2015-08-11(Tue)

川内原発再稼働 8・11原発ゼロが終わる日  150808-11

フクシマ前へ逆行許されぬ 「安全」欠いた見切り発車だ  基準を安全神話にするな 誰が責任を負うのか

<各紙社説・論説>
朝日新聞)川内再稼働を前に 避難の不安が置き去りだ(8/8)
東京新聞)原発ゼロが終わる日に 誰が責任を負うのか(8/11)
東京新聞)原発再稼働 安全とは言わぬまま(8/8)
新潟日報)川内原発再稼働 基準を安全神話にするな(8/11)
京都新聞)原発再稼働  フクシマ前へ逆行許されぬ(8/9)

山陰中央日報) 川内原発再稼働/急ぐ必要性があるのか(8/11)
山陽新聞)川内原発 不安が拭えない再稼働だ(8/9)
中国新聞)川内原発再稼働 「なし崩し」許されない(8/11)
高知新聞)【川内原発再稼働】3・11以前には戻れない(8/11)
西日本新聞)川内原発再稼働 九電は安全管理の徹底を(8/11)

熊本日日新聞)川内原発再稼働へ なし崩しでは許されない(8/9)
南日本本新聞)[川内再稼働へ] 課題が残されたままだ(8/11)
琉球新報)川内原発再稼働 「安全」欠いた見切り発車だ(8/11)
沖縄タイムス)[川内原発再稼働]疑問多く認められない(8/11)
しんぶん赤旗)川内原発始動強行 世論無視、安倍政権の責任重大(8/11)




以下引用



朝日新聞 2015年8月8日05時00分
(社説)川内再稼働を前に 避難の不安が置き去りだ


 原子炉内の核燃料が溶け、大量の放射性物質が発電所の外にばらまかれる。福島第一原発事故で、私たちが目の当たりにした現実だ。
 国際原子力機関(IAEA)は、原発の安全を保つ対策を5層に分類して、各国に求めてきている。その「最後の壁」が周辺住民の被曝(ひばく)を防ぐ対策だ。
 これを具体化するのが国や自治体の防災計画と避難計画だ。
 ところが「過酷事故は起きない」としてきた日本には、多数の住民が避難する想定もなかった。実際に事故が起きると、被災地は大混乱に陥った。
 あれから4年余り。九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が11日にも再稼働する。
 しかし、防災・避難計画は到底、住民が安心できるものではない。「最後の壁」を整え、住民の安全を守る責任は自治体にある。不安を残したまま、再稼働に突き進んではならない。
 ■命を守る気があるか
 事故後、国は原発の30キロ圏の自治体に防災・避難計画づくりを義務づけた。川内原発周辺の7市2町はすべて作成済みだ。対象人口は21万人にのぼる。
 原発から約17キロのいちき串木野市で、デイサービス施設を営む江藤卓朗さん(58)は、避難計画への不信感を募らせる。「命を守る気があるのか」と。
 施設に通う約10人のお年寄りの多くは認知症を患う。市の避難計画に従えば、いったん自宅に戻すことになる。
 だがある利用者の家は原発から10キロ以内にあり、ひとり暮らしだ。「わざわざ近くに帰すのか。職員にも『送って』と言えるのか」と江藤さんは悩む。
 老人ホームの入所者や病院の入院患者ら自力では動けない人たちの避難も難題だ。
 鹿児島県は10キロ圏の17施設は避難先を確保したが、10~30キロ圏の227施設は、県が事故後にコンピューターで避難先を探し、個別連絡することにした。
 30キロ圏の特別養護老人ホーム職員は「夜勤時は職員が1人だけ。いきなり知らないところへ避難しろと言われてもどうすればいいのか」と不安を漏らす。
 だが県は、避難計画の実効性を確かめる住民参加型訓練を再稼働前には実施しない方針だ。伊藤祐一郎知事は「使用前検査で九州電力に余裕がない」と説明する。
 朝日新聞の調べでは、全国の原発の30キロ圏にある医療機関の66%、社会福祉施設の49%が、避難先や経路、移動手段の避難計画をまだ作っていない。
 ■住民との対話不可欠
 IAEAの「最後の壁」は、ほかの4層がすべて突破されたことを前提とし、それでも有効に機能することが大原則だ。
 日本でこの対策を担うのは自治体だ。原子力規制委員会は避難計画を審査対象にしていない。首相がトップの原子力防災会議も計画を「了承」するだけだ。住民を守る責任はまず、地域の事情に通じた自治体が負っていると考えるべきだ。
 第一原発の事故では、運転休止中だった4号機燃料プールも過酷事故に陥る可能性があったと指摘されている。原発は存在するだけでリスクであることが、事故の教訓でもある。再稼働する、しないに関わらず、避難計画は必要不可欠なのだ。
 確かに、完璧な避難計画を求めることには無理はある。だが、何ができて、どんな課題があるのかを明らかにし、住民に説明することはできる。そのために自治体は訓練を通じて防災・避難計画の実効性を検証し、住民と対話を重ねるべきだ。
 原発事故時には、5キロ圏の住民がまず避難し、5~30キロ圏は屋内退避の後、避難する「2段階避難」が有効とされる。住民の理解と協力なしにうまくいかないのは、明らかだ。
 自治体が住民の安全確保に責任を負うなら、原発再稼働の是非に関与するのは当然だ。電力会社との協定を根拠に、今は原発が立地する道県と市町村だけが持つ「同意権」を、少なくとも、防災・避難計画づくりの義務を負う30キロ圏の全自治体に認めるべきだ。被害が及びうる自治体の同意さえ得られない原発は危険度も高いといえる。早めの廃炉につなげるべきだ。
 ■不作為を重ねるのか
 国会の事故調査委員会は、IAEAの5層の防護策のうち、「最後の壁」の前に位置する過酷事故への備え(4層)も、日本はほとんど取り組んでこなかった、と指摘している。
 旧原子力安全委員会は06年、IAEA基準に沿って防災対策重点地域を見直そうとしたが、原子力安全・保安院が「住民に不安を与える」と抵抗し、見送られたこともわかっている。
 避けられたはずの被曝を住民は余儀なくされ、救出が遅れた病院で入院患者が体調悪化で相次いで亡くなった。福島県内の関連死は1900人を超す。
 行政の不作為による犠牲者を生まないため、教訓を徹底的に引き出しているのか。自治体はそこから点検してほしい。
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東京新聞 2015年8月11日
【社説】原発ゼロが終わる日に 誰が責任を負うのか


 誰も安全とは言わず、責任を負える人もない。なのに、九州電力川内原発1号機(鹿児島県)がきょう、再稼働する。3・11の災禍が消えぬこの国で。
 この朝、中央制御室からの操作で核分裂を抑えていた三十二本の制御棒が引き抜かれ、原子炉が起動する。
 関西電力大飯原発4号機(福井県)が定期点検のため停止して以来、一年十一カ月ぶりに、日本の原発ゼロ状態が終わる。
 このようなかたちの原発回帰に異論を唱えたい。
 今なぜ、再稼働できるのか。なぜ再稼働させねばならないのか、という多くの国民の素朴な問いに、政府も電力会社も、答えていないからである。
◆「あなた任せ」の連鎖
 原子力規制委員会が、3・11後の新規制基準に「適合」と判断した-。「安全」だという根拠は、ほぼこれだけだと言っていい。
 ところが規制委の田中俊一委員長は「(新規制基準は)原子力施設の設置や運転等可否を判断するためのもので、絶対的な安全性を確保するものではない」という趣旨の発言を繰り返す。
 田中委員長は「安全目標というのは、決してわれわれと国民が合意してつくったものではない」とも、言っている。
 規制委自身が、安全を保証する機関でも、再稼働の是非を論じる場所でもないと、表明し続けているのである。
 政府はどうか。
 安倍首相は「規制委の再稼働に適合すると認められた原発は、再稼働を進めたい」と、こちらも繰り返す。つまり「あなた任せ」なのである。
 「あなた任せ」と言えば、規制委も、例外ではないだろう。
 3・11を教訓に、原発から半径三十キロ圏の自治体に避難計画の策定が義務付けられた。
 川内原発の場合、圏内九市町に約二十一万人が暮らしている。
 都市から離れた場所に立地される原発の周辺は、ただでさえ交通事情に難がある場合が多い。
 原発事故の非常事態に、机上の避難計画に果たして効果があるのかどうか。規制委は審査の対象とせず、自治体にお任せだ。
 では、自治体は。
 鹿児島県の伊藤祐一郎知事は、原発の必要性を明示した文書を出すよう政府に要求し、経済産業大臣名のそれを受け取ったあと、住民説明会などを経て、再稼働に同意した。
 政府の要請に従ったという形式を整えたように見えないか。
◆火山学者は警告する
 事故が起こった場合の責任は、役所の中では堂々巡り。結局、電力会社の自己責任ということになるのだろう。法律でもそうなっている。
 だが私たちは、もう知っている。原発事故の責任は、一企業に負いきれるものではないのだと。
 あの日からやがて四年半。現に十一万もの人々が、いまだ故郷を追われたままで、十分な補償も受けられず、あるいは中途半端に打ち切られ、放射能による将来の健康不安を押し殺して暮らしているではないか。
 原発には、それぞれ個別の不安もある。
 川内原発は、姶良(あいら)カルデラ(火山性のくぼ地)の西、四十五キロという位置にある。鹿児島湾の奥にある巨大噴火の痕跡だ。桜島も、その上にのっている。
 鹿児島湾を中心に、小林、阿多、加久藤(かくとう)といったカルデラが南北一直線に並んでおり、過去の巨大噴火の際には、原発がある川内川の河口にも火砕流が届いていたことは、九電も規制委も認めている。
 規制委は、九電の主張そのままに、巨大噴火の予知は可能で、万一の際にも核燃料を安全に運び出す余裕はあると言う。
 しかし、ほとんどの火山学者がそれを否定する。規制委の判断は、科学的にも、あいまいなままなのだ。
 このような状態で再稼働を推し進めるということは、3・11の犠牲に対する侮辱であり、安全神話への回帰にほかならない。
◆安全な未来は描ける
 3・11は世界の流れを変えた。特に欧米は、安全対策に膨大な費用がかかる原発への依存を徐々に脱して、再生可能エネルギーの比重を高め、地域振興を進めつつ、経済的にも利益を得ようと、それを機に未来図を描きはじめた。
 福島のある日本はなぜ、描こうとしないのか。
 川内のあとには、規制委からすでに適合と判断された関西電力高浜原発(福井県)、四国電力伊方原発(愛媛県)が続いている。
 再稼働に踏み込むということは、回避も全うも不可能な、重過ぎる責任を背負うということだ。
 国民の多くは納得していない。
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東京新聞 2015年8月8日
【社説】原発再稼働 安全とは言わぬまま


 四国電力伊方原発が原子力規制委員会の規制基準に適合し、九州電力川内原発の再稼働は迫る。多くの不安をのこしたままで、適合すなわち再稼働という短絡を、定着させてもいいのだろうか。
 川内原発(鹿児島県)、関西電力高浜原発(福井県)に続いて伊方(愛媛県)は「適合」三件目。ここでもやはり、避難計画の実効性や、地震に対する備えの甘さが不安視されている。
 にもかかわらず、政府や電力事業者は、それで再稼働の“お墨付き”を得たという。
 規制委の「適合」判断は、再稼働の必要条件ではあるだろう。だが、十分条件とは言いがたい。
 多くの原発は半島に立地する。特に伊方原発は、日本一細長いという佐田岬半島の付け根にあり、その西の海側には約五千人が暮らしている。
 愛媛県が策定した事故時の広域避難計画では、原発前の国道を通って松山市などに向かう陸路と、フェリーに乗って大分などに逃れる海路が想定されている。
 だが、南海トラフ地震と原発事故の複合災害が発生すれば、道路は寸断、港が荒れて船も使えず、孤立化する恐れは強い。
 共同通信が六月中旬に実施した調査では、伊方原発から半径三十キロ圏内十二万三千人の避難先になる六県十九市町のうち、受け入れ態勢が「整っている」「どちらかというと整っている」と答えた自治体は一県七市町にとどまった。
 大分県と愛媛県は、愛媛県側住民を船に乗せ、大分県側に運ぶ避難訓練を、秋に実施するという。
 順序が逆だ。こんな大事な訓練をする前に、再稼働の“許可”が出されて、いいのだろうか。
 福島第一原発事故をめぐる検察審査会の起訴議決にも「原発に関する責任者は『万が一』の災害にも備えなければならない義務を負う」とあるではないか。
 そもそも数千人が船で海上に逃れなければならないような大事故は、万が一にもあってはならないことではないか。
 「適合」判定第一号の川内原発は、十一日にも再稼働第一号になるという。だが、規制委も政府も自治体も、誰も「安全」を保証していない。
 事故発生時の責任を、誰が、どう取るのかも、あいまいなままではないか。
 このような状態で、規制基準「適合」=「再稼働」という図式を定着させてしまってもいいものか。もう一度よく考えたい。
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新潟日報 2015/08/11 08:30
【社説】川内原発再稼働 基準を安全神話にするな


 国際評価尺度で最悪レベルの過酷事故となった東京電力福島第1原発事故から4年5カ月、九州電力川内原発1号機(鹿児島県)が11日にも再稼働する。
 事故を受け、地震や津波など自然災害の想定を厳格化した新規制基準の下では初めてとなる。
 安倍晋三首相は「世界で最も厳しいレベル」の新規制基準に適合した原発について、再稼働させる考えをあらためて示した。
 しかし、事故収束の鍵を握る汚染水対策は道半ばだ。廃炉への道筋は全く見えない。いまだに多くの人が避難生活を余儀なくされている。この4年余、実質的に変わりがないと言っていい。
 基準は絶対の安全ではないことを原子力規制委員会は自ら認めている。基準適合を新たな「安全神話」とし、現実から目をそらすことは許されない。
◆火山活動を過小評価
 川内1号機は11日に原子炉を起動した後、14日に発電と送電を開始し、9月中旬にも営業運転に入る見通しだ。
 基準を満たしているとはいえ、懸念材料は少なくない。重要施設がテロなどの標的になっても、炉心の冷却を継続できる施設がまだ整備されていないからだ。
 事故時に原子炉格納容器内の蒸気を外部に排出して損傷を防ぐフィルター付きベントも設置が猶予されている。これらに関わる重大な事故が起きたら、どう対応するつもりなのか。
 火山を過小評価していることも大きな問題だ。
 川内原発の周囲には、過去の巨大噴火で地表が陥没したカルデラが五つもある。川内原発の敷地内には噴火による火砕流とみられる痕跡が残っている。
 巨大噴火は国内で1万年に1回程度起きるとされる。規制委は13万~12万年前以降の活動が否定できない断層を活断層とし、その上に重要施設設置を認めていない。それより短い頻度である。
 九電は巨大噴火の可能性は小さいと指摘、兆候があった場合、核燃料を運び出すので問題ないとの姿勢だが、噴火予測は現状では困難と専門家は口をそろえる。
 福島事故で国会が設置した事故調査委員会は、事故を「明らかに人災だった」と断じた。自然の脅威を甘く見た結果、事故につながったことを肝に銘じるべきだ。
◆責任の所在あいまい
 過酷事故が起きた際の避難計画が規制委の審査対象になっていないことも今後の課題だろう。
 あらゆる事態を想定した避難計画がなければ、住民が無用の被ばくをする恐れがある。早急に策定を進めてもらいたい。
 安全対策や避難計画をはじめ、わが国の原子力政策を通していえるのは、国、電力会社、立地自治体など、どこに責任の所在があるのかあいまいなことだ。
 「トイレなきマンション」といわれる核のごみ問題もその一つである。使用済み核燃料は全国で約1万7千トンあり、原発の貯蔵プールは満杯に近づきつつある。
 川内原発はまだ猶予はあるが、今後再稼働が進めば、3年程度で容量を超える原発も出てくるのは間違いない。
 政府は使用済み核燃料を再処理し、ウランやプルトニウムを再利用する核燃料サイクルを目指す。
 だが、青森県六ケ所村の再処理工場は稼働のめどが立っていない。再処理した後に出る高レベル放射性廃棄物の処分場選定は緒に就いたばかりだ。
 自治体の応募から国主導で科学的に有望地を選ぶ方針に変えたが、反原発の世論は根強い。自治体の了解が得られるかは甚だ疑問だ。核燃料サイクルの前途は極めて多難といえる。
◆新増設の思惑のぞく
 安倍首相は、原発への依存度を可能な限り低減させていくとの考えを再三示している。
 しかし、2030年の電源構成比率は再生可能エネルギーが22~24%に抑えられる一方、原発は20~22%とした。
 新規制基準で定めた原発の運転期間40年を超えるか、新増設しなければ到達できない数字である。原発輸出にも乗りだした。
 経済を優先させた「原発回帰」にほかならない。福島事故後、ドイツやスイスなど脱原発にかじを切る先進国が相次いでいるのとは対照的と言わざるを得ない。
 今夏の猛暑でも電力は足りている。温室効果ガス削減や電気料金の抑制といった課題があるのは確かだ。だが、省エネや再生エネの一層の推進と多様な技術革新で克服は可能だろう。
 住民の平穏な暮らしと地域を奪う過酷事故は、もう二度と繰り返すわけにはいかない。脱原発に転換すべきだ。
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[京都新聞 2015年08月09日掲載]
社説:原発再稼働  フクシマ前へ逆行許されぬ


 まるで何ごともなかったかのように、フクシマ以前に逆戻りしようとしている。そんな危惧を強く抱く。
 九州電力の川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県)が近く再稼働する。
 2013年9月から全ての原発が止まっており、再稼働すれば2年ぶりに原発が動きだす。
 11月中旬には関西電力高浜原発3号機(福井県)、さらに四国電力伊方原発(愛媛県)が控える。川内原発を含め、新規制基準に合格した原発5基が再稼働の準備を進めている。
 とにかく再稼働を急ぐ、という姿勢は許されるものではない。
 東京電力の福島第1原発事故が突きつけた多くの教訓や課題に、真正面から向き合っていなければならない。
 しかし、事故から時が流れ疑問符が付くようになった。このまま原発回帰の道に踏みだすことは認められない。
 大方の市民の意識ともかけ離れている。直近の共同通信世論調査で56・7%が再稼働に反対だ。電気料金値上げや節電を求められても、原発ゼロの生活を受け入れている。原発事故がもたらした大きな意識変化といえよう。
 フクシマ以前、以後と表現される重大な画期にある。以前は政官業と専門家の閉じた「原子力ムラ」によって原発が推進され、多くの市民は無関心だった。
 原発は事故が一度起きると、広範囲に、長期にわたって生活や故郷を根こそぎ奪う。今も福島県内外で11万人が避難生活を強いられ、40年と言われる収束の道筋も見通せない。
 市民参加の議論要る
 電気が遠方の過疎地から都市に送られてくるのに、多くの人が気付かされた。もはや原発は身近な問題といえる。
 事故後、当時の民主党政権によって意見公募や意見聴取会、さらに討論型世論調査が重ねられ、かつてない市民参加の議論が展開された。その結果、選択肢の中で最も支持が多かった原発ゼロを、2030年代末までに可能にする環境戦略がまとめられた。しかし、閣議決定やエネルギー基本計画作りがないまま、安倍政権に交代した。
 欧米で見られるように、原発に公開・民主は欠かせない。市民の議論なしに再稼働を進めていくのは、フクシマ以前と何ら変わっていない。経済産業省、原子力規制委員会、電力会社などで決めていくやり方は、新しい原子力ムラと映る。
 科学技術の問題であっても、専門家だけに任せていいのか。規制委が技術的な観点から基準に「合格」としたのを、いつの間にか「安全」と言い換えて再稼働のお墨付きとしている。安全に責任を持つのはだれなのか。
 こんなところで市民のチェックが必要になるはずだ。
 「安全神話」の復活
 川内原発では、住民の避難計画が自治体によって作成された。しかし、バス輸送などで人員を確保できるかなど心もとないという。これで再稼働するのは、基準に合格したのだから事故は起きないという「安全神話」の復活と見える。米国では避難計画の審査が原発運転の条件となっているのを思えば、危機感がなさ過ぎよう。
 川内原発の周辺には過去に巨大噴火を起こした五つのカルデラ(陥没地形)があり、火砕流が現在の原発敷地内に到達していたかもしれない。それでも九電は噴火の兆候をつかんで原子炉を停止し、核燃料を運び出す方針を示し、規制委も妥当とした。
 しかし、火山学者の多くは兆候の把握は困難と指摘し、規制委の審査に否定的だ。
 福島原発では事故の数年前に予測する大津波の高さを15メートル超と試算していたのに、東電は対策を取らなかった。国際原子力機関(IAEA)の報告書で「背景に原発は安全との思い込みがあった」と批判されてもいる。
 何が真の豊かさか
 福島事故の反省から、独立性の強い規制委が発足したが、外部の科学的知見にもっとオープンであるべきだ。規制委の委員交代人事で、かつての原発推進の大物が入ったのも、気になるところだ。
 安倍政権はエネルギー基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけている。30年の電源構成を20~22%としたが、原則40年で廃炉と定められた原発を延長して稼働させることを初めから見込んでのことだ。
 新成長戦略で原発の利用は欠かせないという考えが根底にある。
 しかし、福島原発事故で経済至上主義のひずみが露呈したのではなかったか。
 昨年5月、大飯原発運転差し止め訴訟で福井地裁が、こんな判決を出した。<原発停止で多額の貿易赤字が出るとしても、豊かな国土に国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失だ>
 この2年間、「脱原発」社会が現出した事実から多くの可能性を引き出せば、新しい未来につながる。安倍政権や産業界は古い思考から脱すべきだ。
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山陰中央日報 ('15/08/11)
論説 : 川内原発再稼働/急ぐ必要性があるのか


 九州電力川内原発の1号機が再稼働する。東京電力福島第1原発事故から4年半近く、新たな規制基準の下で動き始める最初の原発となる。今後、川内原発2号機などが続きそうだが、新基準で原発のリスクがどれだけ低減できるのか。多くの世論調査などで反対意見が多数を占める中、なぜ今、再稼働する必要があるのか。電力会社も、電力会社の原発再稼働を支持する政府も説明が不十分だ。
 福島原発事故のような過酷事故が起こった時の避難、防災計画は本当に万全なのか、事故で大きな被害を受けるリスクがある住民が納得できるだけの説明がなされ、同意が得られたとも思えない。
 特に問題なのは大規模な火山噴火対策だ。川内原発の周辺には過去に巨大噴火を起こした火山が集中しているが、九電は「危険性は低い」と主張。原子力規制委員会もこれを追認し、巨大噴火の前兆をとらえるための監視を行い、危険が生じたら運転を止めるとしている。しかし、この主張には多くの火山の専門家から疑問の声が上がっている。
 万一、再稼働した原発の事故で大きな被害が出た時の損害賠償の仕組みも未整備だし、保険や資金の手当ても不十分だ。
 本当に事故の教訓を正面から受け止め、事故が日本人に突きつけた多くの問題に対する答えを見つけ出した上での再稼働なのだろうか。残念ながら答えはノーだ。
 政府や電力会社が、再稼働が必要だとする根拠には、電力の安定供給、電気料金の抑制、エネルギー自給率の向上、地球温暖化対策などがある。
 しかし、原発事故からの約4年半、ごく一時期を除いて日本は原発ゼロで電力需要をまかなってきた。事故後、急速に社会の省エネが進んだことや、固定価格買い取り制度によって再生可能エネルギーがこれまでにない勢いで導入されたことなどが一因だ。
 確かに原発事故後、化石燃料への依存度が高まったために電力会社は多額の燃料購入費の支出を迫られ、電気料金が上がったことは事実だ。だが、原発再稼働が電気料金低減の切り札となるかというとかなり疑わしい。
 規制基準への対応や事故対策の強化などによって原発のコストは上昇傾向にあるし、燃料費の高騰の背景には、円安や資源価格自体の上昇傾向などもあるからだ。
 原発からの温室効果ガス排出が少ないのも事実だが、自給率向上や温室効果ガス排出削減のためには、再生可能エネルギーという、リスクも低く、社会の支持も大きい選択肢がある。原発のコストが上昇傾向にあるのに対し、再生可能エネルギーのコストは急速に低下している。
 しかも、原発の運転から出る放射性廃棄物の最終処分の見通しは全く立っていない。
 こうしてみると、拙速ともいえる形で原発を次々と再稼働させる理由はほとんど見当たらない。明確な必要性の説明もなしに安易な再稼働が続けば、安倍晋三首相が言う「原発依存度の可能な限りの低減」は不可能になるだろう。
 今回の再稼働をなし崩し的な原発復興のきっかけとすることなく、原発の将来は、いま一度広く公論に決すべきだ。
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山陽新聞 (2015年08月09日 08時49分 更新)
社説:川内原発 不安が拭えない再稼働だ


 九州電力は、川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)を11日にも再稼働させる見通しだ。東京電力福島第1原発事故を受けて2013年7月に施行された新規制基準に適合した原発として、全国初の再稼働となる。
 だが、過酷事故が起こった際の住民避難計画は、実効性が疑問視されている。原発周辺には、過去に巨大噴火した火山が集中していることも看過できない問題だ。住民の懸念や不安が拭いきれない中で、見切り発車の感が強い再稼働と言わざるを得ない。
 懸念の一つは避難計画への不安である。福島の原発事故後、原子力防災の重点区域が従来の半径10キロ圏から30キロ圏に拡大され、区域内の自治体は避難計画の策定が求められた。川内原発では9市町が該当し、国は各自治体が策定した計画を「実効的」として了承している。
 しかし、自力での避難が難しい災害弱者がいる病院や高齢者福祉施設などについて見ると、避難先を確保できているのは10キロ圏内の17施設約820人分にとどまっている。10~30キロ圏内の227施設約9700人分の行き先は定められていない。
 避難先が未定の施設について鹿児島県は、避難先施設をデータベース化したシステムを活用し、空間放射線量の状況に応じて避難先を探して調整することにしている。ただ、施設との連絡なども必要なため、円滑に調整、避難できるのか課題も残る。
 30キロ圏の住民は計約21万人に上る。避難の際には、どの程度の渋滞が発生するのか、想定したルートが確実に使えるのかなどは見通しにくい。鹿児島県や九州電力は、住民参加の避難訓練を重ね、計画の実効性を検証することを優先すべきではないか。
 火山についても懸念される。九州電力は、巨大噴火に伴う火砕流などで原発が影響を受ける可能性は十分小さいと評価し、原子力規制委員会も妥当と判断した。非常に大規模な噴火の前兆があった場合は原子炉を停止し、核燃料を搬出するとしている。
 とはいえ、噴火の時期や規模の正確な予知は極めて困難とされる。核燃料を運ぶ手段や搬出先などは決まっていない。対応策をさらに検討する必要がある。
 そもそも原発をめぐっては、発電に伴い発生する核のごみ(高レベル放射性廃棄物)の問題がある。現在、国内には約1万7千トンもの使用済み核燃料が各地の原発のプールなどに保管されている。だが搬出先となるはずの再処理工場は稼働が見通せず、原発再稼働が進めば数年でプールが満杯になる所もあると指摘されている。最終的な処分地のめども全く立っていない。
 ごみの行き先にめどが立たない以上、使用済み燃料の発生量を抑制せざるを得ない。川内原発を含め、再稼働に前のめりな政府の姿勢には無理があるといえよう。
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中国新聞 2015/8/11
社説:川内原発再稼働 「なし崩し」許されない


 九州電力はきょう、鹿児島県の川内(せんだい)原発1号機を再稼働させる。東京電力福島第1原発の事故後に定められた新規制基準の下では初のケース。国内の原発が全て停止していたため、約2年ぶりの稼働となる。
 後を追うように、愛媛県の伊方原発など各地で再稼働への準備が進む。本来なら、川内原発が今後の範となるべき第1号だったはずである。だが、拙速ぶりが目立つ「あしき前例」として懸念を禁じ得ない。
 各種の世論調査では依然、原発再稼働への反対が多数を占める。4年半近くたっても収束が見通せない福島第1原発の事故の衝撃はいまだ国民の心に刻まれている。
 万一の際に被害に遭うのは私たちなのだ、と。その不安や批判の声に、九州電力や政府はどれだけ本気で向き合ってきたのだろう。
 ▽置き去りの住民
 川内原発では地元同意の範囲が狭められたことが何より疑問を招いた。立地自治体である薩摩川内市と鹿児島県の首長、議会に限って同意を得ればいいという手法は、福島第1原発の事故前と何ら変わっていない。
 鹿児島県内はもとより、隣り合う熊本、宮崎の市町から公開の説明会を求める声が上がったのも当然だ。取り合おうとしない九電の姿勢は、かえって疑心暗鬼を招いたのではないか。
 周辺自治体が作った避難計画に基づく訓練がなされないまま再稼働へ踏み切ることも問題だ。原発の敷地内では過酷事故を想定した訓練がなされてきたのに対し、住民の避難への備えが十分とは思えない。甲状腺の被曝(ひばく)を抑えるために服用する安定ヨウ素剤も、事前配布が間に合っていないという。
 国の側もおかしい。望月義夫・原子力防災担当相は「訓練の実施を原発の稼働条件と考えていない」と述べている。避難に混乱を極めた福島の事故から何を学んだのだろう。むしろ当時の検証から、避難訓練を徹底的に求める立場ではないか。
 ▽曖昧な最終責任
 つまるところ、誰が安全対策の最終責任を負うのかが、はっきりしていないことと決して無縁ではあるまい。
 一義的な責任を負うのは電力会社であるが、もし重大な事故が起きれば、巨額の賠償に耐えきれない。保険の引き受け手もなく、代わる仕組みづくりも進んでいない。
 政府は再稼働に関し、「政治的判断の余地がない」との見解を示す。あくまで技術的な判断を「第三者」である原子力規制委員会が行う制度なのだと。しかし当の規制委は「基準に適合しても事故は起きうる」「安全であるとは申し上げない」と、われ関せずだった感がある。
 その規制委の判断も本当に科学的といえるのか。川内原発では火山の噴火対策への疑問や批判が専門家の間に残ったままである。巨大噴火を過去に起こした周辺の火山について「危険性は低い」とする九電の主張を規制委はあっさり追認した。噴火の前兆を監視で捉え、運転を止めることができるというが、どこまで根拠があるのだろう。
 ▽被害者の視点を
 結局、甚大な被害にしても賠償の負担にしても、付けは国民に回ってくることになる。
 原発の運転で生じる放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」についても同様である。最終処分の方法にめどを付けないままの再稼働は、安全神話が横行した時代への先祖返りにも映る。
 いま一度、福島の事故から得た教訓に立ち戻る必要がある。
 政府が設けた事故調査・検証委員会の最終報告書に、こんな一文がある。まさしく重要な教訓にほかならない。
 「事業者や規制関係機関による、『被害者の視点』を見据えたリスク要因の点検・洗い出しが必要であり、そうした取り組みを定着させるべきである」
 そうした視点を欠いている限り、安全が最優先という鉄則はなし崩し的に弱まりかねない。安倍政権や推進派の期待通り、きょうの再稼働が原発復権へ扉を開くことになるのを認めるわけにはいかない。
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高知新聞 2015年08月11日08時08分
社説:【川内原発再稼働】3・11以前には戻れない


 九州電力は鹿児島県の川内(せんだい)原発1号機をきょうにも再稼働させる。
 原子力規制委員会の新規制基準に適合した原発の再稼働は初めてで、2013年9月から続いてきた「稼働原発ゼロ」が終わる。
 多くの国民は原発ゼロ社会を望んでいる。にもかかわらず安倍政権が示しているのは原発を使い続ける未来だ。原発で生じる核のごみの処分地も決まっていない。再稼働によって新たなごみはさらに増え続ける。
 未曽有の福島第1原発事故などなかったかのように、「3・11」以前の社会に戻すことは許されない。
 「世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合する原発は、再稼働を進めることが重要だ」
 安倍首相らは判で押したように言うが、本当に「世界一」レベルなのかどうかには疑問符がつく。
 例えば欧州の原発には原子炉内で溶けた核燃料が漏出するのを防ぐため、外側の格納容器に受け皿の「コアキャッチャー」がある。だが日本の新基準では設置は義務付けられていない。
 川内1号機の場合、7月で運転開始から31年が経過した。30年を超える原発には老朽化を考慮した管理方針の策定が義務付けられている。規制委は1号機の管理方針を認可したものの、一部の機器や設備について想定地震の揺れに耐えられるかどうかの評価が間に合わず、1年間先送りされた。
 老朽化へのチェックが不完全なまま再稼働させるのは、どう考えても順番が逆ではないか。
 国内で頻発している火山噴火の影響に対する恐れも払拭(ふっしょく)できていない。万一に備える避難計画の策定では、要援護者対策などが困難を極める。それが自治体任せなのも問題が大きい。
 何よりも深刻な事故が再び起きた時、責任はどこが取るのか。現状では政府や規制委、地元自治体などが最終的な責任を押し付け合っているように映る。これでは国民の疑問や不安は到底消えない。
 目指すのは原発ゼロ
 政府は2030年の原発の電源構成比率を20~22%にすると決めている。20%台は福島の事故前と変わらない。原発の運転を原則40年とする制限がある中、20%台を維持するには新増設や建て替えも視野に入ってくる。
 これは民主党政権時代、国民的議論で導き出した「30年代の原発ゼロ」方針とは相反するものだ。
 政府に求められるのは、原発再稼働の推進ではない。国民の支持が根強い原発ゼロの目標年を定め、そこに向けて太陽光や風力、地熱など再生可能エネルギーに計画的に置き換えていくことだ。
 目標年までに排出される放射性廃棄物の量も想定できよう。核のごみの総量を制限できれば、最終処分地の選定にもプラス材料になる可能性がある。
 13年以降、原発ゼロで夏も冬も電力需要のピークを乗り切ってきた。そもそも今、再稼働は必要なのか。
 電力各社は原発停止に伴う石炭、石油など火力発電の燃料輸入コストの増加を挙げる。それならなおのこと、すべて国産で賄える再生可能エネルギーに比重を移していく方が、長期的に電力会社の経営改善につながろう。
 いったん事故が起きた際の人的、物的補償など膨大なリスクを考えても、もはや原発に固執する理由はない。政府は福島事故の教訓をいま一度、かみしめるべきである。
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=2015/08/11付 西日本新聞朝刊=
社説:川内原発再稼働 九電は安全管理の徹底を


 九州電力がきょう、川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉を起動する。東京電力福島第1原発事故を踏まえた新規制基準に基づく原発再稼働は初めてだ。
 鹿児島県と立地自治体の薩摩川内市から同意を得たとはいえ、周辺自治体も含めて再稼働に対する住民の不安感は根強い。
 九電には、徹底した安全管理をあらためて求めたい。
 ▼再度、気を引き締めよ
 原子力規制委員会は、新基準に適合しても安全性まで担保するものではないという。規制委の田中俊一委員長は「絶対安全、事故ゼロとは言えない」と念を押す。
 再稼働する1号機は、2011年5月から4年以上も停止していた。田中委員長は「(運転)停止が長く続いており、これから軽微なものを含めていろいろとトラブルは起きる」とも指摘する。私たちも注視していきたい。
 1号機が7月で運転開始から31年経過したことも気になる。
 原子炉等規制法は、稼働30年超の原発に対し、10年ごとに設備や機器の老朽化を考慮した管理方針の策定を義務付けている。
 規制委は再稼働直前の今月5日に川内原発1号機の保守管理方針を含む保安規定の変更を許可したが、老朽化した機器や設備が想定地震の揺れに耐えられるかの評価が一部間に合わなかった。
 九電は耐震性の余裕が比較的少ないとみられる機器などを抽出して評価を行い、30年を超えて運転しても安全上問題ないと判断したという。残りは来年7月までに実施する。規制委も容認した。
 確かに保安規定の変更は法律上、再稼働前に認可を受ける必要はない。ただ、市民感情を考えれば、再稼働はすべてのチェック終了後にすべきではなかったか。
 規制委が6月に行った川内原発の保安検査でも、保安規定違反の監視に当たる事例が2件あった。
 過酷事故対策の放水砲や燃料油貯蔵タンクの点検に関する記載などがなかったという。
 監視は4段階ある規定違反の中で最も軽いものだが、小さなミスが重なって大きなトラブルにつながることも少なくない。
 九電は再度、組織全体で気を引き締めるべきである。
 ▼正確で迅速な情報公開を
 政府は昨年9月、原子力防災会議(議長・安倍晋三首相)で関係省庁が鹿児島県や周辺自治体とまとめた広域避難計画を了承した。
 具体的には▽原発で電源喪失などの深刻な事態が発生した場合には5キロ圏内の住民を車やバスですぐに避難させる▽5~30キロ圏内では自宅などの屋内に退避して混乱を防ぐ‐といった内容である。
 鹿児島県は6月、県バス協会やバス事業者と協定を結び、避難者最大3千人分の移動手段を確保した。だが計画に基づく訓練はまだ行われておらず、住民から実効性を疑問視する声も上がっている。
 望月義夫原子力防災担当相は「安全神話にとらわれず何回も訓練を繰り返しながら改良していく。(再稼働の)前や後という視点では捉えていない」と言う。
 福島第1原発でも明らかなように重大事故が起きれば、住民の避難には相当な混乱が予想される。
 望月氏は「住民や関係機関の参加しやすい時期が望ましい。実施主体の鹿児島県が調整中だ」とも説明している。国が主導して、一日も早く訓練を行うべきだ。
 川内原発の周辺には、過去に巨大噴火を起こしたカルデラが集中している。九電は規制委の審査で「原発運転期間中に巨大噴火が起きる可能性は極めて小さい」と主張し、規制委も追認した。一方、巨大噴火の際に原発の運転停止命令を出す判断基準の策定などは、ようやく動き始めたばかりだ。
 肝心な責任体制の曖昧さも旧態依然である。政府は規制委が新基準を満たすとした判断を尊重し、再稼働を進めるとしている。個々の原発の再稼働判断は電力会社が担う仕組みに変わりはない。
 国内の原発は一昨年9月からすべて停止しており、川内1号機で約2年ぶりの稼働となる。
 もし川内原発で深刻なトラブルが発生すれば、他の原発も再稼働どころではなくなる。国が前面に出て最終的な責任を負うべきだ。
 数々の課題を抱え、川内原発は再稼働する。国民や地域住民が不安に陥らないよう、九電は正確で迅速な情報公開に努めるべきだ。
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熊本日日新聞2015年08月09日
社説:川内原発再稼働へ なし崩しでは許されない


 九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働が秒読み段階に入った。10日に原子炉内の核分裂を抑える制御棒を動かす設備が正常に作動するかどうかの検査を実施し、問題がなければ11日に制御棒を引き抜いて原子炉を起動させる方針だ。
 その後、半日程度で原子炉内の核分裂の連鎖反応が安定した状態になる「臨界」に達し、約3日後にはタービンを回して発電と送電が始まる。徐々に出力を上げフル稼働となり、9月中旬には営業運転に移行する。
 しかし国民の過半数が原発再稼働に反対している。過酷事故への対策が十分ではないとの批判も強い。川内原発の再稼働を機に、なし崩し的に原発回帰が進んでいく懸念は拭えない。
 停止している全国の商業用原発43基の先頭を切り、東京電力福島原発事故を踏まえた原子力規制委員会の新規制基準を満たす最初の再稼働となる。2011年12月に玄海原発4号機が運転を停止して以来、約3年7カ月続いた「九州の原発ゼロ」も終わる。
 川内2号機も10月中旬の再稼働を目指しており、関西電力の高浜3、4号機(福井県)、四国電力の伊方3号機(愛媛県)も規制委の審査に合格している。ほかに20基が申請していることから考えると、今後、再稼働する原発は加速度的に増える可能性がある。
 政府は、昨年4月に閣議決定したエネルギー基本計画で「原発依存度を可能な限り低減させる」としている。しかし、ことし7月に決定した電源構成比率では2030年の原発を20~22%と明記した。これは原則40年とされる原発の運転期間の延長を見込んだ数値であり、原発回帰が数字からも鮮明になっている。これでは「政府の公約違反」と批判されても仕方ないだろう。
 原発ゼロが続いたこの間、国内では節電や省エネ意識が高まり、電力消費も減った。政府や各電力会社は、電気の安定供給に原発は欠かせないとの立場だが、猛暑が続くことしの夏も深刻な電力不足は起きていない。
 九電を含む大手電力9社の今夏の電力需給見通しでも、電力需要のピークに対する供給余力を示す「供給予備率」は、全社が安定供給の目安である3%を確保している。原発再稼働は、電力各社の自前の供給能力を充実させることにつながるが、原発ゼロでも安定供給は可能な状況といえよう。
 九電が川内原発の再稼働を急ぐ理由は、原発への依存度が高く、原発停止で財務状況が大きく悪化したからだ。15年3月期の連結純損益は4年連続の赤字。経営の健全性を示す自己資本比率(連結、15年3月末)も9・0%まで下がった。川内原発1、2号機が再稼働すれば月150億円の収支改善が見込まれるとする。
 政府は福島原発事故の教訓を生かすために、原発への依存度を極力抑える努力をするべきだ。なし崩し的に原発回帰を進めることは許されない。
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南日本本新聞 ( 2015/8/11 付 )
社説:[川内再稼働へ] 課題が残されたままだ


 九州電力川内原発1号機がきょう再稼働する。制御棒を引き抜けば、半日ほどで臨界に達する見通しだ。
 1号機は東京電力福島第1原発事故の2カ月後に定期検査に入って、そのまま止まっていた。発電と送電は14日にも再開される。
 2号機も10月には再稼働する。九電は2基の運転で月150億円の収支改善を見込む。
 「フクシマ」後に地震や津波対策は強化されたが、「事故ゼロ」が保証されたわけではない。
 地元自治体が策定する住民避難計画にしろ、巨大噴火への備えにしろ、多くの課題が残されたままの再稼働である。やはり見切り発車と呼ぶべきだ。
 川内原発周辺ではこのところ、集会やデモが連日のように開かれている。
 脳性まひがある男性は、「障害者と原発の共存は不可能」と抗議の声を上げた。
 「電力会社や政府は一般の人が声を上げるのを最も恐れている。一人一人が声を上げよう」。福島で農業をしていた元宇宙飛行士、秋山豊寛さんはそう訴えた。
 民意は反対している。それなのになぜ今、原発を再稼働させる必要があるのか。電力会社も、電力会社を支持する政府も説明が足りない。
 原発事故から約4年半、一時期を除いて日本は原発ゼロで電力需要をまかなってきた。
 一方、化石燃料への依存度が高まり、電気料金が上がったことは確かである。だが、原発再稼働が電気料金値下げの切り札となるかは疑わしい。
 電力会社の燃料購入費が高騰した背景には、円安や資源価格自体の高騰があった。さらに新たな規制基準への対応や事故対策の強化などによって、原発のコストは上昇傾向にある。
 政府は地球温暖化対策も、再稼働を必要とする根拠に挙げた。
 しかし、再生可能エネルギーというリスクが低く、国民の支持も大きい選択肢がある。上昇傾向の原発コストに対して、再生可能エネルギーのコストは急速に低下している。
 必要性を明示しないまま再稼働をなし崩しに進めれば、安倍晋三首相が言う「原発依存度の可能な限りの低減」は不可能だろう。
 過酷事故が起きたら住民は大きな被害を受ける。それを納得させるだけの説明がなされ、同意が得られたとも思えない。
 地方の犠牲の上に都市が安住していていいのか。フクシマで誰もがそう痛感したはずだ。教訓を思い返す時である。
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琉球新報 2015年8月11日 6:02
<社説>川内原発再稼働 「安全」欠いた見切り発車だ


 放射性物質が飛散し、甚大な被害をもたらした東京電力福島第1原発事故は収束していない。大津波への対処策を怠った事故原因の究明も不十分で、責任の所在もあいまいなままである。九州電力川内原発(鹿児島県)の1号機が11日再稼働する。新たな規制基準の下で動き始める最初の原発となる。
 日本中で停止していた原発を再稼働させるのは、世界を震撼(しんかん)させた過酷事故の教訓に背を向けたと言うしかない。
 ほぼ全ての世論調査で国民の反対意見が多数を占め、再稼働を急ぐ理由は乏しい。見切り発車の感が強い再稼働はやめるべきだ。
 全ての原発が停止しても電力が途絶えることはなかった。猛暑のことしも原発なしで十分に電力は賄えた。安倍政権は川内原発を皮切りに、なし崩し的に再稼働を進め、原発を電力供給の柱に戻そうとしている。再稼働ありきの合理性を欠いた判断ではないか。
 「新しい規制基準に適合しても事故が起きる可能性がある」「再稼働の是非を規制委は判断しない」。原子力規制委員会の田中俊一委員長は原発再稼働をめぐり、こうした見解を表明している。
 規制委の役割は原発事故発生の危険性を一定程度以下に低くすることにあり、原発推進の是非には口を挟まないという姿勢だ。
 一方、安倍晋三首相は「規制委が安全と言った原発は着実に再稼働する」と言い、再稼働の可否を規制委の基準適合審査に委ねる。
 決して同義ではない「基準適合」を「安全」にすり替え、規制委が「安全」を保証しているかのような印象操作に走っている。詐術のような言いぶりではないか。
 川内原発の周辺には巨大噴火の過去を持つ火山が集中しているが、九電は「危険性は低い」とし、規制委も追認した。だが、火山の専門家から疑問を呈する声が多く上がっている。
 事故の危険性への万全の対処が尽くされていない。原発事故後、国は原発から30キロ圏内の自治体に防災・避難計画策定を義務付けた。川内原発周辺の9市町も策定済みだが、再稼働に同意した鹿児島県は「九電の多忙」を挙げ、避難計画の実効性を確認する住民参加型訓練を再稼働前に実施しなかった。住民を守る責任を果たしたと言えるだろうか。
 不備と無責任が際立つ原発再稼働は、福島の教訓を踏まえて安全を願う国民への背信行為になる。
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沖縄タイムス 2015年8月11日 05:30
社説:[川内原発再稼働]疑問多く認められない


 鹿児島県薩摩川内市にある九州電力の川内原発1号機が再稼働する。
 福島第1原発事故から4年5カ月。経済界の意向を背景に、国民の6割近い反対を押し切っての極めて強引な決定だ。必要な保安規定の変更を原子力規制委員会が認可したのはわずか6日前のことで、スケジュールありきの感も拭えない。
 九電は11日に原子炉を起動し、14日にも発電を開始する。新規制基準に合格した原発としては初の稼働である。
 この新規制基準は福島の事故の反省を踏まえて、規制委によって策定された。炉心溶融や放射性物質の大量放出といった過酷事故対策を義務付けたほか、地震、津波など自然災害への備えを厳格化した。
 規制が従来より厳しくなったのは確かだが、安倍政権が錦の御旗とする「世界最高水準の規制基準」は信用できるのか。
 例えば、川内原発周辺には大規模噴火の可能性が指摘される火山がある。
 九電は巨大噴火があっても火砕流などの影響を受ける可能性は十分小さいと評価し、規制委も妥当と追認。噴火の前兆を捉えるための監視を条件とする。
 しかしこの決定には、噴火予知の限界への理解が欠けている。日本火山学会や火山研究者の指摘するところである。
 過去に巨大噴火を起こした火山が集中する地域であることを考えれば、立地条件を根本から問うべきだ。
    ■    ■
 再稼働で住民が最も不安に思っているのは、福島第1原発事故のような過酷事故が起きた際、どのように被ばくを防ぎ、どのように逃げるかといった避難計画だ。
 国は原発から半径30キロ圏内の自治体に避難計画の策定を義務付けている。川内原発の30キロ圏には鹿児島県の9市町が含まれ、約21万人が暮らす。圏外にある市町に避難する計画だが、受け入れ体制の整備は具体的には進んでいない。
 本来なら再稼働の前に実施すべき住民の避難訓練も先送りされたまま。病院や老人介護施設など災害弱者の避難計画策定も遅れている。
 そもそも再稼働にお墨付きを与えた規制委は、避難計画を審査の対象にしておらず、実際に事故が起きた場合の責任の所在が不明確となっている。住民の命を守る最後の砦(とりで)となる避難計画の実効性にはたくさんの疑問符が付く。
    ■    ■
 政府や電力会社が再稼働を急ぐのには、電力コストを重視した景気対策、経営改善といった側面がある。
 しかし忘れてはならないのは、「核のごみ」(高レベル放射性廃棄物)の最終処分が宙に浮いたままという現実だ。原発が稼働すれば廃棄物は生まれ続ける。
 福島県では今なお約11万人が避難生活を余儀なくされている。「いったん事故が起きると、住民の命、なりわい、歴史が奪われる」という悲痛な叫びが胸を打つ。
 事故の収束が見えないままの再稼働を認めるわけにはいかない。
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しんぶん赤旗 2015年8月11日(火)
主張:川内原発始動強行 世論無視、安倍政権の責任重大


 九州電力が11日に鹿児島県薩摩川内市にある川内原発1号機の起動を強行します。臨界に達したあと14日には発電を開始する予定です。九電は引き続き2号機についても再稼働を狙っています。原発の再稼働は、東京電力福島原発事故のあと全国の原発が相次いで運転を停止し、一昨年9月に最後の関西電力大飯原発が停止して以来初めてです。安倍晋三政権は再稼働を「事業者の判断」だといいますが、福島原発事故も収束しない中での再稼働は、政権の「判断」で推進したものです。国民の安全を置き去りにした原発始動は、安倍政権の責任が重大です。
国民は再稼働求めてない
 全国の原発が停止していたこの2年近く、政府や電力業界が宣伝した電力不足は起きませんでした。国民の圧倒的多数は、東電福島原発事故がいまだ収束していないことに心を痛め、安全が保証できない原発の再稼働に反対しています。現在の原発では事故を完全に防ぐことができず、いったん放射性物質が外部に漏れだすような事故が起きれば、広範囲に被害が拡散し、その影響は長期間にわたることが明らかになったからです。
 にもかかわらず、原子力規制委員会が東電福島原発事故後つくった新しい規制基準に「適合」すると判断した原発は再稼働を認めると、原発の運転を推進してきたのは安倍首相をはじめ政権側です。
 安倍政権が昨年4月に決めた「エネルギー基本計画」は、原子力は「重要なベースロード電源」だと明記し、原子力規制委が規制基準に「適合」すると認めた場合は「再稼働を推進する」と明記しました。今年6月に決めた「長期エネルギー需給見通し」では2030年度時点の原子力の比率を22~20%としました。再稼働を推進した政権の責任は明らかです。
 原子力規制委の田中俊一委員長は審査に「適合」しても安全が保証されるわけではないと繰り返し、川内原発の地元でも運転再開への不安と批判が渦巻いていました。それに対し昨年、「政治とカネ」の問題で辞任する直前の小渕優子前経済産業相が鹿児島県知事や薩摩川内市長に文書で再稼働を要請し、後任の宮沢洋一経産相も現地を訪れて、「万一事故が起きた場合は国が責任を持って対処する」からと抵抗が広がるのを抑え込んだのです。政権側の責任は極めて重いというほかありません。
 実際にはその言葉とは裏腹に、安倍政権は住民に対して責任を果たしていません。日本共産党の笠井亮議員が7日の衆院予算委で追及したように、周辺自治体などが求めた説明会さえ宮沢経産相は「九電が個々に説明している」と開催に応じず、まさに九電任せです。最近も菅義偉官房長官が「再稼働は九電の判断」と言い放ちました。再稼働を推進しながら責任は取ろうとしない政権の姿勢がいよいよ問われることになります。
運転開始しても問題山積
 川内原発は再稼働しても、規制委の審査で不十分さが浮き彫りになった火山噴火への対策や、地元自治体に丸投げした事故のさいの避難計画など、問題は山積しています。1号機の再稼働をこのまま進め、2号機や全国の原発にも再稼働を広げていくなどというのは絶対に許されません。原発再稼働の推進ではなく、一日も早く全国で「原発ゼロ」を実現すべきです。
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