2015-08-01(Sat)

戦争法案 (22)参院審議入り 衆院暴走にブレーキを 150728

「再考の府」の責任は重い 首相答弁変わらねば意味がない  危機に立つ政治への信頼

<各紙社説・主張・論説>
朝日新聞)安保法案、参院審議―危機に立つ政治への信頼(7/28)
東京新聞)「安保」参院審議 再考の府の責任果たせ(7/28)
しんぶん赤旗)戦争法案 参院審議 日本中に「反対」響かせ廃案へ(7/28)
北海道新聞)新安保法制 参院審議入り 「良識の府」の存在示せ(7/28)
岩手日報)安保参院審議入り 政策の理念に疑問あり(7/28)

新潟日報)安保参院審議 国民は誤解しているのか(7/28)
信濃毎日新聞)安保をただす 参院審議入り 武器使用の是非も問え(7/28)
福井新聞)安保法案、参院審議入り 国民の疑念、不安に答えよ(7/28)
神戸新聞)安保法参院へ/「再考の府」の責任は重い(7/28)
中国新聞)安保法案と参院 「再考の府」の正念場だ(7/28)

山陰中央新報)安保法案参院審議/誠実で丁寧な説明を(7/28)
愛媛新聞)安保法案参院審議入り 首相答弁変わらねば意味がない (7/28)
西日本新聞)安保参院審議 「違憲法案」取り除いては(7/28)
熊本日日新聞)「安保」参院審議 世論と向き合う「熟議」を(7/28)
宮崎日日新聞)安保法案参院審議入り 国民の疑問に誠実に答えよ(7/28)

沖縄タイムス)[参院審議入り]衆院暴走にブレーキを(7/28)




以下引用



朝日新聞 2015年7月28日(火)付
社説:安保法案、参院審議―危機に立つ政治への信頼


新たな安全保障関連法案が、きのう参院審議入りした。
 衆院の法案審議は無残な結果に終わった。
 集団的自衛権の行使をどんな場合に認めるのか、法案の核心である存立危機事態についてすら政府の説明は不明確なまま、世論の強い反発のなかで、与党が数の力で採決を強行した。
 国民が法案の中身を理解していないわけではない。理解すればするほど納得できない人が増え、審議を重ねるほど反対論が広がっていく。
 日本で唯一、武力行使できる組織である自衛隊をどう動かすかの議論である。軍事抑制、国際協調を基本にしてきた戦後日本の歩みを大きく変える議論でもある。
 何よりも大事なのは、幅広い国民の信頼と合意にほかならない。ところが現状では、それが決定的に欠けている。
 憂うべき政治の惨状と言うほかない。国民の不信はなぜ、ここまで広がってしまったのか。
■危うい「結論ありき」
 原因のひとつは、広範な国民の異論に耳を貸さず、結論ありきで押し通してきた安倍政権の政治姿勢にある。
 政策上、どうしても集団的自衛権の行使が必要というなら、国民投票などの手続きをへて憲法を改正する必要がある。それが多くの憲法学者や内閣法制局長官OBらの指摘だ。
 安倍首相もそのことは分かっているのだろう。
 思い起こせば、首相に再登板してまず訴えたのが、憲法改正のハードルを下げるための憲法96条の改正だった。これが「裏口入学だ」と批判を浴びるや、首相は迂回路(うかいろ)に突き進む。内閣法制局長官の首をすげ替え、解釈改憲をはかる閣議決定で事を済ませようとしている。
 憲法は権力を縛るもの、という立憲主義を軽んずる振る舞いであり、憲法を中心とする法的安定性を一方的に掘り崩す暴挙でもある。
 その結果、いま危機に立たされているのは政治と国民の信頼関係だ。法案が成立すれば、自衛隊が海外で武力行使できるようになる。信頼のない政権の「総合的判断」を、国民がどこまで信じられるのか、根源的な危惧を感じざるを得ない。
 その行き着く先に何があるのか。自民党が野党時代の3年前に発表した憲法改正草案には、様々な制約をもつ自衛隊に代わり、国防軍の保持が明記されている。集団的自衛権は当然に認められ、憲法上、海外での武力行使も可能となる。
■軍事偏重の限界
 憲法改正には時間がかかる。国を守るという目的さえ正しければ、憲法解釈の変更も許される――。政権はそう考えているのかも知れない。
 しかし、衆院審議で焦点になった中東ホルムズ海峡の機雷掃海に、それだけの切迫性があるとは思えない。
 朝鮮半島有事についても、すでに周辺事態法があり、その再検討と、個別的自衛権の範囲で対応可能だろう。
 やはり法案の最大の目的は、軍拡と海洋進出を進める中国への対応に違いない。
 政権としては、与党が衆参で圧倒的な数を持つ間に法案を通し、日米同盟と周辺諸国との連携を強化していくことで、中国への抑止力を高めたいということだろう。
 だが、中国に近接する日本の地理的な特性や、両国に残る歴史認識の問題の複雑さを考えれば、中国と軍事的に対峙(たいじ)する構想は危うさをはらむ。
 米国からは、南シナ海での自衛隊の役割強化を望む声も聞こえてくる。だが人口減少と高齢化にあえぐ日本の国力からみて軍事偏重、抑止一辺倒の考え方には、いずれ限界がくる。
 本来、日米豪と東南アジア諸国連合(ASEAN)、そこに中国も加えて協力しなければ、安定した地域秩序は築けない。長期目標はそこに置くべきであって、まずは米国と協力しながら中国との信頼醸成をはかり、その脅威を低減させる方がむしろ現実的ではないか。
 これまでの法案審議で欠けているのは、こうした本質的な安全保障論である。
■周回遅れの安保論議
 政権はことあるごとに「安全保障環境の変化」を強調している。しかし軍事に偏った法案には「周回遅れ」の印象がある。
 非国家主体の国際テロに対しては、軍事力や抑止力の限界を指摘する声が一般的であり、この法案では回答にならない。原発テロが安全保障上の脅威となり、サイバー攻撃が重要な意味をもつ時代に、この法案がどのように役立つのか。そこもよくわからない。
 政治手法にも法案の目的にも深刻な疑問符がついた状態で、信頼と合意なき方向転換に踏み切れば、将来に禍根を残す。
 参院審議を機に、もう一度、考えたい。本質的な議論を欠いたまま戦後日本の価値を失うことの、軽率さと、罪深さを。
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東京新聞 2015年7月28日
【社説】「安保」参院審議 再考の府の責任果たせ


 安全保障法制関連法案の審議が参院で始まった。「憲法違反」と指摘され、審議を重ねるほど国民の反対が増え続ける法案だ。政府・与党は一度、撤回か廃案とし、出直すことを決断すべきである。
 「良識の府」「再考の府」としての崇高な責任を、参院は果たすことができるであろうか。
 安倍政権が、衆院での採決を強行した安保法案はきのう参院本会議で趣旨説明と質疑が行われ、参院で審議入りした。きょうからは特別委員会での審議が始まり、与党側は九月前半までの参院での可決、成立を目指すという。
 安倍晋三首相は答弁で、衆院での採決強行について、国連平和維持活動(PKO)協力法や有事法制を超える百十六時間の審議を行い、「熟議の後に決めるべき時には決める」として、正当化した。
 しかし、国民の多くが政権の強硬姿勢を嫌悪しているのが実態だろう。石破茂地方創生担当相が言う「感じが悪いよね」である。
 衆院での採決強行後に行われた報道各社の世論調査では、安保法案は「憲法違反」との答えは50%台、法案に「反対」が60%台、法案の今国会成立に「反対」が50%台、政府の説明は「不十分」が80%台に達する。
 こうした結果は、報道各社の安保法案に対する支持・不支持に関係なくほぼ一致しており、国民の姿勢は厳しいと、安倍政権は素直に受け止めるべきだろう。
 問題は安倍政権が、丁寧に説明すれば、国民は安保法案の必要性を「理解」し、支持してくれるだろう、と勘違いしていることだ。
 参院審議では、政府側が法案内容を説明する機会を増やすため、与党の質問時間を増やすという。
 しかし、世論調査で法案自体や今国会成立への「反対」が増えているのは、審議に伴い安保法案の「違憲性」や、集団的自衛権の行使を憲法解釈の変更で認める「反立憲主義性」を、国民が「理解」し始めたからではないのか。
 首相側近の礒崎陽輔首相補佐官からいまだに、憲法の法的安定性を軽視するかのような発言が飛び出すようでは、国民の支持が得られるわけはあるまい。
 戦後日本の平和主義や専守防衛政策を守ることができるのか、今や参院での審議にかかっている。
 「衆院のカーボンコピー」と批判されて久しい参院だ。衆院の決定を追認するだけなら、存在感はない。戦後七十年の節目の年、新憲法で貴族院から生まれ変わった参院にとっても正念場である。
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しんぶん赤旗 2015年7月28日(火)
主張:戦争法案 参院審議 日本中に「反対」響かせ廃案へ


 自民・公明の与党が強行採決で衆院を通過させた戦争法案について、参院で本会議質疑が行われ、審議が始まりました。日本共産党は、市田忠義副委員長が本会議での質問に立ち、法案が自衛隊の海外での武力行使に道を開く憲法違反の立法であることを明らかにし、「違憲立法反対」という国民多数の意思を踏みにじる安倍晋三政権の姿勢を厳しくただしました。
憲法の重みかみしめる
 衆院の審議で法案の違憲性が明らかになったにもかかわらず採決を強行したことで内閣支持率は急落し、法案に反対する国民の声もますます大きくなっています。ところが、安倍首相は「PKO(国連平和維持活動)法の時も、日米安保条約改定の時も、反対論があった」と居直り、国民の反対世論に耳を傾けようとしていません。
 市田氏が「国民はいずれ怒りを忘却し、反対世論は沈静化する、あなたがそう思っているとするなら、これほど主権者国民を侮辱する言葉はありません」と強く批判したのは当然です。首相は答弁で「必ずや国民に正しく理解をもらえる」と強弁しましたが、これこそ「自分だけが正しいという独善の最たるものであり、独裁への道」に他なりません。
 首相が憲法と国民主権破壊の態度に固執するのは、戦争法案の夏までの成立を米国に誓約しているからです。それは、米国が無法な戦争に乗り出した場合でも自衛隊が参戦し、「米軍の手足」となって海外で武力行使をするという法案の狙いを浮き彫りにしています。
 市田氏が指摘したように、今こそ、現行憲法の戦後70年の重みをもう一度かみしめることが何より必要です。
 安倍政権は、戦争法案について日米同盟の「抑止力」を強化し、「戦争を未然に防ぐもの」と繰り返しています。しかし、これほどの欺瞞(ぎまん)はありません。
 自衛隊に一人の戦死者も出なかったのは日米軍事同盟のおかげではありません。「世界に誇るべき日本の宝―憲法9条が存在し、平和を希求する国民の世論と運動があったからです」。世界の紛争地で多くの日本人ボランティアが活躍できるのも、自衛隊が一発も外国人に銃弾を撃っていない、一人も殺していないからです。「憲法9条が国際貢献活動の安全の担保として機能してきた」のです。
 戦争法案が盛り込んだ集団的自衛権の行使とは、日本が「進んで戦争に参加する」ことであり、「進んで国民を危険にさらす」(阪田雅裕・元内閣法制局長官)結果しかもたらしません。首相は「全く的外れな議論」と述べましたが、その理由が日米の文書(ガイドライン)に「日本国民を守るため」と書いてあるなどというのでは、国民の理解が得られないのは明白です。
若者を戦場に送らない
 自民党の谷垣禎一幹事長が国会を取り巻く戦争法案反対の声について「かすかに気配を感じていないわけではない」とうそぶいたことについて、市田氏は「政府・与党がどんなに耳をふさごうとも、国民の声を絶対に遮ることはできない」と強調しました。
 国民の声に逆らう政治は必ず行き詰まります。日本中に国民の声をとどろかせ、若者を再び戦場に送らせないため、希代の悪法―戦争法案を廃案にするため、全力を尽くそうではありませんか。
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北海道新聞 2015/07/28 08:55
社説:新安保法制 参院審議入り 「良識の府」の存在示せ


 安全保障関連法案の参院審議がきのう、始まった。
 衆院審議で浮き彫りになったのは、集団的自衛権の行使を可能にする関連法案の違憲性である。
 このため多くの国民が法案に反対したが、政府・与党はその声に耳を貸すことなく、強行採決で衆院を通過させた。
 戦後日本の安保政策を大転換する重大法案の土台に関わる疑念を数の力でうやむやにするなど許されるはずがない。参院で引き続き徹底的に審議する必要がある。
 関連法案が本当に必要で、役に立つのかという安保上の観点からの議論も深まっていない。
 参院は「良識の府」「再考の府」と言われる。政府、与野党ともその役割を十分に認識し、実のある議論を心掛けてほしい。
 関連法案の憲法適合性に関し、安倍晋三首相はきのうの参院本会議での質疑で、1959年の最高裁砂川事件判決や72年政府見解をあらためて合憲の根拠に挙げた。
 だがこれらが根拠にならないことは既に衆院審議で明らかだ。ほかに説得力のある理由を示せないなら、法案を撤回するのが筋だ。
 礒崎陽輔首相補佐官は参院審議に先立つ講演で、集団的自衛権行使を容認した憲法解釈変更に関し、「法的安定性は関係ない。わが国を守るために(行使が)必要かどうかが基準だ」と述べた。
 安保上の必要があれば、政府が憲法をどう解釈しようと構わないと受け取れる。立憲主義の否定につながる驚くべき発言である。野党は厳しく追及してほしい。
 関連法案の必要性に関し、首相は北朝鮮による核・ミサイル開発や中国の海洋進出を挙げたが、これらはいずれも個別的自衛権で対処できよう。
 首相が集団的自衛権でなければ対応できない例として挙げた邦人輸送中の米艦防護や中東ホルムズ海峡での機雷掃海は「現実味を欠いた想定」との批判が野党のみならず政府・与党内にもある。
 政府・与党は審議が難航して議決されない場合、衆院で再可決・成立させる「60日ルール」の適用も視野に入れている。
 だが法案に反対するデモは全国各地に広がり、今国会での成立は見送るべきだというのが多くの国民の声だ。それを無視して60日ルールを適用するようなことがあれば参院の存在意義も問われよう。
 安保政策には幅広い国民の理解が不可欠だ。再び数の力で押し切ることがあってはならない。
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岩手日報(2015.7.28)
論説:安保参院審議入り 政策の理念に疑問あり


 集団的自衛権行使を可能にする安全保障関連法案が、参院で審議入りした。衆院は強引に通過させたものの、反対世論の高まりで安倍政権には苦しい国会運営が続く。
 共同通信加盟社の論説研究会で中国と韓国を訪れ、さまざま話を聴く中で、両国政府の関心は安保法案よりも戦後70年の「安倍談話」に集中する感触を得た。
 安倍首相は安保法案の成立を優先させ、「談話」の閣議決定はしない方針だ。国内では逆にトーンダウンした印象もある。しかし対外的な注目度は少しも変わっていない。
 韓国最大の民間シンクタンク世宗研究所の陳昌洙所長の見立ては単刀直入。「安倍さんは4月の米議会演説で、夏までの法整備を約束しているから」。一方で「安倍談話は慎重に考えてもらいたい」と厳しくくぎを刺した。
 安倍首相は、2013年4月の予算委で「『侵略』という定義は国際的にも定まっていない」などと発言。中韓両国の反発を受け「学問の話。政治家として立ち入ることはしない」と釈明し、歴代政権の歴史認識を継承する意思を示したが、周辺国の懸念は依然払拭(ふっしょく)されていない。
 間もなく発表される「安倍談話」が、安保法制整備をはじめとする安倍政権の政策の基本理念として理解されるからに違いない。
 同様に、安保法案をめぐる政権と国民世論の認識の「ずれ」は、法案の中身以前に政策の基本理念に関わる疑念が問題の本質ではないか。それは「違憲性」の問題であり、強引な政治姿勢に対する漠とした不安でもある。
 安倍首相は27日の国会でも再び三度、「必要な自衛の措置を取りうることは国家固有の権能の行使として当然」とした1959年の最高裁砂川事件判決を持ち出し合憲性を主張。当時、集団的自衛権の定義は定まっておらず、与党内からさえ援用に批判があるいわく付きの「理論」だ。
 さらに「必要最小限度の自衛措置」を認めた72年の政府見解を論拠に、当時は「憲法上、集団的自衛権行使は認められない」とされた結論部分を「国際情勢の変化」を理由に「容認」に転換。憲法との関係を考える上では、とても理屈とは言えまい。
 祖父の岸信介元首相が政治生命を賭した「60年安保」を引き合いに「確固たる信念があれば、政策を前に進めていく必要がある」と繰り返す姿からは、国民を説得しようとする意思は見いだせない。
 安全保障は国策だが、究極的には物心両面で次世代を含む国民一人一人に跳ね返る。国家の理屈だけで、個々の思いを顧みないままでは、いくら時間を費やしても世論との「ずれ」は解消できまい。
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新潟日報 2015/07/28
社説:安保参院審議 国民は誤解しているのか


 安全保障関連法案が27日、参院本会議で審議入りした。
 衆院での採決強行に伴い、国会は10日間にわたって空転していた。与党の数の力による日程ありきの衆院採決に、国会だけでなく世論は強く反発した。
 共同通信社の世論調査によると、法案の衆院通過後、内閣支持率は38%弱に急落した。
 不支持率は51%台となり、支持と不支持が初めて逆転した。法案への賛否も反対が6割を超え、賛成を大きく上回った。
 菅義偉官房長官は審議入りに当たり「『戦争法案』『徴兵制』といった誤解を解くため、きちんと説明したい」と述べた。
 果たして国民は「誤解」しているのだろうか。衆院での審議が進むにつれて、集団的自衛権行使を容認することの違憲性を重く見る意見が増えた。
 多数の憲法学者、知識人、弁護士、内閣法制局長官経験者らも、違憲性を主張した。
 法案への反対意見や疑問が日一日と拡大するように見えた。国会内外の論議を通じて、この法案への理解が「正しく」進んだ結果といえるのではないか。「誤解」は強弁であろう。
 安倍晋三首相はテレビ番組に出演し、日本や米国に例えた家の模型を使い、米国から出た火が日本に燃え移ろうとする状況で「何もしないでいいのか」と法案への理解を求めた。
 泥棒に対して、町内が協力する戸締まりであって、特定の泥棒をやっつけるものではないとも説明してみせた。
 分かりにくく、法案の本質を映さない例え話であろう。相手があっての武力行使である。相手が反撃してくるのは当然だ。
 戦争に巻き込まれる心配への回答にはなっていない。法案が可能にする日本の備えが、自身の憲法と矛盾しかねないという危険も無視してしまっている。
 こうした例え話の類いで理解が進むと考えることこそおごりであり、世論に向き合っていない証左ではないか。
 長時間の衆院審議を経ても、法案の問題点は変わらない。集団的自衛権行使の違憲性はもちろん、行使の要件は曖昧だ。
 行使の例として首相は朝鮮半島有事での米艦防護と、中東・ホルムズ海峡の機雷掃海を挙げた。だが、それ以上は「総合的に判断する」にとどめた。
 地理的制約をなくす周辺事態法改正は、中東などでの適用について「個別具体的に判断する」と述べるだけだった。
 日本を左右する大きな判断を、法に定めのないまま時の政府に白紙委任はできない。
 自衛隊員の任務が大幅に増えるのに、政府は隊員のリスク増を否定したままだ。
 このために、自衛隊の活動範囲を広げる後方支援や、国連平和維持活動での武器使用緩和の議論も前に進んでいない。
 参院で論議を尽くすのは当然だ。ただ問題は既に明らかである。院として政府に廃案、出し直しを迫る気迫を持つべきだ。
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信濃毎日新聞 2015年07月28日(火)
社説:安保をただす 参院審議入り 武器使用の是非も問え


 安全保障関連法案が参院で審議入りした。安倍晋三首相はきのうの質疑でも、国民の命と暮らしを守るために必要な法整備だと主張している。
 戦後日本の安保政策を大転換する法案だ。憲法学者らから違憲と批判され、多くの国民が反対する中、衆院では審議を尽くすことなく採決が強行された。
 さまざまな疑問、論点が積み残されたままだ。しっかりと切り込まなくてはならない。
   <海外で銃弾を放つ>
 参院で深めるべき論点の一つに自衛隊を国連平和維持活動(PKO)などに派遣する際の武器使用の拡大がある。
 武器使用の相手が、国家やアフガニスタンの反政府武装勢力タリバンのような「国に準ずる組織」である場合は、憲法が禁じる武力行使に当たる恐れがある。そのため、政府はこれまで「正当防衛」や「緊急避難」など、やむを得ない場合に限って認めてきた。
 今回の法案は、新たに「任務遂行のための武器使用」を認めている。自衛隊の任務には、住民保護のための巡回や検問といった活動を加えた。こうした治安維持活動を妨げる相手に威嚇射撃をするといったことが考えられる。
 自衛隊とは離れた場所で武装集団に襲撃された国連要員や他国部隊を助ける「駆け付け警護」での武器使用も認める。
 昨年7月の閣議決定を受けたものだ。派遣先の国や紛争当事者の同意など、PKO参加5原則を満たせば「国に準ずる組織」が敵として現れることは基本的にないと考えられる―とし、従来の政府の考え方を変えた。集団的自衛権と同様、乱暴な解釈変更だ。
   <国際貢献の在り方は>
 PKOでは、今も南スーダンに自衛隊を派遣している。法案が成立した場合、最も現実味があるのは、治安維持活動や駆け付け警護での武器使用だ。海外で初めて引き金を引く可能性が高まる。
 衆院の審議は、任務拡大に伴う自衛隊員のリスク増大を政府が認めなかったため、入り口で足踏みした。どんな状況で武器を使えるようにするのか、戦闘に巻き込まれる事態や武力行使につながる展開を防げるのか―といった議論は深まっていない。
 過去には人道復興支援活動でも緊迫した場面が繰り返された。2004~06年の陸上自衛隊イラク派遣についての内部報告書に記されている。迫撃砲やロケット弾による宿営地への攻撃は10回以上に及んだ。
 04年10月には、撃ち込まれたロケット弾が鉄製の荷物用コンテナを貫通して宿営地外に抜けた。報告書は「一つ間違えば甚大な被害に結びついた可能性もあった」としている。派遣前の準備では「危ないと思ったら撃て」と指導する指揮官が多かったという。
 イラクでは治安維持を担ったオランダ軍兵士に死者が出た。新たな任務で自衛隊の活動の危険度が高まるのは間違いない。
 武器使用の拡大がかえって支援活動を難しくする恐れもある。派遣先の国民に銃を向けることになれば、自衛隊や日本への不信や敵意を生みかねない。隊員や現地で活動する非政府組織(NGO)などの日本人が標的にされることも考えられる。
 法案は一方で、自衛隊と米軍の一体化を進め、他国軍を支援しやすくする。これまでは認めてこなかった弾薬の提供なども可能にする。国際平和の旗印の下、軍事偏重の姿勢が鮮明だ。
 他国とは一線を画した立場で人道復興支援に尽くす、紛争を収めるため当事者の仲介に努める。非軍事の憲法を持つゆえに武器や武力に頼らない活動こそ、平和国家を名乗るのにふさわしい。日本の国際貢献はどうあるべきか、土台から議論する必要がある。
   <「一括」に無理がある>
 武器使用の在り方は本来、それだけで十分に時間をかけて掘り下げるべき問題だ。
 そうなっていないのは、政府が集団的自衛権の行使容認などと抱き合わせの形で法案を提出したことが大きい。10もの改正法案をひとくくりに「平和安全法制整備法案」としている。
 集団的自衛権は相変わらず、合憲性や必要性について納得のいく説明を聞くことができない。他国を守るのが集団的自衛権なのに日本を守るためだとする。もともと出発点に無理があるのだから、論理的な説明は望めない。
 存立危機事態や重要影響事態の定義も不明確なままだ。「情報を総合し、客観的、合理的に判断する」「個別具体的に判断する」とするばかりで詳しく語らない。
 一つ一つ切り分けて議論するのが筋なのに、あれもこれも一緒くたにして自衛隊の活動を一変させようとしている。政府の不誠実な姿勢、横暴なやり方を許すわけにはいかない。撤回・廃案に向けて厳しくただす必要がある。
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福井新聞 (2015年7月28日午前7時25分)
論説:安保法案、参院審議入り 国民の疑念、不安に答えよ


 戦後の安全保障政策を大転換させる安保関連法案が参院で審議入りした。安倍晋三首相は国会会期を大幅に延長してまで成立を目指しており、審議難航で議決されない場合、9月14日以降に衆院で再可決・成立させる「60日ルール」の適用を視野に入れているようだ。国民の理解がどこまで深まるのか。良識の府として与野党がよほど踏み込んだ審議が必要である。
 安保関連法案は、憲法9条の下で歴代政権が禁じてきた集団的自衛権の行使を可能にするものだ。自衛隊の任務は従来の個別的自衛権とは格段に広がり、米軍など他国軍の後方支援のため、いつでも、どこへでも派遣できるようにする。
 その違憲性、防衛の要件定義、活動範囲、自衛隊員のリスクなど多くの論点がある。「重要影響事態」「非戦闘地域」「グレーゾーン事態」といった難解な言葉も国民理解を得られない理由だ。その上、安倍首相は野党が具体的ケースに基づいた説明を迫ると「総合的に判断する」と曖昧にかわし続ける。議論の不足は誰の目にも明らかだ。
 40年以上続いてきた憲法解釈を180度変えた理由に「安保環境の変化」を挙げ、朝鮮有事や中国の海洋進出による軍事的脅威、さらには凶悪なテロリズムの拡大などを提示。安倍首相は「国際情勢に目をつぶって従来の解釈に固執するのは、政治家として責任放棄だ」と強調してみせる。
 しかし、具体的な脅威がどこまで迫っているのか。外交努力でリスク軽減ができないのかといった冷静な議論になると「安保法制で抑止力を高めるため」と述べるにとどまる。これではなぜ今法制化か不明、また高まる脅威の抑止力に歯止めが掛からなくなり、「戦争のできる国」への懸念が強まってくる。
 憲法学者の大半が「違憲」とし、科学者ら著名人、主婦らも反対の声を上げ、デモや集会は国会周辺から全国に広がる。共同通信世論調査では衆院強行採決に73・3%が「よくなかった」と回答、今国会成立に68・2%が「反対」、内閣支持率は37・7%に急落し、第2次安倍政権発足後、初めて不支持が上回った。
 「法案は憲法違反」が56・6%に達していることでも分かるように、立憲主義や国民主権、民主主義を顧みず、異論を排除してまで突き進む安倍政権への不信感や怒りが見て取れる。
 憲法解釈変更による集団的自衛権行使容認に関し、礒崎陽輔首相補佐官が講演で「法的安定性は関係ない。わが国を守るために必要かどうかが基準だ」と主張した。まさに安倍政権の「本音」が出たのではないか。
 説得力のある説明ができずして「強行」に走るようなら、政権を担う資格はない。他方、民主党など野党の支持率も伸び悩む。「支持政党なし」の無党派層が約4割に達する「国会不信」を肝に銘じるべきだ。
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神戸新聞 2015/07/28
社説:安保法参院へ/「再考の府」の責任は重い


 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案が参院で審議入りした。
 安保法案は衆院での採決強行を受けて16日に参院に送付された。仮に審議が難航し参院で議決されなくても、衆院で再可決し、成立させる「60日ルール」が適用できる日程だ。安倍政権が国会会期を大幅に延長した狙いはそこにある。
 だが、法案は「違憲」との指摘が憲法学者らから相次ぎ、合憲論争は決着していない。各種の世論調査では法案への反対が賛成を上回り、安倍内閣の支持率も急落している。
 安倍晋三首相がこれまで通り異論に耳をふさぎ、自らの主張を繰り返すだけなら、いくら時間をかけても国民の理解は得られないだろう。
 参院の責任は重大だ。国民の声を受け止め、衆院で積み残された法案の疑問点を徹底的に洗い出す。議論を尽くしても国民の理解が得られない場合、廃案や継続審議とする道も残されている。与野党を超えて「再考の府」としての役割を果たさねばならない。
 安保法案をめぐっては、衆院で100時間超の審議を経てもなお曖昧な点が多い。国連平和維持活動(PKO)の拡大など、あまり取り上げられていないテーマもある。
 政府、与党には、自衛隊のリスク論など「情緒的な議論が国民の理解を妨げている」との見方があるようだが的外れだ。
 活動範囲の拡大に伴う自衛隊員のリスク増や、他国の戦争に国民が巻き込まれる危険性については、政府側が当初否定したため議論が進まなかった。率直な不安を情緒的と切って捨てる姿勢こそが国民の不信を招いていると自覚すべきだ。
 違憲が疑われる法案を数の力で押し通せば、国権の最高機関である国会の正当性が疑われる。参院でも徹底的に議論しなければならない。
 世論の厳しさを意識してか、安倍首相は最近、隣家の火事や、友人のけんかなどの例え話を持ち出して集団的自衛権の必要性を説く。だが、戦後日本の平和主義を転換させる安保法制の説明としては、軽すぎる。本気で国民の理解を得ようとするなら、法案に沿って集団的自衛権行使の基準や想定される危険性を具体的に語るべきだ。
 再可決・成立ありきで参院審議を空洞化させてはならない。
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中国新聞 2015/7/28
社説:安保法案と参院 「再考の府」の正念場だ


 安全保障関連法案がきのう、参院本会議で審議入りした。
 集団的自衛権の行使を容認する法案については憲法違反との懸念が一向に消えない。与党が数の論理にまかせ、衆院で採決を強行した後も国会周辺などでは抗議活動はさらに拡大し、報道各社の世論調査では内閣支持率がこぞって落ち込んだ。
 政府与党からすれば、逆風を仕切り直したい参院審議となろう。だがその直前、またしても首をひねりたくなる発言が飛び出した。安保法案をめぐり「法的安定性は関係ない」と述べた礒崎陽輔首相補佐官の発言である。集団的自衛権に関する憲法解釈で「法的安定性は確保できる」と主張する安倍晋三首相の答弁と矛盾してはいないか。
 まさに法案自体の危うさを浮き彫りにしたともいえよう。だからこそ参院の審議は極めて重要な意味を持つ。先の衆院審議では「違憲か合憲か」という本質論に時間が割かれ、個別の問題点は必ずしも洗い出せなかったきらいもあるからだ。
 初日の本会議の質疑で早速、政府側の「ぶれ」が露呈した。集団的自衛権の行使例で挙げてきたホルムズ海峡での機雷除去に関し、首相は特定の相手国は想定していないと説明した。
 衆院段階ではイランを名指ししていたが、この国の核問題が平和解決に向かったのを踏まえ軌道修正を図ったのだろう。しかし、要は根拠がないということではないのか。ご都合主義と言われても仕方あるまい。
 このありさまでは参院でも多くのほころびが出ることだろう。衆院では審議に116時間も費やしたが、政府側からは本質論から逃げるような答弁が目立ち、議論が深まらなかった。参院においては同様の堂々巡りの答弁は許されまい。
 野党の戦術も問われよう。法案が実質的に11本から成り、審議すべきは多岐にわたる。ばらばらに問いただすのではなく連携したい。集団的自衛権の違憲性、後方支援など論点ごとに集中審議する方法はどうか。
 衆院でほとんど議論されなかった部分も掘り下げる必要がある。例えば国連平和維持活動(PKO)協力法の改正による任務拡大である。成立すれば武器使用基準が大きく緩和され、これまで認めてこなかった弾薬の提供、発進準備中の戦闘機への給油も可能になる。武装集団に襲われた国連要員らを助ける「駆け付け警護」もできる。
 平和憲法の下で曲がりなりにも丸腰で臨み、インフラ整備などに従事してきた自衛隊のPKO活動の一大転換となろう。「スコップを銃に持ち替える」ことにもなりえるからだ。
 これほど重大な問題でありながら一括審議に埋没させてきたのは見過ごせない。法案をめぐる不誠実さの表れでもあろう。
 首相はテレビ番組に出演し、集団的自衛権の行使を「隣家の火事」に例えて説いた。適切とは思えない表現であり、問題を矮小(わいしょう)化しているとの批判は免れまい。法案の意味を真剣に考えている国民の気持ちを逆なでしないか。国会では、政府側は今度こそ中身ある答弁に徹することが求められる。
 解散がなく6年という長い任期の参院は「再考の府」ともいわれる。国権の最高機関として、チェック機能をはたせるか今からが正念場である。
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山陰中央新報 ('15/07/28)
論説 : 安保法案参院審議/誠実で丁寧な説明を


 参院で安全保障関連法案が審議入りした。憲法9条の下で歴代政権が禁じてきた集団的自衛権の行使を可能にし、米軍など他国軍の後方支援のため、いつでも、どこへでも自衛隊を派遣できるようにする安保政策の大転換をめぐり、幅広い層の国民が法案に疑問や反対の声を上げた。しかし政府、与党は耳を貸さず、衆院通過を強行した。
 国のありようを大きく変える法案であり、衆院審議で置き去りにされた疑問と政府は誠実に向き合い、丁寧に説明を尽くさなければならない。
 議論の不足は明らかだ。6月初めの憲法審査会で参考人の憲法学者3人がそろって集団的自衛権の行使容認を「違憲」とし、多くの憲法学者や歴代法制局長官らも後に続いた。政府はひたすら「合憲」と主張したが、違憲か合憲かの論争はいまだ決着せず、法整備が根本から間違っているのではないかとの疑念を拭えていない。
 さらに朝鮮半島有事のどのような場面で集団的自衛権を行使するか基準を明確にするよう迫られても、政府は「米艦への攻撃が発生した場合」など具体的な事例を挙げながら、詰まるところ「総合的に判断する」とかわした。活動の飛躍的な拡大に伴う自衛隊員のリスク増大についても本格的な論戦は記憶にない。
 作家や法律家、科学者から若者、主婦まで幅広い層が反対の声を上げ、デモや集会は国会周辺から各地へと広がりを見せている。衆院通過後の共同通信世論調査では、7割近くが「今国会成立に反対」と答え、8割強が「(法案について政府が)十分に説明しているとは思わない」とした。内閣支持率も急落した。
 背景には、立憲主義を顧みないかのように異論を排して突き進もうとする安倍政権への不安や批判がある。厳しい世論に安倍晋三首相も焦りを覚えたのか、自民党ネット番組や民放に出演し、「米国家」から「日本家」に火が燃え移るのを防ぐのが集団的自衛権の行使などと解説した。
 だが聞きたいのは例え話ではない。憲法学者らの「違憲論」は明解だ。9条の下で自衛隊の武力行使は基本的に禁止され、自衛の個別的自衛権は行使できても、他衛の集団的自衛権は行使できない-が歴代政権の見解だが、その基本的な論理で法案を説明できない。だから違憲だという。
 集団的自衛権の行使は存立危機事態に限定され、従来の見解の延長線上にあるとしながら、戦時下の中東・ホルムズ海峡で機雷掃海ができるという政府説明は理解できないとも批判している。政府は、与党内でも「筋違い」と批判された砂川事件の最高裁判決まで持ち出してきたが、合憲論は浸透していない。
 集団的自衛権の行使そのものについても、具体的な事例を踏まえて判断基準などをもっと掘り下げる必要があるが、「総合的判断」が壁になっている。また、他国軍への後方支援が可能になる重要影響事態は中東やインド洋でも発生する可能性があるとされるが、想定される事例を問われると、政府は「個別具体的に判断」としか言わない。
 あいまいさを除き、なおかつ違憲の疑いを解消できるか-。再び結論ありき、日程ありきで「強行」に走るようなら、国民の声に耳を傾けたことにならない。
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愛媛新聞 2015年07月28日(火)
社説:安保法案参院審議入り 首相答弁変わらねば意味がない


 安全保障関連法案の審議が参院で始まった。「良識の府」にふさわしい、慎重かつ分かりやすい審議を望みたい。
 衆院では、国民の疑問と反対が高まっていくなか、与党が数の力にまかせて採決を強行し、法案を可決した。参院での再現は絶対に許されないとくぎを刺しておきたい。
 安倍政権は参院が採決しない場合でも、60日たてば否決されたとみなして衆院で再議決できる「60日ルール」の適用を視野に入れている。これも容認できない。「衆院のコピー」とやゆされる参院の「不要論」に抗するためにも、最後のとりでとして議論を尽くさねばならない。
 特別委員会の鴻池祥肇委員長にまず望みたいのは、安倍晋三首相の誠実な答弁を引き出すことだ。首相は衆院特別委での採決の直前に「国民の理解は進んでいない」と発言した。しかし多くの国民は理解した上で反対しているのであり、賛成が増えないことを嘆くなら、最大の原因が自らの姿勢にあることを自覚してもらう必要がある。
 衆院での審議で首相は、野党の質問をはぐらかしたり、政府見解を長々と説明したり、ヤジを飛ばしたりした。「説明は全く正しいと思いますよ。私は総理大臣なんですから」との発言もあった。多数の憲法学者が法案を「違憲だ」と指摘しても、自分が進める政策は絶対に正しく、間違っているのは批判する側だと言わんばかりの態度を参院でも続けるなら、法案の熟議など望むべくもない。
 政府与党は、衆院審議で与党の質問時間が全体の1割程度にとどまったことが、法案への理解が広がらなかった要因とみているという。その認識は根本から間違っている。いくら与党の質問時間を増やしても、首相答弁の中身が変わらなければ意味がない。
 首相は先日、テレビ番組に出演し、隣家が火事になったケースを例に、集団的自衛権行使の必要性を訴えた。「分かりやすい」説明のつもりだろうが、消せば済む火事とは違い、武力の行使は報復を呼ぶ。殺し殺される話で、まったく次元が違う。そんな例え話では国民は絶対に納得できまい。
 1カ月半の衆院審議で明らかになったのは、安保法案の違憲性であり、際限のない戦争に巻き込まれかねない危険性だ。そのことに気付いた多くの国民が法案反対と安倍政権への批判の声を上げている。
 集団的自衛権行使を認めなかった内閣法制局の長官人事に手を出し、戦後の歴代内閣が維持し続けてきた憲法の解釈をねじ曲げ、批判的な報道機関に圧力をかける。そんな内閣が「総合的に判断して」武力を行使する危うさは容易に想像できよう。
 安保法が成立すれば、権力を縛るはずの憲法の解釈が一内閣の意向で変えられる悪い前例となってしまう。反対が6割近くに達した国民の意見が十分に反映される参院審議を望む。
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=2015/07/28付 西日本新聞朝刊=
社説:安保参院審議 「違憲法案」取り除いては


2015年07月28日 10時48分
 安全保障関連法案がきのう、参院本会議で審議入りした。
 衆院では同法案の合憲性に大きな疑義が生じ、世論調査で国民の強い懸念が示されたにもかかわらず、政府と与党が野党の反対を押し切って採決、可決した。
 論議不足は明らかだ。憲法違反の疑いが濃いこの法案をこのまま成立させれば、将来に重大な禍根を残す。参院では徹底的な議論によって法案の問題点をあぶり出し、政府に廃案を促してほしい。
 ただ、初日の本会議質疑を聞く限り、衆院同様に政府と野党の論議は平行線をたどりそうだ。
 質疑で民主党の北沢俊美氏が集団的自衛権の行使を容認する政府の憲法解釈変更を「珍説」とし、法案の違憲性を追及した。これに対し安倍晋三首相は相変わらず、最高裁砂川事件判決と1972年の政府見解を根拠に「憲法に合致する」と繰り返すだけだった。
 法案が合憲か違憲か-という問題は、法案審議の根本であり、ここを避けて通ることはできない。きょうから本格化する特別委員会の審議でも最重要の論点となる。
 他方で、このままでは安倍首相ら政府側が衆院と同じ答弁を繰り返し、議論が深まらないうちに時間を浪費する恐れも強い。
 国民にとってベストなのは、参院での審議入りをきっかけに、政府が「違憲」の疑いが強い法案と、それ以外の法案を「仕分け」することではなかろうか。そして「違憲」濃厚な法案は廃案にしたうえで、今国会ではその他の法案についてだけ審議し、与野党の合意を目指すことにしてはどうか。
 そもそも、政府が性格の違う10法の改正案をまとめて1法案に仕立てたことが問題だ。違憲性が強い集団的自衛権の行使容認には反対するが、自衛隊の国際貢献に関わる国連平和維持活動協力法改正案などについては十分議論する価値があると考える国民もいるはずだ。野党も対案が出しやすい。
 首相は法案の再編成には否定的だが、意地を張らずに「仕分け」を検討してほしい。そうすれば、もっと建設的な議論ができる。
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熊本日日新聞 2015年07月28日
社説:「安保」参院審議 世論と向き合う「熟議」を


集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案の参院での審議が27日、始まった。
 戦後の安全保障政策を大きく方針転換する法案は、1カ月半余りの衆院審議でも合憲か違憲かという根本の問題で論争が続き、課題が山積していることが明らかとなった。その採決後に安倍晋三首相が自ら認めたように、国民の理解はなお得られていない。
 与党内には、参院は衆院に比べ与野党の議席差が小さいことを踏まえ、衆院の審議時間約116時間に迫る100時間程度の審議を経て、9月上旬に成立させるシナリオがある。参院が採決しない場合は、衆院で再可決し成立させる「60日ルール」も念頭にある。
 しかしそのような強行手段は、国会自らが参院の存在意義を否定するものだ。「熟議の府」「再考の府」にふさわしい議論が問われている。
 与党は「衆院では野党に質疑時間を譲りすぎた」として、参院では与党も十分に時間を確保し、国民に分かりやすく説明したいとする。しかしこれは「自分たちがやることに間違いはない」と強弁しているようなものだろう。
 衆院審議で、安倍首相は野党の追及に具体的に答えようとせず、「無責任なレッテル張り」などと封じ込める場面が目立った。「切れ目のない法整備が必要」としつつ、集団的自衛権行使の基準を問われると「総合的判断」などとかわし、相互理解を深めようという姿勢は伝わって来なかった。これでは国民は納得できない。
 集団的自衛権の行使容認と憲法の適合性、自衛隊の活動拡大で隊員のリスクはどうなるのか、後方支援は武力行使と一体化しないのか、PKO拡大ではどのようなケースで武器使用基準が緩和されるのか-。こうした野党の問いの背景にあるのは国民の疑念、不安にほかならない。首相はパネルや模型を使った例え話を多用するが、自説を強弁するだけでなく、具体的に答えていく必要がある。
 「戦争につながる法案」という指摘に対して、安倍首相は「国民を守るため」「明確な歯止めがある」と反論する。しかし、憲法という歯止めを一内閣の閣議決定で取り除こうとしているのが安倍政権だ。首相は自国防衛とは到底結び付かない中東ホルムズ海峡での機雷掃海にこだわる。限定容認が集団的自衛権行使の全面解禁への突破口になるのでは、という疑念はぬぐえない。
 衆院が法案を強行採決した後の共同通信による世論調査では、内閣支持率が37・7%と9・7ポイントも急落した。「今国会成立に反対」も7割近くで、政府が「十分説明しているとは思わない」も8割強に上った。法案に反対するデモは全国で拡大し、地方議会が、廃案や慎重審議などを求めて国会に提出する意見書も増えている。
 政府・与党は世論と真正面から向き合い、曖昧さを排した具体的な説明を心掛ける必要がある。それでも理解が得られなければ、成立はあきらめるべきだ。
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宮崎日日新聞 2015年7月28日
社説:安保法案参院審議入り 国民の疑問に誠実に答えよ


 参院で安全保障関連法案が審議入りした。衆院では与野党の議論がかみ合うことはなく、強行採決という荒れた形で審議が終了した。野党のみならず学者、文化人、若者らは、安倍晋三首相ら政府、与党が数の力で押し切ろうとしているとして、批判を高めている。
 政府、与党には一方的な押し付けでなく、国民と共に国際情勢の変化や安全保障の在り方を考える姿勢を求めたい。指摘されている違憲の疑いが解消できないなら、今国会での成立はあきらめ、一から議論をやり直すべきだろう。
世論とねじれ大きく
 衆院での採決から参院審議までの間、安倍首相は自らテレビ出演し、例え話を交えて法案の意義を主張するなど成立に向けて一層力を入れている。裏を返すと、国民の理解が得られていない、という事実が横たわっていることを意味している。衆院採決が終わったのにもかかわらず、だ。
 共同通信社が17、18日に行った世論調査によると、安保法案そのものへの反対は61・5%、賛成は27・5%と大きく差が開いた。
 法案が「憲法に違反していると思う」は過半数の56・6%で、「違反しているとは思わない」は24・4%だった。今国会での成立に対しては、反対が68・2%、賛成が24・6%という回答だった。
 各報道機関の世論調査も安倍政権には厳しい結果だ。国民の意識とここまで乖離(かいり)している状況を、まずは率直に認めるべきだ。
 国会内では数の論理で押し切れば成立は可能なのかもしれない。しかし国会の外を見てほしい。法案自体や今国会での成立に対し、なぜここまで反対が多いのか。
 国民世論とのねじれを認めず、聞く姿勢もなく一方的に「丁寧な説明」を続けても、衆院の二の舞いになるだけだ。議論が熟さないまま採決に持ち込んではならない。
問われる政権の手法
 27日の参院本会議でも、なぜ今国会で成立しなければならないのか理由は見えてこなかった。
 世界を見渡すとテロの脅威や国家間の緊張などさまざまな不安要素はある。日本や国際社会の平和を希求する上で、時代に合った対応の仕方を見直す時期に来ているのならば、それは国民と見解を共にしながら構築すべきものだ。
 安倍首相は「先の選挙で公約として掲げ国民の審判を受けた」と述べたが、どれだけの国民がそう認識しているだろうか。
 今後の国の安保政策を大きく転換させる法案である。丁寧に議論を重ねた上で、選挙権が18歳以上となる来夏の参院選で争点として問う道筋もあるのではないか。
 国連平和維持活動(PKO)などでの武器使用基準緩和など深まっていない議論が山積みだ。また憲法改正を問わず解釈変更で集団的自衛権に踏み込み、突進する安倍政権の手法は大いに問われている。なぜ急ぐのか。なぜ合憲と言えるのか。参院では国民の疑問に答える形で議論を展開してほしい。
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沖縄タイムス 2015年7月28日 05:30
社説[参院審議入り]衆院暴走にブレーキを


 有権者の期待に応え、「良識の府」としての機能を発揮するのか。それとも、「衆院のカーボン・コピー(引き写し)」とやゆされ、参院不要論に拍車を掛けるのか-。
 集団的自衛権の行使を可能にする法案などを盛り込んだ安全保障関連法案は27日、参院本会議で審議入りした。
 27日の法案趣旨説明に続き、28日から安倍晋三首相が出席し、参院特別委員会で審議が始まる。参院の真価が問われるときだ。 
 国会を二院制とし、衆議院のほかに参議院を置くことになった背景にあるのは、軍部独裁を生んだ戦前の「民主主義の失敗」である。
 今の憲法は「衆議院の優越」を定めている。もし圧倒的な数の与党が衆院に誕生し、強力な機能を持つ衆院を思いのままに運用すれば、「選挙による専制政治」が生まれるのではないか。憲法制定当時の有識者らの危機感が参議院創設につながったのである。
 「数の力の支配する衆院」に対して、「理の支配する参院」が対置され、参院が「良識の府」と期待されるようになったのは、こうした背景があるからだ。安保関連法案の参院審議は「良識の府」としての機能を発揮するまたとない機会である。
 安保関連法案は、国内の大多数の憲法学者や内閣法制局長官OBから違憲だと指摘され、国民の支持も得られていない。そのような法案を衆院の「右へ倣(なら)え」で通すようでは参院の存在価値はない。
    ■    ■
 安保関連法案の中身に関わる論点以前に参院で取り上げてもらいたい問題がある。
 第1に立憲主義について。第2に安倍首相の歴史認識について。第3に安倍首相らが連発する集団的自衛権の「例え話」について、である。
 国の大本のルールである憲法によって国家権力を縛り、人権を保障していくこと-それが立憲主義の趣旨だといわれているが、安倍政権はどうやら立憲主義がお気に召さないようだ。
 安倍首相はこれを「王権が絶対権力を持っていた時代の主流的な考え方」だとして退けた。以前、憲法改正手続きを厳格に定めた96条の先行改正を主張していたことと合わせて考えると、首相の憲法観が浮かび上がる。
 中谷元・防衛相は安保法制について「現在の憲法をいかにこの法案に適応させていけばいいか」と本末転倒の答弁をし、批判を浴びた。
    ■    ■
 立憲主義に対する理解と、歴史認識をめぐる安倍首相や首相周辺の発言は、海外メディアからも「歴史修正主義」「戦前回帰」などと批判された。このことと安保関連法案は決して無関係ではない。
 歴史認識で対立したまま、軍事力に傾斜した法整備を進めれば、中国が警戒するのは明らかで、東アジアの緊張を今以上に高める恐れがある。
 集団的自衛権の行使を「けんか」や「火事」に例えるのも、現実からかけ離れた比喩で、有権者の理解を妨げるだけである。
 例え話は危うい。
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