2016-06-25(Sat)

英国EU離脱へ 各紙社説等(1) 世界に衝撃

グローバル化の恩恵なく、鬱積した不満が内向き志向を加速

----国民投票の結果が示したのは、反移民や反EUの感情が経済合理性をはるかに超えて強い、という現実だ。グローバル化の恩恵を受けていないと感じる層が増え、社会全体に鬱積した不満が内向き志向を加速させたといえる。
(日本経済新聞)

<各紙社説・主張>
朝日新聞)英国がEU離脱へ 内向き志向の連鎖を防げ(6/25)
読売新聞)英国EU離脱へ 世界を揺るがす残念な選択だ(6/25)
毎日新聞)英国EU離脱へ 混乱と分裂の連鎖防げ(6/25)
日本経済新聞)英EU離脱(上)世界経済と秩序の混乱拡大を防げ (6/25)
産経新聞)英国のEU離脱 欧州統合の理念失うな 主要国は協調し混乱抑えよ(6/25)
東京新聞)英国がEU離脱 歴史の歩み 戻すな(6/25)




以下引用



朝日新聞 2016年6月25日(土)付 
社説:英国EU離脱へ 内向き志向の連鎖を防げ


 英国の民意が世界に衝撃を走らせた。冷戦が終わって以降の世界秩序の中で、最大の地殻変動となりかねない出来事だ。
 欧州連合(EU)からの離脱か残留かを問うた国民投票で、離脱が過半数を占めた。英国は統合欧州の一員であるべきではない、との結論である。
 先の大戦後、不戦の誓いを起点に脈々と前進してきた欧州統合の歩みが、初めて逆行する。域内第2の経済力と、かつての覇権国家として特異な影響力をもつ英国の離脱は、計り知れない波紋を広げるだろう。
 この英国民の選択は、冷戦後加速したグローバル化に対する抵抗の意思表示でもある。移民や貿易など様々なルールを多くの国々で共有する流れに、国民の辛抱が続かなかった。
 それは英国特有の現象ではない。米国や欧州各国でも、グローバル化に矛先が向く国民の不満に乗じて国を閉ざそうという主張が勢いを増している。
 ナショナリズムの台頭に、主要国がいっそう結束を強めて立ち向かうべきときに、英国自身が単独行動を広げる道を選ぶというのだ。これからの英国の針路は海図なき航海となろう。
 今後の離脱交渉の行方がどうなるにせよ、英国とEUは連携の関係を見失ってはならない。両者は協調し合ってこそ、互いに利益を高め、ひいては世界の安定に資することができる。
 欧州統合の流れに水を差すことなく、英国とEU双方が新たな建設的関係を築く落着点を何とか探ってほしい。
 ■分断の修復が課題
 この投票結果を、世界の市民が離反し合う不幸な歴史の起点にしてはならない。そのために、まず修復すべきは足元の英国社会だ。激戦となった国民投票は、英国民を分断した。
 論戦では、経済危機や移民の脅威をあおる言動が相次いだ。対立感情が高ぶった空気の中で、残留派の国会議員が射殺されるという痛ましい事件も起きた。英国社会には、いまも不穏な空気が漂っている。
 残留を唱えたキャメロン首相は秋までに辞任する意向を示した。確かに、今後の国の針路を描くうえで新しい指導者を選出するのは自然なことだろう。
 ただ、首相が属する保守党内も両派で割れている。EUへの帰属意識の高いスコットランドは改めて独立へ動きかねない。政治の混乱は尾を引きそうだ。
 キャメロン首相も後継者も、国内でくすぶる対立を鎮め、EUとの関係や、世界での英国の立ち位置を冷静に考える環境づくりを急がねばなるまい。
 ■国際協調の道こそ
 19世紀の世界を制した英国は20世紀後半、深刻な停滞の時期を迎えた。その苦悩から脱し、繁栄を築けたのは、積極的に国を開いてグローバル経済の波に乗り、金融を筆頭に様々な得意分野を広げたからだ。
 ただ、その恩恵が届かない市民の不満や不安は高まり、全体的に内向き志向が強まった。復古的な主権回復派だけでなく、経済の不満から離脱を選んだ国民が多かったとみられる。
 国境の垣根が低くなったことで経済が発展しながら、国民感情は国境の壁の再建を望む。そんな倒錯した状況から生まれるものとしては、米国のトランプ現象や、欧州各国での右翼の躍進もほぼ同じ脈絡にある。
 英国に続けとばかりに、他のEU加盟国でも離脱の機運が高まりかねない。もし米国の大統領選でもトランプ氏が当選したら、さらに来年のフランス大統領選で右翼ルペン氏が勝つような事態になれば、世界は不寛容な政策に満ちてしまう。
 内向き志向の潮流が、世界を覆う事態を防がねばならない。偏狭な一国中心の考え方が広がれば、地球温暖化やテロ対策、租税問題など、地球規模の問題に対処する能力を世界は鍛えることができなくなってしまう。
 どの先進国も、政治のかじ取りが難しい時代である。低成長と財政難による福祉水準の低下や格差の拡大という問題が共通し、どの国の政治家も解決策どころか有権者への効果的な説明すら見いだしあぐねている。
 だからこそ、国際協調しか道はない。国境を超える問題への対処の道は、各国の経験と知恵を結集した行動しかないことを改めて考えるべきだろう。
 自由と民主主義の価値を唱える欧州の強い存在感をこれからも失わないでほしい。
 ■市場の動揺に対処を
 今回の英国の決定による影響は、株式・為替市場の動揺となって広がっている。まずは眼前の混乱への取り組みが必要だ。
 英国とEUだけでなく、日米なども加わる主要7カ国(G7)が中心となって、市場の不安をおさえるよう緊急の協調体制を築きたい。
 日本銀行など各国の中央銀行は金融機関へのドル資金の供給で協力しあう構えだ。不測の事態や必要が生じたときには、柔軟かつ強力に危機防止で連携してほしい。
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読売新聞 2016年06月25日 06時02分
社説:英国EU離脱へ 世界を揺るがす残念な選択だ


 ◆国際協調で市場の安定に努めよ◆
 英国の将来を不透明にし、欧州の安定を揺るがす深刻な事態である。世界経済への悪影響を食い止めることが急務だ。
 欧州連合(EU)残留か離脱かを問う英国の国民投票で、離脱支持が51・9%に達し、英国の脱退方針が決まった。市場の激震で、通貨ポンド、ユーロが急落するとともに、世界同時株安の様相を呈した。
 日米や欧州諸国はそろって英国に残留を求めていた。これを押し切っての離脱は賢明な判断か。疑問だと言わざるを得ない。
 ◆キャメロン首相の誤算
 EU加盟国の脱退は、その原点である欧州石炭鉄鋼共同体の1952年の発足以来初めてである。求心力の低下により、欧州統合の拡大と深化が大きく後退するのは避けられない。
 国際通貨基金(IMF)は、離脱ならば、英経済がマイナス成長に陥ると予測していた。残留派を率いたキャメロン首相は、離脱は無謀だと主張したが、大勢を変えられなかった。キャメロン氏は今年10月までに辞任する意向を表明した。
 離脱派の中核勢力は、ジョンソン前ロンドン市長ら、与党・保守党内で欧州統合に懐疑的な政治家だ。EU法の肥大化に伴い、英国の主権が縮小することを厳しく批判し、国民投票の日を「独立記念日にしよう」と呼びかけていた。
 特に説得力を持ったのが、「移民を制限する」との主張だ。EU諸国からの移民急増が、英国民の雇用や福祉を脅かしていると強調した。こうした論理が、繁栄に取り残された地方の低所得層や高齢層に浸透したのだろう。
 排外主義が潜むポピュリズムの台頭に懸念を強めざるを得ない。スコットランドの独立や、北アイルランドのアイルランドへの編入を求める住民運動は、EU志向が強い。離脱への反発で、こうした動きが勢いづく恐れもある。
 ◆欧州統合は大きく後退
 EUは近年、ギリシャ財政危機や、大量の難民流入に対して、効果的な対応をとれず、各国でEU不信の増大を招いた。
 デンマーク、オランダなどではEU残留・離脱を問う国民投票を求める声が高まる。フランスで伸長する極右政党、国民戦線のルペン党首も国民投票を提唱する。
 こうした排他的な動きが各国で強まれば、「離脱ドミノ」の悪夢が現実になりかねない。
 東西冷戦下、自由主義諸国の欧州の共同体は共産主義の盟主・ソ連に対抗し、ドイツを西側に取り込む役割を果たした。73年の英国加盟以降は、仏独英が主導し、平和と繁栄を体現してきた。
 米国との絆が強い英国の離脱で主要国間のバランスが崩れる。EUでは、ドイツが一段と突出した影響力を持つことになろう。
 ロシアのプーチン大統領はEUの足並みの乱れを奇貨とし、ウクライナ問題を巡る対露制裁の解除を画策している。弱体化したEUは圧力を維持できるのか。
 英国は今後、EUとの脱退交渉で、貿易や投資に関する取り決めを原則2年以内にまとめる。その政治的コストも大きい。
 EU向けが輸出の半分を占める英経済がどうなるのか。ロンドンのシティーの金融センター機能が低下すれば、世界経済にも悪影響を及ぼそう。離脱のダメージを最小限にとどめる方向で妥結に努力する必要がある。
 投資家は、リスク回避の姿勢を強めている。日経平均株価は1200円以上値下がりした。
 最も心配されるのは、2008年のリーマン・ショックのように世界市場で資金の供給が途絶え、経済危機が拡大することだ。
 先進7か国(G7)財務相・中央銀行総裁は緊急電話会議で、「市場の動向と金融の安定を緊密に協議し、適切に協力する」との共同声明を採択した。
 ◆日本への影響最小限に
 中央銀行が潤沢な資金を供給するなど、世界経済の収縮回避に全力を挙げねばならない。
 円相場は、一時1ドル=99円台に急騰した。過度の円高は輸出産業の収益を悪化させ、日本のデフレ脱却を阻害しかねない。
 麻生財務相と日本銀行の黒田東彦総裁は共同談話で「必要に応じて対応を行う」と、市場介入も辞さない姿勢を示した。
 日本の円売り介入に否定的な米国の理解を得つつ、市場の安定にあらゆる手段を尽くすべきだ。
 英国には、日本企業が1000社以上進出している。欧州への足掛かりの役割が大きい。英国とEUの交渉経過を注視し、海外戦略を見直すことが求められよう。
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毎日新聞2016年6月25日 東京朝刊
社説:英国EU離脱へ 混乱と分裂の連鎖防げ


 欧州統合の歩みに最大の試練である。世界が固唾(かたず)をのんで見守った英国の国民投票で、欧州連合(EU)からの離脱を求める票が僅差で過半数を占めた。
 第二次世界大戦後、6カ国で出発し28カ国まで拡大を続けてきた連合にとって、初めて経験する加盟国の離脱だ。投票日の6月23日は欧州にとって歴史的な日となった。
 英国にはEU内にとどまり、自由と多様性を重んじる連合を主導してほしかっただけに残念だ。
 欧州で未知の航海が始まることへの不安から、外国為替市場や各国の株式市場が軒並み激震に見舞われている。
グローバル化への抵抗
 市場の動揺は当面避けられそうにないが、日本を含む主要国の当局は、不安が不安を呼ぶパニックの引き金が引かれないよう、連携して鎮静化に努めねばならない。
 ただ、本格的な影響はこの先、時間をかけて英国内外に及ぶのではないかと危惧する。
 離脱の投票結果を受け、英国はEUとの新たな関係を定める交渉に入る。残留派敗北の責任を取ってキャメロン首相が辞任を表明したことから、この困難で長期化が予想される作業は、今秋選ばれる後任の指導者に託されることになろう。
 選択肢は、ノルウェーのようにEU外にいながら単一市場に参加するといったものから、一切、特別な関係を築かないものまで幅広い。いずれを選ぶかによって輸出の約半分がEU向けである英経済が受ける打撃の大きさは変わってくる。
 相手側のEUも難しい対応を迫られそうだ。英国に譲歩し過ぎればEU内で同様に離脱を目指す動きが広がる可能性を否めない。他方、英国に厳し過ぎると英国が一段と内向きになる危険をはらむ。
 さらに、これから英国や欧州の経済がどのような打撃を受けるかによっても英国なき欧州の姿は大きく左右されそうだ。経済の混乱が最小限ですむことが日本や他の域外国にとっても望ましい。とはいえ、英国離脱による痛みがさほど感じられないとなると、EU分裂の圧力が強まるといった皮肉な結果をもたらす恐れもある。
 EUはこうした国家や人々をばらばらにしようとする遠心力の高まりにどう立ち向かうべきか。まず各国の指導者は、なぜ英国でEU離脱派がここまで支持を集めたのか、冷静に点検するところから始めなければならない。
 英国の反EU論調には、もちろん固有の背景もある。覇権国だった過去への郷愁や誇り、島国独特の国民性などだ。EUの中にいながら、常に大陸欧州とは一定の距離を置いた。国境管理や通貨といった国家主権に直結する分野では、EUに特例扱いを認めさせてきた。
 だが、英国だけでなく世界的に広がりつつある自国至上主義や排外主義と重なる面も少なくない。底流にあるのは、エリート層への不信感や官僚機構の権限拡大に対する嫌悪感、移民に職や社会保障上の恩恵を奪われるといった不安である。さらに自分はグローバル化の恩恵を受けないばかりか置き去りにされているといった不満もあろう。
日本も冷静な対応を
 そうした不満や、先行きへの不安が、移民や外国人を敵視する主張と共鳴し合う。そして他国との結び付きに背を向け、自国さえよければ構わないといった内向きの風潮に勢いを与えている。
 欧州ではフランスやオランダなどでナショナリズムを掲げる極右勢力が支持を集め、米国でも、共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏が公然と外国人の排斥や保護主義貿易を唱えている。
 欧州諸国は統合を進める一方で、疎外されたと感じる人々の思いに十分な配慮ができなかったのではないか。欧州以外の世界の指導層に突きつけられている問いでもある。
 欧州が二度と戦火を交えないようにするにはどうしたらよいか。第二次世界大戦後、戦略物資である鉄鋼と石炭を独仏というかつての敵国同士が共同管理するところから出発した欧州の統合だった。
 しかし、いくら平和や繁栄を目指した国家間の連携でも、国民の理解や支持を十分得ようとせず強引に推し進めようとすれば抵抗にあい失敗しかねない。ナショナリズムや保護主義という内向きの力に引っ張られ、分断の過去に戻らないようにするためにも、指導層は常に国民とともに進む努力を心掛けねばならないということだ。
 EUは今後、自らが目指す統合の将来像と緊密化の速度について再考を求められそうだ。
 日本経済も英離脱の影響は避けられない。英国に進出する日本企業は拠点の移転など戦略の修正を余儀なくされる恐れがある。
 一方で国民投票後、円が急騰し、株価も大幅に下落した。市場の急激な変動は警戒が必要だ。
 ただ、政府が過剰反応し、株価対策に奔走するのは賢明ではない。EUから離脱する英国、英国なきEUとどうつき合っていくのか、地球的な視野に立った対応が求められる。
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日本経済新聞 2016/6/25付
社説:英EU離脱(上)世界経済と秩序の混乱拡大を防げ


 英国が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めた。1952年の欧州石炭鉄鋼共同体の設立から始まった欧州統合の流れが、初めて後退する。世界の経済や秩序に与える影響は、はかりしれないほど大きい。
 いったんEUから離脱してしまえば再加盟はほぼあり得ない。英国とEUが異なる道を歩み始めることに、深い憂慮の念を抱かざるをえない。
市場の動揺を抑えよ
 国民投票の結果は世界の金融市場を揺るがしている。英国経済の先行きへの懸念から英ポンドは大きく値下がりした。一方で安全な通貨とみなされる円は買われ、一時は1ドル=99円台まで円高が進んだ。日経平均株価は16年ぶりの下げ幅を記録した。
 まさかと思ったことが現実になり市場が激震に見舞われる事態は、リーマン・ショックもほうふつさせる。機動的な流動性の供給など、各国の金融当局は市場や金融システムの動揺を抑える努力を尽くさなくてはならない。
 それにしても、なぜ、こんなことになったのか。
 国の主権や独自性を重視する英国では、もともと欧州の統合を進めることに懐疑的な見方が根強かった。移民の急増で社会的なあつれきが激しくなったことで反欧州の世論が強まり、政治的な亀裂も深まった。
 そこで英国のキャメロン首相はEUと交渉し、域内からの移民への福祉を一時的に制限できるといった改革案を引き出した。この改革案を前提としてEUにとどまるか否かを国民投票で問うことにした、というのが経緯だ。
 EU残留を訴える勢力がもっとも強調したのは、離脱がもたらす経済的な不利益だ。実際、離脱にともなう混乱で貿易や投資が落ち込むのは避けがたい。
 国際通貨基金(IMF)は、離脱した場合の2019年の国内総生産(GDP)は残留した場合に比べ5.6%減少する、との見通しを発表している。
 これに対しEU離脱を求める人たちが前面に押し出したのは、年間約30万人にも達する移民が雇用や社会の安定を脅かすことへの強い警戒感だった。EUの規制が広がってきたことへの反発から、主権を取りもどせ、といった扇情的な声も聞かれた。
 国民投票の結果が示したのは、反移民や反EUの感情が経済合理性をはるかに超えて強い、という現実だ。グローバル化の恩恵を受けていないと感じる層が増え、社会全体に鬱積した不満が内向き志向を加速させたといえる。
 大陸欧州の各地でも排外的なポピュリズムが広がり、反移民や反EUを掲げる政治勢力が支持を伸ばしている。英国に続け、とEU離脱を問う国民投票を求める声が台頭することも考えられる。
 離脱ドミノが起きれば欧州全域が不安定化し、経済活動は萎縮してしまう。地政学リスクが高まりテロや軍事衝突などを誘発するおそれもある。戦後世界の平和と安定を目的とした欧州統合が逆回転を始める意味は深刻だ。
ドミノに歯止めを
 英国は今後EUに離脱の意向を正式に伝え、2年かけて離脱の手続きを進めることになる。EUと新たに結ぶ経済・貿易協定の中身などが焦点となる。英国としては離脱後もEUの共通市場と自由に取引したい意向のようだ。
 これに対しEUは、先行きが不透明なことによるリスクを抑えながら、離脱ドミノをけん制し英国に追随する国が出るのを封じる必要がある。関税などの交渉であえて厳しい条件を英国につきつけることも考えられよう。
 英国では国民投票の結果を受けてキャメロン首相が辞意を表明した。EU残留派が多いスコットランドでは、英国からの独立機運が再燃する可能性が小さくない。国内の政治的・社会的な亀裂の修復が何よりも求められる。
 同時に、離脱のロードマップを国内外に明示し不透明感の払拭に努めなければならない。さもないと英国への投資は細り、通貨危機の懸念さえ浮上する。
 世界中の多くの企業が欧州業務の中核拠点を英国に持つ。日本勢も自動車や銀行などが古くから進出している。今後はドイツやフランスなどに主要な業務の再配置を迫られよう。衝撃に企業も立ち向かわなければならない。
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産経新聞 2016.6.25 05:02
【主張】英国のEU離脱 欧州統合の理念失うな 主要国は協調し混乱抑えよ


 人権や民主主義などの価値観を構築し、民族を背景とした国家間の紛争を回避する。「一つの欧州」を目指した欧州連合(EU)が持つ、大きな意味合いだったといえよう。
 英国の離脱がEUの力を削(そ)ぎ、その理念さえもぐらつかせるきっかけとなってはならない。
 欧州の弱体化は、ロシアや中国など軍事力を誇示して国際ルールを無視する勢力と、法の支配という普遍的価値観を共有する日米欧とのバランスも崩しかねない。
 離脱は残念な結果だが、今はそれに伴うさまざまな事象が多方面に及ぼす負の影響を、いかに最小限にとどめるかである。
 ≪「不確実性」が高まった≫
 日本をはじめ主要国などが緊密な協調体制を打ち出すことが急務である。
 とりわけ喫緊の課題は、金融市場の混乱を食い止める手立てだ。減速傾向を強める世界経済の不確実性が、英国の離脱により一段と高まったことを懸念する。
 離脱が確実になると、ユーロや英ポンドが急落し、円相場は一時1ドル=99円の円高水準となった。東京株式市場の平均株価の終値は1300円近く下落した。
 安倍晋三首相は「為替市場をはじめとした金融市場の安定化が必要だ」と述べた。市場の混乱に歯止めをかけ、金融システムが揺らぐことのないよう、英国とEU、日米など先進国の政府、中央銀行は迅速に連携すべきである。
 過度の為替変動が収まらなければ、協調介入もためらうべきではない。先進7カ国(G7)の結束が試される。
 市場の混乱は、停滞感の強い日本経済にとって打撃となる。年明け以降の円高が定着すれば、第2次安倍政権下での円安によって収益を伸ばした輸出企業にとり、深刻な逆風となる。
 それが不安心理を高め、企業の投資活動や消費をさらに冷え込ませれば、景気低迷が長期化しかねない。政府は実体経済への影響を見極めつつ、財政出動などで機動的に対応する必要がある。
 もっとも痛手を受けるのは英国経済である。国際通貨基金(IMF)が2019年の実質国内総生産(GDP)が5・6%押し下げられるという試算を出すなど、輸出や投資の減少が懸念される。
 日本同様、EUは物価が伸び悩み、低成長から抜け出せない長期停滞の懸念がある。政治的混乱で域内の成長基盤が損なわれないかも心配だ。世界経済全体の波乱要因とならぬよう、英国とEUには万全を期してもらいたい。
 国民投票の争点は、EU域内からの移民制限、主権回復など多岐にわたった。投票直前まで残留、離脱をめぐる英国世論は拮抗(きっこう)したが、離脱派は「EUから主権を取り戻す」と訴え、東欧などからの移民に職を奪われたとする国民の不満を吸収した。
≪拡大過程の検証必要だ≫
 統合の進展が民族的な対立を引き起こしたともいえる。
 EUは、第二次大戦後の欧州の平和と経済の繁栄を図るために設立された欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)に端を発し、「一つの欧州」を目指して通貨統合や人の移動の自由などへと統合を深化させてきた。
 欧州を二度と戦場にしないとの統合理念に間違いはなく、英国もこれに異論はなかろう。
 だが、EUは東欧の旧共産主義諸国も受け入れ、28カ国へと拡大した。これらの国々の民主化が進んだことは評価できるが、拡大を急ぎすぎなかったか。
 フランスやスペイン、イタリアなどEU主要国でも、「EU懐疑派」の声が高まっている。英国の離脱により、他国の離脱派が勢いづく事態は避けたい。
 統合深化の過程については、EU自体が改めて検証すべき課題であろう。
 英国は国連安全保障理事会の常任理事国であり、核保有国だ。欧州の安全保障に北大西洋条約機構(NATO)が果たす役割は大きく、英国は米国とともにその主要メンバーであり続ける。
 ウクライナ介入に代表されるロシアの領土的野心、中東のイスラム過激主義のテロへの対応、紛争回避などで、英国は、大きな役割を担ってきた。共通の外交・安全保障政策を形成してきたEUにとって英国は不可欠な存在だ。
 この点でも英国は欧州との結束を崩してはならない。
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東京新聞 2016年6月25日
【社説】英国がEU離脱 歴史の歩み戻すな


 英国の欧州連合(EU)離脱は、欧州の壮大な実験と呼ばれる国家共同体への鋭い警告であろう。しかし、人類の知恵の歩みを止めるわけにはいかない。
 欧州には、国民性を表すこんな言い方がある。スペイン人は走った後で考え、フランス人は考えた後で走りだす。英国人は歩きながら考える。
 その歩きながら考える英国人の決めた離脱だが、欧州が今の結束を固めるまでの前史は長かった。
◆チャーチルの呼び掛け
 第一次大戦後にまでさかのぼる。荒廃した欧州を一体化しようとの主張が出てきた。
 中心となったのがオーストリアのクーデンホーフ・カレルギー伯爵。母親は日本人の光子という、コスモポリタン的な生い立ちの人物だった。
 しかし、フランスへのリベンジを誓うナチス・ドイツが登場して、二度目の大戦が起き、実現しなかった。
 第二次大戦後、今度こそ欧州に平和を、と訴えたのが、英国首相のチャーチルだった。
 「欧州という家族を再生させる最初のステップは、フランスとドイツの協調でなければならない」。一九四六年、スイス・チューリヒでの演説で欧州合衆国の創設を呼び掛けた。
 ドイツに二度と戦争を起こさせないという思いとともに、「鉄のカーテン」の向こうの、ソ連を中心とする共産圏への警戒もあったのだろう。
 しかし、チャーチルが政権を退いた後の四八年、フランスが持ち掛けた、EUの母体となった欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)の設立話に、英国は乗らなかった。石炭、鉄鋼の生産で、大陸欧州と競合していた。
 その二十五年後、英国がEU前身の欧州共同体(EC)に参加した時には、英国にとって腹立たしい構造に固定されていたという。バスに乗り遅れた。
 EUのこうした歴史を民衆に語り掛けたのが、今回、離脱派のリーダーとして名をはせた前ロンドン市長のジョンソン氏だ。
 EU母体発足時の首相がチャーチルだったら、英国に有利な組織になるよう交渉を進め、「民主的に選ばれた各国政府の決定が、日常的に『超国家的』機関によって覆される」という、EUの現状にはならなかっただろう、という(「チャーチル・ファクター」プレジデント社)。
 今回の投票運動では、これらEUの不備が具体的に指摘された。
◆分断された社会
 例えば、EUの共通漁業政策のせいで、海に囲まれながら自由に漁獲ができない。
 膨張と拡大を続けるEUで、新たに移動の自由を得たポーランドなど中東欧からの移民が急増し、職を脅かす。
 高邁(こうまい)な理念を掲げたEUへの英国民の不満は、生活に根差した切実なものだった。
 残留支持派は若者や、高所得者・高学歴層、離脱支持派は大英帝国に郷愁を抱く高齢者に加え、低所得労働者たち。既得権益派と、それにあずかれない人々。
 英国社会は真っ二つに分断されてしまった。
 火種は波及しかねない。
 シリア難民受け入れに各国は難色を示し、解決策をまとめ切れないEUに不信を強める。
 オーストリア大統領選では反EUを掲げる極右候補が半数近くの票を獲得し、ローマではEU懐疑派市長が当選した。
 寛容が国是のドイツでさえ、反ユーロ、反難民を掲げる民族主義政党が伸長している。
 各地で脱退を叫ぶ声が高まり、英国離脱を機に、EU崩壊にもつながりかねない。
 EUがもたらしてきたものを思い起こしたい。
 欧州では大国間の争いがなくなり、安定が続く。
 域内の若者の往来が活発になり、互いの習慣や文化への理解が進んだ。
 EUの存在意義、果たしてきた役割は大きい。
 英国離脱で形は変わるが、EUはもちろん死んだわけではない。
 英国はもともと、ユーロを導入せず、国境審査を免除し合うシェンゲン協定にも参加しないなど、一線を画していた。
 英国が抜けるEUが、ドイツ、フランスを中心に結束を強める可能性もある。
◆EU再生の教訓に
 EUと英国は二年かけて離脱に向けた交渉を進める。
 離脱決定で直面する困難の中から再び残留を望む声が出てくるかもしれない。
 各国の民意や主権と、EUはどう折り合いを付けていくか。
 英国の決断を崩壊の序曲とするのではなく、再生を考える教訓とすべきだ。
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tag : 英国 EU離脱 グローバル化 欧州統合

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