2016-05-02(Mon)

熊本地震 住宅等被災地支援 社説等160501-02

子供たち--地震で負った心の傷癒やそう  仮設住宅住宅対策--「生活の質」にも配慮を 少しでも被災者に安心を

<各紙社説・主知・論説>
読売新聞)熊本の子供たち 地震で負った心の傷癒やそう(5/2)
産経新聞)熊本地震の教訓 耐震の先送り許されない(5/2)
北海道新聞)福祉避難所 自治体連携も考えたい(5/2)
岩手日報)仮設住宅の整備 「生活の質」にも配慮を(5/2)
熊本日日新聞)震災の住宅対策 少しでも被災者に安心を(5/2)
********************************
信濃毎日新聞)熊本地震 被災地への支援を息長く(5/1)
福井新聞)被災者支援 「共感の反作用」が心配だ(5/1)
南日本新聞) [大型連休] 被災地に寄り添いつつ(5/1)




以下引用



読売新聞 2016年05月02日 06時00分
社説:熊本の子供たち 地震で負った心の傷癒やそう


 熊本地震で休校を余儀なくされた小中学校の多くが、大型連休前の授業再開を果たせなかった。不自由な生活の続く子供に対し、学習支援と心のケアを充実させたい。
 今回の地震で、熊本県内の小中学校は、校舎の損壊など深刻な被害を受けた。避難所として校舎が使われているケースも多い。影響を受けた児童・生徒は10万人を超えるとされる。2日時点で約3割が休校のままだ。
 熊本市教育委員会は、5月10日をメドに市立の学校を再開させると発表した。他の市町村も順次、再開を予定している。
 だが、建物の応急危険度判定では、倒壊などの危険があると判定された学校施設が、熊本市だけで134棟に上る。避難所解消の具体的な見通しも立っていない。
 県内の全小中学校では、今年度の全国学力テストが中止された。休校がさらに長引けば、学習に大幅な遅れが生じかねない。
 馳文部科学相は、支援を急ぐ考えを表明した。子供や保護者の不安を和らげるため、速やかに具体策を示すべきだ。
 子供たちは、慣れない避難所暮らしや車中泊で、生活のリズムを崩している。心身の健康を損なうことが懸念される。
 とりわけ心配なのが、心の傷だ。最大震度7が観測された前震や本震は、子供たちに恐怖心を植えつけただろう。追い打ちをかけるように余震が続く。
 一人一人について影響を的確に見極め、きめ細かなケアを実施することが重要だ。精神科医や臨床心理士らの協力も欠かせまい。
 早期の学校再開こそが子供の心のケアにつながる。阪神大震災の経験から、兵庫県の教員チームはそう分析する。級友との会話などでストレスが軽減されるからだろう。過去の災害で培われた知見を基に子供たちを支えてほしい。
 避難所などで、乳児が泣きやまないケースが目立つ。幼児が親にしがみついて離れない「赤ちゃん返り」のような事例もある。
 余震におびえる子供を、しっかりと抱きしめる。不安や恐怖を口にし始めたら、じっくりと耳を傾ける。子供が心の平静を取り戻すために、周囲の大人は絶えず気を配る必要がある。
 避難所生活の調和を乱してはいけないと、無理をして「良い子」を演じる子供もいるという。
 周囲に気兼ねすることなく、伸び伸びと遊べるようにすることも大切だ。避難所には、そのためのスペースも確保したい。
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産経新聞 2016.5.2 05:02
【主張】熊本地震の教訓 耐震の先送り許されない


 地震から命を守るためには、まず第一に建造物の安全性を高めなければならない。
 熊本地震では、耐震化の重要性が改めて浮き彫りになった。
 4月14日夜の最大震度7から続く熊本地震は、活断層を震源とする直下型地震では過去に例がない連鎖を起こし、被害が拡大した。
 熊本県内で全半壊した建物は1万5千棟を超える。地震による直接的な犠牲者の多くが、倒れた家屋や家具の下敷きになった。
 震度7の激しい揺れに2度襲われた益城町では、古い民家が壊滅状態となった。また、昭和40年に建てられた宇土市役所は、鉄筋コンクリートの5階建て庁舎が崩落寸前に見えるほどゆがんだ。
 昭和56年以前の古い耐震基準の建物が地震に弱いことは、平成7年の阪神大震災から指摘されてきた。補強や建て替えによる住宅の耐震化率(平成25年時点)は全国平均で82%、熊本県は76%だ。
 内閣府が行った防災意識調査では、耐震補強工事を「実施するつもりがない」という回答が、東日本大震災前(21年)の39・8%から、震災後(25年)は48・1%に増加している。
 「費用がかかる」(43・5%)「必要性が実感できない」(22・8%)というのが積極的でない主な理由だ。補助金制度などを用いた行政の努力だけでは耐震化は進まない。意識改革が必要だ。
 震度7は日本列島のどこで、いつ起きてもおかしくない。耐震化の必要性は「命を守るため」であることを、一人一人が心に刻みつけるべきだ。
 熊本地震では、新しい耐震基準に適合した建物でも全半壊した事例がみられる。1階が押しつぶされたマンションもあった。
 新築時には震度7に耐えられるとされても、経年劣化で強度が低下している可能性がある。定期的な検証や補強で、耐震性を維持、強化することが大切だ。
 熊本空港はターミナルビルの天井崩落で運航不能になった。照明の落下で避難所として使えなくなった体育館もある。天井は耐震評価の死角になりがちだが、安全確認を忘れてはならない。
 学校や病院、空港、そして市役所も、災害から住民の命を守る拠点である。財政事情などを理由として、耐震化を先送りにすることは、許されない。
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北海道新聞 2016/05/02 08:50
社説:福祉避難所 自治体連携も考えたい


 熊本地震の被災地では発生から2週間を過ぎても、多くの人が避難生活を強いられている。
 とりわけ心配なのが、高齢者や障害者だ。
 介護や手助けが必要なこうした人たちを、災害時に受け入れる施設として福祉避難所がある。
 ところが、今回の地震ではそれが十分に機能しなかった。避難所自体が地震の影響を受けたケースが多かったためだ。
 お年寄りや障害のある人たちは、一般の避難所ではより大きなストレスを受ける。生命の危機にも直面しかねない。
 災害が起きても、安心して避難できる環境を整えておくのは、自治体の大きな役割だ。単独ですべてをまかなうことにこだわらず、あらかじめ周辺自治体との協力体制を築いておきたい。
 福祉避難所は、1995年の阪神大震災で、多くの高齢者、障害者が避難生活で震災関連死した反省から生まれた。
 国の指針に沿って、市町村が福祉施設などと協定を結び、避難所に指定する。2007年の能登半島地震以降に本格化し、指定施設は年々増えている。
 しかし今回、熊本市で福祉避難所として開設できたのは指定176カ所のうち2割だ。受け入れを最大1700人と想定したが、利用は200人にすぎない。
 最大震度7の益城町(ましきまち)は、指定5カ所すべてが開設できていない。
 自治体と協定を結んでいた施設側が、被災で人手不足に陥ったことが大きな理由だ。
 加えて、施設自体が損傷したり、介護に使う物資が不足したりしたケースもあったようだ。
 その教訓を生かしたい。
 災害時には、被災地域のマンパワーや物資、施設がダメージを受け、福祉避難所として機能できなくなることもある程度、想定しておかなければならない。
 熊本市の場合は、福岡市と北九州市の申し出により、福祉避難所の入所希望者を急きょ、必要に応じて両市の施設で受け入れてもらうことになった。
 自治体は災害に備えて、こうした近くの自治体との提携なども考えておくべきだろう。
 気になるのは、道内の179市町村のうち4割近い67自治体で、まだ一つも福祉避難所を指定できていないことだ。
 指定を急ぐことはもちろんだが、熊本地震を踏まえて、自治体間の協力についても積極的に検討してもらいたい。
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岩手日報 (2016.5.2)
論説:仮設住宅の整備 「生活の質」にも配慮を


 2万人以上が避難生活を続ける熊本地震被災地。倒壊の恐れがある「危険」と判定された建物が1万3千棟を超える中、熊本県が仮設住宅の建設に着手した。
 既に2100戸分の予算を確保。みなし仮設や公営住宅の提供も含め、住まいの再建が本格化している。
 今回の地震の特徴は、頻発する余震だ。家屋倒壊の不安から車中泊を続ける被災者に、エコノミークラス症候群が多発。避難所でノロウイルスの集団感染が発生するなど、避難環境は良くない。
 それだけに、一日も早い仮設住宅の整備が望まれる。だが中長期的には、スピード優先の弊害も深刻だ。東日本大震災などの経験を生かし「生活の質」にも十分に配慮して整備してほしい。
 「今後の災害の備えにも役立ってほしいとの思いで調査した。だが、こんなに早く災害が起きるとは」
 4月末、陸前高田市で開かれた仮設住宅長期居住者の健康調査報告会。冒頭で、釜石・大船渡保健所の久保慶祐所長は熊本地震に言及した。福岡県久留米市出身で、実家が一部損壊したという。
 調査は2015年度、陸前高田市と大槌町で実施。世界保健機関(WHO)の評価尺度「K6」を用いて住民の心の健康度を調べた結果、仮設住宅生活が長期にわたることで、精神的に疲弊していることが分かった。
 今回は久慈と宮古、宮城県気仙沼、福島県いわき市の保健所も、管内の仮設住宅居住者の健康調査を実施。被災3県の状況も加味すると、仮設住宅での暮らしやすさが、心の健康に影響している可能性が浮かび上がった。
 生活の質を左右する主な要因として考えられるのが、断熱性や防音性など住居自体の快適性、日当たりや交通アクセスなど立地条件、コミュニティーの居心地の良さだ。
 熊本は地震活動の終息が見通せない中、東日本ほどではないにせよ仮設住宅暮らしが長引くことも想定される。久保所長は「可能な限り立地条件なども考慮して整備してほしい」と願う。
 仮設住宅をめぐっては、阪神大震災時の苦い経験がある。入居時に地域コミュニティーが分断され、孤独死が相次いだ。新潟県中越地震では反省を踏まえ、集落単位で入居を進めた。
 だが、東日本大震災では、津波災害ゆえ場所が限られ、短期間に膨大な住居建設が求められたこともあり、住居の質の差は大きく、カビの大量発生に伴う健康被害など数々の課題が顕在化した。
 熊本で教訓が生かせるか。都市部と農村部など地域特性に配慮し、新しいまちづくりも視野に入れた整備を望む。
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熊本日日新聞 2016年05月02日
社説:震災の住宅対策 少しでも被災者に安心を


 熊本地震の発生から間もなく3週間。九州新幹線、九州自動車道が全線開通し、電気やガスなどインフラの復旧も急ピッチで進む。一方、応急危険度判定で倒壊の恐れがある「危険」と判定された建物は県内で約1万2千棟に上る。
 余震への不安から自宅に戻れず、避難所生活や車中泊を続ける人が大勢いる。長期化すれば、体調を崩す人も増えてこよう。被災者が日常の暮らしを一日も早く取り戻せるよう、住宅の供給に全力を挙げてほしい。
 県は仮設住宅と、民間の賃貸住宅を借り上げる「みなし仮設」を合わせて4200戸確保する方針だ。既に西原村と甲佐町で1期分の仮設住宅計100戸が着工。熊本市も、南区城南町と東区沼山津近くの市・県有地に計300戸を建設することを決めた。
 仮設住宅は自治体が所有する土地などに建てるプレハブ式で、土地さえ見つかれば完成まで1カ月もかからない。同じ地域の被災者が一緒に住むので、コミュニティーを維持しやすいという利点がある。一方で、耐用年数は2年しかなく、居住性もあまりよくない。生活の質を考えれば、東日本大震災から本格導入されたみなし仮設を優先するよう求めたい。
 みなし仮設は災害救助法に基づく応急仮設住宅の一種。仮設住宅との公平性の面から部屋の広さなどに制約があるものの、仮設と同様、無償で供与される。ただし、4人以下の世帯の場合、1カ月の家賃が6万円以内の物件に限られる。準備さえ整えばすぐに入居できるので、仮設住宅の完成を待つよりも被災者のストレスは少ないはずだ。
 みなし仮設で注意が必要なのは、退去に絡むトラブルだ。居住者が被災した市町村の仮設住宅閉鎖に合わせて退去するのがルールだが、その段階で「他の場所に行きたくない」「収入がないため家賃が払えない」などを理由に拒むケースがある。東日本大震災の被災地では、行政側が立ち退きを求めて裁判を起こした例もある。
 スムーズに転居できるよう、いつになれば退去しなければならないかをあらかじめ伝えるだけでなく、日頃から生活相談に乗ったり、収入が乏しければ生活保護など福祉政策につないだりすることも重要になる。
 また、全国に約820万戸ある空き家の活用策も考えるべきだ。国土交通省は一定の要件を満たす空き家について、公営住宅として活用する方針を打ち出している。熊本地震を教訓に、その要件には、地震や土砂崩れの被害を受けにくい安全な場所に立地し、耐震性を満たしていることを求めるのは当然だろう。
 熊本市が先日実施した意向調査によると、避難所で生活する約9千世帯のうち、余震による不安などを理由に約半数が避難所にとどまりたいと考えていることが分かった。続く余震には手の打ちようがないが、せめて住まいの面で被災者が少しでも安心できるよう、あらゆる手段を講じたい。
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信濃毎日新聞(2016年5月1日)
社説:熊本地震 被災地への支援を息長く
 熊本地震は発生から2週間が過ぎた。大型連休のさなか、なお多くの人たちが避難所での生活を余儀なくされている。
 この間、大小の揺れに見舞われ続けた。減る傾向は見られるものの、一昨日には大分で震度5強の地震が起きている。
 引き続き激しい揺れに警戒しなくてはならない。不安や恐れ、心身の疲労はどれほどのものか、察するに余りある。
 いつ、どこで同じような地震が起きてもおかしくない。わが身にも起こり得ることとして被災地を息長く支援するとともに、足元の備えを見直したい。
   <想定を超える事態>
 4月14日夜に最初の地震が発生した当初、これほどの被害は誰も予想しなかったのではないか。異例続きの災害だ。
 より規模の大きい地震が16日未明に起き、こちらが「本震」と改められた。本震の後で余震が続く通常のパターンとは異なったことから被害が拡大した。
 2度とも熊本県益城町で震度7を記録している。気象庁によると観測史上初めてのことだ。
 震度1以上の地震は、2週間で千回を超えた。昨年1年間に全国で観測された1842回の半数を既に上回っている。2004年の新潟県中越地震で千回を超えたのは約1年後だった。
 最初の揺れに持ちこたえた家屋も2度目で倒壊が相次いだ。多くの建物が損壊し、一時は避難者が18万人を超えた。
 見落とせないのは、避難所に指定されている体育館や公民館などが壊れたことだ。周辺の通行止めや土砂災害の恐れといった理由も含め、熊本県内では約60カ所が全部または一部閉鎖されているという。施設の安全をどう確保するか今後に重い教訓を残した。
   <長期化を見据えて>
 市役所が使えなくなった所もある。庁舎の耐震化の遅れという課題も浮かび上がらせた。災害には想定外の事態が付き物だと思い知らされる。
 車両の脱線で不通になった九州新幹線は連休前に全線で運転が再開され、山陽新幹線との相互乗り入れも始まった。一部が通行止めになっていた九州自動車道も全線復旧している。交通の大動脈は急ピッチで回復した。
 熊本県は当初のスケジュールを前倒しし、被災者向けの仮設住宅計100戸の建設を2町村で始めた。6月中旬に完成し、入居が始まる予定だ。他の市町村でも候補地の調査をしている。
 再建への動きが進んでいるとはいえ、避難生活は長期化が見込まれる。応急危険度判定で倒壊の恐れがあるとされた建物は熊本県内で1万2千棟に上る。今後も被災状況を踏まえ、きめ細かく支援していくことが欠かせない。
 差し当たり健康被害を防ぐことが大事になる。車中泊をしていてエコノミークラス症候群と診断される人が増えている。亡くなる人も出た。中越地震で相次ぎ、リスクがあることは分かっていた。防げなかったのは残念だ。
 ノロウイルスの集団感染が発生した避難所もある。感染症への対策も万全を期してほしい。
 心のケアも課題だ。東日本大震災の際、後回しになったことを教訓に整えられた「災害派遣精神医療チーム(DPAT)」が避難所を巡回している。専門家の面談によって精神面の負担が少しでも軽くなることを期待する。
 今回の地震では、余震などによりボランティアの受け入れがままならない状況も生じた。この連休中も被災市町村の大半が受け入れを九州や県内に住む人などに制限している。現場の混乱や道路の渋滞を心配してのことだ。
 避難所の炊き出し、家の片付けなどボランティアの力が求められる場面はたくさんある。長期的な視点で支援していきたい。
   <再点検を急ぎたい>
 大災害にどう備えるか、熊本地震は多くのことを考えさせる。長野県でもそれぞれに防災・減災の在り方を再確認する時だ。
 阿部守一知事は、災害時の総合指針である県強靱(きょうじん)化計画や県地域防災計画の改定などを検討する考えを示している。
 庁舎や避難所の損壊、物資の不足やミスマッチなど、さまざまな課題が浮かんだ。介護が必要な高齢者らを受け入れる福祉避難所がマンパワー不足などでうまく機能しない例も見られた。
 強い揺れが立て続けに起きることも想定し、被害の把握や人員確保の方法など、市町村ともども対応を練り直してほしい。
 災害の規模が大きいほど公助には時間がかかる。市民一人一人の自助、住民同士の共助の取り組みも欠かせない。
 住宅の耐震化や家具の固定、非常食の備蓄などまずは基本の徹底だ。万が一の場合の連絡方法や集合場所を家族で決めておく、安全なルートを確かめておくといったことも大事になる。命を守るために何が必要か、教訓を引き出して減災につなげたい。
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福井新聞 (2016年5月1日午前7時11分)
論説:被災者支援 「共感の反作用」が心配だ


 10人の家族や親戚を失った人と、2人の肉親を亡くした人とでは、どちらがかわいそう?
 こんな問いを投げかけられれば答えに窮するだろう。数字だけを比べると前者の悲劇が重いということになるが、そんな単純な話ではないからだ。当事者にとってはそれぞれ最悪の事態であり、そもそも比較の対象にならない。
 ところが東日本大震災では、被災規模のより大きい地域や人にスポットライトが当たり、支援も集中する傾向があった。底流にあるのは、数で悲劇を測ってしまう論理だろう。その陰で社会的に見過ごされる「コールドスポット」ができ、疎外感に苦しむ人もあった。
 熊本地震から2週間余りがたった。支援が本格化していくなかで、同様の苦しみを被災者に味わわせるようなことがあってはならない。
 ■社会的孤立に苦しむ■
 被災者に支援の手を差し伸べるのは、苦境にある人に同情、共感するからだ。人間らしい感情の発露なのだが、災害の悲劇に対しては「通常の共感の作法は役に立つどころか、むしろ阻む方向に作用」すると東北学院大の金菱清教授は指摘する。
 一例を編著「呼び覚まされる霊性の震災学」(新曜社)で紹介している。宮城県塩竃市に住む高橋匡美さんである。
 自宅マンションの室内は、激しい揺れでめちゃくちゃになった。車で50分ほど離れた石巻市の実家には両親がいて、ともに津波で命を落とした。それはあまりに過酷な体験で、強力な睡眠導入剤を飲み、夜昼を問わず無理やり眠るだけの無気力な生活を送った。
 夫や子どもは無事だった。自宅が流されることもなかった。「もっとひどい思いをしている人がたくさんいる」なかで、高橋さんは「普通のおばさん」として被災者の蚊帳の外に置かれ社会的孤立に苦しんだ。
 ■被災例に軽重はない■
 震災に遭い、両親を亡くし、故郷も失った。それは人として耐えがたい悲しみである。命にかかわらずとも、自宅が倒壊したり流されたりして一瞬にして奪われることだけでも、想像を絶する異常な体験である。
 災害時には、こうした事例が同時に無数に発生する。思えばこれらの被害例に軽重は付けられないはずだが、実際には悲劇性が目に見えやすい地域の避難所や仮設住宅、お年寄りや子どもが共感の的になった。
 こうした「ホットスポット」に対し、高橋さんのような立場を金菱教授は「コールドスポット」と呼ぶ。共感の光が強く当たるほど影の部分は暗い。高橋さんの苦しみは、被災者の救いになるはずの「共感」が招いた「反作用」だったといえる。
 ■数字は実態か■
 熊本地震の死者は49人で、行方不明が1人、震災関連死は29日現在で17人。家屋の倒壊は熊本県を中心に5県で計1万棟近くに上る。
 甚大な被害である。だが、われわれは無意識に東日本大震災と比べてしまう。死者・行方不明者だけで1万8千人超。その空前の悲劇と比較すること自体がナンセンスだが、それ以上に実態を測る物差しとして数字だけに頼る姿勢が問題なのではないか。
 九州と本州をつなぐ大動脈の九州新幹線や九州自動車道が全線再開し、ボランティアによる支援活動がますます活発になっている。先の見えない避難生活のなかで震災関連死の増加も懸念されている。
 声を上げにくい人たちの思いに寄り添い、コールドスポットはつくらない。復興に向かう時期を迎えて特に意識すべきことだろう。国民の目が九州に集中すれば、復興途上の東北がコールドスポットになる。そんな事態も、もちろん避けなければならない。   (遠藤富美夫)
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南日本新聞 ( 2016/5/1 付 )
社説: [大型連休] 被災地に寄り添いつつ


 ゴールデンウイーク(GW)に入ってきょうで3日目になる。いつもなら行楽地が観光客らでにぎわう書き入れ時である。
 しかし、今年は熊本地震の影響で、熊本、大分両県をはじめ九州各地で集客がままならない観光地が多く、関係者は苦悩している。
 地震が終息せず、被災地の復旧が見通せない現状では、客足が戻るのに時間がかかるのはやむを得ない面もあろう。
 ただ、大型連休は心身をリフレッシュする絶好の機会である。被災地を支援し続けながら、行楽地などに足を運んで元気を取り戻すことも心掛けたい。
 鹿児島県の主な観光地も地震の影響が大きい。県外客が少なく、来場者が例年と比べて半数のところもあるというから痛手だ。
 大型連休中、県外客が9割を占めるという鹿児島市の観光施設では初日の29日、観光バスや県外ナンバーの車は少なかった。
 桜島フェリーも県外からの車は1割程度で、乗船待ちはほとんどなく増便もしなかった。この日の九州自動車道の全線開通に期待していたフェリー関係者は落胆を隠せなかった。
 一部区間が通行止めになっていた九州自動車道は完全復旧ではないものの、地震から15日ぶりに全線開通した。一足早く全線開通した九州新幹線とともに観光にも好材料となるに違いない。
 しかし、フェリー関係者が指摘するように、車や人の往来が活発になるまでにはもう少し時間が必要かもしれない。
 一方、県外客は少ないものの、鹿児県民らでにぎわう行楽地もある。遠出が無理なら、県内の観光地や名所などを訪ねてみるのもいい。身近にある魅力を再発見することにもつながる。
 大型連休は後半も多彩な催しが控える。鹿屋市では「ばら祭り」が開かれている。1500種3万5000株の花は壮観だ。南さつま市では、きょう「吹上浜砂の祭典」が開幕する。会場では熊本地震の義援金活動も行われる。
 東日本大震災発生後、東北地方などへの旅行のキャンセルや延期が相次いだのは記憶に新しい。
 だが、自粛が行き過ぎて消費が冷え込めば、地域経済の活力は失われる。ひいては被災地の復旧、復興にも水を差しかねない。
 九州市長会は先日、全国市長会と連名で、被災地の復旧や観光客回復に向けた支援を国に緊急要請した。石井啓一国土交通相は「観光への影響は深刻。風評被害対策など先手を打って進める」と答えた。国には具体的で速やかな対応を求めたい。
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