2016-07-04(Mon)

大震法見直し 予知に頼らない備えを

対策地域 東海地震に限定せず 南海トラフ巨大地震の範囲に広げる

----内閣府が、大震法見直しに向けた有識者会議を設置すると発表した。
対策の対象地域を東海地震に限定せず、東南海、南海を含む南海トラフ巨大地震の範囲に広げることを検討するという。
 
大震法は、マグニチュード(M)8級の地震が明日起きてもおかしくないとする地震学者の警告を機に1978年に制定された。
東海地震が単独で起き、直前の現象が察知できる前提で、観測体制と防災対策が強化されてきた。
 
地殻変動の異常を検知したら、専門家による判定会を開く。
地震の予兆と判断すれば、首相が警戒宣言を出す。
鉄道の運行停止や病院の外来診療中止など、日常生活にも強い規制が及ぶ。
 
法施行から40年近くになる。
東海地震が単独で起きるとみる研究者は今は少ない。
南海トラフの他の震源域と連動して巨大地震になるという見方が強まっている。
(信濃毎日新聞)

<各紙社説>
東京新聞)大震法改正へ 警告を出せる仕組みに(7/4)
信濃毎日新聞)大震法見直し 予知に頼らない備えを(6/29)
高知新聞)【大震法見直し】予知に依存せず備えたい(6/29)
日本経済新聞)「南海」に備え大震法を見直せ (6/4)




以下引用



東京新聞 2016年7月4日
【社説】大震法改正へ 警告を出せる仕組みに


 約四十年前にできた大規模地震対策特別措置法(大震法)が大幅に見直される。対象を東海地震から南海トラフ地震に拡大する。予知はできなくても、国民の命と財産は守る仕組みを考えてほしい。
 大震法は一九七八年に制定された。「明日起きてもおかしくない」と言われた東海地震対策が狙いだった。予知できれば、首相が警戒宣言を発令。鉄道は運行を停止し、銀行は多くの業務を停止するなどと決められている。
 研究者は今、東海地震は単独では起きず、駿河湾から四国沖に延びる南海トラフ沿いで広域に発生すると考える。警戒宣言を出せるほど確度の高い予測は難しい。
 科学的知見と法律の隔たりが大きくなったので、政府は作業部会を設置して八月にも見直しを始める。予知に代わる情報発信の仕組みを検討してほしい。
 私たちには苦い経験がある。
 二〇一一年三月十一日に東日本大震災が起きたが、その二日前、三陸沖でマグニチュード(M)7・3の地震があった。当時、このような地震が起きると、日本海溝沿いでより大きな地震が三日以内に起きる可能性が20~25%ある、という研究成果も出ていた。警告があれば救えた命があったのでは、という悔いが残る。
 現在の地震学では確度の高い予知は難しい。それでも、蓄積された知識は防災に役立つ。
 たとえば、火山の噴火警報のような情報発信はどうだろう。通常時はレベル1で、巨大地震が発生しやすいと考えられているスロースリップ(ゆっくりすべり)の期間はレベル2、さらに別の予兆があればレベル3と上げていく。
 レベルが低いうちは通常の生活を送る。レベルが上がるのに応じて、非常食や飲料水を持ち歩くとか、木造住宅なら寝るのは二階にするとかいった対応をとる。防災関係機関は事前に態勢を組むことができる。スロースリップが起きるのは半年に一週間ほどという。
 さる四月一日、三重県沖地震(M6・5)が起きた。スロースリップのさなかだったが、南海トラフ地震を誘発することはなかった。警告していれば、外れたことになるが、大地震につながっていれば、東日本大震災に学んでいなかったことになる。
 私たち日本人にとって、地震は宿命である。だが、何も知らされずに死んでいくのはつらい。外れたら、実践的な防災訓練ができてよかったと考えるようにしたい。
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信濃毎日新聞(2016年6月29日)
社説:大震法見直し 予知に頼らない備えを


 東海地震は予知できる、としてきた前提が既に大きく揺らいでいる。大規模地震対策特別措置法(大震法)を抜本的に見直し、国の大地震対策を一貫性のあるものにしたい。
 内閣府が、大震法見直しに向けた有識者会議を設置すると発表した。対策の対象地域を東海地震に限定せず、東南海、南海を含む南海トラフ巨大地震の範囲に広げることを検討するという。
 大震法は、マグニチュード(M)8級の地震が明日起きてもおかしくないとする地震学者の警告を機に1978年に制定された。東海地震が単独で起き、直前の現象が察知できる前提で、観測体制と防災対策が強化されてきた。
 地殻変動の異常を検知したら、専門家による判定会を開く。地震の予兆と判断すれば、首相が警戒宣言を出す。鉄道の運行停止や病院の外来診療中止など、日常生活にも強い規制が及ぶ。
 法施行から40年近くになる。東海地震が単独で起きるとみる研究者は今は少ない。南海トラフの他の震源域と連動して巨大地震になるという見方が強まっている。
 予知に関しても、現在の地震学では正確な予知や予測は難しいとする研究者が多い。政府の中央防災会議の調査部会は2013年、「確度の高い予測は一般的に困難」との報告をまとめている。
 南海トラフは、M8〜9級の地震が30年以内に起きる確率が70%程度とされている。政府の被害想定では、激しい揺れと大津波によって死者は最大で32万人を超え、経済的被害は220兆円に達する。想像を絶する甚大な災害になる恐れがある。
 複数の震源域が一気に動いた東日本大震災を経験し、南海トラフ地震への懸念は強まった。大震法とは別に、13年に特別措置法が施行され、29都府県707市町村を防災対策推進地域に指定。津波避難路の整備などが進む。
 この特措法は、予知を前提としていない。大震法による東海地震の対策は、南海トラフ地震への備えと整合性が取れない。
 東海地震の予知体制が、予知への過大な期待につながってきたことも否めない。地震が起きる仕組みは複雑で、いまだ十分に解明されてはいない。大震法の見直しにあたって、防災に直結する地震学の現状と限界を国民に明確に示すことも欠かせないだろう。
 地震への備えは、予知に頼らずに進める必要がある。有識者会議には、大震法の廃止を含めた、踏み込んだ議論が求められる。
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高知新聞 2016.06.29 08:00
社説:【大震法見直し】予知に依存せず備えたい


 東海地震に備えた大規模地震対策特別措置法(大震法)が、大きく転換される可能性が出てきた。内閣府が抜本的な見直しに向け、有識者会議を設置すると発表した。
 対象地域を四国を含む南海トラフ巨大地震の想定範囲まで広げることを検討する。大がかりな地震観測網が、より広域に構築されることが期待されよう。
 ただ、大震法は地震予知ができることを前提にした防災システムだ。学界では「予知は困難」との見方が主流になっており、大震法に疑問を投げ掛ける専門家は多い。
 有識者会議では、予知できない場合の対応も協議するという。今後の地震対策の方向性にも関わる問題であり、論議を注目したい。
 大震法は、1978年に制定された。静岡など8都県157市町村が防災対策の強化地域に指定され、静岡を中心に地下の岩盤の異常を24時間監視する体制などが敷かれている。
 異常現象が検知されれば、気象庁の予知情報に基づき、首相が警戒宣言を出す。新幹線の運行停止や銀行の営業停止など強い規制を盛り込んでいる。
 予知を前提にしたのは、65年に気象庁や大学などの観測網を整備する国家プロジェクト「地震予知計画」が始動した影響が大きいだろう。5年計画で第7次まで続けられたことからも、予知に強い自信と期待があったことが分かる。
 ところが、地震のメカニズムの解明などは進んだものの、予知には成功せず、95年、阪神大震災が発生した。中央防災会議は2003年、「直前予知は、一般的に困難」との報告をまとめている。
 予知の非現実性は1万8千人を超える死者・行方不明者が出た11年の東日本大震災で決定的になったといえよう。「科学の敗北」と表現した専門家もいる。この現実は、国も重く受け止めなければなるまい。
 仮に異常を検知したとしても、いつ地震が起きるかまで判定することは難しい。警戒宣言も、経済リスクを踏まえた高度な政治判断が求められ、運用には疑問符が付く。
 国民は既に、現代の科学の限界を実感できているだろう。熊本地震も「想定外」だった。
 過去の災害の教訓は明らかだ。いつ、どこで地震が発生しようとも、被害を最小限に食い止める日頃のハード、ソフト両面の対策が求められている。予知に依存せず、堅実な備えを進めなければならない。
 こうした状況からは、やはり予知を前提にした現行法には疑問を拭えない。有識者会議には、課題を徹底的に議論し、国民にも明らかにしていってもらいたい。
 予知は困難だとしても、地震や津波の監視体制の強化は望みたい。
 観測技術の向上は不可欠である。本県にとっては、初期微動を利用した早期警報や、四国沖にも構築されている津波観測システムの充実は、一刻を争う避難を支える大切な科学的手段である。
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日本経済新聞 2016/6/4付
社説:「南海」に備え大震法を見直せ


 駿河湾を震源にマグニチュード(M)8級の大地震が単独で起きるとする東海地震説に疑問を呈する報告が相次いでいる。東海地震だけは「予知が可能」とし、首相が警戒宣言を出すとしている大規模地震対策特別措置法(大震法)は見直すときだ。
 海上保安庁は西日本の太平洋沖に延びる南海トラフで海底のひずみを直接測ったデータを公表した。ひずみの蓄積は東海沖以外にも紀伊半島沖や四国沖で大きかった。この海域の地震が広域で起きる可能性を示唆している。
 千葉市で先週開かれた地球科学の学会でも、東海地震は紀伊半島沖―四国沖の東南海・南海地震と連動して起きるとの見解が多く示された。東海地震が単独で起きるとみる研究者はもはや少ない。
 政府はM9級の南海トラフ巨大地震を想定し、対策に注力している。その一部の駿河湾だけを想定した東海地震対策は、南海トラフ地震への備えと整合しているとはいえない。とくに問題なのが東海地震対策の基となる大震法だ。
 1978年につくられた大震法は駿河湾で地殻のひずみが観測されると、気象庁に専門家の判定会が招集される。前兆と判断すれば首相が警戒宣言を出し、交通機関や店舗の営業を止める。あいまいな場合にも注意情報を出す。
 だが本当に前兆が見つかるのか。仮に見つかって東海地方に警戒宣言を出しても、連動の恐れがある東南海・南海地方ではどう備えたらよいのか。情報が空振りになれば社会が混乱しかねない。
 内閣府の検討会は3年前、「地震の規模や時期の予測は困難」とした。ならば交通規制など強制力を伴う警戒宣言はやめるべきだ。気象庁の判定会も南海トラフ地震の長期的なリスクを検討し、発信する組織に見直したらどうか。
 大震法は国民に予知への過大な期待を抱かせ、地震研究を予知に偏らせた。南海トラフ巨大地震対策特別措置法が制定され、自治体の防災財源も手当てされた。いつまでも残しておく理由はない。
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