2015-10-07(Wed)

TPP大筋合意 「国益損なう」(2)

地域の地盤沈下 防がねば 日本の農業重大な岐路に 後の評価に耐え得るか

<各紙社説・論説>
毎日新聞)TPP 新「貿易立国」の姿描け(10/7)
北海道新聞)TPPと道内 地域の地盤沈下 防がねば(10/7)
東奥日報)不信感招いた秘密交渉/TPP大筋合意(10/7)
秋田魁新報)TPP大筋合意 農業対策に全力挙げよ(10/7)
岩手日報)TPP大筋合意 後の評価に耐え得るか(10/6)
福島民友新聞)TPP大筋合意/農業の強化は待ったなしだ(10/7)

新潟日報)TPP大筋合意 農家の懸念にどう応える(10/7)
福井新聞)TPP大筋合意 日本の農業重大な岐路に(10/6)
京都新聞)TPP大筋合意  新ルールになりうるか(10/6)
神戸新聞)TPP大筋合意/負の部分も十分に説明を(10/6)
山陰中央日報)TPP大筋合意/実効性のある農業対策を(10/7)




以下引用



毎日新聞 2015年10月07日 02時30分
社説:TPP 新「貿易立国」の姿描け


 アジア太平洋地域で世界最大の自由貿易圏が誕生する。
 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉が大筋合意に達した。これを礎にして、域内の発展につなげてほしい。
 日本にとっても意義は大きい。人口減で内需が伸び悩む中、成長著しいアジア太平洋地域の活力を取り込む基盤が整うからだ。
 安倍晋三首相は6日の記者会見で「TPPは私たちの生活を豊かにする」と強調した。これからはTPPをどう生かすかが問われる。
 来年夏の参院選を控え、焦点となるのは農業対策だ。政府はばらまきに走らず、農業の競争力強化に本腰を入れるべきだ。
 ◇活力取り込んで成長を
 TPPは貿易や投資の自由化だけではない。サービス産業や知的財産権なども含めた幅広い分野で、高度で包括的なルールを確立し、「21世紀型の経済統合」と呼ばれる。
 工業製品は99.9%の品目で関税を最終的に撤廃する。日本の主力産業である自動車などで輸出拡大の追い風になりそうだ。
 新興国は、小売りや金融で外資の参入規制を緩和し、公共事業も門戸を広げる。日本のコンビニ出店などが加速し、インフラ整備でも日本企業の商機が増すはずだ。
 一方、日本が輸入する牛肉や豚肉などの関税が大幅に引き下げられる。海外の安い農産物が日本に出回ると、家計にプラスに働く。
 資源の乏しい日本は「貿易立国」として経済成長を遂げてきた。近年は韓国が米欧と自由貿易協定(FTA)を結び、日本は出遅れた。TPPは競争力回復の契機となる。
 ただ、自動車などの関税撤廃には時間もかかる。日本企業は技術力や生産性をさらに向上させ、市場を開拓する努力も求められる。
 アジア太平洋地域の経済統合に道筋をつける意味も大きい。欧州連合(EU)などと違って、各国の経済や社会構造が大きく異なり、統合は難しいとみられていた。
 日米中や東南アジア諸国連合(ASEAN)などで構成するアジア太平洋経済協力会議(APEC)は域内全体の自由貿易圏創設を目指している。TPPはその土台と位置づけられており、TPPが拡大すれば、域内の一段の活性化につながる。
 これに対し、中国は、日韓やASEAN各国などによる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に軸足を置いて交渉し、アジアの貿易ルールへの影響力強化を目指している。
 だが中国は大幅な市場開放や「法の支配」の徹底に消極的だ。オバマ米大統領がTPP合意後、「ルールを中国のような国に書かせるわけにはいかない」と述べたのは、貿易ルールは自由度や透明性が高くなければならないという意味だろう。
 中国は世界第2の経済大国である。アジア太平洋地域の発展は中国抜きでは考えられない。TPPは排他的な経済圏ではないはずだ。存在感を高め、公平で透明なルールに基づく高水準の自由貿易圏に中国を取り込んでいくべきだろう。
 TPPが国内農業に打撃を与えることは避けられない。政府はこれまではコメや牛・豚肉などを「聖域」とし、高い輸入障壁で国内農業を保護してきた。
 ◇攻めの農業へ転換急務
 しかし、高齢化に伴う農業の衰退は著しい。高関税で保護する「守り」だけでは、未来は開けない。TPPを「攻めの農業」に転じる好機と捉えるべきだ。
 政府は農産物の輸出倍増を掲げる。TPPでは米国が日本産牛肉の無関税輸入枠を設ける。海外の和食ブームも生かし、農産物のブランド力と競争力を強化すべきだ。
 そのためには農家・農地の集約による大規模化など、農業の収益力を高める政策の推進が必要だ。政府は、各農家の創意工夫を引き出すため、農協改革に着手したが、組織いじりに終わらせてはいけない。
 来年夏の参院選をにらみ、農業関係予算の大幅増を求める動きが強まるかもしれない。政府は1993年のウルグアイ・ラウンド(多角的貿易交渉)でコメ市場を一部開放し、農業対策費として6兆円をつぎ込んだ。だが、大半がばらまきに終わった。激変緩和措置は必要だが、その二の舞いを演じてはならない。
 政府は協定への署名を経て、国会での承認手続きに入るが、農水族議員らの反発が予想される。国民の間には「農産物の輸入増に伴い、食の安全基準が低下する」「米国が混合診療の全面解禁を要求し、国民皆保険が崩れる」といった懸念も残る。
 政府はこれまで、交渉参加国に課される守秘義務を理由に情報を十分開示してこなかった。今後は国会審議などを通じてTPPの影響を丁寧に説明し、理解を得る必要がある。
 政府はTPPを成長戦略の柱と位置づけてきた。だが、合意はスタートラインに過ぎない。日本の国益と安定成長にどうつなげるのか。アジア太平洋地域の今後の経済統合にどのような戦略で臨むのか。
 首相は「TPPは国家百年の計」と語り、総合対策本部を設置する意向を示した。TPPを生かして築く日本の将来像を早急に示すべきだ。
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北海道新聞 2015/10/07 08:50
社説:TPPと道内 地域の地盤沈下 防がねば


 環太平洋連携協定(TPP)交渉が大筋合意し、農産物のさらなる輸入自由化に道を開くことになった。
 いや応なく、これまで長きにわたって保護されてきた日本の農業がグローバル経済の荒波にさらされる。農業は「保護」から「競争」の時代に入り、構造改革を迫られている。
 これを逆手にとって攻めに転じたいところだが、それも一朝一夕には進むまい。
 とりわけ北海道の場合、基幹産業である農業への打撃は地域の地盤沈下に直結する。安倍晋三政権が掲げる「地方創生」に逆行するのは明らかだ。
 首相はきのうの記者会見で「美しい田園風景を守る」と述べた。しっかりとした対策を示すと国民に約束したといえよう。言葉通りにそれを果たすべきである。
影響調査急ぐべきだ
 道はきのう、TPPの対策本部会議を開いたが、具体策には踏み込めなかった。
 政府が交渉内容に関する情報を一切開示しない「秘密交渉」に徹したためだ。効果的な対策を打ち出すには、影響を見極めなければならない。
 ところが、政府の説明は誠実とは言い難い。
 首相は会見で「類をみない関税撤廃の例外を数多く確保できた」「市場に流通するコメの総量は増やさない」と力説した。
 確かに、重要5農産物の関税は税率が段階的に大きく引き下げられるものの、一部を除いて「撤廃」にはならなかった。
 しかし、例えば牛肉の場合、輸入制限措置であるセーフガードは将来、4年間発動されなければ廃止される仕組みになっている。
 コメについても米国とオーストラリア向けに新たな無関税輸入枠を設定しており、流通量が増加するのは確実だ。
 TPPが、じわじわと影響を及ぼすのは間違いない。首相の発言は、現実を真正面から見据えたものとは到底思えない。
 道は一昨年、TPPに参加すると、関連産業まで含めた農業への影響額が1兆5846億円になると試算した。ただ、これは関税が即時撤廃された場合の数値だ。
 再試算に高橋はるみ知事は消極的だが、道のみならず農業団体も合意内容をよく検証した上で、影響額を算出する必要があろう。
 政府もそのための基礎データをきちんと提供するなど、情報公開するのが筋だ。
効果の高い政策こそ
 道内農業が衰退すればその影響は経済面にとどまらない。
 TPPの合意をきっかけに、離農が相次ぐと、少子高齢化が進む農村の人口減に拍車をかける。過疎化は消費を冷え込ませ、地域経済を直撃。果ては地域消失への悪循環に陥りかねない。
 担い手が減れば、食と農で道産ブランドを売り込む道の戦略も崩れていくだろう。
 政府は農業への影響を最小限に抑えるため、対策を講じる考えだ。その場合、注意したいのはばらまきでなく効果の高い施策だ。
 思い起こしたいのは、1993年にコメが部分開放された際の農業強化策である。国費を6兆円投入したが、温泉施設など直接農業と結びつかない事業に消えた例も多く、農業強化につながらなかった。同じ轍(てつ)を踏んではならない。
 農家の不安を払拭(ふっしょく)するため、国は農業所得の向上策とその道筋を示すべきだ。農業人口の減少が続く現状を考えれば、新規就農を促す方策にも力点を置いてほしい。
 輸入農作物の増加をにらみ、食の安全をもっと重視したい。日本政府として輸入品に対し生産履歴を表示する「トレーサビリティー」の導入を働きかけてはどうか。
農家も体質の強化を
 消費者の中には輸入品が出回ることで、価格が安くなることを期待する声もある。
 だが、北海道の農業産出額は約1兆円と国内最大だ。食品工業の出荷額はそれを上回る約2兆円と裾野は広い。
 道内経済への波及効果も考えれば、道民の手で農業を支えるという視点も大切ではないか。
 協定は各国の手続きが進めば、早ければ来年にも発効する。たとえ、発効するにしても、発効しないにしても、農業の体質強化が必要である。
 海外からの農産物攻勢に負けないようにするためには、消費者ニーズに応えるような創意工夫もほしい。
 世界的な日本食ブームもあり、日本の農産物輸出が拡大している。海外市場に打って出ることも視野に入れたい。
 同時に、輸入農産物に対抗するため、安全・安心にこだわった作物づくりを推し進めるなど、地域に合った取り組みも欠かせない。
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東奥日報 2015年10月7日(水)
社説:不信感招いた秘密交渉/TPP大筋合意


 米アトランタで開かれた環太平洋連携協定(TPP)の閣僚会合は、日米をはじめとする参加12カ国が関税の撤廃・引き下げや投資のルールで大筋合意に達した。
 日本は焦点の農産物重要5項目で、コメに新たな輸入枠を設けるほか、牛・豚肉関税の大幅引き下げを受け入れるなど、大きな譲歩を余儀なくされた。この合意内容で重要5項目の保護を求めた国会決議が順守されたと言えるだろうか。コメも畜産も農業生産の柱となっている本県への影響は避けられない。
 一方の輸出面では、米国による日本製自動車への関税が当分撤廃されず維持されることで決着。同部品も米業界が重視する品目は関税の即時廃止から外れ、先送りされることになった。
 輸入される牛・豚肉の価格低下など消費者にはある程度メリットを見込める半面、農畜産物の生産者は競争が厳しくなると予想され、国民がそろって歓迎できる内容とは言い難い。これに対して相当な果実を得たのが、日本などの市場開放に成功した米国であることは誰の目にも明らかであろう。
 それでも安倍政権が今回会合での合意を急いだのは、日米同盟強化と対中圧力のため、安全保障関連法制との両輪としてTPPを位置付けているからである。政治・外交的な利点を経済的な効果より重視したとも言えよう。今回の合意を機に、そのようなTPPの本質を国民としてあらためて理解しておきたい。
 多くの国の貿易障壁が一斉に低くなるTPPの実現で、日本からの輸出拡大を期待する声があるが、効果は限定的とみられる。ここ2年半ほどの円安局面でも輸出がほとんど増えていないことがそれを裏付けている。日本の貿易・産業構造が近年大きく変化し、生産拠点の海外移転が進んだことが大きな理由だ。
 また、秘密交渉の末の合意だったことも忘れてはならない。三村申吾知事は「国からの情報開示や説明もないまま、大筋合意とか、そういう状況に至っていることは極めて不本意だ」とした。多くの生産者も同じような不信感を抱いてきたのではないか。
 今後の政府の説明に疑問を感じたり納得できない点があれば、はっきりと声を上げていくべきだ。国会の批准審議では、農業を基幹産業とする本県などの意見を尊重した議論が求められる。
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秋田魁新報 (2015/10/07 付)
社説:TPP大筋合意 農業対策に全力挙げよ


 日本や米国など太平洋に面する12カ国が環太平洋連携協定(TPP)交渉で大筋合意した。
 12カ国の国内総生産(GDP)を合わせると、世界の4割を占める巨大な経済圏が誕生することになる。多くの関税が撤廃されるか、引き下げられ、モノやサービス、投資が自由に行き来することで経済が活発化すると期待される。
 しかし、交渉開始から今回の大筋合意まで5年半を要した。このこと自体、国の利害を調整するのがいかに難しいかをよく表している。各国それぞれにメリットとデメリットがある。
 日本では協定の発効に国会の承認が必要で、来年初めにも国会審議が見込まれる。そこで十分審議した上で、有利、不利を見極め、協定の発効に備えなければならない。
 まず最も影響が懸念されるのが農業分野だ。日本は焦点のコメで、778%という高関税は維持したものの、米国とオーストラリアからの無関税輸入枠(計7万8400トン)を新設する。現行38・5%の牛肉関税を段階的に引き下げ、16年目に9%とする。豚肉は低価格帯で1キロ当たり482円の関税を10年目に50円に下げる。
 このコメや牛・豚肉など重要5項目を「聖域」とし、関税撤廃から守るというのが日本の立場だったはずだ。撤廃は免れたが、これで聖域を守ったといえるのか。国内のコメ消費量が毎年8万トンずつ減り続けている現状からすれば、8万トン近い無関税輸入枠の新設は大幅な譲歩だ。安価な輸入品の増加により、日本農業の弱体化が一層進むのではないか。
 一方、日本が強みとする自動車分野では、米国が部品にかける関税のうち、全品目の81・3%(輸出額ベース)を即時撤廃。現行2・5%の乗用車への関税は25年かけてなくす。
 一見すると、日本に有利なようだが、部品は米業界が重視する特定の品目が即時撤廃の対象から外された。完成車への課税も当面続くことになる。全体として日本より米国のメリットの方が大きい内容である。
 それでも安倍政権が大筋合意へと突き進んだのは、TPPを成長戦略の重要な柱と位置付け、経済成長の弾みとしたいからだ。
 強大な環太平洋経済圏をつくり上げることによって、経済的にも軍事的にも台頭する中国をけん制する狙いもある。
 安倍晋三首相はきのうの記者会見で、「TPP総合対策本部」を近く設置すると表明した。全閣僚がメンバーとなり、影響を受ける農業分野などの国内対策を取りまとめるという。
 農業の疲弊は集落の維持を困難にし、地方そのものの衰退につながりかねない。輸入農産物に対抗できる競争力をつける一方、高齢で零細な農家のやる気を失わせない対策が欠かせない。安倍政権の政策実行力の真価が問われる。
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岩手日報(2015.10.6)
論説:TPP大筋合意 後の評価に耐え得るか


 環太平洋連携協定(TPP)交渉は、参加12カ国による大筋合意に達した。この協定は交渉の過程で多くの問題点が浮かび上がり、日本への影響を深く懸念する。
 最も心配されるのは農業分野の打撃だろう。日本は「聖域」とした農産物の重要5品目の関税撤廃を避けられたが、コメは米国などから輸入する特別枠を設ける。
 交渉経過を見る限り、米国の圧力を受けて譲歩を重ねたことは明らかだ。需要が激減する中での輸入増は米価下落に拍車をかけ、地域のコメ作りを危うくする。
 牛豚肉の関税も大幅に下がる。外国産と品質が競合する肉は打撃を受け、乳製品の輸入増も相まって経営を諦める畜産・酪農家も出かねない。すると飼料用米の生産が減り、主食用米はまた余る。
 TPPの影響は、玉突き現象のように農業全体へ広がっていく。食の安全や公的医療保険、金融など暮らしの幅広い分野にも及ぶ。
 一方、TPPは工業製品の輸出を増やすなどの恩恵があるとされる。しかし米国が日本車にかける関税を撤廃するのに長期間かかり、メリットは限定的にすぎない。
 それにもかかわらず、なぜ日本が参加するのか。巨大経済圏の誕生という言葉に踊らされることなく、あらためて意義を問いたい。
 もともとTPPはシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの比較的小さな4カ国による自由貿易協定から始まった。そこに米国が2010年に加わったことで大きく変容した。
 狙いは対中国にある。台頭する中国がアジア太平洋地域で経済圏をつくるのを阻み、主導権を握る。「中国がやる前にルールを書き換える」とオバマ大統領が繰り返すことからも明らかだ。
 経済効果を求めたはずの日本も最近、安全保障面の利点をことさら強調する。甘利明TPP担当相は「米国のプレゼンスが東アジアに定着することが大事だ」と語る。
 TPPのような多国間の自由貿易協定は、世界貿易機関(WTO)体制の行き詰まりから生じた。限られた国の有志が集まり、他を排除する仕組みづくりが進む。
 問題は交渉が極秘のままに行われ、国民に情報が開示されないことだ。こうして合意した内容が後の評価に耐え得るのだろうか。
 秘密交渉が「知る権利」などを侵害するとして、違憲の確認を求める訴訟が相次いで起こされている。原告は1500人を超えており、司法の判断に注目したい。
 国会でも今後、関連法の審議が行われる。立法の場でTPPの本質が国民の目にさらされる論議を期待する。
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福島民友新聞 2015年10月07日 09時11分
社説:TPP大筋合意/農業の強化は待ったなしだ


 太平洋を囲む巨大な自由経済圏を生み出す環太平洋連携協定(TPP)交渉の大筋合意により、日本の農産物市場の門戸はかつてないほど開かれることになる。
 輸入農産物との厳しい競争にさらされる国内農業の強化は待ったなしだ。足腰の強い体質に変える機会としなくてはならない。
 交渉の焦点となっていたコメ、麦、牛・豚肉、乳製品、サトウキビなどの甘味資源作物の重要5品目は、関税の撤廃が避けられた。
 しかしコメについては無関税で輸入する特別枠を新設することが合意条件になった。乳製品や甘味資源作物でも低関税の輸入枠が設けられる。麦については関税に相当する輸入差益が、牛・豚肉については関税そのものが、それぞれ大幅に削減されることになる。
 国内で輸入農産物が安く手に入るようになれば、国産農産物の価格を下げる圧力になり、生活を農業所得に頼る農家が大きな痛手を負うことになりかねない。
 政府は国内農業への影響を抑えるための強化策を作るとしている。まずは、どのような影響が出るのかをしっかりと精査することが肝要だ。
 本県にとって農業は、年間の産出額が2千億円を超える基幹産業の一つだ。しかも、コメや野菜などの農作物の生産をはじめ畜産など、沿岸部から山間部にわたって多彩な農業形態がある。
 政府はこれまでもTPPを見据えた国内農業の改革に取り組んできた。稲作を例に取ると、農地の集積による大規模経営化を進めるが、県内の中山間地域などでは、小さな田んぼを維持するだけで精いっぱいの農家が多い。
 政府が「強い農業」の確立を目指すのであれば、地方の多様な農業経営の形を考慮した強化策が不可欠だ。地方で農業離れが進み農地が荒廃すれば、環境保全に果たしている多面的な機能も失われることを忘れてはならない。
 農家も努力を続けている。生産者が農産物を自ら売って稼ぐ農業の6次化や、品質やブランド力の向上などの取り組みを盛り上げることも強化に欠かせない。
 そのためには、本県の農業が抱える事情を考慮しなければならない。政府を挙げて県産農産物の風評払拭(ふっしょく)を優先すべきだ。
 少子高齢化から人口減少に向かい、内需が先細りする日本が経済成長を維持していくためには、貿易や投資をこれまで以上に活発にすることは避けられない。
 政府にはTPPの意義を丁寧に説明し、協定発効に理解を求めることが必要になる。
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新潟日報 2015/10/07 08:30
社説:TPP大筋合意 農家の懸念にどう応える


 世界の4割を占める巨大経済圏が誕生し、日本経済が成長するとの期待はある。しかし、農産物交渉では大きな譲歩を強いられた。政府は農家が抱く懸念と不安の解消に努めなければならない。
 環太平洋連携協定(TPP)交渉の参加12カ国が大筋合意した。関税撤廃や引き下げで貿易を自由化し、投資や知的財産など幅広い分野でルールを共有する。
 日本の「聖域」であるコメ、麦、牛・豚肉、乳製品、サトウキビなど甘味資源作物の農業重要5項目は、関税撤廃は免れたが、輸入量増加は避けられない。
 本県にとって関心が高かったコメは、新たに無関税枠が設けられ、価格競争が激しくなる可能性がある。コメ農家は、高齢化や需要量の減少に加え、新たな困難に直面したと言える。
◆米価の下落に拍車も
 コメは米国産とオーストラリア産を無関税で輸入する枠を新設し、13年目以降に計7万8400トンに広げる。ミニマムアクセス(最低輸入量)として決められた77万トンの無関税枠は、維持される。
 政府は、TPPの輸入米を大幅に上回る量の国産米を、備蓄米として買い入れる方針だ。市場に流通する総量を増やさず、米価が下落しないようにする。
 ただし、買い入れの財源確保が課題となろう。国内の主食用米の需要量は毎年約8万トンずつ減少する傾向にある。政府の買い入れによって、価格が維持されるかどうかは見通せない。
 価格下落を防げなければ、農家の経営は圧迫され、後継者不足、耕作放棄地の拡大がさらに進む恐れがある。
 また、日本の食料自給率は5年連続で39%と過去最低の水準で推移している。TPPで自給率は一段と低下するだろう。
 輸入食品は円安になれば、価格が上昇する。異常気象も高騰の要因となろう。家畜の疫病も影響がありそうだ。
 食料の安全保障に必要な量を確保できないリスクが増えたと言わざるを得ない。
 国内産と比較して安全性に不安のある商品が増える懸念も拭えない。安全性について、国が責任を持ってチェックする態勢づくりが求められる。
◆現場の声に耳傾けよ
 牛・豚肉は関税を段階的に引き下げる。小麦は関税に相当する「輸入差益」を将来は半減させる。乳製品は、ニュージーランドなどに対しバターや脱脂粉乳の低関税枠を設定する。いずれも国内農業への打撃が懸念されている。
 1993年の関税貿易一般協定(ガット)ウルグアイ・ラウンド合意で、日本はコメの部分開放に踏み切った。
 政府は農業関連対策に総額6兆円を費やしたが、十分な成果を挙げたとは言えない。同じ失敗を繰り返してはならない。
 政府は、全閣僚がメンバーとなってTPP総合対策本部を近く設置し、国内対応を取りまとめる。
 今日の農業の低迷を招いた農政を真摯(しんし)に反省し、抜本的に改める覚悟がなければ、外国との激しい競争を生き抜くことは難しい。
 足腰を強くし、輸出を促進するためには、コスト削減だけでは不十分だ。無農薬栽培をはじめ付加価値を高める農家の取り組みを多方面から支援するべきだ。
 本県の大部分を占める中山間地の農地は、洪水防止など国土保全の役割も担っている。農業が持っている多面的な機能も犠牲にしてはならない。
◆厳しかった情報管理
 主要産業の自動車分野では、米国が日本製の自動車部品に課している関税は8割の品目で即時撤廃するものの、日本車に課す2・5%の関税は25年かけてなくすことになった。
 また、最後まで難航した新薬のデータ保護期間は実質8年とすることで合意した。日本では同様の制度が既に8年となっており、国内市場への影響はなさそうだ。
 TPPがどれだけの経済効果をもたらしたのか、時間をかけて検証する必要があろう。
 日本は来夏に参院選を、米国は来秋に大統領選を控える。今回の合意は、政局が緊迫する前にTPP交渉をまとめたい両国の意向が強く働いた。
 国民生活に大きな影響を及ぼす交渉で、時の政権の都合を優先した姿勢は問題である。
 交渉に関する情報は厳しく管理された。国民に十分な説明はなされず、議論が深まらなかったのは、残念というほかない。
 安易な妥協が重ねられ、国益が損なわれることはなかったのか。TPPの承認案は来年1月以降、国会に提出される。徹底した審議が不可欠だ。
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福井新聞 (2015年10月6日午前7時25分)
論説:TPP大筋合意 日本の農業重大な岐路に


 環太平洋連携協定(TPP)交渉は、参加12カ国が延長を重ね大筋合意に達した。例外なき関税撤廃という高水準の自由化を掲げた交渉はお互いの国益、利害がぶつかり合い、交渉は難航した。関税に加え、投資や知的財産など広範な分野でもルールを統一。経済規模で世界の4割を占める壮大な経済圏の誕生だが、果たして日本の成長戦略に弾みが付くのか不透明だ。
 工業製品の輸出拡大や輸入食品が安くなるなどの利点はあるが、農業への打撃が最も懸念される。小規模農業が淘汰(とうた)されれば地域衰退に拍車が掛かる。来夏の参院選に向け安倍政権への風当たりも強まるだろう。
 TPP交渉は2010年3月から本格化。日本は民主党政権時の11年に交渉参加に向け関係国との協議入りを表明。安倍政権で動きが加速し13年7月、交渉に参加した。農業への影響より、自動車など工業製品の関税撤廃や知的財産の保護ルールが共有化されることで、得られる利益の方が大きいと判断したのだ。
 それを象徴するのは民主党政権当時、外相だった前原誠司氏の発言である。同氏は「GDP構成比1・5%の農業を守るために、98・5%を犠牲にするのか」と強調。それ以降、全国紙などで「農業保護が国益を損なっている」といった世論が勢いを増した。
 安倍政権は「農業を守る」として、コメ、麦、牛・豚肉など農産物の重要5項目を「聖域」と位置付け、関税撤廃を回避はした。
 しかし、米国などからコメを無関税で輸入する特別枠を新設。牛・豚肉は関税引き下げを迫られ、15年以内には半分以下の水準となる。今回の交渉で「風穴」を開けられたことで、今後は米国やオーストラリアなどからの輸出攻勢が激しくなる可能性がある。
 政府は農業強化策作りに着手するが、規模で海外との競争に勝てるはずもない。コメの消費低迷に加え、米価下落が農家を圧迫している。小規模農家が守ってきた中山間地も耕作断念で荒廃がますます顕在化するだろう。畜産農家の経営も一段と深刻化し自給率は下がる一方だ。「日本の農産物を海外に売り込むチャンス」との見方もあるが、楽観できる状況にない。
 交渉では議長国・米国の強圧的な姿勢が際立った。米国は12カ国合計の国内総生産(GDP)の6割以上、日米合わせれば全体の8割以上を占める。来年11月の大統領選を控えて合意を急いだ上、国内業界の強い圧力も背景にあった。
 さらに台頭著しい中国と経済圏をめぐる主導権争いもある。米国はアジアへのリバランス(再均衡)戦略の軸にTPPを据え、輸出拡大で外交基盤を強固にする構えだ。巨大農業資本や技術参入を狙っている。日本の農業が保護政策から自立へ転換を図る好機か、ますます衰退していくのか、重大な岐路に立っている。
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[京都新聞 2015年10月06日掲載]
社説:TPP大筋合意  新ルールになりうるか


 難航していた環太平洋連携協定(TPP)交渉が大筋合意した。日米はじめ12カ国が参加し、経済規模で世界の4割を占める巨大経済圏が誕生する。
 米国での最後の閣僚会合は協議日程を何度も延長し、最後に残った新薬のデータ保護期間や乳製品問題で合意にこぎ着けた。
 交渉で経済規模の大きい米国と日本の協議が注目されたが、来年秋の大統領選を控え、自国の利益を優先させようとする米国の姿勢が参加国の疑念を招き、協議が長引く要因になったとみられる。
 ただ、米国には、アジアインフラ投資銀行などでアジア地域での新たな枠組みを目指す中国との主導権争いに先んじ、市場ルールの基準をつくりたい事情もあった。
 世界全体の貿易をカバーする世界貿易機関(WTO)の交渉が停滞する中、TPPは参加国が12カ国と広域で、自由化水準も高い経済連携協定であり、世界から注目されている。貿易をめぐる新しいルールになりうる可能性はある。今後、この協定が本当に参加各国の経済発展と国民生活の向上につながるかどうかが問われよう。
 TPP交渉が5年超にわたり難航したのは、貿易自由化や投資、知的財産など幅広い分野でのルールの統一が、各国の経済と国民生活に大きな影響を与えるからだ。
 日本にとっては、工業製品で、米国が日本製自動車部品関税の撤廃に合意したことで、自動車など輸出産業の追い風になる。
 一方、農産品は厳しい環境におかれる。日本はコメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の農産物5品目を「聖域」に位置付けてきたが、牛・豚肉の関税は大幅に引き下げられ、コメも米国やオーストラリアからの輸入枠が増えるからだ。
 海外との競争に勝てる農業の体質強化が求められるのは必然だ。関税貿易一般協定(ガット)ウルグアイラウンド合意の際、政府は6兆円もの農業関連対策費を投じたが、国際的な競争力が強化できたとは言い難い。今度こそ、日本の未来を考えた対策が必要だ。
 交渉合意後は、国内手続きに舞台が移り、弱体化した米国のオバマ政権が議会を説得できるか不安も残る。日本では国会での承認手続きに入るが、交渉は非公開が原則だったため、これまで国民の理解は置き去りにされてきた。政府は協定内容を十分に説明し、農業対策などを明示することが求められる。とりわけ国会の責任は重い。真に国民の利益にかなう内容なのか、見極める必要がある。
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神戸新聞 2015/10/06
社説:TPP大筋合意/負の部分も十分に説明を


 環太平洋連携協定(TPP)をめぐる交渉が、参加12カ国の閣僚会合で大筋合意した。
 医薬品と乳製品、自動車の3分野で難航し、再三にわたる延長の末、ようやく妥結した。
 TPPは、物品の関税を原則撤廃する貿易の自由化だけにとどまらない。投資や知的財産などのルールの統一、労働者や環境の保護規定など幅広い分野の包括協定となる。
 発効すれば、経済規模で世界の4割を占め、欧州連合(EU)をしのぐ一大経済圏が形成される。
 人口減少で市場が縮小傾向にある日本経済にとっては、成長が見込めるアジアなど海外市場への輸出や投資拡大に期待がかかる。
 陶磁器や繊維製品の関税引き下げも含まれ、地場産業や中小企業にも輸出の可能性が広がる。価格の安い輸入品の増加は、国内の消費者のメリットにもつながるだろう。
 一方、日本の農業には大きな打撃になりかねない。とりわけ高齢化や後継者難に悩む農家は、安いコメや牛・豚肉などの輸入増加で深刻な影響を受ける恐れがある。
 最大の焦点のコメは、高い関税を維持するものの、米国や豪州から無関税輸入枠を設けることで折り合ったとみられる。
 牛・豚肉は大幅に関税が引き下げられる。国が全量輸入する小麦のほか、乳製品もコメと同様に無関税輸入枠が設定される。
 国会はコメや乳製品、牛・豚肉など農産物5項目を「聖域」として関税撤廃の例外とするよう決議した。だが、安倍政権は工業製品の輸出増のメリットが大きいとし、成長戦略の目玉として積極的に進めた。
 政府は、日本の農産物の輸出を増やすなど競争力のある強い農業にするというが、道筋が見えない。具体策を示し、実行する責任がある。
 バイオ医薬品の開発データ保護期間は、12年を主張する米国と5年を求める豪州などが激しく対立していたが、「実質8年間」とすることで妥協したという。日本は既に8年のため影響は小さいとみられる。
 参加国は今後、国内での承認を経て協定を締結する。日本も国会での承認が必要だが、政府はあまり交渉内容を明らかにしてこなかった。
 国民生活に関わる問題だけに「負の部分」も含めて十分に説明し、国民の理解を得なければならない。
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山陰中央日報 ('15/10/07)
論説:TPP大筋合意/実効性のある農業対策を


 米アトランタで開かれた環太平洋連携協定(TPP)の閣僚会合は、日米をはじめとする参加12カ国が関税の撤廃・引き下げや投資のルールで大筋合意に達した。
 安倍政権の成長戦略の柱であり、多くの国の貿易障壁が一斉に低くなるTPPの実現で、日本からの輸出拡大を期待する声がある。しかし、農畜産物の生産者は価格競争が厳しくなると予想され、国民がそろって歓迎できる内容とは言い難い。今後段階的な関税引き下げが始まるが、基幹産業である日本農業の基盤強化を急ぐべきだ。
 日本は焦点の農産物重要5項目で、コメに新たな輸入枠を設けるほか、牛・豚肉関税の大幅引き下げを受け入れるなど、大きな譲歩を余儀なくされた。一方の輸出面では、米国による日本製自動車への関税が当分撤廃されず維持されることで決着。同部品も米業界が重視する品目は関税の即時廃止から外れ、先送りされることになった。
 輸入される牛・豚肉の価格低下などで日本の消費者にもある程度のメリットが見込めるが、この点での効果は限定的とみられる。その一方で、今回の合意で相当な果実を得たのが、日本などの市場開放に成功した米国である点は誰の目にも明らかだろう。
 安倍政権が合意を急いだのは、「日米同盟強化」と「対中圧力」のため、安全保障関連法制との両輪としてTPPを位置付けているからだ。政治・外交的な利点を経済的な利点とともに重視したと言える。加盟国の連携による相乗効果が期待されるTPPだが、背景となる経済情勢を十分理解する必要がある。
 最も大きいのは日本の貿易・産業構造が近年大きく変化し、生産の現地化が進んだことだ。ここ2年半ほどの円安局面でも輸出がほとんど増えていないことがそれを先取りして裏付けている。
 日本政府もこの点は承知しており、関税撤廃・引き下げによる輸出効果だけでなく、TPP発効を機に対日投資が増えたり競争で生産性が向上したりする効果を、今後は強調していく方針という。対日投資の拡大は成長戦略の柱であり、期待先行で終わらせてはならい。
 世界の成長市場を見込んだ自由貿易協定(FTA)で日本は現在、東アジア諸国や欧州連合(EU)、そして中韓両国とも交渉中だ。だが、これまで米国主導のTPPを最優先にしてきたことや中韓両国との関係冷却化で、思うように進んでいない。
 また、TPP参加国でない中国と韓国が、日本の第1位と3位の貿易相手国だという現実がある。通商政策は国際関係の中でのバランスが大切だ。TPP合意を節目として政府は、現在交渉しているほかのFTAの実現にも全力で取り組むべきだ。
 今回の合意が来年度予算編成のタイミングと重なったことで気になるのが「TPP対策」関連予算の膨張だ。約20年前の関税貿易一般協定(ガット)ウルグアイ・ラウンド合意の時には、農業の生産性向上などをうたい事業費6兆円が組まれた。
 この中には農業基盤整備に直接つながらなかった事業も含まれていた。農業者の切実な声にしっかり耳を傾けて、実効性のある対策を講じてほしい。
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