2015-11-23(Mon)

くい打ち工事偽装 建設業界の構造改革を

無責任な仕事生む建設業の構造を変えよ  根っこからたださねば

(日経新聞社説等より)
杭打ち工事偽装・データ改ざんは、旭化成建材の工事で広がるだけでなく、業界大手のジャパンパイルの工事でも見つかった。
無責任な仕事を生む構造や管理体制は、特定の企業、分野の問題ではなく、建設業界に蔓延している。

建設業全体の不信につながる問題だ。
国土交通省には、そんな危機的な認識があるのだろうか。最優先して全容解明と実態把握に努めるべきだ。

くい打ち工事偽装の背景には、建設業の重層下請け構造が改善されずにきたことがある。
元請け企業(ゼネコン等)を頂点に、専門工事分野ごとに2次、3次、4次と多数の下請け企業がぶらさがる構造だ。

下請け重層構造は、業界団体の日本建設業連合会がめざす「2次下請けまで」の簡素化を実現してほしい。
下請けの数が減れば中間コストを削減でき、現場で働く建設技能者の待遇改善にもつながる。
厳しい労働環境は人手不足だけでなく、モラルの低下やミス、深刻な事故を招く。
 
工期や予算を理由に安全性の確保をおろそかにすることは許されない。
マンション工事が終わる前に販売する「青田売り」の慣行を含め工事の発注、設計段階から問題点を洗い出して見直すべきだ。


三井住友建設と2次下請けの旭化成建材が、互いに責任を押しつけ合う醜態をさらしているが、
施工の管理責任は、曖昧なものではなく、工事全体の管理監督責任を負う元請け企業だ。

横浜市のマンション工事で、責任者が杭打ち工事に立ち会っていなかった元請けの三井住友建設の責任は重大だ。
1次下請けだった日立ハイテクノロジーズにも、中間利益だけを得た「丸投げ」の疑いがある。

もちろん、データを改ざんした旭化成建材の行為は許されない。
体制もずさんで、50人以上の現場責任者の多くが、下請けの建設会社などから工期中だけ出向したという。

工事の管理については、設計者である建築士にも責任がある。
三井住友建設一級建築士事務所らしいが、いわば、三井住友建設の部内、身内の建築士に他ならない。
建築士法上は、施工会社から独立した施工監理を責務としているが、実態は従属・一体化している。この問題も放置できない。

横浜のマンションの工事だけの問題ではない。建設業界全体の問題だ。
建設業界としてやるべきは、まず、工事の最終責任は元請けにあることを再確認すること。
そして、元請けと下請けが建設業法の定める責任者を適切に配置、機能させて隙間のない管理体制を徹底すること。

具体的に、くい打ち工事の実施時に、管理責任者の現場での立ち会い義務をどう実施させるのか。
さらに、工事後の検査体制においても、見えない部分の不正やミスをどうやって発見できるようにするかだ。

第三者によるチェック体制も必要だ。
行政等による確認検査、中間検査、完了検査も十分とは言えない。
くい打ち工事も中間検査の対象だった。が、データ改ざんを見抜けなかった。

中間検査は現場での立ち合いはない。書類で見るだけ。それも性善説で。
やはり、第三者が工事の現場で立ち会って監視するぐらいのチェックは必要だろう。
弁護士会が提唱する公的インスペクター制度も必要だろう。

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日本経済新聞)無責任な仕事生む建設業の構造を変えよ (11/21)
徳島新聞)中央病院くい工事 信頼裏切るデータ流用だ (11/20)
南日本新聞) [くい打ち不正] 根っこからたださねば(11/19)




以下引用



日本経済新聞 2015/11/21付
社説:無責任な仕事生む建設業の構造を変えよ


 傾いた横浜市のマンションで発覚した杭(くい)打ち工事のデータ改ざんは、旭化成建材が手掛けた横浜市以外の工事で広がるだけでなく、業界大手のジャパンパイルの工事でも見つかった。
 建設各社や国土交通省は特定の企業、分野の問題として片付けず、建設業全体の不信につながる問題として危機感を強めるべきだ。無責任な仕事を生む構造や管理体制を早急に変えてもらいたい。
 建設業は総合建設会社(ゼネコン)を頂点に、分野ごとに1次、2次、3次と多数の下請け企業がぶらさがる構造を持つ。この重層下請け構造は工事の専門化に対応する側面もあるが、施工の管理責任を曖昧にしがちだ。
 工事全体の管理監督責任は元請け企業が負う。しかし、横浜市のマンション工事で元請けの三井住友建設の責任者は問題になった杭打ち工事に立ち会っていない。
 三井住友建設と2次下請けの旭化成建材は、互いに責任を押しつけ合う発言が目立つ。両社の間に入った1次下請けの日立ハイテクノロジーズは工事の役割がみえにくく、中間利益だけを得た「丸投げ(一括下請負)」の疑いがあるとみて国交省が調べている。
 杭打ち工事を担当した旭化成建材の体制もずさんだ。杭打ちデータを改ざんした50人以上の現場責任者の多くは、工期中だけ下請けの建設会社などから同社に出向しており、現在では連絡もとりにくいという。
 こうした現状を見れば、建設産業への信頼は揺らいで当然だ。
 工事後の検査体制も重要だが、見えない部分の不正やミスを発見することには限界がある。まず建設業界が工事の最終責任は元請けにあることを確認し、元請けと下請けが建設業法の定める責任者を適切に配置、機能させて隙間のない管理体制を徹底すべきだ。
 下請けの重層構造は、業界団体の日本建設業連合会がめざす「2次下請けまで」の簡素化を実現してほしい。下請けの数が減れば中間コストを削減でき、現場で働く建設技能者の待遇改善にもつながる。厳しい労働環境は人手不足だけでなく、モラルの低下やミス、深刻な事故を招く。
 工期や予算を理由に安全性の確保をおろそかにすることは許されない。マンション工事が終わる前に販売する「青田売り」の慣行を含め工事の発注、設計段階から問題点を洗い出して見直すべきだ。
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徳島新聞 2015年11月20日付
社説:中央病院くい工事 信頼裏切るデータ流用だ


 建築の信頼を裏切る不正が、徳島県内の重要施設で行われていたことが分かった。
 くい打ち工事でデータの改ざんが判明した業界大手のジャパンパイルが、徳島市内の県立中央病院の改築工事に携わり、くい22本でデータを流用していた。
 県は建物の安全性に問題はないと説明している。だが、計254本のくいのうち、1割近くで流用があったというから、そのずさんさに怒りを禁じ得ない。
 入院患者らから、不安の声が上がったのは当然だろう。
 県内の建物で他にデータの流用はないのか。関係各社は徹底した調査を行い、安全の確保と不安の払拭(ふっしょく)に努めなければならない。
 中央病院は2012年9月、旧病院の敷地内に完成し、同年10月に開院した。
 県内の中核病院として、救命救急などの医療体制を充実させたほか、南海トラフ巨大地震に備えて免震構造としたのが特徴だ。屋上にヘリポートと運航管理室を備え、ドクターヘリの基地病院ともなっている。
 日常的に多くの患者が訪れ、災害時には被災者の命の綱となる施設である。
 それだけに、工事には万全の注意が求められたはずだ。データ流用などあってはならない。なのに、なぜ行われたのか。
 県によると、くい打ち工事は10年3月から5月にかけて実施された。くい打ち機械3台で掘削した際、それぞれの責任者3人が、電流値を記録する装置のスイッチを入れ忘れるなどし、データが適正に取れなかったという。このため、正しい記録が取れた分のデータを使ったようだ。
 強固な地盤「支持層」までの深さがどの場所もほぼ同じで、使ったくいの長さなどから、県は全てが支持層に到達していると判断した。
 しかし、スイッチの入れ忘れといった単純ミスが、なぜこれほど多くあったのか。専門業者であり、にわかに信じがたいことだ。
 今まで流用が分からなかったことも問題である。
 先月、横浜市のマンション傾斜で旭化成建材のデータ改ざんが発覚した際、施工主側の工事監理者が常に現場でチェックするケースは少ないことが明らかになった。
 自治体や民間検査機関が行う検査も、施工時の写真などでの事後確認にとどまっていることも分かった。工期を優先するあまり、データが取れなかった場合に流用が行われていた実態も浮かんでいる。
 チェック体制の強化を急がなければならない。
 何より改める必要があるのは業界の体質である。社員教育の在り方を見直すとともに、企業倫理を自ら厳しく問い直すよう求めたい。
 業界団体はきのう、全国での点検状況を発表したが、不正の有無は明らかにしなかった。全容が解明されない限り、信頼を取り戻せないことを肝に銘じるべきである。
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南日本新聞 ( 2015/11/19 付 )
社説: [くい打ち不正] 根っこからたださねば


 くい打ち工事のデータ改ざん問題は底なしの様相を呈してきた。実態調査を急ぎ、不正の根っこからたださねばならない。
 発端は1カ月ほど前になる。横浜市の大型マンションの傾きで、旭化成が子会社の旭化成建材の施工不良を公表した。
 その後、現場担当者50人以上が不正に手を染めていたと明かし、くい打ち業界大手のジャパンパイルもごまかしを認める事態になっている。
 電流計の不調や操作ミスでデータを得られず、別のくいのデータを流用する。不正の手口は共通しているようだ。
 ものづくりの現場で、あしき慣行がはびこっていた。業界ぐるみを疑われても仕方あるまい。
 石井啓一国土交通相は記者会見で、業界団体に自主点検の状況をきょうまでに報告するよう求めると述べた。ようやく危機感を持ったように映る。
 旭化成は先週末、過去約10年間で鹿児島県内の1件を含め、少なくとも266件にデータ改ざんがあったと発表した。横浜のマンション以外に傾きなどの報告はないとした。
 今は問題ないかもしれないが、そのうち建物が傾いたりひび割れたりしないか。住民や利用者の間に不安は広がっている。国土交通省は一日も早く実態調査に乗り出すべきだ。
 改ざんの背景として複雑な下請け関係や、各社の現場を転々とする担当者、工期厳守にコスト削減といった元請けからの圧力などが挙げられている。
 不正はどこまで根を下ろしていたのか。見極めて再発防止に生かすためには、全面的な調査が必要になるはずだ。
 国交省は施工不良を確認できたのが横浜のマンションだけとあって、「不安をあおりかねない」などと調査拡大に慎重な意見が多かった。
 原因究明と再発防止策を検討する国交省の有識者委員会が動きだして早速、調査対象を広げる意見が出たのは当然である。
 有識者委は年内に中間報告をまとめる。地震国に暮らす住民の不安を拭える内容にしなければ、あまり意味がないだろう。
 横浜の傾斜マンションを施工した三井住友建設は先週の記者会見で、管理責任を認めて謝罪した。一方、「落ち度は必ずしもあったわけではない」と述べた。
 元請け責任の明確化は、有識者委が検証する焦点の一つとなる。現場を信頼して任せきりにする。それが許されなくなったことは、すでにはっきりしている。
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用語集
インスペクター制度


http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/words/20061020/500304/
工事の工程ごとに第三者による検査を行い、不備や不良個所がないことを確認したうえで次の工程に進むことを義務付ける制度。設計者でも施工者でもない第三者が、建築主に直接、雇われて検査するのが特徴である。
 米国カリフォルニア州では、1933年のロングビーチ地震を機に、37年に制度ができ、UBC(Uniform Building Code)に規定されている。インスペクターには、州あるいは市の職員である公的インスペクターと、民間で州あるいは市に登録されたスペシャルインスペクターの2種類がある。公的インスペクターによる検査は、工事を6~8段階に分けて、各段階が終了するたびに、施工者がインスペクターに検査を求める。公共工事や一定規模以上の民間工事では、これに加えて、スペシャルインスペクターによる特別検査が必要になる。これは建築主がスペシャルインスペクターを直接雇用し、特別検査が必要な工事の施工中には常駐して、検査結果の報告書を建築主や市(州)、設計者に交付しなければならない。
 日本ではインスペクター制度に代わる制度として、行政による中間検査と完了検査の制度がある。以前は制度そのものの実効性が低く、あまり効果が上がっていなかったが、99年4月に国が「建築物安全安心推進計画」をまとめ、国が中間検査と完了検査の実効性を高める運動を展開。98年度には38%だった完了検査率を2002年度には68%にまで引き上げるなど、建築物の品質の確保に努めている。ただし、米国のインスペクター制度に比較すると、検査の頻度が少なく、欠陥建築物を防止する効果に乏しい。行政に比べて頻繁に検査を実施する民間ベースのインスペクターも登場しているが、業務を依頼する建て主は、欠陥住宅対策に強い関心をもつ一部の層に限られており、制度の普及にまでは至っていない。
[日経アーキテクチュア]
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