2015-12-15(Tue)

温暖化対策パリ協定 温室効果ガス排出量「実質ゼロ」 気温上昇1.5度未満に

国連気候変動枠組み条約 第21回締約国会議(COP21) すべての国参加で合意


----人類の未来を守るために、国際社会が歴史的な合意にたどり着いた。

パリで開かれていた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は、2020年以降の温室効果ガス排出削減の新枠組みを定めた「パリ協定」を採択し、閉幕した。

地球温暖化を食い止めるにはまだ不十分だが、2大排出国の米国や中国を含むすべての国が参加する合意となったことを歓迎する。
化石燃料に依存する現代文明からの転換点となることを期待したい。

パリ協定では、気候変動枠組み条約に加盟する196カ国・地域すべてが、各国の状況に応じて自主的削減目標を策定し、国内対策を実施することを義務づけた。

温暖化の悪影響を避けるため、産業革命前からの気温上昇2度未満に抑えることを目的に明記し、1.5度未満に収まるよう努力することを併記した。

世界全体の温室効果ガス排出量をできるだけ早く頭打ちにし、今世紀後半には実質ゼロにすることも掲げた。
各国は国連に提出した削減目標を5年ごとに見直し、世界全体の進捗(しんちょく)状況を検証する義務を負う。

こうした規定により、ひとまずは、世界全体で温暖化対策に取り組む道筋ができたといえる。
(毎日新聞)

朝日新聞)温暖化対策の新合意 危機感共有の第一歩だ(12/15)
読売新聞)パリ協定採択 世界全体で目標を達成しよう(12/15)
毎日新聞)温暖化対策パリ協定 地球規模で合意実行を(12/15)
日本経済新聞)低炭素社会へ変革を促すパリ協定 (12/15)
産経新聞)「パリ協定」採択 日本の知と技術で魂を 実効的な運用が成否の鍵だ(12/15)
東京新聞)温暖化対策パリ協定 さあ、舞台は整った(12/15)





以下引用



朝日新聞 2015年12月15日(火)付
社説:温暖化対策の新合意 危機感共有の第一歩だ


 「今日、私たちは人類にとって最大級の試練、気候変動に直面して、ここにいる。ツバルのような国の生き残りはこの会議の決定にかかっている」
 こんな悲痛な首脳演説で幕を開けたフランス・パリでの国連気候変動会議(COP21)が、2020年以降の地球温暖化対策に関する新しい国際枠組みでようやく合意に達した。
 複雑に絡む利害を反映し、各国が折り合いをつけた結果だけに、不足はいろいろある。
 それでも、平均気温の上昇を2度未満に抑えるというこれまでの目標だけでなく、「1・5度未満に抑えるよう努める」と明記した意義は大きい。
 二酸化炭素など温室効果ガスの排出をできるだけ早く減少に転じ、今世紀後半には森林や海による吸収以下にする「実質ゼロ」の長期目標も盛り込んだ。
 「数カ月前まで考えられなかった」と環境団体も驚く。
 2度と1・5度では温暖化による海面上昇で決定的な差が生じるという数値予測がある。国土の水没を恐れるツバルなど小さな島国の懸命な訴えを、大国も軽んじられなかったのだ。
 6年前に温暖化交渉は一度決裂した。だがその後、先進国を含む世界各地で記録的な熱波や大雨、干ばつ、強烈な嵐など気象異変が相次ぎ、多くの人々が気候変動への懸念を強めたことが交渉の原動力になった。
 ■京都議定書を超えて
 核兵器による突然の破滅が人類にとって急性疾患とすれば、温暖化はじわじわと苦痛や危機をもたらす慢性疾患といえる。
 合意された排出の削減や抑制は自主的な取り組みとはいえ、途上国も参加する。先進国だけに削減を義務づけた京都議定書から大きく前進した。
 温暖化への危機感を世界が共有して踏み出す第一歩である。
 世界が地球益の下に結束して「共通だが差異ある責任」を果たそうと誓ったのがパリ協定であり、各国は様々な被害軽減などにもこぞって乗り出す。
 今回の最大の推進役は、皮肉にも共和党政権下で京都議定書を離脱した米国だった。
 オバマ民主党政権は、首脳会談を通じて世界最大の排出国になった中国やインドを巻き込んだ。さらに、削減機運を高めようと島国や欧州連合(EU)などがつくった「野心連合」に電撃的に参加を表明し、合意への流れを確実にした。
 来年の大統領選もにらんだ積極的な動きだった。
 ■後悔しない政策を
 米国の共和党支持層には温暖化懐疑論が根強い。
 確かに温暖化の研究は進んでいるが、完璧には程遠い。人類の知恵が十分及ばぬほど地球環境システムは複雑だからだ。
 だが産業革命以後、石炭や石油などの化石燃料を人類が大量に燃やし始め、大気中の二酸化炭素が急速に増えたことは確かだ。この濃度の急上昇により、近年の温暖化は説明できる。
 この先も二酸化炭素濃度が上がれば気温も上がると予想される。しかし、どのぐらいの濃度になると何度気温が上がると正確に予測する精度はない。
 さらに言えば、温暖化の原因はほかにあるかも知れない。それでも、国際社会は現時点では温室効果ガスが最も疑わしいと判断し、排出削減で温暖化を抑えようと決意したのである。
 温暖化の科学に不確実さがあっても、将来に向けて「後悔しない政策」を選択したのだ。
 ■日本も決意が要る
 そんな決意の乏しい日本政府は、パリでほとんど存在感を示せなかった。米国の野心連合参加も寝耳に水だったという。
 会場の展示で各国は競うように自国の立場をアピールした。だが、日本のブースは四方を壁で囲っただけの空間。世界の流れに目や耳をふさぐかのような、象徴的な造りだった。
 世界は脱化石燃料・脱炭素社会に大きくかじを切る決意をした。今回、長期目標が従来よりずっと野心的なものになったことで、世界経済の潮流も急速に変わっていくだろう。
 国内総生産で世界3位、ガス排出量でも5位の日本が、この変化に受け身のままでいいはずがない。社会や産業の構造を、もっと積極的に脱炭素に切り替えていくべきである。
 パリ協定は高い目標を掲げたとはいえ、達成の道筋や仕組みの検討はこれからだ。日本は政府も企業も様子見をやめて、今後の過程で貢献することが重要だ。ここで追いつかなければ、まさに化石になりかねない。
 協定が変革を迫っているのは政府や企業だけではない。
 家庭や自治体、さらには社会も、従来のエネルギー多消費型から省エネを考えたものに変わっていかなければいけない。
 海外に比べて日本で弱いのは、個を超えた共同での省エネ化だ。個人や家庭、企業がつながることで、無理なく、より効率的に省エネが進む。
 案じるよりも、みんなで一歩を踏み出す決意を持ちたい。
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読売新聞 2015年12月15日 03時31分
社説:パリ協定採択 世界全体で目標を達成しよう


 全ての国が温室効果ガスの排出削減に努める体制に合意できたのは、地球温暖化対策の重要な前進である。
 パリで開かれていた国連気候変動枠組み条約の第21回締約国会議(COP21)が、2020年からの新たな枠組みとなる「パリ協定」を採択した。
 1997年採択の京都議定書では、先進国のみが削減義務を負ったが、今回は全締約国が自主目標を基に削減を図る。目標達成を義務づけない緩やかな枠組みとする一方で、各国は5年ごとに目標を見直し、一層の削減を進める。
 平均気温の上昇は、産業革命前に比べて「2度を十分下回る」ことを目指す。温暖化の影響が大きい島嶼国が求めた「1・5度未満」も努力目標として言及した。いずれも高いハードルだ。
 各国が目標をどれだけ達成し、さらに引き上げられるか。パリ協定の実効性が問われる。
 世界全体の排出量を減らすカギとなるのは、新興国の取り組みだ。中国やインドなどは「1人当たりのエネルギー消費は少なく、我々は途上国だ」と主張した。
 だが、中印両国は既に世界1、3位の排出大国だ。相応の責任を果たすため、自主目標の達成にとどまらず、一層の削減に努力することが求められる。
 会議で、途上国は「先進国が化石燃料を大量に消費して豊かになった」として、資金援助や技術移転の強化を求めた。
 協定は、途上国支援を先進国の義務としたが、額の明示は見送った。年1000億ドルの支援を20年以降、上積みすることは、拘束力のない別の文書に盛り込まれた。合意を優先した途上国の現実的な判断は評価できる。
 大切なのは、支援を温暖化対策に確実につなげることだ。透明性を確保し、効果を検証できるシステムを構築する必要がある。
 日本は、途上国の省エネ策を支援し、削減された排出量の一部を自国分に算入できる「2国間クレジット制度」を提唱した。この制度が協定に採用されたのは、日本の外交努力の成果だ。
 日本は既に、モンゴル、バングラデシュなど16か国と提携している。途上国の省エネ支援は、国内対策よりも費用対効果が大きい。積極的に拡大するべきだ。
 日本の削減目標は、30年度に13年度比で26%減だ。石炭など化石燃料への依存を改めねばならない。原発の再稼働と新増設を進め、再生可能エネルギーの発電コストを下げることが重要である。
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毎日新聞2015年12月15日 02時30分
社説:温暖化対策パリ協定 地球規模で合意実行を


 人類の未来を守るために、国際社会が歴史的な合意にたどり着いた。
 パリで開かれていた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は、2020年以降の温室効果ガス排出削減の新枠組みを定めた「パリ協定」を採択し、閉幕した。地球温暖化を食い止めるにはまだ不十分だが、2大排出国の米国や中国を含むすべての国が参加する合意となったことを歓迎する。化石燃料に依存する現代文明からの転換点となることを期待したい。
すべての国参加に意義
 パリ協定では、気候変動枠組み条約に加盟する196カ国・地域すべてが、各国の状況に応じて自主的削減目標を策定し、国内対策を実施することを義務づけた。温暖化の悪影響を避けるため、産業革命前からの気温上昇2度未満に抑えることを目的に明記し、1.5度未満に収まるよう努力することを併記した。
 世界全体の温室効果ガス排出量をできるだけ早く頭打ちにし、今世紀後半には実質ゼロにすることも掲げた。各国は国連に提出した削減目標を5年ごとに見直し、世界全体の進捗(しんちょく)状況を検証する義務を負う。
 こうした規定により、ひとまずは、世界全体で温暖化対策に取り組む道筋ができたといえる。
 1997年採択の京都議定書は、先進国にのみ温室効果ガスの排出削減を義務づけた。「温暖化の責任は先進国にある」とする途上国の主張を反映した結果だが、米国は経済を損なうとして途中から離脱した。
 一方で、中国やインドなどの排出は急拡大し、議定書は実効性を失っていた。
 しかし、温暖化の脅威は人類にとって共通の課題であり、特定の国の努力だけでは解決できない。京都議定書で見られた、先進国と途上国で取り組みを分ける単純な二分論を排し、全員参加型の枠組みとなった点にパリ協定最大の意義がある。
 パリで起きた同時多発テロは温暖化対策でも世界の団結を促した。オランド仏大統領が「テロとの戦いと温暖化との戦いを分けることはできない」と訴えた通り、温暖化がもたらす異常気象や自然災害は貧困層を直撃する。それが難民や紛争発生につながり、テロの温床となる。そうした認識を世界が共有できた。
 途上国の参加を促すため、先進国も譲歩した。温暖化の被害軽減に向けた世界目標を設定することを約束し、先進国から途上国への資金支援義務化も協定に盛り込んだ。
 最後までもめたのは、資金支援の規模だった。先進国は、途上国が求める具体的な金額の設定には反対した。将来の財政支出を縛られることを嫌ったためだ。結局、数値目標はパリ協定に盛り込まず、法的拘束力のない別の文書に「年1000億ドルを下限に、新しい数値目標を25年までに設定する」ことを書き込んだ。
 議長国フランスの巧みな折衷案だったが、支援が滞れば途上国が反発することは確実で、先進国の今後の対応が問われる。中国など一定の経済力を持つ新興国も、支援への積極的な貢献が必要だ。
 COP21期間中、世界の主要企業のリーダーたちは、こぞって自社の大胆な排出削減計画を表明した。パリ協定採択を契機に、多くの世界企業が、脱炭素社会への移行へ向けた活動へとかじを切るはずだ。
日本は再エネ拡大急げ
 残念なのは、米国や中国への配慮で、各国が掲げる削減目標の達成自体は義務化されなかったことだ。
 米議会は温暖化対策に消極的な野党・共和党優位で、オバマ米大統領は、議会に諮らず批准できる緩い内容を探った。いまだに、途上国の立場を強調する中国も義務化には反対だった。
 180を超す国・地域が国連に削減目標を提出したが、国際機関の分析では、各国が約束を守っても「2度」目標は達成できない。各国が連携し、地球規模で削減目標を高めていかなければ、温暖化の危機は回避できない。特に米中の責任は重い。
 当面は、協定を早期に発効させ、削減目標の達成状況を5年ごとに検証する制度を効果的に運用していくべきだ。
 日本政府は、温室効果ガスの排出量を30年までに13年比で26%削減する目標を国連に提出した。安倍晋三首相はCOP21で、目標の着実な実施や途上国への資金支援の拡大などを約束した。政府は今後、パリ協定批准に向けて、削減目標達成の具体策を示す地球温暖化対策計画を新たに策定する。
 化石燃料に依存しないエネルギーシステムの構築は、日本にとっても技術開発のチャンスであり、経済面からも環境面からも重要だ。
 対策計画の策定に際しては、パリ協定が掲げた「今世紀後半の排出量実質ゼロ」に沿い、脱炭素化を見据えた長期的な視点での対策が求められる。国内対策を強化してこそ、国際交渉での発言力も増す。
 まずは、再生可能エネルギーと省エネの一層の拡大に力を注ぐべきだ。安倍政権は、原発再稼働路線を進めているが、脱原発依存と環境対策の両立を図ることが、福島第1原発事故を経験した国としての責務である。
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日本経済新聞 2015/12/15付
社説:低炭素社会へ変革を促すパリ協定


 地球温暖化の抑止を目指す国際協力の新たな仕組みである。パリで開かれた第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で、京都議定書に代わる「パリ協定」が採択された。
 協定には温暖化ガスの二大排出国である中国と米国を含む196カ国・地域が加わる。それぞれの能力に応じて温暖化ガス排出削減の責務を担う。先進国だけが削減義務を負っている京都議定書に比べ、対策の実効性と公平性の面で大きな前進だといえる。
温暖化対策は事業機会
 地球の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度未満、できれば1.5度までに抑える、という目標をパリ協定は掲げた。南極の氷床融解など後戻りできない環境の変化を防ぐためだ。
 協定により、世界は化石燃料の使用に強い制約を受けることになる。大切なのは、エネルギーの効率的な利用や自然エネルギーの活用で二酸化炭素(CO2)の排出を減らす「低炭素社会」の実現を着実に進めることだ。
 様々なレベルで変化はすでに始まっている。インド政府は高効率の発光ダイオード(LED)照明を国民に低価格で提供し「照明革命」を進めている。モディ首相はパリで太陽光発電の拡大に1兆ドルを投じるとも発表した。
 米カリフォルニア州は1人当たりのCO2排出量が約12トンと日本(約10トン)より多いが、同州政府は電気自動車などの普及によって2050年までに2トンに減らす目標を掲げている。
 大手保険会社の独アリアンツは、化石燃料の多消費型産業から資金を引き上げ再生エネルギーなどへ振り向ける方針だ。
 欧米の投資家や年金基金はパリ協定を投資機会とみる。低炭素社会を築くには、交通や電力供給網などのインフラからエネルギー効率の高いものに切り替えていく必要がある。そのために必要な資金は30年までに少なくとも約90兆ドルと試算されている。
 いうまでもなく、課題は多い。パリ協定は「全員参加」を優先して参加国を拘束する力を弱めた。削減目標を定めたうえで国内対策につとめるよう義務付けるが、達成を強制はできない。
 しかも目標は自主申告でよい。これまでに各国が示した対策では「2度未満」という目標を達成するのにも足りないのが現実だ。
 そのため協定は5年ごとに各国の目標を見直し対策を強化する仕組みを盛り込んだ。世界全体の目標をトップダウンで決め、達成手段ではボトムアップの現実的な道を選んだわけだ。
 この違いは将来、各国が互いに責任を押しつけ合う対立の火種になる恐れもある。協定の成否は、日本を含めて排出量の多い国々の削減努力にかかるだろう。今の技術だけでは足りず、さらなる技術革新も欠かせない。
 1997年に京都議定書を採択した際、日本は議長国として世界を主導した。「京都」は米国の離脱などで実効性を失ったが、失敗ととらえる必要はない。パリ協定は「京都」の挑戦を踏まえて生まれたといえるからだ。そのことに日本人は誇りを持っていい。
 多くの日本企業は環境保全を社会的な責任ととらえ温暖化対策にも誠実に取り組んできた。技術力を生かした地道な問題解決が日本企業の真骨頂であり、その姿勢は海外で評価されている。
弱者を襲う気候の異変
 ただ自分の庭をきれいにすることは熱心でも、世界全体のありようを変えようとする発想には乏しいようにもみえる。
 欧米企業は政府や非政府組織(NGO)と手を組み、低炭素社会への変革のルールづくりを主導しようとしている。温暖化の危機を事業拡大の好機と考えるからだ。温暖化は国境を超えた課題であり、迅速な対応も必要だ。欧米企業に学ぶべきことは多い。
 すでに温暖化が原因と疑われる気象の異変や海面上昇が各地で起きている。まず打撃を受けるのは途上国の貧しい人々だ。温暖化は難民を生み格差を拡大する。成長と繁栄の妨げになる。
 だれにとっても温暖化はひとごとではない。日本国民も一人ひとりがエネルギーのむだ遣いを避けるなど、生活スタイルの見直しをこれまで以上に求められる。
 京都議定書採択の翌日、われわれは「世界にとっても、日本にとっても京都会議を新しい時代への一歩と位置づけることが求められる」と主張した。歴史的合意を受け、いま一度繰り返したい。パリでの合意を新しい時代への一歩としなければならない。


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産経新聞 2015.12.15 05:03
【主張】「パリ協定」採択 日本の知と技術で魂を 実効的な運用が成否の鍵だ


 地球温暖化防止を目指し、世界の国々が二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの排出を減らしていくための目標や道筋などを取りまとめた「パリ協定」が採択された。
 国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)に集った196カ国・地域の代表による討議と数年来のCOPの積み上げによる歴史的合意への到達だ。
 京都議定書の採択から18年ぶりの国際枠組みの誕生である。先進国と途上国の立場の差を乗り越え、すべての国が温室効果ガスの削減に取り組む体制を築いたことが大きな前進だ。
必要高まる原発再稼働
 地球を守る仕組みはできた。実効的な運用で、破局的な気温上昇を回避したい。
 パリ協定は、2020年以降、現行の京都議定書に代わって世界のCO2削減に生かされる。
 京都議定書の下で、途上国は最大排出国の中国を含めて削減義務を負っていない。米国も離脱しており、一部の先進国のみによる限定的な削減となっていた。
 加えて、途上国からの排出が世界の6割まで急増し、効果は著しく低下していた。
 これに対し、パリ協定では途上国も米国も削減に参加する。各国は自主的な削減目標の作成義務を負う。京都議定書と異なり、目標達成の義務や未達成に対する罰則をなくしたために、全員参加を可能にしたのだ。
 この自主目標方式は、日本の経済界が1990年代後半から実施してきた「自主行動計画」の国際版である。日本の取り組みの先進性に胸を張りたい。
 さらに言えば、今回のパリ協定への大きな流れの形成にも日本が関与している。日本は矛盾の目立ち始めた京都議定書の「第2約束期間」に参加しなかった。この不参加こそが新たな枠組み作りへの扉を押し開く力になったのだ。
 多くの点で前進したパリ協定だが、強制力が緩やかであるための問題も見えている。
 全ての国と地域から提出された削減目標を合わせても、今世紀末までの気温上昇を、2度未満や、さらに望ましい1・5度以内に抑えることは難しい見通しだ。
 この点は、これまで削減に背を向けてきた2大排出国の中国と米国に一層の努力を求めたい。
 中国の目標は2030年ごろまで排出増加を続けると公言しているのに等しい内容なので、なおさらだ。日本は「13年度比で26%削減」を目標に掲げているが、原発の再稼働や40年を超えての運転延長などが進まなければ、達成は難しい。原子力規制と地球環境との調和が必要だ。
厳密な検証欠かせない
 世界規模での削減促進には、中国やインドなどの大量排出国のエネルギー統計の整備と公表の迅速化が急務である。
 両国の統計は10年遅れといわれる。これでは温暖化対策に生かせない。信憑(しんぴょう)性でも懸念がある。今秋、米紙によって報じられた中国のCO2排出量の過少発表は、億トン単位での規模だった。
 「測定・報告・検証(MRV)」の徹底という、取り組みの基本部分での改善が不可欠だ。
 温暖化問題では、常に途上国への資金援助が合意到達への壁となる。COP21でも「温暖化は先進国の責任」とする主張が途上国側から繰り返された。
 またぞろ資金援助要求の大合唱である。これではCO2の削減交渉か、それとも援助額の上積み交渉なのか分からない。
 「世界の温室効果ガスの排出を早期に減少させる」こともパリ協定の主要目標だ。CO2の排出を海や森林による吸収可能範囲に抑えることで今世紀後半の大気中での増加ゼロを目指す。
 この目標達成には優れた環境技術を途上国に広める一方、CO2削減量の一部を技術提供国の実績とする「二国間クレジット制度(JCM)」の活用が有効だ。
 日本生まれの制度だ。定着すれば国境の枠を超え地球規模で大幅削減への道が開ける。今世紀末の気温上昇を産業革命前から1・5度以内に抑えるという目標もJCMの普及と、中国、米国の大幅削減があれば可能性が高まろう。
 京都議定書は米国の離脱で骨抜きになった。パリ協定の日本の批准は、米国と中国の実施を確認してからにしたい。国際交渉では、歴史からの学びが重要だ。
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東京新聞 2015年12月15日
【社説】温暖化対策パリ協定 さあ、舞台は整った


 京都議定書に代わる二〇二〇年からの温暖化対策ルール、「パリ協定」が難産の末採択された。さあ、世界共通の舞台はできた。本番は、これからだ。
 COP21の開会直前、国連世界気象機関(WMO)は、今年は世界の平均気温が過去最高になり、来年はさらに上昇するとの見通しを公表した。
 今年一月から十月までの地上の平均気温は、産業革命以前の一八八〇年から九九年の平均よりも、すでに一度高いという。
 会議最終日になるはずだった十一日、日本には台風並みの低気圧が接近し、何かを暗示するように“真冬の嵐”が吹き荒れた。
 その日三重県では、史上初めて、十二月の「夏日」を記録した。
◆異変はもう起きている
 事ここに至ればもう誰も、気象異変を疑うまい。そして、その要因が人間の営みにあることも。
 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新の報告は、地球の平均気温は二一〇〇年までに最大五・四度上昇すると、警告を発している。
 それをひとまず二度まで抑えよう、抑えなければならないという、国際社会の合意はすでにできていた。「二度以上」の世界で、人はまともに生きられない。
 殺人的な熱波や干ばつ、洪水や感染症の被害がまん延する社会になる。欧米などの先進国も、例外ではあり得ない。
 それもすでに始まっている。
 米フロリダ半島沿岸にあるケネディ宇宙センター。スペースシャトル打ち上げの舞台になった最新の科学の拠点が、温暖化による海面上昇で、水没の危機にある。
 仏ボルドーでは今年、ブドウの収穫が例年より半月以上早まった。温暖化がこのまま進めば、世界の主要産地の最大約七割が、ワイン造りに適さなくなるという。
 私たちはすでに、歴史的な常識が通用しない世界に足を踏み入れていた。
◆米中がリードした
 米国は世界第二位の温室効果ガス排出国。欧州連合(EU)は第三の排出地域である。
 世界一の排出国、中国の首都北京には七日、最悪の大気汚染を表す「赤色警報」が発令された。
 目に見える黄色い大気汚染とともに、目には見えない温室効果ガスの脅威が忍び寄る。このままではいけないと、米国も中国も、先進国も途上国も、共通だが差異ある不安を感じていたに違いない。
 だからこそ、条約に参加する百九十六カ国・地域のほとんどが、温室効果ガスの削減目標を携えて会議に臨んでいたのである。
 南北共通の危機感を背景に、パリ協定は何とか採択された。京都議定書は先進国だけに対策義務を課していた。温暖化という共通の課題に向けて、五年後に、世界は初めて同じ舞台に立つ。
 パリ会議は歴史的な成果を挙げたと言えるだろう。
 気温上昇二度未満、できれば一・五度に抑えるという当面のゴールをめざし、国連に提示した自主目標の達成に、それぞれ挑む。「今世紀後半までに温室効果ガス排出ゼロ」も盛り込んだ。
 だが、とりあえず舞台ができただけである。本番はこれからだ。
 自主目標がすべて達成されたとしても、二一〇〇年までに、地球の気温は三度近くも上がると言われている。各国の“野心”を早く大きく引き上げないと、人類の未来はひらけない。
 パリ会議はもう一つ、大きな変化を国際社会に実感させた。
 旧来の交渉では、石油や石炭の消費を抑制されるのは、“損”だと考えられてきた。
 ところが今や、風力や太陽光など再生可能エネルギーの価格が大きく下がり、早く再エネに切り替えて脱炭素社会を築いた方が、経済的にも“得”になるという考え方が主流になってきた。
 各国の自主目標にも、それが反映されている。
 その点日本は対応が鈍すぎる。
 会議に参加した国際環境NGOの間では、パリ会議における日本の存在感は“薄い”ではなく“ない”との評価も聞こえてきた。
 先進国の責任を厳しく追及し、交渉の進展を阻んだインドさえ、自主目標を達成するため、水力を含む「非化石エネルギー」の割合を発電量の四割に増やすという。
◆再エネの風に乗らねば
 石炭火力や原発に執着し、再生エネ導入に消極的な日本は、世界から温暖化にも後ろ向き、危機感の薄い国だと見られている。
 平均気温が四度上がると、東京、大阪、名古屋だけでも千七百万人以上の居住地域が、海面下に沈むという研究成果もある。
 時代は変わった。
 脱化石燃料、再エネ導入の流れにまず乗らないと、日本はスタートダッシュで出遅れる。
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