2015-10-12(Mon)

海外インフラ輸出 インドネシア高速鉄道輸出

戦略の練り直しが必要だ  新興国が財政負担を抑えてインフラを整備したいと考えるのは自然

-----インドネシア政府は日本と中国が受注を競ってきた高速鉄道計画を中国に発注する方針を決めた。建設にあたり、インドネシアに財政負担が生じない中国の提案が決め手になったという。

-----新興国が財政負担を抑えてインフラを整備したいと考えるのは自然だ。インドネシアの選択を尊重しなければならない。
 インフラ輸出は新興国の自律的な経済成長を後押しするものであるべきだ。日本の新幹線技術や高効率発電設備への評価は高い。だが、事業予算が膨らむ最新鋭設備を新興国が本当に必要としているのか。計画の立案段階から相手国とよく協議する必要がある。
 インフラは建設から運転・保守までライフサイクル全体で考えるべきものだ。長い事業の間には政変や経済危機など予期せぬリスクが控える。協力には導入国のコストを抑え、様々なリスクを最小化する効率化の視点が大切だ。
(日本経済新聞)

<各紙社説>
読売新聞)高速鉄道戦略 中国との受注競争に備えよ(10/7)
日本経済新聞)インフラ輸出は戦略の練り直しが必要だ (10/3)
産経新聞)高速鉄道輸出 採算抜きの競争は無用だ(10/2)




以下引用



読売新聞 2015年10月07日 03時07分
社説:高速鉄道戦略 中国との受注競争に備えよ


 投げ売りに近い輸出攻勢をかける中国との受注競争に、日本は戦略的に備えねばならない。
 日中が争ってきたインドネシア高速鉄道計画で、日本が敗れた。首都ジャカルタ―バンドン間の140キロを時速300キロ以上で結ぶ構想だ。
 日本案は総事業費約5400億円の大半を円借款で賄うもので、インドネシアの政府保証が必要だった。日本は、2008年頃から事業性を確認する調査を行うなど、中国よりも先行していた。
 問題なのは、インドネシア政府の対応だ。9月初め、日中両案を採用せず、計画を見直すと公表した。だが、1か月足らずで、その方針を覆し、中国案に決めた。
 政府支出も債務保証もしないというインドネシアの条件を、中国が受け入れたことが理由だ。
 菅官房長官が「大型インフラ計画は透明かつ公正に実施されることが重要だ」と強い不満を表明したのは、もっともである。決定プロセスの検証が欠かせない。
 中国外務省は「中国には、融資条件や工期などの面で比較的大きな優位性がある」と自賛した。中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)や自前の「シルクロード基金」を通じた資金援助をちらつかせたのではないか。
 3年での完工などを約束した中国案には、実現性を危ぶむ見方も多い。インドネシア政府の判断の甘さが改めて問われることにならないか、懸念されよう。
 中国の輸出攻勢の背景には、高速鉄道産業の生産能力のだぶつきがある。国内の高速鉄道網はわずか10年ほどで1万6000キロに拡大し、日本の新幹線網の6倍を超えた。車両や設備、労働者などの過剰は続くだろう。
 採算を度外視してでも、国外市場に打って出ざるを得ない中国を今後も日本は警戒すべきだ。
 安倍政権はインフラ輸出を成長戦略の柱と位置づけ、官民で連携して売り込みに注力してきた。
 中でも鉄道事業は、世界的に需要増が見込まれる有望分野で、これからもマレーシアや米国などで受注を目指す考えだ。今回の敗北を踏まえ、輸出戦略の早急な立て直しが求められよう。
 日本は従来、強みである安全性や技術力をアピールしてきた。加えて、相手国のニーズをより的確に把握することも重要になる。
 設計や建設工事を請け負うだけでなく、運行管理や保守・点検などを一括して受託する提案に力を入れる必要がある。技術者育成に協力することも有効だろう。
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日本経済新聞 2015/10/3付
社説:インフラ輸出は戦略の練り直しが必要だ


 インドネシア政府は日本と中国が受注を競ってきた高速鉄道計画を中国に発注する方針を決めた。建設にあたり、インドネシアに財政負担が生じない中国の提案が決め手になったという。
 インフラ輸出には、新興国の発電所や港湾の整備を通じて相手国との関係を強化する経済外交と、膨大な需要を好機ととらえるビジネスの2つの側面がある。
 受注活動に関与する国には内外への説明責任が、参加する企業には事業採算の確保が求められる。この両立が欠かせない。世界で過熱する競争に日本はどう臨むのか。戦略の練り直しが必要だ。
 中国の習近平政権は、欧州からアジアに至る陸路・海路の両面で中国の影響力が強い経済圏をつくる「一帯一路」構想を掲げる。高速鉄道受注へ示した破格の条件には、インフラ輸出の重点分野である高速鉄道で実績を築きたいとの思いがあったのだろう。
 新興国が財政負担を抑えてインフラを整備したいと考えるのは自然だ。インドネシアの選択を尊重しなければならない。
 インフラ輸出は新興国の自律的な経済成長を後押しするものであるべきだ。日本の新幹線技術や高効率発電設備への評価は高い。だが、事業予算が膨らむ最新鋭設備を新興国が本当に必要としているのか。計画の立案段階から相手国とよく協議する必要がある。
 インフラは建設から運転・保守までライフサイクル全体で考えるべきものだ。長い事業の間には政変や経済危機など予期せぬリスクが控える。協力には導入国のコストを抑え、様々なリスクを最小化する効率化の視点が大切だ。
 日本は鉄道の建設資金を円借款でまかなう計画だった。1997年のアジア通貨危機では、インドネシアでも円借款を供与した案件で返済を繰り延べする事態になった。円借款が公的資金を元手とする以上、中国のように建設資金を丸抱えできないのは確かだ。
 ただし、今回受注を逃したことの検証は必要だ。インドネシアは累積の円借款供与額が世界で最も大きい。実績と供与のルールに縛られ、要望に柔軟に応えることができなかったのではないか。
 中国は鉄道建設に加え、鉄道車両工場の建設や技術移転などをパッケージで提案したとされる。競争を勝ち抜くには、ひとつの分野にとどまらない総合的な提案力を磨かなくてはならない。
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産経新聞 2015.10.2 05:02
【主張】高速鉄道輸出 採算抜きの競争は無用だ


 インドネシアの高速鉄道計画について、日本と競り合っていた中国の受注が固まった。政府の財政負担を伴わないとするインドネシア側の条件を中国がのんだためだ。
 日本政府は、成長戦略の一環で鉄道などインフラ輸出の強化を掲げている。日本が先行していた今回の商談で受注を果たせなかったのは残念だ。方針を二転三転させたインドネシア政府の姿勢にも不満が残る。
 もっとも、インフラ輸出では計画の透明性や採算の確保が重要となる。受注の獲得を優先するあまり、リスクを押しつけられるような商談では、日本の成長にもつながるまい。
 新興国ビジネスは、相手国の政治的な事情を抜きに語れない。そうしたカントリーリスクを見極め、官民でしたたかな戦略を改めて構築しなければならない。
 高速鉄道計画は、ジャカルタとバンドン間の約140キロを結ぶものだ。新幹線方式を売り込んだ日本は事業化調査に協力し、円借款供与などを表明していた。
 だが、インドネシア側は昨年10月の大統領交代後、政府の資金や債務保証を伴わない民間ベースの事業とする方針を唐突に打ち出した。この条件には、日本だけでなく、遅れて参加を表明した中国も対応できず、先月初めに計画を白紙に戻すとしていた。
 それをまたも覆し、中国案を採用すると日本に伝えてきたインドネシアの判断は、とても納得できない。
 中国側から、条件を受け入れる新たな提案があったためだというが、その経緯はあまりにも不透明だ。菅義偉官房長官が「常識では考えられない」と批判したのも理解できる。
 この高速鉄道は国営企業などが運営に参加し、総事業費は5千億円以上と見込まれる。これだけの国家的な事業を政府側の負担がまったくない形で建設するには無理がある。採算の見通しも立っていない。
 海外では、米国やインドなども高速鉄道の建設を検討中だ。ここでも日本は新幹線方式の採用を提案しているが、引き続き採算などの管理を徹底すべきである。
 その上で日本が培ってきた高度な安全性や運行管理などの実績をアピールする。この基本を崩しては、日本のインフラ技術に対する海外の信頼も失うはずだ。
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ニュースイッチ Newswitch-
日刊工業新聞 2015年10月06日
土壇場でひっくり返されたインドネシア高速鉄道。政府危機感強める
新興国ビジネスの難しさ浮き彫り。迫られるインフラ輸出戦略の練り直し
 中国との激しい受注合戦を繰り広げてきたインドネシアの高速鉄道計画での受注失敗を受け、日本政府は敗因の分析や改善策など対策を急ぐ構えだ。当初は日本がリードしていたと考えられていたが、中国政府がインドネシアの財政負担をゼロにするという”破格“の条件で受注をもぎとった。日本の新幹線の強みである技術力や安全性だけでは通用しない状況が出てきている。情報収集のあり方を含め、戦略の練り直しが求められる。
 ジャカルタ―バンドン間(140キロメートル)のインドネシアの高速鉄道計画を巡っては、インドネシア政府は日中両国の提案では、財政負担が生じることなどを理由にいったん白紙撤回し「中速」鉄道にする方向を示した。しかし、中国政府はインドネシア政府の財政負担や債務保証を伴わない事業案を示し、インドネシア政府は一転して中国案の採用に踏み切った。
 政府は今回の結果に戸惑いを隠せない。国土交通省は「実現可能な提案を行ったが残念だ」(鉄道局国際課)と落胆する。ただ、少なくとも相手国政府の財政負担や債務保証を伴わない事業案に、日本の既存の枠組みでは対応できていない状況があるのは事実だ。今後に向け政府は「ある意味で検証する良い材料をもらった。敗因を分析した上でどうするかを検討する」(内閣官房副長官補室)としており、情報収集の仕方や債務保証のあり方なども含め、関係者を集めて、早急に現状分析と対策を練る方針だ。
 新興国での高速鉄道などインフラ輸出は、政府の成長戦略において柱の一つとして位置づけている。今後も各国で中国との受注合戦が繰り広げられることは確実で、政府は危機感を強めている。
 インドネシアの高速鉄道計画では、JR東日本がグループの日本コンサルタンツを通じ、国際協力機構(JICA)から事業化調査を受注し、基本計画や建設計画の検討・策定を前提とした調査を進めていた。当初、契約期間は15年3月までだったが、政府間交渉が継続中だったこともあり、延長。現在も契約が続く状況だ。
「直ちに他国(と進める新幹線輸出交渉)には影響しない」(国交相)
 JR東日本は12年策定の経営計画で海外事業強化を打ち出し、これまでにベルギー・ブリュッセル、シンガポール、英・ロンドンに拠点を開設。高速鉄道プロジェクトでは、インドと英国で調査事業に入るなど、受注も近いとみられている。都市鉄道では、タイ・バンコクで16年に開業する路線に鉄道車両や鉄道システムなどを供給。日本の新幹線の採用が決まったとされるバンコク―チェンマイ間の高速鉄道プロジェクトにも参画している。
 鉄道の海外輸出は、政府間交渉が中心で、プロジェクト決定まで時間がかかる。政情にも左右され、民間企業ではどこまで経営資源を割くべきか、判断が難しい。インドネシアでは、調査まで手がけながら、受注に至らなかった。同社は海外で活躍できる人材の育成などを進めながら、長期的な視野で事業の柱に育てていく構えだ。
太田昭宏国土交通相は4日の閣議後記者会見で、日本と中国が受注を競ってきたインドネシアの高速鉄道計画で中国案の採用が固まったことに関連し「直ちに他国(と進める新幹線輸出交渉)には影響しない」と述べ、今後も新幹線輸出戦略を積極的に進めていく意向を示した。
 政府は成長戦略でインフラ輸出の強化を掲げ、インドやタイ、米国にも新幹線方式の高速鉄道輸出を目指している。国交相は各国との交渉を通じ「日本の技術力は素晴らしいと評価を受けている」と指摘。開発から運用、廃棄までを含む全体で見れば「コスト面でも優れている」と強調した。
日刊工業新聞2015年10月01日 2面に加筆


毎日新聞 2015年09月30日 23時12分(最終更新 10月01日 10時47分)
インドネシア高速鉄道:中国案、用地取得など波乱含み
 【ジャカルタ平野光芳】日本と中国が受注を競ってきたインドネシア・ジャワ島の高速鉄道計画で、インドネシア政府は29日、中国案を採用する方針を日本側に伝えた。海外輸出の実績作りのためになりふり構わぬ売り込みを貫いた中国と、インフラ整備で外資に依存せざるを得ないインドネシア側の事情が一致し、日本の新幹線案は撤退を余儀なくされた形だ。ただ中国案にも課題は山積し、予定通りに実現するかは不透明だ。
 ◇「日本のコピー」
 「ルートも駅の位置も全部同じで、違うのは金額の見積もりだけ。これは明らかに先行する日本案のコピーだ」。中国が8月に提出した案を見たインドネシア運輸省の幹部は、毎日新聞の取材にこう証言した。
 日本、インドネシア両政府は数年前から協力してジャカルタ−バンドン間(直線で約120キロ)での高速鉄道導入に向け、需要予測や地質調査など綿密な調査を実施していた。ところがこの幹部によると調査結果が「親中派」の関係者を通じて中国側に流出したという。実際、今年3月に中国が突然参入を表明してから、提案書提出までわずか5カ月。中国側が詳細なボーリング調査などを実施した形跡もない。
 中国が全力を注いだのは資金面での支援だ。数千億円の事業費の大半を融資し、「インドネシア政府の財政支出や債務保証なしで建設できる」との姿勢で最後までインドネシア側の要求をのみ続けた。日本は採算などを考慮して最後の一線でインドネシアに譲歩しなかったため、明暗が分かれた。
 インドネシアは急速な経済成長にインフラ整備が追い付かず、各地で道路や鉄道、港湾、発電所などの建設が急務。政府の手持ち資金は乏しいため、豊富な「中国マネー」を積極的に利用する方針を取っている。ジョコ大統領は昨年11月の訪中直後、中国の急速な経済発展をたたえた上で、「お金や投資がどこから来るかは問題ではない。都市や地域を結ばなければならない」と発言。中国側も発電所や鉄道などに投資を広げ、緊密な関係を築いている。
 ◇追加の資金援助
 ただ、高速鉄道の導入を巡っては「在来線や高速道路で十分」との不要論も根強く、インドネシアの政権内部でも意見が割れていた。中国の国有企業と組んで計画を推し進めようとしていたリニ国営企業相に対し、他の主要閣僚が重い財政負担を理由に計画そのものに難色を示し、9月3日の時点ではいったん「日中双方の案を却下する」と発表した。
 しかし、リニ国営企業相は同中旬に訪中して追加の資金援助を引き出すなど執念を見せ、最終的にジョコ大統領も中国案で同意した模様だ。
 中国案では「2018年までに完成できる」としている。高速鉄道輸出を加速させたい中国にとっても、今後はこの公約を守れるかが焦点になりそうだ。中でも大きな課題は線路用地の取得だ。インドネシアでは1998年の民主化以降、人々の権利意識が高まり、各地でインフラや公共用地の取得が難航している。ジョコ大統領は政府がインフラ用地の取得で全面協力していく姿勢を示しているが、いったんこじれると問題解決に時間がかかるのが実態だ。
 また中国案ではインドネシア政府の財政負担を求めない半面、融資の金利が高く設定されているとみられ、いったん計画にトラブルが生じると資金繰りが急速に悪化する危険性がある。「形だけ着工にはこぎ着けても、資金不足で完成のめどが立たない可能性がある」(日本外交関係者)との厳しい見方もあり、今後も曲折が予想されそうだ。
 ◇インドネシア・ジャワ島の高速鉄道計画をめぐる動き
2011年  ユドヨノ前政権がジャワ島で高速鉄道を建設する計画を公表
14年1月 日本が2億6000万円を投じ、事業化調査を開始
15年3月 中国が計画参入を表明
  8月 ジョコ大統領が内閣改造。新幹線を推すゴーベル貿易相を更迭
     インドネシア政府が委託した米国系コンサルタント会社が日中双方の案を評価
9月3日 インドネシア政府が高速鉄道計画の白紙化を発表
  23日 ナスティオン経済調整相が日本大使に計画継続を伝達
  29日 ソフィアン国家開発企画庁長官が来日し、菅義偉官房長官に中国方式の採用方針を伝達

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