2015-09-14(Mon)

労働者派遣法改悪  労働者保護を揺るがす 社会停滞への愚策

権利守る改正が必要だ 経済成長を放棄する愚 雇用不安定化させるな

<各紙社説>
朝日新聞)改正派遣法 権利守る改正が必要だ(9/12)
読売新聞)改正派遣法成立 雇用安定の実効性は高まるか(9/12)
毎日新聞)派遣法改正 雇用安定に全力尽くせ(9/12)
日本経済新聞)派遣で働く人の立場にたち制度の再考を (9/13)

北海道新聞)改正派遣法 付帯決議の重さ自覚を(9/12)
信濃毎日新聞)派遣法改正 労働者保護を揺るがす(9/11)
京都新聞)派遣法改正  国は実態把握を怠るな(9/11)
愛媛新聞)労働者派遣法改正案 社会停滞への愚策踏みとどまれ (9/11)

熊本日日新聞)改正労働者派遣法 施行後の実態検証必要だ(9/12)
南日本新聞)[改正派遣法成立] 雇用不安定化させるな(9/13)
琉球新報)改正派遣法成立 経済成長を放棄する愚(9/12)




以下引用



朝日新聞 2015年9月12日(土)付
社説:改正派遣法 権利守る改正が必要だ


 改正労働者派遣法が成立した。悪質な派遣会社を排除するため、全て許可制にするなど、派遣会社への規制を強化したことが特徴で、派遣社員として働く人たちにとって、有益な点も含まれている。しかし、派遣社員の権利をどう守り、強化するか、という視点からの改正ではなかったために、積み残された課題が多い。さらなる法改正が必要だ。
 これまでは、派遣社員を受け入れられる期間が業務によって規制されていた。専門的とされる「26業務」には制限がなく、それ以外は原則1年・最長3年だった。今回の改正では、業務によって違う期間にすることをやめて、派遣可能な期間は一律「原則3年」となった。
 これまでの規制のもとでは、26業務であるかのように装ってそれ以外の仕事に就かせて期間の規制をすり抜ける不正も起きてきた。その余地がなくなる点も、評価できる点ではある。
 しかし、改正によって、労働組合などの意見を聴いたうえで人を代えれば、同じ仕事を派遣社員に任せ続けることも可能になる。この点が国会での論議の焦点となり、野党は「不安定な派遣労働を広げる」「生涯派遣で低賃金の人が増える」と反対してきた。
 そうした危惧が生じるのは、派遣社員の権利が強化されていないことに原因がある。
 確かに、派遣会社には様々な義務が課せられ、派遣社員の能力を向上させ、雇用を安定させる仕組みが改正法には盛り込まれてはいる。しかし、派遣社員の処遇を改善するには、「均等待遇原則」を明示して、法律で裏打ちする必要がある。
 派遣法と同時に成立した議員立法では、同じ価値のある労働の賃金を同じにする「同一労働・同一賃金」を進めるために調査・研究を進めることになった。こうした調査・研究を生かして、派遣社員が派遣先の企業で働く人たちと同等の待遇を求められるよう法改正をすることが、次の課題だろう。
 派遣社員が派遣先と団体交渉をする権利を法制化することも検討するべきだ。
 派遣先は「雇用主ではない」として、団交を拒むことが多く、その結果、派遣社員が低い労働条件に甘んじることにつながっていた。労働条件に大きく影響しているのは派遣先の判断だ。派遣社員の正当な主張が通る道筋を整えるべきだ。
 派遣労働者権利を拡大することで、派遣労働の乱用を防ぐ。そうした視点で、早急に次の法改正を目指すべきだ。
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読売新聞 2015年09月12日 03時06分
社説:改正派遣法成立 雇用安定の実効性は高まるか


 今国会の焦点の一つだった改正労働者派遣法が自民、公明両党などの賛成多数で成立した。30日に施行される。
 派遣労働者雇用安定と処遇改善に着実につなげることが大切だ。
 改正法は、企業が派遣労働者を受け入れられる期間の制限を事実上なくすことが柱である。
 従来は、正社員の仕事を守るため、受け入れ期間を最長3年に制限してきた。秘書など26の専門業務は例外だったが、改正法では、この区分を廃止し、全業務で労働組合などの意見を聞けば、企業は期間を延ばせるようにした。
 一方、個々の派遣労働者については、様々な仕事を経験して技能向上を図る観点から、同じ職場で働く期間を原則3年までとする新たな制限を設ける。
 派遣会社に対しては、計画的な教育訓練など派遣労働者のキャリアアップ支援や、派遣先への直接雇用の依頼といった雇用安定措置を義務づけた。
 働き方の多様化を踏まえ、手薄だった派遣労働者の保護を強化する改正案は、妥当な内容である。企業が派遣労働者を活用しやすくなる利点もある。
 これまで長く働けた専門業務の人も、3年で職場を変わることになる。「雇い止め」の不安を抱く人は多い。政府は、派遣先や派遣会社の動向を注視し、雇用安定への努力を促すべきだ。
 国会審議では、政府・与党が「正社員への道を開き、処遇改善を図るもの」と強調したのに対し、民主など野党は「一生派遣」が増える、と強く反発した。
 改正法には、野党の主張を取り入れた39項目に上る付帯決議が参院で採択された。その結果、衆院厚生労働委員会で、採決前に委員長の入室を妨害するなど「実力行使」に出た野党も矛を収めた。
 付帯決議は、派遣会社が得る「マージン」に関する規制や、派遣労働者の直接雇用に消極的な派遣先への指導などを求めている。検討すべき課題だ。
 改正法では、一部で認めていた派遣会社の届け出制を廃止し、全てを許可制とした。
 教育訓練などを怠った業者に対し、許可取り消しも含めて厳しく指導監督する。厚生労働省にその能力があるかどうかが、改正法の実効性を確保するカギを握る。
 許可制が有効に機能すれば、低コストのみが売り物の業者は淘汰されよう。良質な業者を育てることで、派遣労働をキャリアアップの機会として定着させたい。
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毎日新聞 2015年09月12日 02時30分
社説:派遣法改正 雇用安定に全力尽くせ


 改正労働者派遣法が成立した。企業は一定の手続きを取れば派遣労働者を期間の制限なしで使えるようになる。派遣会社には「雇用安定措置」を義務付けたが、企業の努力に任せるだけでは実効性は上がらないだろう。厚生労働省は派遣労働者の正社員化や雇用条件の改善に向けてガイドラインを整備し、企業に対する指導や監視に万全を期すべきだ。
 政府が成立を急いだのは、違法な派遣と知りながら労働者を受け入れている企業がその労働者に労働契約の申し込みをしたとみなす現行法の規定が10月から発効するためだ。直接雇用を迫られる企業の窮状に配慮し、今回の改正法でこの規定は事実上骨抜きにされた。
 改正法はすべての派遣会社を許可制にし、キャリア支援制度があることを許可要件に加え、計画的な教育訓練と報告を義務付けた。また、派遣会社には同じ職場での勤務が3年に達した労働者の雇用を受け入れ先の企業に要請するか、派遣会社自らが無期雇用するなどの雇用安定措置を義務付けた。
 ただ、受け入れ企業にとっては3年ごとに派遣社員を入れ替え、労働組合の意見を聞く手続きを取れば派遣労働者を使い続けることができるようになる。これまで期限の制限がなかった専門26業務も原則3年が上限となるため、改正法施行に伴って雇い止めにされる人が続出する恐れが指摘されている。
 雇用安定措置が名目だけに終われば、低賃金で不安定な派遣労働者の状況を固定し、企業はコストの低い派遣労働者を今以上に求めるようになるだろう。これでは雇用の不安定化を増幅するだけだ。
 今回の法改正には日本の雇用制度の根幹を変える面があることも指摘したい。労働者派遣法は1985年、職業安定法で禁止されていた「労働者供給」を専門業務に限定して認める制度として始まった。99年の改正で一般業務に対象を広げたが、期間は1年(後に3年)に限定した。業務や期間の限定は派遣先企業の正社員を保護する観点からである。
 どんな業務も派遣労働者を使い続けることができれば、企業はコストの高い正社員の採用を手控えるだろう。今回の法改正は正社員中心の雇用制度にも影響することが避けられず、安倍政権が進めようとしている残業代ゼロの成果主義賃金や解雇の金銭解決などと同一線上にある。労働規制を緩和し企業の競争力向上を優先する路線だ。
 働く人の生活が犠牲にならないよう、政府は厳格な雇用安定措置を行い、労組も監視機能を十分に発揮すべきだ。派遣労働者だけでなく正社員も含めた雇用全体の問題なのだ。
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日本経済新聞 2015/9/13付
社説:派遣で働く人の立場にたち制度の再考を


 多様な働き方を広げて成長戦略の一つにしようという安倍政権の方針にも逆行するのではないか。与党などの賛成多数で成立した改正労働者派遣法についてだ。
 派遣で働く人の立場にたつと、続けたい仕事でも3年たつと変わらなくてはならない場合が出てくる。改正法の大きな問題である。
 かねて私たちはこの問題を指摘してきたが、改善されず成立したのは残念だ。働き方の選択肢を広げるために、今後も労働者派遣法は見直していく必要がある。
 今回の改正内容に評価すべき点はある。派遣で働く人たちの職業能力の向上を後押しすることだ。派遣会社に対し、派遣社員への計画的な教育訓練や、希望があれば能力開発の相談に乗るなどのキャリア形成支援を義務づけた。派遣で働く人の生産性の向上を通じた待遇改善が期待できるだろう。
 しかし、ソフト開発や研究開発、通訳など期限を切らずに派遣で働けるいわゆる「専門26業務」の区分が廃止され、これらの仕事に就いていた人は派遣会社の正社員にならないと、同じ職場で働ける期間が3年までに制限されることになった。
 派遣制度をわかりやすくしようと業務区分をなくし、同じ職場で働ける期間を一律に最長3年としたわけだが、派遣で働く人の雇用に悪影響が及んでは本末転倒だ。
 同じ仕事を続けながら技能を高めたいと思う人は少なくない。IT(情報技術)関連など成長分野の企業が専門性を持った人材を確保するうえでも、派遣制度は本来役立つ。そうした働く人と企業双方のニーズに応えるため、労働者派遣制度の重ねての見直しが求められる。
 今回の改正では、期間が30日以内の短期派遣で働くことを原則禁止のままとしたことも問題だ。
 この禁止規定は2012年の派遣法改正で入った。だが、短期でもいいから派遣で働いて収入を得たいと思う人もいるだろう。労働力不足のなか、企業にとっても短期派遣は人を確保する手立てになる。解禁を考えるべきだ。
 仕事が同じなら正社員と非正規社員の賃金を同じにする施策を進めるとした「同一労働同一賃金推進法」も成立した。
 しかし、正社員の職務の範囲が曖昧なままでは、「同一賃金」の実現は難しい。国が先走って施策を講じても混乱するだけだろう。この法律も見直しが必要になる。
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北海道新聞 2015/09/12 08:55
社説:改正派遣法 付帯決議の重さ自覚を


 最長3年だった派遣労働者の受け入れ期間制限をなくす改正労働者派遣法がきのう、成立した。
 派遣労働でコストを削減したい経営側の意向を重視する一方、労働者保護の視点を欠くなどの疑問点は、衆参両院の審議を経ても解消されたとは言い難い。
 成立によって、「一時的、臨時的」だった派遣の大原則がなくなる。派遣労働の固定化や、正社員からの派遣社員への置き換え拡大を懸念せざるを得ない。
 労働現場では既に改正法を先取りした動きもあり、不利益をうける労働者も出ている。このままでは将来に禍根を残しかねない。
 参院厚生労働委員会では採決に当たり、異例とも言える数の付帯決議がなされた。政府はこれを重く受け止めて成立後の労働現場の実態把握に努め、改善が必要な点にはきちんと対応すべきだ。
 参院厚労委の付帯決議は39項目に及んでいる。参院事務局によると、確認できる限りでは過去最多だ。法に不備が多かったことの裏返しともとれる。
 決議には、無許可で派遣事業を行う事業主の刑事告発や企業名公表の検討などが盛り込まれた。
 政府は今後、労働政策審議会で具体化を協議するが、手当てが必要ならば「検討」にとどまらず、早急に実現を図ってほしい。
 改正法の中身とともに問題なのは、施行日を成立からわずか19日後の今月30日にしたことだ。
 翌日の10月1日には、派遣期間が3年を超えるなどの違法状態があれば、派遣先が派遣社員に直接雇用を申し込んだとみなす「みなし雇用制度」が始まる。
 派遣労働者の保護を目的に3年前の派遣法改正でできた制度だが、今回の改正法成立で、人を替えれば無制限に派遣労働を受け入れることができることになり、労働者にとって意味は薄れた。
 施行を「みなし雇用制度」の開始前に間に合わせ、この制度を事実上、骨抜きにしたといえよう。労働規制の緩和がいかに企業寄りであるかを示している。
 安倍晋三政権は、成長戦略に「雇用の流動化」を掲げている。
 しかし、これが派遣労働拡大を意味するのであれば、雇用環境は不安定さを増す。
 将来の労働力不足を考えれば、しっかりした教育訓練を受けられ、仕事に意欲を持てる人材を増やすことこそ重要だろう。
 少子高齢化が進む中、安易に派遣労働者を増やすことが最善なのか、よく考えてもらいたい。
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信濃毎日新聞 2015年09月11日(金)
社説:派遣法改正 労働者保護を揺るがす


 派遣で働く人たちの不安や反対の声を押し切っての強引な法改正と言うほかない。
 労働者派遣法の改正案がきょう、衆院本会議で可決、成立する見通しになった。企業が派遣労働者を受け入れる期間の制限が事実上なくなる。「臨時的・一時的」とされてきた派遣労働の位置づけを根本から変えるものだ。
 改正案は当初施行日とした「9月1日」までに成立せず、「30日」に修正して参院で可決され、衆院に戻された。政府・与党が9月中の施行にこだわるのは、派遣労働者を保護する新たな制度が10月1日に始まるからだ。
 「労働契約申し込みみなし制度」と呼ばれる。違法な派遣労働があった場合、派遣先の企業は直接雇用しなければならない。
 現行法では、秘書、通訳など専門26業務は派遣の受け入れ期間に制限がない。一方、それ以外の業務は最長3年の上限がある。専門業務と偽って派遣労働者を期限なく使うのは違法で、新制度の対象になるはずだった。
 ところが、改正案は専門業務と一般業務の区分自体を廃止するため、前提が崩れ、みなし制度は骨抜きになる。派遣で働く人から憤りの声が上がるのは当然だ。
 正規雇用されるのを期待して待っていたが、権利はつぶされた―。「OA機器操作」の専門業務で派遣されながら、お茶出しなどの仕事が少なくない職場で15年以上働いてきた都内の女性は言う。
 派遣で働く人たちは、2008年のリーマン・ショックの際に雇い止めが相次ぎ、雇用の不安定さが社会問題化した。それを背景に、民主党政権下の12年の法改正に盛り込まれた企業への規制強化策がみなし制度だ。
 企業側は、制度が「混乱を招く」として実施前の法改正を強く求めてきた。それは、違法の疑いがある派遣が横行してきた裏返しとも言える。働く人を守ることよりも企業の意向を優先する政府の姿勢は是認できない。
 改正案は、一人の派遣労働者が同じ職場で働く期間を最長3年とするものの、人を替えれば同じ仕事をずっと派遣労働者に任すことができる。正社員を、低賃金で人員整理がしやすい派遣労働者に置き換える動きが進み、不安定な雇用を広げる恐れが大きい。
 政府は、労働時間規制を適用しない雇用制度を新設する労働基準法改正にも意欲を見せている。労働者保護の土台を揺るがす制度改定が次々と進みつつある。この流れを止めなくてはならない。
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[京都新聞 2015年09月11日掲載]
社説:派遣法改正  国は実態把握を怠るな


 企業の派遣受け入れ期間の制限をなくす労働者派遣法改正案が参院で可決された。きょうにも衆院で再可決され、成立の見通しだ。
 企業は3年ごとに人を入れ替えれば、派遣を使い続けることが可能になる。不安定な派遣労働の固定化はもとより、正社員からコストの安い派遣への切り替えが進んで拡大を招く恐れもある。
 政府は雇用安定措置を盛り込んだとするが、派遣会社が正社員化を求めても、派遣先が応じる保証はない。
 そもそも労働者派遣法は派遣業務が「臨時的・一時的」であることを原則とする。施行当初は専門業務に限られていたが、規制緩和で自由化され、製造業も認められた。期間制限まで撤廃する今回の改正案は、原則をないがしろにする大転換と言うほかない。
 安全保障関連法案などで参院の審議が遅れ、改正案は施行日を9月1日から30日に修正した。
 3年超過などの違法派遣があれば企業が社員などで雇い入れねばならない「労働契約申し込みみなし制度」が10月1日に始まるが、改正法があればこうした違反が起きにくくなり、制度の対象は大幅に縮小する。そこで政府・与党は施行を急げば周知不足になる懸念があるにもかかわらず、企業の意向を受けて、制度より先に施行することにこだわった。
 企業にとって都合がいいばかりで、労働者の権利が奪われるようでは困る。改正案には、派遣労働者の保護や待遇改善、安心して働ける環境整備、派遣会社への指導監督の強化のほか、国にも正社員化を促進するために最大限努力するよう求めるなど、約40項目の付帯決議が付いている。政省令をまとめる施行前の審議会にとらわれず、付帯決議の趣旨を生かす仕組みづくりを考えるべきだ。
 また、施行後も定期的に調査などを実施し、派遣労働の実態を把握する必要があろう。直接雇用が進まず、派遣労働が増えるような影響が出てくれば、さらなる法改正も含め、速やかに対策を講じなければならない。
 改正案と同時に審議された「同一労働同一賃金推進法」は一足先に成立した。だが同じ仕事でも「均等」の必要はなく、勤続年数や責任の重さを踏まえた「均衡」待遇で良いとし、「1年以内の立法措置の義務化」も「3年以内に必要な措置を講ずる」に後退した内容だ。これでは正社員との賃金格差は埋まらない。国は実効性のある是正策を急ぎ検討すべきだ。
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愛媛新聞 2015年09月11日(金)
社説:労働者派遣法改正案 社会停滞への愚策踏みとどまれ


 誰もが安心して働ける環境があって初めて、個々の暮らしも社会も安定する。労働者を使い捨てにすれば格差が拡大し、成長はおろか幸せな未来もあるはずがない。そんな当然のことを忘れて効率優先に走ればこの国はどうなるか、踏みとどまって冷静に考え直さねばならない。
 労働者派遣法改正案が参院本会議で可決された。施行日などが修正されたため衆院に回付、与党はきょう可決し、成立させる方針だ。
 企業が派遣労働者を事実上、無期限に使い続けられるようにする法案は、断じて容認できない。現在、派遣労働者の受け入れ可能期間は、一部専門業務を除き最長3年。それが、どの職場でも、3年ごとに人を入れ替えればいつまでも派遣労働者を配置し続けられるようになる。
 派遣など非正規労働者の賃金水準は正社員の6割。コスト削減のため、正社員から派遣への置き換えが進むのは目に見えており、看過できない。
 労働者保護の仕組みはうわべだけで実効性はないに等しい。企業がまず労働組合から意見を聞くのが条件だが、反対されても応じる義務はない。派遣会社には、同じ職場での勤務が3年に達した人を派遣先企業に社員として雇用依頼する義務を課したが、結果は問われない。
 派遣労働者と派遣先の正社員の賃金格差是正に向け、民主、維新、生活の野党3党が共同提出した同一労働同一賃金推進法は成立した。しかし、中身は自民、公明と維新の3党の修正によりすっかり骨抜きされた。同じ仕事なら賃金も同水準にする均等待遇の規定は、同じ仕事であっても責任などに応じたバランスが取れていれば良いと、意味のないものに後退。これでは何の担保にもならない。
 企業を利するため、成立を強引に進める政府・与党のやり方も異常だと言わざるを得ず、異議を唱えたい。
 10月1日から、3年を超える違法派遣があった場合に企業が労働者を正社員などで雇い入れなければならない新制度がスタートするため、9月末までの法案成立に固執した。安全保障関連法案などで国会審議が進まなくなると、当初、9月1日としていた施行日を30日に修正して参院を押し通した。
 人件費のかさむ直接雇用を嫌う企業の思惑に沿って、労働者切り捨てを後押しする国に憤りを禁じ得ない。違法状態にある派遣労働者にとって正規雇用は念願だった。直前に権利をつぶされる心痛はいかばかりか。
 政府は少子化対策や労働力確保をうたう。だが、3年先の身分保障すらなければ将来設計は立てられず、結婚や出産に踏み切りづらい。頑張って働いても次々職場を追われ一からのスタートとなり、賃金は低水準のまま。経験が生かされることがなければ、働きがいも持てない。政府自らが社会の停滞を招こうとしている愚に、一刻も早く気付かなければならない。
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熊本日日新聞 2015年09月12日
社説:改正労働者派遣法 施行後の実態検証必要だ


 企業の派遣受け入れ期間の制限をなくす改正労働者派遣法が成立した。今月30日に施行される。
 現行で通訳などの専門26業務を除いて最長3年となっている企業の派遣受け入れ期間の制限を撤廃。専門業務と一般業務との区分も廃止した。派遣先企業は、3年ごとに人を入れ替えれば、同じ職場に派遣労働者を配置し続けることが可能になる。
 企業には使い勝手が良くなるが、派遣労働の固定化や拡大、労働条件低下を招きかねないとの懸念は消えない。論議は尽くされておらず、急ぎ足での施行も経済界の意向に沿ったものだ。企業重視の見直しと言わざるを得ない。
 1985年に制定された労働者派遣法は、専門性のある業務や特別の雇用管理が必要な業務に限られていた。99年に原則自由化されるなど規制緩和が続いたが、今回の改正で臨時的・一時的な働き方という派遣の性格が大きく変わることになる。
 安倍晋三首相は「正社員を望む人にはその道を開き、派遣を選ぶ人には待遇を改善する」と意義を強調する。根拠は、同じ職場での派遣が3年を経過した場合、派遣会社が受け入れ企業に派遣労働者の直接雇用の依頼を義務付けるなどの雇用安定措置だ。だが企業に応じる義務はなく、採用の是非は企業の経営判断に任される。これでは実効性に疑問が残る。
 前回の2012年の法改正で派遣労働者を保護する目的で盛り込まれた「労働契約申し込みみなし制度」も骨抜きの状態となった。同制度は期間制限を超えるなどの違法派遣があれば、派遣先企業が派遣労働者に直接雇用の契約を申し込んだとみなす制度だ。企業は派遣をやめ、労働者を正社員などで雇い入れなければならない。しかし、改正で違反行為そのものが起こりにくくなり、制度の活用による正社員への道は事実上閉ざされた形といえよう。
 総務省の4~6月の労働力調査によると、派遣社員は全国に約119万人。パートなども含めた非正規労働は全体の4割弱を占めている。法の改正で、安価で不安定な非正規労働がこれまで以上に増えてはならない。政府・与党はそのことを肝に銘じ、施行後の実態を厳しく検証すべきだ。
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南日本新聞 ( 2015/9/13 付 )
社説: [改正派遣法成立] 雇用不安定化させるな


 改正労働者派遣法が成立した。企業が派遣制度を利用する際の規制緩和が柱だ。
 派遣を利用する企業の自由度は大幅に増すが、派遣就労が固定化する懸念もある。
 雇用を不安定化させてはならない。政府は、改正法に盛り込んだ雇用安定措置が十分機能するよう取り組みを強めるべきだ。
 改正法は、現行では通訳や秘書などの専門業務を除いて最長3年となっている企業の派遣受け入れ期間の制限を撤廃する。
 専門業務と一般業務という区分けを廃止し、3年ごとに人を入れ替えて労働組合の意見を聞けば、企業は同じ職場にずっと派遣を配置できるようになる。
 改正法は働く人の視点に立っていると言い難い。派遣労働者は人件費が安く、景気に応じて人員調整しやすい。企業の使い勝手だけが大幅に向上する。
 連合鹿児島は抗議集会で「労働者は3年ごとに職場でたらい回しにされ、使い捨てにされる」と訴えた。労働界の危機感は強い。
 政府が改正法の成立を急いだ背景にも、経済界の事情を優先したことがうかがえる。
 現行法では、企業に不利な制度が10月から始まるためだ。違法派遣があった場合、社員などとして雇わなければならない「労働契約申し込みみなし制度」だ。
 だが、期間制限をなくす改正法が施行されれば、違反リスクは低下する。みなし制度は有名無実化された形だ。
 国会審議で政府、与党は「派遣労働者の雇用安定や正社員化を支援する」と説明した。その根拠は派遣会社に雇用安定措置や計画的な教育訓練を義務付けたことだ。
 これに対して野党は「低賃金で働く生涯派遣の人を増やすだけ」と反発した。
 派遣の現場からも「雇用安定措置が本当に正社員への道を開くのか」「キャリアアップのための教育訓練は形だけでは」との疑問の声が上がる。
 派遣労働者は立場が弱く、権利も保障されにくい。懸念を強めるのは無理もない。
 政府はこうした声に謙虚に耳を傾けるべきだ。雇用安定に向け、企業頼みの姿勢ではなく実効性を高める工夫を求めたい。
 待遇改善には、派遣と正社員の賃金格差をなくす「同一労働同一賃金」の確立が必要だ。
 今国会に対案として提出されたが、修正によって事実上、骨抜きとなった経緯がある。内実が伴った同一労働同一賃金の実現をどう図るか、次の課題としてもらいたい。
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琉球新報 2015年9月12日 6:01
<社説>改正派遣法成立 経済成長を放棄する愚


 労働者の使い捨てを招き、格差を拡大させて何が「成長戦略」か。経済成長どころか人口減を進ませる愚策と言うほかない。
 人を入れ替えさえすれば派遣労働者の受け入れが無期限にできる改正労働者派遣法が成立した。労働者保護の仕組みを一変させる大転換が、国民的議論もなくなされたのは容認できない。改正の結末を厳しく検証し、あるべき状態に戻すべきだ。
 政府与党が強引に成立させたのは、派遣労働者を保護する新たな制度を骨抜きにするためである。「労働契約申し込みみなし制度」だ。違法派遣があった場合、派遣先企業はその労働者を直接雇用せねばならないとする制度である。
 従来の派遣法では専門業務は無期限派遣が可能だが、一般業務は最長3年で、超えると違反だ。両方の業務が混在する場合、一般業務なのに専門業務に偽装したと判断され、厚労省から是正指導される例も少なくない。例えば「OA機器操作」名目の派遣だが、実際にはお茶出しや電話対応が多いといった例だ。新制度になれば、こうした労働者は直接雇用に切り替えられるはずだった。
 だが今回の派遣法改正で期間制限はなくなるのだから、こうした例も違法でなくなる。新制度は10月1日施行だが、改正派遣法の施行は今月30日。つまり新制度を無効にするための法改正なのである。
 「正社員を望む人にはその道を開き、派遣を選ぶ人は待遇を改善する」。安倍晋三首相らはそう繰り返してきた。改正で、3年を超えて派遣する場合は派遣会社が受け入れ先企業に直接雇用を要請するとしたのがその根拠だ。
 だが企業には要請に応じる義務はない。厚労省の2012年版「労働経済の分析」によると、企業が非正規を活用する理由で最も多いのは「賃金節約」だ。派遣社員の賃金水準は正社員の6~7割である。応じる義務がなければ、要請に応じて賃金節約を放棄するなど、まずあり得ない。首相らが「虚偽答弁」と非難されたのもうなずける。賃金が節約でき、人員整理もしやすい派遣が無期限にできるのだから、今後正社員から派遣への置き換えが進むのは火を見るより明らかだ。
 前述の厚労省資料によると、結婚した割合は非正規で正規より男性で30ポイント、女性で10ポイントも低い。労働条件改悪は格差社会拡大を招き、人口も減少させるのである。
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