2016-05-05(Thu)

2016憲法記念日(3)  9条 平和主義を引き継ごう

緊急事態条項は危険だ 人権無き改憲は許されない 「お試し改憲」は疑問だ 
自民改憲案  基盤の立憲主義が揺らぐ 危うい基本的人権の尊重 平和国家が崩れていく


<各紙社説・主張>
徳島新聞)憲法(下)9条 平和主義を引き継ごう(5/3)
徳島新聞)憲法(中)緊急条項 「お試し改憲」は疑問だ(5/3)
徳島新聞)憲法(上)表現の自由 民主主義の根幹守りたい(5/3)
高知新聞)【自民改憲案(下)】平和国家が崩れていく(5/3)
高知新聞)【自民改憲案(中)】危うい基本的人権の尊重(5/3)
高知新聞)【自民改憲案(上)】基盤の立憲主義が揺らぐ(5/3)

佐賀新聞)憲法記念日 参院選へ論議深めよう(5/3)
熊本日日新聞)憲法記念日 性急な改憲志向を危ぶむ(5/3)
宮崎日日新聞)憲法記念日 重大な局面だと自覚したい(5/3)
南日本新聞)[憲法記念日] 改憲の是非を判断するのは主権者だ(5/3)

琉球新報)憲法記念日 緊急事態条項は危険だ 人権無き改憲は許されない(5/3)
沖縄タイムス)[憲法記念日に]「改正」急ぐ理由がない(5/3)




以下引用



徳島新聞 2016年5月3日付
社説:憲法(下)9条 平和主義を引き継ごう



 安倍晋三首相が憲法9条2項の改正の必要性に触れたのは、2月の衆院予算委員会での答弁だった。
 首相は、現憲法について「時代にそぐわないものもある」とし、自民党の改憲草案に言及。「9条2項を改正して自衛権を明記し、新たに自衛のための組織設置を規定するなど、将来あるべき憲法の姿を示している」と述べた。
 明言こそしなかったものの、具体的な改憲項目について「議論の深まりの中でおのずと定まってくる」と繰り返してきた首相としては、思い切った発言である。3月には改憲を「在任中に成し遂げたい」とさらに踏み込んだ。
 首相が9条の改正を「改憲の本丸」と考えているのは間違いない。
 しかし、9条は日本の平和主義の根幹である。戦後70年以上にわたり日本が他国と一度も戦火を交えなかったのも、9条があるからこそだ。
 それを今、変える必要が果たしてあるのか。条文をどう変えて、日本をどんな国にしようとするのか。
 憲法記念日のきょう、未来の世代に責任を持つ国民として、9条が存在する意味を改めて考えたい。
 首相が言うように、自民党草案は「戦争放棄」を規定した9条1項を踏襲する一方、2項を全面的に変える内容である。
 具体的には、2項から「戦力不保持」と「交戦権否認」を削除し、「自衛権の発動を妨げるものではない」と明記。新設する9条の2で「国防軍」の保持を打ち出した。
 自衛権には個別的自衛権と集団的自衛権があるが、草案は区別していない。両方を含むとの趣旨であり、集団的自衛権を全面容認する意図がうかがえる。
 安倍政権は安全保障関連法の国会審議の中で、集団的自衛権の行使を巡って、厳しい要件を付けた「限定容認」だと強調してきた。
 「集団的自衛権の行使は認められない」とする歴代内閣の憲法解釈を強引に転換した安倍政権も、さすがに全面容認には踏み切れなかった。9条の制約があるためだ。
 それでも違憲との疑いは強い。集団的自衛権の行使に当たり、政府が恣意的に判断できるとの懸念も拭えないが、9条の歯止めがなくなれば、その恐れは一層強まろう。
 国防軍は自衛隊を衣替えするものである。
 自衛隊は戦力不保持の規定により、戦力とまでは言えない「必要最小限の実力」とされてきた。その制約を取り払えば、名実共に軍隊となることができる。交戦権否認の規定も削除すれば、安全保障政策の基本理念である専守防衛は有名無実となる。
 自衛隊の活動範囲が際限なく広がり、現憲法が禁じる「他国の武力行使との一体化」が可能となるのも必至だろう。
 首相は安保法が必要な理由として、日本を取り巻く安全保障環境の激変を強調してきた。9条改正でも同様の問題意識があるとみられる。
 だが、核・ミサイル開発を諦めない北朝鮮への対応は、国際社会が連携して行うべきものだ。海洋進出を進める中国とは、軍事的な緊張を高めるのではなく、戦略的互恵関係を発展させる中で関係改善を図る必要がある。
 日本は先の大戦の惨禍を受け、二度と戦争はしないと決意した。平和主義の下、「普通の軍隊」を持てないようにしたのが9条である。その精神を未来に引き継いでいくことが、私たちの務めではないだろうか。
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徳島新聞 2016年5月2日付
社説: 憲法(中)緊急条項 「お試し改憲」は疑問だ


 憲法改正の候補に挙がっている項目の中で、有力とされるのが「緊急事態条項」の新設である。
 大規模な自然災害や外国からの武力攻撃などに対応するため、内閣に権限を集中させるというものだ。
 必要性を唱える人たちは、この条項を憲法で設けている国が多く、日本でも書き込むべきだと主張する。安倍晋三首相は「緊急時に、国家、国民自らがどのような役割を果たすべきかを憲法にどう位置付けるかは、極めて重く、大切な課題だ」と述べている。
 だが、本当にそうした条項が憲法に不可欠なのか。権限を内閣に集中させるのは危険ではないのか。疑問は多く、さまざまな観点からしっかりと検討する必要がある。
 緊急事態条項の新設を求める主張の背景には、国民の理解が得られやすく、改憲の突破口にしやすいとの思惑が見え隠れする。いわゆる「お試し改憲」である。
 これに対し、野党だけではなく、与党の公明党からも、法律で対処できるとの意見が出るのも当然だ。
 緊急事態条項は、自民党の憲法改正草案に盛り込まれている。
 首相は緊急事態が発生した場合、特に必要があると認めるとき、閣議にかけて、緊急事態宣言を出せると規定。その上で、内閣は法律と同じ効力を持つ政令を制定でき、何人も、国民の命を守るために出される国や公の機関の指示に従わなければならない、という内容だ。
 緊急事態条項が浮上したのは、2011年3月の東日本大震災がきっかけだった。未曽有の津波被害と原発事故を前に、国や自治体、関係機関の対応は後手に回った。その不手際が強い批判を浴びたためだ。
 とはいえ、この条項が憲法にありさえすれば、十分に対処できたのだろうか。
 日本には災害対策基本法や災害救助法などがあり、緊急事態に備えた仕組みは諸外国に比べて充実している。大震災でうまく機能しなかったのは、運用のまずさや準備不足が原因だったのではないか。
 求められるのは、現行法を使いこなし、足りない点があれば法改正などをして補うことだ。外国からの攻撃に対応する有事法制も既に整備されている。抽象的な条文を憲法に書き込み、屋上屋を架す必要性は乏しいだろう。
 見過ごせないのは、自民党草案が、何人も国や公の機関の指示に従わなければならないと規定していることである。基本的人権は最大限に尊重するとしているものの、過度な人権制限や政府による乱用の懸念が拭えない。
 法律の専門家らからは、発動されると「ナチスの独裁を許した全権委任法と実質的に変わらない運用をされる危険性がある」といった懸念の声が上がっている。過去の歴史を振り返ると、杞憂とは言えまい。
 他国の憲法に緊急事態条項があるのは確かだが、強権発動を盛り込んだ国でも、「国の独立が重大かつ直接に脅かされる」場合に限定するフランスや、「国会の招集が不可能なとき」に限る韓国のように、厳しい要件で歯止めをかけているのが一般的だ。
 「特に必要があると認めるとき」とする自民党草案は要件が曖昧である。
 大災害への対応という反対しにくい分野を改憲の手始めにしようとするのなら、国民軽視と言わざるを得ない。
 聞き心地の良い言葉に隠れた本質を、見極めなければならない。
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徳島新聞 2016年5月1日付
社説:憲法(上)表現の自由 民主主義の根幹守りたい


 憲法が施行されてから、3日で69年になる。戦後、日本の平和主義、民主主義を支えてきた、その憲法が大きな岐路にある。
 集団的自衛権の行使を解禁する安全保障関連法が3月に施行された。日本の安保政策の基本理念である専守防衛を変容させるもので、憲法違反との批判が根強い。
 集団的自衛権の行使は、歴代内閣が憲法9条で禁じられているとし、長年にわたって国会で議論を積み上げて定着した解釈だった。ところが2014年、安倍晋三首相は閣議決定で解釈を変更し、容認に踏み切った。
 多くの国民が反発したのは当然であり、私たちも警鐘を鳴らしてきた。
 首相は在任中の憲法改正に意欲を示している。これを踏まえ、自民党は夏の参院選後に開かれる秋の臨時国会で、改憲項目を絞り込みたい考えのようだ。
 「改憲ありき」の姿勢には強い懸念を抱く。改正の必要性も含めて、慎重に論議を尽くすべきだ。
 今年は、憲法が公布されてから70年の節目でもある。憲法が国家権力を縛る規範であることを、いま一度肝に銘じたい。
 時の権力の暴走に待ったをかけ、多様で自由な議論によって、より良いものを見いだしていくという観点で、最も重要なのは「言論・表現の自由」である。
 民主主義の基盤となる原則であり、憲法21条は「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定めている。
 自民党が12年にまとめた憲法改正草案も「一切の表現の自由は保障する」としている。問題は、公益や公の秩序を害することを目的とした活動、結社を認めないとの規定を設けたことだ。
 公益や公の秩序の範囲は、誰がどう判断するのか。恣意(しい)的な運用がなされる恐れはないのか。政府の圧力や検閲などで表現の自由が守られなかったことが、日本を戦争へと導いた。その反省を忘れてはならない。
 表現の自由を巡っては、放送局に対して「圧力」とも取られかねない注文や発言が政権与党から相次いでいる。
 14年末の衆院選を控え、自民党は在京各局に対して、街頭インタビューなどでの選挙報道の公平中立を求める文書を出した。
 昨年には、高市早苗総務相が、「クローズアップ現代」の過剰演出で、NHKに文書で厳重注意した。これに対し、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は、放送局の「自律」を侵害し、極めて遺憾だと非難している。
 さらに、高市氏は今年2月にも、放送局が政治的な公平性を欠く放送法違反を繰り返した場合には、電波停止を命じる可能性に言及した。「極めて限定的な状況のみで行う」としているが、言論・表現の自由を軽視する発言ではないか。
 放送局が罰則を恐れて、政府を批判しづらくなるのであれば重大な問題である。
 もとより、放送局が「政治的に公平であること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」などと定めた放送法4条を順守するのは当然のことだ。
 日本の言論・表現の自由の現状は、国連の特別報告者の調査結果で、深刻な脅威に直面していると警告された。
 政府、与党によるメディアへの介入に、厳しい目を向けていかなければならない。
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高知新聞 2016.05.03 08:05
社説:【自民改憲案(下)】平和国家が崩れていく


 現行憲法の三大原則の一つである平和主義をめぐる改憲論議は9条が中心になってきた。それは当然ではあるが、9条を導き出す前文の存在を忘れるわけにはいかない。
 現行憲法は「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し」とする。破局に至った戦争の歴史への反省を踏まえた平和主義の宣言だ。戦後の初心といってよい。
 これに対し、自民党の改憲草案は「先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、…平和主義の下、…世界の平和と繁栄に貢献する」。戦前の歴史を省みる意思はないようだ。
 また、現行憲法の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という部分は、「ユートピア的発想」だとして跡形もない。9条の変更を念頭に置いていることは間違いない。
 理想論といえば、その通りかもしれない。だが、戦後の再出発に当たって掲げた平和への志を簡単に捨て去ってよいものだろうか。
 9条について自民草案は、国際法を踏まえて「戦争の放棄」は受け継いでいるものの、現行憲法を特徴づける「戦力の不保持」と「交戦権の否認」を削除。「自衛権」を明記して集団的自衛権を行使できるようにするとともに、「国防軍の保持」をうたっている。
 「違憲論」もある中、歴代の自民党政権は憲法解釈に基づき、自衛隊を「専守防衛のための必要最小限度の実力組織」としてきた。いまや世界有数の実力を保有し、災害時などに活躍する自衛隊を憲法でどう位置付けるかは、あらためて論議してよいだろう。
 だが、国防軍とし、集団的自衛権行使も問題ないとなれば、自衛隊は様変わりする。安倍政権は解釈改憲によって集団的自衛権行使を容認したが、憲法の制約には配慮せざるを得なかった。
 その制約が外れると、海外での軍事活動に歯止めがかからなくなる恐れがある。専守防衛に徹することによって築いてきた平和国家が崩れていくのは避けられないだろう。
 草案が削除した、現行憲法の前文にある「これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」にも触れておきたい。「これ」とは民主や自由、平和の「人類普遍の原理」を指している。
 近代立憲主義からの逸脱のほか、国民主権や基本的人権の尊重、平和主義の変質をもたらしかねない自民草案はどう捉えるべきなのか。個々の条文にとどまらず、草案全体を貫く方向性をきちんと見定めることが不可欠となる。
 私たちは憲法を「不磨の大典」とは考えていない。私たちや子、孫らのためにどうしても必要であるなら改正してもよいが、改悪は絶対に避けなければならない。国民一人一人が主権者として熟慮を重ねた上で結論を出す必要がある。
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高知新聞 2016.05.02 08:00
社説:【自民改憲案(中)】危うい基本的人権の尊重


 前回みた近代立憲主義の中心となっているのは「個人の尊重」と「法の支配」だ。国家の優先が個人を犠牲にしてきた歴史を踏まえ、確立されたといってよい。
 現行憲法は「すべて国民は、個人として尊重される」(13条)と規定し、そのための基本的人権を保障している。さらに97条は基本的人権について「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」「侵すことのできない永久の権利」とうたう。
 自民党の改憲草案は「人として尊重される」と書き換えるとともに、97条は削除した。「個人」と「人」は大して違わないようにみえる。だが、「個人の尊重」が個人主義の原理の重視を意味していることを考えれば、個人の人権を軽視しかねない危うさがある。
 ここでいう個人主義は「自由な個人」という近代立憲主義にとって極めて重要な価値のことであり、対立するものを挙げるとすれば全体主義だろう。個人主義を批判する際に用いられる利己主義とは全く別だ。
 基本的人権の制約を巡っても、大きな違いがある。現行憲法が「公共の福祉に反しない限り」とするのに対し、草案は「公益及び公の秩序に反しない限り」と変更した。
 草案のQ&Aは「公共の福祉」は曖昧で分かりにくいとする。それは否定しないが、公共の福祉には人権を制限できるのは他者の人権だけだという制約にとどまらず、財産権などでは公共の利益による制約も含めるようになっている。
 公益・公の秩序と書き換えても曖昧さが消えるわけではない。これまで以上に国益や公共の目的を前面に出して、人権を制約できるようになるだろう。制約するための法律制定が容易になれば、人権保障は非常に危うくなる。
 とりわけ問題なのは、集会や言論などの表現の自由にも公益・公の秩序による制約を加えたことだ。Q&Aは公の秩序について「『反国家的な行動を取り締まる』ことを意図したものではない」と釈明するが、それ自体が危うさの証しといえる。
 安倍首相は「価値観を共有する国々との連携」をよく口にする。民主主義や法の支配、人権尊重などの普遍的価値観のことであり、その基盤である近代立憲主義も当然含まれるだろう。
 「価値観外交」が中国をにらみ、対中包囲網の形成を狙っていることはいうまでもない。確かに、習近平指導部は普遍的価値を拒絶し、秩序維持を理由に言論・情報統制などを一段と強化している。
 では、改憲草案はどうなのか。Q&Aには「西欧の天賦人権説に基づく」規定を改めたとあり、「普遍」の文字を削除した一方、「日本らしさ」が強調されている。
 近代立憲主義を転換し、基本的人権の尊重も軽視しかねない内容といってよい。欧米などの民主主義国から、普遍的価値観からずれた「異質な国」と受け止められる恐れはないのだろうか。
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高知新聞 2016.05.01 08:05
社説:【自民改憲案(上)】基盤の立憲主義が揺らぐ


 夏の参院選が近づいてきた。衆院選との同日選になるかどうかはまだ分からないが、安倍首相は改憲を争点にする考えを明言している。
 選挙結果によっては、改憲への動きが加速していく可能性がある。国会が議論する際には、首相が「全てを示している」とする、自民党が2012年に作成した改憲草案を中心に進むことになるだろう。
 草案はどのような「国のかたち」を目指そうとしているのか。3日の憲法記念日に合わせて、近代憲法の本質である立憲主義や、現行憲法の国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という三つの基本原則を中心に考えてみたい。
 前文に違いがよく出ている。憲法の前文は制定の経緯や目的、基本的な原理を述べるとされ、憲法全体を貫く、土台となるべき考え方が示されているからだ。
 現行憲法の前文は四つの段落から成っているが、いずれも「日本国民は」か「われらは」で始まる。主権者が国民であることを明示するとともに、近代立憲主義を徹底するという意志の表れだろう。
 国や社会を営むための統治には国家の権力が欠かせないが、権力は常に乱用される恐れがある。国民の権利や自由を保障するため、権力を縛るのが憲法という考え方が近代立憲主義だ。
 全面的に書き換えられた自民党草案の前文はどうか。「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって…」で書きだされている。「日本国民は」が主語の段落もあるが、続くのは国の防衛や基本的人権の尊重などの義務だ。
 国民主権はうたっていても、主語の変更には国家を国民の上に置くような考え方がにじみ出ている。憲法の「名宛て人」、つまり対象は権力という立憲主義に対する無理解にとどまらず、嫌悪感のようなものがあるのではないか。
 憲法の尊重擁護義務を定めた99条の変更にも当てはまる。新たに国民に対し、尊重義務を課した。国民一人一人が憲法を大切にしなければならないとしても、義務として憲法に明記することは全く別の話だ。
 その一方で、天皇・摂政に課している尊重擁護義務は削除した。さらに、1条には天皇を「元首」とすることも加えている。
 草案Q&Aには「明治憲法には、天皇が元首であるとの規定が存在していました」とある。だが、明治憲法では主権は国民ではなく、天皇にあった。それを忘れたかのような説明には驚くほかない。
 近代立憲主義は西欧に生まれたとはいえ、いまや民主主義国共通の基盤となっている。全体主義が横行した時代の反省に立ち、より徹底するために努力を重ねてきた成果といってよい。
 自民党の改憲草案はその流れから距離を置こうとしているようにも映る。この国の立憲主義が揺らぎかねない危うさがある。
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佐賀新聞 2016年05月03日 05時00分
論説:憲法記念日 参院選へ論議深めよう


 1947年5月3日に施行された「日本国憲法」。その69回目の記念日が巡ってきた。安倍晋三首相は解釈改憲で乗り切った昨年の安保法制に続き、9条改正をにらんで今夏の参院選で憲法改正の争点化を図ろうとしている。
 昨年、安倍首相は歴代の内閣が憲法9条の下では行使できないとしてきた集団的自衛権を解禁する「安全保障関連法」を成立・施行させた。内閣法制局長官を交代させてまで“合憲”としたやり方は、多くの批判を浴びた。
 安倍首相は今夏の参院選に向けて「私の在任中に成し遂げたい」と自らの手で改憲を果たしたいと繰り返している。憲法改正の発議には衆参両院で3分の2以上の議席が必要だが、自らの残り任期からラストチャンスとなる今回の選挙で、発議に十分な議席を握っておきたいのだろう。
 首相の前のめりの姿勢ばかりが際だつが、世論はどうだろうか。
 本社が加盟する日本世論調査会が今年2月に実施した調査では、憲法を「改正する必要がある」「どちらかといえば改正する必要がある」とした改正派は54%と過半数を占めている。反対派は4割にとどまった。
 憲法改正が支持されているようだが、中身を見ていくと少々異なる。今夏の参院選で改憲派が3分の2の議席に「達しないほうが良い」が47%、「占めたほうが良い」が44%と、事情は逆転する。しかも、9条改正については「必要ない」とした人が6割近かった。
 憲法といえども不磨の大典ではなく、時代に合わせるべきだろうが、性急であってはならない。まして、平和憲法の改正には慎重であるべきだ-。そうした民意が読み取れるのではないか。
 また、今の日本では基本的な人権の観点からも、国を挙げて取り組むべき課題がある。
 いまだ復興の途上にある東日本大震災、そして多くの人々が余震におびえ、避難を余儀なくされている熊本地震である。
 憲法は、私たちの権利としてこう定めている。13条で「生命、自由及び幸福追求の権利」を掲げ、25条では「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利がある」と。被災地では、これらの権利が奪われた状態にある。憲法の原点に立ち返り、復旧復興を最優先にしなくてはならない。
 また、憲法は43条で「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」と定めている。全国民の代表であるならば、例えば、地方の声はしっかり受け止められているだろうか。
 今夏の参院選は、これまで都道府県単位だった枠組みが初めて崩れる。「鳥取・島根」「徳島・高知」の4県をふたつの選挙区に再編する合区が実施されるからだ。
 合区は最高裁からの勧告を受けての見直しだったとはいえ、地方と都市との人口の偏りは広がるばかりだ。一票の格差を機械的に解釈し、単純に人口比で議席を割り振っていくならば、地方は切り捨てられる一方ではないか。
 私たちの国の在り方を示す憲法論議は大いにやるべきだ。参院選はその意味でも良い機会になる。投票権も18歳まで広がった。若い世代も巻き込んで、じっくりと時間をかけながら憲法論議をしていきたい。(古賀史生)
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熊本日日新聞 2016年05月03日
社説:憲法記念日 性急な改憲志向を危ぶむ


 きょうは憲法記念日。憲法改正を「悲願」とする安倍晋三首相は在任中の改憲実現を目指して積極発言を繰り返している。夏の参院選では争点に据える構えだ。1947年の施行から69年を迎えた国の最高法規は、大きな転換点に立とうとしている。
 熊本県が震度7の「前震」に襲われた直後の4月15日、菅義偉官房長官は自民党の憲法改正草案に規定されている緊急事態条項に触れ、「緊急時に国家、国民が果たすべき役割を憲法にどう位置付けるかは大切な課題」と述べた。
 発言に対し、学識者からは「この緊急時に憲法改正を語ることなど、甚だしい場違いだ」との批判が浮上。連立政権を支える公明党の幹部も「災害法制をきちんと強化するのが基本。国民の権利を制限しないと対応できないということではない」とくぎを刺した。
 前例のない2度の激震に見舞われ、緊急事態のまっただ中にある熊本県民にすれば、改憲の議論など棚上げにして救命救助や避難者の支援、生活再建に全力を挙げてほしい、というのが正直なところではないか。政府は、どれだけ改憲に前のめりなのか。被災者でなくとも、違和感を感じた国民は多かったことだろう。
●具体的項目は後回し
 1955年の結党以来、改憲を党是としてきた自民党には、連合国軍総司令部(GHQ)の草案を下敷きにした「押し付け憲法」を変えたいという思いが見え隠れしてきた。改憲志向は湾岸戦争や米中枢同時テロを経てさらに勢いを増し、自衛隊に米国の世界戦略に添う行動をさせたいとの考え方も強めてきたという経緯がある。
 海洋進出を強める中国などをみても、日本の安全保障に不安を抱かせる事案は多い。ただ、そうした脅威と向かい合う手段として、改憲は本当に必要なのだろうか。
 安倍政権は昨年、多くの憲法学者が違憲と指摘する中、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法を成立させ、戦後の安保政策の大転換を実現した。次に目指すのが、夏の参院選の勝利による改憲の流れの加速である。
 憲法を改正するには、まず衆参両院でそれぞれ、総議員の3分の2以上が賛成し改正案を発議する必要がある。その上で、18歳以上の国民投票で有効投票総数の過半数の賛成を得なければならない。
 連立与党の自民、公明両党は、衆院では既に3分の2以上の議席を有している。ただ、自民党は改憲を掲げながらも参院選の公約に具体的な項目を盛り込まない見通しだ。中身を前面に出すと野党を勢いづかせ、性急な改憲論議を警戒する公明党との合意形成も難しくなる、との判断だろう。
●不可解な「お試し」
 自民党は参院選で目標議席を確保した上で、秋の臨時国会で改憲項目の絞り込みを本格化させる構えだ。大規模災害時や武力攻撃を受けた際に、内閣に権限を集中させる「緊急事態条項」から議論を進め、いわゆる「お試し改憲」を実現した後で、戦力不保持などを定めた9条の改正につなげる戦略を描いているようだ。
 自民党の改憲草案は、緊急事態条項に関して(1)内閣が法律と同じ効力の政令を制定(2)首相は必要な財政支出を行い自治体に指示(3)国民の生命、財産を守る措置に関し、国などの指示に従う義務-などを定めている。
 しかし、緊急事態条項については野党などから「現行法で十分」との声が上がる。現行の災害対策基本法と災害救助法には、国会閉会時の内閣の立法権や、首相が地方自治体の長に指示できることが既に規定されているからだ。
 4月30日に日弁連主催のシンポジウムで公表された東日本大震災の被災自治体アンケートによれば、「災害対応で憲法が障害になった」との回答は回答した24自治体のうち1自治体しかなかった。
●国民はなお慎重だ
 参院選は、こうした自民党の改憲路線に有権者が審判を下す場となる。安倍首相の戦略もにらみながら、改憲は本当に必要かを主体的に判断する必要があろう。
 だが、その前にちょっと立ち止まって考えたい。そもそも憲法の議論は、国政選挙の時期にかかわらず、国民と向き合いながら進めていくべき事柄ではないのか。
 共同通信が4月29、30の両日に実施した世論調査によれば、安倍首相の下での改憲に「反対」は56・5%で、「賛成」の33・4%を大きく上回った。国民はなお、現政権による改憲に慎重なのだ。
 熊本では今も、多くの人が避難生活を続けている。政府は今こそ「国民の暮らしを守る」という現憲法の理念の実現に全力を注いでほしい。それが被災者の、そして国民の率直な願いであろう。
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宮崎日日新聞 2016年5月3日
社説:憲法記念日 ◆重大な局面だと自覚したい◆


 69回目の憲法記念日が巡ってきた。日本国憲法が今年11月3日に公布70年を迎えるのを前に、安倍晋三首相は繰り返し改憲への意欲を示し、夏の参院選で争点に据える構えだ。さらに自民党は2012年にまとめた憲法改正草案の見直しを検討する考えを示すなど、改憲論議は加速しつつある。
 参院選の結果によってはこの流れが一層強まるだろう。憲法は大きな岐路に差し掛かろうとしている。国民一人一人が主体的に判断することが求められ、重大な局面に立っていると自覚したい。
違憲疑いある安保法
 9条改正によって自衛隊を「国防軍」として憲法に位置付け「普通の国」になることを悲願とする安倍首相は13年、衆参両院の総議員の3分の2以上による賛成という改憲発議の要件緩和を提起。
 しかし「立憲主義に反する」と猛烈な批判を浴び、狙いを憲法解釈の変更に転じた。
 そして多くの憲法学者から「憲法違反」の指摘が相次ぐ中、安全保障関連法の成立にこぎつけ、戦後の安保政策の大転換を実現した。安保法は3月末に施行され、参院選でその是非が問われよう。
 安保法では、自国が攻撃を受けていなくても他国を守るために反撃する集団的自衛権の行使を解禁したほか、他国軍への後方支援やPKOで自衛隊の活動を飛躍的に拡大したが、今なお違憲の疑いは拭えない。
 さらに首相は憲法改正について「在任中に成し遂げたい」と明言した。参院選に向け、改憲の国会発議に必要な3分の2以上の勢力確保に強い意欲を表明している。
本県で学生ら討論会
 論点の一つに挙げられるのが「緊急事態条項」だ。自民党が憲法に新設すべきだと訴えている。
 大規模災害時や武力攻撃を受けたとき内閣に権限を集中させ、迅速に対応するという考えが背景にあり、同党の改憲草案には内閣による法律と同じ効力の政令制定や、国の指示に国民が従う義務などが盛り込まれている。
 だが、内閣の緊急政令制定などは現行法でも可能との見方や、権力の乱用につながる恐れはないかとの懸念の声がある。条項の核心はどこにあるのか。平和主義、立憲主義という戦後の枠組みの中で、慎重に見定めたい。
 改憲への流れが進めば、国民投票へと進み、最終判断は国民に委ねられる。現段階で人々の関心が高いとは言えず、いかに国民が憲法を身近に感じ、それぞれの考えを持てるかが課題となるだろう。
 そんな中、県内では市民が憲法を学ぶ「憲法カフェ」といった取り組みが見られるようになった。
 3日午後2時からは宮崎市・宮日会館で学生たちが準備を進めてきた「憲法討論会」がある。
 改憲、護憲と分かれがちだった議論は近年では複雑化、多様化している。こういった場を通してさまざまな意見を聞くことも、自分の考えを確かめる一歩になろう。
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南日本新聞 ( 5/3 付 )
社説:[憲法記念日] 改憲の是非を判断するのは主権者だ


 震度7が連続して起きた熊本地震では、今なお大勢の人が不自由な避難生活を強いられている。
 住み慣れた家を失った住民の生活再建をどう図るか、被災地の課題は尽きない。
 憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と生存権をうたう。
 被災者の生活再建はこうした生存権にかかわる問題だ。国による細やかな配慮と手厚い支援は憲法上の要請でもある。憲法は暮らしに引きつけると、ぐっと身近になる。
 きょうは施行から69回目の憲法記念日だ。
 国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の三大原則を掲げてきた日本国憲法は今年、重大な岐路に差しかかろうとしている。
 安倍晋三首相が宿願の憲法改正に向け、アクセルを一段と踏み込んでいるからだ。夏の参院選で争点に掲げる意向を示し「在任中に成し遂げたい」と明言した。
 参院選の結果次第では改憲論議が加速するのは間違いない。改憲は本当に必要か、主権者である国民一人一人が主体的に判断しなければならない。
■緊急事態条項が浮上
 憲法改正は国の骨格をつくりかえることだ。新たな国づくりへの理想を描く作業でもある。
 大切なのは憲法のどこをどう変えるか、変えればどうなるか、国民が十分理解を深めることが欠かせない。
 ところが今なぜ、改憲しなければならないか、どうして首相の在任中なのか、理由は必ずしも明確ではない。改憲をめぐる国民的な論議も活発化しているとは言えない。
 それなのに自民党は首相の意向を踏まえ、2017年秋の臨時国会で国会発議をする日程を描いている。首相らに引きずられる形で「改憲ありき」の議論に陥ってはならない。
 首相は戦力不保持を定めた9条2項改正の意欲も隠さない。自民党が野党時代の12年にまとめた憲法改正草案に「国防軍」の保持が明記されており、「草案と党総裁の私が違うことはあり得ない」とも述べた。
 首相の考える「普通の国」になるために9条が障害になるとみているようだ。
 だが、国民の広範な支持が得られていないことは各種世論調査で浮き彫りになっている。
 共同通信社が4月末に実施した全国電話世論調査によると、安倍首相の下での憲法改正に「反対」が56.5%で「賛成」の33.4%を上回った。
 南日本新聞社による県民世論調査でも、9条改正は55.1%が反対し、賛成は38.5%だ。09~13年調査は賛否が40%台で拮抗(きっこう)していたが、14年以降は反対が50%を超えるようになった。
 首相はこうした民意との隔たりを謙虚に受け止めるべきだ。
 自民党は本命の9条改正を後回しにする考えという。代わりに「改憲の入り口」として浮上しているのが、大規模災害時などに内閣に権限を集中させる緊急事態条項の新設だ。
 改憲の実績を一度作り、9条改正への抵抗感を和らげる狙いが透ける。
 自民党の憲法改正草案は「緊急事態の宣言」の項目を設け、「何人も国や公の機関の指示に従わねばならない」と権利制限に踏み込んでいる。
 危機管理の観点から必要論がある一方、権力の乱用により不当な人権制約につながりかねないとの懸念は強い。震災を経験した宮城や兵庫などの弁護士会は「現行法で十分」と指摘する。
 憲法に保障された言論表現の自由が規制される恐れも気になる。
 放送局への圧力が強まる中、高市早苗総務相の「電波停止」発言も飛び出した。緊急事態を名目にした報道介入が杞憂(きゆう)と言える保証はない。
 熊本地震を受けて、自民党は再び必要性を強調している。しかし災害に便乗するのではなく、緊急事態条項をめぐる問題点を十分に吟味すべきだ。
■不断の努力で機能
 安倍政権は多くの憲法学者から「憲法違反」の指摘が相次ぐ中、昨年9月、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法を成立させた。
 自衛隊の活動範囲は飛躍的に広がり、専守防衛を国是とした安保政策の大転換を実現した。本来、必要な憲法改正を経ずに憲法解釈の変更で押し通した。
 安保法が違憲であるとの疑念はいまだ拭えない。その是非は参院選でも問われよう。
 憲法は権力を乱用させないように為政者を縛るものだ。その縛りを自ら緩めることは到底許されない。
 今こそ憲法は国民のものであるという自覚を新たにするときだ。平和主義や立憲主義という戦後の枠組みの中で、目指す国のかたちをじっくり考えたい。
 憲法12条は、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と定めている。
 憲法は主権者の努力なくして機能しないことを肝に銘じたい。
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琉球新報 2016年5月3日 06:01
<社説>憲法記念日 緊急事態条項は危険だ 人権無き改憲は許されない


 憲法記念日が巡ってきた。今年はとりわけ感慨深い。今夏の参院選の最大の争点が憲法改正だからだ。安倍晋三首相は「憲法改正を参院選の公約に掲げて訴える」「在任中に(改憲を)成し遂げたい」と明確に打ち出している。
 改憲の発議には衆参両院で3分の2の賛成が必要だ。衆院は改憲賛成派が既に3分の2を占めるから、焦点は参院だ。安保法制に賛成した党は非改選121議席のうち86を占める。残りは76議席だ。3年前の参院選より10議席少ない結果で発議できることになる。
 憲法の価値はどこにあるか。その第一の役目は何か。この機会にあらためて考えたい。
・地方自治の否定
 安倍政権は当初、憲法改正の要件を定める憲法96条を改定しようとして失敗した。すると次に憲法解釈を変え、集団的自衛権の行使を可能にした。海外派兵できるようにし、日本が攻撃されたわけでないのに参戦できるようにした。
 今度は解釈改憲でなく、本格的に憲法の条文を変えようという方針だ。首相らはその突破口に緊急事態条項を位置付けている。
 自民党の憲法改正草案98条によると、国会の事前同意がなくても、閣議だけで首相は緊急事態宣言を出すことができる。すると内閣は、法律と同じ効力を持つ政令を制定することができる。国会は唯一の立法機関だが、内閣が立法権を国会から奪うに等しい。
 草案は「地方自治体の長に必要な指示を出すことができる」とも定める。ドイツの例を思い出す。
 ナチスは政権を握った途端、地方への命令権を駆使し、首長を罷免するなどして地方政府を次々に掌握した。今なら辺野古新基地問題で対立する翁長雄志知事を一方的に罷免するようなものだ。
 自民党の草案には「何人も国の指示に従わなければならない」ともあるから、国民は絶対服従を強いられる。基本的人権については「保障」が解除され、「尊重」に格下げされる。政府は「人権侵害をしてはならない」という禁止から解放され、「尊重するけど、どうしても必要なら人権侵害してもいい」ことになる。
 安倍首相は「緊急事態に関する(規定は)諸外国で多くの例がある」と言う。だが米国では議会招集権限を持たない大統領が招集できるとする程度だ。ドイツも州議会から連邦議会に権限を移す程度である。立法権を政府が一方的に握るわけではない。立法権を持つとする国も期限や制約があるのが普通だ。だが自民党の草案は制約がなく、何回でも更新できるから事実上無期限に万能の権力を振るえる。危険なことおびただしい。
・国民束縛の方向
 言うまでもなく憲法の意義は政治権力者を縛ることにある。それが立憲主義だ。だが「国民は公益及び公の秩序に反してはならない」と定めるように、自民党の改憲草案は明らかに政府を縛るより国民を縛る方向を志向している。
 沖縄の戦後史を想起する。米国の施政権下では、沖縄の人々の基本的人権は制限され続けた。
 米国の高等弁務官は万能の権力者だった。立法院の立法も高等弁務官が恣意(しい)的に拒否できた。沖縄の人々は、琉球政府の主席を選挙で選ぶことすら許されなかった。
 米国は沖縄の人に何ら諮ることなく、布令一つで沖縄側の権利を剥奪できた。代表例が1953年の土地収用令だ。小禄村具志、伊江村真謝・西崎、宜野湾村伊佐浜(いずれも当時)などの民間地を次々に接収し、基地を造成した。反対する住民は「銃剣とブルドーザー」で強制的に排除した。
 米軍に不都合な出版物は弾圧された。大学や高校の文芸誌や小学校のPTA通信までが検閲の対象だった。米軍の軍用地料一括払い反対の集会に参加しただけで、大学生は大学を退学させられた。
 政府が万能の権力を握るとどうなるかは沖縄の歴史が証明しているのだ。人権の「保障」無き改憲は断じて許してはならない。
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沖縄タイムス 2016年5月3日 05:00
社説[憲法記念日に]「改正」急ぐ理由がない


 敗戦後の占領下で日本国憲法が施行されてから69年。日本を取り巻く国内、国際情勢は変わった。憲法を巡り、国民の間から「加憲」「論憲」「創憲」などさまざまな意見が出てくるのは自然の流れである。
» 「米軍出て行け」は×で「沖縄への中傷」は○? ヘイトスピーチ対策の与党法案
 それでも、今年ほど憲法が岐路に立たされている年はないと感じるのは、憲法改正を悲願とする安倍晋三首相が「在任中に成し遂げたい」と国会で答弁するなど前のめりの姿勢を強め、夏に参院選が控えているからだ。
 自公は衆院で、すでに3分の2の議席を超え、参院で改憲に前向きな野党勢力とともに3分の2以上を占めることができれば、憲法改正の発議が可能になる。
 安倍首相は、国政選挙で経済政策を打ち上げ、選挙に勝利すると一転する。昨年は、集団的自衛権の行使を可能にする安保関連法を強行採決した。
 仮に参院選で勝利すれば、これまでのやり方から明らかなように、憲法改正に乗り出すのは目に見えている。
 だが、現行憲法のどこが不都合で、どの条文をどう改正したいのか、肝心の説明をしたことがない。改正することが自己目的化しているように見える。
 もはや憲法改正の是非そのものを問う状況ではない。安倍首相は何のために、憲法のどこを、どう変えたいのかを具体的に提示した上で、参院選の最大の争点に据えるべきだ。
 憲法改正についてあいまい戦術で参院選を有利に戦おうとするのは姑(こ)息(そく)である。
■    ■
 自民党が野に下っていた2012年に公表した「日本国憲法改正草案」がある。多くの危険性をはらむ草案から、特に三つの条項を取り上げたい。
 まず安倍首相が改憲の突破口にしたいといわれる緊急事態条項の創設である。
 「外部からの武力攻撃」「内乱等による社会秩序の混乱」「地震等による大規模な自然災害」などの緊急事態が発生した場合、首相は緊急事態を宣言することができる。内閣は国会の関与なしに法律と同じ効力を持つ政令を制定、地方自治体の長に指示することができる。国民は国や公の機関の指示に従わなければならない-などの内容である。
 国会のコントロールを排し、権力を内閣に集中させる条項は、三権分立を否定し、基本的人権を制限する。
 武力攻撃、内乱、地震に対しては、すでに法律が整えられている。現行法で不十分というのであれば法律を改正すればいいだけである。
 かつてのドイツでナチスがワイマール憲法の大統領緊急令を乱発させ、全権委任法の制定で独裁に突き進んだ悲劇を忘れてはならない。
 二つ目は「国防軍」の創設である。現行憲法9条に定めた戦力不保持と交戦権の否認を削除した。集団的自衛権を前提にした「自衛権の発動を妨げない」と規定している。憲法の三大原則の平和主義を捨て、戦争ができる国になることを意味する。
 三つ目は「国民の責務」として「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」と明記していることだ。人権は公益や公の秩序に反しない範囲でしか認めないとなれば、国の判断によって自由や権利の制限ができるようになる。
 憲法草案の基調をなすのは、憲法が権力を縛る立憲主義をないがしろにし、国民の自由や権利を後退させ、国民統治を主眼にしている点だ。国民に義務を課す条項が目立ち、多様であるはずの家族のあり方にまで国家が介入する。
■    ■
 4月に発生した熊本地震はいまだ余震が収まらない。5年前の東日本大震災の避難者はなお16万人余りに上る。福島原発事故は収束の道筋さえ見えない。
 持続可能な社会保障制度の構築、拡大する貧富の格差是正など解決すべき問題は山積している。経済状況は先行き不透明である。近隣外交でも中国・韓国との関係改善は喫緊の課題だ。
 これらを差し置いて憲法改正に突き進む理由が見当たらない。
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