2016-06-06(Mon)

消費増税再延期 問うべきは消費増税そのもの

190国会閉幕 7月10日 参議院選挙 アベノミクスに国民の審判を

<各紙社説・主張>
朝日新聞)参院選 税収増頼み 将来世代はどうなる(6/4)
朝日新聞)首相の会見 納得できぬ責任転嫁(6/2)
朝日新聞)増税再延期 議論なき決定の異様さ(6/1)

読売新聞)骨太方針 財源活用に優先順位をつけよ(6/6)
読売新聞)自民党公約 成長と分配の両立が問われる(6/4)
読売新聞)消費増税延期 アベノミクスをどう補強する(6/2)

毎日新聞)増税延期と日銀 共に「ふかす」つもりか(6/4)
毎日新聞)増税再延期表明 未来への責任はどこへ(6/2)

日本経済新聞)安倍政権は改革の推進体制を刷新せよ (6/3)
日本経済新聞)参院選でアベノミクスに国民の審判を (6/2)
日本経済新聞)成長と財政再建の両立捨てるな (6/1)

産経新聞)骨太方針 おざなり修正でいいのか(6/4)
産経新聞)消費増税の再延期 今度こそデフレ脱却を 社会保障への影響食い止めよ(6/2)

東京新聞)消費増税再延期 社会保障と税の再考を(6/3)
東京新聞)7月10日参院選へ 「安倍政治」こそ争点だ(6/2)

しんぶん赤旗)消費税増税先送り 失政認めぬ首相 国民に語れぬ(6/3)


 

以下引用



朝日新聞 2016年6月4日05時00分
(社説)参院選 税収増頼み 将来世代はどうなる


 10%への消費増税は延期する。しかし、子育て支援や介護離職ゼロへの取り組みは着実に進める。一方で、財政健全化目標は堅持する――。
 安倍首相は強調する。この複雑な連立方程式の解をどう見いだすか。首相がもくろむのがアベノミクスの「果実」の活用、すなわち税収の増加分を社会保障の財源に充てる案だ。
 第2次安倍政権が発足してからの3年半で、国と地方の税収は21兆円増えた。首相が演説で盛んに語るデータである。
 直近の16年度当初予算と、政権発足前に民主党が決めた12年度当初予算を比べると、確かにそうだ。ただ、21兆円には14年度からの3%の消費増税の効果が含まれており、それを除くと13兆円、国に絞れば9兆円だ。
 首相が政権に就いたのは12年度の終盤で、丸々9兆円という計算にはならないが、税収を大きく増やしたのは間違いない。
 一方、財源不足を埋める新規国債の発行は、年に40兆円台という水準から16年度予算で34兆円余に減らした。税収増が財政改善の原動力となってきた構図だが、なお34兆円でもある。
 保育・介護という今を生きる世代向けの施策と、国債発行減らしという将来世代を見すえた対応と。税収の増加分をどう配分するか、今の世代向けをもっと増やそうというのが首相のメッセージだろう。ただ、それは将来世代へのつけ回しに頼り続ける危うさにもつながる。
 首相は「アベノミクスのエンジンを最大にふかす」として、秋に大型の補正予算を編成する方針を表明した。景気を刺激し、税収を増やせば両方に目配りできる、ということか。
 だが、税収はその時々の経済状況に応じて変動する。最も景気に左右されにくい消費税増税を封印しただけに、不安定さは高まる。甘い見通しに基づいて予算を増やせば、国債発行が膨らむ恐れも大きくなる。
 財政再建には、まずは予算のむだや配分を不断に見直して「出」を抑制する。そして構造改革などで経済の地力を高め、税制改革も進めて「入り」を増やす。そうした取り組みを続けていくしか解はない。
 「財政再建の旗は降ろさない。国際的な信認を確保し、社会保障を次世代に引き渡していく責任を果たす」。消費増税の延期を表明した記者会見で、首相はそう強調した。
 その言葉をしっかりとかみしめ、政策運営にあたってほしい。次世代に引き渡されるのは借金の山、ということにならないように。
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朝日新聞 2016年6月2日05時00分
(社説)首相の会見 納得できぬ責任転嫁


 とても納得できる説明ではない。安倍首相のきのうの記者会見はそう評価せざるを得ない。
 アベノミクスは順調だ。しかし新興国の経済が陰っている。だから来年春の10%への消費増税は延期し、この秋に大胆な経済対策をまとめる。財政再建の旗は降ろさない――。発言を要約すればこうなる。
 納得どころか、「アベノミクスのエンジンを最大にふかす」と強調されては、その危うさがさらに膨らみかねないと不安が募る。
 リーマン・ショックや東日本大震災のような経済混乱が生じない限り、10%への消費増税は必ず実施する。前回、消費増税の延期を表明した14年11月の記者会見以来、首相はこう繰り返してきた。
 きのう首相は「リーマン・ショック級の事態は発生していない」と認め、熊本地震を理由にするつもりもないと述べた。一方で、雇用の増加や所得の上昇を挙げ、アベノミクスの成果に自信を見せた。
 ならば、財政再建と社会保障財源充実のために、消費増税を予定通り実施するのが筋だ。
 首相が引き合いに出したのが、中国をはじめとする新興国経済の不安である。
 先の伊勢志摩サミットでは何度もリーマン・ショックに触れ、英独両国の首脳らから異議が出た。今回はリーマン・ショックとは異なることを認めたものの、海外経済の不透明感を増税延期の理由にするのは、新興国への責任転嫁に等しい。
 首相は2年半の先送りについて「20年度の財政健全化目標を堅持するギリギリのタイミングにした」と言う。
 健全化目標は、消費増税を実施し、毎年度3%を超える経済成長を達成してもなお及ばない遠い目標だ。不断に予算を見直し、地道な努力を積み重ねることが不可欠なのに、経済対策というカンフル剤による税収増を当て込むばかりでよいのか。
 首相はこの新たな判断について「参院選を通して国民の信を問う」という。
 増税の必要性は理解してもそれを歓迎する国民は少ない。朝日新聞の世論調査でも、10%への引き上げを「延期すべきだ」とした人は59%で「すべきではない」の29%を上回っている。
 不人気な政策の先送りを問うことで自らの公約違反にお墨付きを得ようとする。これは、国民感情を逆手にとった有権者への責任転嫁でもある。
 参院選で問われるべきは、むしろこうした首相の身勝手さではないか。
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朝日新聞 2016年6月1日05時00分
(社説)増税再延期 議論なき決定の異様さ


 消費増税をどうするかは、将来世代を含む国民の暮らしを左右する重要テーマだ。政府与党内の事前の検討も、国会の議論もないまま、首相の一存で押し切っていいものではない。
 来年4月に予定されていた消費税率10%への引き上げを2年半、再延期する。
 安倍首相のこの方針は、国会会期末間際になって、いきなり持ち出された。それまで150日間の国会審議を通して、首相は「リーマン・ショックあるいは大震災級の影響のある出来事が起こらない限り、引き上げを行っていく」と語っていたはずである。
 持ち出し方も異様だった。自民党内でも、政府内でも、ましてや国会でも、首相方針をめぐる議論をまったく経ないまま、有力閣僚や与党幹部を個別に呼び、同調を求めていった。
 「前回延期を決めた時、17年4月に引き上げると約束した」と明確に反対したのは麻生財務相くらい。その麻生氏にしても最後は「総理がそういうなら」とあっさり折れた。
 あまりにも強い首相の力と、その方針を議論なく追認するしかない与党の姿――。安倍政権のいびつな権力行使のあり方が象徴的に表れたと言える。
 野党4党がきのう提出した内閣不信任案は否決され、国会はきょう閉会する。
 だが本来なら、国会を延長して与野党で十分に議論すべき大問題である。論点は数多い。
 伊勢志摩サミットで首相が唐突に言及した「世界経済が危機に陥るリスクに直面している」という主張に妥当性はあるか。
 増税延期で社会保障や財政再建にどんな影響があり、どんな手立てを打つべきなのか。その財源はどう捻出するのか。
 近づく参院選をにらんだ選挙対策ではないのか。
 民進党にも問いたい。
 5月半ばの党首討論で、岡田代表が「消費が力強さを欠くなか、先送りせざるをえない状況だ」と述べ、増税延期論の先鞭(せんべん)をつけたのは民進党だった。
 4年前、当時の野田民主党政権が主導して自民、公明両党と合意した「税と社会保障の一体改革」を思い起こすべきだ。
 消費税を引き上げて、膨らむ社会保障の財源に充てる。今を生きる世代に痛みはあっても、将来世代へのつけ回しは極力避ける。そんな一体改革の精神を忘れてはいないか。
 首相はきょう国会閉幕の記者会見で増税再延期について説明する。民進党の岡田代表もあわせ、参院選の論戦を通じて国民への十分な説明を求める。
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読売新聞 2016年06月06日 06時00分
社説:骨太方針 財源活用に優先順位をつけよ


 消費増税の延期を踏まえた新しい財政運営の道筋を、早急に示さなければならない。
 政府が「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)、「ニッポン1億総活躍プラン」など、アベノミクス推進の柱となる4計画を決めた。
 少子化対策や働き方改革、産業競争力の強化などで力強い成長力を取り戻し、国内総生産(GDP)600兆円を目指す。
 人口減少や少子高齢化など、構造的な課題の解決を図る政策の基本的な方向性は妥当だろう。
 問題は、その裏付けとなる予算の基本戦略である骨太の方針の内容が希薄なことだ。
 消費税率10%への引き上げが2019年10月まで2年半延期され、増税で見込まれる年間4・4兆円の税収増もその分だけ遅れる。しかも、骨太の方針は財源穴埋めの方策を示していない。
 政府は、消費増税に伴い、低所得者の介護保険料軽減といった社会保障の充実策を予定していた。安倍首相は「(税率を)引き上げた場合と同じ事を全て行うことはできない」と明言した。
 1億総活躍プランに盛り込まれた保育士や介護職員の待遇改善など、新たな重要政策の経費をどう賄うかも課題となる。
 確保できる財源を精査し、政策の実現に厳しく優先順位をつけることが大事である。
 骨太の方針は、政策を推進する財源として「アベノミクスの成果の活用」を打ち出した。
 アベノミクスで増えた税収を活用し、さらなる景気浮揚と税収増の好循環を生み出すという。
 近年の税収増を支えている法人税や所得税は、景気による浮き沈みが大きい。すべてを社会保障などの恒久的な施策の安定財源と捉えるのは無理があろう。
 消費増税の延期を踏まえ、中長期的な財政健全化の道筋も改めて描くことが求められる。
 骨太の方針は、20年度に基礎的財政収支を黒字化する財政再建目標を堅持すると明記した。
 だが、昨年に掲げた、赤字額を18年度に5~6兆円まで約10兆円減らす「中間目標」には言及していない。これで黒字化目標を本当に達成することができるのか。
 財政再建の工程表を、早期に練り直す必要がある。
 次世代に過大な負担を先送りしないために、税収の安定した消費税で少子高齢化社会を支える「社会保障と税の一体改革」を進める。増税を先送りしても、その方針はしっかりと維持すべきだ。
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読売新聞 2016年06月04日 06時24分
社説:自民党公約 成長と分配の両立が問われる


 いかに経済成長と分配を両立させるのか。その具体策が問われる。
 自民党が参院選の公約を発表した。経済再生に向けて、アベノミクスを強化し、「成長と分配の好循環」を構築することを柱に据えた。
 「経済のパイ」を子育てや介護など社会保障分野に分配する。内需拡大を図り、更なる成長につなげる。そうした考え方だ。
 その具体策として、「1億総活躍社会」の一環である、保育士や介護職員の処遇改善、返済の必要がない「給付型奨学金」の創設の検討などを盛り込んでいる。
 その方向性は悪くない。だが、「好循環」を本気で目指すなら、一層の肉付けが求められよう。
 公約は、雇用形態で賃金に差をつけない「同一労働同一賃金」や、最低賃金1000円の実現も掲げている。「アベノミクスは格差を拡大した」といった野党の批判を踏まえ、むしろ分配に本腰を入れる姿勢を示す狙いだろう。
 民進党などが培ってきたリベラルな政策分野に、安倍政権も進出することで、支持層を広げる戦略がうかがえる。
 無論、財政事情が厳しい中、バラマキは許されない。今秋に今年度第2次補正予算を編成する際には、施策の費用対効果を十分に吟味することが欠かせない。
 消費税率10%への引き上げの2年半延期に関して、公約は、「赤字国債に頼ることなく、安定財源を確保して可能な限り社会保障の充実を行う」と明記した。
 消費増税を2年先送りし、赤字国債を社会保障充実の財源に充てるとする民進党との違いを明確に打ち出したものだ。
 赤字国債を発行するのか。別の安定財源を本当に確保できるのか。あるいは、社会保障の一部の歳出を減らすのか。これらは、参院選の重要な論点となろう。
 憲法について、公約は「各党との連携を図り、あわせて国民の合意形成に努め、改正を目指す」などと記述するにとどめた。
 憲法に過剰に焦点が当たるのを避けたい党執行部の判断だが、どの条項をどう改正するか、各論への言及に乏しく、物足りない。
 各論では唯一、参院選挙制度を巡り、全都道府県から最低1人が選出されるよう、憲法改正を含めて検討する、と盛り込まれた。
 今回導入された「合区」には地方の反発が強い。参院議員の地域代表の性格を強めることも、与野党は真剣に議論してはどうか。
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読売新聞 2016年06月02日 06時06分
社説:消費増税延期 アベノミクスをどう補強する


 消費増税の2年半先送りを決断した以上、その間に、デフレ脱却と成長力強化を着実に実現しなければならない。
 安倍首相には、増税延期による施策への影響や代替財源の確保策を示す責務もある。
 首相が記者会見で、2017年4月に予定されていた消費税率10%への引き上げを19年10月に延期すると、正式表明した。理由について、世界経済に下方リスクがある中、増税が「内需を腰折れさせかねない」と説明した。
 14年11月に1回目の延期を表明した際、再延期を明確に否定した点については、「公約違反との批判を真摯に受け止めている」と語った。アベノミクスの加速か、後戻りかを参院選の最大の争点に掲げ、民意を問う考えも示した。
 アベノミクスは雇用改善などに効果を上げたが、消費のもたつきなどの課題も残る。脱デフレを確実に果たすため、消費増税の先送りはやむを得ない選択だ。
 首相は、今秋に「総合的で大胆な経済対策」を策定する方針を示し、「アベノミクスのエンジンを最大限にふかす」と強調した。
 肝心なのは、従来のアベノミクスに何が不足し、どう補強すべきなのか、十分点検することだ。
 企業利益の増加が賃上げで家計を潤し、消費を押し上げる。そんな「経済の好循環」の歯車が回らない。個人も企業も守りの姿勢で貯蓄を増やしているためだ。
 従来型の公共事業などで一時的にエンジンをふかすのではなく、民間の消費や投資を喚起する処方箋こそが求められる。
 消費税率10%で見込まれる4・4兆円の税収増のうち、約1・3兆円は社会保障の充実策に使われる予定だった。低所得者の介護保険料軽減や50万人分の保育受け皿確保などの重要施策が多い。
 政策にどう優先順位をつけるか。実施に必要な安定財源をいかに確保するか。その具体策を、参院選の公約で明示すべきだ。
 日本の長期債務は、国内総生産(GDP)の2倍を超える、先進国で最悪の水準にある。
 首相は、20年度に基礎的財政収支を黒字化する目標を守ると明言した。だが、増税を見込んでも6・5兆円の赤字が残る。延期で実現は一段と不透明になった。
 消費税を財源に社会保障を支える「税と社会保障の一体改革」は堅持しなければならない。
 景気への影響を緩和しつつ消費税率を上げていくためにも、10%時の軽減税率導入が不可欠だ。その準備をしっかりと進めたい。
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毎日新聞2016年6月4日 東京朝刊
社説:増税延期と日銀 共に「ふかす」つもりか


 安倍晋三首相は消費増税の再延期を表明した記者会見で、「アベノミクスのエンジンを最大にふかす」と強調した。「『三本の矢』をもう一度、力いっぱい放つ」とも述べた。
 増税の先送りや景気を刺激する歳出拡大は2本目の矢の財政政策にあたる。会見では、1本目の矢である日銀の金融政策に直接言及しなかったが、「あらゆる政策を総動員」となれば、日銀の追加緩和に対しても政治からの要求が強まってくる恐れがあり、気がかりだ。
 アベノミクスのエンジンを当初からフル稼働で支えてきたのが、日銀の異次元緩和だった。円安を後押しし、企業収益や株価の大幅上昇につながったが、行き詰まりが明らかになっていた。
 そこで今度は財政の出力を上げようという作戦らしい。ただ、金融政策は打ち止め、という話では必ずしもなさそうだ。
 首相に近い本田悦朗内閣官房参与は米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」に対し、「6月あたりに追加緩和をやったらどうか」と述べ、現在年間80兆円のペースで保有残高が増えるよう日銀が購入している国債などの資産を、100兆円増まで拡大することを提案した。
 本田氏は「アベノミクスの『バージョンアップ』を演出するため」の追加緩和と話している。だが、日銀が国債購入を増やす中で、政府が財源の裏付けのない歳出を膨らませれば、日銀が事実上の財源の役目を負わされることになる。
 そうした事態を回避するため、日銀と政府の間に約束があった。2013年1月の「共同声明」だ。
 日銀が年2%のインフレ目標設定を受け入れる代わりに、政府が財政健全化と構造改革に取り組むことを文書に盛り込んだのだった。
 だが、日銀が目標を目指して、追加の量的緩和やマイナス金利政策を実施した一方、政府は財政を悪化させる消費増税延期を2度も決めた。
 日銀はこうした政府の約束軽視に目をつぶり、追加の金融緩和で、終わりなき財政拡大の片棒を担ぎ続けるのだろうか。それとも、2%の短期達成にこだわらない柔軟な政策へと転換し、量的緩和の段階的な縮小を目指してカジを切るのか。
 首相は「新しい判断」で増税を先送りした。日銀も「新しい判断」で「転換」を選択する好機だろう。
 前者、つまり政府と一緒になって政策を「ふかす」道を選べば、日銀は中央銀行としての独立性を完全に失いかねない。インフレが進み政策を引き締めたくなっても、制御不能となろう。政府の「打ち出の小づち」と化すことの危うさを、日銀は強く認識しておくべきだ。
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毎日新聞2016年6月2日 東京朝刊
社説:増税再延期表明 未来への責任はどこへ


 いかにも強引な理屈だった。安倍晋三首相は記者会見し、来年4月に予定されていた消費増税を2年半先送りする方針を正式に表明した。
 首相は再延期の理由について「世界経済の新たな危機に備える」と説明し、夏の参院選で国民の審判を仰ぐと強調した。だが、聞けば聞くほどなぜ再延期なのか、疑問が募る釈明だった。
 首相は2014年に最初の増税先送りを表明した際、「再び延期することはない」と断言して衆院を解散した。ただし、リーマン・ショックや東日本大震災級の事態が起きれば別だとの考えも示していた。
説得力欠く首相の説明
 そのためか、首相は主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でリーマン・ショック時との類似性を指摘する資料を配り、危機感を強調した。リーマン・ショック当時に世界経済の現状をなぞらえ、再延期を正当化する狙いがあったとみられる。
 ところが、きのうの会見で首相は一転して「現時点でリーマン・ショック級の事態は発生していない」と述べた。リーマン・ショックを意識した首相のサミットでの対応が海外メディアから「説得力のない比較」などと、辛辣(しんらつ)に報じられたことを意識したのだろう。
 その代わりに首相は「世界経済の新たな危機を回避するため、政策総動員で対応するとサミットで合意した」と述べ、議長国として責任を果たすという理屈を持ち出した。
 だが、世界経済が危機に陥るリスクをことさら強調し、日本に財政的な対応を求めるような認識はサミットでは共有されていない。
 一方で国内の経済状況については雇用、所得などの指標を挙げてアベノミクスの成果を強調し、国内要因が再延期の理由だとは認めようとしなかった。
 つまり、現在はリーマン級の危機ではない。アベノミクスはうまくいっている。ただ、今後、新たな危機が発生するかもしれないため、念のため増税を再度、先送りするという乱暴な論理だ。
 増税できる環境を整備する約束を果たせなかった責任は大きい。にもかかわらず、首相は「(過去の)約束とは異なる新しい判断だ」と言い張り、再延期方針について参院選で国民の審判を仰ぐと述べた。与党が改選議席の過半数を獲得すれば、公約に反した責任は免れるという考え方のようだ。
 首相は、増税が景気へ悪影響を及ぼし、デフレからの脱却を妨げるおそれがあると指摘した。確かに14年の税率8%への引き上げ後は消費が落ち込んだ。増税を再延期すれば、景気を一時的に下支えする効果はあるだろう。
 だが、増税が1年半延期されたにもかかわらず、景気は本格的に回復していない。増税の再延期で日本経済の足腰が強くなる保証もない。
 それどころか、社会保障の財源が失われてしまうことで、社会や経済の将来の不安は拡大してしまう。
 税率10%時には社会保障の充実のために計2兆8000億円が充てられる予定だ。8%段階では1兆3500億円にとどまり、再延期で約1兆4500億円の穴が開く。
 低年金者への給付金など消費増税の効果が発揮される施策は10%になってからのものが多い。
次世代につけを回すな
 子育て支援では消費増税で7000億円、それ以外の財源で4000億円を確保するはずだったが、現在は消費税による6000億円だけだ。保育士や介護士は深刻な人手不足に陥っており、十分な数を確保するためには待遇改善が急務だ。
 政府は「1億総活躍社会」のプランをまとめ、「希望出生率1・8」「介護離職者ゼロ」の目標達成に向け、保育士や介護士の給与引き上げを打ち出した。これには毎年約2000億円の安定した財源がいる。
 首相は増税を先送りしても介護や子育て支援は優先すると説明した。だが、景気に左右されやすい税収増などを財源にするというのでは、不確かだ。
 財政健全化の目標とする「基礎的財政収支の20年度黒字化」は堅持するとの説明は危うい。首相の自民党総裁の任期は18年9月に切れる。19年10月の増税を誰が請け負うのか。2度延期されたものが3度目で実現するとはにわかに信じがたい。
 大型経済対策にも疑問がある。増税先送りで財政が厳しくなる中で、参院選対策でばらまきまで行うようでは、借金がさらに積み上がる。
 税と社会保障の一体改革は、少子高齢化で増大する社会保障費を、現在の世代が幅広く負担を分かち合う消費税でまかなう仕組みだ。借金を将来の世代につけ回ししないための枠組みを崩壊させてはならない。
 主要野党はそろって来春の増税実施に反対している。民進党は社会保障の施策で不足する財源に赤字国債を発行してあてるように主張しているが、新たな借金によらぬ財源を示す必要がある。
 参院選で問われるのは再延期の単なる是非ではなく、日本の未来を見据えた税や社会保障のあり方だ。与野党は責任あるビジョンを示して競い合うべきだろう。
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日本経済新聞 2016/6/3付
社説:安倍政権は改革の推進体制を刷新せよ


 消費増税を再延期すると表明した安倍晋三首相は、懸案の構造改革や社会保障制度の改革を速やかに進めねばならない。
 政府は規制改革実施計画、日本再興戦略、経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)、ニッポン一億総活躍プランを決めた。
 乱立する政策会議が政策文書を乱発した印象だ。しかも働き方改革や成長戦略などテーマは重複し、政策の役割分担は不明だ。
 中身も伴っていない。その象徴は、もっとも大事な構造改革のひとつである規制改革だろう。
 たとえば、空き部屋や空き家を活用して旅行者を受け入れる「民泊」だ。いちおう改革の方向は示したが、営業日数などの細部の条件を詰め切れていない。
 農業分野では生乳取引の改革の結論を持ち越した。また、裁判所が解雇無効の判決を出した後、金銭で紛争を解決するルールなど、未解決の懸案も残っている。
 スピード感も乏しい。民泊は本来なら1年前に最終結論を出しておくべき課題だ。今後は人工知能(AI)やロボットなどで技術革新の急進展が予想される。
 それにあわせて規制を不断に見直すには、毎年春、年1回だけ規制改革実施計画をまとめる今のやり方は時代遅れだ。企業決算にならい、四半期ごとに改革を順次追加する方法に改めるべきだ。
 また、地域限定で規制改革をする「国家戦略特区」で成果の出たものは、できるだけ早く全国展開してほしい。規制改革会議の後継組織に強く求めたい。
 長期的な望ましい将来の姿から逆算し、必要な規制改革を定める方式も導入するという。しかし、目標の設定を誤ると、業界の抵抗が強い「岩盤規制」を素通りしかねず、楽観できない。
 一方で、経済財政諮問会議は成長戦略の個別政策に手を広げるのはやめ、社会保障と税の一体改革の司令塔の役割を果たしてほしい。税制と年金・医療などの社会保険を一体で議論しないと、抜本改革の全体像を描けない。
 諮問会議はいちおう歳出改革の工程表はつくったが、結論を関係審議会に委ねてはいけない。今度こそ改革の先頭に立つべきだ。
 政策会議の整理・縮小が要る。テーマはまず規制改革と社会保障改革に照準を定め、人員も集中する。そんな形で改革の推進体制を刷新することが、政権の経済政策立て直しの第一歩ではないか。
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日本経済新聞 2016/6/2付
社説:参院選でアベノミクスに国民の審判を


 通常国会が閉幕し、与野党は夏の政治決戦に向けて走り出した。取り沙汰された衆参同日選にはならなかったが、参院選単独でも国民にとって大事な審判の機会であることに変わりはない。何が争点で、何を基準に判断すればよいのか。初めて投票する18歳にもわかりやすい選挙戦を期待したい。
 有権者が最も重視すべきは日本経済の先行きだ。安倍晋三首相は記者会見で「アベノミクスを加速させるのか、逆戻りさせるのか」と自ら争点を設定した。
 個人消費を腰折れさせないためだ、として消費増税の2年半先送りを表明した。その理由として日本経済は順調だが、世界経済に不安があることを強調した。民進、共産など野党は「アベノミクスの失敗が明白になった」と内閣総辞職を求めている。
 どちらの言い分に理があるのかを問う「アベノミクス選挙」である。参院選は政権選択選挙ではないが、有権者も今回の参院選は軽んじずに1票を投じたい。
 不安なのは野党も増税先送りを主張しており、違いがはっきりしないことだ。政治はいまだけをみればよいわけではない。財政再建の見通しはどう立てるのか。膨らむ社会保障費の財源をどう手当てするのか。長期的な展望をきちんと示せる政党を応援したい。
 2014年の衆院選後に安倍政権が取り組んだ政治課題への評価もしなくてはならない。最も国民的な論議となったのは、安保法の制定だ。国際情勢の変化に対応するため、との言い分には一定の理があるが、国民への説明が十分とはなお言い切れない。
 11月の米大統領選の結果によっては日米同盟のあり方を根本から見直すこともあるかもしれない。国際情勢をどう分析し、その中で日本の針路をどう定めるのか。大ぶりな安保論争が必要だ。
 憲法改正に前向きな勢力は衆院ではすでに改憲発議に必要な3分の2の議席を得ている。今回の参院選次第で、衆参双方で3分の2に達するかもしれない。憲法を改めるのであれば、どこをなぜ変えるのかをはっきりさせねばならない。とにかく護憲、とにかく改憲の不毛な論議は卒業したい。
 今回の参院選から選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられる。若い有権者が加わるのに、目先にばかりとらわれた政策論争では恥ずかしい。日本の将来を見据えた骨太な論戦を望みたい。
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日本経済新聞 2016/6/1付
社説:成長と財政再建の両立捨てるな


 安倍晋三首相が2017年4月に予定していた消費税率の8%から10%への引き上げ時期について、19年10月へと2年半延期する方針を与党幹部に伝えた。
 消費税は年金や医療、介護、子育てといった社会保障を支える貴重な安定財源だ。その引き上げを再び延期するのは極めて残念だ。
 現役世代や高齢者が薄く広く負担を分かち合うのが消費税である。見逃せないのは、増税の再延期で巨額の財政赤字を放置し、子や孫の世代にツケを回すことだ。
消費増税延期は残念
 日本の借金(債務)は国内総生産(GDP)の2倍を超え、先進国で最悪の財政状態だ。その立て直しも増税再延期で遠のく。
 いまは日銀による異次元の金融緩和が、国債の利回りを大きく押し下げている。増税の再延期で直ちに国債利回りが急上昇するとは考えにくい。
 しかし当面、日本が財政破綻する確率が低いとしても、それが現実になった場合の日本経済や世界経済への影響は想像を超える。そのリスクが確実に高まったのではないか、と心配だ。
 仮に日本の国債の格付けが下がると、日本企業が社債発行などで資金を調達する費用は増えてしまう。
 消費税は12年に、自民、公明両党と当時の民主党が15年10月に8%から10%に上げると決めた。
 首相はその後、10%への引き上げ時期を17年4月に延期することを決断し、リーマン・ショックや大震災のような事態が起きなければ「再び延期することはない」と明言していた。
 首相は世界経済の危機回避を増税再延期の理由に挙げている。米国が再利上げを視野に入れ、中国経済の失速懸念が後退したいま、この説明には無理がある。
 たしかに足元の個人消費は精彩を欠く。10%への消費増税で景気が腰折れし、物価が持続的に下落するデフレからの脱却が遠のきかねない、との懸念は理解できる。
 増税は増税として実施しつつ、景気の落ち込みをカバーする別の手を打つこともできたはずだ。
 消費低迷の一因は、若年世代を中心にした将来不安とされる。また、安倍政権は社会保障の抜本的な効率化に手をつけていない。その結果、年金や医療の保険料負担が増え続け、可処分所得が伸び悩んでいる影響もある。
 財政赤字の主因である社会保障費の膨張を思い切って抑える改革をしないまま増税を見送ることが最適解でないのは、こうした背景があるからだ。
 消費税が10%になる時点で政府は、約1.3兆円分の社会保障充実策を実施する予定だった。増税を見送り、財源のメドがないまま充実策を実施するなら無責任だ。
 20年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字にする目標を堅持するというが、どうやって達成するのか。
 政府の試算では17年4月に10%への消費増税を実施し、さらに名目成長率が3%程度の高成長が実現しても、20年度の基礎的収支は6.5兆円の赤字が見込まれていた。政府は目標達成に必要な歳出削減や消費税以外の増収策などの財源を具体的に示すべきだ。
 日本経済の実力である潜在成長率はわずか0.2~0.3%程度とされる。問われるのは、増税延期で時間稼ぎをしている間に、潜在成長率を引き上げる構造改革を断行できるかどうかだ。
構造改革を断行せよ
 政府・与党内では、消費増税の延期に加え、大型の補正予算案を編成し景気対策を講じるべきだとの声がある。いまはそんな政策対応が必要な経済状況ではない。
 カンフル剤で目先の成長率を押し上げても、効果はすぐにはげ落ちる。規制改革で日本経済の体質を抜本的に強化できないと、わずかなショックで頻繁にマイナス成長に陥る事態を繰り返すだけだ。
 政府・与党は通常国会で、環太平洋経済連携協定(TPP)の承認や、雇用の規制改革を盛った労働基準法改正案の成立を見送った。「経済最優先」の本気度を疑いたくなる。
 人口が減り続けるなか、女性や高齢者、若者、外国人がもっと活躍できるような働き方改革を果断に実行すべきだ。
 大企業だけでなく中堅・中小企業の企業統治もさらに強化し、新陳代謝を進める。そんな改革は待ったなしだ。社会保障の抜本改革もこれ以上先送りできない。
 日本経済の最大の課題は、成長力強化と財政再建の両立だ。日本はその難題から今度こそ逃げてはいけない。
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産経新聞 2016.6.4 05:03
【主張】骨太方針 おざなり修正でいいのか


 消費税増税の再延期という重大な政策変更があったのに、わずかな修正で済ませる。それで信頼に足る経済財政運営の指針だといえるのか。
 政府が1億総活躍プランなどとともに決めた骨太方針をみると、そう受け取らざるを得ない。
 2年半の増税延期や、平成32年度に基礎的財政収支を黒字化する目標の堅持は明記されたが、政策を裏打ちする消費税財源が見込めないことに、どう対応するのか。そこが見えないことが最大の問題である。
 安倍晋三首相の会見から1日で増税前提の素案を修正した。これでは議論を深めようがなく、おざなりな対応と言うほかない。
 安倍政権は増税に耐えうる強い経済を実現する約束を果たせなかった。求められるのは政策に対する信頼の回復である。脱デフレを確実にするためにも、不明瞭な財源論を含めて骨太方針の具体化を図り、着実に実行してほしい。
 骨太方針で疑問なのは、消費税増税で確保するはずだった社会保障財源である。首相は会見で「赤字国債を財源に社会保障の充実を行うような無責任なことは行わない」と語ったが、この約束は骨太方針に盛り込まれていない。
 首相発言が勇み足だったとでもいうのか。だが赤字国債の余地を残すなら、アベノミクスの成果である税収増を活用して1億総活躍社会の実現を目指す政権の戦略も説得力を失うことになる。
 財政再建計画の見直しについても不明だ。政府は、30年度の基礎的財政収支の赤字幅を国内総生産(GDP)比で1%程度とする中間目標を掲げていた。増税延期に伴い、これを今回の骨太方針から外したのはやむを得ないが、新たな目標を設定しないのか。
 首相が一昨年11月、最初の延期を表明した際には、翌年夏までに計画を策定すると約束した。同様に、現行の計画をいつまでに見直し、32年度の黒字化につなげるかという道筋をはっきりさせるべきである。
 これすらなければ、「財政再建の旗を降ろさない」と宣言した首相の覚悟も問われよう。
 首相は、骨太方針や成長戦略に沿って「アベノミクスのエンジンを最大にふかす」という。秋には総合的な経済対策を講じる。財源が限られる中で、確実に高まる財政需要をどう満たすのか。まずここを明確にすべきだろう。
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産経新聞 2016.6.2 07:00
【主張】消費増税の再延期 今度こそデフレ脱却を 社会保障への影響食い止めよ


 安倍晋三首相が消費税10%への増税を再延期すると表明した。
 日本経済にとり、また安倍政権の最大課題であるデフレ脱却を実現するうえで、景気回復が遅れる中での増税実施は困難だと考えたためだ。その判断自体は現実的かつ妥当なものといえよう。
 社会保障財源に充てる消費税の増税延期はこれで2度目である。最初の延期に際し、首相は再延期はないと断言していた。重大な政策変更について、国民に丁寧な説明を尽くすことが欠かせない。
 ≪個人消費の活性化急げ≫
 増税をいつまでも先送りできるわけではない。今度こそ、増税を確実に実施できるような強い経済をつくり上げなければならない。アベノミクスを厳しく点検し、成長基盤の底上げに資する戦略を早急に描き直す必要がある。
 増税再延期に伴い、予定していた社会保障の充実や財政健全化への影響も避けられないだろう。どのように対応するのかの道筋を示すことも重要である。
 当面は増税をしないのだから、国政選挙でその是非を問うても国民から大きな反発は受けまい。そうした安易な見方があるとしたら大きな間違いである。首相は、リーマン・ショックに匹敵するような危機がなければ再延期はないと直前まで語っていたのだ。
 首相は「再延期の判断は、これまでの約束とは異なる新しい判断だ」と述べた。秋にまとめる総合的な経済対策は実効性のあるものとしなければならない。政治の根幹を成す税制への信頼が問われることになる。
 肝心なのは、再延期で景気が確実に上向くかどうかである。アベノミクスは、金融緩和と財政出動で景気を刺激している間に、生産性向上や成長市場創出などの構造改革を進め、持続的な成長につなげるのが基本である。
 この改革が不十分なため、いくら企業業績や雇用が改善しても先行きの展望が開けなかったのではないか。経済の実力を示す潜在成長率が0%台にとどまる現実をもっと厳しく受け止めるべきだ。
 その反省がなければ、増税再延期でさらに時間を稼いでも、景気への効果は長続きせず、同じ過ちを繰り返すことになろう。
 首相は世界経済の危機を回避するため政策の総動員が必要という。その問題意識は分かるが、まずは国内の経済再生に全力を挙げてもらいたい。
 脱デフレのカギを握る個人消費の活性化には、着実な賃上げが欠かせない。産業界は一定の賃上げを実施してきたが、これをさらに加速させたい。政権は企業活力を引き出す規制緩和などで前向きな経営を後押しすべきである。
 消費を安定的に増やすには、高齢社会での暮らしへの不安を払拭するよう持続的な社会保障制度を構築する必要がある。
 ≪財政再建の目標確実に≫
 社会保障・税一体改革で、増税分の一部を子育て支援など社会保障の充実に振り向けることになっていた。首相は増税を先送りしても充実策の一部は実施し、財源に赤字国債は充てないというが、安定財源の確保が求められよう。
 増税は平成31年10月に延期されたが、時期の判断には、同年の統一地方選や参院選への影響を回避したい思惑も透ける。同時に32年の東京五輪の特需で増税の打撃を相殺できるとの期待もあろう。ただ、一時的な需要増だけでは経済再生の道筋は描けない。腰を据えた戦略を構築すべきだ。
 財政再建計画も練り直す必要がある。32年度に国と地方の基礎的財政収支を黒字化する目標は堅持するが、実現できるのか。
 予定通りに増税しても黒字化には6・5兆円が不足するとの試算がある。これがさらに広がらないか見極める必要がある。穴埋めには成長の果実を充てるというだけでは説得力を持つまい。
 長期金利は歴史的な低水準であり、当面、金利暴騰などは可能性が低い。ただ、国と地方の借金は1千兆円を超える。財政再建に後ろ向きな姿勢をみせれば財政への信任は保てまい。消費増税で国債発行を減らし、将来世代へのつけ回しを抑える。その重要性に変わりはない。
 食料品などへの税率を低く抑える軽減税率は増税と同時に実施するとしたのは当然だ。低所得者などの生活必需品への税負担を軽くする措置である。混乱なき導入へ準備に万全を期してほしい。
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東京新聞 2016年6月3日
【社説】消費増税再延期 社会保障と税の再考を


 安倍晋三首相が「公約」を覆し、再び消費税増税の先送りを表明した。限界が明白となったアベノミクスはやめ、税と社会保障の改革をやり直すべきだ。
 いくら世界経済のリスクを強調したところで、厳然とした事実は残る。それは「アベノミクスで増税できる環境をつくる」とした国民との約束を果たせなかったことだ。どうして増税に耐えうる経済環境ができなかったのか、社会保障と税の今後をどうすべきか。
◆アベノミクスは限界
 経済停滞の最大の理由は消費の伸び悩みだが、首相周辺は二年前の消費税8%への増税が引き起こしたと言い張った。しかし、これほどまでに長引くのは、他に原因があるからだろう。非正規雇用の拡大に伴い賃金全体が伸びていないこと、若年層の将来不安など格差拡大が背景にある。年収四百万~七百万円の「中間層」は細り、その下方の階層が厚みを増した。
 所得だけではない。貯蓄も三千万円以上の比率が上昇しており、アベノミクスが所得と資産の二極分化を生んできたことを統計は物語る。富が滴り落ちる「トリクルダウン」は虚妄でしかなかった。
 最大の眼目であったデフレ脱却も実現していない。それは「日銀の異次元の金融緩和」に依存するばかりで、経済の実力を高める「成長戦略」が一向に進まなかったからである。最も重要な成長戦略だが、官僚たちの予算要求の場と化しているのが実情である。
 第一の矢の異次元緩和も手詰まり感が見え、第二の矢の財政出動も増税延期でなお厳しくなる。それでも会見で「アベノミクスのエンジンを最大限ふかす」と力説する首相の姿は危うすぎる。
 消費税の10%への引き上げは、二〇一二年に当時の民主党政権だった野田佳彦首相が自民、公明と三党合意としてまとめた社会保障と税の一体改革が原点である。
◆崩壊した一体改革
 すなわち消費税の増税を財源に子育てや介護などの社会保障を充実する枠組みである。しかし、安倍政権が二度にわたって延期したことで、もはや理念も枠組みも崩壊したといってもいい。
 そもそも私たちは、今の消費税増税自体に反対してきた。それは前提となる社会保障の抜本改革が進まず増税だけが進むことを恐れるからだ。少子高齢化の進展で社会保障費は毎年一兆円ずつ増え続ける。給付を抑えないかぎり、いくら増税しても際限がないということになりかねない。
 国民に負担を強いる以上、国会議員も身を切る改革を行い、天下りなど利権に群がっていたシロアリ官僚も退治すると言明したが、その約束も果たされてはいない。
 「支払った消費税は社会保障サービスとして戻ってくる」などという甘言を聞く。本当にそうであるならば、国民の理解は進むかもしれないが実際はそうではない。
 「消費税は全額社会保障に充てる」のではなく、社会保障の充実には5%から10%に引き上げる5%のうち1%分だけだ。4%分は過去の財政赤字の穴埋め、将来世代へのつけ回し回避に使われる。
 消費税は「現役世代から高齢者まで広く薄く負担するから望ましい」といわれるが、それ以上に取りやすいからではないのか。忘れてならないのは低所得者ほど負担が重い逆進性があることだ。
 一体改革が事実上ほごにされ、負担と給付のバランスも崩れている以上、もはや税と社会保障制度を再構築すべきである。大前提となるのは、アベノミクスで失われてしまった再分配機能の強化であり格差是正の観点であることは言うまでもない。
 「富裕層は、負担を増やし給付は抑える」のが基本だろう。たとえば、富裕層は株の配当や譲渡益などの金融所得が大半だが、その税率は20%の分離課税で勤労所得にかかる所得税に比べ低すぎる。富める者がますます富む資本主義では、税の強力な再分配なしには格差は広がるばかりだ。
 一方で、社会保険料は所得に関係なく一律であり、消費税と同様、逆進性があるので見直すべきだ。さらに税と社会保険料の徴収を一手に担う歳入庁をつくる。法人から社会保険料の徴収漏れが減り、兆円規模の増収が見込めるはずだ。
◆成長戦略にすべきは
 アベノミクスは、法人税の引き下げや国家戦略特区など大企業を優遇する成長戦略が目立った。しかし、結局のところ、経営者も国民も景気回復に確信がもてないために賃金や設備投資、そして消費へと波及する好循環は生まれなかったのである。
 明らかになったのは、安心して働き暮らすための社会保障こそが冷えきった消費に火を付けられるということだ。社会保障の再構築を成長戦略の柱にすべきである。
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東京新聞 2016年6月2日
【社説】7月10日参院選へ 「安倍政治」こそ争点だ


 消費税率の引き上げ再延期にばかり気を取られてはいられない。七月十日の参院選。第三次安倍内閣にとって初の国政選挙は「安倍政治」こそ争点だ。
 通常国会がきのう閉会し、安倍晋三首相は記者会見で、来年四月に予定されていた消費税率10%への引き上げを二〇一九年十月まで二年半、再び延期することを正式に表明した。
 逆進性が高い消費税の増税を見送ること自体は妥当ではある。
 しかし、首相は増税見送りの根拠を、途上国経済の減速など世界経済のリスクに求めているが、無理があるのではないか。
◆経済「失政」を認めよ
 消費税率は一四年四月に5%から8%に引き上げられた後、一五年十月には10%に二段階で引き上げられることが決まっていたが、首相は予定通り10%に増税すればデフレ脱却が危うくなるとして、再増税の時期を一七年四月に一年半延期する方針を決め、衆院解散・総選挙で国民に信を問うた。
 そのとき語っていたのは「(増税を)再び延期することはない。はっきりと断言する。一七年四月の引き上げは確実に実施する。三年間『三本の矢』をさらに前に進めることで、必ずやその(増税を実施する)経済状況をつくり出すことができる」との決意である。
 しかし、結果として、経済成長を重視する首相の経済政策「アベノミクス」では、増税に耐え得る経済状況をつくり出すことはできなかった。格差を拡大し、個人消費を低迷させているからだ。
 首相が指摘した世界経済のリスクは、主要国首脳の共通認識とは言えまい。増税延期の根拠とするのは筋違いだろう。
 衆院解散にまで踏み切った「再び延期しない」との約束を違(たが)えるのなら、アベノミクスの誤りを認めることが先決ではないのか。
◆憲法改正の分水嶺に
 首相は会見で「アベノミクスを加速させるのか、後戻りさせるのか」と、経済政策を参院選の最大争点と位置付け、改選議席の過半数獲得を目指すと強調した。
 政権選択選挙とされる衆院選に対し、参院選は政権への中間評価を問う選挙と位置付けられる。
 七月の参院選は、一四年の衆院選を経て発足した第三次安倍内閣には補選を除けば初の国政選挙。失政と批判されるアベノミクスのみならず、他国同士の戦争に加わる集団的自衛権を行使するための安全保障関連法を成立させた強権的な政治手法など「安倍政治」全体の是非が問われるべきだ。
 加えて見過ごせないのは、七月の参院選が憲法改正に道を開くか否かの分水嶺(ぶんすいれい)となり得ることだ。
 衆参同日選挙が見送られたことで自民、公明の与党は衆院で引き続き三分の二以上の議席を維持。七月の参院選で自公両党と「改憲派」とされるおおさか維新の会、日本のこころを大切にする党が三年前の前回参院選並みの議席を得れば参院でも三分の二以上の議席を確保し、衆参両院で憲法改正の発議に必要な議席に達する。
 首相は一八年九月までの自民党総裁の在任中に憲法改正を成し遂げたい、と明言したことがある。
 どの条文を改正するのか、各党の意見は一致してはいないが、自公両党と改憲派が参院でも三分の二以上に達すれば、現実的な政治課題に浮上するのは間違いない。
 参院選は、政権の中間評価以上に憲法改正に道を開いて「国のかたち」を変えるのか否かを国民に問い掛ける重要な選挙でもあることを、肝に銘じたい。
 民進、共産、社民、生活の野党四党は、選挙戦の行方を左右する三十二の「改選一人区」のすべてで候補者一本化を実現した。
 野党がバラバラに候補者を擁立して戦った前回参院選では、自民党は一人区で二十九勝二敗と圧勝した。批判票が割れて、自民党が「漁夫の利」を得たからだ。
 「自民一強」を変え、安倍首相の下での憲法改正を阻むには、野党の結束が重要だ。政権側は「理念も政策もバラバラ」と批判するが、憲法違反と指摘される安保関連法の廃止や立憲主義の回復は、共闘の大義としては十分だろう。
◆若者の声生かしたい
 七月の参院選は、十八、十九歳の約二百四十万人が有権者に加わる初の国政選挙となる。
 高齢者層は若年層よりも投票率が高く、政治に対する影響力は大きい。年金、介護、医療など高齢者向けの支出は増え、教育や子育てなど若年層に必要な予算は抑制される傾向にある。
 この状況を変えるには、全国民の代表たる国会議員が若者の声を政治に生かすのは当然だが、若者の側も積極的に意思表示することが必要だ。棄権せず、投票所に足を運んでほしい。若者の声が反映されるようになれば、政治はきっと変わるはずだ。
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しんぶん赤旗 2016年6月3日(金)
主張:消費税増税先送り 失政認めぬ首相 国民に語れぬ


 「アベノミクス」(安倍晋三政権の経済政策)はうまくいっている、リーマン・ショックや大震災のような事態も起きていない、しかし世界経済の「リスク」が心配だから、「新しい判断」で増税は延期する―。安倍首相の記者会見で納得できた国民はまずいません。自らの失政を認めない首相がつい1週間前の伊勢志摩サミットでいったという、「リーマン前に似てきた」という説明もひっこめました。安倍首相は増税先送りの理由さえ国民に説明できません。政権担当能力を失った安倍政権の「アベノミクス」と消費税増税路線への参院選での審判がいよいよ重要です。
言い訳と保身ばかりで
 安倍政権が何が何でもやるといっていた来年4月からの消費税率の8%から10%への再引き上げを延期せざるを得なくなった最大の理由は、3年半にわたる「アベノミクス」でもいっこうに景気が良くならず、特に一昨年4月に消費税の税率を5%から8%に引き上げた結果、消費の落ち込みが予想以上に長引いているためなのは明らかです。勤労者の実質賃金は2015年度まで5年連続のマイナスです。国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費は消費税増税後の14、15年度と2年連続マイナスです。首相も「予想外」の落ち込みと認めざるを得ません。
 安倍首相は有効求人倍率が全都道府県で1を超え、求人が求職を上回ったなど都合の良い数字だけを並べて成果を宣伝しますが、有効求人倍率には希望する仕事が見つからず、求職をあきらめた人が増えている影響もあります。首相は国民の暮らしを直視し、失政の責任を明確にすべきです。
 一昨年秋、消費税増税を1年半延期し総選挙に乗り出した時、安倍首相は必ず増税できる経済状況をつくると大見えを切り、増税法案から景気判断条項も削除して、「リーマン・ショックや大震災でも起きない限り」増税すると主張しました。それから1年半余りで再び消費税増税を延期せざるを得なくなった理由を、首相は「新しい判断」などとごまかさず国民に納得できるよう説明すべきです。
 首相は伊勢志摩サミットで突然世界経済は「リーマン前に似てきた」と言い出しました。ところがそれが国内の失政を世界経済に責任転嫁するものだと評判が悪く、参加した首脳からも認識が違うと指摘されると、説明した世耕弘成官房副長官の間違いだったと取り消して、「リーマン・ショックは起きていない」と説明を変えたのです。それでいて世界経済の「リスク」が高まっているから「新しい判断」で増税は延期するというのですから説明は支離滅裂です。安倍首相の説明には、責任転嫁と言い訳、自らの保身しかありません。
加速すれば矛盾は激化
 安倍首相は世界経済の「リスク」に対処するため、「新しい判断」で消費税の増税を延期するとともに、「アベノミクス」を加速して、この秋には大胆な経済対策を実行するといいます。しかし、大企業のもうけを増やすだけの「アベノミクス」を加速しても、国民の暮らしが良くなり、消費が回復する見通しは出てきません。貧困と格差を拡大する「アベノミクス」の加速ではなく、転換こそが必要です。
 消費税増税は断念すべきです。「アベノミクス」と増税路線への審判は、参院選の大争点です。
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