2015-12-16(Wed)

軽減税率? ② 「軽減」ではない 据え置くだけ

10%で4.4兆円増税、法人実効税率(現行32・11%)29・97%に引き下げ

<各紙社説・論説>
東奥日報)家計に恩恵 財源は不透明/軽減税率 自公合意(12/13)
秋田魁新報)軽減税率合意 国会で財源見通し示せ(12/13)
秋田魁新報)軽減税率協議 穴埋め財源をどうする(12/12)
岩手日報)軽減税率 先見えぬ「泥縄」の決着(12/12)
新潟日報)軽減税率合意 原点に立ち返り考えたい(12/15)

新潟日報)軽減税率 理念踏み外さない議論を(12/11)
福井新聞)軽減税率 国民より選挙対策優先か(12/12)
京都新聞)軽減税率  位置付けを明確にせよ(12/12)
山陽新聞)軽減税率 混乱招かぬ制度設計を (12/11)
愛媛新聞)軽減税率与党合意 格差是正への対策が欠けている (12/13)

徳島新聞)軽減税率決着へ 財源確保に知恵を絞れ(12/11)
高知新聞) 【軽減税率】安定財源を確保してこそ(12/14)
佐賀新聞) 軽減税率協議 税制の本格改革も必要だ(12/11)
熊本日日新聞) 軽減税率与党合意 政策の原点を忘れている(12/15)
熊本日日新聞 )軽減税率 安定的な財源の枠組みを(12/11)





以下引用



東奥日報 2015年12月13日(日)
社説:家計に恩恵 財源は不透明/軽減税率 自公合意


 自民、公明両党は消費税率を10%に引き上げる2017年4月から、生鮮食品に加工食品を加えた飲食料品全般(外食や酒類を除く)の税率を8%に維持する軽減税率を導入することで合意した。必要な1兆円規模の財源は明示せず、結論を先送りした。
 軽減税率には家計負担を和らげる効果がある。身近な飲食料品全般が対象となることに、県内の消費者からも好意的な声が上がっている。ただ、恩恵が低所得者にとどまらず高所得者へも及ぶという問題がある。自公合意に至る協議では低所得者支援に関する本来の政策論議がかすみ、目的にそぐわない制度設計になった面もある。
 両党は4千億円分の財源を同じ低所得者対策の「総合合算制度」をやめて賄うことで一致した。合算制度は低所得家計の医療や介護などの自己負担に上限を設ける仕組みで、マイナンバーの稼働を前提として消費税10%に合わせた創設方針が示されていた。消費税増税の本来の趣旨に沿って、社会保障の充実を確実にする必要がある。
 また、事業者の経理方式が抜け穴だらけになった点も問題だ。軽減税率で複数の税率が併存するようになると、正確な納税額の把握には商品ごとの税率や税額を記したインボイス(税額票)が不可欠になる。今の経理方式と大きく異なり手間やコストが見込まれることから、小売業界や中小企業が難色を示していた。
 このため与党はインボイスの義務付けを当面先送りし、その間は今の請求書を基にした簡便方式を認めることにした。さらに中小・零細企業には推計による「みなし納税」や免税制度を設ける。
 ただ、これらには消費者が払った税が納められず、事業者の手元に残る「益税」が発生するという問題がある。
 国民が消費税を負担するのは「高齢化社会における社会保障の安定と財政再建のため」と思えばこそである。それが正しく納められることで、税制に対する国民の信頼を得ることができる。
 そして何より、総合合算制度見送りなどのほかに不足する財源を確保せず、結論を先延ばしした点が問題だ。来年夏の参院選における選挙協力を優先した形の決着とされるが、財源が不透明ではあまりに無責任ではないか。財政の立て直しを早くも放棄した、と言われることがあってはならない。
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秋田魁新報 (2015/12/13 付)
社説:軽減税率合意 国会で財源見通し示せ


 自民、公明両党は、2017年4月に消費税率を10%へ引き上げるのに合わせて導入する軽減税率の適用対象について合意した。生鮮・加工を合わせた食品全般に適用し、税率は現行の8%のままとする。外食は対象外となった。
 消費増税分は高齢化により膨らみ続ける社会保障費に充てるが、軽減総額(税収減)が大きくなるほど、医療や介護に回せる分が減ることになる。軽減税率を食品全般に適用すると、税収は1兆円減る。
 自民は当初、税収減を4千億円程度に抑えるため、軽減税率の適用対象を生鮮食品に限定することを主張した。だが9日、来年夏の参院選で公明の協力を得たい安倍晋三首相が譲歩を指示。これを受け自民は10日、加工食品への適用も求める公明案を受け入れた。
 11日には自民が外食も対象とすることを提案。これに対し公明は、高級店での外食まで対象とすれば、増税に伴う低所得者の負担感を緩和するという軽減税率の趣旨にそぐわないと反対した。財務省も外食まで含めれば税収減が1・3兆円に上るとして難色を示したため、12日、食品全般で決着した。
 1兆円の税収減に対し、自民が穴埋めの財源として確保しているのは5千億円にとどまる。低所得者世帯の医療や介護の自己負担額に上限を設ける制度の導入などを見送って浮かせる財源だ。残る5千億円についてはめどが立っておらず、合意文書には「安定的な財源の確保について、両党で責任を持って対応する」と記すにとどまった。
 軽減税率の合意は、財源の確保とセットであるべきだった。首相は公明案への譲歩を促した際、併せて財源の確保を指示しており、これにも反することになる。
 軽減税率の対象拡大により消費者に恩恵が及ぶのは確かだ。だが社会保障に充てるべき財源を確保しないままの合意では、軽減税率の恩恵以上に医療や介護の負担が増し、サービスも低下しないか、という国民の不安を招くことになるだろう。
 与党は軽減税率に関する合意事項を16年度の税制改正大綱に盛り込む。これを基にした関連法案が来年の通常国会で審議され、政府は野党から社会保障財源の見通しを問われることになる。
 政府は新たに借金をしなくても政策経費を賄えるようにするため、20年度までに基礎的財政収支を黒字化するとした財政健全化目標を立てている。軽減税率の与党合意により、健全化目標の実現可能性についても追及されるだろう。
 政府はこうした疑問に対し、真摯(しんし)に答えなければならない。軽減税率導入は事業者の経理方式の変更を伴うため、準備には相応の期間が必要だ。導入までの1年3カ月余は長いとは言えない。スピード感を持って対応すべきだ。
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秋田魁新報 (2015/12/12 付)
社説:軽減税率協議 穴埋め財源をどうする


 2017年4月に消費税率を10%に引き上げるのと同時に導入する軽減税率の適用範囲をめぐり、自民、公明両党は大詰めの協議を続けている。きょうの協議で最終合意を目指す。
 10日の自公協議では、外食と酒類を除く食品全般(加工食品含む)を対象に、軽減総額を約1兆円とすることで大筋合意していた。だが11日の協議では、外食を含めるかどうかを検討した。外食と加工食品には線引きの難しい品目があるためだ。外食も加えると軽減総額は約1・3兆円に膨らむ。いずれも税率は8%に据え置く。
 消費増税は高齢化の進行に伴い増大する医療や介護などの社会保障費を賄うのが目的で、軽減税率の対象拡大はその財源の減少に直結する。
 社会保障財源の確保を優先する自民は当初、生鮮食品を中心に軽減総額(税収減)を最大4千億円とする案を主張。増税による痛税感を緩和したい公明は、最低でも加工食品を加えて、1兆円以上の軽減にすべきだとして譲らず、平行線をたどっていた。
 合意に向けて動きだしたのは、来年夏の参院選での与党協力を重視する安倍晋三首相が9日、裁定に乗り出し、自民に歩み寄りを促してからだ。首相には公明の応援を得て参院でも勢力を伸ばし、政権基盤を一層強化する狙いがある。
 与党は、軽減税率導入に伴う税収減が1兆円以上に上る見通しにもかかわらず、穴埋めの財源を明示しないまま合意する方針だ。埋め合わせの財源のない軽減税率の導入は、財政を一層悪化させかねず、国民の不安を招くことにもなる。
 政府内では、1本当たり1円上げれば1千億円超の税収増が見込めるたばこ税引き上げの検討に入っている。社会保障費の抑制や行政の無駄排除など歳出削減も必要だろう。政府・与党は税収減を補う方策を早急に見いださなければならない。
 軽減税率導入後は10%と8%の税率が併存するため、事業者は商品ごとに税率や税額を記すインボイス(税額票)を用いた経理をする必要が生じる。与党はこの経理方式を21年4月に導入する見込み。ただ、当面は事業者の事務負担を軽減するため、現行の請求書を使い、税率8%の商品に印を付けて税額を計算する簡易方式を認める。
 消費税率の引き上げまで1年3カ月余り。事業者には経理事務のスムーズな移行が求められる。簡易方式には消費税の一部が納税されず、事業者に残るとの指摘もあり、どうチェックするかが課題となりそうだ。
 そもそも消費税には、低所得者ほど負担感が増す「逆進性」がある。軽減税率の対象が拡大すれば、低所得者の負担感は和らぐが、高所得層もそれ以上の恩恵を受けるため、格差が広がる可能性もある。今後は国会審議などで、こうした観点からの議論も求めたい。
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岩手日報 (2015.12.13)
論説:軽減税率 先見えぬ「泥縄」の決着


 「泥縄」とはこういうことを言うのだろう。2017年4月の消費税10%上げと同時に導入する軽減税率制度だ。対象品目を拡大してから財源を探すのだという。
 12日まで延長された自民、公明両党の与党協議は、生鮮・加工食品全般を軽減税率の対象にすることで合意。外食は見送った。
 この結果、必要な財源は1兆円規模となる。しかし、自民党が見込んでいたのは約5千億円だけ。不足分はどうするのか。麻生太郎財務相が会見で「いきなり数千億円が今日、明日で出てくるはずはない」と語った通りだ。
 具体的な財源の候補はいくつか上がっているが、具体的な議論は先送りされた。財政が厳しい中で、これほど危うい制度設計もない。
 自民党側は当初、生鮮食品に絞る方針だったが、「痛税感」の緩和には加工食品も必要と主張する公明党に譲歩した。来夏の参院選での選挙協力を意識した決着だ。
 対象となる食品の範囲は、菓子類や飲料へも拡大することでいったんは落ち着いた。ところが、自民党が線引きが難しい外食も含めるよう提案したことで、議論は「泥沼」に陥った。
 結局は見送られたが、一連の経過は軽減税率の矛盾を露呈することになった。富裕層も恩恵を受けるだけに、もはや低所得者層対策とは呼びにくい。
 食品を8%に据え置いたことで「食」の痛みは幾分癒やされるだろう。だが、消費税アップの痛みは「衣」「住」など生活のあらゆる場面で感じる。影響はじわじわと効いてくる。
 学者や弁護士らで構成する「民間税制調査会」(民間税調)は「低所得者層ほど負担が重くなる逆進性の解消にはならない」と指摘する。
 従来、税制改正の舞台は自民党税制調査会だった。しかし、軽減税率では税調の頭越しの与党協議が中心。さらに官邸が介入して政治決着させた。これでは財政規律や富の再配分といった税制全体を見渡した議論は難しい。
 選挙協力で駆け引きする姿からは、どれほど低所得者層を考えていたのか見えてこない。財源として、既に医療、介護などの自己負担を軽くする「総合合算制度」の創設が犠牲になった。本末転倒という声も上がる。
 16年度の税制改正大綱は、ただでさえ企業を優遇し、家計は置き去りという色彩が濃い。食品に軽減税率を導入しただけで、果たして家計の財布のひもが緩むのか。
 増税で個人消費が再び落ち込めば景気が失速する恐れもある。財源としてあてこむ、景気回復による税収の「上振れ分」も不透明なままだ。
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新潟日報 2015/12/15 08:49
社説:軽減税率合意 原点に立ち返り考えたい


 食料品分野への消費税の軽減税率導入をめぐり、自民、公明両党はその対象範囲を、生鮮食品に加工食品を加えた飲食料品全般とすることで最終合意した。
 これによる税収減は約1兆円で、穴埋めの財源確保は16年度末までに対応策を決めるとして、事実上先送りした。
 前回の総選挙で軽減税率の導入を公約した両党だったが、生鮮食品に限定したい自民党と、拡大したい公明党の間で話し合いが続けられてきた。
 安倍政権は来年夏の参院選での自公選挙協力を優先し、公明党の案を丸のみした形だ。
 自民党の一部が強く抵抗し、最終盤では外食への拡大を持ち出す混乱があった。
 十分な議論などという枠を外れ、その迷走ぶりが際立った。政治的な駆け引きが前面に出ることで、選挙目当ての大盤振る舞いの批判を呼んでしまった。
 原点に立ち返って考えたい。軽減税率導入は、1989年4月に創設された消費税に初めて複数の税率を取り入れるという制度上の大改革である。
 税率アップは膨らみ続ける社会保障費を賄うためだ。痛税感を緩和し、低所得者の家計負担を軽くする手段が軽減税率だ。
 こうした日本の将来を占う大切な議論が、打算やメンツにもてあそばれた感が拭えない。
 さらに、財源が完全に棚上げされたのは納得できない。
 自公両党は必要な財源について予算と税制の両面で「法制上の措置」を講じるとした。
 国民の痛みを伴う議論は参院選後に、との思惑もあるらしい。そうではなく、直ちに検討を本格化させ、国民視点で真剣に話し合いを進めてもらいたい。
 将来さらに増税が必要になる可能性を考えれば、日用品をはじめ、さまざまな分野への軽減対象拡大を視野に入れたい。
 自民、公明両党は、飲食料品での合意後、14日の与党協議で、新聞と出版物を条件付きで軽減対象に含める方針を確認した。
 新聞界は、欧州が「知識に課税せず」の立場から軽減税率を適用する例にならい、新聞を対象とするよう要請してきた。読者の負担軽減と民主主義のためにも、私たちは、真摯(しんし)な姿勢で国民の了解を求めていく。
 他にも課題は多い。21年4月にインボイス(税額票)が導入されるまでの間、特例措置などにより事業者の手元に消費税が残る「益税」が増えそうだ。
 消費税が国民全体のために生かされない状況は看過できない。事業者の手間や費用が確実に増えることにも、国としてしっかり対応策を持たねばならない。
 財源確保で社会保障費を聖域として絶体視せよなどとは言わない。だが必要な社会保障を切り下げたり、借金を増やしたりすれば本末転倒となる。
 まずは歳出を徹底的に見直し、行政の無駄をなくすことに全力を傾けてほしい。議員定数削減をはじめ、国会が身を切る覚悟を持つべきなのはもちろんだ。
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新潟日報 2015/12/11
社説:軽減税率 理念踏み外さない議論を


 政府、与党は軽減税率制度について、2017年4月の消費税増税時から食品全般を対象とする方向で最終調整している。
 対象を生鮮食品に絞る意向だった自民党が、対象品目拡大を求める公明党に譲歩した。
 ここで言う食品全般とは、全ての飲食料品から酒類や外食を除いた品目である。
 消費税が10%になっても食品全般が8%に据え置かれることで、消費者は負担軽減が実感しやすくなるのは確かだろう。
 一方で、その分だけ税収が減ることになり、この穴を埋める財源を探す必要がある。
 軽減対象をコメや鮮魚などの生鮮食品に限れば、税収減は3400億円と見込まれた。
 これをパン、麺類、総菜、調味料、菓子類、飲料などの加工食品を加えて食品全般に広げると、1兆円に膨らむ。
 税収減対策として政府は社会保障充実策の一部を見送り、これらによって最大5000億円を確保する心づもりだった。
 その倍に増える税収減に釣り合う財源をひねり出すのは、容易なことではない。
 社会保障費をさらに圧縮するのは、社会保障を充実させるという消費税増税の趣旨に反し、国民の理解は得られまい。
 公明党からは景気回復による税収増加分を充てることや、たばこ税増税の案が出ている。
 だが景気回復はあくまで見込みだし、たばこ増税は消費減を招き税収が減る恐れもある。新財源が酷税感につながれば、消費や景気の足を引っ張る。
 どの道を選んでも困難は避けられない。政府は腹を据えて、国民の理解を得られるような新たな財源手当てに努力し、決断しなければならない。
 所得に関係なく課す消費税は、相対的に低所得者の負担が重くなる逆進性がある。
 これを考え合わせるならば、社会保障費を傷める前に、遊休資産への課税や、所得の高い層の負担を増やす税制を考えていく方が自然に思える。
 家計負担軽減の点で、軽減税率は唯一とは言わないまでもベターな選択ではあるはずだ。
 消費税が2段階に分けて10%に増税されても、増え続ける社会保障費に十分に対応していくのは難しいとされる。
 これ以上の増税を望まないのはもちろんだが、その必要が生じた時のことは考えておきたい。複数税率を採用するなら、今回は重要な機会である。
 また、生活必需品から教育・文化関連、ぜいたく品に至るまで、将来にわたって全て一律の税率で通すのは無理がある。
 軽減税率には事業者の手間や費用をどう抑えるかや、出前の取り扱いなど軽減対象外の外食をどう位置付けるかといった、大きな課題も残されている。
 大事なのは、社会保障充実、家計負担軽減の理念を踏み外さず、国民の幸福に資する姿勢を第一に臨むことだ。選挙協力の材料などと考えてはならない。
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福井新聞 (2015年12月12日午前7時05分)
論説:軽減税率 国民より選挙対策優先か


 政府、与党は消費税増税時に導入する軽減税率制度について協議。2017年4月から10%に引き上げる際、現在の8%のままで据え置く対象を生鮮食品と加工食品全般とすることでは一致したが「外食」の扱いで折り合わず、決着を12日以降に持ち越した。
 公明党が主張する「痛税感を緩和する」という一定の効果は見込めるが、外食を含めると約1兆3千億円に膨らむ財源をどう確保するのか。来夏の参院選を優先し自民より公明重視で首相官邸が割り込んでの主導権争いだ。それが課題先送りでは国家の税制体系が構築できないではないか。財源あっての政策であろう。
 消費税を10%に引き上げた時の増収は14兆円程度が見込まれる。これを「社会保障の充実」に充てることは、民主党を含む3党で合意した「社会保障と税の一体改革」に基づくものだ。
 難航した軽減税率の対象について自民が公明の主張を丸のみし、酒類を除くすべての飲食料品に広げた。
 この財源をどうするか。低所得世帯の医療、介護の自己負担を抑える「総合合算制度」の創設見送りによる約4千億円に加え、給付金見直しなどで5千億円程度の財源は確保できる。これは自民が考えた生鮮食品を対象とする軽減税率の財源であるが、「菓子と飲料を除く加工食品」だと税収減は8200億円、「加工品すべて」なら1兆円以上を穴埋めする必要がある。
 公明は国の借金減らしに充てる7兆3千億円や単年度ごとの増収のほか、たばこ税増税も提案している。しかし、本来、低所得者対策であるはずの軽減税率なのに、社会保障対策費を削るのは本末転倒の論理である。たばこ税増税も消費マインドに影響する。
 難問は食品の分類だ。一体、何が菓子で飲料なのか。自公協議がこれで暗礁に乗り上げた。さらに税率が10%になる外食との線引きも難しい。外食の定義がないからだ。食べた場所や持ち帰りで税率が変わるとすれば厄介である。
 対象品目を扱う事業者は生鮮食品だけなら120万事業者、加工食品まで拡大すれば800万事業者(経済産業省調査)という。厳密な処理が要求される業者の経理システム変更が間に合わないのは確実で、議論不足と制度設計のいいかげんさがここにも露呈する。
 軽減税率をめぐる問題はまだある。所得に関係なく適用されるため、必ずしも低所得者支援とは言い難い。導入後の家計負担の試算でも低所得者ほど増税負担感が重くなるという「逆進性」を緩和する効果が乏しいことも判明している。
 自公が了承した税制改正大綱でも減税策が並び、黒字企業の負担軽減になる法人実効税率の引き下げで設備投資を促す一方、外形標準課税を広げ、赤字企業への課税を強化する。ただし設備投資には減税措置を盛り込むなど、アベノミクスの成長戦略を強化したい思惑が前面に出ている。果たして消費税増税ができる経済環境になるのか、根本問題はそこにある。
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[京都新聞 2015年12月12日掲載]
社説:軽減税率  位置付けを明確にせよ


 自民、公明両党は消費税増税時の軽減税率制度に関し、2017年4月の導入時から、生鮮・加工食品全般を対象にすることで基本的に一致した。ただ外食との線引きで折り合えなかったとみられ、最終合意は持ち越した。
 軽減税率は主に低所得者の負担軽減策として、両党が検討してきた。低所得者は支出全体に占める生活必需品の割合が高いため、食品の税率を低くすることで、増税の影響を緩和するねらいだ。ただし、税率を低くすればその分税収は減るため、対象品目の範囲で両党が綱引きを続けてきた。
 自民党は、税収減が3400億円にとどまる生鮮食品のみを主張し、公明党は、低所得者対策の効果が薄いとして生鮮食品と加工食品を対象にするよう求めた。税収減は約1兆円になる。
 しかし、政策的な検討が十分なされたとは言えまい。公明は昨年の衆院選で軽減税率の導入を公約に掲げ、その実現を最重要課題としてきた。自民は来夏の参院選での選挙協力を確実にするため譲歩したとみられる。安倍晋三首相ら官邸の意向も強かった。
 ただ軽減税率適用については、食品と外食の線引きの難しさもあり、自民には外食まで含めるべきとの意見がある。その場合、必要財源は1兆3千億円に膨らむ。
 低所得者対策は不可欠だが、政党の思惑で取引材料にされるのは納得できない。消費税増税は、少子高齢社会を迎え、社会保障を充実させるために必要と国民に説明し、理解を得てきたはずだ。軽減税率をどう位置付けるかを明確に示して、国民に不利益が生じないよう配慮する必要がある。
 その点で問題になるのが、税収減を補う財源の確保だ。
 社会保障と税の一体改革で、税収増加分は社会保障の充実策にあてることが決まっている。自民は低所得者の医療、介護などの自己負担総額を抑える「総合合算制度」の新設見送りなどで5千億円を確保するとしているが、残りの財源のめどはたっていない。
 そもそも低所得者対策を強調して軽減税率を導入しながら社会保障を後退させては本末転倒だろう。消費税増税の枠内に社会保障費をとどめようとする議論も疑問だ。
 政府は、2020年度に基礎的財政収支の黒字化を目標に掲げており、財政再建の視点も欠かせない。
 国民が納得できる制度を提案し、国会で議論を尽くさなければならない。
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山陽新聞 (2015年12月11日 08時27分 )
社説:軽減税率 混乱招かぬ制度設計を 


 消費税を10%に引き上げるのに合わせ、生活必需品の税率を低く抑える軽減税率の対象が、生鮮食品と加工食品全体に広がる見通しとなった。外食と酒類を除き、飲食品全般に税率8%が適用されることで、低所得者の痛税感は一定程度和らぐことになろう。
 与党協議では、税収減を避けたい自民党がコメや鮮魚、肉類など生鮮食品を中心に適用することを主張し、公明党が品目の拡大を求めた。最終的に自民党が譲歩し、飲料や菓子類も含める方向となった。来夏に参院選を控え、公明党との選挙協力を確実にしたい思惑があったようだ。
 線引きが広めになることで、消費現場の混乱はかなり抑えられそうだ。もし、菓子類や飲料が除外されていれば、菓子パンは加工食品のパンとみなすのか、菓子類に含めるのかや、おしるこは加工食品か飲料かといった煩雑な線引き作業が多くの品目で必要となるところだった。消費者に分かりやすい仕組みになることは歓迎できる。
 ただ、軽減税率の対象にならない外食についても、今後きちんと線引きをしなくてはならない。例えば、コンビニで買った食品を店内の飲食スペースで食べた場合や、出前で食べ物を注文した場合を、加工品の購入とみなすか外食とみなすかなど、さまざまなケースについて決めておかなくては混乱を来す。
 今後、小売店など事業者側が複数税率に対応できるシステムを整えるといった準備も必要になる。制度の細部の詰めを急いでもらいたい。
 税率引き上げは2017年4月に予定されている。ただ、景気の動向によっては増税が延期される可能性を残している。今週発表された7~9月期の国内総生産(GDP)改定値は、年率換算で1・0%増と2四半期ぶりにプラス成長に転じたものの、個人消費の回復は鈍く、中国経済の減速も長期化する予想で先行きは見通しにくい。
 昨年4月の8%への増税では、消費低迷が長引いて景気が失速した。ここで再び増税に踏み切れば消費が冷え込み、かえって税収の落ち込みを招きかねないという指摘もある。再増税にあたっては、経済情勢を慎重に見極めることが欠かせないのはあらためて言うまでもない。
 税率が昨年3月以前の5%から10%に引き上げられることで生じる増収は、年に約14兆円と想定されている。その全額は社会保障費に充てられることになっており、使い道も決まっている。
 今回、軽減税率を加工食品にまで広げる財源として約1兆円が見込まれている。今のところ、医療や介護費などの負担に上限を設ける「総合合算制度」を見送って約4千億円を充てることでは合意しているが、なお6千億円の捻出が課題となる。政府はあらためて歳出全体を見渡し、メリハリの利いた予算編成に努めてもらいたい。
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愛媛新聞 2015年12月13日(日)
社説:軽減税率与党合意 格差是正への対策が欠けている


 自民、公明両党は、消費税率を10%へ引き上げる2017年4月から、生鮮食品に加工食品を加えた飲食料品全般に8%の軽減税率制度を導入することで正式合意した。16年度の税制改正大綱に盛り込まれる。
 貧困や格差の問題が顕在化した今、税の重要な役割が富の再分配機能だ。その観点から鑑みれば、大綱は低所得者層対策が薄く、富裕層や大企業優遇に傾いていると言わざるを得ない。
 消費税には所得が低い人ほど負担が重くなる逆進性の問題がある。しかし軽減税率は富裕層ほど恩恵が多く、逆進性を緩和する効果は薄い。急ぐべきは格差是正だ。逆進性解決には所得税や法人税など税制全体で再分配機能を高めることが必要。低所得者層の底上げを目指さなければなるまい。
 そもそも消費税増税分は、膨らみ続ける社会保障費の財源に充てることになっていたはず。だが5%から8%に上げた増収分約5兆円のうち、大半は赤字国債の穴埋めに消え、社会保障充実に向けたのは1割にとどまった。負担増の割に恩恵の実感は乏しい。再配分が十分に機能していない証左だ。
 軽減税率は自公が昨年末の衆院選で公約に掲げた。自民は財源が3400億円で済む生鮮食品に絞ったが、公明は加工食品も対象とするよう一貫して主張し、自民が折れた。背景には、来夏の参院選で公明の協力を得たい官邸サイドの強い意向がある。国民の暮らしに深く関わる税制を、党利党略や選挙対策に利用したとの批判は免れない。
 軽減税率導入による税収減は1兆円に上る。穴埋めのために医療や介護などの自己負担額を抑える総合合算制度の導入を取りやめるという。低所得者層の負担を軽くする重要な仕組みの財源を流用するのではなく、別の財源を捻出して制度実施を模索するべきだ。他にも待機児童解消などが削られる可能性が出てきており、社会保障政策を後退させるのは本末転倒だ。
 社会保障充実という消費税の本来の目的に立ち返り、再増税の意義や必要性をあらためて議論するよう求めたい。事業者はシステム対応などに手間と経費がかかる。21年からは、品目ごとの税率を記す「インボイス」の発行が義務付けられ、さらに負担が増す。費用対効果の検証も忘れてはならない。
 安倍政権が執心した法人実効税率の減税は、現行32.11%から16年度は29.97%になる。減税分は赤字企業も対象となる外形標準課税で補うとしており、「富める企業」への優遇がさらに進んだといえる。
 大綱は、消費税増税分を年金や医療に充てる「社会保障と税の一体改革」の理念を置き去りにして、所得税など税制の抜本改革による財政再建の道筋も示さなかった。政府は、軽減税率が増税ありきの数字合わせの論争に終始したことを省みて、税制全体の改革をさらに進めねばならない。
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徳島新聞 2015年12月11日付
社説:軽減税率決着へ 財源確保に知恵を絞れ


 消費税の増税に合わせて始める軽減税率制度は、2017年4月の導入時から、酒類や外食を除く生鮮食品と加工食品を対象にする方向で固まった。
 対象品目の範囲をめぐっては、税収の減少額を小さくするため絞り込みたい自民党と、増税時の痛税感を和らげるため幅広く適用したい公明党との間で、綱引きが続いていた。
 結局、連立政権からの離脱も辞さないとする公明党の強い姿勢に対し、自民党が折れた形である。
 軽減税率の導入は、低所得者ほど負担感が強い消費税の逆進性を緩和するのが目的だ。増税による個人消費の落ち込みを抑え、景気の冷え込みを防ぐ狙いもある。
 その意味で、パンや麺類、総菜、レトルト食品などを含む加工食品を対象にすることは、本来の趣旨に沿うといえよう。
 加工食品から菓子類や飲料を除く案もあったが、菓子パンは菓子類か、お汁粉は飲料かなど、線引きが難しい品目が出てくる。
 紛らわしい商品が増えると、小売店や消費者の戸惑いは大きくなる。それを避ける点でも、含めるのは妥当な判断だろう。
 軽減税率の導入に伴い、品目ごとの税率などを記入する「インボイス(税額票)」の発行を義務付けることも決まった。事業者にとっては負担であり、混乱が生じないよう十分に準備する必要がある。
 対象品目の方向性は定まったが、税収減を穴埋めする財源については、与党の調整が難航した。
 生鮮食品や加工食品全体の税率を8%に据え置く場合、10%に上げるのに比べて年間約1兆円の税収が減る。
 このうち約4千億円は、医療や介護などの自己負担を抑える「総合合算制度」の創設を見送ることで、めどが付いている。
 問題は、残る約6千億円をどう確保するかである。
 消費税増税は社会保障の維持・充実が目的であり、社会保障費をさらに圧縮することは許されまい。
 そこで浮上しているのが、景気回復に伴う税収の増加分を活用したり、たばこ税を増税したりする案だ。消費税増税で増える税収のうち、国の借金返済に充てる分の一部を回す案もある。
 だが、景気回復による税収の上振れは毎年見込めるわけではなく、たばこ税の増税はタバコ農家に打撃を与える恐れがある。
 借金返済分を充てる案も、国の基礎的財政収支を改善し、1千兆円を超える借金を減らす政府の財政健全化計画に支障を来す。
 いずれも問題があるものの、どうすればマイナスの影響を最小限にとどめられるか、政府、与党の力量が試されるところだ。
 財政再建に最大限の配慮をしながら、知恵を絞ってもらいたい。
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高知新聞 2015年12月14日08時16分
社説:【軽減税率】安定財源を確保してこそ


 自民、公明両党が消費税率を10%に引き上げる2017年4月から導入する軽減税率制度の内容に合意した。
 生鮮食品に加工食品を加えた飲食料品全般について8%に据え置く。これにより約1兆円の税収減となるが、低所得層の負担軽減のためにはやむを得ないと考える。
 半面、軽減税率は高級食材など食費にお金をかける余裕のある富裕層への恩恵も大きい。税収減に見合うほどの効果はないとして、導入に反対する意見も根強くある。
 しかし今や日本の生活保護受給者は過去最大規模に膨らみ、ひとり親家庭の貧困率は先進国でも最悪レベルだ。貯蓄が少なく年金に頼る高齢者らは家計を切り詰め、ぎりぎりの生活を余儀なくされている。
 スーパーやコンビニで扱われ日々の暮らしに欠かせない加工食品など、幅広い飲食料品を軽減税率の対象とするのはセーフティーネット(安全網)の観点からも必要だろう。富裕層への恩恵とのバランスを問題視するのなら、高額所得者への課税を強化する方法もある。税本来の目的である「所得の再配分機能」を高めればよい。
 少子高齢化が進む日本では、医療や介護など社会保障費は年々膨らみ続けている。その全てを10%の消費税だけでは賄いきれない実情がある。与党が今回の合意文書で将来、10%からの再増税に含みを持たせているのもそのためだろう。
 消費税を続ける以上、これからも低所得層への配慮は不可欠だ。その意味でも当初から、軽減税率の網を広く掛けておく方が混乱を招かずに済む。
 むろん税収確保のためには、対象をなし崩しに広げることはできない。対象の選定に当たっては今後とも、生活上の必需性が慎重に客観的に判断されなければならない。
本末転倒
 軽減税率の導入に当たって最大の課題は、1兆円に上る税収減をどう穴埋めするか。
 現時点で確保できているのは5千億円程度。低所得者の医療、介護の自己負担を抑える新制度の創設見送りなどで賄う。だが、そもそもこうした社会保障制度の拡充こそが消費税増税の目的だった。財源確保のためとして、社会保障政策の削減を繰り返せば本末転倒の批判が強まろう。
 与党は税収の上振れ分を使う案も検討しているが、税収が毎年拡大する保証はなく恒久財源とはなり得ない。かといって安易に赤字国債の発行に走れば、財政健全化はさらに遠のく。
 巨額の税収減を補うためには、予算編成を抜本的に見直すなどして財源を捻出していくしかない。
 ところが現実はどうか。国の借金は1千兆円以上あるにもかかわらず、省庁の16年度一般会計予算の概算要求は総額102兆円。2年連続で大台を超えた。安全保障政策の転換で今後は防衛費が増え続ける可能性もある。
 「血税」は真に必要な政策に使われているか。税金の無駄遣いをどうやって一掃し、歳出削減の意識をより徹底させるか。国の取り組みは極めて不十分と言わざるを得ない。
 軽減税率に関しても、与党内には「財源探しは来夏の参院選後になる」との声が聞かれる。選挙を理由に、国民への痛みも伴う議論を先延ばしするのは無責任である。安定財源を早期に確保できるように、議論を加速させなければならない。
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佐賀新聞 2015年12月11日 09時48分
論説:軽減税率協議 税制の本格改革も必要だ


 消費税率を10%に引き上げる際に導入する軽減税率制度に関し、政府、与党は生鮮食品に加工食品を加えた食品全般を対象にする方向で最終調整に入った。消費者には負担軽減の実感は増すが、税収減に伴って穴埋めに必要な財源は1兆円規模に膨らむ。社会保障の充実という増税の本来の目的への影響が懸念される。
 2017年4月の税率引き上げ時の負担軽減策として政府、与党が軽減税率導入の方針を固めたのが10月中旬。それ以降、対象品目の範囲をめぐって激論が続いた。
 自民党は加工食品を含めると財政への影響が大きく、事業者の事務負担の大きさも考慮して生鮮食品(財源約3400億円)から段階的に拡大するよう提案していた。対する公明党は一貫して生鮮・加工食品全体を対象にするよう主張してきた。
 17年4月の増税と同時に導入するには、本年度税制改正大綱に盛り込む必要がある。官邸の意向も強く働き、行き詰まった自公協議は、公明党の主張をほぼ丸のみする格好で大きく動いた。
 その背景に、来夏の参院選での選挙協力を確実にしたいという自民の思惑が影響したとの指摘もある。国家の大計である税制の論議は長期的な視点が必要だ。朝令暮改の制度では納税者の理解は得られない。政府、与党には、妥当な判断であるということをしっかりと説明する責任がある。
 軽減税率の対象品目の拡大で出てくる課題は、穴埋め財源の確保、納税事務を負担する事業者の拡大などがある。低所得層の医療、介護などの自己負担総額を抑える「総合合算制度」の新設を見送ることで年間4千億円の財源を確保しているが、残る6千億円については当てがないのが現状だ。
 公明党は、景気回復に伴う税収の増加分の活用やたばこ税増税などを提案するが、税収が毎年拡大する保証はない。たばこ税増税に自民党は慎重姿勢を示している。社会保障費をさらに圧縮すればとの声も聞かれるが、そうすれば増税の大義名分が大きく揺らぐ。
 事業者は、システム改修や取引先とやりとりするデータの形式統一が必要で、準備には最低でも1年半ほどかかるという。17年4月の制度導入までに中小企業が対応できるのか懸念される。取り扱う商品に複数の税率が併存するのは、多くの事業者にとって未知の状況だ。零細な個人事業者にまで対応を徹底させるには、細やかな目配りが必要となるだろう。
 軽減税率は、痛税感緩和にはつながるが、低所得者ほど負担が増す消費税の「逆進性」の問題は改善できない。学者や弁護士らでつくる「民間税制調査会」は「不公正な業界の要望を生み出す」と軽減税率の問題点を指摘し、低所得者に配慮して減税と現金支給を組み合わせた「給付付き税額控除」の導入を提案している。
 政府、与党は、こうした疑問の声を一掃し、消費者や事業者に安心を与える精緻な制度設計と対策が打ち出せるかが問われる。
 今後は所得税の見直しを含めて税制改革の議論も本格化させ、「格差の是正と所得の再分配」というあるべき税制の姿を模索するべきだ。それは納税者の信頼と理解を得るだけでなく、財源問題を考える意味でも重要だ。(梶原幸司)
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熊本日日新聞 2015年12月15日
社説:軽減税率与党合意 政策の原点を忘れている


 自民、公明両党は、消費税率を10%に引き上げる2017年4月から、外食を除く食品全般を対象に8%の軽減税率を適用することで合意した。その結果目減りする税収1兆円をどう穴埋めするかについては、結論を先送りした。
 財源の確保が先送りされたことで、「社会保障の充実」が見通せなくなった。今後、肝心の社会保障政策の見送りや縮小が懸念される。政策の原点を忘れた政治決着と言わざるを得ない。
 軽減税率の目的は低所得者対策にあるが、制度設計にはちぐはぐな点がある。元来、恩恵が高所得者まで及ぶという問題がある軽減税率だが、両党は税収減穴埋めのために、低所得者の医療や介護の窓口負担に上限を設ける「総合合算制度」の創設をやめて4千億円を捻出することで一致した。低所得者対策を犠牲にし、高所得者まで得をする別の制度をつくることになる。いかにも付け焼き刃だ。
 事業者の経理方式は抜け穴だらけになった。税率が複数になれば、正確な納税額の把握には商品ごとの税率や税額を記したインボイス(税額票)が不可欠になる。だが、両党はインボイスの義務付けを4年間先送りし、現行の小規模事業者の免税制度などを存続させ、中小・零細企業には推計による「みなし納税」や免税制度を設けることにした。
 これでは消費者が払った税が納められず、事業者の手元に残る「益税」が拡大する可能性がある。益税は現状でも年6千億円に上り、税率が10%になれば8千億~1兆円に及ぶとの試算もある。
 今回の与党合意は、来年夏の参院選における選挙協力を目当てにした「打算の産物」といえよう。このような制度設計はあまりにずさんで、無責任な印象がある。財政立て直しを早くも放棄したと批判されても仕方あるまい。
 国の借金は1千兆円を超えている。次世代へのツケを少しでも減らしつつ、社会保障を手当てするために消費税を上げ、全額を充てる-。それが「社会保障と税の一体改革」であったはずだ。国民が負担増を容認するとしたら、それを思えばこそである。
 軽減税率をめぐる自公決着は問題が多い。税制に対する国民の信頼にもかかわるのではないか。
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熊本日日新聞 2015年12月11日
社説:軽減税率 安定的な財源の枠組みを


 政府、与党は、消費税率の10%への増税時に始める軽減税率制度について、2017年4月の導入時から、生鮮食品に加工食品を加えた食品全般を対象にする方針を固めた。16年度の税制改正大綱に盛り込む。
 消費税は所得にかかわらず一律に課税されるため、所得が少ないほど負担感は重い。軽減税率はその緩和を目指すものだが、肝心の財源論議が置き去りにされた形で方向性が決まったのは、バランスを欠いているのではないか。減収分を埋める財源の手当ては重要なポイントだろう。
 食品全般を対象にしたため、必要な財源額は1兆円規模に上るという。当初、自民党は生鮮食品を対象にする方針だった。必要な約4千億円は、社会保障制度の中で低所得層の医療、介護などの自己負担総額を抑える「総合合算制度」の新設を見送ることで確保することにしていた。
 しかし自民党は、選挙で食品全般への制度適用を公約してきた公明党が対象の拡大を強く求めたため譲歩。自民党内で来夏の参院選での選挙協力を確実にしたいとの思惑があり、安倍晋三首相ら官邸の意向も強く働いたようだ。
 軽減税率の導入に当たっては、安定的な財源の枠組みを構築することが重要だ。やりくりによる財源の確保では、国民は安心できない。消費税率10%への引き上げによる税収増加分は、社会保障制度の充実策に充てるよう決まっている。軽減税率で不足する財源をめぐって、制度の縮小や先送りなど国民に不利益が生じないよう強く求めたい。
 異なる消費税率が併存することになる軽減税率の導入で、企業の経理方式は変わる。食品全般に対象が広がれば、納税事務を担う事業者への影響も大きい。事務負担軽減のため、導入当初は簡易な経理方式が採用されるが、制度導入まで時間は限られる。特に準備が負担になるとみられる中小企業などへの政府の支援が必要だ。
 自公両党がまとめた16年度の税制改正の内容は、経済再生を掲げる安倍政権の取り組みに沿っており、企業にけん引役を期待する姿勢が目立っている。
 法人税の実効税率を現在の32・11%から16年度に29・97%、18年度29・74%に引き下げる。17年4月導入の自動車購入時の新たな課税制度は、同時に廃止される自動車取得税より免税対象を拡大し、増税による販売落ち込みに配慮した。
 一方、地方自治体に対しては、法人事業税の一部を譲与税として配分していた「地方法人特別税」を廃止する一方で、大都市に偏る法人関連の税収の再配分強化策として、地方交付税の原資になる地方法人税を現状の約6千億円から約1兆4千億円に拡大する。一定の評価はできよう。
 ただ、地方税体系を地域による偏在性が小さく安定したものにするためには、消費税を地方税化し、法人関係税を国税化するなどの方法も検討すべきではないか。
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