2016-05-29(Sun)

オバマ米大統領広島訪問 核なき世界へ

広島の願いを世界へ 核なき世界への転換点に 具体的行動こそ

<各紙社説・主張>
朝日新聞)米大統領の広島訪問 核なき世界への転換点に(5/28)
読売新聞)オバマ氏広島に 「核なき世界」追求する再起点(5/28)
毎日新聞)米大統領広島訪問 核なき世界へ再出発を(5/28)
日本経済新聞)日米和解をアジア安定に生かそう (5/28)
産経新聞)オバマ氏広島訪問 核の惨禍防ぐ決意示した(5/28)
東京新聞)オバマ大統領訪問 広島の願いを世界へ(5/28)
しんぶん赤旗)オバマ氏広島訪問 核なき世界へ具体的行動こそ(5/29)




以下引用



朝日新聞 2016年5月28日05時00分
(社説)米大統領広島訪問 核なき世界への転換点に


 米国のオバマ大統領が広島を訪れた。太平洋戦争末期、米軍が広島と長崎に原爆を投下して今年で71年。現職大統領で初めて、被爆地に足跡を刻んだ。
 オバマ氏は平和記念公園の原爆死没者慰霊碑に花を捧げ、黙祷(もくとう)した。かつてキノコ雲に覆われた地で、当事国の首脳が惨禍に思いを寄せたことは、核時代の歴史の一章として特筆されるだろう。
 オバマ氏は演説で「わが国のような核保有国も、核のない世界を追い求めなければならない」と努力を誓った。
 世界には推定1万5千発超の核兵器があふれる。「核兵器のない世界」ははるかに遠い。
 核軍縮の機運を再び高めるべく、オバマ氏が被爆地で決意を新たにしたことを評価したい。
 これを一時の光明に終わらせてはならない。核なき世界に向けた時代の転換点にできるか。米国と日本の行動が問われる。
 ■非人道性胸に刻んで
 「亡くなった人たちは、私たちと変わらないのです」とオバマ氏は述べた。いまの日米の人々と変わらない、71年前のふつうの人間の暮らしが1発の爆弾で地獄絵図に変わった。それが、被爆地が世界に知ってほしいと願う核の非人道性である。
 広島、長崎で勤労動員されていた子たち、朝鮮半島やアジア各地から来ていた人々、捕虜の米軍人らも命を奪われた。被爆者は、放射線による後遺症の恐怖を終生負わされた。
 「安らかに眠って下さい 過ちは繰返(くりかえ)しませぬから」。オバマ氏が見た慰霊碑の碑文は、被爆地の唯一無二の願いである。
 広島滞在は1時間ほどだった。被爆者代表との会話も短時間だった。それでも、被爆地の願いはオバマ氏の胸に響いたと信じたい。この地球で核を再び使わせないために何をすべきか。改めて考えてほしい。
 核兵器の非人道性は世界のすべての人が直視すべきものだ。広島、長崎はその原点を確かめられる地である。とりわけ核を持つ国、核に頼る国の政治家たちにぜひ訪問してもらいたい。
 ■真の和解なお遠く
 「戦争そのものへの考え方を変えなければいけない」。オバマ氏は、原爆投下に至った戦争の非を強調し、外交で紛争を解決する大切さを力説した。任期を通じて、イラクとアフガニスタンでの戦争終結をめざした大統領の信念がにじんでいた。
 一方で、原爆を投下した責任に触れる表現は一切なかった。
 米国では「戦争を早く終わらせ、多くの人命を救った」として、原爆投下は正当と考える人が多い。そうした様々な世論に慎重に配慮したのだろう。
 ただ、被爆者の間では「謝罪はせずとも、核兵器を使ったのは誤りだったと認めてほしい」との意見が多かった。オバマ氏がこの点に踏み込まなかったことには失望の声も上がった。
 「歴史のトゲ」を抜く難しさが改めて浮かんだといえよう。
 オバマ氏は、戦争を経た日米両国の友好関係を強調した。だが、真の和解は、相互の心情を理解し、歩み寄る努力の先にしかない。今回の広島訪問は、重い一歩ではあっても、まだスタートだととらえるべきだ。
 問われるのは日本も同じだ。
 アジアでは、原爆は日本の侵略に対する「当然の報い」と考える人が多い。オバマ氏の広島訪問にも「日本の加害責任を覆い隠すものだ」といった批判が韓国や中国で相次いだ。
 戦禍を被った国々と真摯(しんし)に向き合い、戦地での慰霊といった交流の努力を重ねる。日本がアジアの人々の心からの信頼を得るには、その道しかない。
 ■核依存から脱却を
 09年のプラハ演説で「核兵器のない世界」を唱えたオバマ氏は、その熱意が衰えていないことを広島で印象づけたが、具体策は示さなかった。
 この7年間で、核廃絶への道は険しさを増している。
 ウクライナ問題などを機に米国とロシアの対立が深まり、核軍縮交渉は滞っている。北朝鮮は核実験を繰り返し、「核保有国」と宣言した。中国は、核戦力を急速に増強している。
 核を持つ国々に共通するのは、核の威力に依存し、安全を保とうとする考え方だ。米国と、その「核の傘」の下にある日本もまた、そうである。
 非核保有国の間では、核兵器を条約で禁止すべきだとの主張が勢いを増し、今年は国連で作業部会が2回開かれた。だが米国をはじめ核保有国は参加を拒んだ。日本は参加したものの、条約には否定的な姿勢を貫く。
 だが、核保有国と同盟国が核依存から抜け出さない限り、核のない世界は近づかない。
 核兵器に頼らない安全保障体制をどうつくるか。日米両国で、核の役割を下げる協議を進めていくべきだ。核大国と被爆国が具体的な道筋を示せば、訴求力は計り知れない。
 そうした行動につなげてこそ、今回の広島訪問は、未来を切り開く大きな意義を持つ。
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読売新聞 2016年05月28日 06時00分
社説:オバマ氏広島に 「核なき世界」追求する再起点


 ◆日米の和解と同盟深化を示した◆
 「核兵器のない世界」という崇高な理想に向けて、現実的な歩みを着実に進める。そのための重要な再起点としたい。
 オバマ米大統領と安倍首相が広島市の平和記念公園を訪れ、様々な遺品などが展示されている平和記念資料館に入った。その後、原爆死没者慰霊碑に献花し、犠牲者を追悼した。
 唯一の原爆使用国と被爆国の両首脳が並んで平和を誓った意義は大きい。現職米大統領の歴史的な被爆地訪問を評価したい。
 ◆惨禍を繰り返させない
 オバマ氏は声明を発表し、核廃絶への決意を示すとともに、「我々は、歴史を直視し、このような苦しみが再び起きることを阻止するため、何をすべきかを問う共同の責任がある」と語った。
 原爆投下は、広島と長崎で計20万人を超す無辜の市民の命を奪った。今なお、多くの人々が後遺症などに苦しむ。オバマ氏は、投下の是非に関する見解や、謝罪には言及しなかった。だが、核兵器の非人道性と戦争の悲惨さを十分に踏まえた対応と言えよう。
 オバマ氏は、「米国のような核保有国は、恐怖の論理から抜け出し、核兵器のない世界を追求する勇気を持たなくてはならない」と強調した。
 「核のない世界」を提唱した2009年のプラハ演説を踏まえ、核軍縮・不拡散の取り組みを再び強める決意を表明したものだ。
 安倍首相は、「世界中のどこであろうとも、このような悲惨な経験を決して繰り返させてはならない」と同調した。
 多くの被爆者は、惨禍を二度と繰り返さないとの思いが全世界に共有されることを切実に願っている。日本原水爆被害者団体協議会の坪井直代表委員は、オバマ氏の手を握り、来年1月の退任後に広島を再訪するよう要請した。
 オバマ氏には、広島で体験し、感じたことを、国際社会に向けて発信し続けてもらいたい。
 ◆現実的な軍縮交渉を
 日本側は今回、謝罪を求めなかったが、原爆投下という非人道的行為を容認したわけではない。
 米国では今も、「戦争終結を早め、米兵の犠牲者を減らした」として、核兵器によって一般市民を無差別に殺害したことを正当化する意見が多数派を占める。
 戦後71年を経る中、こうした一方的な論理に対する支持は徐々に減少し、若年層を中心に、原爆投下を疑問視する考え方が拡大している。この世論の変化をさらに後押しする努力が欠かせない。
 核保有国による核軍縮交渉は近年、足踏みしている。
 世界の核兵器計1万5000発超の9割を保有する米露両国は2010年、戦略核の配備数を各1550発に減らす新条約に調印した後、協議は進んでいない。ロシアのクリミア併合などを巡る根深い米露対立が影を落とす。
 中国は核戦力を増強し、核実験を4回強行した北朝鮮も「核保有国」を自称する。核拡散の脅威はテロ組織にも広がりつつある。
 米国の「核の傘」は、日本など同盟国の抑止力として有効に機能している。核兵器の備蓄や使用をいきなり禁止するのは、各国の安全保障を無視する議論だ。
 安保環境に配慮しつつ、核軍縮を段階的に進めることが現実的なアプローチである。
 まず米露が関係を改善し、中国を交渉に巻き込むことが肝要だ。日本は、被爆国として、核保有国と非保有国の対立を緩和する橋渡し役を粘り強く務めたい。
 オバマ氏の広島訪問は、昨年の安倍首相の米議会演説に続き、戦火を交えた日米両国の和解と同盟関係の深化の象徴でもある。
 オバマ氏は「米国と日本は、同盟だけでなく友情も築いた。戦争で得られるものよりも、ずっと多くのものを得た」と指摘した。
 ◆基地負担軽減を着実に
 日米同盟は、東西冷戦中も冷戦終焉後も、アジアの平和と繁栄に貢献する「国際公共財」と認知されてきた。今後も、韓国や豪州と連携し、政治、経済両面で主導的な役割を果たすことが重要だ。
 25日の日米首脳会談では、沖縄の米軍属による女性死体遺棄事件に安倍首相が抗議し、オバマ氏が「深い遺憾の意」を表明した。
 両首脳が事件を重視するのは、言語道断の犯罪の影響が深刻だという厳しい認識からだろう。
 米軍の安定した駐留には周辺住民の理解が欠かせない。日米両国は、実効性ある米軍の犯罪防止策に取り組まねばなるまい。普天間飛行場の移設など米軍基地の整理縮小や、日米地位協定の運用改善を確実に進めることも大切だ。
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毎日新聞2016年5月28日 東京朝刊
社説:米大統領広島訪問 核なき世界へ再出発を


 「憎いとか謝れとかじゃないんです。愛する人を原爆で失い、自分は生き延びた。申し訳ない。私は何をすればいいのか。あの恐ろしい出来事を繰り返さないこと、核兵器をなくすことだ。だから見ててね。そう思って生きてきた。恨みなんかない。死んだ人への使命感だけですよ」
 広島市の被爆者、小倉桂子さんは78歳の高齢ながら、年間1500人の外国人に英語で被爆体験を語る。被爆者の意見はさまざまだが、謝罪を求める声が強いとはいえない。
 被爆者の思いを米政府は長年、読み違えていなかったか。謝罪要求を過剰なまでに恐れ、被爆地に近づかなかったのではないか。被爆者は訪問を待っているのに−−。
「神話」越えた和解こそ
 そんな双方の「行き違い」は、もう終わりにしたい。
 27日、夕なぎの広島平和記念公園は歴史的な瞬間を迎えた。長身のオバマ米大統領が原爆慰霊碑に歩み寄り、花輪をささげて目を閉じる。現職の米大統領による初の被爆地訪問。被爆者を含む多くの日本人が70年余り待ち望んだ瞬間だ。
 米国内では反対・慎重論もあったが、さまざまな障害を乗り越えて広島に来たオバマ大統領の決断を評価したい。献花後の声明で核兵器全廃の必要性を改めて訴え、「ヒロシマ・ナガサキ」は人類にとって「道義的な目覚め」の出発点であるべきだと語ったことも理解できる。
 式典では涙ぐむ被爆者を大統領が笑顔で抱擁する一幕もあった。被爆者との対話にもっと時間を割き、声明では具体的な提案も欲しかったが、70年余に及ぶ日米のわだかまりは解消の方向へ向かいそうだ。この日を「核兵器のない世界」への新たな出発点と考えたい。
 米国の歴代政権は被爆地訪問を一種のタブーとした。1945年、広島と長崎への原爆投下を命じたトルーマン大統領は、原爆使用が終戦を早め「非常に多くの米国の若者(兵士)の命を救った」と語った。
 2007年にはブッシュ前政権の高官が、原爆は連合国側の数十万人の命と数百万人の日本人の命を救ったとの見方を示した。だから謝る必要も、被爆地訪問の必要もないということなのだろう。
 だが、その一貫した主張に一面の理があろうと、人類史上初めて使われた2発の原爆が数十万人の市民を殺し、多くの人々に深刻な後遺症と心の傷を与えた事実を消し去ることはできない。謝罪するかどうかは主に米国の問題だろう。だが、この事実を軽く見れば、米国の論理はどこまでも人道性を欠くのである。
 原爆投下に関する「神話」、米国の苦しい説明は、もう終わりにした方がいい。オバマ大統領が「核なき世界」構想を説き、「核兵器を使った唯一の国として米国は行動する道義的責任がある」と語った時点で「神話」は大きく揺れた。オバマ氏の広島訪問で「神話」を越えた新しい地平が開かれたと考えたい。
 戦争中の44年、ルーズベルト米大統領とチャーチル英首相は「管用合金」(原爆のこと)について、ドイツには使わず、日本には「熟考した上で」使うことで一致した。その背景には、米側の「神話」だけでは説明できない複雑な事情があろう。
 そんな歴史の闇についても日米は率直に意見交換すべきである。
オバマ後の日本の役割
 だが、「核なき世界」は遠い。米露関係は悪化したままで、中国が核軍縮に動く気配もない。核拡散防止条約(NPT)に加わらないインド、パキスタンの核軍拡も不気味だ。
 イランの核開発問題は決着を見たとはいえ、核兵器保有が確実なイスラエルとの衝突が懸念される。何より北朝鮮が核弾頭の小型化などを進め、国際社会を露骨に脅すようになったのは大きな不安材料だ。
 しかもオバマ政権は向こう30年で1兆ドルの巨費を投じて核兵器の近代化を進めるとされる。中露が対抗して軍拡競争に発展する可能性も無視できまい。オバマ氏がノーベル平和賞を受けた09年当時と比べて核廃絶の機運が衰え、世界が危険な様相を呈しているのは明らかだ。
 だが、オバマ大統領の広島訪問を単なる儀式にしてはならない。オバマ氏の任期はあと8カ月。大統領は残された時間を生かし「核なき世界」への足掛かりになる具体的なレガシー(政治的功績)を残してほしい。
 唯一の被爆国・日本の真価も問われよう。日韓の核武装を認めるトランプ氏(共和党)が次期大統領になれば、「核なき世界」構想は白紙に戻るかもしれない。「オバマ後」は日本が「核なき世界」への運動を主導する覚悟を持つべきである。
 憂慮すべきは、核をめぐる危機感と倫理観が国際的に薄れていることだ。NPTで核兵器保有を公認された5カ国(米英仏露中)は、その特権にあぐらをかき、核軍縮への努力を怠る傾向が目立つ。
 核兵器を持たない国々がNPTに見切りをつけ、核兵器禁止条約を作る動きが高まるのも無理はない。
 オバマ大統領の広島訪問を機に考えたい。私たちは核兵器による自滅をどう防げばいいか。必要なのは「人類」としての視点、学ぶべきは被爆者の「使命感」である。
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日本経済新聞 2016/5/28付
社説:日米和解をアジア安定に生かそう


 日本に原爆が落とされてから70年以上の歳月が流れた。この長さに比べれば、時間的にはほんの一瞬のできごとだった。しかし、日米にとってはもちろん、世界にとっても極めて大きな意義をもつ訪問である。
 オバマ氏が現職の米大統領として初めて広島を訪れた。長崎も含めた第2次世界大戦のすべての犠牲者を追悼するとともに、核廃絶への決意を訴えた。被爆者とことばを交わす機会もあった。
広島訪問の歴史的意味
 米国内の世論に配慮し、オバマ氏は原爆投下への謝罪は避けた。それでも、この訪問には2つの歴史的な意味がある。
 ひとつは、かつて敵国として戦った負の歴史を乗り越え、日米が和解をさらに深める足がかりになることだ。
 日本人のなかには、すでに日米の和解は終わっていると感じる人が少なくないかもしれない。日米は緊密な同盟国であり、各種の世論調査でも、両国民は互いに親しみを抱いているからだ。
 確かに、日米は長年の協力や交流を通じ、旧敵国とは思えないほど太いきずなで結ばれている。2011年の東日本大震災で、米軍が「トモダチ作戦」と称して日本のために空前の支援を展開したことは記憶に新しい。
 しかし、そんな日米も、先の大戦の「傷口」が完全に癒やされたとはいえない。原爆投下をめぐる問題は、そのひとつである。
 日本にはなお、被爆の後遺症やトラウマに苦しむ人たちがいる。一方、米国内ではいまだに「原爆投下によって戦争を早く終わらせることができ、多くの人命を救った」という肯定論がある。
 大統領による1回の訪問でこれらの溝が埋まり、被爆者が苦しみから解放されるわけではない。それでも、日米に刺さったままになっていたトゲがまたひとつ、抜けたとはいえるだろう。
 広島や長崎の被爆とは別の意味で、沖縄に米軍基地が集中している現状も、第2次世界大戦から米国による日本占領、そして米ソ冷戦へと続いた負の歴史と無縁ではない。最近も米軍関係者による残虐な犯罪が再び沖縄で発覚し、県民の強い怒りを招いている。
 沖縄の米軍は、日本やアジアの安全を保つうえで欠くことのできない役割を果たしている。だからこそ、日米両政府は米兵や米軍関係者の犯罪をなくすとともに、地元の基地負担を減らす努力を急がなければならない。
 25日の日米首脳会談で、オバマ氏は犯罪の再発防止策の徹底を約束した。決して空手形に終わらせてはならない。
 和解に取り組む日米の姿は、アジアの他の国々もじっと見守っている。「原爆を落とされたのに、なぜ日本人は米国と仲良くなり同盟まで組めるのか」。中国の政府当局者から、こんな質問を受けたことがある。
 大戦で正面からぶつかった日米が和解を進め友情をさらに深められるなら、同じことは日本とアジア諸国にもできるはずだ。オバマ氏の広島訪問は、そんなメッセージも放っている。
 日中、日韓はいまだに歴史問題で対立し、ぎくしゃくした関係から抜け出せないでいる。過去を克服し、未来志向の関係を築くきっかけにしたい。
核なき世界今こそ前へ
 広島訪問のもうひとつの意味は、オバマ氏が09年に唱えた「核兵器なき世界」の目標に、世界の注目があらためて集まる契機になることだ。
 残念ながら世界はいま、理想とは逆の方向に進んでいる。北朝鮮は制裁を受けても核武装をあきらめようとしない。中国も核軍拡を進めている。米ロの対立から、両大国による核軍縮交渉も足踏みしたままだ。
 オバマ氏が広島を訪れたからといって、この流れがすぐに変わるとは思えない。だが、最大の核保有国のひとつである米国の指導者が核廃絶の旗印をもう一度高くかかげた意義は、大きい。
 日本は唯一の被爆国として核廃絶を訴える一方で、米国の核戦力によって守られているという矛盾した顔をもつ。核保有国に囲まれた現状では、ただちに米国の「核の傘」をなくすことはできないにせよ、核軍縮の流れを主導する責任が日本にはある。
 米大統領選では、日米同盟の現状に疑問を投げかけ、日韓の核武装を認めることすらも示唆するトランプ氏が、共和党候補の座を固めた。孤立主義の誘惑に負けず、ともに世界に関与していく。日米はこの決意を新たにしたい。
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産経新聞 2016.5.28 05:03
【主張】オバマ氏広島訪問 核の惨禍防ぐ決意示した


 原子爆弾の加害、被害国のリーダーがそろって犠牲者を追悼した。同盟国として世界に核の惨禍をもたらさない努力を誓い合う、歴史的機会になったと受け止めたい。
 日本に原爆を投下した米国の現職大統領として初めて、オバマ氏が広島を訪問し、安倍晋三首相が同行した。
 慰霊碑に献花したオバマ氏は、広島に原爆が投下された8月6日の「記憶は消え去らない」と演説し、「核兵器なき世界」を追求する決意を改めて表明した。
 被爆者の代表と言葉を交わし、抱擁しあったオバマ氏からは犠牲者を悼む真情が伝わってきた。
 昭和天皇の終戦の詔書には「敵は新(あらた)に残虐なる爆弾を使用して頻(しきり)に無辜(むこ)を殺傷し」とあった。
 広島、長崎への原爆投下は非戦闘員を大量殺傷した残酷な無差別攻撃であり、決して許されるものではない。
 一方、米国では戦争終結を早め、日本本土上陸作戦による犠牲を防いだとの見方が強い。日米間では原爆投下への見解が今も食い違う。
 それでもオバマ氏は、国内に慎重論があった訪問を決断し、日本は受け入れた。原爆で亡くなった人々に慰霊の誠を捧(ささ)げ、被爆によって今も苦しむ人々に寄り添うことが大切だからである。
 日米が応酬する歴史認識問題のワナに陥らなかったのは、安倍首相が語ったように、日米は「信頼と友情」で結ばれた同盟関係にあるからだ。
 「核兵器なき世界」の理想を追求する上でも、強固な日米同盟は欠かせない。
 日本の周囲を見渡せば、核戦力増強に余念がない中国は日本へ核ミサイルを発射できる態勢にある。昨年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、合意文書案に各国指導者の被爆地訪問を要請するくだりがあったが、中国の反対で削除された。
 北朝鮮は核・弾道ミサイル開発を強行し、ロシアのプーチン大統領はクリミア併合の際、核兵器使用を準備していたと公言した。
 近隣諸国の核兵器は現実の脅威であり、米国が提供する「核の傘」の重要性が増しているのが実態である。
 核抑止を確保しつつ、核軍縮・不拡散に取り組む。困難な道であっても、オバマ氏の広島訪問を歩みを進める契機としたい。
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東京新聞 2016年5月28日
【社説】オバマ大統領訪問 広島の願いを世界へ


 原爆を投下した米国の大統領が被爆地を訪れたのは、歴史的な行動である。広島への思いを、直接語った。世界は核廃絶に進まなくてはならない。
 オバマ米大統領は広島の平和記念公園で演説した。原爆について「空から死が降ってきて、世界は変わった」と語り始め、「光線と火の壁が街を破壊した。人類は自らを破壊する手段を手にした」と述べた。
 中天の火球の下に広がる地獄も、戦争の悲惨さ、愚かさも、人々の脳裏に浮かんだに違いない。
 広島に来たのは「すべての罪のない犠牲者を追悼するためだ」と述べた。謝罪を意味する表現はなかったが、悲しみ、哀悼の気持ちが込められ、被爆者の心に届いたのではないか。
◆理想と現実の間で
 紛争解決には、軍事的な手段ではなく外交で臨むべきだと強調した。日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の代表らと言葉を交わしたのは勇気ある和解であり、世界が進むべき姿を示してくれた。
 オバマ氏の核政策は理想と現実の間で揺れる、複雑なものだ。自身も当初から、核兵器のない世界の実現は「自分の生きている間は難しい」と表明してきた。それでも、この日の訴えの意味は大きい。どんな政治的行動も人々の意識の改革、認識の深さから始まるからだ。
 米国の現実は二〇〇一年、米中枢同時テロで変わった。冷戦時代の軍拡競争は時代遅れになり、老朽化した核弾頭は削減している。しかし、テロ組織への核流出の危険性は増している。
 〇九年、オバマ氏のプラハ演説に影響を与えたのは、共和、民主両党の歴代政権で外交、安全保障を担当した「四賢人」の提言だった。ペリー元国防長官や、現実主義のキッシンジャー元国務長官も名を連ねている。
 オバマ政権は、イランの核開発を大きく制限する合意を達成した。核テロを防ぐための核安全保障サミット、計四回の開催を主導し、各国政府に核物質と関連施設の管理強化を呼びかけた。
 だが、軍縮では大きな成果は残せていない。オバマ政権で削減された核弾頭数は約七百発であり、冷戦終結後、二十六年間の歴代政権の中で最も少ない。ロシアと新戦略兵器削減条約(新START)を結んだものの、ウクライナ情勢などをめぐって対立し、交渉は足踏みしている。
 米国は巨額の予算を組んで核兵器近代化計画を策定し、目標を絞り込んで高い破壊力を持つ小型核の開発を進めている。核なき世界への道筋は多岐にわたり、対話がますます重要になろう。
◆「人道に反する」が原点
 オバマ氏は残る約八カ月の任期中に、国連総会の場で核実験の凍結を訴えるなど、もう一度、強い意志を示してほしい。米次期政権に核廃絶への取り組みを引き継ぐ義務もある。
 残念なことだが、現在は冷戦時代よりむしろ、核の危機が高まっているという悲観論が広がる。
 国際社会ではここ数年、「使用されたら、壊滅的な結果をもたらす」という核の非人道性を根拠にして、国際法である核兵器禁止条約をつくろうという動きが広がる。既に百を超える国々が条約制定に賛同している。
 確かに、核攻撃があったら、一帯は放射能で汚染され、軍隊や消防、医療スタッフら誰も救助活動はできない。広島と長崎に残る資料が教える通り、核問題の原点は核兵器が「人道に反する」究極的な兵器であることを十分に理解することだ。
 核保有国はまず核実験や核物質生産を禁止するなど、段階的な軍縮が現実的だと主張し、双方の溝は深まるばかりだ。
 各国指導者、とりわけ核兵器を持つ国々の首脳には、ぜひ被爆地を訪問してほしい。核兵器の恐ろしさを伝える記録や証言を、直接見聞きすることから始めるべきではないか。ロシアや中国にも呼びかけたい。
◆抑止力より脅威語れ
 日本は唯一の被爆国である一方で、北朝鮮情勢など安全保障政策では米国の「核の傘」に依存している。
 だが、オバマ氏が広島を訪ねた後も、日本の政策に変化がないようだと、被爆国としての訴えも次第に色あせる。広島訪問は日本を後押ししている。抑止力より核の脅威、非人道性の議論に重点を移すべきではないか。
 政府は同盟国である米国に対し、ロシアとの交渉進展など、一層の軍縮を促す必要がある。国連など国際会議では、核廃絶を主張する国々と積極的に提携していきたい。
 各国の市民、指導層の意識改革を促すのは、日本が率先して取り組むべき使命である。
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しんぶん赤旗 2016年5月29日(日)
主張:オバマ氏広島訪問 核なき世界へ具体的行動こそ


 伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)に出席したオバマ米大統領が、アメリカ大統領として初めて被爆地・広島市の平和記念公園を訪問しました。史上初めて人類に対する核兵器が広島と長崎に使われた惨禍から71年、原爆を投下した核超大国の現職大統領が、爆心地の公園に足を運び、被爆者らを前に、「核兵器なき世界を追求」すると演説したことは、歴史的な一歩です。この決意を生かすためには、核兵器禁止条約の国際交渉に踏み出すなど、核兵器廃絶の実現へ向けて具体的な行動へすすむことが強く求められます。
被爆者の願いにもこたえ
 オバマ大統領の演説は、広島で犠牲になった10万人以上の日本人、数千人の朝鮮半島出身の人々、米国人捕虜らへの追悼から始まりました。想定されていた「数分」ではなく17分間の演説で、「核兵器の備蓄がある国は、恐怖の論理から抜け出す勇気を持ち、核兵器なき世界を追求しなければならない」「広島と長崎が核戦争の夜明けとしてではなく、私たち自身の道義的な目覚めの始まりとして知られる未来だ」などと語りました。演説前後、原爆資料館などを見学し、被爆者とも言葉を交わしました。
 オバマ大統領の平和記念公園滞在は1時間足らずでしたが、「『核兵器を使用したことがある唯一の核保有国』の大統領として、筆舌に尽くせない生き地獄を体験した被爆者の話を聞き、被爆の実相、被爆資料などに直接触れること」(日本原水爆被害者団体協議会の要望書)を何度も求めた被爆者の願いを反映したものといえます。
 オバマ大統領は大統領就任直後の2009年4月のプラハでの演説で、「核なき世界」の実現を訴えました。広島訪問は、大統領の任期切れを前に、それをあらためて想起させるものですが、問題は、これから「核兵器のない世界」の実現へつなげるかどうかです。
 オバマ大統領は広島の演説で、原爆投下について「世界は一変した」「人類が自らを滅ぼす手段を持った」と述べました。これは民間人を無差別に殺戮(さつりく)し、将来世代にも深刻な被害を与える核兵器の壊滅的破壊力、非人道性を意味しています。「核兵器に関する議論、決定、行動は…核兵器が引き起こす筆舌に尽くしがたい苦しみと容認できない被害から導かれるべきだ」(15年、国連総会決議「核兵器のない世界のための倫理的義務」)という国際世論が多数となっています。「核抑止力」論に立ち核兵器廃絶を永久に先送りすることは、もはや許されません。米国自身が非人道性を直視し、いままでの核政策について再検討を行い、転換へ踏み出すことが急務です。
問われる安倍政権の姿勢
 オバマ大統領に同行した安倍晋三首相が、大統領に続き発言した所感で、「日米同盟は世界に希望を生み出す同盟」と同盟強化を口にしたことは見過ごせません。「核抑止力」にもとづき、日本をアメリカの「核の傘」の下に置く日米軍事同盟を強めることは、「核兵器のない世界」とは両立しません。
 日本政府は核兵器禁止の法的措置を討議する国際会議で、核保有国の代弁者としてふるまっています。唯一の被爆国にあるまじき態度です。「核抑止力」論や「核の傘」論をただし、核兵器廃絶の国際的世論を広げることが重要です。
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