2016-04-29(Fri)

熊本地震 福祉避難所 社説等160429

介護現場の応援が急務だ 機能不全補う支援策は 被災者向け住宅の確保急げ
被災地の子供--学びの機会を支えたい ボランティア--安全に留意して被災地支援を
震災と観光--風評被害の払拭が急務だ 新幹線--地震対策を再点検せよ 「直下型」の弱点克服急げ


<各紙社説>
読売新聞)ボランティア 安全に留意して被災地支援を(4/29)
日本経済新聞)被災者向け住宅の確保急げ (4/29)
河北新報)防災・減災 政府の災害対応/復興も見据えた専任省庁を(4/29)
信濃毎日新聞)学びの機会を支えたい 被災地の子供(4/29)
京都新聞)新幹線の安全  地震対策を再点検せよ(4/29)
神戸新聞)福祉避難所/介護現場の応援が急務だ(4/29)
山陽新聞)新幹線地震対策 「直下型」の弱点克服急げ(4/29)
中国新聞)熊本地震と福祉避難所 機能不全補う支援策は(4/29)
熊本日日新聞)震災と観光 風評被害の払拭が急務だ(4/29)




以下引用



読売新聞 2016年04月29日 03時02分
社説:ボランティア 安全に留意して被災地支援を


 熊本地震被災地で、ボランティア活動が本格化している。大型連休には、大勢の人が被災地に足を運び、支援に汗を流すことだろう。
 善意の力が、被災者の生活再建につながることを期待したい。
 ボランティアの受け入れは、地元の社会福祉協議会が開設した災害ボランティアセンターが窓口となっている。避難者が多い熊本市や益城町など、熊本県内の15市町村に設置された。
 センターは、住民の要望を聞いた上で、インターネットを通じて必要な人数や作業内容を発信し、訪れたボランティア希望者を現場に振り分けている。
 被災家屋の清掃や家具の移動、避難所の運営支援など、作業内容は様々だ。希望者の体力などに配慮した人員配置が大切である。
 特定の市町村にボランティアが集中しないようにするため、県の社会福祉協議会が調整役を派遣するといった工夫も必要だろう。
 被災地では、余震が頻発している。大雨による土砂災害の恐れもある。ボランティアの人たちが二次災害に巻き込まれないよう、センターは被災現場の状況を正確に把握しておかねばならない。
 熊本市では、壊れた屋根に雨漏り防止用のブルーシートをかけてほしいといった要望が多い。しかし、「応急危険度判定」で問題のあった建物へのボランティアの派遣は見送っている。
 安全確保が最優先であることを考えれば、適切な判断である。
 参加する側にも細心の注意が求められる。ヘルメットや防じんマスクなどで身を守るだけでなく、万が一に備え、ボランティア保険への加入も欠かせない。
 ボランティアの募集対象を地元住民に限っている地域も多い。
 全国から受け入れていた益城町では、大型連休中は県内在住者に限っている。宿泊先の確保が厳しいことなどが理由だ。
 ボランティア活動に向かう人たちの車で道路が渋滞し、支援物資の輸送が滞るような事態になっては、本末転倒だ。参加希望者は被災地に赴く前に、現地の状況を自らチェックしてもらいたい。
 災害ボランティアは、1995年の阪神大震災で注目された。2004年の新潟県中越地震や11年の東日本大震災で定着した。
 実績を積んだ約90のボランティア団体が、今回も現地入りしている。団体間で活動情報を共有する新たな取り組みも見られる。
 自治体と連携し、きめ細かな支援を続けていきたい。
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日本経済新聞 2016/4/29付
社説:被災者向け住宅の確保急げ


 熊本県などで発生した地震から2週間余りが過ぎ、避難者はなお3万人を超す。水道などの完全復旧を急ぐと同時に、避難所の生活環境の改善が必要だ。被災者の生活再建にも乗り出したい。
 まず、400カ所を超す避難所の衛生を保ち、被災者の不便や不安を減らすことが急務だ。一部の避難所ではノロウイルスによる感染症も発生している。
 巡回する医師や看護師らが目配りし、被災者が気楽に相談できる体制を整えたい。車中泊を続ける人にエコノミークラス症候群への注意を促すことも欠かせない。
 避難生活の長期化を避けるためには仮設住宅の早期整備が要る。プレハブ住宅の建設が基本になるが、民間などの賃貸住宅を借り上げる「みなし仮設」も積極的に確保すべきだろう。
 熊本県は全体で4200戸を整備する方針だ。県外の自治体が公営住宅を提供する動きもある。県内の物件で足りなければ、県外に一時的に移ってもらい、仮設住宅が完成した後に戻ってもらうような柔軟な対応も考えるべきだ。
 仮設住宅への入居では高齢者や障害者への配慮が欠かせない。阪神大震災では独り暮らしの高齢者が仮設住宅で孤立し、孤独死に至るケースもあった。できるだけこれまでの集落単位や隣近所の関係を保てるような入居を働きかける必要があるだろう。
 熊本県によると、被災した住宅は一部破損を含めて3万棟を超す。国土交通省の集計では建物の応急危険度判定で「危険」とされた物件は8400棟に上る。最終的にどれだけの住宅が必要かまだ判然としない。
 仮設住宅に入るためには住宅の被害の程度を示す罹災(りさい)証明書が要る。しかし、庁舎が被災した市町村を中心に証明書の発行作業は遅れている。他の自治体職員の応援が必要だ。
 避難所生活から脱することは生活再建の第一歩になる。政府と自治体、民間が協力して被災者への住宅提供に全力を挙げたい。
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河北新報 2016年04月29日金曜日
社説:防災・減災 政府の災害対応/復興も見据えた専任省庁を


 耐震化が遅れた建物が倒壊する。必要な物資や人手が届かない。劣悪な避難環境で命を落とし健康を害する。先行きの暮らしに不安が募る-。
 熊本地震では、東日本大震災など過去の災害で見られた幾多の無念や混乱が繰り返された。警戒が薄い地域で起きた前例のない連続震度7の直下型地震であり、災害に混乱はつきものだとしても、被害軽減の対応には悔いが残る。
 防ぎ得た犠牲や被害が多々あったことを見れば、今度こそ災害に向き合う姿勢が根本から問われる事態になったと受け止める必要がある。
 地震、津波、噴火、台風などが常時襲う「災害大国」にあって、現在の防災の構えは果たして十分と言えるか。問題意識を深め、共有すべき段階に至ったと考えたい。
 政府で言うと、「防災省」創設の議論は早急に検討すべきテーマの一つだろう。
 災害対応は現在、内閣府の担当部門が防災啓発から被災後の復旧作業の調整、被災者支援までを幅広く担う。
 約100人が防災担当相の指揮下で動くが、関係省庁からの出向を含めた混成部隊であり、担当相は国家公安委員長や消費者担当相など六つの担務を兼任している。
 南海トラフ巨大地震、首都直下地震など国難に直結する災害も予想される中、災害危機管理を担う中枢としては十分とは言えない位置付けにあり、専従の独立省庁の必要論はずっとくすぶってきた。
 熊本地震を受け、政権内でも石破茂地方創生担当相が「危機管理は常に最悪の事態を想定しなければならない。専任閣僚を置くことを考えてもいい」と述べるなど、専任省庁の必要論が再燃している。
 災害対応は関係省庁が所管分野で即応する体制を整えており、それで十分との声がある。菅義偉官房長官は「平時から大きな組織を設ける必要性は直ちに見いだしがたい」と否定的な見解を示し、政府としては静観の構えだ。
 しかし、そもそも犠牲防止や被害軽減の要点が事前の備えにあることを考えれば、当を得た発言とは思えない。
 建物の倒壊防止、物資のスムーズな供給、被災者に過度の負担を強いない避難所の運営などは、全て事前の取り組みがなければ改善できない対策であり、平時にこそ強力に推進すべき課題のはずだ。
 被災前や被災直後だけでなく、記録や教訓の伝承、活用をはじめとして復旧復興過程まで見据えた息の長い施策とフォローがあって初めて、備えの呼び掛けは実を結ぶ。
 防災と復興を不可分のものと捉えるならば、災害時に暫定的に設けられる復興担当組織の機能も事前に織り込み、災害と被災地に対応する施策を総合的に統括する組織こそが必要になっている。
 「仙台防災枠組」を採択した昨年の国連防災世界会議でも確認されたように、日本は世界、アジアの防災をリードすべき立場にあり、防災強化の看板組織の創設は国際的にも歓迎されることだろう。
 国の役割は国民の命と暮らしを守ることに尽きる。災害対応を最優先、最重要の政治課題と捉え直し、踏み込んだ議論を進めてもらいたい。
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信濃毎日新聞(2016年4月29日)
社説:学びの機会を支えたい 被災地の子供


 新学期が始まって間もなく熊本地震が襲った。被災地では学校に通えない子どもたちが多数いる。
 休校の長期化も予想される学校が多い中で子どもたちの学びの機会をどう確保するのか。ひとしく教育を受ける権利を保障した憲法に関わる問題だ。支援のあり方を考えたい。
 最初の最大震度7の地震が発生してから2週間のきのう。休校になっている熊本県内の小中高校、特別支援学校は公立だけで200校余に上った。少しずつ再開しているが、熊本市を中心に大幅に遅れる可能性がある。
 休校の理由は主に二つある。
 一つは学校が被災しているケースだ。建物被害が確認された学校は県立高校の約4分の3、市町村立の小中学校の8割超を占める。校舎や関連施設が損壊したり、水道やガスなどのライフラインが寸断されたりしている。
 もう一つは多くの被災者が寝泊まりしていることだ。学校は優先的に耐震化され、避難所に指定されている。余震が収まらず、避難者は3万人を超す。
 ほかに、建物の被害は軽微でも通学路の安全を確保できないとして休校にしている学校もある。
 熊本市教委はプレハブ校舎の建設を検討している。完成までに2〜3カ月はかかる。
 文部科学省は、仮設住宅などの転居先が整備されるまで避難者に校舎の開放を続けるよう要請している。やむを得ない措置だが、5月中に着工する方針の仮設住宅の建設も完成まで少なくとも1カ月かかる。
 この間の子どもたちの学習をどう支えるのか。避難所で暮らす子どもから「勉強が遅れてしまう」という不安の声が出ている。学校関係者は、夏休みや冬休みだけでは授業の穴埋めができない恐れがあると言う。
 再開した学校を間借りする案もあるが、収容力は限られる。被災した先生が少なくないことも考慮しなくてはならない。
 5年前の東日本大震災。茅野市は市民の要望を受け、市に登録した家庭で被災地の児童がホームステイし、市内の学校に通えるようにした。児童を迎えた学校では、それを契機に防災学習につなげたという。
 熊本では既に親戚を頼って県外に避難した子どもが当地の学校に通うケースも増えている。そうした縁がなくても子どもを受け入れる態勢を選択肢の一つとして築きたい。一緒に学ぶ子どもたちにとってもプラスになるはずだ。
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[京都新聞 2016年04月28日掲載]
社説:新幹線の安全  地震対策を再点検せよ


 熊本地震の被害で分断されていた九州新幹線がきのう、全線で営業運転を再開した。
 最初に最大震度7を記録した14日夜の地震で回送列車が脱線したほか、高架橋のひび割れや防音壁の落下など多数の損傷を負った。
 地震による新幹線の脱線は半世紀余りの歴史で3例目だ。被災から13日後の全線復旧は、2004年の新潟県中越地震の66日、11年の東日本大震災の49日に比べ相当に早い。余震が続く中、JR九州は「ゴールデンウイークまでに」と作業を急いで全通にこぎつけた。
 当初は被害区間を徐行するなど通常より本数を減らした運行となるが、九州を南北に貫く大動脈の復旧は、被災者の生活再建や復興への後押しになろう。
 ただ、高速・大量輸送を担う新幹線がまたも脱線した事態は重く受け止めねばならない。「地震列島」でいかに安全運行を確保するか、JR各社には地震対策のさらなる強化が求められよう。
 今回の現場は熊本駅の南方のカーブで、時速80キロで走行中だった全6両が脱線する初の事態となった。新幹線は地震の初期微動を検知して自動停車させるシステムを備える。今回も作動したが、本格的な揺れがほぼ同時に来る直下型地震では効果が薄いとの指摘が改めて実証された形だ。
 回送中で乗客がおらず、運転士も無事だったのは幸いだった。高速で営業運転中なら多大な人的被害が出た可能性は否定できない。
 避けがたい急激な揺れでも脱線を防ぐため、JR各社は中越地震を教訓にレールに平行して敷設する「脱線防止ガード」設置を進めてきたが、今回の現場は未設置だった。JR九州の設置計画は上下線計513キロのうち55キロ(完了48キロ)で、震源となった日奈久、布田川両断層帯は対象外だった。
 ガード設置には1キロ当たり1億円前後かかり、工事も深夜に限られるため優先順位をつけるのはある程度やむを得ない。ただJR東海の6割近い設置計画に比べてJR九州は約1割と危機感が薄かったのは否めない。
 JR九州は、ガード設置範囲の拡大を検討する方針だ。活断層や今回の現場のようなカーブへの対策を含め、他の各社も運輸安全委員会の調査や専門家の意見も踏まえて地震対策を再点検し、教訓を生かしてほしい。
 想定を超える災害が前例のない新幹線の大惨事を招く危険性を自覚し、事業者や行政、専門家が最新の技術と知見を集めて不断の安全性向上に努めねばならない。
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神戸新聞 2016/04/29
社説:福祉避難所/介護現場の応援が急務だ


 熊本地震の被災地では、高齢者や障害者らを支える「福祉避難所」の開設や受け入れが難航している。
 最も人口の多い熊本市は、災害時の利用を最大約1700人と想定していたが、実際の利用は100人超にとどまっている。介護や生活支援などに当たるスタッフの人手不足が最大の理由とされている。
 特別な配慮を必要とする人たちを守るには、被災地で確保できない福祉のマンパワーを補う、広域的な取り組みが急務だ。
 福祉避難所に指定された被災地の高齢者福祉施設などは、入所者の安全確保や介護などに追われている。多くは居室もほぼ満杯の状態だ。
 スペースがあっても職員数が足らず、被災者の支援にまでなかなか手が回らない。現状では被災者対応に限界があり、中には受け入れを断るケースもあるという。
 熊本市は、災害時に福祉避難所として使用する協定を民間の高齢者施設など176カ所と結んでいた。しかし、避難所を開設しているのは30カ所余り。次第に増えてはいるが、事前の計画には程遠い。
 福祉避難所に入れない高齢者や障害者は、一般の避難所で厳しい状況に置かれている。寝たきりの人、目や耳が不自由な人などは十分な支援を受けられない。厳しい避難生活が長引けば、体調の悪化で命に関わる恐れが指摘されており、早急に改善しなければならない。
 福祉避難所は、多くの高齢者や障害者らが被災した阪神・淡路大震災を機に必要性が指摘された。2007年の能登半島地震で初めて設置されたが、兵庫県内ではそれに先だって福祉施設やNPOなどがさまざまな支援の実践を重ねてきた。
 県内には、熊本の福祉避難所に紙おむつや介護食などの支援を始めた自治体もある。そうした物資の支援に加えて、これからは介護などの専門職や経験者らが現地に出向く「人の支援」が重要になる。
 もともと介護職は他業種より給与水準が低く、熊本でも慢性的な人材不足が続いている。そこに地震被害が重なり、福祉避難所の現場からは「疲労困憊(こんぱい)でいつまで持つか」と悲鳴に近い声が聞かれる。
 被災地では福祉避難所で活動するボランティアの募集も始まった。多くの人の力を結集したい。それが現地の介護力を支えることになる。
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山陽新聞(2016年04月29日 06時22分 更新)
社説:新幹線地震対策 「直下型」の弱点克服急げ


“地震列島”の上を走る高速鉄道の安全性を高めるさらなる対策が急務だ。熊本県で震度7を観測した地震で、九州新幹線の回送列車が脱線した事態を踏まえ、JR九州が脱線防止装置の設置拡大を検討している。
 脱線は最初の揺れがあった14日夜に起きた。熊本駅付近の本線上を時速約80キロで走行中、運転士が揺れに気付いてブレーキをかけたが、6両全てが脱線した。地震によって新幹線が脱線したのは、2004年の新潟県中越地震時に営業運転中だった上越新幹線、11年の東日本大震災時に試運転中だった東北新幹線に続いて3度目だ。
 幸い、回送列車だったため低速で乗客もいなかった。もし客を乗せて二百数十キロの速さで走行中だったらと思うとぞっとする。非常ブレーキが作動してもすぐには止まれないため、対向の新幹線と、脱線してレールをはみだした車両とが衝突して大惨事につながる可能性も否めない。
 1995年の阪神大震災では、新幹線の高架橋が落下した。それを機に、構造物の耐震補強対策が行われた。線路が揺れだす前にいち早く初期微動を感知し、緊急停止させる早期地震検知システムも改良が重ねられてきた。しかし、今回のような直下型地震の場合、いきなり揺れに見舞われるため、安全に停止できるとは限らない。
 こうしたシステムの限界は中越地震で露呈していた。その教訓を踏まえ、JR各社は車輪がレールから外れたり、仮に外れても車両が横転したりしないような装置の設置を進めている。JR九州は、上下線合わせて513キロのうち55キロに設置する計画を立て、48キロ区間で工事を済ませている。計画が全区間の約1割にとどまっているのは「1キロ設置するのに1億円かかる」というコストの高さがネックになっているためだ。
 今回脱線した場所に装置は付いておらず、今後の計画にもなかった。大規模な活断層の近くなど、より危険度の高い場所を優先させているためという。事故は想定を超えてどこでも起こりうる。まさにそう痛感させられる。
 脱線や横転を防止する装置は、東海道新幹線では上下約千キロのうち、東海地震で強い揺れが予想される静岡県内など6割弱の区間で設置を計画している。山陽新幹線は上下約1100キロのうち、新大阪―姫路間の約110キロで設置済みで、さらに広島―博多間のうち約110キロに設置する予定だ。地震の発生確率などを基に設置区間の優先順位を決めている。比較的地震が少なく、断層も多くはない岡山県内の区間は今回の対象には含まれていない。
 熊本地震は、新幹線の地震対策に終わりがないことをあらためて浮き彫りにした。JR各社は、脱線防止装置の設置前倒しや、予定のない区間のリスクを再検討するなど対策を急がねばならない。
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中国新聞 2016/4/29
社説:熊本地震と福祉避難所 機能不全補う支援策は


 熊本地震の発生から、2週間が過ぎた。配慮の必要な高齢者や障害者、妊婦などを受け入れるはずの「福祉避難所」が、想定通りに機能していない現実が浮き彫りとなっている。
 民間アパートなどを借り上げる「みなし仮設」の受け付けがやっときのう、一部の被災地で始まった。避難所暮らしが長引く恐れもある。自分の力だけでの生活が難しい災害弱者に対する支援を急ぎたい。
 介助の手が行き届かず、避難所で亡くなる「災害関連死」が相次いだ1995年の阪神大震災の教訓から、福祉避難所は制度化された。市町村が指定し、災害救助法に基づいて国が費用の一部を負担する。
 国の指針で相談や支援の体制に加え、プライバシーを保てる居室も可能な範囲での確保が求められている。自閉症や認知症の人は、環境が変わるとパニックに陥りやすいからだ。こうしたことから指定先は、介護事業所が大半を占める。
 今回、震度6強に見舞われた熊本市では、「福祉避難所」協定を結んでいた民間事業所など176施設のうち、受け入れの進んだ施設は被災後1週間以上たっても約2割にとどまった。震度7を記録した益城町(ましきまち)や6強だった南阿蘇村では、指定先のどこも開設に至らなかった。高齢者や障害者は一体、どこに身を寄せているのだろう。
 指定先の施設の多くが震災に遭った上に、施設職員自らも被災者となってしまい、手が回らなかったらしい。福祉避難所の趣旨が理解されておらず、一般の被災者が駆け込んでしまった面も指摘されている。
 こうした事態を見越し、熊本県は災害弱者のケアに回る機動的な「災害派遣福祉チーム」を創設していた。救急治療の必要を見極める「災害派遣医療チーム」の介護版で、介護職員を中心に600人以上を登録し、研修会も重ねていた。
 ところが初出動となった今回は始動が大幅に立ち遅れてしまった。今週に入って、ようやく2人ずつの3組が熊本市や益城町を回りだしたという。
 仮設住宅への入居が軌道に乗るまで、避難所生活を余儀なくされる。災害弱者や家族に手を差し伸べる方策が急がれよう。その中で熊本の外への「疎開」も考えていい。例えば同じ九州や西日本の県に「福祉避難所」を拡大し、一時的な受け入れはできないものか。
 今回、見逃せないのは、いざというときに福祉避難所になるのが介護事業所ということだ。内閣府の全国調査によると、指定先の約6割は高齢者施設で、障害者施設が約2割に上る。
 介護の現場は、ただでさえ疲弊している。本来の入所者で手いっぱいのところへ、震災が追い打ちをかけることになりかねない。福祉避難所の運営はつまり、福祉ニーズの把握やケアに当たる人手が鍵となる。
 全国を上回る調子で高齢化が進む中国地方では、地域で暮らす要介護の高齢者や認知症の人が増え続ける。障害者が困らぬよう、できる限りの配慮を義務付けた障害者差別解消法も今月施行された。福祉避難所の機能不全は、人ごとではない。
 被災地熊本の状況を見つめ、支援策を考えることは、同じ震災列島に住んでいる私たちの足元の宿題でもある。
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熊本日日新聞 2016年04月29日
社説:震災と観光 風評被害の払拭が急務だ


 きょうから大型連休が始まる。震災に見舞われた熊本にとっては、これまでにない試練の連休となろう。例年、多くの行楽客を集めてきた県内の観光地は甚大な被害を受けた。だが、一方で急ピッチで復旧を遂げている所もある。険しい道であるのは間違いないが、それらを足掛かりに復興へとつなげたい。
 県内の観光施設や文化財のダメージは大きい。熊本市のシンボル・熊本城では天守閣が無残な姿をさらし、「武者返し」の石垣もあちこちで大きく崩れている。水前寺成趣園の池は干上がり、底が8割方露出した。
 山都町の国指定重要文化財・通潤橋は橋の内部を通る石管が破れて漏水。16日未明の「本震」直後は、橋のアーチ部分から漏れた水が、いくつもの筋をつくってカーテン状に流れ落ちた。放水再開の見通しは立っていない。
 “全国区”の観光地・阿蘇市では阿蘇神社の楼門が倒壊。内牧温泉の各施設では、建物や設備の被害のほか、温泉の湧出が突然止まったり、湯量が減ったりするトラブルも続発した。
 さらに、阿蘇への主要アクセスである国道57号とJR豊肥線が寸断され、大規模な土砂崩れで阿蘇大橋が崩落した。阿蘇市観光協会の26日時点の調査では、熊本地震に伴う宿泊キャンセルは加盟44施設で計10万9567人に上っている。
 だが、一方でいち早い復旧を遂げ、受け入れ態勢を整えた観光地もある。全国的に人気が高い南小国町の黒川温泉では、露天風呂の損壊などの被害はあったが、18日から順次営業を開始し、ほぼ通常状態に戻りつつある。山鹿市の平山温泉も大きな被害はなく、天草地方も比較的被害は少ない。熊本城近くの「桜の馬場城彩苑」は、多くの店がきょうから営業を再開するという。熊本の観光地の層の厚さをあらためて示したといえよう。
 しかし、これらの地域では風評被害により、予約のキャンセルが相次いでいる。観光キャンペーンの展開や、地域の実情を国内外に広く知らせるなど、官民が協力して風評被害を払拭[ふっしょく]することが急務だ。九州新幹線が全線復旧し、山陽新幹線との相互乗り入れが再開された。九州自動車道も、きょう全線で開通する見通しとなった。これらは大きなプラス材料だ。
 震災による県民の心身の痛手は大きい。家族を、家を失った人、恐怖と不安で体調を崩している人も大勢いる。観光施設の経営者の中には、そんな状況下で仕事に打ち込むことに心苦しさを感じる人もいるようだ。だが、多くの県民は、以前の日常を取り戻すことを願っている。観光地に多くの人が訪れることは、その一助となるのではないか。
 今、求められているのは、失ったものを数える「引き算」の発想ではなく、できるところから少しずつ前へ進む「足し算」の考え方だろう。県民の頑張りと、観光の底力を全国に示す連休にしたい。
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