2015-07-31(Fri)

厚木騒音訴訟 高裁判決 米軍機こそ差し止めを 150730

米軍機こそ規制がいる 飛行制限の意味は重い 騒音被害救済は不十分だ

<各紙社説>
読売新聞)厚木騒音訴訟 海自機飛行差し止めは必要か(7/31)
毎日新聞)厚木騒音判決 被害解消に国は動け(7/31)
日本経済新聞)基地騒音の軽減に力尽くせ(7/31)
東京新聞)厚木騒音訴訟 米軍機こそ規制がいる(7/31)
北海道新聞)厚木基地訴訟 米軍機こそ差し止めを(7/31)
京都新聞)厚木控訴審判決  飛行制限の意味は重い(7/31)
神戸新聞)厚木基地判決/政治主導で抜本解決図れ(7/31)
中国新聞)「厚木」高裁判決 あすの岩国への警鐘だ(7/31)
高知新聞)【厚木騒音訴訟】被害軽減へ対策を急げ(7/31)
西日本新聞)厚木騒音判決 国は被害実態を直視せよ(7/31)
南日本新聞) [厚木騒音訴訟] 静かな空が戻る一歩に(7/31)
琉球新報)厚木訴訟高裁判決 騒音被害救済は不十分だ(7/31)




以下引用



読売新聞 2015年07月31日 01時31分
社説:厚木騒音訴訟 海自機飛行差し止めは必要か


 判決により、自衛隊の活動に悪影響が及ばないか、懸念される。
 海上自衛隊と米海軍が共同使用する厚木基地の第4次騒音訴訟で、東京高裁は、1審の横浜地裁と同様、自衛隊機の夜間早朝の飛行差し止めを命じる判決を言い渡した。
 「必要性・緊急性がある場合など、客観的にやむを得ない場合」を除き、午後10時から午前6時までの飛行を禁じた。米軍機の飛行差し止めについては、「国に権限がない」と却下した。
 高裁は、自衛隊機の飛行に関し、「高度な政治的判断や防衛戦略上の判断を要する」として、防衛相の幅広い裁量権を認めた。
 飛行目的に比べて離着陸による騒音被害が過大な場合は、防衛相の裁量権を逸脱し、差し止めの対象となるという見解も示した。こうした考え方は理解できる。
 だが、判決が、騒音の主因は米軍機であると認定しながら、自衛隊機の飛行を差し止めたことには、矛盾を感じる。
 海自は、既に夜間早朝の訓練飛行を自主規制しており、昨年度の離着陸は53回にとどまる。騒音の軽減効果が限定的な飛行差し止めは、果たして必要なのか。
 飛行差し止めは、2016年12月末までに限定した。米軍の空母艦載機が17年頃までに岩国基地に移駐する予定で、その後は「騒音の発生状況が大きく変わる可能性がある」という理由からだ。
 無期限の差し止めを命じた1審判決に比べ、自衛隊に対する一定の配慮はうかがえる。
 海自は、哨戒機P3Cや救難飛行艇US2など約40機を厚木基地に配備し、警戒監視や、海難事故の救助、離島からの急患搬送などの任務に対応している。
 判決が、現行の夜間早朝の飛行について、「すべてに緊急性が認められるわけではない」と認定したことには、疑問を拭えない。
 緊急性はなくても、夜間の救助活動などを想定した訓練は不可欠だろう。防衛省幹部は「訓練と実任務は不可分だ」と語る。
 中国が一方的な海洋進出を続ける中、自衛隊機の活動の重要性は高まっている。中谷防衛相が「受け入れがたい」として、上告の意向を示したのは、うなずける。
 判決は、基地の騒音訴訟で初めて、将来分の損害賠償も認めた。賠償額は計94億円に上る。被害の深刻さを重視した結果だろう。
 無論、厚木基地の騒音問題は放置できない。政府は、米軍機の岩国移駐を着実に実行するなど、一層の努力をするべきだ。
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毎日新聞 2015年07月31日 02時30分
社説:厚木騒音判決 被害解消に国は動け


 高裁でも住民の健康被害に配慮した判決が言い渡された。
 米軍と自衛隊が共同で使用する厚木基地(神奈川県)の騒音訴訟で、東京高裁が「睡眠妨害の程度は相当に深刻だ」として、午後10時から翌日午前6時までの自衛隊機の飛行差し止めを1審・横浜地裁に続き、命じた。高裁段階で飛行差し止めを命じたのは初めてだ。
 厚木基地での訴訟は、これが第4次になる。1976年に提訴された第1次訴訟以後、裁判所は騒音被害を認め賠償を命じてきた。だが、被害はいまだ解消されていない。
 国がその時々の賠償金支払いでお茶を濁し、本気で騒音対策に取り組んでこなかったと批判されてもやむを得ないだろう。その結果が、「差し止め」という厳しい高裁の判断につながった。
 中谷元防衛相は「受け入れがたい」として上告の検討を表明したが、基地周辺の騒音低減の実現こそ国が最優先で向き合うべき課題だ。
 自衛隊が国の平和と独立を守るため、平時に訓練を重ねることの大切さを判決は認める。一方で、周辺住民の睡眠を妨害するほどの騒音は健康被害に直接結びつき、軽視できないとも判決は指摘する。
 自衛隊機を飛行させることの必要性は認めるとしても、限度を超えるうるささを「がまんしろ」と、長年にわたって住民に強いることは許されないという理屈だ。
 そのため、緊急性が認められない自衛隊機の飛行については、時間帯を制限することができると高裁は示した。そうした考え方は理解できる。現状でも夜間の原則飛行自粛が掲げられるが、騒音状況は改善されていない。ならば、夜間や早朝の飛行の必要性を自衛隊がより厳しく吟味すべきなのは当然だろう。
 ただし、高裁は1審に続き、より騒音被害が大きい米軍機の飛行差し止めは「防衛相に権限がない」と退けた。司法の限界を改めて示した。住民救済は、政府の役割である。
 騒音に占める比重が大きい米空母艦載機が2017年ごろまでに厚木基地から岩国基地(山口県)に移される予定だ。高裁判決は、来年末まで将来分の被害賠償も認めた。その頃までは騒音の軽減が難しいと判断したためだ。だが、賠償すればいいというものではあるまい。
 厚木基地以外も、岩国基地や横田基地(東京都)など、米軍と自衛隊が共用する全国の基地で騒音訴訟が起きている。国はさらに防音対策を尽くすべきだ。それでも不十分ならば、住民の置かれた厳しい立場を米国側に説明し、騒音を出す軍用機の離着陸を減らす。そうした交渉にも取り組んでほしい。
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日本経済新聞 2015/7/31付
社説:基地騒音の軽減に力尽くせ


 司法が騒音被害を重大な利益の侵害ととらえ、国に抜本的な対策を迫っていると受け止めるべきである。米軍と海上自衛隊が共同使用する厚木基地(神奈川県)の騒音訴訟で、東京高裁が一審に続き、夜間早朝の自衛隊機の飛行差し止めを命じる判決を出した。
 損害賠償も、判決後の将来に発生する被害の分まで認めるという踏み込んだ判断を示した。
 同様の訴訟は厚木以外の基地でも起きている。国は上告を検討しているが、訴訟の行方とは別に、これまで以上に騒音問題と真摯に向き合い被害を軽減する取り組みに力を入れる必要がある。
 これまでの騒音訴訟では、過去の被害への賠償は認められても、将来分の賠償や飛行の差し止めは認められなかった。このため住民が訴え、国が賠償金を支払い、また住民が訴える――が繰り返されてきた。根本的な対策はとられず、被害も改善しなかった。
 ところが昨年、横浜地裁が初めて自衛隊機の飛行差し止めを認めた。今回の判決も「睡眠妨害は深刻で賠償金の支払いで回復できない」としてこの判断を支持した。
 ただ、騒音の主な原因となっている米軍機については、一審も二審も飛行の差し止めを認めていない。「国の支配が及ばない」という判断である。
 海上自衛隊は以前から、原則として夜間の飛行を自粛してきた。そのため、飛行が差し止められても騒音の被害は大きくは改善しない、との指摘もある。
 それでも高裁の段階で初めて飛行差し止めが命じられ、司法が騒音被害の救済に向けた姿勢を強めた意味は大きい。
 騒音は厚木だけの問題ではない。国は各地の基地の周辺で、防音対策への助成などを一層細やかに行っていく必要がある。
 米軍に対しても騒音被害を軽減するための協力を求めるべきだ。訓練を本当に必要なものに絞ったり、深夜や早朝の時間帯からずらしたりすることはできないのか。粘り強い交渉を求めたい。
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東京新聞 2015年7月31日
【社説】厚木騒音訴訟 米軍機こそ規制がいる


 自衛隊機の夜間飛行を差し止める判断は、二審でも維持された。厚木基地(神奈川)の騒音被害は、想像以上にひどい。爆音の主因はむしろ米軍機の方で、政府は運用規制を米国側と交渉すべきだ。
 基地騒音訴訟は一九七〇年代から始まり、裁判所は住民の騒音被害を認め、国に損害賠償を命じてきた。だが「飛行差し止め」までは認めてこなかった。厚木基地の騒音訴訟で、一審の横浜地裁が初めて、午後十時から翌午前六時までの自衛隊機の飛行差し止めを命じた。二審の東京高裁もこれを支持した意義は大きい。
 とくに今回、二〇一六年末までの“未来の損害”まで許容したことは画期的だ。国が支払う金は一審より約二十億円増えて、計約九十四億円になる。厚木基地を使う米海軍第五空母航空団が一七年ごろに岩国基地(山口)に移駐することが日米政府間で合意されていることを踏まえたわけだ。
 住民たちの粘り強い取り組みが、こうした新しい判断の枠組みをつくったともいえ、大いに評価できる。横田基地(東京)や嘉手納基地(沖縄)など各地の騒音訴訟にも影響を与えるだろう。
 だが残念なのは、この司法判断が出ても、根本的な解決にはつながらないことだ。厚木基地では海上自衛隊と米海軍の飛行機が離着陸を繰り返しているが、実は自衛隊機は一審判決前から夜間・早朝の飛行は自主規制しているのだ。騒音の主因は米軍機の方にある。米空母の艦載機は年間二百日程度、基地に離着陸している。自衛隊は輸送機や哨戒機などプロペラ機が主であり、爆音を出すのは米軍の戦闘攻撃機だ。
 騒音のひどさは最高で一二〇デシベルにもなる。電車のガード下でほぼ一〇〇デシベルだから、被害の大きさは理解されよう。基地から一キロ離れた住宅街でも、七〇デシベルの騒音が五秒継続する回数が年間二万回以上もある。
 睡眠は妨害されるし、会話も電話も聞こえなかったりする。あらゆる生活の妨げだ。健康被害も生むし、精神的にも苦痛を受ける。
 今回の司法判断では米軍機について「使用を許可する行政処分がない」という理由で訴えを退けた。ならば、政府が米国側と協議すべきではないか。
 約二百万人が影響を受ける騒音問題だ。安全保障条約や日米地位協定があることは理解するが、国民の健康と生活のために政府が米国側と話し合うべき重要課題だと考える。
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北海道新聞 2015/07/31 08:50
社説:厚木基地訴訟 米軍機こそ差し止めを


 国は判決を重く受け止め、実効性ある対策を急がねばならない。
 米軍と海上自衛隊が使う厚木基地(神奈川県)の第4次騒音訴訟の控訴審判決で東京高裁はきのう、一審に続いて自衛隊機の夜間・早朝の飛行差し止めを命じた。
 また判決は、米軍の空母艦載機が岩国基地(山口県)に移転するまで騒音被害が続くとして、2016年末分までの賠償を命じた。
 将来の被害について賠償支払いを命じるのは初めてだ。問題の解決を先送りしてきた国の怠慢に、厳しい姿勢を示したといえる。
 ただ米軍機の飛行差し止めについては「使用を許可する行政処分がない」として、今回も退けた。
 このままでは騒音被害が、岩国に引き継がれかねない。
 政府は抜本的解決に向け、米軍機の飛行制限を阻んでいる日米地位協定の改定に取り組むべきだ。
 判決は、午後10時から午前6時の自衛隊機の飛行を16年末まで差し止め、賠償として過去最高の約94億円の支払いを国に命じた。
 被害の特に重い地域について「睡眠妨害の程度は相当深刻だ」と指摘。自衛隊機の飛行差し止めで「公共性、公益性が大きく損なわれることはない」と認定した。
 菅義偉官房長官はきのう「大変厳しい判断」と述べたが、政府は上告する方針。原告側も米軍機の差し止めを求めて上告の構えだ。
 審理は最高裁に持ち込まれる見通しだが、政府は判決の確定を待たずに対策を進めねばならない。
 厚木基地の自衛隊機は一審判決以前から早朝・深夜の訓練飛行などを自主規制しており、現在は米軍機が騒音の主体とされる。
 原告側は「騒音の違法性を認めながら米軍機の差し止めを認めないのは不当だ」と訴えてきた。
 しかし司法はこれまでの同種訴訟で、米軍機には「国の支配は及ばない」と判断を避けており、今回もその枠を踏み出さなかった。
 問題の根底には、米軍基地の事実上の「治外法権」を認めた日米地位協定がある。だからといって訴えを退け続けるのでは、住民にとって救済の道は開かれない。
 司法は、日米地位協定や日米安保条約の「高度な政治性」にばかり配慮するのではなく、国民が平穏に暮らす権利の確保に向けて踏み込んだ判断を示すべきだ。
 折しも国会では、安全保障関連法案の審議を通じて、日米同盟のあり方が問われている。
 政府は、すべての基地問題に関わる地位協定の見直しについて、米側と真剣に協議するべきだ。
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[京都新聞 2015年07月31日掲載]
社説:厚木控訴審判決  飛行制限の意味は重い


 米軍と自衛隊が共同使用する厚木基地(神奈川県)の騒音被害をめぐる第4次訴訟の控訴審判決で、東京高裁は一審・横浜地裁判決に続き自衛隊機の早朝・深夜の飛行差し止めを命じた上、初めて将来分を含めた損害賠償を認めた。
 基地騒音訴訟で初の飛行差し止め判断が高裁段階でも示された意味は重い。40年にわたり深刻な被害が継続し、繰り返し賠償命令を受けながら抜本的対策を進めない国の姿勢を指弾したと言える。
 一方、被害の中心である米軍機への請求は今回も退けられた。自衛隊機の飛行制限や将来分の賠償では、米軍機の岩国基地(山口県)への移転計画を考慮して2016年末で期限を切ったが、状況改善につながるかは不透明だ。国は住民被害を直視し、米軍にも求めて早急な被害防止に努めるべきだ。
 厚木基地訴訟は1976年以降、1次から3次まで過去分の騒音被害を認めて損害賠償を命じる判決が確定している。今回の4次訴訟は、周辺住民が新たに行政訴訟も起こし、飛行差し止めを重点に争ってきた。
 東京高裁は一審同様、「騒音による睡眠妨害は健康被害に直接結び付きうる深刻さ」と違法状態を認め、賠償だけでなく飛行差し止めが避けられないと判断した。「今後も続く可能性が高い」と将来分の慰謝料請求権も認めたのは、国の不作為への厳しい批判だ。
 だが騒音の主原因は横須賀を事実上の母港とする米軍空母の艦載機だ。東京高裁は、米軍機への請求は日米安全保障条約や日米地位協定などに基づき、国に「使用を許可する行政権限がない」と退けた。これでは住民が願う根本的な解決にはつながらない。
 日米両政府は、米軍艦載機を2017年ごろまでに岩国基地に移駐させる合意をしている。だが岩国でも住民による騒音訴訟が係争中で、予定通り進んでも被害の付け替えや拡散になりかねない。
 そもそも1963年の日米政府間合意では、厚木基地の騒音対策として午後10時から翌朝6時まで飛行を原則的に禁止している。だが「運用上の必要」時などは除外され、実効性を欠くのが問題だ。
 国は米軍に合意順守を求めるとともに、常に「緊急時」とする米軍の運用が適切かを検証、協議して抜本的な被害防止に踏み出す必要がある。沖縄の基地問題と同様、公共の利益の名の下に地元住民に犠牲を強い続けるだけでは、国民の不信感を高めるばかりではないか。
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神戸新聞 2015/07/31
社説:厚木基地判決/政治主導で抜本解決図れ


 長年、違法状態の騒音に苦しめられている。そんな住民の被害実態を重視した判決だ。
 米軍と海上自衛隊が共同で使う厚木基地(神奈川県)の騒音被害をめぐる第4次訴訟である。周辺住民約6900人が、国を相手に飛行差し止めや損害賠償を求めている。
 一審横浜地裁判決に続いて、二審東京高裁も自衛隊機の深夜・早朝(午後10時~翌午前6時)の飛行差し止めを命じた。
 基地騒音訴訟で、限定的とはいえ飛行差し止めが命じられるのは、この訴訟が初めてだ。民事訴訟ではなく、行政処分や公権力行使の妥当性を問う行政訴訟という手段を取ったことが、一審の差し止め判決につながったとされる。
 その判断が、今回の上級審にも受け継がれた意義は大きい。係争中の同様の基地騒音訴訟にも少なからず影響を及ぼすとみられる。
 一方、高裁判決では、期限付きではあるが、将来分の被害についても賠償を命じた。2017年にも予定される、米軍機の岩国基地(山口県)移転を踏まえ、16年末までを賠償の対象とした。
 従来より被害救済の範囲を広げた点は評価されていい。
 深夜・早朝の飛行差し止めを命じられた自衛隊機だが、既に夜間の訓練飛行などは自主規制している。被害の中心は米軍機である。米軍機が駐留する間は騒音被害が続く現実を見据えた判断といえる。
 訴訟で住民側は米軍機の飛行差し止めも求めたが、一、二審ともに退けられた。米軍の基地使用は、日米安全保障条約や日米地位協定に基づいており、司法は是非をめぐる判断には踏み込まなかった。
 厚木基地訴訟は1976年以来、約40年にわたり争われてきた。第3次訴訟までは過去の騒音被害への賠償を命じる判決が確定している。
 国側は賠償や防音工事で「被害は軽減されている」と主張するが、被害は今も続いている。横田(東京)や普天間(沖縄県)など戦闘機が離着陸する各地の自衛隊、米軍基地周辺でも状況は変わらない。
 基地の公共性を考慮しても騒音は受忍すべき問題ではない。抜本解決に向け、国は力を尽くすべきだ。
 権限が及ばない米軍に対して、どう被害の軽減を働きかけるか。政治の大きな課題だ。
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中国新聞 2015/7/31
社説:「厚木」高裁判決 あすの岩国への警鐘だ


 基地騒音をめぐる司法判断の中でも画期的な意味を持つ。神奈川県の米海軍厚木基地の周辺住民6900人余りが、騒音被害の賠償を国に求めた第4次厚木訴訟で、きのう東京高裁の判決が下された。
 共同使用する自衛隊機の早朝・夜間の飛行差し止めを昨年の地裁判決に続いて求めたばかりか、過去の基地訴訟で認められることのなかった将来分の損害賠償を国に命じたのが大きなポイントだ。「今後も高度の蓋然(がいぜん)性を持って騒音被害の継続が見込まれる」との理由である。賠償総額は一審以降の騒音分も加えて約24億円も上積まれた。
 厚木基地における主たる騒音原因は空母艦載機部隊の訓練によるのは明らかだ。
 長きにわたる一連の訴訟の確定判決で、司法は繰り返し賠償を認めるとともに国の責任を厳しく指摘してきた。しかし国は米軍に対して腰が引け、防音工事など対症療法的な対策はするものの、日米安保条約や地位協定を理由に艦載機などの運用に口を挟むことはまずなかった。
 一審より大きく踏み込んだ高裁判決は、こうした怠慢に対する怒りの表れであろう。
 そもそも国家賠償とは、不法行為があった場合に国民に対して行うものである。将来分の被害をあらかじめ認定し、先払いすることなど本来、あってはならないはずだ。基地だから何でも許される、という政府の安易な姿勢に最大級の警鐘を鳴らした格好にもなろう。
 判決のもう一つのポイントである飛行差し止め命令からも、国への不信が感じられる。
 自衛隊機について、やむを得ない場合に夜間飛行を認めるとしたのは一審と同じだ。しかし高裁では、その基準は大臣による主観的な判断ではだめだと念押しした。災害や領空侵犯への対応など客観的な理由が必要だ、と。厚木に限らず、全国の基地で「やむを得ない」を口実に、地元との飛行制限の約束がないがしろにされがちな現状への批判とも受け取れよう。
 ただ一方で米軍機の飛行差し止めに至らなかったのは物足りないとの受け止めも地元に当然あろう。高裁としては米軍の運用には日本の主権は及ばないとする前からの判断を踏襲したようだ。とはいえ日米政府はこの判決が厚木基地の性格上、米軍機による被害にも向けられていることを肝に銘じるべきだ。
 国は上告を検討しているが、その前にやることがある。米軍に訓練の大幅な抑制、少なくとも早朝と深夜の飛行の全面中止をすぐに求めてもらいたい。
 むろん私たちにとってもひとごとではない。将来の賠償と、飛行の差し止め。ともに2016年末が期限である。17年をめどに、厚木の艦載機部隊が岩国基地に移転する予定であることを踏まえたからだ。つまり厚木において国家賠償の対象とした艦載機の騒音を「たらい回し」することが、判決の前提になっていることになる。
 国にとって厚木問題の解決策が岩国への艦載機移転であり、人口密集地に囲まれた基地の周辺の人たちが、それによる負担軽減に期待するのは分かる。しかし被害人口は厚木より少ないものの、基地騒音の苦しみが岩国で続くことを忘れてはならない。東京高裁判決を、あすの岩国への警鐘ともすべきだ。
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高知新聞 2015年07月31日08時08分
社説:【厚木騒音訴訟】被害軽減へ対策を急げ


 米軍と海上自衛隊が共同使用する厚木基地(神奈川県)の騒音被害をめぐる第4次訴訟の控訴審判決で、東京高裁は一審に続き国に自衛隊機の早朝・深夜の飛行差し止めを命じた。
 高裁レベルで飛行差し止めが認められたのは初めてだ。他の基地騒音訴訟にも影響する可能性がある。
 さらに、賠償について踏み込んだ判断も出た。「今後も騒音被害が続く」として将来分を含めた損害賠償を命じた。将来の被害の賠償を認めた判決も初めてとなる。
 ただ、飛行差し止めも賠償も、2017年をめどに米軍が岩国基地(山口県)に移転する計画を踏まえ、期限は16年末までとした。
 とはいえ、従来より救済の幅を広げた判決は評価できる。国は重く受け止め、被害軽減へ抜本的な対策を進めなくてはならない。
 厚木基地訴訟の歴史は長く、1976年にさかのぼる。住民が自衛隊機などの飛行差し止めと損害賠償を求め、民事訴訟で第1次訴訟を起こした。
 最高裁は93年、自衛隊機の飛行差し止め請求は「行政処分の側面があり、民事訴訟では不適法」との判断を示した。その後は飛行差し止めを認めず、過去の被害に限り国に賠償を命じる判決が定着した。
 流れが変わったのは第4次訴訟だ。住民側は民事とともに行政訴訟も起こした。これが初めて飛行差し止めを命じる一審判決につながった。
 長い年月を経て、被害救済への道は少しずつ広がってきた。飛行差し止めに加え、将来分の損害賠償も認めた判決を住民や弁護団が「大きな成果だ」とするのはもっともである。
 一方で、不満の声があるのも事実だ。米軍機の飛行差し止めは今回も一審と同じく退けられた。「国に規制権限がない」という。
 厚木基地は米海軍の原子力空母の艦載機が拠点としており、騒音の多くは米軍機によるものだ。
 海上自衛隊は既に夜間の訓練飛行などを自粛している。米軍機の飛行を制限しない限り、状況は大きく変わらないのではないか。問題の根本的な解決にはまだ遠い。
 全国の自衛隊や米軍の基地周辺では、騒音に苦しむ住民らが国を相手に提訴を繰り返している。政府は米国との交渉も含め、被害解消に向けた取り組みを急ぐべきだ。
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=2015/07/31付 西日本新聞朝刊=
社説:厚木騒音判決 国は被害実態を直視せよ


2015年07月31日 10時36分
 深刻な騒音被害の実態を踏まえ、必要な対策を講じるよう国に強く促す司法判断といえよう。
 米軍と海上自衛隊が共同使用する厚木基地(神奈川県)の騒音被害をめぐる訴訟で、東京高裁はきのう、一審の横浜地裁判決に引き続き、自衛隊機の早朝・深夜の飛行差し止めを命じた。
 同種訴訟で高裁が飛行差し止めを命じたのは初めてであり、その意味は大きい。基地の公共性・公益性は認めながらも、騒音の実態は原告である周辺住民の健康に影響を及ぼす重要な利益侵害に当たる-との一審判断を踏襲した。基地であっても、住民が受け入れるべき限度を超せば違法性が生じることを再確認したことになる。
 さらに今回の判決で特筆すべきは、騒音の損害賠償について既に生じた過去だけでなく将来の分まで認容した点だ。これも同種訴訟で初めてのことだ。睡眠妨害など生活環境に及ぼす被害の深刻さを重視する最近の司法の流れを受け、賠償額も最高水準となった。
 判決は、厚木基地の騒音の違法状態は約40年続いており、今後も米軍機部隊の移転計画が具体化するまでは同程度の騒音が続く可能性が大きいと判断した。「被害は賠償や防音工事で解消、軽減されている」という国側の主張は根底から覆されてしまった。
 抜本的な対策を怠ってきた国への厳しい批判も読み取れる判決である。岩国基地(山口県)など全国各地の基地騒音訴訟にも影響するだろう。国は最高裁への上告を検討するというが、その前に被害の実態をあらためて直視することから始めるべきではないか。
 一方で今回の判決は、騒音原因の大半を占める米軍機の飛行差し止め請求について一審同様に退けた。国の支配は米軍には及ばない-という最高裁の判例に沿ったものだ。
 自衛隊機は止められるのに米軍機は一切できない。日米安全保障条約に基づくとはいえ、分かりにくさは否めない。国は米軍に対しても騒音被害の改善を求める努力をもっと尽くすべきだろう。
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南日本新聞 ( 2015/7/31 付 )
社説: [厚木騒音訴訟] 静かな空が戻る一歩に


 静かな空が戻る一歩にしなければならない。
 第4次厚木基地騒音訴訟の控訴審判決で、東京高裁は一審に続いて自衛隊機の夜間早朝の飛行差し止めを国に命じた。
 昨年5月の一審・横浜地裁の飛行差し止め命令は、判例の壁に風穴を開ける画期的な判決だった。それが二審でも認められた意味は大きい。
 加えて、東京高裁は将来分を含めた損害賠償を命じた。こちらは初めての判断である。
 基地騒音訴訟は40年前の航空自衛隊小松基地(石川県)を皮切りに、全国の6基地で起こされた。それも厚木基地だけで今回の第4次と繰り返される。少しも現状が好転しない証しだ。
 基地の公共性を考慮しても、なお周辺住民の騒音被害は我慢の限度を超えている。司法の警鐘を重く受け止めるなら、政府は抜本対策を急ぐべきだ。怠慢は許されない。
 厚木基地は神奈川県大和、綾瀬両市にまたがり、米軍と海上自衛隊が共同使用している。
 綾瀬市の4月以降の騒音測定では、最も多い地点で100デシベル以上を1カ月間に225回記録した。100デシベルは電車通過時の線路脇に匹敵するレベルだ。
 一審同様、高裁は「健康に影響を及ぼしうる重要な利益の侵害」と指摘した。被害を直視すれば当然の判断である。
 さらに違法状態の騒音が約40年続いているとして、米軍の移転時期を踏まえた2016年末までの賠償を命じた。
 一審を含め、基地騒音訴訟では過去の被害に限り賠償を命じる判決が定着していた。救済期間を拡大した今回の判決は、国に改善を強く促したといえよう。
 ただ、「夜間の騒音の大半」とされる米軍機の飛行差し止めは、「国が米国に使用を許可する行政処分がない」と、一審同様に訴えを退けた。
 米軍岩国基地(山口県)には17年をめどに、厚木から空母艦載機59機が移駐する予定だ。騒音被害がたらい回しにされるのは目に見えていよう。
 司法救済に限界がある以上、終止符を打つのは国の責任である。そこに不安もある。
 判決が確定した騒音訴訟の賠償で、米国側が日米地位協定で規定されている分担に応じていないことが昨年分かった。日本の肩代わり額は少なくとも100億円を超える、とされた。
 こんな同盟関係で、集団的自衛権の行使は「主体的」に判断すると言われ、信じられるだろうか。
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琉球新報 2015年7月31日 6:01
<社説>厚木訴訟高裁判決 騒音被害救済は不十分だ


 騒音被害者の救済としては不十分である。騒音の元凶を絶たない以上、静かな環境を求める基地周辺住民の苦しみは続く。
 米軍と海上自衛隊が共同使用する厚木基地の周辺住民約6900人が、国を相手に夜間・早朝の飛行差し止めや損害賠償などを求めた第4次厚木訴訟の判決で、東京高裁は一審に続き自衛隊機飛行差し止めを命じた。
 しかし、米軍機の差し止めについては「使用を許可する行政処分がない」として、一審同様に退けた。米軍機の飛行差し止めは国の支配が及ばないとする「第三者行為論」を持ち出したのである。
 住民生活に悪影響を及ぼす騒音に米軍機と自衛隊機の違いはない。米軍機の飛行差し止めが実現しなければ、騒音被害者の救済は果たされるとはいえない。
 自衛隊機の飛行差し止めの理由について判決は「住民の生活環境に関わり、健康に影響を及ぼす重要な利益の侵害だ」としている。この判断は当然、米軍機に対しても適用されるべきである。
 嘉手納、普天間を含め全国6カ所で基地騒音に関する訴訟が起きている。国の騒音対策では住民生活を守ることができないと基地周辺住民は訴えているのである。 
 米軍機飛行差し止めを視野に入れた判断を下すことは主権国家の司法のあるべき姿である。「静かな夜」を求める基地周辺住民の切実な訴えを「第三者行為論」で退ける司法の思考停止をこれ以上繰り返すことは許されない。
 1994年2月に第1次嘉手納基地爆音訴訟の判決を下した瀬木比呂志氏は2013年の著書の中で「重大な健康被害が生じた場合には飛行差し止めも認められる」との論理を構築しようとしたことを明らかにした。米軍機差し止めは不可能ではない。
 一方、今回の判決は将来分の損害賠償を初めて認めた。被害救済の幅を広げるとともに、騒音被害を早期に是正するよう国に迫るものである。
 航空機騒音から住民を守る措置を怠ってきた国に対し、司法は一審以上に厳しい判断を示したといえる。政府はそのことを重く受け止めるべきである。
 判決を受け、中谷元・防衛相は「判決は受け入れ難い。上告を検討する」と述べた。基地周辺住民の苦しみを軽んじる発言だ。騒音被害の実態を直視し、抜本的な救済策を講ずることが先決だ。
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