしい。
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日本経済新聞 2015/7/17付
社説:新競技場の見直しは当然だ


 ようやく重い腰が上がるのだろうか。2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場の建設計画の見直しを、政府が検討し始めた。
 整備費が当初の計画を5割以上も上回る2520億円と公表されてから、20日近く。破格の費用で財源も不透明なうえ、完成後の収支も大幅に悪化するとの見通しに、一般の市民のみならず五輪出場経験のあるアスリートたちからも批判の声があがっていた。
 昨今の世論調査では、計画について「見直すべきだ」「納得できない」とする回答が7~8割にも上っている。
 日本は少子高齢化が進む成熟した国家である。数十年に1度のスポーツの祭典とはいえ、できるだけお金をかけずスマートに運営したい。そんな国民の良識が政治を動かしたともいえよう。
 安倍晋三首相は16日、「国民の声に耳を傾ける」などと語った。行動で示してもらいたい。
 今のところ見直し案の具体的な中身は明らかにはなっていないが、焦点は巨大な2本の鉄骨「キールアーチ」を残すのか、やめるのか、になるだろう。
 独創的なデザインが五輪招致の際の「国際公約」なのは事実だが、整備費が膨張した主因でもある。工費を大幅に減らすため、専門家の知恵を借りながらアーチ案を変える英断を下すべきだ。
 当初、新競技場の完成は19年9月のラグビーW杯の開催に間に合わせるはずだった。見直せば完工が遅れる可能性は高い。W杯は会場の変更も含めた柔軟な対応が必要になってくる。所管の文部科学省などは競技関係者に向けて丁寧に説明してほしい。
 気になるのは、安倍政権への支持のかげりと時期を合わせるようにして新競技場を見直す考えが政府・与党内で浮上したことだ。
 政権への悪影響を回避するといった動機を優先して、見直しの徹底を怠るようでは困る。国民は本気度を注視している。残された時間は少ない。
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産経新聞 2015.7.18 05:01
【主張】「新国立」白紙に 祝福される聖地を目指せ


【新国立「白紙」】 2020年東京五輪のメーン会場となる新国立競技場の建設計画について、安倍晋三首相が白紙に戻すと表明した。遅すぎたとはいえ、首相の決断は妥当である。必ず五輪までに、国民や選手に祝福される聖地を完成させなくてはならない。
 当初計画の1625億円から2520億円に跳ね上がった総工費を伴うデザインには、明らかに無理があった。このまま計画を強行すれば、さらに工費が膨らむ恐れもあった。
 安倍首相は「五輪の主役は国民一人一人であり、アスリートの皆さんだ」と述べ、その主会場である新国立の建設計画を白紙撤回する理由とした。新たな計画には、五輪招致時に掲げた「アスリートファースト(選手第一)」の理念に立ち返ることが望まれる。
 サッカー・ワールドカップ(W杯)の招致基準となる8万人収容の観客席など、国際規格を満たす競技場を建てるという原点も忘れるべきではない。
 白紙からの出直しには、時間という大きな制約がある。完成予定は20年春にずれ込み、19年に日本で開催されるラグビーW杯には間に合わない見通しだ。五輪の成功のためにやむを得ない判断だが、一連の混乱の責任の所在は明らかにすべきである。
 完成を五輪に合わせるためには、事業主体の文部科学省と日本スポーツ振興センター(JSC)に再び丸投げすることなく、国土交通省や東京都、経済界を含むオールジャパン体制で臨むべきだ。五輪招致時の一体感を取り戻してほしい。
 首相の決断を強く促したのは、OBを含むアスリートから相次いだ批判の声だったとされる。スポーツ界はもっと早く、大きな声を出すことができなかったか。
 強化費の多くを国費に頼る現状で、組織に属する選手は意見をしにくい立場にある。しかし五輪や競技場の主役は選手なのだ。スポーツ行政を動かすのは、競技現場の声であることを、現役選手たちにも自覚してもらいたい。
 安倍首相も述べたように、五輪も国立競技場も、国民に祝福されるべき存在である。決して負の遺産となってはならない。幸い、国際オリンピック委員会(IOC)は、新国立の建設計画の変更に理解を示しているという。
 もうこれ以上の遅滞や混乱は許されない。
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東京新聞 2015年7月18日
【社説】新国立競技場 やっと常識が通ったか


 やっと常識が通ったか。工費が膨らみ、強い批判を浴びていた新国立競技場の建設計画を、安倍晋三首相は白紙に戻すと表明した。民意を踏まえ、だれからも愛される競技場を造ってほしい。
 とはいえ、国民の反対の声に真摯(しんし)に向き合った結果だと、だれが素直に信じられようか。
 「違憲立法」の疑いが濃い安全保障関連法案の衆院通過を見計らったかのように持ち上がった計画の見直し論でもある。政府全体とすれば遅すぎた判断ともいえる。しかし、見直しを約束した以上、早急に本腰を入れてもらいたい。
 工費高騰の要因は、巨大なアーチ構造だった。三年前の国際コンペで選ばれたデザインが基になったが、約千三百億円の当初予算枠の二倍近くにまで増えた。
 財源のめども立たず、将来の収支見通しも大幅に悪化した。無謀というほかない建設計画だった。
 元ラグビー日本代表の平尾剛さんが「こんな不条理は断じて許せない」と声を上げたように、異議申し立てのうねりはスポーツ界にも広がった。アスリートたちがより深く不安を感じていた。白紙撤回は当然である。
 五輪招致での「国際公約」として見直しに後ろ向きの声も出ていたが、背に腹は代えられない。五輪改革の一環として経費削減や持続可能性を掲げる国際オリンピック委員会(IOC)も、きっと理解と協力を惜しまないはずだ。
 文部科学省はコンペをやり直し、五輪・パラリンピックの本番を迎える二〇二〇年の春までの完成を目指す。前年秋のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会は主会場の変更を強いられるが、代替施設もやむを得まい。
 残された時間は少ない。
 今度こそ忘れてならないのは国民への情報公開と丁寧な説明、合意づくりの手続きである。神宮外苑の歴史や文化、水と緑の環境との調和を求める声は根強い。
 文科省と現場の手足となる日本スポーツ振興センター(JSC)は権限と責任を明確にし、組織を立て直す必要もある。負担をめぐり亀裂が入った東京都との信頼関係も回復せねばならない。
 東日本大震災や原発事故の被災地の復興を願い、常識的なデザイン、予算枠で造る。そうして初めて新競技場は五輪のシンボルとなり、輝かしい遺産となる。
 安倍首相は「五輪は国民の祭典だ」と述べた。その通りだ。関係者全員が胸に刻んでもらいたい。
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北海道新聞 2015/07/18 08:55
社説:「新国立」白紙 国民が納得する施設を


 安倍晋三首相は、2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の建設計画を白紙に戻すことを正式表明した。
 総工費が当初計画の2倍近い2520億円に上ったことに、国民の批判が高まる一方だった。白紙化は当然である。
 競技場のデザインについては、あらためて国際コンペを開催し公募するという。
 国際オリンピック委員会(IOC)は五輪改革の一環として、コスト削減を進めている。その方針に従い、国民が納得する施設を造るという基本に立ち戻るべきだ。
 首相は白紙化の理由について「国民の批判があった」と述べ、「1カ月ほど前から見直せないか検討してきた」と強調した。
 しかし、規模縮小で3千億円の総工費が2520億円に圧縮された計画が6月下旬に公表された際は、何の異論も唱えなかった。
 今月10日の国会答弁でも「(計画を見直せば)五輪に間に合わない可能性が高い」と消極的だった。どこで考えが変わったのか。
 見直し論は、安保法案が衆院特別委で強行採決された15日に突然浮上した。
 19年9月のラグビーワールドカップ(W杯)で新競技場使用を要望していた日本ラグビー協会前会長の森喜朗元首相には、安倍首相自ら使用できないことを伝えた。
 政府・与党内には安保法案の扱いに続いて、新競技場の問題でもつまずけば内閣支持率がさらに下がるとの声があった。
 建設計画の白紙撤回で支持率低下を食い止めようとの思惑があるとすれば、それこそ筋違いだ。一連の混乱の責任は誰にあるのか。
 まず、破格のデザインに関してだ。建設主体である日本スポーツ振興センター(JSC)のデザイン審査委員会委員長で、建築家の安藤忠雄氏は「自分は選んだだけ」と自らの責任を否定した。
 当のJSC自身「(現行計画を)やめる、やめないは文科省が決めることだ」と当事者であることを否定していた。責任のなすりつけあいではないか。
 その揚げ句に、世界に示していたデザインの撤回である。こんなことがあってはならない。
 そもそも、五輪主会場建設に1千億円以上費やした例はない。北京五輪は420億円、ロンドン五輪も610億円だった。
 新国立競技場は当初から1千億円を超す計画だったが、膨らんで2520億円になった。国際的な相場観に戻すのが常識だろう。
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東奥日報 2015年7月18日(土)
社説:決断遅らせた無責任体制/新国立競技場見直し


 巨額の総工費が批判を招いていた新国立競技場について、安倍晋三首相は建設計画案の白紙撤回を表明、工費を縮減した新計画案の早急な策定を関係閣僚に指示した。
 2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場は、当初の国際コンペ段階で工費を1300億円と想定していたが、どんどん膨れ上がり2520億円に達していた。あまりにもずさんな計画であり、見直しは当然といえる。
 世論の批判に耳を傾けず、見直しの決断がここまで遅れた責任は誰にあるのか。建設主体の日本スポーツ振興センター(JSC)も、同センターの所管官庁である文部科学省も責任を押しつけるような言動に終始してきた。
 安倍首相は東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗元首相と会談し、計画変更に了解を得た後、「計画を白紙に戻しゼロベースで見直す」と表明した。だが、わずか1週間前の国会答弁では、デザインの変更は「五輪に間に合わない可能性が高い」と否定的な見解を示していたはずだ。
 方針転換の背景には、安全保障関連法案の衆院採決の強行に対する厳しい世論の批判を和らげる計算もあると指摘される。「政治主導」の方針転換をアピールする狙いだろう。しかしここまで放置してきた安倍官邸の責任も重い。
 総工費が膨れ上がった最大の要因とされるのは、屋根を支える2本の巨大キールアーチというデザインだった。下村博文文科相はこのデザインを撤回、コンペをやり直し、半年以内に新たなデザインを決定すると説明した。完成は20年春で東京五輪には間に合うとしている。
 政府関係者は総工費1600億円程度なら理解が得られるとの認識を示しているという。しかし冷静な見極めが必要だ。縮減すると言っても当初の想定よりも高額であり、08年・北京、12年・ロンドンの五輪会場と比較しても突出している。
 デザイン採用を決めた審査委員会で委員長を務めた建築家の安藤忠雄氏は「頼まれたのはデザイン案の選定まで」とコスト増に対する責任を否定。森元首相は「もともとあのスタイルは嫌だった」と述べた。「無責任体制」と言わざるを得ない。今度は誰が責任を持って決定するのか。その点を明確にして体制を立て直す必要がある。
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秋田魁新報(2015/07/18 付)
社説:新国立競技場 過大施設撤回は妥当だ


 2020年の東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の建設計画について、安倍晋三首相が白紙に戻すことを明らかにした。総工費が当初見込みの1300億円から2520億円に膨らんだことによる批判の高まりを受けて判断した。
 過大な施設で建設費や維持管理費を後世まで負担させ、五輪そのものにマイナスイメージを与えないためには妥当な判断だと言える。
 だが当初案決定の直後から疑問や批判が相次いだことを考えれば、もっと早く決断できたのではないか。コストを十分検討しなかった整備主体の日本スポーツ振興センター(JSC)と、所管する文部科学省はもちろん、政府の責任は重い。
 新競技場案は12年11月に国際公募で決まった。だが、国内で名のある建築家たちからは神宮外苑の落ち着いた雰囲気にそぐわない巨大さに異議の声が上がったほか、工法が複雑で費用がかさむのは確実だとの指摘もあった。事実、総工費は計画が進むにつれて跳ね上がった。
 下村博文文科相はきのう、公募をやり直して半年以内にデザインを決め、20年春の完成を目指すと述べた。新競技場は19年のラグビーワールドカップ会場ともなる予定だったが、見直しによって間に合わなくなった。
 政権内では1カ月ほど前から変更が可能かどうか検討していたという。だが菅義偉官房長官は8日の記者会見で「安易な変更は国際的信用を失墜しかねない」、首相も10日の衆院特別委員会で「新たにデザインを決めるのは間に合わない可能性が高い」と述べていた。
 それが、ここにきて方針を改めた背景に、政権批判を少しでも和らげる狙いがあったのは明らかだ。世論調査で新競技場の計画に納得できないとの回答が7、8割に上ったという一部報道を受け、慌てて見直しに走ったという印象だ。
 新競技場への対応をこれ以上誤れば政権が受ける打撃は計り知れず、国民の反発が根強い安全保障関連法案の参院審議への影響も必至だ。首相は「国民や選手に祝福される大会とするため」の決断だとしているが、さらなる批判を食い止めるためには自らが表に立って白紙化を表明するしかなかった。
 首相らは当初案による建設は国際公約としていた。遠藤利明五輪相は今月31日からの国際オリンピック委員会総会で見直しの方向性を報告する予定で、それまでにどれだけ見直し作業を進められるかが国際社会の理解を得るための鍵になる。
 JSCと文科省は、ここまで迷走した事態と、今後取り組む作業について責任の所在を明確にする必要がある。その上で、コストや工期とともに国民への説明責任を果たし、不信や疑問を取り除かなければならない。それができなければ真に祝福される五輪とはならないだろう。
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岩手日報(2015.7.18)
論説:「新国立」白紙に 無責任体制が迷走招く


 迷走を続けた新国立競技場問題は、建設計画を見直すことになった。膨張した総工費の圧縮に向け、計画を白紙に戻すことを安倍晋三首相が表明した。多くの国民から批判が出ていただけに、当然の判断と言えよう。
 しかし、これまでの経緯を振り返るとき、暗たんたる思いに駆られる。それは、一度決めたら突っ走る公共事業の姿や、関係者の無責任体制を目にしたからだ。
 2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとして技術力を国際社会にアピールする施設になるはずだったが、日本の構造的な問題を露呈する形となった。
 五輪に向けて整備を急がなければならないが、その前に行うことがある。一体どうしてこんなことになったのかの総括だ。そうでなければ、同じことを繰り返してしまうだろう。
 当初の総工費見積もりは1300億円だったが、五輪開催の決定後、「最大約3千億円」に。その後、延べ床面積の縮小による1852億円に抑える修正案が出され、基本設計段階では1625億円となった。
 しかし、結局2520億円に膨張。事業主体の日本スポーツ振興センターの有識者会議はあっさり了承した。
 この間、国内の建築家たちからデザイン見直しを求める声が上がったが、受け入れられなかった。19年のラグビーワールドカップ日本大会も絡み、政府は「見直せば間に合わなくなる恐れがある」「デザインは国際公約」と応じなかった。耳を傾けていたらもっと早く次善の策を取れたはずだ。
 批判が高まる中で下村博文文部科学相は、デザイン採用の審査委員長を務めた建築家安藤忠雄氏に対し、「堂々と自信を持って、なぜ選んだのか発言してもらいたい」と要求。安藤氏は「私ももっと(コストが)下がらないか聞きたい」と語った。
 これはお互いに責任を転嫁するようなものであり、何ともやるせない。ほかにも責任回避の言動が各方面から聞かれた。いずれ、責任がどこにあったのかはっきりさせる必要がある。
 今回の騒動は、五輪運営の在り方への疑問や建築界への失望をもたらすなど影響は大きい。計画見直しに当たっては、国民の理解を得られるよう十分な説明を尽くしながら進めなければならない。
 突然の方向転換の背景には、安全保障関連法案で低下した政権の支持率があるのではないか。新国立競技場の見直しで政権批判を和らげたい思惑がのぞく。世論と謙虚に向き合わない姿勢には厳しい視線が突きつけられることを肝に銘じるべきだ。
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河北新報 2015年07月18日土曜日
社説:新国立競技場/身の丈に見直すのは当然だ


 これだけ総工費が膨らめば計画を見直すのは当然だ。
 強まる世論の風圧を受けて、安倍晋三首相がきのう、白紙に戻し、ゼロベースで見直すことを表明した2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアム、新国立競技場の建設計画である。
 安全保障関連法案の衆院強行採決と相まって、政権批判が高まることを警戒。傷口が大きく広がる前に、抜本見直しが必要と判断したものだ。
 安倍首相は記者会見で「1カ月ほど前から見直せないか検討していた」と説明。「19年のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会には間に合わせることはできない」とも述べた。
 ならば、五輪開催決定時の「国際公約」と、ラグビーW杯の日程をにらんだ「工期」を理由に、現行計画にこだわった政府の一連の国会答弁は何だったのか。
 無理、むちゃ、無駄があっても一度決めたら止まらないのが公共事業。見直しによって、最悪の事態は避けられるにしても、致命的な欠陥を承知しながら、時間を浪費し続けた政府の責任は免れない。熟慮を重ねた計画づくりと丁寧な工事の機会を奪うことになりかねないからだ。
 工期と適正な事業規模を見定め、スポーツの聖地にふさわしい施設へ、計画の組み立て直しを急がねばならない。
 迷走の経緯を振り返る。新競技場の総工費は当初、1300億円の見積もりが設計段階で1625億円に増え、最終的には2520億円に膨らんだ。北京大会の主会場500億円、ロンドン大会800億円の3~5倍で、五輪後に先送りした開閉式の屋根などを整備すれば、3千億円に達する可能性もあったという。
 財政に余裕があり、財源の見通しが立つならまだしも、約2千億円は未定のまま。国民負担をできるだけ少なくすると言ってはみても、最後に頼るのは税金で、世論が反発するのはもっともだ。
 国際コンペで値の張る斬新なデザインを選定した理由は「インパクトがある」。総工費の見積もりに読み切れない面があったにしても、コスト意識の薄さは驚くばかりだ。
 抜本的な見直しによって、デザインの選定からやり直すという。その際、踏まえるべきは徹底したコスト管理である。見栄えのする外観や規模で得られる一時の高揚感と引き換えに、将来にツケを残し、次世代の夢をしぼませてはならないということだ。
 現実に即しながら、五輪開催という「夢の舞台」づくりに知恵を絞りたい。時間の制約がある中、日本の底力が問われる局面と言っていい。
 国の借金は、1千兆円を突破している。安倍政権は五輪開催年の20年度に「基礎的財政収支の黒字化」という財政再建の目標を「国際公約」に掲げてもいる。
 身の丈にあった新競技場は超高齢社会、人口減少時代における公共事業の試金石となる。国際的信用を失墜させるどころか、適正な事業規模で持続可能な開催をうたう国際オリンピック委員会(IOC)の改革方向に沿い、震災復興事業へのしわ寄せを懸念する被災地の思いにもかなう。
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信濃毎日新聞 2015年07月18日(土)
社説:新国立競技場 批判の声に耐えられず


 2020年の東京五輪の主会場として建設する新国立競技場について、安倍晋三首相が計画を白紙に戻して見直すことを表明した。迷走を重ねてきた計画である。遅きに失した感は否めず、時間は限られるものの、徹底的に練り直し、幅広い理解が得られるものにしなくてはならない。
 現計画は、総工費が2520億円に上り、財源を確保できるめどが立っていなかった。にもかかわらず、実施設計がすんなり了承され、“見切り発車”することに強い批判が出ていた。
 当初予定した1300億円の2倍近くにまで建設費が膨らんだ計画は、ずさんとしか言いようがない。完成後も維持経費と別に大規模改修費が50年間で1千億円かかるとされ、将来にわたって国民に大きな負担を強いかねない。抜本的な見直しは当然である。
 五輪のためとはいえ、威容を誇る施設は要らない。競技場として十分な機能を備えていれば簡素でいい。財源の手当てが難しいならなおさらである。過去の五輪主会場と比べても建設費は突出している。大幅に削減すべきだ。
 建設費と工期の両面で最大の懸案だったのが、巨大な2本のアーチで屋根を支える構造だ。国際公募して採用したデザインの最大の特徴だが、技術的に困難で、建築家の槙文彦氏らは巨大アーチをやめる代替案を示している。
 見直しにあたって政府や関係組織に求められるのは、何よりも議論の透明性を確保することだ。現計画はどんな経緯で決まったのかが見えにくく、それが迷走の原因にもなった。時間がないことを言い訳にしてはならない。
 巨大な競技場の建設に対しては、景観や環境への影響の面からも、住民らが反対の声を上げてきた。聞く耳を持たずに進めてきた姿勢は改めるべきだ。
 建設主体の日本スポーツ振興センターや、計画を承認してきた有識者会議、所管する文部科学省の関係者らからは、当事者意識の薄い発言が目立つ。責任の所在を明確にすることも欠かせない。
 実施設計の段階で政府は、「もう間に合わない」として計画の見直しを見送っていた。ここへ来て方向転換した裏には、安全保障関連法案をめぐって高まる政権批判をかわす意図が見え隠れする。
 見直し論が浮上したのは、衆院の特別委員会で法案が強行可決された当日。「目くらましだ」という声が出るのはもっともだ。それだけに、今後どう進むかを注視していく必要がある。
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[京都新聞 2015年07月18日掲載]
社説:新競技場見直し  あまりに遅すぎる決断


 なぜもっと早く決断できなかったのか。
 安倍晋三首相は、2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場の建設計画を白紙に戻すと表明した。総工費が2520億円に膨らんだことへの厳しい世論を受け、費用の縮減に向けゼロベースで見直すという。
 二転三転した建設計画の迷走は、関係機関のずさんな見通しと内輪の議論だけで進めた結果であり、容認してきた政権の責任も重い。今秋に新たな整備計画をまとめるとするが、どんな大会や施設を目指し、費用負担はどうあるべきか、招致で掲げた「コンパクトな五輪」の原点に立ち戻って国民に開かれた議論を求めたい。
 安倍首相は、見直す理由を「コストが大幅に膨らみ、国民から批判があった」と説明した。世論の猛反発から与党内でも批判が噴出し、五輪メダリストら競技者からも疑問の声が相次ぐ状況に対応を迫られたのは確かだろう。
 ただ、このタイミングでの見直し表明には政治的計算も感じる。首相は「1カ月前から検討していた」と言うが、この間、政府は事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)の計画決定や資材発注を黙認してきた。国会答弁で完成が間に合わないと見直しを否定し続けたのは何だったのか。
 安全保障関連法案の強行採決で支持率低下が加速しかねない中、新競技場問題で政権批判の目をそらす思惑が透けて見える。首相自ら大会組織委員会会長の森喜朗元首相と会い、計画見直しと19年秋のラグビーワールドカップでの使用断念に了解を得たのも政治決断のパフォーマンスにさえ映る。
 政府はコストの上限を含む整備計画に沿って新たなデザイン公募を行う方針だ。来年初めごろ設計、施工に入れば、従来必要と説明してきた61カ月でなく、20年春までに50カ月余りで完成可能という。
 だが、当初予定1300億円の総工費が不透明に倍増した現行計画を、財源の見通しも国民への説明もなく進めてきたことへの批判は強い。JSCと文部科学省は責任をなすりつけ合い、巨額のアーチ構造を見直す建築家らの提言にも耳を貸さなかった。この無責任体制を改めねば繰り返しになろう。
 時間的な制約はあるが、新計画案の内容や工費、財源を国民に明らかにして透明性ある議論を進めるべきだ。派手な器で国の威信を示すより、競技者や観客にとって使いやすい施設や機能の充実を世界にアピールしたい。
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山陰中央新報 ('15/07/18)
論説 : 新国立競技場見直し/責任明確にし抜本的に


 巨額の総工費が批判を招いていた新国立競技場問題で、安倍晋三首相は建設計画案を白紙に戻して見直すと表明、工費を縮減した新計画案の早急な策定を関係閣僚に指示した。
 2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場は、当初の国際コンペ段階で工費を1300億円と想定していたが、どんどん膨れ上がり2520億円に達していた。あまりにもずさんな計画で、見直しは当然といえる。
 世論の批判に耳を傾けず、見直しの決断がここまで遅れた責任は誰にあるのか。建設主体の日本スポーツ振興センター(JSC)も、同センターの所管官庁である文部科学省も責任を押しつけるような言動に終始してきた。責任の所在を明確にし、国民が納得できる抜本的な計画案をつくり、きちんと説明すべきだ。
 安倍首相は東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗元首相と会談し、計画変更に了解を得た後、「計画を白紙に戻しゼロベースで見直す」と表明した。
 だが、わずか1週間前の国会答弁では、デザインの変更は「五輪に間に合わない可能性が高い」と否定的な見解を示していたはずだ。「1カ月ほど前から見直せないか検討してきた」と記者団に述べたが、この釈明は信じがたい。
 方針転換の背景には、安全保障関連法案の衆院採決の強行に対する厳しい世論の批判を和らげる計算もあると指摘される。「政治主導」の方針転換をアピールする狙いだろう。しかしここまで放置してきた安倍官邸の責任も重い。
 総工費が膨れ上がった最大の要因は、屋根を支える2本の巨大キールアーチというデザインだった。下村博文文科相はこのデザインを撤回、コンペをやり直し、半年以内に新たなデザインを決めると説明した。完成は20年春で東京五輪に間に合うとする。
 政府内では、総工費を1800億円程度とする方向で検討されているという。しかし冷静な見極めが必要だ。縮減と言っても当初の想定よりも大幅に高額で、08年・北京、12年・ロンドンの五輪会場と比較しても突出している。
 計画見直しによって、19年に開催されるラグビー・ワールドカップ(W杯)には間に合わないが、国内には他にも大きなスタジアムはある。代替実施は当然だろう。
 新競技場のデザインはJSCが国際コンペで選定した。計画案には当初から著名な建築家らから批判の声が上がっていた。しかしJSCも文科省も新競技場が五輪招致の際のシンボルで、建設は「国際公約」だと見直しを拒否してきた経緯がある。
 デザイン採用を決めた審査委員会で委員長を務めた建築家の安藤忠雄氏は「頼まれたのはデザイン案の選定まで」とコスト増に対する責任を否定。森元首相は「もともとあのスタイルは嫌だった」と述べ、責任は文科省にあるとの認識を示した。「無責任体制」と言わざるを得ない。
 安倍首相は「五輪は国民の祭典。主役は国民一人一人でアスリートの皆さんだ。皆に祝福される大会でなければならない」と述べた。その通りである。誰が責任を持って決定するのか。その点を明確にして体制を立て直す必要がある。
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高知新聞 2015年07月18日08時08分
社説:【新国立競技場】遅すぎた見直しの検証を


 すったもんだの混乱と国民の強い批判の中で、政府がやっと決断した。2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場の見直しである。
 総工費が当初見積もりの1300億円を大幅に上回る2520億円に膨らみ、五輪終了後も改修や維持管理に巨額の費用が必要になる。そんな施設の建設が許されるはずがない。白紙から見直すのは当然であり、決定は遅すぎるぐらいだ。
 安倍首相は見直しの理由について「コストが当初の予定よりも大きく膨らみ、国民から批判があった」と説明した。国民の良識が見直しへの背中を押したのは事実だろう。
 しかしコストの問題は、下村文部科学相が総工費を最大約3千億円と発表した13年10月には既に分かっていたはずだ。だからこそ当初計画の一部変更や先送りなどで工費を圧縮し、それでも最終的に2500億円以上で決着したのではなかったのか。
 安倍首相は今月10日の国会で、競技場のデザインを変更することは困難だとの認識を示している。この方針の下、遠藤五輪相、下村文科相も現行計画の推進を国会で強調している。「困難」が数日で「可能」に急変した説明が必要だ。
 競技場のデザインは12年の国際コンペで決まった。2本の巨大なアーチ状の構造物が特徴だが、建設には巨費を要する。競技場のコスト問題は建設資材の高騰以前に、基本的構造に問題があることが分かっている。
 競技場を白紙から見直すなら、出発点からの検証が必要だ。財源をどうするのか、計画が二転三転した責任がどこにあるのか。これまでの経緯はあまりにも不透明で、無理な計画を強引に推し進めてきた責任がどこにあるのかさえ分からない。
 改めるべき点を改めずして計画を見直しても、小手先だけのものに終わりかねない。巨額の税金や寄付金など国民に負担を求める以上、決定までの経緯が透明でなければならない。国会での議論はもちろん、すべての過程を公開で行うべきだろう。
 競技場のデザイン見直しに伴う損害賠償や違約金の問題などを含め、見直しには大きな政治的責任が伴う。国際的にも信用を傷つけた新国立競技場問題は、見直すからいいだろうではなく、見直し方こそが問われる。
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熊本日日新聞 2015年07月18日
社説:新国立計画見直し このタイミングはなぜか


 安倍晋三首相は17日、2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場の建設計画を白紙に戻し、ゼロベースで見直すと表明した。これに先立ち、首相は東京五輪の大会組織委員会会長の森喜朗元首相と会談し、了解を取り付けた。
 首相は会見で「国民やアスリートの声に耳を傾け、1カ月ほど前から検討していた」と述べ、大幅に膨らんだコストが見直しの理由とした。2520億円という法外な額の総工費を考えれば当然であろう。しかしなぜ、遅すぎるともいえるこのタイミングなのか。
 各種世論調査で内閣支持率は低下し始めていた。安全保障関連法案の衆院採決を強行したことで、世論の風当たりは一層強まることが予想される。批判が高まっている競技場建設をこのまま進めれば支持率の急降下に拍車をかけることにもなりかねない。計画見直しで何とか歯止めをかけたい、という思惑も透けて見える。
 競技場の整備費は当初1300億円と想定されていたが、昨年5月の基本設計段階で1625億円、最終的な計画で2520億円に跳ね上がった。大会後に先送りした開閉式屋根の設置などで、最終的な総工費は3千億円に達する可能性も指摘されている。消費増税や資材価格の高騰が原因とされるが、納得のいく説明はなされていない。
 現行デザインの屋根を支える長さ370メートル超の2本の鉄骨アーチは約200億円かかる。これ自体がコスト増の要因であろう。だが、安倍首相は10日の衆院特別委員会で、デザインを変更しては五輪に間に合わず、見直しは困難との認識を示していた。
 巨額の総工費に与野党や世論の批判が高まる中、軌道修正を余儀なくされた形だ。しかし政府のこれまでの対応は、見通しがあまりに甘すぎ、危機感に欠けたといえよう。国会審議などを通じて、厳しく検証するべきだ。
 下村博文文部科学相は「コンペをやり直し、半年以内にデザインを決める。20年春の完成を目指す」と述べた。首相も「五輪までには間違いなく完成させることができる」と断言した。仮に間に合わないとなれば、国際的な責任問題となろう。
 現行デザインを選んだ建築家の安藤忠雄氏は会見で、コスト増に対する自身の責任を否定。19年のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で新競技場を使えるよう建て替えを構想したとされる森元首相も「もともとあのスタイルは嫌だった」と述べ、責任は文部科学省にあるとした。
 コスト意識の欠落や、責任を押し付け合う姿にはあきれるばかりだ。こんな状況では、胸を張って世界中から人々を迎えることはできまい。五輪・パラリンピックを目指して日々練習に励んでいるアスリートのことを真剣に考えているとも思えない。文科省や事業主体の日本スポーツ振興センター、さらに真の責任者である安倍首相には猛省を促したい。
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南日本新聞 ( 2015/7/18 付 )
社説:[新国立見直し] 今度は建設に責任持て


 ようやく、というべきだろう。膨大な総工費に国民の批判が集まっていた2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場について、安倍晋三首相が建設計画見直しを正式表明した。
 「計画を白紙に戻し、ゼロベースで見直す」という。19年のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で新競技場を使うことは断念した。
 見直しは当然としても、五輪開催まで残された時間は限られている。衆知を集めて、今度こそ責任を持って新たな競技場を造らなければならない。
 当初1300億円と想定した総工費は昨年5月の基本設計段階で1625億円、最終的な計画では、開閉式屋根などの設置を大会後に先送りしても2520億円にまで増大した。
 安倍首相は「計画の見直しは困難」としていたが、批判はスポーツ関係者や足元の与党にまで広がった。世論に押される形で見直しを決めたものの、いかにも遅い。ずさんな計画をここまで放置した安倍政権の責任は重い。
 デザインの費用増大の最大の要因は、「キールアーチ」と呼ばれる特殊な屋根の構造にある。技術的難度が高く、765億円を要するとされていた。
 下村博文文科相は、コンペをやり直し、半年以内に新たなデザインを決定すると説明した。
 再び混乱することがないよう、決定の過程には透明性が求められる。費用や財源についても知恵を絞り、国民に丁寧に説明する必要があろう。
 問題は、いまだにここまで迷走した計画の責任がだれにあるのか、明らかではないことだ。
 デザイン採用を決めた審査委員会で委員長を務めた建築家の安藤忠雄氏は会見で「選んだ責任はあるが、頼まれたのはデザイン案の選定まで」と否定した。東京五輪大会組織委員会会長の森喜朗元首相は「責任は文科省にある」と述べている。
 下村文科相は、「(デザイン)審査ではコストに関する十分な議論が行われなかった」と、検証の必要性に触れている。経緯を調査し、明らかにするべきである。
 もう一つ、気がかりなことがある。反対論が根強い安全保障関連法案を衆院で「強行採決」した翌日に、首相が計画見直しを明らかにしたことだ。
 国民の不満や政権批判をそらす狙いだとすれば、国民を軽んじる行為だ。安保法案も新競技場も、その行方を国民は厳しく見つめていることを忘れてはならない。
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