2015-12-14(Mon)

軽減税率? ① 8%・1兆円 増税せず据え置くだけ

10%増税しなければ---  ごまかしの増税論議 

<各紙社説>
朝日新聞) 軽減税率 原点を忘れた政治決着 (12/13)
読売新聞) 軽減税率 円滑導入で増税の備え万全に (12/13)
毎日新聞) 軽減税率で与党合意 「欧州型」への第一歩に (12/13)
北海道新聞) 軽減税率 党利党略で理念ゆがむ (12/13)
河北新報) 軽減税率論議/なおざりにされた導入目的 (12/12)
信濃毎日新聞) 軽減税率導入 低所得者の対策どこへ (12/11)
中国新聞) 軽減税率 財源確保の議論を急げ (12/11)
沖縄タイムス) [軽減税率合意]選挙対策で本質ゆがむ(12/14)
琉球新報) 軽減税率導入 税制全体の見直し議論を (12/11)




以下引用



朝日新聞 2015年12月13日(日)付
社説:軽減税率 原点を忘れた政治決着


 政策の原点を忘れ、打算と駆け引きに終始した政治決着というほかない。
 消費税率を10%に上げる際に導入する軽減税率について、自民、公明両党の協議が、迷走の末に決着した。
 生鮮か加工かを問わず食料品全般の税率を8%にすえ置く。税収の目減りは年1兆円に及ぶが、どう穴埋めするか、痛みを伴う具体策は先送りした。
 軽減税率論議を主導したのは公明党だった。来夏の参院選で公明党・創価学会の支援を重視する首相官邸が、軽減税率に慎重な自民党税調を押しきる構図で、減税の対象と金額がつぎつぎと積み上がっていった。
 深刻な財政難のなか、消費増税に伴う低所得者対策に知恵を絞るという課題を果たしたとはとても言えない。
 消費増税を含む「社会保障と税の一体改革」の内容を、改めて思いおこしたい。
 国の借金は1千兆円を超え、今年度も財源不足を埋める新規国債を三十数兆円も発行する。高齢化などで社会保障費の増加が止まらないのが主な理由だ。
 次世代へのツケを少しでも減らし、今を生きる私たちの社会保障も強化する。その財源の柱として国民全体が担う消費税を増税し、税収はすべて社会保障分野にあてる――。それが一体改革の骨格である。
 ただ、消費税には、所得が少ない人ほど負担が重くなる「逆進性」があり、それをやわらげる対策が欠かせない。
 軽減税率は消費者に分かりやすい半面、高所得者まで恩恵を受けるため、税収の目減りが大きい割に効果が乏しい。自公両党はそんな軽減税率の限界を承知していながら、線引きをめぐる攻防に明け暮れた。
 生鮮食品だけという自民の当初案に公明が反発し、菓子と飲料を除く加工食品を加えることに。その後、菓子・飲料にも対象は広がり、一時は外食を含む案まで検討された。
 税収減の穴埋めに、低所得者に医療や介護の窓口負担で上限を設ける総合合算制度をやめて4千億円を捻出する。低所得者対策の一つを犠牲にするとは驚くが、残る6千億円は手つかずのままだ。
 今の世代が直接恩恵を受ける軽減税率の財源を、将来世代への負担の先送りである国債発行に頼ってはならない。
 自公両党は「安定的な恒久財源を確保する」とうたった。社会保障を含む給付を削るのか。負担増に踏み切るのか。政権与党としての責任感が残っているかどうかが試される。
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読売新聞 2015年12月13日 03時00分
社説:軽減税率 円滑導入で増税の備え万全に


 ◆安定財源確保へ検討を深めよ◆
 新制度の円滑な導入を図り、増税の備えに万全を期さねばならない。
 自民、公明両党が、軽減税率の制度設計で大筋合意した。2017年4月に消費税率を10%へ引き上げる際、同時に導入する。
 酒類・外食を除く生鮮食品と加工食品を対象とし、税率は8%に据え置く。軽減規模は年1兆円に上る。軽減税率には、低所得者を中心に痛税感を和らげ、家計を支える効果が期待される。
 与党が意見対立を収め、合意に漕ぎ着けたことは評価できる。
 ◆首相官邸が公明に配慮
 消費税の増収分は全額、社会保障費の財源に充てられる。少子高齢化の進行で、予算規模がこれからも増え続けるのは必至だ。
 厳しい財政事情を考慮すれば、一層の消費税率の引き上げを視野に入れざるを得ない。軽減税率の導入で、生活必需品を増税から切り離し、将来の再増税に備えられる制度となる意義は大きい。
 協議の難航は、対象の線引きを巡る溝が深かったためだ。
 当初、生鮮食品に限ると主張していた自民党は、途中から公明党の加工食品を含める案をのんだ。さらに外食も加えるよう求め、混乱が生じた。
 外食を含めると、高級飲食店などの利用が多い高所得者への恩恵が手厚くなりすぎるとの異論も出て、外食を除く案で決着した。
 最終的に自民党が歩み寄ったのは、来年夏に参院選を控え、公明党との選挙協力を重視する首相官邸の意向が働いたからだ。
 加工食品には、パンや麺類など食生活に不可欠な商品が含まれる。日常的に購入する食品を対象とする大筋合意を歓迎したい。
 与党は今後、食品以外の対象品目の協議を続ける考えだ。
 海外では、軽減税率を採用する大半の国が、食品と並んで新聞や出版物を対象にしている。
 新聞と出版物は、民主主義の発展や活字文化の振興に貢献してきた。単なる消費財でなく、豊かな国民生活を維持するのに欠かせない公共財と言える。
 こうした社会的役割を踏まえ、日本でも、新聞と出版物に軽減税率を適用すべきである。
 与党は、請求書に税額や税率を記入するインボイス(税額票)の採用を、21年度から事業者に義務づける方針も決定した。
 ◆税額票の採用は当然だ
 税率が複数になると、標準税率の売り上げを軽減税率の取引だと偽り、事業者が税金の一部を手元に残す行為が頻発しかねない。
 こうした不正を防ぐうえで、インボイスの採用は当然だろう。
 与党合意を受けて政府は、軽減税率の導入に向けた準備作業を着実に進める必要がある。
 店頭で消費者や事業者が戸惑うことのないよう、対象の線引きや様々な事例への対処法を明示し、周知徹底を図らねばならない。
 外食は対象外だが、ファストフード店内での食事と持ち帰りをどう区別するかといった疑問が生じかねない。簡明なガイドラインなどを設けることが大切だ。
 レジの改修費補助や新たな会計方式を習得するための研修など、中小・零細店の対応を支援する取り組みも重要になる。
 気がかりなのは、軽減税率導入の財源をどのような手段で手当てするか、まだ目処が立っていないことだ。
 今は、増税時の低所得者対策に回す予定だった4000億円を充てる方針だけが決まっている。
 自民党は社会保障費の枠内でのやり繰りを主張してきたが、医療や介護などに過度な影響を及ぼすのは望ましくない。社会保障以外の歳出抑制や他の税収を活用できないか、議論を深めるべきだ。
 自民党の谷垣幹事長は「財政健全化目標を堅持する。安定的な恒久財源の確保に責任をもって対応する」と強調した。公明党が提唱する、たばこ増税案などの検討も続けてもらいたい。
 ◆益税拡大は許されない
 消費者が支払った税金が事業者の手元に残る「益税」の取り扱いも、残された課題である。
 軽減税率の導入後も、現行の小規模事業者の免税制度や、納税の計算を簡単にする簡易課税制度は存続することが決まった。
 現在の益税規模は年6000億円にも上ると試算される。税率引き上げで、さらに規模が膨らむ事態は避けられない。
 消費者に増税を強いる以上、益税は縮小するのが筋である。逆に拡大を許してしまうのでは、国民の納得は得られまい。
 与党は益税の見直しについて、より真剣に検討すべきだ。
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毎日新聞2015年12月13日 
社説:軽減税率で与党合意 「欧州型」への第一歩に


 消費税率を10%に引き上げる2017年4月から導入する軽減税率制度について、自民、公明両党がようやく合意した。税率を8%に据え置くのは、生鮮食品と飲料、菓子を含めた加工食品にまで広げた。
 何のための軽減税率か、消費税のあるべき姿は、との原点を考えた場合、生活必需品を広く対象とする欧州の例が参考になる、と私たちは主張してきた。今回の合意は、こうした「欧州型」の制度に近づける一歩になったと言える。だが、大事な議論と課題は積み残したままだ。
 欧州では、消費税にあたる付加価値税の税率が20%台の国が多い。
生活必需品広く検討を
 そして、ほとんどの国が当初から生活に欠かせない食品などに軽減税率を導入している。水道代や医薬、衣料、子ども用品、文化・教育関係などで、軽減税率やゼロ税率を適用する国も少なくない。
 こうした欧州にならえば、軽減税率の原点は「暮らしに深くかかわる品目への課税は低く抑える」という低所得者への配慮とともに、消費税を持続可能な税として定着させることにあると言える。
 わが国の消費税は、高齢化に伴って膨らみ続ける社会保障の貴重な財源である。10%への引き上げで賄えるとは思えず、段階的な引き上げが避けられそうにない。
 そう考えれば今後、痛税感を和らげる効果のある軽減税率を食品以外の生活必需品に広げるのは、消費税を浸透、定着させていくうえで不可欠だろう。与党はこの合意で終わらせず、議論を深めてほしい。
 また、与党間では新聞も対象にするよう調整しているという。欧州では書籍類も含め、「知識には課税しない」という考え方が定着しており、日本でもそれをふまえた制度設計が望ましい。
 ところで、軽減税率の対象が決まった結果、導入しない場合と比べ年約1兆円税収が少なくなり、埋め合わせる財源が必要になる。これまでの与党の議論では4000億円は確保できるという。残りの6000億円は導入まで1年以上あるとはいえ、宙に浮いている。
 協議の終盤で外食を対象に含めるかどうかでもめて時間を空費したが、本来は財源の議論にこそ時間を割くべきだった。「与党が責任をもって対処する」と言っても、心もとない。財源については、消費税の使い道である年金や医療などの社会保障費の中身を聖域化せず見直すことが欠かせない。
 たとえば医療分野での薬剤費の削減だ。新薬に比べて半額となる後発薬「ジェネリック」の使用を促したい。日本は後発薬シェアが4割台になったが、先進各国の7〜9割に比べ低い。20年度までに8割以上という政府目標が実現できれば、1兆円以上削減できるとも言われる。
 ただし、そもそも社会保障の財源として消費税収は一部にすぎず、「消費税が減収になるならば、その分は社会保障費を削って穴埋めしなくてはいけない」という論法にこだわりすぎるのはおかしい。他の税収をあてたり、社会保障以外の歳出を見直したりする道を探るべきだ。
 その場合、一時浮上した「たばこ税の増税」も一つの選択肢だろう。「1本1円の増税で1500億〜1700億円程度の財源を生む」との試算もある。17年度税制改正で検討しなくてはいけない課題だ。
益税を生む構造見直せ
 視点を変えると、消費者が払った税の一部が事業者の手元に残る「益税」を縮小させることも、結果的に財源確保につながる。軽減税率が定着している欧州各国では、事業者が正確に納税するため、税率と税額の明細を書いた「インボイス」をやりとりしている。日本でも、益税の余地を狭めて適正な納税を促すため、インボイスは不可欠な制度だ。
 今回、与党はインボイスの発行を事業者に義務付けることを決めた。ただ、導入は2段階とし、17年4月から4年間は経過措置として今の請求書に近い「簡易方式」で、厳密なやり方を義務付けるのは21年4月までずれ込む。
 問題は、中小企業への配慮が手厚い点にある。売上高が1000万円以下の企業に納税を免除する制度は存続し、税率が上がることで益税の額は膨らみそうだ。また売上高5000万円以下の企業には、「みなし」で納税額を決めればよい特例を設ける。10日間の販売実績を基にして売上高に占める軽減税率の品目の割合を推計し、1年分の納税額を計算するという。新たな益税を生みかねないどんぶり勘定ではないか。
 現状でも、「益税額は最大年間6000億円に上る」という試算があるほどだ。益税が拡大する方向に制度を変えるのではなく、縮小させるのが当たり前の対応だ。国民が払った消費税はきちんと国庫に納まり、社会保障の財源として将来に生かされなければならない。
 外食を除く食品全般が軽減税率の対象となる結果、線引きはわかりやすくなったと言える。企業の事務負担はさほど重くないはずだ。中小企業向けの優遇は廃止する方向を打ち出し、厳密な方式のインボイスの導入時期も早めるべきだろう。
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北海道新聞 2015/12/13 08:55
社説:軽減税率 党利党略で理念ゆがむ


 これは合意と呼ぶに値しない。財源の裏付けもなければ、制度の理念も生かされるか疑わしい。
 自民、公明両党はきのう、2017年4月に予定される10%への消費税率引き上げと同時に導入する軽減税率の対象を食料品全般とすることで合意した。
 納税額を正確に把握するため、品目ごとに税率などを記入するインボイス(税額票)は21年4月から導入する。
 ところが、約1兆円に上る財源は明示せず、導入直前の16年度末までに決めるというのである。
 多くの事業者がかかわり、導入時には混乱も予想される。財政にも大きく影響する制度の財源問題を先送りして、実施を約束するのはあまりに無責任だ。
 自公両党間では軽減税率の適用範囲をめぐる攻防が続いた。来夏の参院選での選挙協力を重視する安倍晋三首相の意向も受け、公明側が満額に近い回答を得た形だ。
 確かに、食品全般に適用するのは国民にわかりやすい。
 だが、これまでに確保できた財源は半分程度にすぎない。しかも、低所得者の医療、介護の自己負担を抑える「総合合算制度」の創設見送りで捻出された。
 これでは、低所得者の負担緩和という軽減税率の出発点が見失われたと言わざるを得ない。
 与党協議の経過も不可解だ。財源不足を理由に、適用範囲を狭く限定しようとした自民党が最終局面で、外食への拡大を提案した。
 対象の線引きの困難さは解消されても、必要な財源は1兆3千億円に膨らむ上、高級料理店の食事まで含まれてしまう。
 肝心の財源を棚上げし、理念も忘れた迷走ぶりは、選挙目当てと批判されても仕方あるまい。
 新たな財源として、たばこ増税が検討されているが、価格上昇で販売数量が減れば、税収は想定を下回る可能性がある。
 税収全体の上振れを期待する案に至っては論外だ。景気悪化で下振れすれば、赤字国債に頼ることになり、財政健全化に逆行する。
 公明党内には当初、高所得者への課税強化で財源を調達するという意見もあったはずだ。
 軽減税率の対象拡大を求めるのであれば、所得税や資産課税の強化を通じた所得の再分配により、弱者がしわ寄せを受けないように配慮するのが筋だろう。
 党利党略で制度の趣旨をゆがめてはならない。1年以上かけて財源を探すのなら、税制全体を見据え、白紙からやり直すべきだ。
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河北新報 2015年12月12日土曜日
社説:軽減税率論議/なおざりにされた導入目的


 来年夏の参院選をにらんだ選挙対策が優先され、本来の目的である低所得者支援をめぐる議論はなおざりにされた観が否めない。残念だ。
 2017年4月の消費税10%への引き上げと同時に導入される軽減税率制度をめぐる自民、公明両与党の税制協議である。その対象品目については大筋でまとまった。
 対象は、生鮮と加工の食料品全般で、外食を含めるかどうかを調整している。必要な財源規模は1兆円超になる。
 与党協議で自民は、手当てできる財源は限られており、対象は生鮮食品のみ、とかたくなだっただけに、結果として公明の主張がほぼ通ったことで対象はぐんと広がった。
 確かに、店頭で税率10%分を払うよりも「痛税感」はより和らごう。しかし、対象の品々は税率が据え置かれるだけで安くなるわけではない。食料品以外の日用品は2%分値上がりする。家計の負担が増すことに変わりはない。
 家計は8%増税や円安が招いた物価上昇に賃金が追いつかず苦しい。仕事をかけ持ちするシングルマザーら非正規で働く人たちはなおさらだ。
 そもそも軽減税率を導入しようとしたのは、消費税は所得が低いほど負担感が増すため、それを軽減する低所得者対策にあったはずだ。
 だが、議論の当事者たちはどこに視点を置き、税制を協議し調整をしてきたのか。
 消費税の増税は社会保障制度の維持・充実を図るとともに、先進国で最悪水準にある財政を立て直すのが目的だ。
 対象品目を広げることによって税収が減ることを避けたい自民党が重きを置いていたのは、財政の健全化である。
 幅広い品目での軽減税率導入を先の衆院選公約の「一丁目一番地」とする公明党も、税制協議がこじれ選挙協力にひびが入ることを懸念し公明案の丸のみを決断した首相官邸も、共に見据えていたのは参院選での戦いである。
 誰も低所得者のことなど念頭になかったのではないか。
 そのことを物語るのは、軽減税率導入で真っ先に合意された財源である。医療、介護を含め自己負担額に世帯ごとの上限を設け、家庭の支出を抑える「総合合算制度」の新設を取りやめることで捻出する約4千億円だ。
 社会保障充実策の一つで、主に低所得層の負担を和らげるための仕組みである。低所得者対策を口にするなら、その新設見送りはあり得ず、幅広い税制協議の中で、支援策がもっと議論されても何ら不思議はない。いや、議論するべきだったのではないか。
 財源規模が同じ約1兆円で、とんとん拍子に事が進んだ法人税減税を見るにつけ、その思いは強くなる。
 社会保障と共に税には持てる者から取り、持たざる者に分配する再配分機能がある。低所得層、貧困層の底上げを図る格差是正機能でもある。
 軽減税率導入に必要な財源の確保策は先送りされる方向だ。一方、この制度には低所得層以上に高所得層の恩恵が大きいとの批判がある。
 総合合算制度取りやめを白紙化し、再配分機能を十分に生かしながら、財源を軸に税制論議を深めるべきだ。
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信濃毎日新聞 2015年12月11日(金)
社説:軽減税率導入 低所得者の対策どこへ


 こうも食料品の値上げが相次ぐと、消費税率は低くしてほしいというのが庶民の願いだろう。
 2017年4月の消費税増税時に導入する軽減税率について尋ねた共同通信の世論調査では、対象品目が広がるほど支持が多い。
 品目をめぐり攻防を続けた与党協議は自民党が公明党の案をのむ形で合意する見通しだ。対象が広がると喜んでいいのだろうか。
 生鮮食品・加工食品をすべて含む公明案は税率8%だと年間約1兆円の税収減になる。減った分の穴埋めが課題だ。すでに約4千億円分は医療や介護にかかる低所得者の負担軽減策を見送って捻出することになっている。
 何のための軽減税率なのか。
 本来、税制の使命は所得と資産の再分配にある。ところが消費税は収入の低い人ほど負担感が重くなる欠陥「逆進性」を持つため、対策が必要だった。
 与党の論議は低所得者対策として始まった。一般に高所得者ほど食料品の購入額が多いので負担軽減になり、逆進性に対する効果は薄いことが分かっている。値の張る高級品を除くというなら効果も期待できようが、現実の区分は難しい。そもそも軽減税率の仕組みに頼ることに無理がある。
 しかも医療・介護負担の低所得者対策分を税収減の穴埋めに使うというのだから、政府・与党の決定は本末転倒だ。
 軽減税率で先行した欧州でも多くの問題が指摘される。よく言われるのは、一度始めると業界の既得権になり、是正したくても後戻りできないことだ。むしろ選挙の票目当てに使われ、品目が広がりやすい。税率10%段階での採用には慎重を要する。
 経済専門家には批判が多いことも踏まえておきたい。学者や弁護士でつくる「民間税制調査会」が格差是正や所得の再分配を重視した税制改革案を公表している。軽減税率は政治的にも理論的にも採用すべきでないとし、低所得者対策は減税と現金支給を組み合わせた「給付付き税額控除」を優先するよう提言した。
 もともと弱者を支える社会保障費が足りないからと消費税を増税すること自体に矛盾があった。再分配機能を強化し公平性を高めることこそが求められる。
 与党協議は安倍晋三首相の指示で合意に向かった。来年の参院選対策の色合いが濃い。財政再建の見通しも一段と厳しくなる。最後に人気取りのツケを払うのは国民であることを忘れてはならない。
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中国新聞 2015/12/11
社説:軽減税率 財源確保の議論を急げ


 消費税率が10%に上がる予定の2017年4月まで、あと1年3カ月余り。軽減税率の対象をどこまで広げるか、難航していた自民党と公明党の協議がようやく合意に近づいている。
 生活必需品として8%に据え置くのは生鮮食品のほか、外食や酒類を除いた加工食品全体にする線で最終調整が進む。このまま合意されれば、公明側の主張を丸のみした格好になろう。
 これで必要な財源は1兆円規模という。とてもめどが立たないと難色を示してきた自民の谷垣禎一幹事長らに対し、公明への配慮を優先する官邸の強い意向が及んでいるのは間違いない。事実上の安倍晋三首相の裁定だとの見方もある。
 消費税が最初に3%で導入されたのは1989年である。所得が低いほど負担感が強まる逆進性という欠点が、ずっと指摘されてきた。今回、曲がりなりにも軽減税率が実現すれば日本の税制史上の転機となり、少なからぬ意味を持つだろう。
 景気の先行きに不透明感が漂う中、大方の消費者の視点からすれば軽減税率の対象は妥当なところではないか。コメや野菜など生鮮食品だけなら、いかにも中途半端で増税負担感を和らげられるかは見通せない。なお線引きには課題は残るものの、食品全体に広げることで制度としてはすっきりする。
 ただ将来にわたって歳入に穴をあけるだけに、慎重かつ十分な議論をしておくプロセスは欠かせない。その割に与党協議は確かに拙速感が拭えない。来年の参院選などの選挙協力を意識して公明の顔を立てたい官邸の強引さがにじむ一方、制度設計は生煮えのままだからだ。
 ここは目先の政治的思惑よりも逆進性対策という軽減税率の本質をまず腹に落としたい。
 持続可能な社会保障を考える上で、将来の再増税は避けられないとの声もある。その点を考えても、今まさに残された課題の議論を急ぐ段階といえる。
 一つは小売り現場の懸念にどう応えるか。異なる税率が併存して品目ごとの帳簿処理が必要となる。食品全体なら全国800万の事業者の多くが関係し、負担増は必至となろう。しかも当初は簡易な経理方式だが一定期間後にインボイス(税額票)が義務付けられ、さらに複雑化する見通しである。政府として責任を持って円滑な移行を支援するのは当然のことだ。
 もっと重要なのは財源の詰めである。低所得者の医療・介護などの自己負担総額を抑える制度の見送りを中心に最大5千億円程度の財源は確保できるというが、残りは白紙に近い。ただ公明から出ている「景気回復による税収の上振れ分を使え」との意見は甘過ぎよう。景気が失速すれば国債発行で穴埋めする事態に陥りかねないからだ。
 かといって税収の穴埋めを社会保障費の枠内で求めるのも限界がある。消費税増税は確かに民主党政権下で民自公が合意した「社会保障と税の一体改革」の一環ではあるが、ただでさえ抑制を迫られる年金や医療などにこれ以上、安易にしわ寄せが及んでいいとは思えない。
 安倍政権として軽減税率の対象拡大を決断するなら、段階的な引き下げを打ち出す法人税などを含めて政府全体の税収と歳出を洗い直し、何とか財源を捻出する努力が求められる。
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沖縄タイムス 2015年12月14日 05:30
社説:[軽減税率合意]選挙対策で本質ゆがむ


 選挙対策のにおいがぷんぷんする官邸主導の決着である。
 自民、公明両党は2017年4月の消費税率10%引き上げに際し、現行の8%に据え置く軽減税率の対象を、外食を除く食品全般とすることで合意した。
 軽減税率には、生活必需品にかかる消費税を低く抑えて家計負担を軽くする狙いがあるが、そのために必要な年間1兆円の財源は示されていない。課題を先送りした合意である。
 軽減税率導入をめぐる議論は、制度導入に積極的な公明党と、財政難を理由に慎重姿勢の自民党との間で難航した。生鮮食品と加工食品全体への適用を求める公明党と、生鮮食品に絞りたい自民党が対立。最終盤で自民党が外食を含めるよう提案するなど迷走し続けた。
 最終的な合意は、公明党の主張をほぼ丸のみした形である。米軍普天間飛行場の移設問題を左右する来年1月の宜野湾市長選、憲法改正への布石とする夏の参院選をにらんで安倍晋三首相が歩み寄ったのだという。公明党の支持母体、創価学会の集票活動に期待を寄せてのことだ。
 安倍首相は10月にも、軽減税率導入に慎重だった自民党税制調査会の野田毅会長(当時)を更迭している。「首相1強体制」の下、官邸主導の局面が増え、税調の存在感は薄れている。
 低所得者支援など必要な議論が脇に押しやられたのは、「1強」の歪みで、自由な議論が封じられたためでもある。
    ■    ■
 すべての人を対象とする軽減税率は、高い食材を購入するなど富裕層に有利に働く。低所得者の痛税感を和らげることを目的にしながら、実際はそのような制度設計にもなっていない。
 軽減税率の導入を手放しで喜べない人が多いのは、それ以外の税率が2桁になる影響が大きいからだ。結局、低所得者ほど負担が増す消費税の「逆進性」は解消されない。
 財源問題では、不足する1兆円のうち4千億円を低所得者対策の「総合合算制度」の見送りで対応する考えという。合算制度は医療や介護の自己負担額に世帯ごとの上限を設けて負担を軽減する仕組みである。財源確保を名目に社会保障を削るのは矛盾する政策だ。
 さらに残りの6千億円については、参院選後に議論を引き延ばすという無責任な対応である。
    ■    ■
 そもそも12年に自民、民主、公明3党で決めた「社会保障と税の一体改革」は、消費税率引き上げの増収分を全て社会保障に充てるというものだった。今回の合意はそれに反するもので、このままでは一体改革自体が破綻しかねない。
 深刻な財政難の中、財源をどう捻出するのか、約束した社会保障は実現できるのか、政府与党には年明けの通常国会で、国民の疑問や不安に答えてもらいたい。
 野党も低所得者対策の実効性や選挙目当てにしか見えない合意への追及を強めるべきだ。
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琉球新報 2015年12月11日 06:02
<社説>軽減税率導入 税制全体の見直し議論を


 2017年4月の消費税率10%への増税に伴う軽減税率問題は、生鮮食品と加工食品全体を対象とする方向となった。約1兆円の財源確保が焦点となるが、これまで対象品目の線引きにばかり議論が集中してきた点は腑(ふ)に落ちない。
 消費税率を低く抑える軽減税率で自民党は、税収減が3400億円にとどまる生鮮食品のみの適用を主張していたが、加工食品への拡大を主張する公明党が押し切った形だ。
 自民が加工食品への拡大を容認した背景には、来年夏の参院選をにらんで公明に譲歩する思惑がある。安倍晋三首相ら官邸サイドの意向も強く働いたとされる。
 税制論議とは懸け離れた与党の選挙協力という次元で、国民生活に大きく影響する政策が決定していくことに失望を禁じ得ない。政治不信を増幅しかねないものだ。
 軽減税率は、所得にかかわらず一律課税される消費税の逆進性を緩和することが目的だ。家計の負担軽減や消費刺激の観点でも、昨年4月の8%増税時に導入を図るべきだったのではないか。
 そもそも自民は昨年12月の衆院選を前に軽減税率制度について公明と合意し、17年度の導入を目指すと公約していた。だが軽減税率に代わる給付金支給案が一時浮上するなど、自民では導入への消極的な姿勢が目立っていた。
 生鮮か加工かなど、対象範囲のみに議論の重きが置かれたことにも違和感を拭えない。本来なら食品以外の生活必需品全体について広く議論すべきであったはずだ。
 政府、自民が軽減税率論議で強く指摘したのは財源確保の問題だった。導入で生じる税収不足の議論は当然必要だ。だが安倍政権は法人税率は引き下げるという。企業の賃上げを促すためというが、内部留保に回る可能性は否定できず、家計への波及効果は不透明だ。
 軽減税率導入に伴う減収の穴埋め財源を、低所得世帯の医療費などの負担を抑える「総合合算制度」の創設見送りなどで捻出するという点もおかしい。軽減税率のため別の低所得者対策をやめるのは本末転倒だ。
 財源は予算全体の無駄を削ればいくらでも捻出できる。例えば在日米軍への「思いやり予算」や基地周辺対策費、関連交付金などの総額は毎年6千億円超に上る。
 そもそも再増税が必要なのか。聖域なき行財政改革と併せて、税制全般について議論し直すべきだ。
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