2015-08-16(Sun)

川内原発再稼働 8・11なし崩しの「原発回帰」  150812-18

福島の教訓忘れた「見切り発車」 なし崩しは許されない 安全神話、復活させるな  全責任は政府にある

<各紙社説・論説>
朝日新聞)原発再稼働―川内をひな型にするな(8/12)
毎日新聞)川内再稼働 原発依存社会に戻すな(8/12)
北海道新聞)川内原発再稼働 教訓生かさぬ見切り発車(8/12)
秋田魁新報)原発再稼働 「福島以前」に戻るのか(8/18)
河北新報)川内原発再稼働/展望なき回帰は許されない(8/12)

福島民友新聞)川内原発再稼働/教訓踏まえた長期展望示せ(8/13)
福島民報)【原発再稼働】全責任は政府にある(8/12)
信濃毎日新聞)原発再稼働 なし崩しは許されない(8/12)
京都新聞)川内原発再稼働  安全神話、復活させるな(8/12)
神戸新聞)川内原発再稼働/事故の総括がまだ不十分だ(8/12)

愛媛新聞)川内原発再稼働 福島の教訓忘れた「見切り発車」(8/12)
徳島新聞)川内原発再稼働 なぜ今「原発回帰」なのか(8/13)
佐賀新聞)川内原発再稼働 ◆福島の教訓を思い起こせ(8/12)
宮崎日日新聞)川内原発再稼働 ◆今なぜ必要か政府は説明を◆(8/12)
南日本新聞) [川内原発再稼働] なし崩しの「原発回帰」は許されない(8/12)




以下引用



朝日新聞 2015年8月12日(水)付
社説:原発再稼働―川内をひな型にするな


 九州電力の川内原発(鹿児島県)が再稼働した。13年9月以降、国内にあるすべての原発は止まっており、運転が再開されるのは約2年ぶりとなる。
 福島第一原発事故を契機に改められた原子力規制委員会の新しい規制基準に合格した第1号でもある。政府は川内を皮切りに、規制委の審査をパスした原発はすべて動かす方針だ。
 しかし、今回の再稼働の決定過程には問題が多い。火山の大規模噴火について規制委の審査には疑問が投げかけられたままだ。避難計画も不備が指摘され、鹿児島県民の半数以上が再稼働に反対とする世論調査もある。誰の判断と責任で再稼働が決まったのか、あいまいだ。
 こうした疑問や問題、さらには民意を置き去りにした見切り発車の再稼働は認められない。川内の決め方をひな型として今後も再稼働を決めていくこと、なし崩しで原発依存に戻すことには反対である。
■消えるベースロード
 今回の再稼働に先立って、政府は2030年時点の電源構成目標を決定し、原発の比率を20~22%という水準においた。新たに原発をつくるか、相当数の老朽原発の寿命を延ばさないと達成できない数字だ。
 関西電力の八木誠社長(電気事業連合会会長)は先月末の会見で「(建設中の3基を含む)46基の原発を相当数稼働していく必要がある数字だと理解している」と語った。国と電力会社は原発回帰を既定路線にしようとしている。
 原発の位置づけは「ベースロード電源」だ。「発電コストが安く、出力が安定しているので昼夜を問わず運転を続ける電源」だという。
 しかし、先進国ではベースロードという概念自体が消えつつある。風力や太陽光などの再生可能エネルギーをできるだけ受け入れ、原発や火力発電は、再エネによる発電が少ないときの調整弁へと役割を変えている。
 こうした運用を可能にしているのが、電力改革だ。
 欧州では送電部門を発電部門から分離・独立させ、一元的に管理・運用している。天候に左右されがちな再エネも、精緻(せいち)な天気予報に基づいて広域的に融通させることで、需要に見合うようにしている。今後は、変動する電力需要にあわせて柔軟に供給をコントロールする技術が世界の電力ビジネスのカギになると見られている。
 日本も、遅まきながら電力改革に着手した。今国会で仕上げとなる法律も成立した。2020年までに3段階で改革を進める。再エネを含めた多様な電源やサービスが公正な条件のもとで競い合い、消費者が選んでいく。そんなエネルギー社会に変わることが期待されている。
■割に合わない電源に
 原発を支えてきた地域独占や、経費をそのまま消費者に転嫁する料金制度もなくなる。「安い」とされてきた原発だが近年、建設や運営にかかるコストは世界的に上昇の一途だ。
 世界有数の原発メーカーであるフランスのアレバは新設原発のコストが膨らんで経営が行き詰まり、政府が救済に入った。不正会計に揺れる東芝も、強化してきた原子力部門が経営の重荷になりつつある。
 国内の電力各社は追加の安全対策に2・4兆円を見込む。今後も新しい対策が出るたびに追加投資を迫られるだろう。廃棄物の処理や立地のための交付金制度、事故時の賠償金などを積み上げていくと、原発は「割に合わない」電源であり、新しい電力システムの中では成り立たない事業であることが見えてくる。何より、国民の過半数が「原発を使わなくてすむ社会」を望んでいる。
■再エネ築く覚悟を
 政府がいま取り組むべきは、再稼働を重ねて原発を主軸に戻していくことではない。一時的に原発に頼るとしても、老朽原発や安全面に疑問符がつく原発から優先的に廃炉にすると同時に、再エネを育てていくことである。自然環境から見て、九州は最適地の一つだ。
 この間、再エネの固定価格での買い取り制度が始まり、地域の特性を生かした「ご当地電力」が各地に誕生した。太陽光発電に偏っている問題や、買い取り価格を見直す課題はあるが、自給できて温暖化防止にも役立つ電源を伸ばそうという機運は、着実に育っている。
 当面は支援が必要だが、送電網への接続といったインフラが整って普及すれば、今より安くて持続的な電源となる可能性が高い。
 もちろん、再エネを主軸とした分散型エネルギー社会を築くには、時間もかかるし、曲折もあるだろう。国民の覚悟もいる。高い電気料金を受け入れなければならない時期があるかもしれない。
 それでも、福島での事故で、私たちは原発の怖さを知った。新しいエネルギー社会に向かう原点はそこにある。
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毎日新聞 2015年08月12日 02時30分
社説:川内再稼働 原発依存社会に戻すな


 人々の暮らしを一変させた東京電力福島第1原発の過酷事故から4年5カ月。九州電力が鹿児島県の川内原発1号機を再稼働させた。
 事故後に策定した新規制基準のもとでの初の稼働である。政府も電力会社もこれをモデルケースに既存の原発を順次再稼働していく心づもりだろう。しかし、あれだけの事故を経てなお原発と向き合う政府の本質的な姿勢は変わらず、事故の教訓を生かし切っていない。この再稼働を3.11前の安全神話に逆戻りする第一歩にしてはならない。
 ◇ゼロへの道筋が先決だ
 3.11の教訓は、「対策をとっても原発事故は起きうる」「原発事故が人、環境、社会に与える被害は質も範囲も他の事故と大きく異なる」ということだった。しかも、日本は世界有数の地震・火山国である。日本で原発を動かし続ける危険性はあまりに大きい。核のゴミの処分問題を考えても原発は持続可能なエネルギーとは言いがたい。だからこそ、できるだけ早く原発をやめようと私たちは主張してきた。
 一方で、原発即ゼロがもたらす経済的、社会的リスクを考えれば、一定の条件を満たした上で最小限の稼働を認めざるをえない場合もあるだろう。そんな考えも示してきた。
 しかし、この再稼働は条件を満たさず、認めることはできない。
 まず、原発を減らしていく過程での再稼働との位置付けが欠けている。政府が昨年閣議決定したエネルギー基本計画には、「原発依存度を可能な限り低減させる」との方針が盛り込まれた。これに従えば、確実に原発を減らしていくための工程表を描くことが政府の責務だ。
 ところが、7月に経済産業省が決定した2030年の電源構成は原発比率を20〜22%とした。これを実現するには40年廃炉の原則を超えた老朽原発の延命、建て替え・新増設が必要となる。ここに見え隠れするのは、なし崩しに原発依存社会に戻そうとする政権の意図だ。
 事故が起きた場合に住民への被害を最小限にとどめる、という必須条件も満たされていない。確かに新規制基準では以前は想定していなかった過酷事故も考慮し、求められる安全対策は厳しくなった。基準適合を審査する原子力規制委員会も独立性を高めハードルは高くなった。しかし、ハード面の対策強化は再稼働の必要条件であっても、十分条件ではない。
 福島の事故では指揮命令系統の混乱が事態を悪化させた。拡散する放射能の情報が住民に届かず、線量の高い場所へ逃げた人もいる。入院患者や介護施設の入所者の避難は大混乱し、避難途中や避難先で亡くなった人も多い。事故後、避難計画が必要な自治体は原発から30キロ圏に拡大され、川内原発の周辺でも計画自体は策定された。
 ところが、その計画の実効性を担保する住民の避難訓練が実施されていない。政府もそれを容認している。住民の安全確保に十分な備えがないまま再稼働を急ぐ姿勢は、「事故は起きない」と高をくくってきたかつての安全神話と根が同じではないか。住民の安全を守るためにもただちに避難訓練を行って問題点を抽出し、場合によっては原発再停止も考えるべきだ。
 ◇国民の意思反映させよ
 誰の責任で再稼働するのかが明確でない点も3.11前と変わらない。
 原発は民間ビジネスである以上、一義的には再稼働も安全確保も電力会社の責任だ。ただし、原発は政府の国策でもある。その政府は、「規制基準への適合」を再稼働の唯一のよりどころとし、一方の規制委は「基準への適合=安全」ではないとの認識を示している。これでは、福島の事故と同様、再び事故が起きた時に誰も責任を問われない不条理がまかり通ってしまう。
 さらに根本的な問題もある。原発・エネルギー政策を国民の納得のもとに進めようとする意思が政府にみられないことだ。
 各種の世論調査によれば、事故以降、ほぼ一貫して原発再稼働への反対が賛成を上回っている。毎日新聞が8、9日に実施した世論調査でも川内原発再稼働に「反対」との回答が57%を占めた。
 しかし、住民にこれほどの影響を与えた事故を経ても、国のエネルギー政策に国民の強い意思を反映させる手段は用意されていない。経産省の審議会を使って政策の方向性を決める手法は事故前のままだ。民主党政権時代には討論型世論調査など、曲がりなりにも国民の意思を反映させようとする努力はあった。現政権にはその姿勢すらない。
 原発を動かし続ける限り核のゴミがたまり続けるという問題も大きい。10万年後まで見越して最終処分する必要性があるのに、日本ではまったくめどが立っていない。たとえ事故が起きなくてもこの問題に解決の糸口がない以上、原発を長期的に維持するわけにはいかない。
 政府はまず原発ゼロに向けた具体的道筋を描くべきだ。避難計画や訓練を規制委が事前評価する体制作りも早急に進める必要がある。川内原発再稼働原発回帰の踏み台にしてはならない。
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北海道新聞 2015/08/12 08:50
社説:川内原発再稼働 教訓生かさぬ見切り発車


 さまざまな問題に目をつぶったまま、見切り発車をしたと言うしかない。
 九州電力川内原発1号機(鹿児島県)がきのう、再稼働した。
 関西電力大飯原発(福井県)の停止以来、1年11カ月ぶりに国内で原発が動いたことになる。国内の「原発ゼロ」が終わった。
 川内原発は、原子力規制委員会の安全審査で新規制基準に適合した原発の再稼働第1号でもある。政府はこれをきっかけに全国の原発を次々と動かし、既成事実を積み重ねようとしている。
 しかし、東京電力福島第1原発事故以来、国民は原発そのものに疑念を抱いている。「川内」についても、事故に備えた対策への不安は拭えない。
 このまま政府が原発依存に回帰してしまうことは、到底認められない。
■住民避難は置き去り
 福島の事故では、大量の放射性物質が広範囲に拡散し、今なお10万人以上が避難生活を余儀なくされている。
 東電の津波対策が不十分だったとの指摘もある。だが、東電がいくら安全対策を講じたつもりでも予想外の事象が次々に起き、制御不能に陥る。それが、福島で見た現実だ。
 川内原発の事故時の対策は、そうした教訓が生かされたとはとても言えない。
 例えば、住民の避難だ。鹿児島県と原発30キロ圏内の9市町は避難計画をつくったが、災害弱者がいる病院などで、避難先を確保できているのは10キロ圏内だけだ。
 県は県バス協会などと緊急時の輸送協定を結んだが、その実効性は疑わしい。
 何より気がかりなのは、住民参加の避難訓練が1回も実施されていないことだ。
 伊藤祐一郎知事はきのう、年内にも実施する考えを示したが、順番が逆である。訓練を行った上で、安全に避難できるかどうかを検証してから再稼働の是非を考えるのが筋だ。
 火山対策も問題だ。川内原発の周辺には過去に巨大噴火を起こしたカルデラがあり、大規模災害の危険性も懸念される。
 九電は、噴火の兆候をつかんだ場合は原子炉を停止し、核燃料を運び出せるとした。規制委もこれを妥当としている。
 だが専門家も「予測には限界がある」と指摘する噴火だ。九電の対応は疑問が残る。
■責任の所在はどこに
 再稼働前、安倍晋三首相は記者団に「世界で最も厳しい規制基準をクリアしたと規制委が判断した原発は、再稼働を進めていくのが政府の方針」と述べた。
 首相の言う「世界で最も厳しい」とは何を指すのか。確かに新基準は、地震や津波への対策をこれまで以上に厳しくしている。
 しかし、それで十分でないことは、当の規制委の田中俊一委員長が「審査が安全を保証するものではない」と会見で繰り返していることでも明らかだ。
 規制委の審査はあくまで技術的な点検にとどまっている。避難計画の妥当性や実効性について、規制委が審査する仕組みもない。
 政府は規制委に事実上、判断を丸投げし、規制委は自らに責任がないとする。
 その上、菅義偉官房長官は会見で「稼働の責任は、第一義的に事業者にある」と明言した。今度は九電に責任があるとの主張だ。
 責任の所在は曖昧である。これでは、新たな原発の「安全神話」を生み、不安を増幅するだけだ。
■再生エネの拡大こそ
 問題は、政府が「原発依存をできる限り低減する」としているのに、その具体的な方策をほとんど示してこなかったことだ。
 経済産業省は先月、2030年時点の電源構成を決めた。原発の比率は「20~22%」。老朽原発の建て替えまで視野に入る数字だ。
 関西電力高浜原発(福井県)や四国電力伊方原発(愛媛県)は規制委から合格証を受けており、再稼働は今後相次ぐ可能性がある。
 北海道電力泊原発(後志管内泊村)や電源開発大間原発(青森県)も規制委の審査を受けている。
 だが、日本はこの1年11カ月にわたり原発が止まっていても、大規模な停電もなく乗り切った。
 北海道新聞が加盟する日本世論調査会が6月に実施した世論調査では、原発再稼働に63%が反対し、賛成の31%を上回った。電力会社の電気料金値上げがあっても、民意の多くは再稼働に否定的だ。
 原子力政策に国民の合意がない。そこに問題の核心がある。幅広く議論する場を設け、その声を十分に生かす。それがなければ、先に進んではならない。
 政府に求められるのは、脱原発に向け再生可能エネルギーを拡大する道筋を示すことだ。
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秋田魁新報 (2015/08/18 付)
社説:原発再稼働 「福島以前」に戻るのか


 日本の原発が再び動きだした。九州電力川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働し、電力を供給し始めた。東京電力福島第1原発事故の影響で2013年9月、国内の原発48基が全て停止して以来、約1年11カ月ぶりだ。川内2号機も10月中旬の再稼働を目指す。
 11年3月の東日本大震災に伴い起きた福島の事故を踏まえ、安全対策を厳格化した新規制基準が導入された。川内1、2号機はその基準審査に最も早く合格した。政府や大手電力各社は川内を先例に、新基準に適合した原発を今後も順次再稼働させていく方針だ。
 一方、福島の事故は発生から4年半近くたった今も収束していない。福島県の約11万人が依然、県内外で避難生活を余儀なくされている。復興が進まず、事故検証も終わっていない。福島の教訓を十分くみ取らないまま、事故以前に戻るようなことは認め難い。
 九電をはじめとする電力業界や国は再稼働を急ぐ理由として「電力の安定供給」や「発電コストの低さ」を挙げる。
 しかし、震災後、原発に頼ることなく電力需要が急増する夏を乗り切った。猛暑が続く今夏も需給は逼迫(ひっぱく)していない。節電意識が高まり、火力発電や太陽光を中心とした再生可能エネルギーによる代替が進んだのだ。
 原発発電コストの優位性も揺らいでいる。国は現在、1キロワット時当たり8・9円と試算する。だが、福島の事故後、安全対策費が高騰し、太陽光発電並みの15円という民間の試算も出ている。もし福島のような過酷事故が起これば、10兆円を優に超す事故処理費が加わる。
 何より新基準に合格した川内原発についても安全性への疑問が解けたわけではない。基準をどんなに厳格化し、安全対策を講じても、事故リスクをゼロにはできないのである。
 特に川内原発周辺には、過去に大噴火した火山が集中している。九電は破局的な大噴火が起こる可能性は低いとしているが、原発から約50キロ南東にある桜島の噴火警戒レベルが3(入山規制)から4(避難準備)に引き上げられたことに不安を募らせる人は少なくないだろう。
 国は全電源に占める原発の発電比率を30年までに20〜22%に高める考えだ。原発が全国各地で再稼働すれば、事故リスクが再び全国に広がることになる。
 共同通信社が先週末に実施した世論調査によると、川内原発1号機の再稼働に反対する人は55・3%で、賛成の36・9%を大きく上回っている。
 原発の過酷事故はひとたび発生すると被害が都道府県を越え、国レベルの対策が必要となる。それだけに稼働には国民の理解と同意が欠かせない。反対が多数を占める中で、現在停止中の原発が次々と再稼働することがあってはならない。震災後に国民が誓ったはずの「脱原発依存」に立ち返るべきである。
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河北新報 2015年08月12日水曜日
社説:川内原発再稼働/展望なき回帰は許されない


 不安と疑念を晴らさず、既成事実を積み上げていくような進め方では、国民の理解と信頼を得ることは難しい。
 九州電力川内原発1号機(鹿児島県)がきのう、再稼働した。福島第1原発事故後の新規制基準に基づく初めての再稼働であり、国は原発を基軸にしたエネルギー政策推進の重要な一歩と位置付けるが、国民の多くは再稼働になお強い懸念を抱いている。
 共同通信の7月の世論調査では、再稼働賛成は34.4%にとどまり、反対が56.7%と大きく上回った。
 半数を超す反対が事故後一貫した民意であることを踏まえれば、この段階での再稼働は合意を欠いた見切り発車と言われても仕方あるまい。
 原子力規制委員会が「世界で最も厳しいレベル」という新基準の安全審査で技術的に適合の判断を下しても、安全が担保されたと言えないところに、第一の懸念がある。
 川内原発では、「稼働期間中に起きる可能性は低い」とされた周辺火山の巨大噴火の想定に対し、専門家から批判が相次いだ経緯がある。
 事故が起きた場合の周辺住民の避難は規制委の審査対象とされず、30キロ圏内の避難計画に基づく訓練はいまだ行われていない。要援護者の避難や輸送計画などでも不透明な部分が残されたままだ。
 災害想定の疑問と避難計画の不安は、規制委が同じように適合と判断し、川内原発に続いて年内の再稼働が予想される四国電力伊方原発(愛媛県)でも指摘されている。
 政府が「規制委の審査で安全性が確認された原発は再稼働する」と強調する一方、規制委が「適合イコール事故ゼロではない」「再稼働の判断には関与しない」(田中俊一委員長)と繰り返す中で、再稼働の手続きは進んだ。
 安全に関する判断責任の所在が曖昧なまま、議論の余地を多く残す形での再出発に不信が募るのは当然だろう。
 それは再稼働後のエネルギー政策や核のごみの行方をめぐる不透明感にも重なる。
 政府は懸案だった2030年の電源構成比について7月、原発の比率を20~22%とする方針を決めた。老朽原発の延命などを前提にしなければ達成できない目標で、原発依存への回帰を鮮明にした内容と受け止められている。
 早期の脱原発が困難な場合でも、可能な限り原発依存を低減させていく方向性が、深刻で広範な被害が続く福島事故を起こした国に求められる基本姿勢であるはずだ。
 停滞し続ける使用済み核燃料の再処理問題や高レベル放射性廃棄物の最終処分問題など、原発政策には展望を見いだせない課題が多すぎる。
 再稼働反対の民意は、脱原発依存の道筋と核のごみ処分の見通しをはっきりさせることなく、なし崩し的に依存回帰を進める政権の姿勢に、安保法制の強引な進め方にも通じる危うさを感じている。
 政府に求められるのは、原発問題を規制委や電力事業者任せにせず、現状を国民に丁寧に説明して徹底議論する姿勢であり、国民の不安に目をつぶり、既定路線のごとく再稼働のスケジュールをこなすことではない。
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福島民友新聞 (2015年8月13日付)
社説:川内原発再稼働/教訓踏まえた長期展望示せ


 反対意見が上回る厳しい世論の中での原発再稼働だ。事故への備えは大丈夫なのかといった国民の疑念や不安に対し政府は正面切って向き合い、責任を示すべきだ。
 九州電力川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働した。1年11カ月間にわたった国内の「原発ゼロ」状態が終わり、14日にも発電と送電を再開する。
 東京電力福島第1原発事故を受けて定められた新規制基準に適合した原発では初の再稼働だ。
 原子力規制委員会が「世界で最も厳しいレベル」と評価する新規制基準は、地震や津波などの自然災害への備えを厳格化し、過酷事故対策も義務付けている。
 確かに対策の強化はなされてはいるが、安全に対する責任の所在がはっきりしないままだ。
 政府は規制委の審査で新基準を満たしていれば、再稼働を進める姿勢でいる。一方で規制委の田中俊一委員長(福島市出身)は「(規制基準の)適合イコール事故ゼロではない」と繰り返してきた。
 再稼働の判断は電力会社に任されている。施設の安全確保の責任は電力会社にあるが、伴う重大な結果を引き起こす事故が起きた場合、民間の電力会社では手に負えないことは明らかだ。
 政府、規制当局、電力会社の3者がともに「安全神話」に陥っていた福島第1原発の教訓が、どれほど生かされているのかとの疑問を拭えないのも無理はない。
 政府は原発の安全についての判断を規制委や電力会社任せにせず、国民にしっかりと説明し理解を求めていく必要がある。安全を最優先にするのはもちろんだ。
 事故リスクはあるとの前提に立った対応に責任を追うのも政府だ。避難計画の実効性を高めるためには、政府が主体的に自治体との連携を深めなければならない。
 日本のエネルギー政策の展望が見えないことも、再稼働への不信につながっているとみるべきだ。
 政府は、エネルギー基本計画で原発依存度を可能な限り低減するとしながら、原発を安定的に電気を供給できる「重要なベースロード電源」と位置付けている。
 原発依存から脱却するためには再生可能エネルギーの普及が欠かせないが、どのように増やそうとするのか、原発依存からすぐに脱却できないのであれば、どのように原発を減らしていくのか、といった方向性を明確に示すべきだ。
 高レベル放射性廃棄物の最終処分について早急に道筋を付けることも重要になる。原発の活用を続けるエネルギー政策が、国策であることを忘れてはならない。
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福島民報( 2015/08/12 09:12)
論説:【原発再稼働】全責任は政府にある(8月12日)


 九州電力川内[せんだい]原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働した。東京電力福島第一原発事故を受け、平成25年7月に施行された新規制基準に適合した原発としては全国で初めてだが、当事者意識を欠いた政府の姿勢からは「福島の教訓」は全く感じられない。賛否について世論が分かれる中、再稼働に踏み出した政府の責任は極めて重い。
 再稼働をめぐっては原子力規制委員会の適合性審査段階から安全性の判断と、その責任の所在について関係者間で食い違いが生じた。規制委の田中俊一委員長(福島市出身)は「基準の適合性を審査した。安全だとは言わない」と発言し、波紋を広げた。菅義偉官房長官は「規制委の責任で安全かチェックする」、地元の岩切秀雄薩摩川内市長は「国が決めた基準で審査した結果なので安全だと思う」とし、それぞれが責任を押し付け合うような形になった。いまだにわだかまりは解けない。
 田中発言の真意は施設・設備の安全に「絶対」はあり得ず、電力事業者をはじめ関係者の不断の努力なくして安全性は担保されないという意味だろう。田中委員長は周辺自治体の防災体制の充実が住民理解に不可欠との見方も示しており、安全性について避難計画などを含め広義に捉えているようだ。いずれも不測の事態への備えを欠いた福島第一原発事故が念頭にあるとみられる。
 ところが、安倍晋三首相は10日の参院予算委員会で、原発再稼働をめぐり「事業者と規制当局が安全性向上を不断に追求することが重要」と、まるで人ごとのように述べている。「自治体任せ」と批判を浴びた避難計画の策定や実効確保についても、政府は専従チームを設置するなどしているものの、あくまでも「支援」という立場だ。避難計画も原子力防災会議で「了承」したにすぎず、積極的に関与する姿勢はうかがえない。
 施設の審査は規制委、施設運用面の不断の努力は電力事業者、避難計画の策定と実効確保は地元自治体となると、政府は何の責務を担うのか。福島第一原発事故でも政府や政治家の責任はあいまいなままだ。事故が起きた際の保身のために責任の所在を都合よく割り振っているとすれば、決して許されない。
 地方自治体だけで原子力災害に対応するのは困難だ。政府主体の防災態勢づくりが欠かせない。まして、原子力政策は国策だ。再稼働は政治判断以外の何物でもない。政府は最大の当事者であり、全責任を負うことを明確にしなければならない。(早川 正也)
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信濃毎日新聞 2015年08月12日(水)
社説:原発再稼働 なし崩しは許されない


 安全なエネルギーを求める国民の声は、やはり国や電力会社には届かないようだ。
 九州電力がきのう、川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)を再稼働した。東京電力福島第1原発の事故後に設けられた新規制基準に適合した原発で、初の再稼働となった。国内で原発が稼働するのは約1年11カ月ぶりだ。
 国民合意がないまま再稼働を既成事実化することは許されない。多くの問題が放置されている。
<安全への責任不明確>
 福島第1原発の事故は、暴走した原発が周囲と後世にどんな深刻な影響を与えるのか、浮き彫りにした。事故発生から4年以上が経過しても、福島県の人たちは10万人以上が避難したままだ。最も放射線量が高い「帰還困難区域」は、避難指示の解除時期のめどすら立っていない。
 原発の事故は、影響が広範囲に及び、長期間にわたって残り続ける。ここに特殊性がある。
 「想定外」の事態が起きても、事故を封じ込める対策と、周辺住民が安全に避難できる態勢が不可欠だ。川内原発はいずれの面でも不安が残る。
 新規制基準は、地震や津波など自然災害の想定を厳格化し、過酷事故対策も義務付けている。ただ、テロなどで重要施設が破壊されても炉心を冷却できる設備や、格納容器の破壊を防ぐフィルター付きベントは、2018年7月まで設置が猶予されている。
 同原発周辺には過去に巨大噴火を起こした火山が集中する。九電は「運転期間中の危険性は低い」と主張し、規制委も追認した。
 噴火予知の難しさは、明らかなはずだ。もし噴火の前兆が分かったとしても、燃料の搬出方法などは不明確だ。
 避難計画の実効性も疑問がある。同原発の30キロ圏内に入る住民は約21万人で、事故発生時は30キロ圏外の19市町に避難する。ただ、受け入れ態勢は決まっておらず、避難訓練も実施されていない。
 想定外の事態への対応と、住民の迅速で安全な避難が確保されているとは言い難い。
 安全性に対し、政府は「規制委が新規制基準に合格したと確認した原発は再稼働する」との立場だ。これに対し、規制委の田中俊一委員長は「新基準の合格イコール安全ではない」とくぎを刺す。
 責任をだれが負うのか。国民の原発に対する最大の懸念は安全性にある。それがないがしろにされている。
<低コストという幻想>
 原発が止まっていた2年弱、心配されていた電力供給面でのトラブルは発生しなかった。政府や電力会社が再稼働を急ぐ理由は電力コストにある。
 原発停止に伴う火力発電の燃料費増で、電力会社は軒並み電気料金を値上げした。政府には経済成長を続けるには、再稼働で電気料金を下げることが必要との認識がある。ただし、長期的にみると、原発のコストは低くない。
 経済産業省は原発の発電コストを1キロワット時当たり「10・3円以上」とし、他の電源との比較で安いとの試算を公表している。「以上」とあるのは、事故の賠償費用がさらに増える可能性があるためだ。
 原発の低コスト論は根拠に乏しい。電力小売りは来年完全自由化され、20年4月には発送電が分離される。電力会社が経費に報酬を上積みして電気料金を徴収する総括原価方式も撤廃される。
 電力小売りは本格的な競争時代に入る。もし、原発が低コストなら、原発を保有する大手電力会社は競争に強さを持つはずだ。
 それなのに、経産省は今年1月、競争激化で大手電力会社が原発の廃炉費用を捻出できなくなると懸念。自由化後に新規参入する全ての電力会社の電気料金にも、廃炉費用を転嫁すると決めた。
 経産省の総合資源エネルギー調査会の小委員会では、大手電力会社などが負担している核燃料サイクル事業の費用を、自由化後は国が一部負担するべきだとの論議も交わされている。
 核燃料サイクルは、福井県の高速増殖炉もんじゅの事故などで事実上、破綻している。再処理前の使用済み燃料は全国の原発のプールなどに約1万7千トン貯蔵されており、再稼働が進むとさらに増える。今後経費がどこまで膨らむか見通せない。
 原発は将来の日本経済の足かせになりかねない。
<国民的議論まだ不足>
 共同通信の7月の世論調査では、再稼働に反対が56・7%で、賛成の34・4%を上回った。安全性と将来に対する国民の不安は解消されていない。
 原発を使い続けることは安全面でもコスト面でも難しい。ただ、火力発電が中心だと温暖化に悪影響が出る。今後のエネルギーをどう確保していくのか、再生可能エネルギーの利用や省エネルギー策を含め、国民的な議論はまだ不足している。
 目先の利益だけで再稼働に先走っては将来に何も生み出さない。
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[京都新聞 2015年08月12日掲載]
社説:川内原発再稼働  安全神話、復活させるな


 多くの国民の不安も顧みず、再び原発が動きだした。
 九州電力がきのう、川内原発1号機(鹿児島県)の原子炉を起動した。14日にも発電と送電を開始する。新規制基準に基づく審査に合格した原発の再稼働は全国初で、2年近く続いた「原発ゼロ」の状態が終わった。
 東京電力福島第1原発事故の原因究明が進まず、廃炉の道筋も立たない中、苦い教訓に学んだとは思えない見切り発車である。
 川内原発の再稼働は多くの課題を積み残している。福島事故を受けて、避難計画が必要な区域を半径30キロ圏に拡大したのに、地元同意は従来通り、鹿児島県と立地する薩摩川内市に限られた。
 過酷事故時は30キロ圏9市町の約21万人が鹿児島、熊本両県の19市町に逃れる計画だが、受け入れ側の態勢は整っていない。5キロ圏を対象とするヨウ素剤の事前配布も7割にとどまるという。
 政府と九電は「安全最優先」と言うが、実態からはほど遠いと言わざるを得ない。
 既に新基準に合格している関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の30キロ圏には、京都府と滋賀県も含まれる。
 政府は川内原発の地元対応をモデルとして、今後も再稼働を進める方針のようだ。だが、入院患者や福祉施設入所者といった災害弱者への対応などの面で避難計画の実効性には懸念が拭えない。何より、30キロ圏の自治体に重い避難対策の責任を課しながら、同意権を保障しないのは不合理だ。
 再稼働には「核のごみ」の問題もつきまとう。現在は使用済み核燃料を各原発などで貯蔵するが、既に満杯に近い施設もある。しかも核燃料サイクル政策のめどは立たず、最終処分場の立地も決まっていない。このまま再稼働を進めれば、いずれ原発は行き詰まる。
 政府は新基準について「世界最高のレベル」と胸を張るが、原子力規制委員会の田中俊一委員長が「合格イコール事故ゼロではない」と繰り返し言っているように、規制委の判断は安全を保障するものではない。
 にもかかわらず、政府は再稼働判断の責任を規制委や電力会社に丸投げするような発言を続けている。菅義偉官房長官は事故時には「先頭に立って迅速な対応や被災者への支援を行う」と述べたが、国は過酷事故のリスクを抱えた社会に戻ることを自覚し、対策を進めるべきだ。安全神話を復活させてはならない。
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神戸新聞 2015/08/12
社説:川内原発再稼働/事故の総括がまだ不十分だ


 将来、悔いの残る日とならなければいいと、切に願う。
 九州電力川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県)の原子炉が起動した。原発の再稼働は関西電力大飯原発(福井県)の停止以来、1年11カ月ぶりだ。
 多くの国民が懸念を示す。東京電力福島第1原発事故の後始末が見通せず、住民が古里に戻れない現状では当然である。安全審査には従来より厳しい新規制基準が適用されるとはいえ、地震・津波、火山噴火など未知の災害に、なお不安を残す。
 現実味のない避難計画。再稼働に誰が責任を持つのかも曖昧だ。使用済み燃料から出る「核のごみ」の処分先、方法も定まっていない。
 見切り発車と言うしかない再稼働であり、政府の責任は重大だ。
       ◇
 起動は1号機炉心から核分裂反応を抑える制御棒を引き抜いた。核分裂反応が連続する「臨界」に達した後、発電、送電を始める。商業運転まで約1カ月かかるとみられる。
 2年近く続いた「原発ゼロ」社会は終わる。この間、原発なしでやっていけると確信した国民は少なくないだろう。その意味は重い。
 電力の安定供給は産業を支え、社会を円滑に動かす基本である。資源を海外に頼る日本で原発が果たした役割は大きい。だが、福島の事故で明らかなように、重大事故が発生し、核の暴走が始まれば人の手に余る。運を天に任せることになり、著しく生存権が脅かされる。
【教訓を生かせぬ日本】
 国民が原発に慎重になるのは道理だ。政府、電力業界がいくら原発推進の旗を振っても、脱原発依存の流れを弱めるのは難しいだろう。
 事故後、全国の原発が止まり、東電、関電管内では「計画停電」を実施するなど、電力不足に陥った。電力各社は火力を増やし急場をしのいだ。家庭や企業の節電の取り組みは定着し、電力10社の昨年夏の電力需要は震災前と比べかなり減った。
 2012年に再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が始まったことも大きい。太陽光発電の急増は、ここ数年の電力需給に余裕をもたらしたとみられる。
 電力を取り巻く環境の変化や再生エネルギーの拡大を前向きに捉え、「脱原発」へシフトすることもできたはずだ。だが、安倍政権はその道を取らなかった。「原発依存を減らす」との発言とは裏腹に原発回帰を鮮明にし、30年の電源構成(エネルギーミックス)で原発比率を20~22%とする方針を決めた。
 日本が戦後の総括を中途半端にしたことは、70年後の社会にさまざま影を落とす。隣国とのぎくしゃくした関係は象徴的だ。同じことが原発事故にも言えないか。原因や背景を十分に検証せずに再稼働すれば、事故は繰り返されかねない。
 事故後、憲政史上初めて国会事故調査委員会が政府、事業者から独立した委員会として設置された。報告書は、規制当局と東電との間に「逆転関係」が起き、規制当局は電力事業者の「虜(とりこ)」となっていたと指摘し、「人災」と断じた。
 報告書は規制当局を監視する国会常設の委員会設置と、事故原因の究明や使用済み核燃料問題など国民生活に影響のあるテーマを調査、審議する第三者機関の設置も提言した。教訓を次に生かす狙いがあったとみられる。
【許されぬ国会の怠慢】
 だが国会はほとんど動かず、提言は黙殺された。そして再稼働の日を迎えたことは残念というほかない。
 国会事故調の懸念は現実味を帯びる。安全審査の過程で、原子力規制委員会に対し政府、与党や事業者から批判めいた発言があった。干渉は安全規制をゆがめる。政府寄りの露骨な委員人事も行われた。規制当局が事業者の「虜」となる。その愚を繰り返すことになれば、新規制基準は元も子もない。原発の安全もない。
 川内1号の場合、重要機器の耐震性に関わる基準地震動の評価を疑問視する指摘がある。火山噴火の危険性も指摘される。避難計画に基づく訓練が実施されず、住民の安全が後回しになっている。審査がどう進められたかも含め、第三者機関による検証の仕組みが欠かせない。
 新規制基準を満たすと認められ、再稼働への準備が進む原発は川内1号以外に4基。その先、さらに多くの再稼働が見込まれる。
 日本は核燃料サイクル政策を堅持するが、先行き不透明であり、中核施設に位置づける高速増殖炉原型炉「もんじゅ」も20年間止まったままだ。再稼働が進めば各原発サイトは使用済み燃料で満杯になる恐れがある。核燃サイクル政策や核のごみへの見通しもなく原発を動かすことは政府の責任放棄に等しい。
 難題が、いくつも待ち構える中での再稼働となる。原発に絶対の「安全」はない。政府、事業者は全責任を引き受ける覚悟を持つべきだ。
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愛媛新聞 2015年08月12日(水)
社説:川内原発再稼働 福島の教訓忘れた「見切り発車」


 九州電力川内原発1号機(鹿児島県)が、再稼働した。世界を震撼(しんかん)させた未曽有の事故の教訓に背を向け、国民の多くが反対するなかで強硬に進めた再稼働に異議を唱えたい。
 2013年9月から全ての原発は止まっていた。約2年間、電力不足に陥ることはなく、国民には節電意識が定着した。だが政府と電力会社は、経済性を優先させて「原発回帰」を推し進めている。東京電力福島第1原発の事故がまるでなかったかのように、3・11以前の社会に戻すことは到底容認できない。
 福島の事故が突き付けたのはひとたび事故が起きれば、住民の平穏な暮らしや地域が根こそぎ奪われ、半永久的に古里を失うという過酷な事実だ。宮沢洋一経済産業相は「事故が起きた場合は、国が責任を持って対処する」と述べたが、誰も責任など負えないのは明らかになったはずだ。事故原因さえ分からず収束のめども立たないままでの再稼働は、被災者を含め安全な暮らしを願う国民への背信行為にほかならない。
 あらためて指摘しておきたいのは、原子力規制委員会による新規制基準に適合したからといって「安全」が担保されるわけではないことだ。田中俊一委員長は「リスクはゼロではない」と強調している。だが、政府は規制委の判断を安全のよりどころにして「基準に適合した原発は再稼働させていく」と明言する。「適合さえすれば安全」という「新たな安全神話」を生もうとしている。極めて危険だ。
 そもそも誰が再稼働の最終責任を負うかが不明確だ。宮沢氏は「技術的な判断を第三者がする制度であり、政治的判断の余地はない」と述べ、政府に権限がないとの見解を示した。あまりの無責任さにあきれる。責任を明確にせず推進してきた原子力行政下で、福島の事故が起きたことを忘れてはならない。
 川内原発は、再稼働前に本来取らねばならない安全対策もできていない。事故時の住民の避難計画では、県は30キロ圏の住民21万人の避難にバスを利用するとしているが、訓練は後回しにされて、渋滞などで想定ルートが実際に使えるかは定かではない。実効性は甚だ疑問だ。
 火山噴火も懸念される。原発周辺には過去に巨大噴火を起こした火山が集中しているが、九電は巨大噴火の可能性は低く、前兆があれば原子炉を停止するとした。だが火山学者は予測は困難と指摘している。停止基準も決まっていない。住民の不安は増すばかりだ。
 この「見切り発車」を前例にするべく、伊方原発3号機を有する四国電力をはじめ、各電力会社が前のめりに追随しようとしている。原発の「安全」が保証できていないことに変わりはない。誰も事故の責任を取り得ず、安全と言えず、事故対策は不十分―。そんな原発にもう一度回帰していいのか。福島の教訓を無にしないよう踏みとどまって考え直すべきだ。
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徳島新聞 2015年8月13日付
社説:川内原発再稼働 なぜ今「原発回帰」なのか


 九州電力が、川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉を起動し、再稼働させた。2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、原子力規制委員会の新規制基準に基づく再稼働は初めてだ。
 原発事故で避難生活を送る住民からは「福島の深刻さを分かっていない」との声が漏れる。世論の根強い反対をよそに、再稼働に踏み切ったのは残念である。
 事故の後、電力不足を理由とする政治判断で、12年7月に関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)が再稼働したが、13年9月に定期検査に入り、国内の全原発が停止していた。
 「稼働原発ゼロ」の約1年11カ月間、電力供給に大きな支障がなかったのに今、再稼働させる必要があるのか。
 川内1号機はあす、タービンと接続して発電と送電を始め、来月上旬にも営業運転を開始する。実に4年3カ月ぶりの運転で、トラブルが起きないか心配である。
 規制委は川内1、2号機の審査で、想定する地震の揺れ(基準地震動)を不十分だと指摘した。九電は最大加速度を申請時の540ガルから620ガルに上げた。想定する最大の津波の高さも約6メートルに引き上げている。
 一方、放射性物質を減らした上で格納容器内の蒸気を排出するフィルター付きベントは、新基準で猶予が認められており、設置されていない。
 周辺の火山の巨大噴火に関しては、原発運用期間中に起きる可能性は十分小さいと判断しているが、火山学者からは「予兆をつかむのは困難だ」との批判がやまない。
 規制委の田中俊一委員長は「基準の適合性を審査した。安全だということは申し上げない」と述べ、審査は原発の安全性を保証するものではないとの認識を示している。
 これで、住民に安心してほしいと言うのは無理である。
 九電は10月中旬には2号機の再稼働を目指す構えだ。
 川内原発では、事故に備えて住民の避難を準備する半径30キロ圏に、9市町の約21万人が暮らす。各自治体は避難計画を策定したが、住民からは実効性を疑問視する声が出ている。計画は万全なのか。
 宮沢洋一経済産業相は「万が一、事故が起きれば、国が先頭に立ち責任を持って対処する」と強調するが、過酷事故は取り返しがつかない。
 政府は原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、30年の原発比率を20~22%とする目標を掲げている。
 安倍晋三首相は「世界最高水準の新基準に適合すると認められた原発を再稼働していく」との考えである。
 それなら、再稼働する原発から出る「核のごみ」をどうするのか。最終処分場の当てもなく「原発回帰」をするのは、あまりにも無責任だ。
 四国電力の伊方原発3号機(愛媛県伊方町)も審査に合格した。だが、川内を前例に次々と再稼働させるのでは、国民の理解は得られまい。
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佐賀新聞 2015年08月12日 05時00分
社説:川内原発再稼働 ◆福島の教訓を思い起こせ


 九州電力川内原発(鹿児島県)の1号機が再稼働した。2011年の東京電力福島第1原発事故後に設けられた新規制基準下で最初の事例となる。世論調査で反対意見が多数を占める中、今再稼働をする理由はどこにあるのか。電力ひっ迫を懸念する声は聞こえてこず、電気料金抑制を望む声やコスト増にあえぐ電力会社の経営事情などの経済的な背景しか見えてこない。
 まだ国民の多くは、原発の再稼働に理解を示していない。共同通信が7月中旬に実施した全国世論調査では、原発再稼働について反対が56・7%に対し賛成は34・4%。4月の調査結果と大きな変化はない。
 福島の事故以降、一時期を除いて夏や冬の電力需要期を原発ゼロで乗り切ってきた。省エネ、節電の浸透や再生可能エネルギーの普及などもあって、猛暑といわれる今夏も受給ひっ迫を懸念する声は聞こえてこない。
 このような状況で今、再稼働をする必要性として挙げられるのは経済的要因だ。経済界を中心に上昇している電気料金の抑制を求める声があり、さらに発電コストが膨らみ続ける電力会社の経営事情が影を落とす。原発停止で火力発電への依存度が高まり、燃料購入費増が電気料金に影響を及ぼしている。
 再稼働によって電力会社の収支改善や電気料金抑制につながるとの見方があるが、電気料金低減については疑わしい。燃料費高騰の背景には円安などがある。さらに新規制基準への対応や事故対策の強化で原発のコストは上昇傾向にある。
 新規制基準に沿った適合性の審査は13年7月から約2年をかけてきた。炉心溶融などの過酷事故対策を新設したほか、地震や津波などの自然災害への対策も厳格化。福島の事故以前よりも安全対策が充実したのは確かだ。
 ただ4年経過して10万人以上が避難を続ける福島の事故で学んだ教訓は万一にも備える大切さだ。その教訓を踏まえた上での判断でなければならない。
 川内原発については、火山噴火対策への懸念が指摘されている。審査では、半径160キロ内に将来活動する可能性がある火山を14カ所抽出して影響評価をしたが、九州電力は巨大噴火の可能性は小さいと主張。原子力規制委員会も追認した。ただ内閣府の「広域的な火山防災対策に係る検討会」が13年にまとめた提言は「巨大噴火に関する知見は非常に限られ、対応策の研究体制も整っていない」とし、噴火予知の手法は確立されていない。運転期間中に火山活動の監視をするとしているが、その実効性には不安が残る。
 避難計画も不備を指摘する声がある。5キロ圏内の住民の避難を優先し、5キロ圏外は屋内退避後に避難という2段階方式を想定しているが、「事故時には混乱して一斉に動き出す」との声もある。計画に基づいた訓練が実施されていないことも不安に拍車をかける。
 事故が起きた際に一番の被害者となるのは住民だ。住民の目線から全ての不安を取り除いた上での再稼働の判断だったと言えるのか。このままなし崩し的に全国の原発に広げることは許されない。政府は福島の教訓を思い起こすべきだ。(梶原幸司)
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宮崎日日新聞 2015年8月12日
社説:川内原発再稼働 ◆今なぜ必要か政府は説明を◆


 本県から最も近くにある原発、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)1号機が再稼働された。甚大な被害をもたらした東京電力福島第1原発事故から4年半近く。新規制基準の下で動き始めた最初の原発となった。
 再稼働に関しては多くの世論調査で反対が多数を占める。福島の事故の教訓がどのように生かされ再稼働に至ったのか、隣県でさえもよく見えない。政府は安全対策、責任の在り方、避難、防災体制など説明を尽くすべきだ。
「反対」大きく上回る
 川内原発の地震対策は不十分として、周辺住民らが再稼働差し止めを求めた仮処分申し立てが鹿児島地裁で却下されたことにより、準備は着々と進んできた。
 同地裁が新規制基準を「合理的」とみなしたのに対し、福井地裁は「緩やかすぎて不合理」とした。司法判断が分かれており、国民には新規制基準の効力が分かりにくいまま現在に至っている。
 共同通信の7月の世論調査では原発再稼働に「反対」が56・7%で、「賛成」の34・4%を大きく上回った。国民の合意形成がないまま、再稼働を迎えたと言える。
 不安の背景には、福島の過酷事故、それがもたらした深刻な事態を多くの人が忘れず今も認識していることが大きいだろう。
 福島の事故被害の全容はしっかり総括され、川内原発に当てはめて周到な対策が練られたのか。住民の命と生活を守る視点に立ち、十分な防災、避難計画が立てられたのか。
 安倍晋三首相は「世界で最も厳しい規制基準をクリアしたと原子力規制委員会が判断した原発は、再稼働を進めるのが従来の政府方針だ」と述べた。そうであれば政府は電力会社や地元自治体任せにせず、なぜ今、再稼働の必要があるのか丁寧に説明し、安全対策や情報開示に強く関与すべきだ。
本県の対策は万全か
 川内原発はえびの市との県境まで約50キロの場所にある。
 県と九電は2013年、川内原発に関する情報提供について覚書を締結。また県は14年、福島レベルの事故が発生した場合に備え、地域防災計画に「原子力災害対策編」を新設した。炉心溶融など最悪の事態も想定し、情報収集、住民への伝達体制、避難、応急対応の指針を示している。
 万が一の事故に備えた対策は本県では十分だろうか。福島の事故は「想定外」を許してはならないことを教えてくれている。
 政府や電力会社が再稼働が必要だとする根拠には、電力の安定供給、電気料金の抑制、地球温暖化対策などがある。
 ただ原発はリスク低減のためのコストも大きい。原発の運転から出る放射性廃棄物の最終処分の見通しも立っていない。依存を深めるのではなく、太陽光、風力、水力など再生可能エネルギーを含め、幅広いエネルギー対策を本腰を入れて研究することが重要だ。
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南日本新聞 ( 2015/8/12 付 )
社説: [川内原発再稼働] なし崩しの「原発回帰」は許されない


 未来に責任を持てる再稼働なのか。なし崩しの「原発回帰」は許されない。
 九州電力川内原発1号機が再稼働した。2011年5月に定期検査入りして以来、4年3カ月ぶりの稼働となる。
 東日本大震災による東京電力福島第1原発事故の影響で、全国の原発は全て停止した。事故後にできた新規制基準に適合した原発の再稼働は初めてである。
 原子力規制委員会の田中俊一委員長は、新規制基準を「世界で最も厳しいレベル」と評する。一方で「合格イコール事故ゼロではない」と繰り返してきた。
 それなのに安倍晋三首相は「規制基準をクリアしたと規制委が判断した原発は、再稼働を進める」との姿勢を崩さない。「絶対安全」の保証はどこにもない。「安全神話」へ逆戻りしてはいないか。
 原発は「国策民営」で推進されてきた。旧ソ連のチェルノブイリ事故など政策を見直す機会は何度もあったし、実際にドイツなどは脱原発にかじを切った。しかし、日本ではそうならなかった。
 最終的な責任の所在をあいまいにしたまま、反対の声を押し切って再稼働へ突き進む日本の姿勢は、福島以前と何ら変わっていないように見える。
■不安の払拭が先だ
 原発に対する住民の不安は、いまだに拭い切れていない。
 南日本新聞社の4月の世論調査では、川内原発再稼働に反対する県民は約6割に上る。
 反対する理由で最も多かったのが「安全性に疑問があるから」である。
 原発事故の反省に立って発足した原子力規制委は、放射性物質の放出を伴う過酷事故を原発1基あたり「100万年に1回以下に抑える」安全目標を掲げた。
 地震や津波など自然災害の想定を厳格にし、過酷事故対策も義務づけた。安全対策が強化されたのは事実だ。
 それでもリスクは残っている。
 テロや航空機の墜落に備えた設備の設置は2018年まで猶予された。川内原発では、火山の巨大噴火対策が、専門家から「巨大噴火の予知は現時点では不可能」として、不十分との声が上がる。
 原発敷地外の課題は、まだ手つかずのものが多く、住民の懸念はそこにもある。
 先の世論調査では、重大事故時に半径30キロ圏内の住民を避難させる避難計画が有効か、という問いに「事故の想定は多岐にわたるため計画に沿った対応は困難」とする回答が57.1%と最多だった。
 昨年11月、鹿児島県を訪れた宮沢洋一経済産業相は「万一の事故の際は、国が関係法令に基づき責任を持って対処する」と語った。
 県などが再稼働に同意する根拠の一つともなったが、言葉と裏腹に避難計画作成は地元にほとんど丸投げされた。
 川内原発で事故が起きた場合、放射性物質の放出前に、まず5キロ圏の住民が30キロ圏外に避難する。続いて5~30キロ圏の住民が放射線量に応じて段階的に避難することになっている。
 しかし、現実にそううまくいくのか。高齢者ら要援護者を抱える福祉現場の不安は特に大きい。
 住民からは、再稼働の前に避難計画を検証する防災訓練を行うよう求める声があった。だが、県は「九電が使用前検査対応中のため参加が困難」として、再稼働後に先送りした。
 訓練を通じて問題点を洗い出さなければ、実効性のある対応はできない。住民の不安払拭(ふっしょく)より再稼働の優先を思わせる判断には疑問が残る。
■「福島」を忘れるな
 福島第1原発の事故から4年5カ月が過ぎた。
 福島県から県外に避難している人は7月末時点で4万5000人を超えている。
 政府と東電は6月、廃炉に向けた工程表を見直し、1~3号機の使用済み核燃料プールからの燃料取り出し開始時期を最大3年遅らせることにした。廃炉作業はこれからが正念場だ。
 原発で重大事故が起きたときの影響がいかに過酷なものか。全ての国民が目の当たりにした厳しい現実である。
 しかし、安倍政権は国民の多くが望んだ原発ゼロ方針を見直した。新たなエネルギー基本計画は原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた。
 30年の電源構成比率では、原発を「20~22%」に設定する。運転期間は原則40年に制限しているから、達成には新増設や建て替えが必要となるはずだが、その見通しには触れないままだ。
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分問題も解決されていない。
 国が前面に立って「科学的有望地」を示すとしているが、処分地選定が難航するのは避けられない。
 国内の使用済み核燃料は、川内原発が保管する888トンを含む約1万7000トンだ。再稼働する原発が続けば核のごみはさらに増え続ける。問題を先送りしたまま次々と原発を動かしていいのだろうか。
 急ぐべきは再稼働ではない。福島の教訓を忘れることなく、原発に依存しない社会への道筋をしっかりと示すことだ。
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